正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

40 / 128
こんにちは、ムーン・パラディースです

いえ、アトラクションです。

今回のお話でなんと!40話です!39話なんだけど、トータル40話なんです!キラリ

40話突破記念・・・なんも考えてないけど、これからも物語を面白くするために頑張るんじゃああああああ

それでは、どうぞ


39・月島ルカ、叫ぶ

 

 ムーン・パラディースはいつも真宵町の平和を第一に、次に仲間の信頼を大切にするために今日まで戦って来た。

 

 例え仲間が一人ひとり失おうとも、正義と平和の為に誰もが命を賭けてこの戦いに参加して、散っていった。

 

 生きている者は、もう四人。

 

 月島ルカ、銀河シズハ、星カナミ、宇宙ナズナ・・・。

 

 散った仲間は後をルカに託して、その命を費やした。

 

 死にものぐるいでダサくても、必死に託された想いを繋ぐ為に、月島ルカは一人になってもその身一つ壊れるまで戦う覚悟で来たから。

 

 そんな彼女には頼れる者は居らず、それどころかまともな協力者は居ない中、一人でサン・アンフェールを追い詰めるところまで来れた。だから、この戦いに何が起きても最後まで戦う覚悟があった。

 

 ルカには絶望しか無かった。

 

 闇夜に覆われた暗い世界で、一人で走り続ける絶望。

 

 生きた心地のしない絶望程、ルカにとって苦しい世界は無かった。

 

 しかし・・・。

 

 絶望が背後に迫るムーン・パラディースに、一筋の希望の光が舞い降りた。

 

 それは闇夜を照らす陽の光では無く、天国の様に暖かく、美しい光。

 

 優しく心を包み、守ってくれる涙が出る程嬉しい光。

 

 佐久間ギンジ、神宮カエデ、宮寺レン。

 

 彼らヘヴンホワイティネスとの出会いによって、月島ルカの戦いは大きく動き初めて行った。

 

 「どうした。変わり身を持ってきたのに、速く壊されてもう戦意喪失したのかね」

 

 タイヨーズの様々な陽撃に、ルカは終始劣勢に陥っていた。

 

 ギンジが落とされて、敗北・・・。これはかなり精神に来る大きなダメージとなっている。

 

 黄金の床に、膝をつきながらもルカはその表情を、まだ諦めていない。

 

 必ず勝たないといけない。仲間達の無念を晴らすために、彼女に逃げる、無理だった等という、そんな諦める事ばかりに都合の良い言葉を並べる訳には行かないのだから。

 

 「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 最初に近づけた時の一撃しか与えられていない。そこから先は、一切近づけず、ひたすら遠距離攻撃によって、地道に追い詰められていた。

 

 身体が熱い。陽撃の熱さに、身体が焼けそうになる。

 

 「お前の様に、心が強いだけでは、この世界は統べる事はできん」

 「・・・」

 

 この世は力、力が全て。戦いに勝たなければ、他の戦いが強い生物に敗けるからだ。

 

 そうなれば後は喰われるしかない。

 

 「力で、誰かの価値を決めるなんて、僕は反対だ・・・!」

 

 誰かが誰かの価値を、力が強いか弱いかで決めて良いはずがない。

 

 そんな独裁政権、この先の世界には絶対に必要無い。

 

 「僕はそれでも、自分の正義に従って・・・お前を倒す。絶対に!」

 「愚かしいなぁ、ムーン・パラディース。正義だ悪だと言う話をしている時点で、お前たちは弱者だと言われるんだ!」

 

 タイヨーズの指先から陽の光線が飛び出し、ルカの正面から焼き尽くさんとする。

 

 「がああああああ!!!」

 

 より強力な光線に当てられ、ルカは激痛から悲鳴を上げる。恐ろしいとも思えたこの容赦ない攻撃に、ルカは倒れてしまう。

 

 (・・・どうして、僕には力が無いんだ・・・)

 

 無力。あまりにも無力。圧倒的無力。

 

 悔しさに涙を流し、拳は床を叩き、でも身体はまだ動かない。

 

 ここまで協力してくれたヘヴンホワイティネスに申し訳ない。

 

 敗けないと言った側からコレでは、きっと散った仲間にも残念に思われてしまうかも知れない。

 

 「これで終わりだ、ムーン・パラディース!貴様のムーン・フォースも貰うぞ!」

 

 強者の陽撃(サン・アンフェール)が再び発動される。ギンジを落としたあの大技を、今のルカは避ける気力が無い。

 

 「さらばだ!」

 「ううぅ・・・クソ、クソクソ!!」

 

 身体が動かない。悔しさから涙が止まらない。そして迫るのは間違いない、死そのもの。

 

 「オッラアアアアア!!!!」

 

 陽の塊が降る瞬間に、タイヨーズの部屋にこだまする男の咆哮。

 

 ルカの目の前に強く脚を立たせて、その者は現れた。

 

 右手にはトゲのついた金棒、左手には、月光を宿す長ドスみたいな刀。

 

 それら二つを振り飛ばし、陽撃をホームランスタイルで跳ね返す。

 

 「大丈夫か?」

 

 ムーン・パラディース同様の満月のマークのついた小さなマント、目を隠すバイザー、そして黒と新緑色でカラーリングされたスーツに身を包んだ男は、ルカに手を差し伸べる。

 

 「まったく・・・先に行っちゃうんだから・・・」

 「同意。追いつくのは大変だった」

 

 部屋の入り口には、カエデとレン、さらにその後ろには魔法少女サクラと退魔警察レイナの姿もあった。

 

 「くふふふふ。わたしはやはり天才だね。あのパワー、間違いなく正義の力と怪人の魅惑のコラボレーションだね・・・!」

 「ブヒ。流石はドクター。こうなる事を見越して、ここまで頭脳を働かせるとは、このオーク感動しました」

 「月島君、大丈夫か!?」

 

 ぞろぞろとタイヨーズの部屋へ、ヘヴンホワイティネスの仲間達が入ってくる。

 

 カエデ、レン、ミドリコ、サクラ、レイナ、オーク、ミヤコ。

 

 「・・・それじゃあ、君は・・・」

 

 ムーン・パラディースの戦闘スーツになるアイテム、ムーン・フォースを使って変身しているこの男は・・・。

 

 「待たせて悪かったな、ルカ。ここからは、11人目のムーン・パラディース・佐久間ギンジがあいつをぶっ飛ばしてやるよ!」

 

 タイヨーズに落とされたギンジが仲間を引き連れて、今復活を果たした。

 

 「・・・貴様・・・なんだそのスーツは」

 

 タイヨーズの訝しむ表情に、ギンジは不敵に笑いながら、バイザーに隠された瞳を赤く輝かせる。

 

 「俺の新しい力だ!テメぇら悪をぶっ飛ばす、友達から貰った大切な力だぜ!」

 

 金棒と長ドスを構えて、ギンジは座るルカの目の前に仁王立ちする。

 

 「じ、神宮君・・・佐久間君はいったいどうしたのだ・・・?」

 「話すと少し長いんだけどね・・・あいつ・・・」

 

 希望の烈風が月光を携えて現れ、ルカは驚愕していた。

 

 11人目のムーン・パラディースとは・・・?

 

 色々と溢れ出てくる情報量の多さに、困惑しているルカとタイヨーズだが、カエデはお決まりの笑顔を作りながら、ギンジがこうなった経緯を説明する。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

  

 「初めまして・・・アタシは、天体アキハ」

 

 タイヨーズによって最下層に落とされたギンジは、姿の見えない女性に自己紹介されていた。

 

 「お、おう?俺は佐久間ギンジ。親しみを込めて、ギンジでいいぜ」

 

 姿の見えない女性へ、ギンジも挨拶を返す。すると姿が見えないのに、どこか穏やかに髪を払う様な仕草でもしているのか、なんとなく雰囲気がそう感じた。

 

 「そう、ギンジ、ギンジね。覚えておくわ。それで、ここに来たあなたに質問がしたいのだけれど、いいかしら?」

 「おうなんでも良いぜ!答えられる事はなんでも答える・・・けど」

 「けど?」

 

 アキハの言葉に、ギンジは快く返すが、あまり悠長に長話はしていられない。今もこの上でルカあが一人で戦っているのだから。

 

 ルカだけではなく、自分に協力してくれる皆も、きっと戦っている。

 

 「悪い、上で仲間と友達が正義の為に戦ってるんだ。早めに切り上げたいんだけど、いいかな?」

 「問題ないわ。アタシが聴きたいのは、その事についてだし」

 

 やはり姿が見えないのに、どこかのご令嬢にも似た雰囲気をまとわせている様な気がしている。

 

 「それで、アキハさんはこんな所で何を?」

 

 サングラスをかけなおしながらギンジは、指先の炎をちょうど近くにあった燭台に灯すと、それを明かり代わりに、落ちている月のアクセサリーみたいなモノの拾う。

 

 「アキハでいいわ。親しみを込めて呼べる事を光栄に想いなさい」

 「高圧的だな〜・・・いやいいや。それで、アキハの質問ってなんだ」

 「アタシは、今ギンジが拾ったムーン・フォース・・・いえ、今はサン・フォースって言うのかしら?それに心だけを取り込まれてしまってね・・・情けない話だけど、一人じゃ何も出来ないのよ」

 

 アキハは直接ギンジの脳内に語りかけてくる。

 

 どこか期待を込めた口調は、ギンジにも伝わった様であり、手元でサン・フォースと呼ばれた道具をくるくる回し始める。

 

 「質問、その本題に入るわ。ギンジ、貴方はルカ、アタシの親友に協力してくれているのよね?全部見てたし、知っているわ」

 

 どうしてそれを知っているのかは不明だが、アキハはギンジの答えが帰ってくる前にもう一つ付け足す。

 

 「単刀直入に言うわ。力を貸してくださらない?」

 「質問っていうか、そりゃお願いに近くないか?」

 「あら、いちいち細かい事を気にするのかしら?」

 「・・・力を貸すのは構わないぜ。っていうか今にも、上に戻ってもう一回暴れてやろうと思ってたからよ」

 

 お願いをされて、ギンジは簡単に首を縦に振る。その行動には一切の迷いが無く、ためらいなんてものも無かった。

 

 友達の為に戦う事に協力を申し出たのだから、ルカを知っているアキハの頼みを断るわけもない。

 

 「貴方・・・アタシの変わりに、ムーン・パラディースになる気は無い?ちょうど男子メンバーが欲しいと思ってたのよ」

 「それは無理だな。俺にはヘヴンホワイティネスっていう本業があるからよ」

 

 アキハの提案は簡単に断られてしまったが、ギンジの返答に納得をしたのか鼻を鳴らす。

 

 「そう。それじゃあ、そのサン・フォース・・・元に戻してくれたら、アタシの貴方に力を貸すわ。もうアタシ一人じゃ同仕様も出来ないし・・・」

 「なぁ、元に戻ったらなんかあるのか?」

 「そのムーン・フォースは、本来の力である、変身能力に加えて、持ち主の気持ちに答えてもう一つ能力を付け足してくれるのよ。人によるけど、武器を出したり、能力向上だったり様々だけどね」

 

 落ち着いた淡々とした口調だが、その声音は期待に満ち溢れている。

 

 「ふーん・・・でもこれって・・・何ていうか、正義の為の道具だろ?いわゆる変身スーツ的な。俺、こう見えても怪人なんだぜ。俺に使えるかな?」

 「問題ないわ。貴方が使えないとしても、ルカに手渡せば、彼女は有効活用してくれる筈だしね。それに・・・」

 

 少し言い淀みながらも、アキハはその見えない表情に陰りを見せる。

 

 「もうあの子が泣いている顔は見たくないのよ。一緒に戦ってくれる人が居なくなったルカは毎日辛そうに泣くのを我慢してる。アタシがもし一緒に居れば戦って上げることも出来たけど・・・」

 

 サン・アンフェールにいっぱい食わされ、アキハはルカを逃す為に自分が殺された事を話してた。

 

 仲間をここまで追い詰めた敵を倒すために、アキハはムーン・フォース(自分)を手に取る者が現れるのを待っていた。

 

 心だけになってできる事は、幽体離脱みたいに町の様子を探る事だけ。

 

 そしてアキハは、まだ生き残っている仲間が無念に飲まれて、酷い想いを味合わされている事を、良しとしていない。自分も同じ様に、悔しさで心が張り裂けそうになっていた。

 

 「アキハは、ルカが好きなんだな!」

 「・・・そうね、大好きよ。真面目で真っ直ぐで、自分よりも他人を優先して、動こける彼女を見て、アタシは成長出来たのだし」

 

 かつて共に戦う時は、合理的でないと動けなかったアキハを、精神的に支えてくれた仲間が月島ルカであった。

 

 彼女に助けられた恩は非常に大きいのに、何も出来なくなってしまった自分が悔しくてしょうがない。

 

 「そういう事なら任せとけ!こーゆーのに詳しい奴が一人居るんだ。そいつに頼めば・・・」

 

 ギンジが笑顔で話す傍ら、隣の部屋に強い衝撃音が鳴り響く。強い振動と、木製の壁や石材を叩き砕く轟音に、ギンジはびっくりする。

 

 「び、ビビってねーし」

 「あ、アタシも驚いてなんかいないわ・・・」

 

 二人してこの轟音にビビってたのは間違いないが、出口の見えないこの部屋の壁に大きな亀裂が入り、それらがガラガラと崩れていく。

 

 奥の部屋に見えるのは、瓦礫の身体を埋めながらも、顔をひしゃげた猫みたいな怪物が意識を失っていた。

 

 「ガット・・・!?」

 

 強敵である幹部・ガット。こいつのせいで仲間は崩壊していったのを、アキハはよく覚えている。

 

 そんなガットここまでボコボコにするとは・・・。

 

 「カエデの奴、また派手にやったな・・・!」

 

 アキハの隣でギンジがニヤリと微笑む。悪辣にも見えるその笑顔に、アキハは衝撃が走った。

 

 「これ・・・貴方の知り合いが倒したの?」

 「おう。上で、俺たちを襲ってきたやつなんだけど、カエデっていう俺の仲間が、足止めを買ってくれてよ。んで、多分カエデがこれをやった」

 

 さも当然みたいな言い回しに、アキハはこのチャンスを佐久間ギンジという男に託して良いと確信する。

 

 ガットとて決して弱い幹部ではないし、なんだったらかなり強い部類である事を覚えている。

 

 それをこんな形で倒せる仲間が居るとは・・・。

 

 「それじゃあ、アキハ。お前のお願い、俺たちヘヴンホワイティネスが請け負ったぜ!さっさと仲間に合流だ!」

 

 サン・フォースを回しながら、ギンジは瓦礫を飛び越えて上の階層へと飛び出す。

 

 「ブヒ・・・今何が落ちてきた・・・」

 

 オーク怪人、ミヤコ、ミドリコが進軍する中、真上からものすごい勢いを伴って落ちてきた何かの大穴を覗き込み、生唾をごくりと飲み込むオーク怪人。

 

 「上の戦いも激化しているようだな。ギンジ達が心配だ、私達も急ごう」

 

 ミドリコの言葉にうなずき、ミヤコとオーク怪人は先に進もうとするが、ミヤコがその脚を止める。

 

 「どうかされましたか、ドクター」

 「くふふふふ・・・来るよ」

 

 大穴を避けながら進もうとするオーク怪人とミドリコの後ろで、ミヤコはひたすら愛のある視線を大穴に向けている。

 

 ミヤコの本能だろうか、そこにギンジが居て、もうすぐ来るというのを心が感じている。

 

 「よっ、ほっ、とう!」

 「来たあああああ〜〜!!!」

 

 大穴からは羽を出しながら、ギンジが瓦礫を蹴りながら飛んできた。

 

 宮殿の下層に戻ってきたギンジはミヤコの絶叫に驚き、同じく声に驚いたミドリコとオーク怪人がギンジの登場に歓喜している。

 

 「あれ?ミヤコじゃん。ミドリコとオークも・・・。珍しい組み合わせだな」

 「貴様はこんな所で何をしているんだ」

 

 オーク怪人が詰めよりながら言葉を放ち、ミヤコもくふくふと笑っており、ミドリコは周囲を警戒しながらもギンジに近寄る。

 

 「無事だったんだな。月島君は?」

 「悪い、その話は後だ。ミヤコ、頼みたい事があるんだけど・・・」

 「わたしに?いいよ、なんでも言って!あ、脱ぐ?」

 「脱ぐな!」

 

 ミヤコの小ボケに付き合っている場合ではない。

 

 「これ、ミヤコなら中身を解析して、元に戻す事できるか?」

 

 ギンジがミヤコに見せたのは、サン・フォース。

 

 サン・アンフェールの幹部連中が持っていた、強化アイテムだ。

 

 「どうしてギンジがこれを・・・?」

 

 オーク怪人は訝しむ表情をしているが、特段何か警戒している訳でもない。ギンジが幹部を倒した可能性があるからという信頼も込められているのもあるからだろうが。

 

 「この中にアキハってやつが・・・」

 (無駄よ。アタシの存在はこの世の人には伝わらないのよ)

 「・・・?なんて?あ、ちょっと待っててくれ」

 

 オーク怪人、ミヤコ、ミドリコから少し離れて、ギンジは再びアキハと会話を始める。

 

 (普通、心だけの存在が、人と話せる訳無いでしょう)

 「いやお前は俺と会話出来てるじゃんかさ」

 (そうね、何か不思議だけど貴方とは会話できるみたいなのよ。よくわからないけど、話が混乱しそうだから、適当にごまかしてムーン・フォースが取り戻せるようにしてちょうだい)

 「・・・解った」

 

 アキハは既に殺されて、心だけがこのサン・フォースに取り憑いている。幽霊みたいな存在になってしまったが故に、誰とも意思疎通が出来ないのだが、何故かギンジとコンタクトしてみたら上手く行ったので、このまま事を上手く運んで来た。

 

 「悪い、待たせた。えーと、ミヤコ。ここに研究室とかあったかな?」

 「おかえりギンジ君。えーと、何かあったの?」

 「ミヤコにしか出来ない事があるんだ。確実じゃないが、このサン・フォースを、ムーン・フォースに戻して欲しいんだが、できるか?」

 「・・・機材が整っていれば、改造から元に戻す事は出来るかもしれないけど、何かあったのかな?」

 

 ミヤコは笑顔のままだが、怪人の左目が、サン・フォースを視界に入ることで、少しだけ殺意が浮かび上がる。

 

 これは敵であったサン・アンフェールの改造した道具。できれば破壊しておきたいのが、元ヘルブラッククロス二人の意見にも近い態度。

 

 ミドリコはコレの存在をまともに知らない為、ギンジが言うならと研究室を探そうとしている。

 

 「ギンジ、こいつに聴いてみるのはどうだろうか?」

 

 オーク怪人が手に掴んだのは、倒れた兵隊の一人。

 

 「じ、自分ただの下っ端でしゅ!暴力反対!」

 

 そんな兵隊の眉間には、ミドリコの拳銃とギンジの金棒が構えられる。

 

 「研究室はどこかにあるのかな?くふふ、早く答えないと、大変な事になりそうだね〜くふふふ」

 

 幹部であるチョトツを倒したオーク怪人と、親しげにしているギンジと言う金棒マンに、容赦なく拳銃を引き抜いた女に、兵隊はもういっそ気絶したいとさえ思い始めていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 兵隊を一人脅して、ギンジ達はサン・アンフェールの研究室へと脚を運ぶ。

 

 正直、こんな事で時間を使っている暇はない。早くルカの元に合流しないと行けないのだから。

 

 焦るわけではないが、なるべく早く戻ってあげたい。

 

 「くふふふ・・・これはなかなか高密度な改造を施されているね。時間がかかりそうだよ」

 

 サン・フォースを解析装置に置いたミヤコが、楽しそうにそんな事を喋るが、ギンジからしてみれば何も楽しい事ではない。

 

 「心配そうな顔をしないでよ、時間がかかるのはわたしでなければ、だよ。わたしは天才だよ。こんなモノ、ギンジ君の寝込みを襲うぐらい簡単だよ」

 「・・・襲うな」

 

 真面目な顔で注意するミドリコに、ミヤコは舌を出して可愛く反応する。

 

 そのままミヤコは解析装置と、ミヤコの解析装置、それから様々な機材をたくさん持ち出し、サン・フォースの改造返しを開始する。

 

 「ドクターにまかせておけば何も問題は無い。ギンジ、解っているな?」

 「そりゃあそうだろうな。俺もミヤコならこれを出来ると思って探していたしな」

 

 アキハの無念を知ったギンジなりに、この行動を行うしかないと思っている。

 

 「くふふふ。陽の奴らの科学力なんて、こんなモノかな」

 

 得意げに笑いながら、ミヤコは改造返しを終えている。

 

 (あら、速いわね。アタシの専属ドクターになってほしいわ)

 (やめとけ。そいつは結構狂ってるから)※目線で会話してます

 

 

 アキハの感想に、ギンジが返し、ミヤコの下へと近づいていく。

 

 「はい、終わったよ、ギンジ君。色々と追加機能も追加してあるけど、きっとあのお月ちゃんも使えるかも?あ、でもギンジ君に使ってほしいな〜」

 「ありがとうな!これでアキハも無念から救われるはずだぜ」

 

 アキハという名前にミヤコが反応するが、ギンジの感謝と笑顔を見ればそんな事はどうでもよくなる。

 

 「よっしゃ!後はカエデ達と合流して、タイヨーズをぶっ飛ばしに行くぜ!」

 

 ギンジの言葉に反応してムーン・フォース改が、大きな月光を出していく。それはギンジの手元から布の様に多い被さり、身体を包み込んでいった。

 

 (あら・・・なによこれ)

 「うおおお!?ミヤコ何しやがった!?」

 

 驚くアキハとギンジに、ミドリコとオーク怪人は、まるでヘヴンホワイティネスの変身みたく身体を光らせるギンジを見て、ミヤコの天才さを改め確認した。

 

 「ミヤコ、君はいったい何をしたんだ!?」

 「くふふ。悪い事はしてないよ。わたしはギンジ君の為になることしかしてないからね・・・」

 「ブヒ。流石ですドクター・・・そしてギンジよ、ドクターに貰ったその力、思う存分、ドクターの為に振るえ!」

 

 換装が終わると、ギンジの身体には黒い満月のマークをつけた小さなマント、サングラスと融合したバイザー、黒をメインとした深緑色のカラーリングの戦闘スーツ。

 

 天体アキハのムーン・フォースは、ミヤコの介してギンジの新たな力へと変貌を遂げた。

 

 (へぇ・・・悪くはないわね。この新たなムーン・フォース。貴方の身体に合わせてピッタリじゃない。この力でルカを助けてあげてちょうだい・・・)

 

 アキハもこれには驚いている、。本当はルカに使ってほしかったが、疎通が出来ない以上は、ギンジと心を繋げた方が理にかなっているのかもしれない。

 

 (それじゃあ、頼んだわよ。11人目のムーン・パラディース)

 

 アキハの言葉が脳内を駆け巡り、ギンジは新しく自分の心に宿る力を感じて、拳を握る。

 

 「ようやくギンジにも変身スーツが・・・」

 

 ミドリコの言葉に我に還るギンジ。

 

 「いやいや待て待て!色々追いつかないって!なんでこんな事になったんだ!そもそもこれは俺の使うモノじゃなかったんだぞ!」

 

 ミヤコの暴走かと思ってしまったが、これは間違いなくルカの為に返そうとしていた力、天体アキハのムーン・フォースなのだが、どういうわけか、ギンジに反応してしまった。

 

 「くふふふ・・・怪人と正義の魅惑のコラボレーション・・・どんなモノでも自身の糧にする、進化の怪人の能力だね・・・ああ、わたしはやはり天才!怪人には本来毒となる善なる力を、無害でギンジ君につけられるなんて!くふふ・・・くふふふふふふ」

 

 高笑いするミヤコへ、オークは紙吹雪を舞わせる。

 

 ミドリコも変身スーツを羨ましそうに眺めるが、ギンジは気が気じゃない。

 

 (いいじゃないギンジ。この力、存分に使って頂戴。そして・・・)

 

 ルカを助ける。どんな姿になっても、ギンジとアキハの願いは変わらない。

 

 ここまで来たらもう何がなんでもルカを助けて、そして勝とう。

 

 「・・・しょうがねぇな!やってやらぁ!ヘヴンホワイティネスは休業!」

 

 変わりに・・・。

 

 「なってやるよ!ムーン・パラディースにな!」

 

 金棒を取り出して、もう一つムーン・フォースに宿る力を取り出す。

 

 鍔の無い軽い刀を胸から取り出す。

 

 引き抜いて現れたソレは、ドスと呼ばれる形状をした刀。

 

 月光に輝き、刀身は美しく煌めいた月をイメージさせる薄く透明な刃、長くて強い立派な武器である。

 

 持っているだけで正義の志が流れ込んでくる様な、胸に熱い気持ちがこみ上げる新たな力。

 

 「・・・よし、やるぞ」

 

 バーナー、コウモリ、進化、赤鬼、ムーン・フォース。

 

 それぞれの力を持ったギンジは、仲間を引き連れ研究室を後にした。

 

 上へと進みながら、サクラ、レイナと、カエデとレンに合流も果たした。

 

 最初はこんな姿になったギンジに驚いた面々だが、事情を説明しいてからは皆納得してくれた。

 

 新しい力を持ったギンジへ、皆が賞賛してくれたし、カエデもレンも驚いてはいるものの、変身スーツを入手して、ようやくヘヴンホワイティネスとしての活動形態がちゃんと定まった様な気もする。

 

 11人目のムーン・パラディースとなったギンジは、今度こそルカの為に自分の力を振るう。悪から彼女を助ける為に。

 

 最上層のタイヨーズの部屋が見えるなり、ギンジが真っ先に突き進む。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 経緯を聴いてルカは衝撃が走る。

 

 今目の前に居る男は佐久間ギンジで、ムーン・パラディースになったという。

 

 「あたしも正直意味が解らなかったけど、それでもあれは間違いなく、ギンジの意思よ。あいつは自分の意思で、こうなることを選んだの」

 

 カエデの肩を借りながらルカは立ち上がる。

 

 ギンジの意思とは言え、こうなったとはルカは愚かカエデ達にも予想が付かなかった。

 

 「ムーン・パラディースの無念も、この戦いの重さも、ルカの正義も、全部俺が背負ってやる。俺を信じて、待っててくれ。アキハもそう言ってるぜ」

 「・・・ッ!」

 

 天体アキハ・・・ルカの親友である彼女の名前を聴いて、ルカは涙が溢れてくる。

 

 詳しく聴きたい事がたくさんあるのだが、今は目の前にいるタイヨーズを倒すことが先だ。

 

 「今からこの宮殿ぶっ壊すからよ、皆避難でよろしく!」

 「やることが悪役のソレね。いいけど」

 

 ギンジとカエデの会話が終わると、すぐにカエデは壁を破壊して、脱出の道を作る。

 

 「後は、頼んだよ、ギンジ」

 「必ず勝ってくれよ!」

 

 レンとミドリコが声援を送ると、その後にサクラとレイナがギンジにエールを送る。

 

 「外で待ってるからね!」

 「・・・どうか無事でいてくれ」

 

 元気な応援と、心配する声。

 

 ギンジの強さは知ってるが、それでも心配になってしまう。カエデも同じだが、信用の度合いが違うのか、「必ず勝つでしょ、ギンジなら」その具合である。

 

 「本気で暴れまわるギンジ君を見てみたいな〜」

 「駄目です、ドクター。今回ばかりは、おとなしくしましょう」

 「くふふ・・・わたしの改造返し、上手く扱ってね、ギンジ君」

 

 そこに続いてオーク怪人とミヤコも壁の穴へと近づく。

 

 「ルカ・・・?」

 

 カエデが人数を確認して飛び出そうとするが、ルカを見てカエデは脚を止めた。

 

 「・・・僕は残る」

 

 ルカはムーン・パラディースとしてこの戦いに来ている。仲間意識が無いわけでなく、己の覚悟を持ってここに居るのだ。

 

 だから・・・。

 

 「僕は、自分の正義の為にここに残る。佐久間君の言うことも解るし、君たちの言うことも解る。敵の言うこともね」

 

 変身したままの状態でルカは、頬を流れる涙を拭き取る。

 

 「このまま、僕だけなにもしないでここから離れるなんて、そんなの嫌だ!」

 「ほう・・・戦士の心得はあるようだ」

 

 ルカの言葉に、オーク怪人が感心した様な表情を送る。

 

 「ならば、ヘヴンホワイティネスよ。ここのしんがりは私が引き受けた」

 

 一流の戦士である事を自負するオーク怪人っが、ミヤコを置いてこの場所に残る事を買って出る。

 

 「ちょ、何勝手な事言ってるのよ!」

 

 そんなオーク怪人に、カエデが怒りながら顔を近づける。

 

 「皆して残りたいとかは任せるけどよー・・・マジで見境なくやるつもりだから、気をつけろよ!」

 

 そろそろ交戦を開始しようと、ギンジとタイヨーズが構えを取り始める。

 

 「カエデ・・・」

 

 口論を開始しようとしているカエデへ、レンが話しかけてくる。

 

 「ここから先、一度宮殿から離れるなら、私達は降りるよ。指揮は私が取るから、カエデもここに残って」

 「え・・・」

 「こっちは大丈夫だ。カエデ」

 

 レンとミドリコが親指を立てて、穴の開いた壁の外側へと身体を向ける。

 

 「降りる人は決まったかな?それじゃあ、私の魔法で、どかんと行くよ〜!」

 

 サクラが魔法を唱えて、レイナ、レン、ミドリコ、ミヤコを浮かばせて、一緒に脱出する。

 

 去り際までミヤコはオーク怪人を見つめて、オーク怪人はそんなミヤコへ敬礼を取る。

 

 「さーてそれじゃあ」

 「ブヒ。あいつの戦いだ。邪魔はしてやるなよ」

 「あんたこそ、同じ悪の癖に、いきなり裏切ったりしないでよ」

 

 お互いの距離感は遠く、かなり険悪気味な空気だ。

 

 「佐久間君、君が戦うと言ったが・・・この戦い、最後(倒れる)まで、僕も行かせて欲しい」

 

 ギンジの隣に立ったルカは、自分の気持ちに従った行動を取った。

 

 「・・・解った。なら、とことん戦おうぜ。俺たちはムーン・パラディースだからな」

 

 一時的とは言え、ムーン・パラディースになぅったギンジは、ルカの宿敵であるタイヨーズへと向き直った。

 

 「ギンジ!頑張って!」

 「行け、貴様が、月光の者が戦士になれるか見届けてやる!」

 

 二人の後ろではカエデとオーク怪人がそれぞれに、応援を取ると戦闘に巻き込まれないように、離れておく。

 

 「終わったかザコ共・・・それでは、死ね」

 「ザコはお前だろおじーちゃん。最強の技とか言いながら、全く俺は効いてないぜ」

 「愚か者め・・・その減らず口ごと、陽の光に滅っしてくれる!」

 

 もう人任せにはしない。ここまで来て逃げるわけにも行かない。

 

 ここまで繋いでくれた仲間の無念を晴らすために、月島ルカは最大限の力で月光線を解き放つ。

 

 タイヨーズもそれと同じく陽光線を放ち、お互いの光線がぶつかる。

 

 「お前らの様な、なんでもかんでも食い潰そうとする奴らは、俺たちがぶっ潰してやるよ!オラ、覚悟しな!」

 (ギンジ・・・ルカをお願いするわ。月光刀の力、思い知らせてあげなさい!)

 

 ギンジもルカの攻撃に続き、金棒と月光刀の二つを大きく振り上げて、タイヨーズに突撃する。

 

 このスーツにおける能力はおそらく、天体アキハのスーツと同じ能力である事を、身に包んだギンジ本人がなんとなくだが感じ取っている。

 

 この善に満ちた能力、ギンジの炎と雷の怪人の力とは合わせて発動するのは、不可能な様だが金棒だけは操れる。

 

 「行くぞオラ!」

 

 光線を押し合いながら身動きの取れないタイヨーズへと、ギンジの攻撃が迫る。鬼機せまる迫力と、タイヨーズが嫌う月光を宿した長ドスが振り下ろされる。

 

 「ふん・・・強者の陽撃(サン・アンフェール)

 

 ギンジを落とした陽の塊が、月光線を片手で抑えながら発動される。例え目の前にそんなモノが再び来ようと、ギンジはもとよりこんな攻撃に遅れを取るつもりは無い。

 

 金棒でぶっ叩き、月光刀で一刀両断。そこからさらに空間を踏み込む要領で満月の足場が一瞬浮かび上がり、それらを踏みながらタイヨーズまで肉薄する。

 

 「よう!まだ俺は止められないか?」

 「ギンジ!やってくれ!」

 

 ルカの言葉にギンジは口角を上げて、二つの武器を振るう。

 

 「貴様らっ!」

 「よそ見するな、タイヨーズ!」

 

 ギンジを見て一瞬の油断を招き、ルカの月光線がタイヨーズの光線を正面から打ち破り、陽の防御が崩された。

 

 そこへギンジの金棒による想像しているよりも深く重い一撃、そして長ドス・月光刀による連続攻撃。

 

 打撃に飛び退くタイヨーズへと振り出された、月光色の斬撃がタイヨーズへと勢い強く飛んでいく。

 

 「月光飛斬(ブラストキャリバー)・・・」

 

 アキハの使う技をギンジが完璧にモノにし、しかもその威力はアキハよりも大きい。

 

 このまま攻勢を崩さずに、ルカもギンジの後隙をカバーしに入る。

 

 「ムーン・フィスト!」

 

 斬撃に斬られて、身動きが取れないタイヨーズへと、今度はルカが月光の拳を叩きこみタイヨーズを吹き飛ばす。

 

 「おのれっ・・・ザコ共めが!」

 

 悪の組織のボスとして、押されるのはマズイと、タイヨーズは反撃の陽の力を解き放つ。その力はすぐにギンジとルカを浮かし、空中に舞う二人へ、指先が向けられていた。

 

 「燃えろ!絶対強者の陽牙(サン・アンドレアル)!」

 

 鋭いトラの形をした陽が、牙を燃やしながらギンジとルカへと噛み砕きにかかる。二人してそれに噛まれるが、中からギンジが上顎を破壊して、喉からはルカがムーン・カッターで突き破って脱出している。

 

 「舐めんなよ・・・」

 

 上に飛び出たギンジは金棒で天井をぶち壊して、その反動の勢いを利用してタイヨーズへと突っ込んでいく。

 

 同じくルカも床に着地してからタイヨーズへと振り返りながら、次の攻撃の準備を整えて、攻撃を開始する。

 

 「いちいち破壊しないと気がすまないのか、貴様らは」

 「敵の本拠地はぶっ壊して行くのが基本って、教わったからな」

 「地獄(ヘルブラッククロス)の基準をここに持ち出すな」

 

 タイヨーズの言葉に、ギンジが反応する。足元を斬り崩し、金棒で瓦礫をかっ飛ばす。

 

 「言ったろ?見境なくぶっ壊すってよぉ!」

 

 さらに怪人の腕力とムーン・パラディースの強化による二つの力を同時に振るい、床に長ドスと金棒を叩きつけて行くと、ギンジからタイヨーズへと破壊のエネルギーが床を砕きながら走り出す。

 

 その破壊の一撃は、カエデとオーク怪人の居るところまで届き、ギンジを中心として壁や、まだ壊れていない天井まで壊れていく。

 

 「おのれ・・・我が太陽の宮殿を・・・!」

 「どれだけテメぇらが強かろうと、ムーン・パラディースには勝てないぜ。なんせ俺という最強の11人目が出来たからな・・・」

 

 タイヨーズが落ちてくる瓦礫を燃やして難を逃れると、その正面にはギンジの姿があり、今まさに武器を振るおうと襲いかかって来ていた。しかし余裕の表情を見せてタイヨーズが両手を開くと、ギンジは陽の光の爆発に飲まれる。

 

 「愚か者め・・・!」

 「愚かは・・・お前だぁぁ!!」

 「!?」

 

 タイヨーズの背後、さらに足元・・・。

 

 ルカが両手に月の力を込めて、最大の大技を放とうと、準備が完了していた。ギンジは囮であり、ルカのこの技が本命。

 

 その構図を描かれ、タイヨーズは初めてムーン・パラディースを相手に冷や汗をかく。

 

 しかし油断していてもこの程度、容易に対処可能である。

 

 そもそもムーン・パラディースとサン・アンフェールとでは、実力の差が違うのだから・・・。

 

 「いつまでも自分が敗けるとは思ってない、って顔してんな?」

 「貴様・・・!?」

 

 悪の大ボス、その背後にはギンジが金棒を首に回して、羽交い締めにしている。

 

 まだギンジは倒れていない。それどころか、まだまだ余力がある様子だった。

 

 「流石ね・・・」

 「ブヒ。ギンジならあの程度、普通以下だろうな」

 

 崩れゆく石柱に腰掛け、カエデとオーク怪人はギンジのさらなる活躍に期待の視線を送る。

 

 カエデは戦いにおいても、人としても尊敬が出来る様なそんな視線。

 

 オーク怪人はこの戦いにおけるギンジの成長と新たな能力に、感動すら覚える。

 

 「ぬぐ・・・貴様、離せ!」

 「暴れんな!今だぜ・・・やっちまえルカ!」

 (ルカ・・・決めなさい!)

 

 ギンジの言葉に続きアキハも叫ぶ。その言葉が伝わらなくとも、その想いは伝える。

 

 「はぁぁぁ〜・・・!」

 

 両手の月の力を発動。その両方の月と善の力は、かつてない程のルカの全身に回り、拳とスーツを強化する。

 

 確実の悪を葬る。その気持ちがこもった、ルカの全てを込めた願いの大技はタイヨーズの身体に深く刺さり、更に輝く月光が炸裂する。

 

 この一撃により、その月光の衝撃は部屋全体へと響き、とうとう宮殿の最上層は破壊されて行った。

 

 そんな破壊の中心で、ルカとタイヨーズはお互いに睨み合っている。

 

 「タイヨーズ!ここで最後にしよう!僕は、僕達は、必ずお前に勝つ!」

 「小賢しい!弱者は弱者らしく、強者に喰われろ!お前以外のザコはそうやって歯向かったから喰われて行ったのだろう?」

 

 ザコ・・・。その言葉はルカの心を強く傷つけ、そして強い憤りを、そして仲間の無念を思い出させる。

 

 「佐久間君・・・ありがとう、後は、僕にまかせて・・・」

 (ルカ・・・!)

 

 怒りに震えた声でギンジに告げると、ギンジは変身を解く。その手元にあるムーンフォースをルカに捧げると、光の粒となり、ルカの心へと入り込んでいく。

 

 「返すぜ。『有効活用、しなさいよ』、って言ってたぜ。必ず勝てよ」

 「・・・ありがとう」

 

 

 月の一撃で動けないタイヨーズから離れて、ギンジは瓦礫を蹴りながら、そして飛びながらカエデへと近づく。

 

 「もういいの?」

 「ああ、まだ終わりじゃないけど、俺のムーン・パラディースとしての活動は終わり!こっからはまたヘヴンホワイティネスに戻って・・・」

 

 ギンジはカエデを抱きかかえて、飛ぶ準備を始める。その傍らでルカを見つめる。

 

 「最後の戦い、本当の最後の真の最終ラウンド・最終回って感じだな」

 「意味わかんない事言ってんじゃないわよ!早く飛びなさい!」

 「はいはい」

 「ブヒ。私は飛べないのだが」

 「おめーは自分でどうにかしろ!」

 「フン。扱い方が解ってきたじゃないか。ドクターみたいだ」

 「ミヤコはこんなんじゃねーやい!」

 

 次なる月光の衝撃が飛び、宮殿はさらなる破壊が広がる。

 

 破壊に巻き込まれないように、ギンジとカエデ、オーク怪人はレン達の待つ外へと降りる。

 

 「大月光・狩花(カリフラワー)!」

 「ぬぐおっ」

 

 ルカに流れ込んだもう一つのムーン・フォースが、さらなる力を与えて、ルカの大技を強化していく。

 

 タイヨーズを上空へと強く吹き飛ばし、ルカも満月板を踏み込みながら追いかける。

 

 天体アキハの力を持ち、月島ルカとして、正義の為に、最後まで力を振るう。

 

 宮殿を突き出て、タイヨーズは陽の力を最大限に発動する。それを追いかけたルカは、アキハとギンジが操っていた長ドスを取り出す。

 

 「何故理解出来ん!力のある者こそ、弱者を侍らせてこの世界を統べる事が出来る!ザコはザコらしく・・・」

 「そのザコというのは・・・僕たちの仲間の事か・・・」

 

 天体アキハ、宇宙ナズナ、星カナミ、銀河シズハ・・・。

 

 惑正サリュウ、望遠ミヅキ、通過リサ、黒点ハスミ、間際クレア。

 

 彼女達の名前を一人ひとり呟く。ムーン・パラディースの仲間達の名前を。

 

 「ああ〜・・・そんな名前だったな。生きてる事だけでも恥ずべきザコ達の名前がどうかしたか?」

 「お前えええええぇぇぇッ!!!!」

 

 限界を超えた怒りでルカは叫んだ。

 

 「あんなザコに思い入れするとは、認めてきた矢先にがっかりさせてくれるな。この世は弱肉強食。強い者だけが生きるのさ・・・」

 

 陽撃を一つに集束させて、対峙するルカへと、先程よりも大きい陽光線を解き放つ。

 

 ルカも自分のムーンフォースと、アキハのムーンフォースの力を解き放ち、大月光線を解き放つ。

 

 上空で繰り広げられる光線同士のぶつかり合いを、ギンジ達は地上から眺める。

 

 「大丈夫だ・・・行け、ルカ!」

 

 ギンジが呟く。 

 

 「頑張れ!ルカ!」

 

 同じ正義のヒーローとして、カエデが声を上げる。 

 

 「ルカ、貴女なら勝てる」

 

 レンも同じく、正義の志を持つ同士として伝える。

 

 「全力で行くんだ、月島君!」

 

 ミドリコが月光をその眼に焼き付けて、ルカを激励する。

 

 「ルカちゃんなら絶対に勝てる!」

 

 サクラも杖を上げて大声で応援する。

 

 「ムーン・パラディース・・・勝て!」

 

 退魔警察として、同じ正義の使者としてレイナもルカを応援する。

 

 「くふふふ・・・勝敗は興味無いけど、これはお月さまが勝ちそう」

 

 ミヤコにも思う所があるのか、興味が無いと言いつつも、どこかその表情、その瞳には希望が宿っている。

 

 「ブヒ。ここまで来たのだ。戦士として、行け!」

 

 正義や悪としてではなく、一流の戦士としてオーク怪人も強く握り拳を作る。

 

 「クハハハハ!下でも愚か者共が何か叫んでるぞ!」

 「皆・・・!」

 

 ルカの光線が押され、再び劣勢に追い込まれる。光線のぶつかり合いは、タイヨーズの方が有利な様子だったが、そんなルカの背中から、今は亡き友・・・仲間の手が添えられる。

 

 確かな実体を持ち、ルカを押してくれている。

 

 「ルカ・・・今までごめんなさい。ずっと貴女の側に居てあげられなくて。ここからは、これからも、一緒に戦うから・・・!」

 「アキハ・・・ああぁ、ああ、ありがとう・・・!」

 

 姿は見えなくても、そこに居るのは、そして聞こえた声は、間違いなく天体アキハの声と手。

 

 「ずっと一緒に居るから。必ず、皆の仇を取るのよ。行きなさい、ムーン・パラディース!勝ちなさい、月島ルカ!」

 

 アキハの心が、ルカの心へ勇気と力を希望に変換して、より強く月光線を大きくしていく。

 

 その大きい光線はより規模を増してタイヨーズの光線をじわじわと押し返す。

 

 「僕の仲間は誰一人としてザコなんかじゃない、道具でもない、ただ嬲られるだけの奴隷でもない・・・他人を大切に出来ない愚か者が、力の有る無しで価値を決めつけるなんて、あっちゃいけないんだ!」 

 

 光線は更に勢いを増す。

 

 「なんだ・・・この力は・・・!?」

 「お前の様な、自分勝手で、暴力でしか人を従わせられない奴は・・・僕は・・・大っ嫌いだぁぁぁぁ!!!」

 

 そのルカの叫びを皮切りに、大月光線が陽光線を更に強く押し返していく。

 

 光線がぶつかるそれは、どんどん陽光線を小さくしていき、タイヨーズに迫り来る。

 

 「なんだ・・・なんだコレはぁ!??!?」

 

 ありえない。ザコと罵っていたこんな奴に、自分が敗ける等。

 

 ありえない。ありえない。有るはずが無い。

 

 自分の野望を成し遂げられず、ザコに敗ける等。

 

 あって良いはずがない。そのプライドを押しつぶされ、もう目の前は月光に覆い尽くされていた。

 

 「消えろ!偽りの陽光よ!はああああああ!!!!」

 

 月光がタイヨーズを押し込み、その光の本流に陽光ごと巻き込んで行く。力押しが終わり、月光の放出を止めると、タイヨーズが漂う空中では、一瞬遅れて大爆発を起こす。

 

 中心にタイヨーズを残し、煙による輪を残し、タイヨーズは崩れた宮殿の外側へと落ちていく。

 

 「馬鹿な・・・こんな事が・・・!?」

 

 いいやまだだ。まだ陽の力が宮殿にある。

 

 「陽の力があれば・・・まだ、サン・アンフェールは・・・」

 「よう、どこに行こうってんだ」

 

 這いずってでも宮殿に戻ろうとしたタイヨーズの背後には、ヘヴンホワイティネスとそれに協力した面々が勢揃いしていた。

 

 「このごに及んで、まだ悪事を働こうってんじゃあるめぇな!」

 

 ギンジの恫喝に、いよいよビビリ倒すが、まだ兵隊が居るはず。

 

 それら兵隊を呼ぼうとするも、次の瞬間には兵隊達が雨の様に振ってくる。

 

 「お探しのモノはこれかしら?」

 

 カエデの悪戯な笑みにさらに萎縮し、サクラの魔法で兵隊達がタイヨーズに落とされていく。

 

 「では・・・逮捕だな」

 

 公安警察と退魔警察が手錠を取り出すと、いよいよ観念したのか、タイヨーズはおとなしくなった。

 

 この大勝負は、ムーン・パラディースの勝利となり、この世界にまた一つの悪が滅びたのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 崩れた宮殿の中、タイヨーズの王座があった場所で、ルカはかつてアキハのモノだったムーン・フォースを両手に出して、アキハの残留思念・・・心と対話をする。

 

 「ごめん・・・アキハ」

 

 ルカの謝罪は辛く、重い言葉だった。

 

 自分を逃してくれたのに、助けてあげられなくて、そうして死んだ彼女をまともに弔う事も出来なくて。

 

 ごめんじゃ足りない。なのに、アキハは自分が来る事を信じてくれて、更にはギンジにも力を貸して・・・最後には、不甲斐ない自分にも力を貸してくれた。

 

 (謝らなくていいのよ。アタシも、貴女の為に最後まで一緒に居てあげられなくてごめんなさいね。ちゃんと最後まで戦えなかったし・・・貴女を一人にさせて・・・)

 

 アキハの声がどんどん細く、弱々しくなってくる。

 

 ともあれ仲間と共に悲願を達成出来たのだ。ルカはアキハ(ムーン・フォース)を抱きしめる様に胸に手繰り寄せる。

 

 アキハの心も、膝から崩れて涙を流す彼女を優しく抱きしめる。

 

 (これからは・・・ずっと一緒にいるから・・・ごめんね、ごめん・・・ルカ)

 「ありがとう・・・ありがとう・・・」

 

 悲願達成の涙か、それとも友の為の涙か・・・。

 

 あふれる熱い想いを今は、悪を成敗した正義のヒーローではなく、友達であり、仲間であり、人間であるモノとして、アキハと共に分かち合うのであった。

 

 「アキハ・・・」

 「・・・ルカ」

 

 二人の少女の涙は、満月の空の下、大粒の雫となり流れて行った。

 

 悲痛、苦痛、苦悶、絶望、離脱、別れ・・・。

 

 様々なモノをその心に取り込みながらも戦い続けたルカは、耐えきれず溢れ出る涙と共にここ数年の戦いを思い出していく。

 

 風に煽られた涙が天に舞い、それは仲間一人ひとりの無念を乗せて、本当の意味で天国へと飛んでいく様に見えている。

 

 一先ずは彼女達が泣くのを、誰も止める者は居ない。

 

 後悔があっても幸せで、平和な町での暮らしがこれから待っているのだから。

 

 

 

続く

 

 

 




お疲れ様です。

今回でトータル40話!でも特に何か考えていたわけではない!

これからもこの物語をお楽しみください。

キャラネタ書きます

佐久間ギンジ
新たな力、ムーン・フォースを手に入れたけど、ルカに返した。
ムーン・パラディース11人目のメンバーになったけど、その日の内にヘヴンホワイティネスに戻った。ルカの正義の為に戦ったのは間違いじゃないと本気で思ってるし、ルカが勝った事で協力して良かったと思ってる。

神宮カエデ
何気にギンジにお姫様抱っこされたの二回目。今回は嬉しかったそうです。よかったねー

オーク怪人
ルカの戦いにおいて、戦士の気概を感じた。一流の戦士に近いモノがあるらしい。

鈴村ミヤコ
サン・フォースを改造返しして、ムーン・フォース改にした。ギンジの中にいる怪人の細胞に反応するように自分の血を少量いれたが、アキハに阻止された。

天体アキハ
改造されてもサン・フォースの中にずっと心だけ残っていた残留思念。
誰ともコンタクトを取れなかったが、この世の存在じゃないギンジとは初めて会話が出来た。
また、ルカの心に入る事で、彼女とも会話が可能となった。
落ち着いたお嬢さまだが、ルカの事が大好き。
生前ではルカがピンチになったら自分が救出するも油断して二人共大変な事に合う・・・っていう小説を書いており、色々とルカを性的な目で見ていた可能性はあるものの、長らく戦ってきた仲間としての信頼感は非常に大きい。ギンジの心は居心地が良いらしい。

月島ルカ
ムーン・パラディース最後の一人。ギンジ達のおかげで勝つ事が出来た。
アキハとの再開と、ギンジがアキハの力を持った事に驚いたが、それでも【仲間】がまだ居た事に大きな希望を持ったルカは、タイヨーズを撃破した。この悲願を達成した事で、彼女は現在大泣きしている。

タイヨーズ
サン・アンフェールのボス。弱肉強食をモットーに強くあろうとしていた善良な格闘家が、やがて世界の価値観を大きく変えて、暴力、特殊能力を用いて、悪の組織として動き始めた。ヘルブラッククロスの総統とはその頃から砂掛けをしあっている。
今回はルカに敗けた事で、まだ抵抗しようとしたがお縄についた。

ムーン・パラディース
10人からなる意対化市の真宵町を守る正義のヒーローだった組織。全員学生で、3人は死亡、3人は行方不明、4人生存(2人は入院、1人は引きこもり残り1人はルカ)という割と凄惨な状況だった。
今後はルカ1人での活動になることが決定している。

さてさて、次回でムーン・パラディース編は終わりとなります。もう少しだけ続くんじゃ。
まだまだヘヴンホワイティネスは続きます!最終回じゃないよ!

それでは、また次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。