アトラクションです
いやー土日休みって嬉しい!おかげで小説かけましたよにょほほ
ちなみに来週あたりにポケ○ン・スカバイ発売しますが、皆様はどちらを買いますか?
私はスカーレットにしようかなって。
ちなみに伏せ字にしているのはタグにつけていないからですぞ〜
今回のお話はそれなりに長くなってしまったので、適度に休憩を挟みながらご覧ください。
それではどうぞ!
アーケード街・異人町。
度重なる襲撃には何度か対応が出来ていた。
しかし今回は結界を打壊され、防衛に優秀であった結界の異人が重症を負ってしまう。
町の人々は凶悪な犯罪集団の登場によって混乱に陥り、例のヘルブラッククロスと呼ばれる者達がとうとう兵器と、怪人を引っ張り出して襲撃をしに、この町への侵入を許してしまった。
店を破壊されて悲しむ者。家族を傷つけられ怒る者。友を攫われて恐怖する者。
様々な襲撃の形に、戦えない人々は泣き叫ぶしかない。自分達が何をしたのだろうか。こんな事しないで欲しいと。
無慈悲にもその悪の手は今まさに、自分へと迫っていた。
迫っていた筈だった。
年端も行かぬ少女の目の前にいる顔の見えない戦闘員は、身体を曲げて町の遠くへと投げ飛ばされて居た。
「無事か!?早く逃げろ!」
サングラスをかけたその男は、メディアでよくみる子供達の憧れのヒーロー。
ヘヴンホワイティネス・ヘヴン3。
ギンジが叫ぶと、その子供はキリンの見た目をした謎の存在が抱きかかえて走り出す。
「げっ!まだ居たのかよ怪人コラ!その子を離せ!オイ!」
「オレは違う!怪人じゃない!この子を守るから、後ろに来てるのをお願いしたい!」
「ああ?」
キリンの叫び声に近い言葉を聴いて後ろを振り向くと、再び戦闘員の群れ。
「とりあえずキリンは後にしておいてやるよ。オラ、かかってこい」
金棒を振り回してコンクリートに打ち付ける。
その豪快な音を合図に、戦闘員達がギンジを倒そうと数で抑え込む。
1人ひとりを相手にしているのではらちが開かないのだが、圧倒的な数により、ギンジは戦闘員のドームに囲まれて飲まれていく。
「オッラアああ!!!」
ドームの内側から、黒い炎が吹き出しかと思えば、次は紫の雷が飛び出る。
そして最後は金棒を横に振り回して、ドーム完璧に破壊する。
「数だけはホントおおいよな」
苛立ちながら放つ言葉。ギンジは数だけでも対抗するために、フェーズ3の力を発動していた。
この力でとにかく町を襲うこいつらを全部、倒さねばならない。
戦闘員を軽くなぎ倒したギンジの横目には、赤と青のたてがみを持つ、馬面の双子と思わしき謎の存在が、建物の瓦礫をせっせと崩している。
「兄者!はやく助けないと」
「弟者!解っている!」
「どんだけ怪人が居るんだよ」
ギンジがゆらりと近づこうとすると、その馬の双子はギンジに気がつく。
「兄者!ヘヴンホワイティネスの1人だ!サインもらおうぜ」
「馬鹿者!今はそれどころじゃないだろ!」
「サイン?ほしいならやるよ、頭かちわってくれてやるよ!」
何故か憧れのヘヴンホワイティネスは血の気が多いらしく、かなり怒っているというか敵意を感じる。
「待つのだ!我々はこの瓦礫の下に居る子供を助けたいのだ!」
「・・・なんだって?」
怪人が子供を助ける?そんな善意のある怪人がいるとは、なんとも珍しい事なのだが、再び上空から、ジェットパックを身に着けた戦闘員が複数人降りてくる。
「こいつら、本当に数だけは・・・」
金棒を構えたギンジの背後から、二人の馬が飛び出す。
「お前らのせいで!」
「子供が危険な目に!」
『会ったんだぞ!!!』
双子らしく息のあった連携攻撃で、上級戦闘員が一瞬で倒されていく。
「・・・なんだぁ?あいつらヘルブラッククロスの怪人じゃないのか?」
「違うぞヘヴンホワイティネス。我々は右往左往兄弟!」
「ダセェ名前だな」
「それでもこの名前で苦労した事はないのでな」
赤と青のたてがみを持つ馬面兄弟の名は、赤のウオーバ、青のサオーバ。そしてギンジも軽い自己紹介を終えると、瓦礫を撃ち砕き、子供を救出する事に成功する。
「その子供、どうするんだ?」
金棒片手にギンジが訪ねると、右往左往兄弟が笑顔で答える。
「親御さんのところにちゃんと返すのさ!ここじゃ当たり前の事だぜ、ギンジさん」
「親御さんが居なかったらどうすんだ?」
「一生懸命、一緒に探す!この子の未来を傷つけないためにもな!」
もしかしたらさっきのキリンも同じ理由だったのかも知れない。
ならば子供はこの馬兄弟に任せるべきだろうか。
「この町には、お前らみたいのが他にも居るのか?」
少しの期待を込めて聴いてみると、右往左往兄弟は首を縦に振りながら笑顔で返す。
「ここにいる異人達なら皆そうしてるぜ。おれたちゃ、人間のルールが好きでここに生きてるからな」
「・・・そうかい。さっきは悪かったな」
敵意むき出しでコンタクトしたことに謝罪をしたのが、気に入られたのか、右往左往兄弟はギンジに頭を下げる。
「頼んます、正義のヒーロー。この町を助けてくれ」
「兄者と同じく、おれからもお願いします。この町はおれたちみたいな人間じゃない奴らをみんな受け入れてくれる優しい人達の集まりなんだ。子供の救助や、動けない奴はみんなおれたち異人がなんとかする。あんたらは、あのヘルブラッククロスを追っ払ってくれ」
深々とした頭の下げ方に、思わず萎縮してしまうが、ギンジはそれを快く聞き入れた。
「いいぜ。俺からもひとついいか?」
金棒を担ぎながらギンジは右往左往兄弟へと、笑顔で言い放つ。
「絶対に助けられるやつは、諦めずに助けに行け!他の奴らにもそう伝えろ!」
『もちろんだ!』
ウオーバ、サオーバの二人が同時に言葉を出す。
ギンジがその言葉を聴くと、再び上空から迫り来る戦闘員と交戦を開始するのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
突入時に、あまりの数の多さにギンジとハグレてしまったカエデ達。
カエデ、レン、ミドリコの三名が戦闘員を蹴散らしながら進んだ先は、このアーケード街の避難所と呼ばれる所だった。
このアーケード街で働く人や、たまたま歩いていた一般市民・・・。
さらにカエデとレンはある1人の少女を見て、その身体と表情をこわばらせる。
(・・・トモカ)
驚く事にそこには菊沢トモカ・・・カエデやレンにとっての親友とも呼ぶべき少女がそこには居た。
そして彼女の横には、リスの様な尻尾を持つ怪人?と思わしき人と、怪人の瞳を宿した血だらけのおじいさん。
「おお、ヘヴンホワイティネスだ!」
「正義のヒーローが来てくれたぞ!」
「やった!僕たち助かるんだ!」
その喝采を最初に飛ばしてくれたのは、ライオンみたいな顔をした怪人みたいな大男。
色々とツッコミたい事はあるのだが、カエデはヘヴンホワイティネスとしての行動を最優先とし、この避難所に居る人々へと大声で活気つける事にする。
「皆さん!ここから先はあたし達が守ります!何があっても身勝手な行動は控えて、必ず身の安全を優先してください!」
カエデの言葉を皆大真面目に聴くと、怪人みたいな者達も大きく頷く。
「・・・うおおお、間に合った!!」
「馬の癖に、脚が遅いな!」
カエデ達の真後ろからは、10m程はあろう巨大な馬が、沢山の要求所者を背中に乗せて、キリンの顔をした謎の人物と共に避難所へと走ってきた。
「あぶねー・・・ほとんどの敵をギンジさんが抑えてくれなかったら、全員助けられなかったぜ」
青いたてがみの巨大な馬がそうしゃべると、カエデとレンとミドリコは、まだ町の方でギンジが戦っているのを知って安心する。
ギンジならば1人でもなんとかするだろう。そういう安心感が彼には有るため、特別気にはならない。
「おほっ、ウワサのヘヴンホワイティネスだ!おれたちを助けてくれ〜」
背中の救助者を全員安全に下ろすと、サオーバが変身を解いてカエデに近寄る。
「サインください」
「やめんか馬鹿者。申し訳ない、弟が・・・握手してください」
「やめとけ馬共・・・」
右往左往兄弟の私利私欲を注意すると、キリンが長い首を伸ばしてミドリコにその首を近づける。
「えとーあのー、首にあいらぶヘヴンホワイティネスってサインください」
『お前がやめろ!』
救助者の避難所入りを手助けする傍ら、コントみたいな展開になっているこの者達を尻目にしながらも、カエデとレンは正義のヒーローとして一つ確認したい事があった。
「あの・・・あなた達って怪人?よね?どうして人助けを・・・?」
カエデの言葉はやや警戒を高めており、その言葉には全員が返答に困ってしまう。
「それについては、私が話そう」
血だらけの姿にあるおじいさんが、リスの肩を借りながらゆっくりと歩いてくる。
「血が凄いな・・・何があったのだ?怪人同士の喧嘩か何かか?」
ミドリコが拳銃の残弾数を確認しながらそう聴くと、リスが返す。
「いえ、私達は、怪人ではありません。全て、異人という新たな種族としてこの町に住まわせてもらっております」
もふもふした尻尾を振りながらリスがそう告げると、次は血だらけのおじいさんが怪人の瞳を輝かせて、ヘヴンホワイティネスへと事情の説明をする。
「初めまして。私は結界の異人。我々は・・・確かにかつては怪人と呼ばれていた。魔人と呼ばれたり、闇人、亜人や獣人・・・呼ばれ方は様々だな。元居た組織がどうしても肌に合わなくてな・・・嫌になって気がついたら、この町に流れ着いていた」
血を抑えながらも結界の異人と名乗ったその男は、ヘヴンホワイティネスを見つめる。
怪人の瞳はどこか人らしさというのが正しいのか解らないが、人間という存在への敵意や侮辱ではなく、人を信じている者の瞳の色だった。
そう、これはギンジと同じ、他人を信じている煌めきを宿している。
「そうこうして生きる為に何をしたらいいか・・・解らないままこの町で暮らすには、とにかく自分達の常識を捨てて、優しくしてくれた人達と同じ様に生きないと行けないと思ってな・・・」
出血に苦しみながらも結界の異人が話す内容に、隣のリスや、避難所に逃げて来た住人達は皆うんうんと頷く。
「私達はこの町にいる人の優しさを知った・・・こんな見ず知らずの私達を快く受け入れて、同じルールで生きる権利をくれた方たちに少しでも恩返しをしたい。げほ・・・しかし、我々はもう人を傷つけないと決めている」
かつて生まれながらにして、悪行を善と信じて戦ってきた異人達だからこそわかる。無慈悲に暴れて、己の私利私欲に動いて来た事がどれだけ無礼で、悪者であったかを。
「でもよぉ、傷つけないって決めたのはいいけど、このままじゃ、お前らが傷つけられるだけなんじゃねーの?」
不意に声がした。その声はカエデ達の仲間であり、最大戦力にも近しい男。
「ギンジ!あんたどこに行ってたのよ」
カエデが少しだけ嬉しそうに近づく。
「きっと1人で暴れてた」
レンも冗談混じりにそんな事を言って、皆で笑い合う。
「おい、馬兄弟。子供、1人だけ見逃してたぞ」
「あ、すまねぇ、ギンジさん」
ギンジの左肩には子供が泣きながらも、ギンジの頭にしがみついていた。
その幼い子供を避難所に逃すと、ギンジを含めたヘヴンホワイティネスのフルメンバーがここに揃う。
ほとんどの人がここに逃げたのだろうが、見つかるのもおそらく時間の問題の中、ギンジは避難所に居る異人と呼ばれる者達を全員呼び出す。
「全員だ!異人ってやつは全員ここに出てこい!」
どよめきが立つが、避難所の中にいる人間を守ろうとする者、人間に守られて今がある異人達がギンジの呼び出しに答えてぞろぞろと姿を現す。
「カエデ・・・ギンジは、何をするつもり?」
「さぁ・・・?」
「ギンジなりの考えだろうが、たまに何をするか解らないな」
レンの問いかけにカエデは首をかしげて、さらにその隣でもミドリコが首をかしげる。
集まったのは、結界、リス、キリン、右往左往兄弟、ライオン、猿、猫、クワガタの異人達。
「何をするつもりなんだ?」
結界の問いかけに、ギンジが金棒をコンクリートに突き刺して、地面に座り込む。
「なんでも人間のルールに従って生きるのは悪いことじゃないけど、お前ら借りにも人間を超えた存在だろ?」
腕組みしながら話すギンジに、異人達はムッとした雰囲気を出す。言い換えるならば、空気を悪くしている。
「でも、人間を傷つけたら、それは自分の居た組織や、ヘルブラッククロスと同じじゃ・・・」
リスが陰りを見せる表情でギンジに言い返すが、ギンジはそれを笑って返す。
「ヘルブラッククロスの戦闘員も確かに人間だろうからな。ま、そこのキリンとお馬さんの兄弟は、既に手を出してるけどよ」
再びギンジは大声で話し始める。
「この町を守りたいのも解った。お前らが人間を守りたいのもよく解った。そこでバラすが、俺も実は怪人なんだわ」
組んだ腕を離して、右手には炎、左手には雷を出して周りを驚かせる。攻撃の意思は無いために、それらはすぐに消滅させる。
ギンジが伝えたい事はたった一つだけだった。
「俺も怪人だけど、今こうして人間・・・いや、ヘヴンホワイティネスとして、ヘヴンホワイティネスの為に戦ってる。俺の意思で、だ。こいつらが平和の為に戦いたいなら、俺もその為に戦いたいし、手助けはなんでもしてやりたい」
いつだってギンジはカエデ、レン、ミドリコ、ケイタ、ミヤコの為に戦っている。
ハッピーエンドを見るために、そしてハッピーエンドの先を共に生きていく為に。
その為に出せる力は惜しまないつもりでいる。
「この町を救いたいなら、お前たちも戦え!人間と同じルールで生きるなら、こんな理不尽な悪を野放しにしちゃ駄目だろ!」
ほとんどの人間達がおびえて動けない人達が居て、それを力を使って守れるのは、この異人達しかいない。
「別に殺せって言ってるんじゃないぜ。追い払うだけでいいなら、それぐらい、人間以上のお前らならそれが出来るはずだ」
助けに来た筈のヒーローが逆に戦えと言うなんてかなりお門違いだが、ギンジから見た今の戦況はかなり分が悪い。
それは圧倒的な数の差。戦闘員の数がいつもより多いのだ。
このままギンジ、カエデ、レン、ミドリコの四人が防戦一方では、いつか敗けるかも知れないし、何よりヘヴンホワイティネスが一番に守りたい命が助けられない。
「逆に言えば、俺たちは大元をぶっ叩く為にも、お前らの力が必要だ。名誉な事だぜ〜ヘヴンホワイティネスと共に共同戦線に立てるってのは」
「言ってる事がめちゃくちゃよねギンジって」
「でも、やっぱりわかりやすい。言葉は、悪いけど」
カエデもレンもギンジの言動を見てヒソヒソと話している。しかしながら、ギンジの言う事も理解は出来る。
今までの襲撃とは桁違いの数に、誰かしら大幹部が動いていそうな気さえしている。
「人間を守る為に、異人が暴力を使うのは・・・」
結界の異人がおずおずと喋りだすが、ギンジがその言葉を遮る。
「じゃああいつらのは見逃すのか?俺たちが変わりにやればいいのか?何もしないで、守りたいモノを守らずに、ごねてるだけでいいのか?」
ギンジがそう返すと同時に、ヘルブラッククロスの戦闘員が、上からも、向こう側の道からも走ってきている。
「戦おうぜ。この町を守る為に・・・正義の異人として!俺も力を貸すからさ」
金棒を引き抜きながらギンジが立ち上がると、後は何も言わない。
振り向いたギンジに合わせて、カエデ、レン、ミドリコが共に同じ方向を見て、臨戦態勢を整える。
「俺たちはここを離れて、大元の奴らをぶっ叩く!お前らはいい加減、腹を決めろ!ごねて何もしないか、守りたいモノの為に、授かった力を使うか・・・!」
「そんなの・・・」
本当に正義のヒーローなのか疑問に思うような事を言われた。
確かに、人を超える力を持つ彼らならば、戦闘員ぐらいは軽くなぎ倒せるかもしれない。
だがそれによって起こるのは、おそらくだが人間達との溝が出来てしまう事。
結界の異人を始め、ここに暮らす異人達は、皆ソレを恐れている。
「私は・・・息子とあの人の為に戦うわ・・・」
リスが薬品を取り出しながら、短く告げる。
ギンジの熱に動かされたのかも知れない。
「・・・ならば自分も」
その次はライオンが。さらにキリンや右往左往兄弟も、猿も猫も、全員が守る為の戦いに、その身を投じようと奮戦しようとする。
「・・・私も、この町を守りたい・・・生きる道は、また探せばいいな・・・」
トモカを始め、町の人々が結界の異人を見つめている。期待と、ヒーローを見つめるのと同じぐらいの期待を込めて・・・。
結界の異人が血だらけの両手を広げて、避難所に大きな結界を貼ると、住人達は次々とヘヴンホワイティネスと異人達に声援を送る。
「正義の為に戦うなら、怪人も人間も異人も関係ねーって事だな。
一緒に暴れようぜ、結界のおじいさん!」
必ず平穏を取り戻す為に、ヘヴンホワイティネスと異人達は今ここで手を取り合ったのだ。
戦闘員達がもうすぐそこまで迫ってきている。
「よーし行くぜ・・・」
掛け声一つでヘヴンホワイティネスが突撃する。それに合わせて、異人達も防衛の為に、全力でその力を振るい始める。
「
守りたい人達の為に、そしてなによりこの町の優しさを決して誰にも奪わせない為に、異人町の大戦が始まった。
「ミドリコ!ここに残って指揮を取ってくれ!俺とカエデとレンは、血液男爵の所に合流する!」
「了解した!油断するなよ」
ハイタッチをしながら、ギンジとミドリコはお互いに道を交差する。
「こっちは頼んだわよ、ミドリコ!」
「私達の方は、心配しないで」
「君たちも無理はしないようにな!」
カエデもレンもミドリコの左右を抜けるようにして、戦闘員をなぎ倒しながらギンジの後を追いかけるのであった。
それを見ていた結界の異人が、手元に結界の棒を取り出しながら、ライオン、キリンに手渡す。出血がひどく、まともに戦えるわけではないのだが、彼もまたギンジを信じて声援を送る。
「頼んだぞ、ヘヴンホワイティネス・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
龍、毒蛾、機械の怪人。
この三名はドクターパープルにより造られた、フェーズ2の怪人。
より残忍でより強くあれと造られた怪人たちである。
一般研究員によって造られた暴力、血、拒絶の怪人と比べれば自己の強さや、怪人としての能力のスペックが桁違いである。
それであれば基本、生物の本能的な所で戦おうとは思わないはずだ。力の差は見て解るモノだと言うのに、脱走怪人達はまったく諦める気配がない。
実力の差をまざまざと見せつけているのにも関わらず、彼らはひとつも諦めていない。
「そういう顔を見ると、もっと苦しませてあげたいなぁ〜?キヒヒ」
「ぬっうぅ・・・」
毒蛾の怪人は少しばかり口元を血で汚しているが、足元に倒れる血の怪人を毒で埋め尽くし、頭を踏んでぐりぐりと馬鹿にしている。それでも諦めない彼の表情が非常に唆られ、加虐心がゾワゾワと大きくなっていく。
「・・・」
「がハッ・・・ゴホッ」
その少し離れた場所では、龍の怪人と拒絶の怪人との激突が終わりに差し掛かっていた。
羽をもがれ、全身を殴打され、脚は切り裂かれて、最早意識も絶え絶えと言った拒絶の怪人を、龍の豪腕で首から持ち上げている。
そんな龍の怪人の表情は無そのもので、何も感じていないし、何も思っていない。殺す、そう決めたのだからそれしか無い。
力無く豪腕を触れる拒絶の手は、ぷるぷると震えながらも、鱗でびっしりした腕を弱々しく叩く。ギブアップしているのではなく、抵抗の意思を感じ取る。
「・・・!」
その行動が龍の癇癪を膨れ上がらせたのか、思い切り地面に投げつける。全体重を乗せた叩きつけに、拒絶の怪人の意識はそこで途切れてしまう。
「おのれ・・・」
「ぺっ!もうお前の死んじゃえ!」
毒性のある唾を吐きかけられ、血の怪人は怒りで立ち上がろうとするが、身体を焼く毒によって最早力が入らない。
「クソ・・・血、拒絶・・・!」
暴力の怪人はと言うと、機械の怪人と互角の押し合いを展開していたのだが、少しの油断と仲間を心配したよそ見により、両足を撃ち貫かれている。
まともな抵抗も出来ずに攻撃を受け続け、河川敷で戦った時よりも条件は悪くないのに、こうも一方的な状況に、全員の強くなれる条件・・・暴走を上手く押さえつけられて戦いを余儀なくされた。
暴走を使わないと強くなれない脱走怪人と、それをしなくとも元々強い3怪人。力の差はここで浮き彫りになっていた。
「我々のルールに則った結果がこれか?暴力の怪人、お前はそれだから欠陥品と呼ばれているのではないのかね?何も考えずに暴れるだけなのだな・・・」
「うるせぇ、ここからだよ・・・」
口ではそう言うが、実質余裕が無い。いくら強がりを言ったところで、このまま敗北するのはレジスタンス陣営なのは火を見るよりも明らかである。
「暴れたいだけなら、いくらでも組織で出来ただろう。何故しなかった。出来る事を出来る時にしないから、欠陥品なのだよ、お前たちは。それとも何か?女に情でも湧いたか?怪人のサガで動きたくなったか?」
「ごちゃごちゃわちゅごなうるせぇよ鉄くず。オレ達はどっちにしても、オレ達の目的の為に生きていかなきゃならねぇんだ!」
痛みでグラつく脚に鞭を叩いて、気合で立たせる。
1人でも頑張って戦わないと、この町も危険にさらされ、怪人と人間の共存世界・・・さらにヘヴンホワイティネスを手中に収めるという目的も達成出来ない。
最後まで抵抗しようとしている暴力の怪人の眼の前に、ブスブスと泡立つ液体に全身を覆われた血の怪人がドサリと倒され、その向かいには容赦なくボコボコにされた拒絶の怪人が投げ込まれる。
「・・・っ」
仲間の凄惨な姿を見せられ、血の気が一気に引いていく。
「キヒヒ。びびってるね〜♡ざーこざーこ♡よわむし怪人♡」
「・・・死ね」
小馬鹿にしながら背後から煽る毒蛾の怪人と、並々ならぬ殺気を放出する龍の怪人の2名が、暴力の怪人へと徐々に迫ってきている。
「・・・終わりだな、暴力の怪人。仲間諸共、地獄に送ってやる。ここで死ね」
「クソ・・・!」
怒りで血管が張り裂けそうになる。この感情はきっと仲間を傷つけられたからだと思う。自分が敗けるから怒っているのではないと思う。
そしてもう一つは八つ当たりしたいと思う程の、大きな形容しがたい憤り。
組織の都合で産まれたのに、約に立たなければ容易に切り捨てる。
怪人の欲に従えば破壊や女性と共に快楽に流れたり、人間社会に打って出る事を、元々良しとしていなかった。そんな自分はこの世界に不要と決めつけられ、そして今はここで殺されそうになっている。
血も拒絶もそれに反対であったからこそ、脱走に加担してくれたのに、暴力の怪人を助けたばかりに、彼らも死にそうになっている。
「マシナリー・マキナフィスト!」
機械の怪人の必殺技が繰り出される。小型の飛行機に仕込まれた拳代の大きさの攻撃が暴力の怪人の顔面に深く命中し、後方に転がっていく。
単純な実力でも敵わず、容赦の無い攻撃により暴力の怪人は意識が飛びそうになる。
「トドメはボクが刺していいよね?」
毒蛾の怪人が手に毒液を出して、暴力の怪人達にその手を構えて本当に殺害する事への楽しみを顔に出して、ニヤニヤとしている。
(ああ、もう終わりだな。トモカは大丈夫かな?この町の奴らも・・・皆無事に逃げれたかな?)
ここまで人の事を考えられるのに、どうして自分は暴力という名前を持つことになったのか。今となっては最早どうでも良いが、自分はこんな奴らよりも、まともな心を持っている。
それだけがこいつらに勝っている、そう信じて死を受け入れそうになっていた。
「さらばだ。愚かな脱走者よ・・・」
「・・・」
「キヒヒ。ざーこ♡悔しそうにしながら死ね♡」
3怪人が暴力の怪人を見下ろしている。昼間の太陽を背に、彼らは暴力、血、拒絶の怪人を確実にこの世から亡き者にしようと、その毒を垂らした。
死へのカウントダウンとなる液体。
1秒─手から落ちた。
2秒─空中から暴力の顔へと垂れた。
3秒─顔をかすめる瞬間に毒は風に煽られた。
4秒─何者かがその場に現れた。
5秒─死を回避する強烈な打撃音が、鳴り響いた。
「そいつ・・・俺の友達なんですけど」
脱走怪人と3怪人の目の前に現れたのは、ヘルブラッククロスの最大の敵・・・ヘヴンホワイティネス・佐久間ギンジ。
右手に構えた金棒と、左手の炎。
その左右に立つのはヘヴンホワイティネスの元々のメンバー二人。ヘヴン1、2が確実な敵意を宿して、3怪人の前に対峙した。
「ギンジ・・・」
「立てるか?来るのが遅れて悪かったな」
3怪人に囲まれる暴力、血、拒絶の怪人に歩み寄り、ギンジは暴力の怪人に肩を貸す。
「ボクをシカトしないでよ!」
「邪魔、しないで」
毒蛾の怪人が再び毒を出した手をギンジに向けるが、レンがビームハンマーで壁となる。
「・・・!!」
もう少しで達成出来る目標を邪魔されて、龍の怪人はとうとう怒りに顔を歪ませてギンジではなく、脱走怪人達にその龍の爪を向けて突刺そうとした。
「あんたもよ!邪魔するなって言ってるの!」
殺意丸出しの爪はカエデにより妨害された。この爪により貫けないモノは無かったのに、このヘヴンホワイティネスのガントレットは、どんな硬い物質よりも異常な耐久力を誇っていた。
「これは・・・機械の私が言うのもおかしな話だが、前任のドクターの最高傑作・・・だな」
「悪かったな・・・もう少し俺たちが来るのが早ければ一緒に戦えたのによ・・・」
機械の怪人の言葉は、まるでギンジに届いて居なかった。
「ギンジ・・・ま、町の奴らは・・・」
暴力の怪人は心底悔しそうに、血なまぐさい声を出してギンジの肩を借りていた。
毒に侵されるのも厭わず、血の怪人も、拒絶の怪人も3人まとめてギンジは担ぎ上げた。
少し離れた場所に運ぶ傍ら、ギンジは暴力の怪人の質問を返す。
「ほぼ全員無事だ。この町のやつらって皆良い奴らだな。皆戦ってくれてるぜ」
「・・・そうか」
戦いの跡が激しい瓦礫の陰に3人をおろす。
「負傷者は頼むぜ、リス姉さん」
「承知しました!」
ギンジ達の後に続いて居たリスの異人が、もろもろ治療道具を取り出して、怪人達の治療に入る。
その真上には機械の怪人が飛び回り、ギンジとリスの異人へと攻撃を開始しようとするが、月の色を宿した刃が飛んでくる。
ギンジの善なる力・ムーン・フォースによる長ドスを投げ飛ばしたのだ。
ムーン・フォースを発動したギンジは、黒い満月のマントと、同じく黒をメインとした深緑色の戦闘スーツに身を包んでいる。
予測通り機械の怪人が避けたのだが、そこへは金棒を振り下ろしを確実に命中させる為の、ギンジの布石。
金属が重くぶつかる音を響かせて、機械の怪人を地面に叩き落とす。
それと同時に右手には長ドスが復活している。一定の距離を離れると自動で戻ってくる様だ。
「鉄クズこのやろう・・・俺の友達になんてことを」
「私は鉄くずではない。機械だ」
「そうかい。俺の友達に手を出したのも、町に手を出した事も後悔しやがれ!」
〜ギンジvs機械の怪人〜
「カエデ、そっちは任せても、大丈夫?」
ビームハンマーから剣に戻して、レンは視線を動かさずに毒蛾の怪人と対峙する。
「問題ないわ!こっちの怖そうなのはあたしに任せて!」
「ボクらに勝つ気でいるよ。お前たちはプライドも含めて、毒で全部壊してあげるよぉ・・・っ!」
毒蛾の怪人のいい加減イライラしているのか、レンを獲物として狙いを定めている。
そしてレンも同じ様にビーム剣を構える。町の襲撃も許せないが、なによりギンジが言う友達の事を、ああも一方的な状況は流石に怪人とは言え可愛そうになってくる。
「確実な勝利、それしか無いから、貴女達には敗けない」
「自信満々だね・・・!泣いて謝らせてあげるよッ!!」
〜宮寺レンvs毒蛾の怪人〜
カエデの前に立つのは、龍の怪人。
お互い理由があってここに立っている。ヘルブラッククロスの未来の為、ヘヴンホワイティネスの未来の為・・・両者譲らぬ想いを背負ってここに来ている。
「悪いけど、あたしも敗けるつもりはないから!」
ガントレットのギアを回して、スチームが出るのを確認すると、龍の怪人も両腕に鱗を展開させて五本の指先からは鋭い爪をさらに突出させて腕を構える。
タンクトップにカーゴパンツ、そして真っ直ぐと敵を見据えるその瞳はどこか軍人を思わせる。うっすらとだが、あのオーク怪人に少し似ているのかも知れない。
「・・・倒す」
低くつぶやいた龍の怪人の言葉には、間違いなく決めたら確実の実行するという凄みを感じさせた。それを肌身で感じたカエデは、今まで以上の警戒体制と共に、その拳を振り抜いた。
〜神宮カエデvs龍の怪人〜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
毒蛾の怪人が出す毒液は全てを腐敗させる。
表面を焼く熱さで溶かし、血液は混ざれば固形にし、肉は徐々に腐らせ、細胞を破壊していく。
使う毒にもよるのだが、基本はこう言う遅効性の毒を大量に扱うのが彼女の常套手段である。
自分の操る様々な猛毒で、他人が苦しんで死ぬのがたまらなく好きだ。それに抵抗しようと必死になってもがく愚か者が、毒には抗えないのに、自分に対しては強気な言動を取り、しかし毒に敗けて苦しんで死ぬ。
その姿を見るのがたまらない。もうたまらない。
「キヒヒ。ボクの毒で苦しませてあげるよ、ヘヴンホワイティネス!」
「無駄。このスーツはいかなる環境下でも、いかなる毒も通さない」
ふわりと浮かした身体で、猛毒を両手に携えるが、レンの返答はどうにもつまらないモノだった。
「そのスーツは無理でも、隙間の肌にはどうかなぁ?」
「試してみる?どうせ、無理だけど」
挑発しているのか、レンの言葉がチクリとメンタルに刺さる。
「ムカつく事ばかり言うなよ・・・スーツがなければただの人間の癖にさぁ!!!」
「ただの人間、じゃないよ。未来人だから」
「屁理屈ばっかり!ボクを怒らせるなよぉ!」
「ふふ、もう怒ってる・・・」
弟と姉みたいな会話のやりとりだが、お互いその手に持つのは命を奪う武器そのものである。
「死ねぇぇぇ!」
猛毒を固形液体をいくつか投げ飛ばして、レンはそれを全て飛んで避ける。空中に飛んだレンは身動きが取れない筈と、さらに毒を投げ飛ばす。
「ビーム剣術・大回転斬り」
空中ではビーム剣を長剣へと変更し、重さを利用した回転斬りを発動させる。
レンに向かった毒はその長剣により、巻き込まれて四方八方に飛び弾かれる。
「着地の隙が・・・大きいんだよ!」
さらに毒液を濃縮させたドロドロのボールが、着地したレンに向かって転がってくる。
「ビーム剣術・ハンマーホームラン」
ギンジから見て学び、そしてミドリコとの野球のゲームで覚えた綺麗に背筋を伸ばしたフォーム。そこから片足を上げてからの、ふんばりを効かせる為の踏み抜き。
両腕の遠心力と腰入れた力を活かして、猛毒をハンマーが撃ち抜く。
強烈なビームの打撃が思い切り猛毒のボールを殴り飛ばし、それは内部に伝わるビームの熱と最大限の打撃力によって粉砕される。
「ビーム剣術─」
ビーム剣の原動力は熱。実際には光線の為斬ると言うよりは、焼くの方が正しい。その丸みを帯びた刀身には熱が秘められている。
いくらでも形状を変えようと、その熱は形状に合わせて大きくなっていく。熱の属性というのが正しいのであれば、毒を焼き払う事も可能なのだろう。
「イース・トゥルバレンツ!」
ハンマーから再び剣へ。その形状からの切り上げによる青白い斬撃が飛び、二度目を振り下ろす事で再度斬撃がもう一度飛ぶ。
「ボクの毒を消した事で、調子には乗らない事だね!」
毒蛾の怪人の激昂にも近い言葉に、強い迫力を感じる。こんな少年みたいな見た目をしていても、間違いなく怪人である事を認識出来る。
毒と斬撃がぶつかり合い、レンの出した二本目の斬撃が毒蛾に向かって飛んでくる。
毒蛾の怪人の造り出す粘着性の高い毒液の壁が、その斬撃を飲み込むように吸収されると、流動の要領で粘毒壁を操り攻撃をしかけてくる。
「この毒はボクが操る最大の毒技だッ!どこまでもキミを追いかけて、必ず死に至らしめる!」
言うとおり逃げ回るレンに向かって何度も猛毒が、べちゃりと音を鳴らして這いずり、または飛び跳ねながら意思を持つような動きで、追いかける。
「斬っても、叩いても、燃やしても無駄だよ!これこそフェーズ2の怪人であるボクの最大の領域!」
両手を交差させて拳を握ると、二つに毒壁が別れて、プルプルと揺れながら左右からレンをねじり巻き込みながら、とぐろを巻くかの如く逃げ道を塞ぐ。
「上・・・なら・・・っ!?」
飛んで逃げようとしたレンの視界には、勝ちを確信した毒蛾の怪人の誇らしげな顔で見下ろす姿がそこにはあった。
「ほ〜らやっぱり勝つのはボク♡ばーかばーか♡」
完全に勝ち誇った様子で、レンを小馬鹿にする。
両手から毒を吹き出す。その毒はジェットスプレーのように噴射され、飛んで逃げようとしていたレンの胸部から思い切り命中し、その勢いで毒のとぐろの中心に落とされてしまう。
「終わりだァ!」
とぐろを巻いた毒液は残していた穴を閉じ、レンを猛毒の海へと閉じ込める事に成功した。
あのヘヴンホワイティネスとてスーツがなければ、ただの人間。未来人であれなんであれ、ヘルブラッククロスの怪人がこんな朴念仁に敗ける事はありえない。
「キヒヒ・・・キヒヒヒヒヒャヒャヒャ!ボクの勝ちだぁ」
怪人としての怪しさと少年の様な心からの喜びを混じえて、毒蛾の怪人は勝利を高笑いを上げる。
毒の内部は非常に苦しい。普通の人間ならばこれは言うとおり致死量の毒であり、すぐに死ぬ事になるだろう。
こんな毒程度で怖がることはない。幾度も怖いことや、絶望に近い状況は乗り越えて来た。それはきっと今後も何度も襲いかかるだろうし、レン自身の決断に迫る事もあるだろう。
どんな事が来ても、その時できる最善を、後悔しないように行うだけ。それこそが、レジスタンスの希望の光として、レンが与えられた使命だから。
「こんな毒じゃ・・・私は、倒せない。絶対に」
そもそも毒に閉じ込められただけで諦める性分じゃない。
ビーム剣を新たな形状に変える為に、レンは新たな装備を考える。
出来る限り火力が維持できて、なによりも扱いやすい形状。
(・・・!)
かつて湾岸エリアで戦ったハーフムーンとの連携攻撃と、それを撃破した時の事を思い出す。
あの時はカエデのヘヴンスーツに、ビーム剣をまとわせた。そして元々のカエデの能力を倍増させる事が出来た。
この強化状態、自分にも使えないだろうかと、少し考えてしまう。
持ち主であるレンの思想に合わせて、いくらでも形状を増やせるこの未来の武器。これがあれば、自分ももっと戦える筈・・・。
こんな事、こんな場所で手こずって居ては未来は守れない。
もっと強くならないと行けない。そうでなければ、ギンジやカエデ、ミドリコ・・・守るべき一般市民に加えて、ケイタという愛する人も何もかもが守れなくなる。
(ビーム──)
平和と未来。二つを守る為に、レンは新しい力を発言させる。
外では毒蛾の怪人が高笑いを上げ、それがギンジとカエデの耳に入り非常に苛立つが、二人は気にせずに目の前の敵と戦う事に集中する。
「仲間がやられたようだが、心配じゃないのかね?」
機械の怪人の声は心配事を炊きつける言葉で、それが目的だったがギンジもカエデも背中合わせになりながら、全く心配していない。
「大丈夫だ!」
「そうね・・・レンがあんなのに敗ける筈ないもの!」
信頼。ギンジもカエデもレンが敗けるとは思っていない。
宮寺レンという少女は、ヘヴンホワイティネスの中では一番戦闘能力に長けている。それは未来の時代で戦い続けていたから、能力無しの組手ではギンジもミドリコも敵わない。
故に、一番の生存能力と一番の戦闘能力の高さを持ち、かつ未来の為に戦う覚悟はメンバーの中では一番大きい。その志だけは誰にも引けを取らない。
それを誰よりも知っているギンジとカエデは何も心配せずに、それぞれが戦う敵に集中することにしている。
「へぇ〜随分余裕なんだね・・・そんな事言ってお仲間じはもう、ボクの造った毒から抜けられないみたいだけど」
「うるせぇ」「うるさい」
ギンジとカエデが二人同時に、毒蛾の怪人の煽りを黙らせる。
「黙って待ってなさいよ。怒らせたら一番怖いタイプが、あんたに必ず制裁しに来るわよ!」
「そうだな。あんまり舐めてると、本当に痛い目にあうぜ・・・あ、もうひょっとして手遅れかもな」
ヘヴンホワイティネスとはどうしてこうも挑発上手な奴が多いのだろうか・・・。
毒蛾の怪人のしょうりは揺るがない。そうに決まっている、それしかありえない。
現にヘヴン2は毒のとぐろから出てきていないのだから・・・。
「・・・なら死体でもおがませてあげるよ!」
再び挑発により目を血走らせて、毒蛾の怪人は猛毒を操る。
まだ生きていようが、死んでいようが関係ない。ここでもう一度毒に包んで殺してやる。二度死ねばいいのだ。
「ビーム・フォーム・・・!」
操ろうとした猛毒の内側から、落ち着いた少女の声を聞き取れた。
静かな闘志を燃やした、正義の声。
猛毒がいたる所から光を漏れ出し、その大きなとぐろが光の漏れ出た箇所から固形に、そしてボロり、と固まって行き、崩れていく。
「・・・なんだと・・・!?」
「ほら、言ったろ」
「馬鹿にしてると、痛い目みるわよ!」
驚愕する毒蛾の怪人の顔は、自信をなくしている。
そんな彼女が見下ろす毒のとぐろは今まさに破壊されきっている寸前である。
青いビームを手足にまとわせ、そして全身にも青い光を宿したビームのスーツ。レンの新しい形状・・・。
「
新しい形状はカエデと同じ様な、肉弾戦を主軸とした近接戦闘用の武装・・・。
毒を両腕から固めて打ち砕き、思空を飛ぶ毒蛾の怪人へと肉薄する。いつ飛んだのか解らない程の跳躍力と、その速度の制御力に毒蛾の怪人が一番その場では驚愕していた。
「うっ・・・おおおおお!!」
猛毒の液体を何度も飛ばして距離を取る。トラの様な眼をしている彼女が、本能的に怖いと・・・恐怖を抱いてしまったからだ。
しかしレンは空中でいながら、まるで地上にいるかの様な身のこなしで猛毒の液体を全部固めて砕く。
「オアソビは終わり。今度は、こっちから行く・・・」
レンが空中の軌道を完璧に制御しており、その速度は恐れからまともに浮遊できていない毒蛾の怪人へ、すぐに接近出来た。
「やめ、やめろおおぉ!こっち来るな!来ないでぇぇ〜」
「町を襲った事と・・・ギンジのお友達を傷つけた事・・・それだけは許さない」
町を守るのはヘヴンホワイティネスの役目。
友達が例え怪人でも、ギンジの友達が傷つけられたら、一緒に怒り、守る。かつてギンジがトモカを助けるのに尽力したように、今のレンであれば仲間と平和の為にそうしたいと思う。
だからこの渾身の力を込めて、毒蛾の怪人に狙いを定めた拳を振り抜く。
「ビームコンボ──」
「ひぃ!やめっ・・・謝るからっ!」
「無理。私を『泣かせる』つもりだったみたいだけど、そんなんじゃ勝てないよ」
怯えきってしまっていても容赦はしない。敵である以上、弱みにつけこまれたら逆転されてしまうから。そういう所はレンはためらわずに攻撃を行う。
「ヘヴン・ソーズ&ハンマーダウン・・・!」
空中での手刀と、鋭い脚技を刃に見立て、ビーム剣の威力を乗せた連続攻撃のあと、カエデの使うスカイフォールハンマーと同じ形の両手を組んだ拳で毒蛾の怪人を思い切り後頭部からコンクリートへと叩き落とした。アスファルトが歪み、砕け、ヒビ割れる。
「・・・『泣いて謝る』なら、見逃してあげる」
砕けた瓦礫に埋もれた毒蛾の怪人へ、聞こえていない筈の言葉を静かにレンは告げると、辺り一面の猛毒は全て粉になり無害なモノに変わっていった。能力者である毒蛾の怪人が意識を失った事で、その効力を失ったようだった。
〜宮寺レンvs毒蛾の怪人・・・勝者・宮寺レン〜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ほら、あたしの言った通り、あの子が勝つって言ったでしょ」
「・・・!!」
カエデと対峙する龍の怪人が、毒蛾の怪人が敗れた事でその表情をこわばらせていた。
自分の仲間が敗れる事が信じられない。しかもこんなヘンテコなスーツを身にまとう様な人間の女に。
しかし考えていても今はしょうがない。ここであと二人、龍か機械が倒せばそれでいい。
後々町を襲っている戦闘員の援護も来るはずだ。
飛び出して来たカエデの膝蹴りに、右肘の鱗で打ち返す。
格闘における戦いは龍の怪人は得意とする所だったが、どうやらこのヘヴン1も相当に格闘技は強いらしい。おまけに特殊なスーツによる身体能力の強化も入り、ただの膝蹴りなのに威力は桁違いだ。
「はぁ!せい!・・・やぁ!」
膝蹴りの後の着地に右のフック、左のカーブ、
龍の怪人が知らない技術を持っている様で、一つ一つの威力がやはり戦闘員等が出せる様なものとは比較にならない。
しかしそうは言っても龍の鱗でびっしりと生え揃った腕は無類の防御力を秘めており、表面には強くダメージが入っても、その衝撃は内側まで届く事はあまりない。
そしてそれは龍の怪人の爪による突き攻撃、尻尾を絡めた我流の格闘技、鱗の防御力を活かした攻撃もカエデのヘヴンスーツに当たっていても、実体に届きうる決定打にはなっていなかった。
「硬いわね・・・なんなのよ、この硬さ」
「ッ・・・!」
カエデの言葉と同じ様に、龍の怪人も同じぐらいの硬さには苦い顔をしている。お互いの拳がぶつかり合いながら、ゴイン!と、鈍い音が鳴り合う。
豪爪を振り下ろし肩に食い込ませて、カエデの動きを止める。
「くっ・・・このっぉ!」
「
口をガパァっと開き、カエデの顔をめがけた薄紫色の炎を勢い強く吐き出す。形の良い歯並びはギザギザとしており、それらが炎の高温に耐え、喉からの強烈な業火がカエデを焼き尽くさんと全身を包み込む。
「熱っつ・・・!このバカトカゲ!」
炎に身を焼かれているのに、カエデはまだ強気な姿勢を崩さない。それどころか、開いた両腕を使う事で次の必殺技を発動する。
スチームを放出し、光がその手に集束すると前方・・・龍の怪人の腹に強力な必殺技を打ち込む。
(剣士の怪人の盾さえ破壊した攻撃よっ!これでも喰らいなさい!)
「必殺!ヘヴンリー・インパクトぉぉっ!」
炎を跳ね返す勢いでガントレットに込めた正義の衝撃が、今まで以上に強い一撃となって龍の怪人を後方に押し返した。
鱗をグラつかせる程の衝撃に、とうとう龍の怪人は腹を抑えて膝をつきながらコンクリートを削りながら後ろに下がる。火花を散らせる程の擦りつけが止まると、龍の怪人はその瞳を燃やす。
これは強敵だと。間違いなく強い敵性存在・・・。
そして・・・。
(ちゅよいなら素敵ぃぃぃいい〜♡♡ボコボコにして連れて帰ったら四肢をもいで首輪につないで、壊れるまでいじめてあげたい♡♡♡ハルネちゃんのお土産に持っていってあげたら、け、結婚まで行けるかもしれない♡♡ああ、早く帰ってハルネちゃんといちゃいちゃしたい♡沼りたいわぁ〜♡うひひ・・・女同士って妊娠できたっけ?
・・・・・・・そして必ずこいつを倒そう)
頭の中でそんな事を考えながら、龍の怪人はカエデに向けて人差し指をビシッっと向けて、必ず倒すという意思表示を見せる。
カエデもソレを理解したのか、何も言わずに左手の指を使って「かかってきなさい」とハンドサインを送る。
「ッ!」
軽く息を吐いて尻尾を地面に叩きつけると、カエデの顔をめがけたライフルにも似た突き出し蹴りをお見舞いするも、それは寸前で身をかがめた事でことなきを得る。
空中で身を捻じり、左脚の踵を思い切り振り下ろし、カエデはそれを両のガントレットで受け止める。
今までの鍔迫り合いとは違う、高い威力の足技に今度はカエデが押される。
カエデのガントレットのギアが高音で鳴り、龍の脚を跳ね返すと彼女のしなやかな身体は尻尾と共に空中で舞い、地面に回転しながら着地する。
その着地を合わせたカエデの突進。しかし突撃される事を読んでいた龍の怪人は咆哮を上げる。
ビリビリと大気揺るがす咆哮に、カエデの動きは阻害され、つんざく音に三半規管が混乱する。
「
龍化した腕の連撃、脚の蹴り踏みつけ、肘打ち、頭突き、尻尾による脚の絡め取りからの、
悪の組織の無慈悲な連続攻撃に、カエデは有無を言わさず圧倒される。
実体の届かない攻撃がほとんどとは言え、ダメージがないわけではない。痛いモノは普通に痛い。
「
「がハッ!?!!?」
浮かんだ身体には龍の怪人のさらなる攻撃が構えられる。カエデに命中させようとしたその一撃は、カエデが先程使ったヘヴンリー・インパクトに似た強烈な一撃。
黒く龍化した鱗をまとわせた衝撃は、カエデの全身に衝撃が響き渡り、より深いダメージが染み渡る感覚。
「ゴホッ・・・げホォ・・・!」
実体に届きかつ、身体の中に痛みが残り続ける。
「なんてことすんのよ・・・ハァ、くっ・・・ハァ」
この連続攻撃に耐えきり、カエデは立ち上がる。レンは勝ったのだ。自分が敗ける訳には行かない。
強い怪人だろうと、そんな事だけで自分が敗ける理由にはならないし、なにより町を守る為にカエデはここまで来ている。
どうせ襲撃の理由なんていつもの女性を攫うことぐらいだろう。あわよくば略奪・・・。それだけでも許せないのだが、もう一つカエデには許せない理由が一つ増えていた。
「・・・あんた達、ギンジの友達傷つけたでしょ・・・」
「・・・?」
お腹を抑えながらカエデはゆっくり立ち上がる。そして龍の怪人へ向けてその敵意を込めた強気な視線は、キッと強くにらみつける。
「許さないからっ!」
「・・・」
カエデの力のこもった言葉に、龍の怪人はただ首をかしげるだけ。それはヘルブラッククロスからすれば、弱い者を支配することを良しとしているため、暴力の怪人達がボコボコにされている事を怒っているのだとしたら、それは到底理解の出来ない事であった。
「ヘヴンスーツ・・・あたしに力を!」
この怪人を倒すには、チャンスを伺っているばかりでは絶対に勝てない。ならば、もう一つのカエデの力を使う。
もうコレ以上の使用は控えた方が良いとは思っても、これでないとまともな勝負にならない。
赤、青、黄のオーラを全身にまとわせる。
ガントレット、ブーツ、スーツからそれぞれ出てくるオーラはカエデの真っ白なスーツを三色で混ざり合いながら違う色に染め上げる。
その力を示したカエデの決意のカラー・黒へと。
赤く明滅するラインを残し、ダークヘヴンスーツへとその姿を変える。
相変わらずこれを発動する事で身体は締め付けられ、しかし否応にも力が湧き上がる感覚が、カエデをより動かしてくれる。
「防御しなさい、バカトカゲ・・・あたしの攻撃は、1段階、2段階・・・いいえ、さらに強化されるわよ」
「・・・ッ!?」
カエデの異様な闘気を感じ取ったのか、あえて大振りに見せかけたヘヴンホワイティネスの攻撃に、龍の怪人はとっさに防御の姿勢を取る。
言われたとおりに防御したのではなく、防御させられたかの様な、何かがおかしくなるような恐ろしい一撃が繰り出された。
黒いスーツに換装したカエデの一撃は、龍の怪人の鱗に守られた硬い腕へと命中する。折るまで行かなくとも、鱗は叩き割られて重たく強い一撃となり、龍の怪人の防御を貫いた。
すかさず崩した防御へ、更に必殺技を叩き込む。
「必殺!チャージング・レイザー!」
ドライヴ・レイザーの強化技であるラッシュを、腕を引っ張られて肩が千切れそうになる感覚に持っていかれそうになるが、その制御できない力で思い切り目の前にいるヘルブラッククロスの怪人へと、叩き込む。
鱗を叩き、砕くだけではない。何度も繰り返される打撃のラッシュに、龍の怪人の防御能力として機能する鱗は一枚いちまいが確実に破壊されていく。
「ううううりゃああああーーーーッ!!!!!」
打てば打つほど加速するそのラッシュに、腹から雄叫びを上げて全身全霊の攻撃を、ありったけの気持ちを込めて龍の怪人へとぶつけていく。
バシバシバシバシ・・・鱗が剥がれてから、龍の怪人はこのままでは不味いと悟り、反撃に打って出る。膨張させた龍の腕を振るうも、それは遅く間に合わない。
それどころかガードを解いた事が災いして、拳の当たる範囲がより広がって行き、顔や身体、脚まで全身余すとこ無く強力なラッシュが龍のプライドごと叩き、貫き、打ち、破壊していく。
「あああーーーがーーーれえええぇぇ〜〜〜ッッッ!!!」
止まる事の無いラッシュは、やがて龍の怪人を殴りながら浮かせて上空へと持ち上がる。それでも拳は止められず、カエデの意思に反して攻撃本能が止まらなくなる。
身体を破壊しかねないその強い力が、反動して帰ってくると脳からの信号で、スーツの動きが止まってしまう。
──浮かばせた・・・あとは一撃!一撃だけ!
この状態で彼女が反撃すれば今度は敗北になるかも知れない。
龍の怪人を確実に倒す為、カエデは最後に必殺技を決める。
「これでぇ・・・終わりよ!」
「ぐっ・・・!!」
龍の怪人もカエデの頭上で炎を吐き出そうとしており、お互いに勝負を決めにかかる。
「必殺!!」
「龍の・・・」
龍の口からは炎が吹き出す。カエデのガントレットからは、フルスチームが吹き出す。
先に速く攻撃が当たるのは・・・。
「メテオライザー・インパクトぉぉぉ!!!!!」
「!!?」
顔面を捉えたクリーンヒットにも近い確実な一撃が、龍の怪人へと命中した。炎を吐き出せず口内で暴発しながら、硬い牙、歯をもろともカエデが打ち上げる。
「果てまで・・・吹き飛びなさいっ!!!」
メキメキと骨がきしむが、それが聞こえていながらも、カエデは諦めず、痛みに負けずに龍の怪人へと正義の大衝撃を打ち込んだ。
顔から打ち上げられて龍の怪人は虹の様にアーチを描きながら炎を吐き出しつつ、コンクリートへと落ちて行った。落下の直後にアスファルトを砕きながら爆発音を鳴らし、龍の怪人は敗北した。
「ハァ・・・ハァ・・・やっぱり、こんな力・・・多用するもんじゃないわね・・・身体が痛いわ」
ダークヘヴンスーツの力は確かに強いし、心強いのだが今のカエデではまともな制御が出来ない。重たい武器を力任せに扱った結果、止まれなくなるあの感覚に近い。
スーツを元の色に戻し、反動による激痛に顔はひきつるが、それでもカエデはなんとか右拳を高らかに上げる。
「おつかれ、カエデ」
「えっへへ・・・レンもお疲れ様」
そんなカエデの後ろにはレンの姿があり、彼女も慣れない力を使った結果か、疲弊している様に見えた。
親友同士の検討を讃え合いながら、ヘヴンホワイティネスは残る最後の敵へとその視線を動かす。残り戦っているのは、ギンジとあの例の機械の怪人。
異人町の決着の
〜神宮カエデvs龍の怪人・・・勝者・神宮カエデ〜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
機械の怪人はかつては主君に仕えるだけの、便利な道具ぐらいの者だった。しかしいつしか怪人としての脳と、マシン性を活かした改造を施された結果自我を持ち、ドクターパープルによって破壊と強奪の限りを許された怪人なのである。
そして敗北は許されず、勝利の2文字を背負う事を約束されている。
故に敗けるわけには行かない。例えこの先ヘヴンホワイティネスに我々が勝てないとしても、自分が引き受けたこの男に敗ける訳には行かない。
前任ドクターの最高傑作を超えるのは、自分だ、自分しかいない。
何故なら、自分こそが・・・ヘルブラッククロスの最強の怪人だからだ。そしてドクターパープルの最高傑作でもあるからだ。
我々こそが最強の怪人だ。だからこそ、目の前にいるヘヴンホワイティネスに寝返ったこの男・・・進化の怪人を倒して名実共に最強で有ることを証明する事を、なによりも優先とし、機械の怪人はそれを野望として来た。
感情なんてモノは不要で、有るのに隠しいて生きている。別に出さなくても良いのだが、今日ばかりは進化の怪人を倒す事に感情が出てきてしまいそうだった。
任務を優先するのは当然なのだが。
「ヘヴンホワイティネスめ・・・よくも同胞を」
「対した事ないって事だよ・・・」
「さっきから減らず口ばかりだな・・・」
仲間が倒された事で憤りが出るとは珍しい。
ギンジは長ドスを構えて、銃弾を跳ね返したり、ミサイルを金棒で叩き落としたり、力は間違いなく上位の怪人だろう。
そんな怪人がどうして組織を裏切ったのか、非常に気になるところだが、どうせ倒してしまうのだから関係ない。
「貴様にとってあの怪人達が、そんなに大切かね?」
「当たり前だ。俺達ヘヴンホワイティネスにとっても貴重な戦力になるし、なにより俺の友達だ!」
貴重な戦力・・・。その言葉がどうにも機械の怪人は理解が出来なかった。
ついさっき自分達に敗けた脱走怪人で、しかも欠陥品である彼らが貴重・・・?
仁王立ちするギンジめがけた銃口は、あまり脅しとしても機能せず、どんどん機械の怪人のシミュレーションに狂いが生じていく。
「何をどう見たら彼らが貴重なのかね?」
それはただの興味本位なのだが、なぜだか口が止まらなかった。知的好奇心が元々の脳に入っていたのか、ソレを聴いてしまっていた。
ギンジはマントをなびかせながら、長ドスを構えながらその質問に返答をする。あくまで警戒は解かずに、戦闘の体制は崩していない。
「別に・・・友達が頑張ろうとしてる事、それを応援したいってのと、一緒に戦おうとしてくれている事が、俺にとっちゃ貴重なんだよ」
返ってきたのはただの個人の思想であり、機械で考えられる事としては曖昧な返事をされるのと一緒である。
「暴力と血と拒絶が掲げてる想いは俺とも一緒なんだよ。死にたくないって想いで毎日生きてる友達を、こんなひどい目に合わせやがって。覚悟しろよ。何度も言ってるけど、覚悟しろよこの鉄クズコラ」
この世界に舞い降りたギンジからすれば、貴重という意味合いでは脱走怪人達も、数少ない友達なのだ。
バーナーの怪人の様に、友達はもう失いたくない。それを守りたいと考えて、そして誰も泣かない世界を創ろうと尽力するのがギンジの目的である。
それを達成すれば、きっとハッピーエンドが待っているから。
「つくづく理解不能だな。やはりお前も欠陥品、か」
「そうかもな。俺は組織にもヘヴンホワイティネスから見ても欠陥品かもな・・・もしかしたら世界から見た俺なんて間違いなく、発注ミスで完成した人間かもな」
「・・・お前は怪人だろ」
「人間だよ」
怪人の力を持つ人間こそが佐久間ギンジである。その事を最後まで伝えようとせずに、ギンジは再び戦いの姿勢を取り直す。
「壊してみろよ!」
「・・・貴様こそ、ここで壊れろ!」
機械の怪人からの先制攻撃。ミサイルと刃の付いた円型のカッターを射出し、それらがギンジに向かって凶刃、凶弾となって飛び交う。
確実に狙いを定めたそれらは決してギンジを逃さず、的確にそして確実に追い詰めていく。
やがて逃げる事が出来ず、刃とミサイルに挟まれたギンジは金棒と長ドスを二つ振り回して、機械の怪人の攻撃をなんとか回避しようとするが、金棒がミサイルに着弾した瞬間手元から大爆発を連鎖的に起こしていく。
爆風と煙の中で、長ドスを振り下ろし月の斬撃を飛ばして、機械の怪人へと綺麗な光を宿すその斬撃が飛んでくる。
「当たりはしないよ、そんな攻撃!」
当たるとどうなるか解りきっているモノに、わざわざ当たろうとする馬鹿者は居ない。簡単に避けられるが、続いてギンジは月を足場を展開させて、もう一度機械の怪人へと突撃を試みる。
「お前の攻撃もぜんっぜん!効いてねぇ!」
機械の怪人を捉えた金棒と長ドスの攻撃。それはイメージによって作り出された、想像の力と胆力で実現する怪人離れの一撃。
「無駄なあがきを!」
攻撃が振り出される直前、再びミサイルランチャーを発射する。今度はそれがギンジに当たり爆発によって地面に落とされる。
「うおっ!?・・・クソ、厄介な飛び道具持ちだな」
続けざまにガトリング掃射が行われ、月光のシールドを展開させると、その弾丸の雨は弾かれて終わる。
「これならどうだ!マシナリー・アーグメントス!」
機械の怪人が真下に向かって、さらに強化されたミサイルランチャーを多数発射させる。
そのミサイルは月光のシールドに何度も直撃しては大爆発を繰り返す。
「最終的には我々こそが力の支配を統べる!総統のお望みの世界を創る為に、お前らは邪魔だ!ここで終わらせてやる、ヘヴンホワイティネス!!」
繰り返しミサイルが撃ちだされ、その爆発の中にいるギンジは防戦一方に陥る。
その戦いを心配そうに眺めるカエデとレン。
「・・・〜っ」
身体に走る痛みのせいで今はまともに戦えない事が、非常に苦しく思う。レンはそんな歯噛みするカエデを見て背中を優しくさすってあげている。
「大丈夫・・・ギンジなら、勝つ」
「当たり前よ・・・」
勝つと解っていても、こんな一方的な戦いはいくらなんでも心配になる。自分が恋している相手ならば尚更だろう。
「どうした進化の怪人!もう動けないかね!もう死んだかね!」
機械の怪人が一度ミサイルを止めると、煙と巻き上がる炎を全て巨大なファンで吹き飛ばす。
ギンジの死体を確認するために・・・。
機械の怪人の中にある怪人センサーでは、わずかながらギンジの居た場所に反応があり、それはゆっくりとした点滅を繰り返している。
バイタルがもうかなり減っている証拠である。このまま虫の息になっている怪人にトドメを刺して、機械の怪人こそがヘルブラッククロスの最高傑作として名乗り出よう。
「・・・なんだとっ!?」
そう思っていた。
「ねぇ・・・あれ・・・」
「信じられない・・・」
機械の怪人にもカエデにもレンにも映る、煙の中心地に立っている存在の姿に驚く。
「吾輩達の喧嘩・・・」
「ま、任せっきりじゃ・・・」
「格好つかねぇからなぁ・・・」
3人まとめて一つに固まり、血液、拒絶、そして暴力という圧倒的な力で、ギンジの作りだした月光のシールドを支えて、超強化された大盾の下、脱走怪人が全て受け止めてくれていた。
「馬鹿な・・・怪人反応は確かに・・・!!」
「おいおい・・・オレがお前に・・・一撃あててたの忘れてんのか?」
暴力の怪人が息も絶え絶えにしながら、鞭を機械の怪人へと向ける。
前日の河川敷襲撃の時、暴力の怪人は機械の怪人の脳天に必殺技を命中させ、おまけに川に二人で落ちた。
その時から既に機械の怪人のコンピューターに狂いが生じている事に、気づいていなかったらしい。
「自分なら大丈夫・・・そう思ってるから、こんな事になるんじゃねぇか?ええ、
「貴様ら・・・何故動けた・・・」
「まだ解らないとは・・・流石ヘルブラッククロスの怪人ね」
少し離れた所に居たのは、リスの異人。やれやれと言った態度で、ため息混じりに機械の怪人を見上げる。
その手には、怪人を始め、人間以外であればどんな動物にも適応する彼女の調合した薬の入った、注射器が添えられていた。
「一先ず一命をとりとめただけだから、もう終わりよ。引きなさい」
リスの異人の命令に、血の怪人が先に駆け出し、拒絶の怪人が走りだそうとするも、倒れそうになってしまう。ダメージは大きく、彼女の負担はおそらく一番大きい。
「まだ倒れる時じゃないぜ。拒絶」
「う、うん・・・ありがとう」
暴力の怪人が倒れそうになった拒絶を抱きかかえて、その場を離れる。
機械の怪人は熱を放出していよいよ怒りの感情を顕にする。
ギンジに一杯食わされ、挙げ句勝ち誇っていた欠陥品に言い返され、肝心のギンジはどこにも反応が無い。
「今だ・・・撃て!」
「
ギンジは少しだけ離れた崩れた家屋に隠れ、合流していたミドリコに指示を下す。
ミドリコを始め、町に襲撃してきた戦闘員は全滅させた様だったので、これは好都合とギンジは悪知恵を働かす。
そしてミドリコが発音良く返事すると、空気の弾ける様な発砲音と共に撃ちだされた対怪人用スナイパーライフルの弾丸が、機械の怪人の飛び回るプロペラ部分へ的確な命中を成功させる。
「・・・っ!?貴様、人間に隠れてセンサーをごまかしたな!」
すぐに居場所がバレてしまい、そこへアームハンドが伸びていく。簡単にコンクリートを砕きそうな巨大な手は、まさしく地獄の様な迫力を持っているが、下からビームの一閃が飛んでくる。
「ビーム剣術・ゴエモンストライク・・・」
刀の形状にしたビームによる居合抜き。出力を最大にしたレンの援護により、その手は大きなワイヤーから斬り崩される。
「メガトン・インパクトォ!」
さらにカエデが痛む身体を推してまで援護をしてくれる。
巨大な手を蹴りながら、油断していた機械の怪人へとその衝撃を当てる為に、必殺技を命中させる。
「ギンジ・・・お願い!」
「任せろ・・・!フェーズ3!」
ムーン・フォースを解除し、次に発動するのは怪人の最高到達地点・フェーズ3。
黒い炎と紫の雷、そして飛行して思い切り滑空する。
「進化の・・・使え!」
血の怪人が血液で巨大な両手剣を展開させて、ギンジへと投げ飛ばす。
炎を纏う血の巨剣、雷を纏う金棒。
二つを合わせて正義の連撃を、衝撃によって飛ばされた機械の怪人へと決める。
「ウラアアアア!!!」
(馬鹿な・・・馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な馬鹿なばかなばかなバカナバカナバカナバカナバカナバカナ)
いよいよシステムエラーが表に出てきてしまったのか、まともな思考回路にならず、機械の怪人はギンジの乱舞をモロに命中させられてしまう。
叩き、斬りつけ、砕き、割り、弾き、貫き、払い、刺し、蹴り、殴り、粉砕する。
「俺の友達に手ぇ出したら・・・命は無いと思え!!」
機械の怪人が残りすくない理性の中で見えたのは、間違いなくギンジなのだが、どこかその姿は人間ではない【何者】かの姿だった。
同じ怪人の反応なのに、姿なんか人間のままなのに、それでも怒り狂う【何者】かが、そこには居て、確実に自分を撃破しにかかってきている。
今自分の居る場所が地獄である事を錯覚してしまう、そんな迫力。
進化の怪人の、底力を見た。
友を信じて、仲間を信じる彼の者がなんとなくだが、最高傑作と呼ばれる理由を解ったところで、機械の怪人はギンジによってぶっ飛ばされた。
この防衛戦は暴力の怪人達を始め、レジスタンスとヘヴンホワイティネスの協力によって達成されたのであった。
〜佐久間ギンジvs機械の怪人・・・勝者・佐久間ギンジ〜
続く
お疲れ様です。
あと4つのお話で非日常に〜編が終わりです。新章になると同時に、カエデ、ミヤコと共に恋愛方面も大きく動き出します。新章まではお楽しみに。
少しずつチクチクやっておりますが、きっと大冒険な話になります。
これからも頑張るゾイ!
キャラネタ書きます
佐久間ギンジ
友達を傷つけるのは許さねぇ!って思うのは生前の世界では友達が居なかったから、大切にしたいという想いが強い。
神宮カエデ
ダークヘヴンスーツを使うと身体痛くなる。無理やり力を限界超えて使うような感じだから、そりゃ痛いよね・・・
宮寺レン
新しい形状・ビームフォームを展開させた。
移動に関して超強化されるが、使うと身体に負荷がかかる模様。
甘白ミドリコ
Roger!
英語は実は喋れる。日本語、英語、ドイツ語、ハングル語と意外と使い所の無い言語を話せる。スペイン語は無理だった。
暴力の怪人
とっさの判断でギンジを手助けした。今の所暴力っぽい要素ないけど大丈夫そ?
血の怪人
血液の力はかなり優秀で、なんでも造れる。
そう・・・女性の身体でもね
拒絶の怪人
男性恐怖症なのだが、暴力の怪人を助けたいと思ったり、倒れそうになった所を暴力の怪人に手助けしてもらうのには、拒絶の暴走をおこさないどころかお礼を言っていた。ワンチャンあるぞ!
毒蛾の怪人
メスガキ怪人とも呼ぶ。戦う相手が悪かった。
龍の怪人
無口な人。技名はちゃんと呼ぶタイプ。戦う相手が悪かった。
機械の怪人
マシンによって形成されている怪人で、一応脳はある。弾数は多分無限。戦う相手が悪かった。
次回はこのレジスタンスvsヘルブラッククロス編が終わり、いよいよ新章に向けた話にシフトが動いていきます。
まだあと4つ非日常編が続きますが、お楽しみに。
感想や応援等いただけましたら幸いです。
それでは、また次回!
ちなみに元々機械の怪人は赤鬼のポジションになるはずでしたが、何を間違ったか立場が入れ替わりました。これはこれで!
ではでは!