正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです。

今回のお話は怪人四天王編となっております。

三話構成となり、この怪人四天王編が終わる事で、ついに非日常編が終わります。

その後は新章だー!やったー!
そしてこのお話ももうすぐトータル50話・・・!
全体で言えばもうすぐ半分と言った所。約半分ね、約ね。

それでは怪人四天王編・1!行ってみよう!


46・雪女と鏡もちと目的を見失った骨

 

 8月24日・・・。

 

 夏休みも残す所あと一日となる。

 

 現在の時間は夜に差し掛かっており、真夏の街はその輝く世界に光を失っていく。

 

 「ふあぁ〜!終わった〜!!!」

 

 カエデハウスのリビングでは、ケイタがなんとかギリギリ夏休みの宿題を終わらせて、極限まで脱力している。

 

 しょうがないからカエデもレンもミヤコもあまりの量の多さに、しょうがないから手伝う事になった。

 

 「くふふふ・・・こんな問題も解けないなんてね・・・」

 

 呆れているのかミヤコは、ギンジの横にちょこんと座る。

 

 「なんでこんなになるまで溜めてたのよ・・・馬鹿なんだから!」

 「ふえぇぇ〜ごめんよ〜皆ありがとう!!」

 「ケイタ、来年はちゃんと、勉強して」

 「はい・・・」

 

 カエデもレンもケイタを囲んで叱っている。

 

 「麦茶が入ったぞ」

 

 そんな冷房の効いたリビングに、ミドリコが麦茶を用意して皆に配る。この暑い時期、冷たい麦茶が火照った身体を冷まして、更には水分補給まで兼ね備える最強の夏のお供である事は、間違いないだろう。

 

 そんな冷たい麦茶を飲み干したカエデは、ギンジの隣に座る。

 

 露骨に嫌そうな顔をするミヤコと、明らかに敵意を出すカエデがギンジを挟んで今にも一触即発な雰囲気になる。

 

 「またか・・・」

 

 どうにも二人の相性は悪いらしく、ほぼ毎日こうやってギンジを挟んでは口喧嘩をし合う。

 

 「くふふふ、ギンジ君の事を好きじゃないなら、離れなよ」

 「あんたこそ、ギンジじゃなくて身体目当てなんじゃないのかしら?」

 「やめろよ・・・」

 

 いつもヒートアップするこの二人の喧嘩の内容は、お互い一つの感情が大きいから毎日大事に発展する。

 

 神宮カエデも、鈴村ミヤコも・・・。

 

 二人とも佐久間ギンジに恋をしているから、出来る事ならこの時間を独り占めにして、ギンジと一緒に居たい・・・という事なのだが、どうにもこの時間帯、夜だと衝突が産まれてしまう。

 

 朝から夕方までは、だいたいギンジとカエデは一緒に行動する事が多い。

 

 夜から明け方までは、ミヤコがギンジの寝込みを襲う事も多い。

 

 お互いおおよそ4、5時間程は一緒に居るのに、まだギンジを取り合っている。

 

 「ギンジはモテモテだね」

 「ふふ、そうだね」

 

 ケイタとレンは苦笑混じりに、その光景を見て楽しんでいる。

 

 ミドリコは最早見慣れたモノで、ある意味では嫉妬し、またある意味では面白いとも思う。

 

 真夏の夜・・・ギンジ達は思い思いにこの日常を楽しむ。

 

 「くしっ」

 

 ミヤコがくしゃみをする。

 

 「大丈夫か?」

 「んん・・・なんだろう。ちょっと寒いかも」

 

 半分は怪人とは言え、ミヤコは人間。風邪っぽくなることもあるだろう。

 

 「エアコンの温度を少し上げるか」

 

 ミドリコがリモコンに手を伸ばしたが、そのリモコンの小さなモニターには、26℃という、平均的な温度を表示されていた。

 

 だとするとおそらくミヤコの体調の方が悪いのだろう。

 

 「はっくしょん」

 

 誰でも聞き慣れたそのくしゃみを次に放ったのは、ケイタ。

 

 「うう・・・ミヤコが言うとおり、寒いかも」 

 

 二人して夏風邪でも引いたのだろうか。

 

 「ミドリコ、温度はどうなってる?」

 

 ギンジがミドリコに聴くと、ミドリコは先程見たモニターの温度を伝えようとするが、それと同時にミドリコのスマホに着信音が鳴り響く。

 

 緊急のアラートなのか嫌な緊張感が漂う音に、ミドリコはすぐにそのスマホを取る。

 

 なにやら話し初めてしまったので、ギンジがリモコンを取りに席を立つが、ミヤコがそのままギンジの座っていた面積まで倒れ込む。

 

 「くふふふ、ギンジ君のぬくもり!ぬくもりっ!」

 「気持ち悪い事言ってんじゃないわよ!っていうかどきなさいよ!」

 「カエデモンキーもぬくもりを欲しい?ぬくもり、あげないよ?」

 「いらんわー!」

 

 二人の言い合いはまだまだ続きそうだが、カエデもどこか震えている様に見えた。

 

 「エアコンの温度、26℃だってよ。そんな寒いか?」

 

 温度を伝えたギンジ。そうして伝えてくれたギンジも、口元から白い息が漏れ出る。

 

 まるで冬の外で話す様な白い息は、このリビングに居る全員がそうなっている。

 

 「わかりました!直ぐに向かいます!」

 

 ミドリコがスマホでの話を終えると、私服の上からすぐにジャケットを羽織る。

 

 「済まない、公安局の方で怪奇現象に合っているらしい。私はオフィスに向かう」

 「こんな時間からか?それに怪奇現象って・・・」

 

 詳しい内容は解らないようだが、どうやらオフィスの入り口が氷漬けにされて部屋は寒く、誰も出られないらしい。

 

 「・・・間違いなくヘルブラッククロスの仕業じゃねーか?」

 「あたしも今同じ事思ったわ・・・」

 

 ギンジとカエデの勘の鋭さ・・・というか当たり前の襲撃の形には最早驚く事は無いのだが、二人は戦闘が発生するかも知れないと警戒する事にする。

 

 「レン?大丈夫?」

 

 ケイタが自分の恋人であるレンへ心配するが、彼女は特に何も起こっていない。それどころかあまり寒そうにもしていない。

 

 急激に冷え込む様になったこの空間にて、ミドリコは急ぎ脚で玄関のドアを開けると、その視界に現れた季節外れな光景に息を飲む。

 

 「なんだこれは・・・」

 

 その光景は白く美しい銀世界。

 

 雪が降り、しんしんとした寒さが街に降り積もっていた。

 

 「おいおいおいおい!なんで雪が降ってるんだ?」

 

 この急激な冷え込みは、明らかに異変であると知り、ギンジも玄関に飛び出た事で、その異様な光景を目の当たりにする。

 

 「どうして雪が・・・」

 

 レンも訝しむ表情をする。

 

 レンにとって見れば大雪というのは、未来で最後に見た光景。大切な仲間であり、家族を残してこの時代へとやってきた悲しい過去がある。

 

 「さむっ・・・ど、ドアしめて・・・」

 

 ケイタもやってきて、玄関を閉める事になる。

 

 「くふふ。これは多分・・・環境兵器じゃないかな」

 「ヘルブラッククロスの・・・陸地支配型の、突撃兵器、そう記憶している」

 

 ミヤコの言葉に、レンが頭を悩ませる形で、覚えている事を話す。

 

 「そうだね・・・でもわたしが完成させていないのに、どうして開発が進んだのだろう・・・?」

 

 自分が居ないのに、ここまでの事をするとはヘルブラッククロスも相当追い詰められているのか、それとも実験と称した試験運用なのだろうか。

 

 理由は不明だが、このままでは全員凍死してしまう。それほどまでに寒くなってきた。

 

 「と、とりあえずもう一枚服を着ろ!」

 「一枚増やしたぐらいでどうにもならないわよ!」

 「後は、俺が温めてやるから!炎の力で!」

 

 ギンジの言うとおりに、全員がとにかく急いで洋服を一枚増やす。

 

 「カエデ、変身すれば、少しは大丈夫だよ」

 

 カエデとレンの持つヘヴンスーツは、あらゆる環境に適応できるすぐれものとなっており、言われたままにカエデは変身する。

 

 しかしそれでも寒い事には変わりない。

 

 リビングでは無く、部屋の面積が小さい談話室に集まると、ギンジは炎を力による熱を放出し始める。

 

 天然の暖炉の様に部屋が温まり、窓は外の気温と屋内の気温差によって結露が出来始める。

 

 「ヘルブラッククロスの襲撃だとしたら・・・どうやって返り討ちにするよ」

 「くふふ・・・ギンジ君あたたかいね〜」

 

 ミヤコの顔はうっとりして蕩けている。しかし、全員が一度それを無視して、話を続ける。

 

 このまま部屋に籠もっていても、状況は打開しない。

 

 なにかしらの策を講じなければならない。

 

 ミドリコはこの大雪の中、過酷な道のりを超えて公安のオフィスに向かわないと行けない。

 

 同じ職場で戦う仲間を助ける為に、なんとしてもこの極寒の道を乗り越えないとならない。

 

 次にこの環境兵器止めるチームの編成。

 

 この環境でまともに動けるのは、ギンジ、レン、カエデの三名。

 

 そして寒さにやられて動けなくなるのが、ミドリコ、ミヤコ、ケイタの三名。

 

 「俺が残るしか無いか・・・?」

 

 ギンジは暖房係になるのか、間違いなくこの部屋から動けないだろう。

 

 ミドリコ、ケイタ、ミヤコを連れて外に出ることも可能だが、ギンジの力がいつまで持つのか解らない。

 

 「そうなると、私とカエデしか、外に出れない・・・」

 「仕方ないわね・・・あ」

 

 カエデはここである強力な助っ人の存在を思い出す。

 

 「バカミヤコ、オーク怪人は動けないのかしら?」

 

 この街の大雪について、オーク怪人が何もしていないわけが無いと思ったカエデは、ミヤコにそう聴いてみるが、ミヤコは首を横に振る。

 

 「残念ながら、オークは今連絡に出てくれなくてね。くふふ、わたしが呼んでも返事しないとは、こんなの初めてだよ・・・」

 

 期待が削がれてがっくりしているミヤコ。

 

 「環境兵器とやらは、どこにあるのか反応とかは無いの?」

 

 ケイタも作戦に口を出し、ミヤコは手元の端末を操作してみるが、何も答えられない。そもそもそんな反応がどこにも無いのだ。

 

 変わりに出てきている反応は2つの怪人反応。

 

 しかしながら、それも反応があるだけで、どこに存在しているのかが良く解らない。

 

 「手詰まりだな・・・」

 

 そうこうしている間にも雪は強くなっているのか、部屋はどんどん冷たく、寒く、そして暖かさも通用しなくなってきている。

 

 「・・・どうする、レイナかサクラかルカか、誰か呼ぶか・・・?」

 「いや・・・熊沢さんは、今千葉の方へ応援に出ている。済まないが、呼べないだろう・・・」

 

 ミドリコとレイナは警察同士色々と情報交換を行い、今現状では南度固化市には居ないとの事。

 

 同じ度固化市にいるとすれば、後はサクラだけだろう。

 

 「サクラに連絡すればいいのね?」

 

 カエデがスマホを使ってサクラに連絡する。

 

 「中央でこんな状況なんだ。北も凄い事になってんだろうな・・・」

 

 最早今のヘヴンホワイティネスは、この大雪によって動けなくなってしまっている。まともに動く為には、1人か2人、協力者が必要になる。

 

 スマホの着信音が、暖かさを徐々に失いつつある部屋の中で、鳴り響き、焦燥感がひたすらギンジ達の背中をチリチリと刺してくる。

 

 「お願いよサクラ・・・出て!」

 

 カエデの言葉も無情にも届かず、スマホの着信は繋がる事は無かった。

 

 「・・・こうなったら・・・俺が、ここに残る。カエデとレンはなんとしてもミドリコをオフィスに連れて行ってくれ・・・」

 

 ギンジも息が詰まっているのか、力を出し続けるのは非常に苦しいらしい。

 

 「公安の仲間も大切だろ?ミドリコの職場を守るのも、ヘヴンホワイティネスの役目だと思うぜ」

 「・・・解ったわ」

 「私も同意した。ギンジ、ケイタを、お願い」

 「任せろ・・・」

 

 この大雪の中、ミドリコは冬用の毛皮のコートと、冬用のストッキング、それから雪地に適応した軍事用のブーツを履く。

 

 とにかく寒さに敗ける訳には行かない。氷漬けにされた公安のオフィスへ向かわないと行けないミドリコ、そしてそれの援護に回るカエデ、レン。

 

 見つけ次第ヘルブラッククロスの環境兵器を、確実に破壊する。

 

 「頼んだぜ・・・俺もなにかあれば必ず合流するからよ・・・」

 「くふふふ、ギンジ君はわたしと一緒に熱い夜を・・・」

 「頼んだよ、カエデ、レン!」

 

 相変わらず無視されるミヤコと、戦えないケイタは親友と恋人へ応援を伝えると、ミドリコ、カエデ、レンは頷くと、大雪の舞う銀世界へと飛び出した。

 

 向かうは繁華街エリア外れのオフィスビルエリア、公安局。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 怪人四天王・・・。

 

 そう呼ばれるのは総統が造り出した、四名の怪人。

 

 彼らは総統直属の四人で、それぞれ特徴的な戦闘能力を持つ。

 

 雪の怪人は、天候を操り大雪と氷を操る。

 

 ロストナンバーとなった赤鬼の怪人は剛力から繰り出す、空気の撃ち出し。

 

 鏡の怪人はこの世と左右を反転させる世界への引き込み、そして鏡そのものを使用する遠距離攻撃。

 

 骨の怪人は体積を使用して、ほぼ無限の骨の攻撃、変形。

 

 総統に造られ、忠義を誓った彼らに心は存在しなかったのに、赤鬼は恋を覚えて離反、その後ロストを確認。

 

 雪の怪人は最近は自分の能力を使用して、他者を傷つける事を、しょうがないとは思いつつも、大雪を発動している。

 

 骨の怪人は総統の命令は忠実だが、その実何を考えているのか解らないという不可解な所も多い。

 

 鏡の怪人は総統とヘルブラッククロスという組織を、盲信している。

 

 今回の街の襲撃はドクターパープルの指示の下、雪の怪人、鏡の怪人が実働して、その作戦を開始させた。

 

 いつまでもヘヴンホワイティネスの好きにさせては行けない。必ず今日仕留める。それが総統の希望であり、真に秩序のある世界を創れるのだから。

 

 「こんな時間に攻撃を命令するとは・・・流石は総統閣下でございますね」

 

 黒色に染まる、雪化粧の模様がついた着物を着た、色白の肌を覗かせるのは雪の怪人。彼女の声は落ち着いており、そして気品を感じさせる声音を持っている。

 

 彼女の横に佇み、背中を向けているのは鏡の怪人。

 

 白いヴェールを着用して肩と背中を出した大胆な衣装は、戦乙女の様な力強さと雰囲気をまとわせている。

 

 包帯の様な布で眼を隠し、普通の人間となんら変わりない肌を露出した鏡の怪人は、普通なら見えていないモノが見えている。

 

 2人が立つ場所は、繁華街エリアの巨大ショッピングモール・クアッドタワーの屋上。

 

 大きな真四角に区切られた屋上で、観覧車と観葉植物で彩られた一種の小規模なテーマパークとも呼ばれるこの場所で、雪の怪人は大雪を発動する準備を整えていた。

 

 鏡の怪人は雪の怪人の援護・・・もしかしたらあのヘヴンホワイティネスが先んじて妨害に来る事を想定し、戦闘員ではなく四天王が直々にここまで立っている。

 

 妨害に来ないのであれば、大雪を振らせて動けなくなった人間達と共に、一網打尽にする。

 

 そしてもう1人、骨の怪人は工場エリアの襲撃、この作戦に入っている。

 

 骨身だけの彼ならば、ほぼどんな環境でも問題なく行動が可能かつ、力の低下という事もない。

 

 環境兵器や、環境を操れる雪の怪人が作る独壇場において、デメリット無しで動けるのは、彼の大きな強みだろう。

 

 「・・・本当に大雪をふらさないとならないのね」

 

 小さく聞こえる訳でもないが、雪の怪人は口元を着物の袖で隠しながら言うと、空に溜めた雪の塊を発動させる。

 

 「・・・それじゃ、始めるわよ」

 

 両手を握り、大雪が降り出す。最初は勢いが無く、夏の熱気にすぐ解けては雨粒に変わる程のモノであったが、それはだんだんと冷たい氷になり、やがて雪となり白く綺麗な粒が街へ向かって降り立つ速度を早めていく。

 

 冷気をも操る雪の怪人の能力により、気温がどんどん下がっていく。

 

 夏から秋へ、秋から冬へ、そして冬から凍土へ・・・。街の気温そのものを雪に適応出来るように、怪人としての力をどんどん発動していく。

 

 限界を感じさせないその力は、鏡の怪人からしても恐ろしい(美しい)と思わせる。天候そのものを操れる怪人なんて存在は、鏡の怪人が知る中でも彼女だけ。

 

 怪人としてもその実力はかなり上の部類だろう。

 

 ──もしかしたらあの進化の怪人をも超え、この私でさえも・・・。

 

 能力だけで見れば間違いなく最強の強さであろう。

 

 やがて大雪が中央度固化市を襲うのを確認すると、鏡の怪人も複数の鏡の破片を取り出し、身体の周りに展開させる。

 

 彼女もまた、ある場所の襲撃を命じられている。雪の怪人の護衛はここまでだ。

 

 能力を発動した今、雪の怪人に手出し出来る存在はほとんど居ないだろう。

 

 「・・・変な気を起こさないようにね、雪」

 「この私がここまでしてあげてるのよ。あなたこそ気を緩ませない様にする事ね」

 

 高圧的な口調で言い返されるが、このまま言わせておこう。これでこちらが逆上すれば、雪の怪人の弱点を出してしまう。

 

 弱点を出しただけで彼女が弱くなるなんて事はないが、一応念の為に雪の怪人の神経を逆なでしない様に、鏡の怪人はうなずいた。

 

 それだけの行動を終えると、鏡の怪人も行動を開始する。

 

 彼女の向かう場所は、警察、それも組織犯罪に特化した捜査、及び鎮圧を目的に行う公安と呼ばれるチームを、粉砕しに向かう。

 

 目的はオフィスビルエリア・公安局の崩壊。それをするだけでも、ヘルブラッククロスには大きな支配への一歩となる。

 

 抵抗するならば殺せば良いし、降伏するならば真の世界で生きれる一歩を共に踏み出せる。

 

 命が惜しいと思い、少し賢い猿ならばすぐに降伏する。

 

 元々公安への襲撃は、作戦の内容には入っていなかった。今回の作戦に一つ提案を加えた男が居た。

 

 その者の名は柏木タツヤ。怪人であれば誰もが彼に震えてしまう、謎多き大幹部の1人。

 

 自分が本来の所属としていた組織である公安を、こうも簡単に襲わせるとは、さすがに総統も驚かれたいた事を鏡の怪人は思い出す。

 

 彼は本当に人間なのだろうか。考えてもしかたない事だが、どうしても不安な気持ちになる。

 

 総統にも気に入られているタツヤの事を悪く言うつもりではないが、怪人として何か・・・恐ろしい気配を常に感じている。

 

 怪しいとも思うし、力による支配に誰よりも実現に向けた行動力を持つからこそ大幹部なのだが・・・。

 

 「今は別の事を考えないといけませんね」

 

 怪しいのは自分も同じだ。こんな大雪の降る中、こんな格好をしているのは自分だけだ。

 

 総統にも期待されている今回の作戦。ヘヴンホワイティネスをあぶり出すのにも使えて、かつ街の一部をそれぞれ怪人四天王が破壊出来る。

 

 両方達成できれば御の字、ヘヴンホワイティネスを撃破するだけでも、後々他の怪人にでも襲わせれば、どちらに転んでもヘルブラッククロスの勝利だからだ。

 

 「始めようか」

 

 鏡の怪人がクアッドタワーから飛び降り、オフィスビルへと向かう。鏡の破片はそれぞれ雪を映し、はたまたビルを映し、もしくは鏡の怪人を映し、あるいはヘルブラッククロスの未来を映し出している。

 

 雪で濡れて凍りついたコンクリートに着地すると、鏡の怪人はオフィスビルエリアへ向けて進撃を開始した。

 

 「ヘヴンホワイティネス・・・総統閣下に仇なす愚者め・・・来るなら来い・・・!」

 

 その瞳は何を見ているか解らないが、表情だけははっきりと悪意に満ち溢れ、整った顔立ちの美女とう顔とは裏腹に、怪人としての恐ろしさを兼ね備えていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 中央度固化市、工場エリア。

 

 急にやってきた季節外れな大雪と、気温の急激な低下によりここで働く人々は屋内にて避難していた。こんな大雪ではまともに出歩けないし、車で帰るのも大変な事には変わりない。

 

 そんな工場エリアの中央の道には、大雪による妨害をものともせずに骨の怪人が突き進んでいた。

 

 「コノ道ノ先ダッタ筈ダガ・・・」

 

 戦闘員達の噂話程度にしか聴いたことしか無かったが、この工場エリアには異世界に繋がっているという、地元民の他愛ない噂話で盛り上がる時があるようだ。

 

 しかし骨の怪人はかつてここに1人で偵察に来た時、ピンク色の彗星──そう見えたからそう呼んでいるだけのモノが、ネットをかぶせた建設中の建物の上から、飛び出て北の方角へ飛び去った事を覚えている。

 

 アレはもしかしたらヘヴンホワイティネスや怪人とは違う、この世ならざる力の一端かも知れないと、その時は骨の怪人は初めて目撃したソレに感動した。

 

 工場エリアへの襲撃はきっと何かのチャンスだ。それを掴む事に成功した骨の怪人は、この工場エリアへと脚を運んだ。

 

 あの強力な力の反応が何かを突き止め、そして手中に収められれば、きっと総統へのいいお土産になるはずだ。

 

 「アノ力ガ何ナノカヲ知ラネバ」

 

 雪がかぶり覆い尽くしていても、見覚えのある建造物を見上げる。

 

 きっとここの最上階に何かがある。

 

 あるはずだ。

 

 「ううぅ〜寒い・・・どうして、大雪が」

 

 骨の怪人の横から、桃色の髪を揺らして杖から降りるのは、ヘルブラッククロスの報告書に上がっていた例の存在・・・魔法少女の姿が現れた。

 

 「・・・」

 

 骨の怪人の空洞の頭蓋骨の中では、ある事に合点が行く様に、そしてそのパズルみたいなピースが、全て繋がりつつある不思議な感覚を覚えた。 

 

 ピンク色、眼の前に居る魔法少女もピンク色だ。

 

 そして、この世ならざる力の反応をも感じる。

 

 眼の前の少女は何かを知っている。魔法少女という報告が上がってるなら尚更だ。

 

 「うわっ!!?びっくりした〜!」

 

 サクラの目の前にいるのは、ドクロそのものの姿に、胸骨からあばら骨にかけた空洞の中に、ドス黒い球体が浮いている、怪物の存在。まるでおばけの様な恐ろしさもあるが、なによりも見逃せないのが、頭蓋骨部の瞳の箇所・・・空洞に合わせた大きさの黒と、赤い瞳。

 

 それだけでこれは怪人という存在なのが解る。

 

 「何者ダ?貴様ハ?」

 

 しわがれた様なだけど強い口調の声に、サクラは急ぎ後方して、魔法の杖を構える。

 

 この一瞬で臆さずに戦おうと言うのは賞賛できるが、骨の怪人が狙っているのは、この子が使うだろう力の方に興味がある。

 

 「魔法ノ力ダナ?」

 「あなた、ヘルブラッククロスの怪人・・・よね?」

 「知ッテイル事ハソレダケデイイ。ソノ力、我ガ組織ノ為ニ持チ帰ラセテ貰オウ!」

 

 問答無用で襲ってきた骨の怪人に、サクラはさらに後方へと下がり、壁を背に真上へ飛び出す。上空から見下ろす様に、魔法陣を展開させては、寒さに敗けない炎と熱の光線の魔法攻撃を突き出す。

 

 マジカルフレイムクリン。サクラが撃ち出す魔法の中で、脳内詠唱のみで打てる数少ない魔法が、下にいる骨の怪人へと勢い強く落ちていく。

 

 やはりこの力は魔法・・・通常の人間や怪人では扱えないこの超常的な力・・・。

 

 普通の人間や怪人であれば、この力は使用は出来無さそうだが、例えばこの力を持つ魔法少女と、怪人との間に子供が産まれた場合、魔法は遺伝するのだろうか。

 

 (怪人ト魔法少女ノ、ハーフか・・・コレナラバ、更ニ我ガ組織ノ繁栄ヲ望メル!)

 

 期待が膨れ上がる。その力を手に入れる為に、骨の怪人は怪人四天王としての任務・工場エリアの襲撃に新たなミッションを追加する。

 

 魔法少女も捕まえる・・・と。

 

 鉄よりも堅く、石をも砕く強度を持つ自分の骨を、形を変えて肩から飛び出させると、それらは尖った原始的な弾丸となり、サクラへと飛んでいく。

 

 サクラとしてもやるべき事があり、ここまで飛んできたのだが、中央は大雪、やっと到着したら、ヘルブラッククロスの怪人との戦闘。

 

 魔法少女は今日も大変であった。

 

 「とりあえずささっとこんなやつやっつけて、ギンジくんに連絡しないと!」

 「抜カセルモノカ!」

 

 骨と魔法がぶつかる音が、未完成の建造物の中で鳴り、その風圧で外のネットに付着した水分を含んだ雪を跳ね落とす。

 

 襲撃はひとつのイレギュラーとなって確実に、この街を襲っていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 公安局。ここは一般的には警察、刑事の集まるただの警察署に見える場所である。

 

 国を脅かす凶悪で強大な犯罪や、それに準ずる組織に対しての対策及び逮捕の為に動く公安局に、今最大の危機が迫っていた。

 

 「だーくそ!なんだってこんな寒いんだ!んにゃろぉ!」

 

 オフィスの入り口まで寒さに耐えながらも、藤原が思い切り凍った窓のドアを蹴破ろうとしている。

 

 緊急事態として拳銃も抜いたのに、このドアは暑い氷に覆われてビクともしない。そんなドアに何度も八つ当たり気味に攻撃するも、そのドアの氷に押し返されて藤原はすっ転んでしまう。

 

 堅く冷たいタイルも氷張りになりつつあり、革靴とは最高に相性が悪い。

 

 「藤原さん?もうそろそろ、やめましょう?」

 

 ドアの破壊と脱出に賛成だった職員は全員諦めてしまって、各自暖房のある部屋に密集してしまっている。

 

 イロだけはガチガチと歯を鳴らしながら、藤原のその無謀な行動を見守っている。

 

 「はぁ・・・くっそ!どうせこんなのはヘルブラッククロスの・・・自分勝手な作戦・・・襲撃のせいだろ!柏木の奴はどこに行ったんだ!?」

 

 どこかからか漏れ出てきている冷気に身体を冷やし、それでも諦めない藤原は一張羅の赤いジャケットを腕に巻きつけ、氷のドアへと再び突撃する。

 

 同じ公安の柏木タツヤは先程まで、このオフィス内に居たはずなのだが、今はどこにもその姿が見えない。

 

 「ふぅーーっ・・・・ふぅーーっ・・・柏木さんなら、上手く逃げられたのかも知れませんね?」

 

 かじかんで真っ赤になった指先に吐息を強く当てて、イロはそう答える。

 

 1時間前まで、うだる様な暑い夏そのものの季節だったのに、何も考えていない一瞬のうちに冷えて来て寒くなり、凍土となってしまった。

 

 きっと柏木タツヤは、異変に気づきすぐに応援を呼ぶ為に先に脱出したのだろう。昔から気が効く奴だ、それぐらいの事はしそうだと、藤原もイロも考えていた。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 おじさんにはきつい重労働的な感覚でも、なんとかここを脱出して、甘白ミドリコの合流を出来るようにしないと行けない。

 

 彼女であればきっと、脱出の為の手段を何かしら出してくれる筈。そう信じたからこそ藤原は、ミドリコに連絡したのだ。

 

 今思えば何か気温に異常があると知ったその時から、屋外に出るべきであったと、タツヤと共に外に出ていれば、なにかしら良い方向へと事が進んだかもしれない。

 

 「今はもうどうにもなりません・・・一度暖房のある部屋に、戻りましょう?」

 「次温まったら、もうおじさん外に出たくなくなっちゃう」

 

 うるうるとしたおじさんの涙目は、22歳のイロからすると非常にキモくて嫌になるが、今はそんな事を言っている場合ではない。

 

 「駄目です?このままでは、凍死してしまいます?」

 「なら、お前だけでも戻りな」

 

 一応イロの方が上司なのだが、ヘヴンホワイティネスの情報を深く知っている者同士、気兼ねなく距離感は近いままで話している。

 

 時刻は20時56分。

 

 この気温で果たして自分達は生きれるのだろうか。

 

 もはや具合が悪くなって倒れてしまう人も居る中、藤原もイロも諦めずに氷の壁と戦ってきたが、これはどうしようも無い。

 

 「正義のヒーローごっこのあいつら・・・の登場に期待するしか無いか・・・」

 

 苦い顔で吐き捨てる様に言うと、藤原は赤いジャケットを腕から外して、シャツだけの姿で一先ず暖房の部屋へと戻るのであった。

 

 そんな公安局近くの道路では、車の中で凍りついて死んだ人々や、雪から逃げるのが遅れてしまった人々を、鏡の中にしまいながら、鏡の怪人が歩いている。

 

 軽く鼻歌交じりに歩く目隠しした女性の姿は、生きている人が居れば異様な光景に見て取れる事だろう。

 

 街の外はおそらく数え切れないぐらいの人間が、氷漬けにされている事だろう。大雪に埋められてその姿は見えないだけで。

 

 そして屋外はほとんど全滅に近いが、屋内の方はまだ寒さに抗っているのか、まだチラホラ明かりの奥に人の影を確認できる。

 

 「こんな大雪に抗おうなんて、やはりザコの人間は・・・愚か、そういう事、ね」

 

 鏡の怪人は、自分の能力で飲み込んだほとんどの人間を、愛しそうに眺める。本当に愛しく思うのではなく、飼っている虫に向ける程度の愛情でしか無いのだが・・・。

 

 「・・・ここが公安局、ですか」

 

 鼻息を抜きながら話す鏡の怪人は、氷漬けになったドアへと能力で取り出した鏡の破片を発射しようとするが、右側から急接近してくる存在に気づき、大雪に包まれた車のそばに姿を隠す。

 

 相手によっては戦う事になるかも知れない。それがヘヴンホワイティネスなら間違いなく交戦する事になるだろう。

 

 「ぬおおおお寒い!寒い!雪が顔に当たる!」

 

 何か毛皮のコートに身を包んだ女性が、憎き怨敵であるヘヴンホワイティネスの片方に担がれて運ばれて来た。

 

 「文句言わないでよね!こうじゃないと到着するまでに、ミドリコが死んじゃうわ」

 「同意。これでもなるべく、風が当たらない様に、してあげた」

 

 担いで来たのはヘヴンホワイティネス三人だ。しかし気になるのが、初期のメンバーしかココに来ていないということ。

 

 進化の怪人が居ないとなると、好都合と判断したのか鏡の怪人はヘヴンホワイティネスの目の前に姿を表し、歩み寄る。

 

 「初めまして・・・ヘヴンホワイティネス」

 

 余裕は見せない、変わりに出しているのは確実な敵意。

 

 肩を出した戦乙女の様なヴェールは、この大雪の銀世界とは明らかに場違いな服装になっている。

 

 そして見るだけでも解るが、この目隠しさんは間違いなくヘルブラッククロスの怪人。それを見ただけで理解したカエデとレンとミドリコは鏡の怪人へと臨戦態勢を取る。

 

 「この大雪と寒さ・・・あんたの仕業なのね?」

 「いいえ違います。まずは、自己紹介を。私は鏡の怪人・・・ヘルブラッククロスの怪人四天王、と言えば解りますかな?」

 

 怪人四天王。その単語はミドリコには色濃く記憶に残っている。自分の為に命を賭した怪人・・・赤鬼と同じ領域に立つ怪人の事だろう。

 

 「報告によれば、貴女が公安所属の・・・甘白ミドリコ、ですね」

 

 礼儀正しく姿勢の良い鏡の怪人の仕草は、どことなく戦闘の体制を緩ませる。

 

 「残念でした・・・彼にとっても思う所はあったのでしょうが、組織に取っても惜しい男を亡くしました・・・」

 

 悔しそうな口の形を取り、胸に手を当てながらも悲しそうにする。

 

 鏡の怪人のこれは油断を誘う演技だと言うことを、ミドリコは直感ではあるが見抜いていた。しかしながら、カエデとレンは顔を合わせて、戦いの姿勢を解いてしまう。

 

 「赤鬼の怪人は良い奴でした・・・組織の為に真面目に働き、そして愚かにも人の為に生きようとして・・・」

 

 そこまで話した鏡の怪人の頬を、弾丸がかすめる。

 

 「・・・お気に召しませんか?彼の生前の武勇伝は・・・大量虐殺のお話とか、きっと涙を流して・・・」

 「もういいしゃべるな。私の命の恩人を、なぜだかお前が話していると・・・嘘くさくてかなわない!」

 

 反吐が出そうな顔をして、ミドリコは拳銃を構えていた。

 

 おそらく鏡の怪人の話す赤鬼の事は、ほとんどが嘘。職業柄、人の嘘を見抜くのには慣れている。

 

 これでも嘘を貫き通すのであれば、本来は不殺を貫くミドリコも、今回ばかりは我慢ができそうに無いかも知れない。

 

 (・・・私は、なんでこんなに怒っているんだ・・・?)

 

 なんなのだろうか。このむかつきは。この怪人は例え真実でも、知っている事であろうとなかろうと、知った風に話すのが気に入らない。なんとなくそう思ってしまい、あとは拳銃の引き金を迷いなく引いていた。

 

 (・・・いいや、例え何が真実であれ、もう赤鬼は居ないんだ!)

 

 心に刻んだのだ。彼の生き様を。赤鬼が死んだ時に、涙まで流したのだ。

 

 仲間であろうとも、赤鬼の怪人という漢を、侮辱にも近い言葉で語るのは許しがたい。

 

 「ミドリコ、やるのね?」

 「無理、しないで。ミドリコにはスーツが、無いから」

 

 環境に適応できるスーツとは違い、ただの毛皮のコート。それしか着ていないミドリコであるが、もう一つの拳銃を引き抜く。

 

 寒くとも関係ない。

 

 「ありがとう2人共。今の私は、ものすごく燃えているよ・・・!」

 

 怒りか、それともミドリコの知らない赤鬼を語られる嫌気か、理由は解らないが、とにかくこの怪人は気に入らない。

 

 「ふふふ・・・そう、じゃあここで死ね!ヘヴンホワイティネス!」

 

 鏡の破片を複数枚展開させて、鏡の怪人とヘヴンホワイティネスが戦闘を開始する。

 

 「あんたを倒して・・・この雪を止めてやるわ!」

 

 カエデの叫びも、ミドリコの怒号も、レンの眼差しも、全てが煩わしい。

 

 「私が敗ける事なんて・・・ありえないわ!」

 

 鏡の破片が雨の様に降り出し、それらをレンのビーム剣ダブルで斬り払われる。真ん中に柄が取り憑いた両刃のビーム剣は雪と同時に鏡の破片を、斬り崩す。

 

 「必殺!エンジェルキャノン!」

 

 インパクト同じ姿勢から、腕を突き出す時に両手を組み合わせる。行き場を失った衝撃波が、掌の中で膨れ上がりその抑えられない程のデカイ衝撃波を、思い切り撃ち出す。

 

 小規模なバウンドを繰り返すボールは、積もった雪を弾き飛ばしながら鏡の怪人へと飛んでいく。

 

 鏡の怪人の手が鏡となり、その衝撃波を映し出すと衝撃波が跳ね返ってくる。

 

 「私に任せろ!」

 

 取り出した拳銃二丁を思い切り連射する。腕を突き出しながら、そして周りながら、さらには腰の左右に手を構えた西部劇のガンマンの様な姿勢で、どんどん弾丸を撃ち出す。

 

 衝撃波は、ミドリコの弾丸に押し敗けて、鏡の怪人、ヘヴンホワイティネスの間で爆発して風圧を生み出す。

 

 雪を弾き飛ばした爆発は、良い眼くらましになったであろうと、鏡の怪人の前に、カエデとレンが突撃する。

 

 「覚悟しなさい!」

 「覚悟・・・それはそちらよ!」

 

 怪人四天王を撃退して、この異常な大雪を止めないと行けない。焦りもあるが、まずは確実にこの敵を倒そう。

 

 そう胸に誓って、カエデ、レン、ミドリコは新たなる強敵に立ち向かうのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 路地裏による建物の背中が織りなすこの迷路は、身を隠して逃げるのには最適な場所だ。入り組んだ道の先々が、出口と繋がっておりながらも、実は出口の手前、左に曲がれる見えづらい道を通れば・・・等と考えれば、簡単に追手を振り払える迷宮だ。

 

 不意打ちもできれば、隠れる事も出来て、さらには自分の住処も作れてしまう。そんな無敵の秘密基地と言うべき場所にも、やはり弱点がある。

 

 それは天候だ。

 

 オーク怪人の隠れているこの場所は最高の隠れ家で、多少の雨風程度ならば、問題なく暮らせるぐらいには完成されてきている。

 

 しかし・・・今は状況が違った。

 

 暴風の様な音が、建物の向こう側から聞こえるのだが、ここには風はそこまで入ってこない。

 

 問題は上から降ってくるモノだ。

 

 「なんだこの雪は!!」

 

 流石に季節外れなこの大雪に、オーク怪人もなにかおかしいと怒り出す。こんな環境まで操れるのはドクターミヤコしか居ない筈だが、連絡も無しにこんな事をするとは思えない。

 

 「・・・ブヒ、だとすれば・・・ヘルブラッククロスの方か・・・」

 

 ヘルブラッククロスにはいずれ戻るつもりでは居る。どちからかと言えば、オーク怪人の個人的な考えで言えば、力による支配には理解を示せるし、力があればどんな事をしても許される。

 

 そんな古の千年王国が築き上がるのであれば、これほど怪人である自分にとって嬉しい話しは無い。

 

 ・・・だがそれはあくまでドクターミヤコが暮らす世界であれば、の話しである。

 

 ドクターミヤコが暮らしやすい、生きやすい世界であれば、オーク怪人とてそちらに付いていきたい。

 

 「今・・・ドクターの御身に何かあれば問題だ。この馬鹿げた作戦を開始したのは、誰だ・・・紫か?それとも・・・」

 

 リコニス・・・彼女の場合はここまで大規模な事はしないだろう。

 

 短期決戦を望んだり、他人の妨害をする事に心血注いでいるからだ。

 

 紫・・・この男は、どうにも怪しい。ミヤコの席をいつでも奪える様に、龍、毒蛾、機械の怪人を造っていた。もしこの男がドクターミヤコの抹殺に動いた結果、この大雪を降らせる作戦であれば、必ず止めてやろう。

 

 柏木タツヤ・・・この男の事は正直苦手だ。しかしながら組織への忠義は厚い男であることは理解している。

 

 頭は相当切れるし、実力もある。大幹部として今回、何かしらの任務に付いている可能性はある。

 

 「いずれにせよ・・・この大雪の原因を突き止めねばならんな」

 

 オーク怪人は路地裏の自室を飛び出して、凍った道を歩く。

 

 雪化粧に彩られた銀の道となる繁華街は、ホワイトロードと名付けた方がまともに見えるぐらいには大雪が降り積もっている。

 

 「・・・この雪の出どころを探らねば」

 

 寒さに震えている場合じゃない。もしこの寒さにミヤコがやられていると思うと、オーク怪人は寒さを忘れられる。

 

 覚悟の一歩を踏み出して、オーク怪人はホワイトロードと名付けた繁華街エリアを駆け出すのであった。

 

 

続く

 

 

 




お疲れ様です。

いやーなんというか最近すこぶる調子が良い。

なんか、こう、めちゃ良い!背骨はボキボキなるんだけどね!

今回はキャラネタを・・・・・・書きま


す!

鏡の怪人
自分以外の怪人四天王はもしかしたら総統の事を信じていないと思い込んでいる。また、話す内容には嘘が多く、嘘をつくと眼をギョロギョロと動かしてしまう為、目隠しをしている。

雪の怪人
高圧的な口調でしゃべる事が多い怪人だが、じつはかなりの泣き虫。
力強い殿方に、めちゃくちゃにされたいらしいが、身体は究極に冷たい為、恋の熱を知らない。

骨の怪人
魔法の力を持って帰れば、きっとヘルブラッククロスの為になると思っている。しかし、彼はまだ知らない・・・魔法の力を手にするとどうなるか・・・

甘白ミドリコ
赤鬼を侮辱したり、ありもしない話で変な事を話すのはやめてもらおう!

さて次回は、各怪人四天王vsヘヴンホワイティネス、サクラ、オーク怪人のバトル展開になります。

主人公ギンジが居らず、かつこの奇妙な組み合わせ。どうなるか楽しみですし、どうやって話を動かすのかが楽しみです。

ちなみに同時刻では、レジスタンスvs3怪人編の始まりになっています。繋がりをもたせたのに、あんまり繋がっていない様な話になってたね、ごめんね

それではまた次回!
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