アトラクションの対義語はレパルションです。
意義は認められます。
今回のお話で通算50話!!ひゃっほー!そして新章が始まります!
ちょっと書きたい本題のお話までは少しだけ前置きがあるのですが、ちゃんと繋がる様にがんばりますので!
今回は珍しく・・・というか始めてのリコニス主軸回になり、しかもカエデとぶつかるZOY!
それではどうぞ!!
49・退屈な日常と満たされない心
ヘルブラッククロスにはいつから居ただろうか。
物心が付く前か、それともただ気がついたらこの組織に入隊していただろうか。
リコニスは自分が学生として生きる傍ら、一心不乱に自分に迫りくる退屈を払拭させる人生を送っている。
曖昧な所だが、ぼんやりといつから居た・・・その気持ちと考えの方が大きい。
「・・・そろそろ演じなきゃ、か」
退屈。それこそがリコニスの強敵。刺激のある毎日を送りたい。
お金だけでは得られない、法を無視した攻撃の日々。それだけを、自分が死ぬその時まで送り続けたいと思っていた。
洗面台の鏡の前でヘアスタイルを整えて、リコニスは仮の姿として与えられた、畑中リコとしいて今日は学生という人物を演じなけらばならない。
瓶底眼鏡をかけて、ヘアクリップをつけて灰色のカーディガンを着れば、いつものつまらない方の
「さ、行こうかな」
リコニスが演じる畑中リコという人物は友達が少ない、成績だけは優秀な根暗ちゃんというモノ。不用意な攻撃が出来なくなるという、総統の指示の下でのこの姿に、毎日リコニスは苛立ちと殺害衝動が大きくなっていく。
これが欲求不満ならば今すぐにでも発散したい。
そうやって生きている。襲撃命令や敵勢存在があれば、とにかく一番槍となって攻撃しに行くのがリコニスなのだが、そうヘルブラッククロスの敵ばかりも増やしてはいられない。
「は〜退屈退屈・・・つまんないなぁ」
そんなリコニスにも学生という身分上、気になる相手というの者も作らないと行けない。
より社会に溶け込み、ヘルブラッククロスへの戦闘員補充を行う為の命令と常任務。
「学校に居る奴らなんてみーんな胸しか見てないしなぁ〜・・・」
同じ歳の学生達なんて女の子を性的な眼で見る事しかしていない。それをリコニスは自信を持つと同時に、煩わしいとも思っている。
陰気な学生である畑中リコは、その抜群のプロポーションを持って尚、学生達とは誰一人として手を繋げた事は無い。
否、繋ぐ必要がない。自分より弱くて、闇を知らない人間なんかに、自分の身体なんて触らせないし、いかがわしい目線を持たせるのも正直嫌だ。
「はぁ〜いっそ全部殺したら楽しそうなのになぁ・・・あ、学校を壊して退屈を払拭させられるなら、それもアリかな。いやいや、全員ヘルブラッククロスに入れるために洗脳しちゃうのも、古今例を見ない素敵な作戦〜・・・」
そこまで言ってからリコニスは口を紡ぐ。
「っといっけな〜い。そろそろ演じる方に入らないと」
今日も退屈でつまらない一日が始まる。
畑中リコとして、しなくてもいい学生生活を行わないと行けない。
「それじゃ・・・行こうかな」
時期的にはまだ夏休みなのだが、リコの通う西度固化市の高校で生徒会のイベントの為に、ある学校との共同学習を行うとの事。
こう見えても畑中リコという女の子は、生徒会の書紀を務めている。
学校のメンバーとしてこんなどうでもいいイベントに脚を運ばないといけないとは、生徒会に入るのでは無かったと後悔もしている。
夏休みはまだ一週間残っているが、それはほぼ全てヘルブラッククロスにささげている。そうした方がもっと有意義だから。
「・・・ギンジちゃんみたいな強い人が居ればいいんだけどね〜」
佐久間ギンジ。ドクターミヤコの造った最高傑作。
ヘルブラッククロスから離反し、あのヘヴンホワイティネスと行動を共にする事を理想として、組織へ妨害を行い続けているあのイレギュラー。
怪人としての能力は常に進化を続け、他人の能力を吸収するという今までの怪人の常識を覆した最強の怪人。
ギンジと戦えるのであれば、退屈を忘れて一心不乱に命のやり取りが出来る。そして何より、初めて会ったあの時から退屈を感じない不思議な人。
それ故にアモーレでの交戦を終えた後は、ずっとギンジの事を考えている。
今何をしているのか?
今日は何時に起きたのか?
昼ごはんは食べたのか?
好きな女性は居るのか?
それともゲイなのか?
私の事は考えていてくれるのだろうか?
何にしても興味が尽きない。本当に毎日彼の事だけを考えている。
「・・・また会いたいな」
許されるのであれば全てを投げ出して、ギンジと戦いたい。
しかしヘルブラッククロスの天敵である、ヘヴンホワイティネスに身を置いているギンジとは、いつかまた会える気がしている。
それも遠く無い内に・・・。
自宅を出てリコは学校へと脚を進める。いつもの見慣れた通学路を進み、学校まで歩いていく。
しずしずとしたおしとやかな動作は、陰気な雰囲気さえ無ければ誰もが声をかけたくなるような美少女と言った印象があるかも知れない。
先程まで退屈だと思っていたのに、歩くリコの頭の中はギンジの事でいっぱいになっていた。
もしこれを気になる相手として見れるのであれば、ヘルブラッククロスの命令を一つこなした事になるのだが、事はそう簡単でもない。
「つまんないなぁ」
思い通りにならないもどかしさと、再びギンジに会いたいという気持ちが大きくなる。
ギンジの事を思えば思うほど、胸の鼓動は早く大きく脈打つ。
この気持ちがよく解らない、何かを知らないリコは再びギンジに会える事を楽しみにしつつも、学校へと向かってるのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
夏の生徒会室では、中央度固化市の野明神高等学校の、文化祭の実行委員が客人として迎え入れられていた。
秋に向けた学校行事だが、正直リコは参加したくない。
どうやら今年の文化祭は、他校の力を借りて両校の宣伝などを強く打ち出したいらしい。いずれヘルブラッククロスに全て壊されるのに、呑気な雰囲気をリコは内心ではかなり気怠くしている。
「えー始めまして。西高の生徒会長の・・・えー石川です」
元気が無いのか、石川はだるそうにしている。そもそもこんなイベントに興味が無いというのが本音である。
しかしながら中央高の女子生徒は皆可愛いから、そっちの方に興味が湧いてしまう。
「始めまして!」
中央高の1人の男子生徒が元気に挨拶する。声の大きさには、リコも少し驚いたがその男子生徒は返事が返ってくる前に挨拶を続ける。
「野明神高等学校の次期生徒会長になる、真鍋アオハルです!本日はお世話になります!お互いよりよい文化祭が出来る様に頑張りましょう!」
生徒会長になることが決まっているアオハルは、実行委員長として西高に来ていた。
元気溌剌としていて、しかし礼儀正しい所に真面目な雰囲気と頼りがいのある姿勢が見える。
その隣に居るのは生徒会長として活動をしている者が礼儀正しく座っている。
あとは実行委員会として活動している、複数名も西高へと訪問しており、その複数の中には神宮カエデも学校へと来ていた。
リコの視線には中央高の奴らの数名の男子とわざと眼を合わせて、こちらに興味を惹かせている。
しかし何人かの女子・・・特にあの神宮とか名乗る女の子は、目線が強く、何か他の生徒とは違う雰囲気を持っている。
どうやら彼女達の通う中央高は、何かの大きな事件によって学校が破壊されたらしく、修繕に1週間かけた事が影響して、変わりに一週間学校の夏休みが早まって登校になっているらしい。朝は一先ず、この実行委員の仕事として、中央高の人達がこの西高へと来ていたのだ。
レクリエーションやミーティングを行った後は、少し彼女と話してみようか。
退屈でどうでも良い文化祭の話しなんて、本当に無意味だ。それよりも特殊とでも言うのか、1人だけ雰囲気の違うあの神宮カエデという女の子に少しばかり興味が湧いた。
(もしかしたらヘルブラッククロスに向いてるかもね〜アノ子)
(さっきからこっち見てるけど、あたし何かしたかしら?)
お互い愛想笑いだが、思惑は全く違っていた。
気が強そうという印象を持ったリコは、神宮カエデに何か他の人とは違う・・・上手く説明できないが、そういった何かを持ち合わせている様だった。
(戦闘員補充のノルマもあるし・・・そろそろリコニスちゃん行動開始しちゃおっかな〜っと!)
リコはすぐに頭の中で計算を開始すると、神宮カエデへとターゲットを集中させるのであった。
コンタクトする為の話題は・・・学生らしく・・・恋バナで行こう。
ほとんどの場合は知っている人の居ない、ヘヴンホワイティネスの中身、佐久間ギンジを使って、この神宮カエデを陥落させようとも思う。どうせ失敗しても殺せばよいのだから、何も問題は無い。
・・・・・・・・・・・・・・・・
文化祭に向けたミーティングを一通り終えて、中央高はそろそろ学校に戻ろうと支度を始める中、畑中リコは同じ女子同士としてなんの警戒心を持たせない様に、神宮カエデとコンタクトを試みる。
「あ、あの〜。支度中にごめんなさい」
ゆっくりとした口調、低姿勢、メガネの光で眼を見せない様にするのは、上目使いはリコの常套手段。これを使う事で、だいたいの人間は無視ができない。
「あ、えーと・・・さっき何度か眼が合ってた・・・畑中さん!畑中さんだよね!」
元気にかつ、しっかり名前を覚えてくれていたらしい。
そんなカエデからすると、この畑中リコという人物には眼が合ったという印象しか今の所は持ち合わせていない。
どこか見覚えのあるような気がしないでも無いのだが、この畑中リコという人物を、不思議そうに見つめる。
どう見ても1クラスに1人は居る、根暗と言う表現は悪いが、そういった印象がパッと出て来やすい印象のリコへ、カエデはニコニコしながら会話を続けようとする
「今年の文化祭ではよろしくねっ!あたしも色々手伝うからね」
「あ、ああはい。よろしくおねがいします」
勢いでなんとなくお礼を返す。リコからしても、この神宮カエデと言う少女にはどこか聞き覚えのある声をしている。
とは言え、記憶をたどっていてもこの2人がであっている事は無い。お互い記憶の中を、最低でも今年中では出会った事は無いはずだ。
「どうかしましたか?」
低く甘い声でリコがカエデの顔を見上げる。若干背が小さいのか、リコはいつもの様に上目使いで小首をかしげる。
「えーと・・・なんと言うか、あの、ごめん・・・どこかであたし達会った事あるっけ?」
たはは、と笑いながらもカエデの眼は鋭くつり上がっている。顔立ちの良さがこれにより際立つのだが、それでも普通の人より美人だと印象が崩れない。
「うーん・・・私もどこかでお会いしたような気がするんですけど・・・」
しかし記憶には無い。そもそもリコの本性は、ヘルブラッククロスの大幹部リコニスそのモノだ。普通の一般市民であろう神宮カエデとは会った事があるなんてありえない。
「不思議だね。本当になんとなくなんだけど、会ったような気がするってだけなんだけどね」
「本当に確かに。ひょっとしたら運命?だったりして」
「あはは。無い無い!」
2人して談笑が始まる。
中央高の他の生徒達もまだ時間があるからか、西高の生徒達と文化祭の事だったり、ゲームの事だったりで、談笑が始まっている。
「それで・・・あの、急にこんな事話すのもなんだと思うんだけど・・・」
「ん?なになに?」
興味を引くような言い方で、リコがアタックをけしかける。
実は恋で悩んでいる、いつもの手段でカエデに興味を出させては、ヘルブラッククロスの戦闘員として取り込もうという算段。もし失敗するなら殺す。
他の大幹部と違い護衛部下を持たない彼女は、基本1人でミスをカバーしないと行けない。
「実は・・・あ、あの・・・好きな人がいまして」
「ええ!?嘘!ホント!?もしかしてあの生徒会長さん?」
「わわ、声が大きいですよ!あと違います!」
あんなやる気の無い生徒会長・石川なんて興味が無い。すぐにぶっ殺せるあんなどうでも良い人間なんぞ、微塵も興味が無い。何度でも言うが興味なんてわかない。カエデの心の隙を作る為には、こういう嘘でもつかないと行けない。
そして神宮カエデは自分の話に興味を持ってくれた。後はうまいことギンジという人物の名前を出して、自宅と言う名の洗脳マシンがあるアジトまで連れて行くしか無いのだが・・・。
どう転んでもただの女の子だ。難しい事は無いだろう。
「えーと好きな人って言うのがですね・・・」
「うんうん」
「強くて・・・勢いのある、力のある人で」
カエデに一通りの特徴を伝える。
「同じ学校の人でしょ?いいな〜恋か〜あたしもしたいなぁ〜」
言いつつもカエデの心の中にも好きな人が居る。
同じヘヴンホワイティネスとして共に戦ってくれている、あの男、佐久間ギンジ。
彼なくしては今のヘヴンホワイティネスは存在していない。ギンジの話では、6月で一人ひとり崩壊させられていたからだ。
一つの滅びの未来を乗り越え、カエデとレンとミドリコの今がある。そのきっかけをずっと作り続けていたギンジには、大きな感謝と恋する気持ちがちゃんと現れている。
だからこそ、畑中リコの言う恋の気持ちが解らない事はない。正直に言えば、自分にそんなお話を聴かせてくれるのは少し違うような気もするが。
「同じ学校だけど、先輩で・・・」
「あ、名前占いとかしてみる?」
今どき占いとは少し古い感性を持っているが、カエデはスマホで占いを始める事にする。
「はたけ・・・なか・・・名前の漢字はどう書くの?」
カエデのこの距離感の近さに、リコは少しだけ苛立ちと殺気が前面に押し出されている。だが、普通とは少し違うこの神宮カエデにバレる訳にはいかないと、それを理性が必死に引っ込ませていく。
「理に子です・・・」
「ふんふんふん、お相手のお名前は?」
そこまで来て、リコは恥ずかしそうにしながらカエデのスマホを借りようとする。
「ごめんなさい、ちょっと恥ずかしいので・・・相手の名前は隠してもいいですか〜?」
「え〜ここまで来て〜?気になるじゃないのよ。あ、じゃあじゃあ、アレよ、あたしが先に占うから・・・どう?」
「ほえ?神宮さんにも気になる人が?」
ここまで来るとリコもカエデもただの女子高生だ。お互い社会の裏で戦っている人物とは誰が思うのだろうか。
「相手の名前・・・見ちゃっても〜」
「えぇ・・・どうしよっかな」
リコの時は見せてくれなかったのに、人の時は見たくなる不思議を上手く操り、リコは画面を覗こうとする。
貴女のお名前は?
【神宮カエデ】
お相手のお名前は?
【 】
その画面に表示された名前の空枠に、リコは衝撃する事になる。
何故なら神宮カエデが入力したその名前が、今現在リコ・・・ではなく、大幹部リコニスとして気になっている男の名前が入力されたからだ。
お相手のお名前は?
【佐久間ギンジ】
「あいつの名前の漢字ってなんだったかしら・・・?」
呑気に占いを始めようとするカエデに、リコはザワザワと波打つ殺気と、この後起こる出来事の楽しみが2つ大きく逆巻き、そして他の人よりも違う雰囲気を持っている事に合点が行った。
・・・彼女は、神宮カエデは・・・。
「ヘ──ホワ──ネス」
「えっ?」
「素敵なお名前だねって言ったんです〜」
リコの目線は瓶底眼鏡の奥では、しっかりとカエデを見つめている。それに加えて、いつものリコニスの鋭い眼光と、ニヤリと開かれた口角は、どこか怪しさをも感じさせた。
「相性ピッタリって出てますよ」
「え?あ、ほんとだ・・・まぁ、占いだしね・・・こんなのどって事ないない」
とは言いつつもカエデの表情は、上機嫌にほくほくしている。
「そうだ・・・ごめんね、やっぱり恥ずかしいから、廊下でいいかな?その占い」
「おーい、神宮君、そろそろ学校に戻るよ」
声をかけたのはアオハルだった。そろそろ電車の時間もあるため、中央高の者達はそろそろ帰らないといけない。
「あ、はーい。あーえっとそれじゃあ、ごめんねリコさん」
「ううん。大丈夫・・・ああ」
鞄を持ったカエデに後ろから耳打ちをする。
今ここで正体を言及するつもりは無いが、リコは一つ大きな情報を得た様な気分で、精神的なマウントを得た気分だった。
「ギンジちゃんにもよろしくね・・・」
「!?」
急ぎ振り返る。あの甘ったるい小馬鹿にした様な声は、ヘルブラッククロスの嫌な奴認定している、リコニスの声音であった事を思い出すが、少し離れた所で畑中リコは西高のメンバーと共に手を振るだけだった。
(・・・気のせい、よね)
振り返ったカエデはも同じ様に手を振り、度固化野名神高等学校の生徒達は、西高を出ていくのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「くそっ!」
ガン!と強い音を鳴らしてアルミのゴミ箱がひしゃげてしまう。
誰も居なくなった生徒会室では書紀の畑中リコが、退屈というただそれだけの空間に3時間以上も残され、あのヘヴンホワイティネスへのマウントを取れたのにも関わらず、リコニスとしてあの場で攻撃できなかった事が悔やまれる。
それと同時につまんないどうでもいい文化祭のミーティングによって、ますますリコニスのフラストレーションが溜まっていく。
今すぐ暴れたい気持ちを、畑中リコとして収めるのであれば、このゴミ箱を蹴っ飛ばす事ぐらいだろうか。
そのままモノ言わぬゴミ箱を踏みつけると、最初に蹴りを入れたへこみからますますゴミ箱としての形を失わせていく。
力まかせに八つ当たりしたからか、少しだけ気持ちはまぎれるのだが、どうしてもこの気持ちがますます解らない方向へと進んでいる。
あのヘヴンホワイティネス・・・身長的にも声的にも、間違いなくヘヴン1と呼んでいる女は、まさかまさかの佐久間ギンジに恋をしているらしい。
それがどうしてもリコニスのイライラを加速させる。
上手く言えないが、一緒に行動を共にしている事を、非常に許せなくなってくる。
毎日ギンジの事を考えているリコニスの胸がぎゅうっと締め付けられる感じになり、胃の中に空洞が出来る様ななんとも言えない気持ちが、沢山めぐりまわる。
「ああーーもうムカつく!!ムカつく!なんなのよ!」
普段は学生を演じる時には決して出さないが、黄金の刀を振り回し、生徒会室の本棚や、ホワイトボードを斬り崩す。
切れ味にモノを言わせた破壊行動に、瓶底眼鏡を落とし、ヘアクッリプも外れるがお構いなしに振り回す。
精神的なマウントを取れていたのに、取れていたはずなのに、何故かあの神宮カエデの好きな人が、佐久間ギンジ・・・それを知ってからリコニスの心が抉れる不思議な感覚。
「・・・」
深呼吸をして少しだけ落ち着きを取り戻していく。
今思う事と言えば、全部壊したいのと、ギンジちゃんに会いたい。
自分でもなんでこう思うのか解らないけど・・・とにかくギンジ会いたい。
窓を開けると熱気が入ってくる。夏休みの熱が、ますますリコニスの脳内を狂わせていく。鼻にまとわりつく鬱陶しい程の夏の空気が、ジリジリとリコニスを焦らしていく。
今すぐにでもギンジを探して、無理やり会わないと、この気持ちが爆発しそうになる。
「苦しそうですねぇ〜リコニスさん」
「・・・柏木じゃん。どうしたの〜?」
学生服のままだが乱れた髪の毛を直して、リコニスは自分の通う学校に現れたヘルブラッククロスの大幹部である柏木タツヤと直面する。
どうやって来たのか、いつからここに居たのか、そしてどうして自分の居場所がわかったのか・・・それらは別にどうでもいいが、とりあえずリコニスは平静を取り繕う。
「いえ、この前のお話なのですが・・・」
柏木タツヤが話していた内容・・・それはドクターミヤコを自分の手中に収めたいから、協力して欲しいと言うモノ。
変わりに対価としてヘヴンホワイティネスに所属している裏切り者である、進化の怪人を差し出すと言う交換条件に、タツヤとリコニスは手を組んでいる。
「貴女の目論見通り・・・っというか当然なのですが、進化の怪人は中央度固化市に居るそうですよ。それも公安のあるメンバーと共に行動をしておりまして・・・ああ、いえ、どちらかと言うと自宅に住んでいる、の方が正しいと思うんですよね」
とある公安というのは、間違いなくあの公安の女である甘白ミドリコの事だろう。
また女性・・・。リコニスの首筋に血管が一つ浮き出る。
「ま、同じ公安ですからね。調べるのはちょちょいのちょい・・・っと言ったところですよ。それに、甘白の自宅にはあのドクターミヤコも居ますからねぇ。どうです?今夜襲撃でも?」
お酒でも飲みに行くかの様な誘い出しに、リコニスは苦しくなっているこの胸を抑える気持ちで、ひたすら顔中に怒りの血管を浮かばせている。
眼を血走らせて、今にも爆発しそうな彼女は無言で、呼吸も荒い。
それだけで了承とみなして、タツヤはスーツの襟首をピッピッと直す。
タツヤがそれを見てクツクツと嗤う。急なお誘いの今夜の襲撃、それはリコニスに取って僥倖。
彼女1人では調べられなかった事が、公安に所属しているこの柏木タツヤのおかげで、ヘヴンホワイティネスの襲撃を直々に行えるのだ。
「必ずミヤコを貴方に差し出してあげるわ」
「ああ、ご心配無く。わたくしも共に出ますよ。紫に怪人も借りて、ね」
「ふ〜ん?紫の怪人って、まだ他にも居たの?」
今現状残っているのは・・・。
触手の怪人、犬の怪人、紐の怪人、
龍の怪人、毒蛾の怪人、機械の怪人、
量産型鎧の怪人、甲冑鎧の怪人、暗黒騎士型鎧の怪人。
これらの怪人達の他にもまだいるのだろうか。
触手と紐は意対化市に赴いた際に、ムーン・パラディースというヒーローを名乗る奴にボコられたと聴いている。故に現在は治療中。
同じく新しい3怪人もヘヴンホワイティネスにより敗北し、現在は治療中。
鎧の怪人はそもそも最近出撃しているのだろうか・・・?
「疑問もあるとは思いますがね。紫はどうやら新たな怪人を造り出した様子で・・・なんと総統の直属の怪人になれる素質を備えているそうですよ・・・クックック」
「・・・興味は無いけど、今夜の襲撃ね・・・楽しみだわ」
邪魔をするならあのヘヴンホワイティネスは全員殺す。
そしてミヤコは泣かす。
最後にギンジちゃんとは全力で殺し合う。
時間やチャンスによっては前後するかも知れないが、とにかくミヤコを奪えればそれでいい。
ここに立つ2人の大幹部は死神とも見れる異様な雰囲気を醸し出しながら、夏の日差しが差し込むこの生徒会室で、悪の美談を話し始める。
それを聴いたり喋りながらとしながらも、リコニスはまたもフラストレーションが溜まる。
この気持ちが何かは解らないけど、とにかくギンジに会いたい。殺し合いをしたいのが一番だが、それよりの合う事で安心感を得たい。
止まらないリコニスのこの不明な感情が、より火をつけて大きく膨れ上がっていく。
今夜、ギンジを始めヘヴンホワイティネスを襲撃する。
どうにかして接近の手段を考えなければ。
「面白い事するわよ・・・柏木」
「もちろんですよ、リコニスさん」
2人の巨悪が嗤うと、それだけでも人気の無い生徒会室は、本当に地獄の様な雰囲気と圧を醸し出し初めて、強く深い黒のオーラが漏れ出ていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今自分がしている事は正しい事だろうか。
本当ならばギンジ達に相談するべきだろうか。
カエデは一週間早く始まった学校が終わると、レンにもケイタにも何も言わずに、再び西度固化市の学校へと向かっていた。
いつも思うのがこの西の方向は、人気が少なく感じ、夜になればなるほどおぞましい悪意が立ち込める街へと変わっている。
不良とかが多く、なによりも治安が悪い事で地元民には有名な場所だからだ。
(あの声・・・そしてリコって名前・・・)
不安が的中しないならばそれでいい。
彼女がただのちょっかいをかけたいだけの性格なら、それでいい。
だがカエデはヘヴンホワイティネス。ヒーローとしてこの街をヘルブラッククロスの驚異から守り、親友であるレンの未来を守る為に戦っている。
そしてカエデも自分の未来を守るために、戦っている。
ツカツカと強い足取りで、畑中リコの通う学校へと向かう。
人気の無い公園を近道して、わずかにも時間を早める。
時刻は17時近いか。まだ西の高校は夏休みだから、今向かってもリコは居ないかもしれない。
それでも不安の種を摘み取っておきたい。これ以上、あんな巨悪の一員に、踊らされるのは勘弁だ。
(学校の門は・・・空いているのね)
理由なんてなんでもいい。忘れ物したとか言えば、他校の生徒でも通してくれるだろうから。
「あ・・・」
まだ空の明るい夏空は、学校を怪しく照らしている。夕日の光が、校舎全体を飲み込んでいる。
そしてそんな校舎の下駄箱のエントランスには、先程学校で占いで盛り上がった、畑中リコをみつける。
「ほえ?神宮さん・・・どうかしたのですか?」
リコの声は確かに聞き覚えのある声。あの甘くて人を小馬鹿にした様な声。
カエデの耳にも残っている、あのうざい声が耳から離れない。
「ちょっと忘れ物しちゃって・・・」
「忘れモノ・・・?」
カエデの顔は少しも焦っているようには見えない。それどころか、見る人によっては怖いとも見える。
「何を忘れたのですか?」
カエデの正体を知ったリコは、先程とは違い警戒の色が強くてさらにはいつでも刺せる様に、カーディガンにナイフを忍ばせている。
もういっそここで殺してしまおうか・・・?そう考える事も出来るだろう。
「畑中さん・・・変な事聴くかも知れないけどさ・・・」
カエデは握りこぶしを作りながらも、畑中リコを睨む。
何も無ければそれでいいのだ。でも不安は無くしておきたいからこそ、カエデはリコを強く睨んでいた。
「・・・ヘルブラッククロスって知ってる?」
「・・・」
問に対するアンサーは無言。ほんわかした雰囲気を一気に無くして、リコはメガネを外す。
ヘアクリップも外して、さらにはカーディガンまで脱ぎ出す。
「・・・これから楽しみな事があるんだからさ〜邪魔しないでよ」
いつものあの甘ったるい声で、リコ・・・いやリコニスがその本性をさらけ出す。
「やっぱりあんた・・・!」
カエデの不安が的中してしまった。あの声を聞いた時に、怪しいとは思っていたが、この畑中リコと言う人物は仮の姿。その正体がリコニスだと知ってしまった。
ならばもう逃げる事はしない。
悪と対峙したのであれば、カエデは戦う事を決意している。
ヘヴンリングからいつものヘヴンホワイティネスに変身すると、カエデはガントレットのギアを回転させながら、リコニスと戦う事になった。
向けられた敵意に反応して、リコニスも自分の装備をどこからともなく出現させては、身体に装着させる。
ラバースーツと黄金の鎧に身を包み、カエデが良く覚えている大幹部リコニスというその姿を見せてきた。
黄金の刀を引き抜き、リコニスはニタリと嗤う。死神にも見えるその迫力にカエデも負けじと応戦の構えを取る。
「今夜は・・・ミヤコを泣かす絶好のチャンスなんだから・・・邪魔しないでよ〜・・・リコニスちゃん怒っちゃうぞ??」
「・・・なんでミヤコを・・・」
「秘密♡・・・あ、でもこれだけは教えてあげる。君のお仲間も、きっと危ない眼に合うんだよね〜」
まさかヘヴン1だけで来るとは思ってなかったが、これなら逆に好都合かも知れない。1人倒せれば、ヘヴンホワイティネスは崩壊したも同然。2人崩せば、ヘルブラッククロスの勝利に等しい。3人殺せば全部ヘルブラッククロスの目論見通りに、事が進んでいく。
多少時間はかかるだろうが、リコニスとカエデは今ここで戦闘を開始するのであった。
「お前を殺して〜・・・ギンジちゃんは貰うわね?」
「あげないわよ!あいつはあたしの下僕なんだから!」
ピキリと苛立ちの血管がまた浮かび上がり、リコニスの凶刃がカエデに迫ってくる。容赦の無い攻撃の数々で、苛烈な激突が繰り広げられるのであった・・・。
続く
お疲れ様です。
今回より50話だ!!!!
50話記念も相変わらずなにも用意していない!
今回から始まる新章も、いよいよ冒険/バトルとタグにあるように、ギンジ達がものすごい場所に向かう予定です。その前置きとなるお話が少しだけありますが、お付き合いいただければと思います!
キャラネタ書きます
神宮カエデ
恋愛と言えば占いという少し古い感性を持っている。
でも恋愛に限らず、占いはなんでも好きらしい。
リコニスがギンジをちゃん付けで呼ぶのを気に入らないと思っている。
畑中リコ/リコニス
実は学生という初期のキャラネタをようやく生かせた。
西の高校は既にヘルブラッククロスによって理事長が人質に取られているので、地道ながらも生徒に洗脳の魔の手が迫っている。
だけどリコニスはそれすらも退屈、つまらないそうです。
このわがまま女め!!
毎日ギンジの事を考えており、会う事で安心感を得たいとまで思っている。
次回はカエデvsリコニス、そしてミヤコの企みが明かされる時!
その時、レンがケイタがギンジが・・・!
紫とか言う変な奴とオーク怪人とか言う変な奴も出てくるよ。
な回です。お楽しみに!それではまた次回!