正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです。

最近休みがなくて仕事ちゅらい。

仕事の休憩時間も書けなくてちゅらい。どうして私がインターン生の面倒を見るのじゃ。。。

っていうか時期おかしいやろがいいい

とにもかくにもコツコツ書いて53話!
今回のお話もお楽しみいただければと思います!
それでは、どうぞ


53・魔王軍の襲撃

 翌日・・・。 

 

 魔王軍としての活動は実に有意義であった。

 

 力があればどんな相手でも従えられる。従わせる事が出来るからだ。

 

 自分の実力に絶対の自信を持っていたナポリタは、過去幾度もオレキエッテ帝国の騎士・クリムパスとぶつかっている。

 

 いつもここぞと言うところで撃破は出来ていないが、剣士、騎士、魔法使いとしてはナポリタの方が実力が上である。

 

 だと言うにも関わらずクリムパスは一切諦めずに、まだ魔王軍に勝てると信じているし、今度は新たな勇者の降臨で息巻いているのだろう。

 

 (その自信に満ち溢れた顔を、悲痛にぐちゃぐちゃに出来るのを、楽しみにしているぞ・・・!)

 

 また再開出来る。今度こそは殺せると信じて、ナポリタは魔馬を走らせて、魔王軍の領域の荒野を、自分の軍勢と共に駆け抜ける。

 

 魔法兵300名、魔法戦士150名、ケンタウロス兵30名、騎空兵100名、そしてこの作戦の大将軍であるナポリタ1名。

 

 魔王直属の親衛隊とも言うべき、ボーンゴーレである彼は地獄をモチーフとした自慢の愛剣・インフェルノを引き抜ける事に心を踊らせていた。

 

 「新しい勇者が如何ほどか、試させてもらうぞ」

 

 オレキエッテ帝国領の国境が見えて来た。再びクリムパスを殺そうとする気持ちと、勇者が強者であるならば、という期待。

 

 ナポリタが大腕を上げて指示を出すと、軍勢が扇状に広がっていき、道中の村を破壊しては帝国の城下町にまで突撃を果たす準備が整った。

 

 「行くぞ、皆の者!」

 

 声高らかに叫ぶと、魔王軍はオレキエッテ帝国へと突撃を開始した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「勇者殿、武器は何が良い?」

 

 今クリムパスと赤鬼が居る場所は、帝国の武器庫。

 

 ここでは大量の武器を保管しており、それぞれ兵士のニーズに合わせた鍛冶場もすぐ近くにある。

 

 そんな薄暗くも溶鉱炉の明かりで照らされる、熱気のある部屋では赤鬼が色々と武器を見る。

 

 しかしどれを見ても刃がついている武器ばかり。剣、槍、刃盾、ナイフ・・・形状は様々だが、どれも赤鬼のお気に召すモノは何一つとして無かった事に落胆する。

 

 「せっかくシシリー王が用意してくださったこの希少金属・オリハルコン、これを使わないのは勿体ないぞ、勇者殿」

 

 オリハルコンと呼ばれるこの世界でも希少なアイテムは、どうやら武器や防具、兵器の為に加工される事が多く、帝国1の鍛冶職人である、ミートソー氏が叩きあげようとハンマーを持ち上げている。

 

 「俺っちは武器はどっちかって言うと、こう、ぶっ叩くモノがいいんだわ。形状は八角でよ、柄の部分から獲物の部分まで長さは均等でさ、細く太くなっていくこういう形状が・・・」

 

 オリハルコンと呼ばれるキラキラ輝く石を、お手玉感覚でコロコロしながら話す赤鬼に、クリムパスは勿体ないと嘆いている。

 

 「いやだから、剣は素人なんだわ。レンの姉御ならうまく扱えるだろうが、俺っちにゃ無理だ。打撃!ぶん殴るのが一番強いんだよ」

 「魔法が使えないのに、打撃で突っ込むなんて無謀だ!多少荒く使っても、刃こぼれなんてしないから、剣にするべきだ!」

 「だーかーらー、俺っちにゃ剣は無理だって言ってんの!」

 「しかし、歴代勇者は、皆剣を使っていると言うぞ!あなたも使うべきだ、剣を!聖剣を、勇者殿だけの最強のひと振りを!」

 

 剣は扱えないと言う赤鬼に、クリムパスも伝統を重んじて説得するが、両者譲らない。

 

 「俺っちは怪人だぞ!聖なる力なんて身体に毒だぜ!そんなの操れる怪人は、ギンジの兄貴だけだ!」

 「今居ない人の事を言っても仕方がないだろう・・・」

 

 クリムパスは今回の勇者とは相当相性が悪いみたいで、頭を抱えている。勇者とは、民を導き剣を取る者であり、それを八角の棒にしたい等、言語道断も良い所である。

 

 「おう大将!このオリハルコン、八角に出来るか?棒だぞ!」

 「へい!任せな!」

 

 赤鬼がオリハルコンを鍛冶職人である、ミートソーに投げ渡すと、彼は気前よくオリハルコンの加工に入り始めた。

 

 「解ったかクリンネス!俺っちは勇者じゃねぇから、剣は使えねぇ!」

 「クリムパスだ!ミートソーさんもそんな簡単に加工しないでください!」

 

 鈍色の鎧が溶鉱炉の光を反射させつつ、クリムパスは赤鬼を押しのけてミートソーの下へと駆け寄る。

 

 「あわわわお昼ごはんですぅーー」

 「ぐっはぁ」

 

 そんな武器庫にお昼ごはんを乗せた台車を走らせた、帝国のメイドであるペンネーが突きこんで来た。赤鬼を避けたのに、クリムパスにはわざとぶつかった様にも見える。

 

 身体をくの字に曲げて、なまくらの武器が入り込んだ木箱の山へと突っ込んだクリムパスを見て赤鬼は爆笑している。

 

 台車は破損する事なく、しかも中のお昼ごはんは無事にさせたままペンネーはオレキエッテ名物のパスタ料理をミートソーと赤鬼の目の前に用意仕出した。

 

 「な、何をするんだペンネー・・・」

 

 腹部を抑えながら、クリムパスが木箱を蹴っ飛ばして出てくる。

 

 「あわわわ勇者様に幸あれ〜」

 

 ぴゅー!っと駆け出す効果音が聞こえそうな走り方をして、ペンネーは武器庫から出ていった。去り際に赤鬼にメイドらしい一礼をしていくと、そのままクリムパスには目もくれずに走り出す。

 

 「慌ただしいメイドだなぁ」

 「くぅ・・・痛い」

 

 赤鬼の隣でクリムパスは腹を抑える。

 

 「女が痛がるのは見てると可愛そうになるぜ」

 「そうか。それでは私の名前をそろそろ間違えないでくれ。心が痛いぞ?」

 

 悪戯っぽく言うとクリムパスは紫色の髪を揺らして、勇者赤鬼を見やる。赤鬼も目を合わせていやらしい笑みを浮かべる。

 

 黒く赤い瞳は吸い込まれる様な気分もしては、どこか底の無い闇が広がっている様にも見える。

 

 ジッと見つめれば見つめるほど、勇者の瞳から不思議と眼が離せなくなってくる。

 

 「クリオネ、腹減ってるか?」

 「クリムパス、だ・・・」

 

 相変わらずの呼び方だが、今のは悪い気はしなかった。

 

 「飯食ったら武器を完成させるからよ、街でも行ったらどうだい勇者さんよ」

 「おっ今日中には出来るのか!」

 

 ミートソーがパスタを食べながら、ハンマーを片手にコツコツ叩いている。オリハルコンの加工は彼に任せれば問題無いと、この帝国の人間は声を揃えてそう言う。

 

 「まぁ、一応の完成形だけどな。あとの細かい調整の所は、実物を見て触って一緒に造ろうぜ」

 

 実際に使う人の事を考えると、見かけだけの武器ではそれは勇者の武器として成立しないのだとか。

 

 だから形だけの完成形を持たせてからが、職人の腕の見せ所であり、赤鬼の言う八角の棒をちゃんと要望として聞き入れたのだ。

 

 「絶対に剣の方がいいはずだ〜!」

 

 悔しいのかクリムパスはまだ喚いているが、赤鬼もミートソーももう聴いていない。

 

 勇者とは本来剣と盾を持ち、悪の魔王軍との戦いに挑むのがクリムパスの勇者のイメージなのだが、それは最早過去の理想なのだろう。

 

 半ば諦めも入っているが街に出るまでは、クリムパスは剣に大きな一票を入れ続けていた。

 

 赤鬼は残念ながらそんな事に首を縦に振ることは一切無く、剣という要望はついに叶うことは無かった。

 

 (こんなに大きい身体しているのに、剣を持ったら絶対かっこいいのにな〜・・・)

 

 哀れクリムパス。

 

 そんな哀れパスと、赤鬼は街へと向かう傍らずっと打撃vs斬撃について語り合う事2時間の戦いを繰り広げるのであった。

 

 「クリムパスです」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 街での散歩を終えた赤鬼とクリムパスは、ミートソーへのお土産である、ドワーフの地酒を持ち帰り、城壁へと入る。

 

 木製と鉄枠を混ぜ合わせた吊橋を超えて、2人は訓練場の横を歩く。

 

 兵士達の掛け声や、魔法の炸裂音。木剣同士がカンコンぶつかりながら、激しい訓練を行っているのが音だけでも解る。

 

 「カエデハウスの訓練部屋を思い出すぜ」

 

 この訓練という単語だけでも、ヘヴンホワイティネスとしてのかつての自分を思い出す。

 

 カエデハウスの3階には、バーチャルで動かせる怪人のデータを映し出す訓練部屋があり、よくそこではカエデとレンとの訓練に付き合う事もあった赤鬼は、カエデの容赦のない猛攻を思い出す。

 

 もちろん強靭な身体を持つ赤鬼は、無傷ではないが攻撃があまり通らないし、データとは違い勝つ為に動こうと考えることが出来る為、訓練には重宝されていた。

 

 「・・・勇者殿?」

 

 朱に染まる訓練場を歩くクリムパスは、隣の赤鬼が歩みを止めて訓練する兵士達を見つめている事に気がつく。

 

 「やっぱ・・・戻りてぇな。姐さんに会いてぇや」

 「勇者殿・・・」

  

 駆け寄りながら、声をかけようとしたが、赤鬼が小さくつぶやいたその言葉に、クリムパスは手を伸ばせなくなってしまった。

 

 (そうだ・・・勇者殿だって、召喚命令に応じた訳ではない)

 

 こんな世界に飛ばされた事は赤鬼からすればまるで意味のわからない、セカンドライフ。正確にはイセカイテンセイライフ。

 

 クリムパスとは違い、赤鬼には恋する人が居て、仲間が居て、兄貴と呼び慕う赤鬼以上の存在がいる。

 

 「・・・」

 

 この大きな背中を見て、それでもこんな強い身体を持った赤鬼よりも強い人が居る。

 

 きっと心を許し、頼れる男なのだろう。ギンジと呼ばれているその男性は。

 

 赤鬼はこの世界で心を許せる相手が居ない。勇者ともてはやされるだけの存在であり、きっとこの帝国に住まう者達が想像している以上に、ストレスとかもあるかもしれない。

 

 「死んだ俺っちが言うのも変な話だぜ。戻ろうや、クリスマス」

 「クリムパスです」

 

 相変わらず名前を間違えるのも、彼なりのストレス解消なのかもしれない。

 

 「・・・仲間を想い続ける事は、難しいことだぞ。いつまでもその気持ち、忘れないでくれ、赤鬼」

 「・・・言われるまでもねぇや」

 

 勇者殿と呼ぶのはあくまで騎士としての職務上でだ。今もその職務全う中ではあるが、この一瞬だけは赤鬼の気持ちに配慮してみたつもりだ。

 

 赤鬼が少しだけ嬉しそうに歩みを早めると、クリムパスもそれに続く。今日はこの後に残っているのは、ミートソーの造った武器の試験運用だけだ。

 

 それを楽しみにしながら赤鬼とクリムパスはオレキエッテ帝国の城内へと帰還した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 いくつもの爆発が連鎖的に繋がる、例えるなら宇宙の様なトンネル。そこを超えると、次は暗闇。眼を開いても閉じても暗い闇一色の世界。

 

 しかしまたたく間に宇宙の様な空間へ、またも飛び出して爆発がまたいくつも繋がっていく。

 

 (・・・ココハ何処ナノダ)

 

 頭蓋骨の上半分だけを残した骨の怪人は、なんとかしてこのトンネルを抜けたい。しかし残された力は僅かなモノで、そこらに居る小学生にも力で劣るまでになった骨の怪人は、もはや繰り返されるこの光景に、考えるのやめる瞬間まで来ていた。

 

 魔法少女との戦いに敗れ、なんとか生きながらえても、結局はこの様に無力。

 

 総統にも申し訳ないし、なにより力を求めた結果がこのざまでは、生きている意味すら見いだせなくなる。

 

 こんなはずでは・・・。そう思っていてももう仕方がない。

 

 最早これまでか。残った力を使い果たして、抜ける事の無いこの神秘のトンネルを抜ける事適わず、骨の怪人は死を覚悟していた。

 

 「魔法ノ力ヲ、手ニ出来ナイト言ウノカ・・・」

 

 命を賭けて魔法少女に死を欺いたのに、こんな終わり方は望んでいない。全てはヘルブラッククロスの為、骨の怪人は己の命をこの組織に費やしてきた。

 

 「オォ、総統閣下・・・ッ!」

 

 またも骨の怪人の視界には爆発が白く広がってくる。

 

 今度はその爆発が遠くではなく、自らに迫ってきていた。

 

 「ヘルブラッククロスニ栄光アレェ!!」

 

 光に飲まれ、その身を爆発に包まれる。最後の最後まで闘争の世界へとついていく事が出来なかった事を悔やむも、骨の怪人の人生においてはとても充実したそんな生活であった。

 

 「・・・」

 

 風がふわりと骨を撫でる。

 

 その視界が広がると、神秘的な世界のトンネルではなくなっており、雷が遠くで光り、生物が生きていけるとは思えない毒沼、枯れ果てて腐った木々・・・。

 

 荒野。一言で言うならば、そういうのが正しいこの場所に、骨の怪人は降り立ったのだ。

 

 生物は居なくとも、骨の怪人が感じ取る気配には、何かの生命体の反応を感じた。

 

 一先ずはそこに向かおう。そこで人でも魔法でもこの身に取り込まないと、この命を維持することは出来ないのだから。

 

 「アノ建物ニ向カウカ」

 

 骨の怪人の向けた視線の先、そこに生命体の反応を感じる。その建物は、禍々しく、怪しさ不気味さを醸し出した、巨城。

 

 そこが魔王の城とも知らずに、骨の怪人は意気揚々と突き進み、血を啜りに向かうのであった。

 

 不思議な場所だが、ここでは自分を打ち負かした魔法少女と同じ気配を持った者の反応も多く感じる。

 

 きっとヘルブラッククロスの有用な戦力を確保して、必ず組織に貢献出来るはずだ。

 

 まだヘルブラッククロスの地獄の灯火は潰えて居ない。必ず元の世界に戻り、総統の実現する力による支配の世界を創って貰おう。

 

 骨の怪人という巨悪もまた、この世界に地獄を創ろうとその一歩を踏み出したのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「ほぉ、こりゃすげぇや」

 

 赤鬼とクリムパスが武器庫に戻ると、ミートソーにより完成させられていたのはオリハルコンを使った棍棒の様な形になった八角の武器。

 

 すべてを叩き砕く様な物々しい形状をしており、調整を必要としている状態のはずなのに、赤鬼からするともうこれが完成でも良いと思えていた。

 

 握れば重く、振えば空気を裂いて、ぶつかれば圧倒的な力で圧壊・・・つまり砕くのだ。

 

 本来の赤鬼が持っていたモノよりも、より密度が高く詰まっていて、なによりも赤鬼が使うことで空気を撃ち出す事も可能になっていた。

 

 「勇者さんよ、本当にそれでいいのかい?いや、ワシは好きだがよ、その形」

 

 本来であれば調整が必要なのだが、赤鬼はこれでいいと大喜びであった。

 

 「勇者は剣なのに・・・」

 

 クリムパスはまだ嘆いているが、赤鬼はもう気にもとめていない。

 

 この武器があればもう誰にも敗けない。そんな気がしてくる気持ちで、赤鬼は再度新しい金砕棒を振り回す。

 

 軽々しく操る赤鬼に、ミートソーは感服している。

 

 「魔力も無しにそんなに扱えるとは驚いたぜ・・・」

 「ああ、実力は本当にあるみたいだ」

 

 ミートソーの隣でクリムパスもうなずいている。

 

 「ヌハハ、本当に良いぜこの武器!これだよこれ。こういうので良いのさ!どらっ!どりゃぁっ!」

 

 振り回す度に空気を裂いて、ボンッボンッと物騒な音を鳴らす。

 

 「オリハルコンの他に、魔鋼鉄、ダークマター、アルマイト、ダークストーン・・・おまけにオーガ・ソウルを入れて硬度は」

 「いやぁそういうのはよくわかんねぇからいいや。とにかくありがとうよ!これでこの国に恩返しが出来るぜ!」

 

 数々の希少なアイテムをふんだんに使っている様だが、赤鬼はまったく興味がなかった。

 

 そんな事よりも、命を拾ってくれたオレキエッテ帝国に、恩義を返すためには戦う為の武器が必要だった。ソレ故に、この八角の金砕棒は非常に嬉しい。

 

 「勇者殿は、本当にその武器が良いのか?」

 「おおよ。クリゴハンも打撃を信じてみろよ、ヌハハ」

 

 上機嫌な赤鬼はまたもやクリムパスの名前を間違える。

 

 クリゴハンとはなんなのか。

 

 「クリムパスです。そんなことより、次の防衛会議だが・・・」

 

 クリムパスも諦めずに訂正し、次の魔王軍の襲撃についての国内会議について説明しようとする。

 

 勇者赤鬼が来てから30日ほどは襲撃に来ていないが、もしかしたら明日には再度襲撃があるかもしれない。

 

 本来ならばシシリー王も含めて、戦場に出る全員で話さないといけない内容だが、勇者である赤鬼にはそれを伝えたい。

 

 否、伝えておくべきなのだ。

 

 「良いか、魔王軍は・・・」

 

 クリムパスがミートソーと赤鬼を混じえて、情報を話そうとした瞬間だった。

 

 バゴオオオーーーン!!!

 

 すぐ近くか、それとも遠くか、大爆発の音。魔法なのか兵器なのか、人為的か事故か。それすらもわからないほどの大きな爆撃の音。

 

 「な、なんでい!」

 

 振動するほどの大きな爆発音に、ミートソーが驚き、ヘルメットをかぶる。

 

 「大将はここに居ろや・・・」

 

 赤鬼は動じて居ないのか、クリムパスを掴んで武器庫から出ていく。

 

 すぐ近くのガラスのある廊下から、辺りを見渡せば特に異変は無いように見えた。

 

 朱に染まった夕焼けの空はもうすぐ青と黒の、夜の時間へと刺し迫ろうとしている。ただそれだけの光景なら綺麗だと思えたが、空には無数の黒い点がいくつも重なって見えた。

 

 「点・・・いや、あれは・・・!」

 

 よく眼を凝らして見つめると、それらが人の形をしているのが解る。そしてその背中には羽根の武装を取り付けたコンキリエ魔王軍の武装兵士、騎空兵。

 

 「な、何故魔王軍が・・・!?」

 「狼狽えてもしょうがねぇだろ。どら、シシリーのとこに行こうぜ」

 

 クリムパスは動揺していたが、赤鬼はすぐにこの魔王軍の目的が解った。

 

 それはヘルブラッククロスが得意としているあの戦術、奇襲というありきたりながら、人数を活かした複数箇所の妨害や進行を目的とした襲撃。

 

 そして目的が無いのならば、こんな大規模な攻撃は行わない。何故なら目的の無い襲撃には兵器や攻撃のリソースを裂かない事を、赤鬼は知っているからだ。

 

 「と、すればだ。王様の首ぃ、狙ってるんじゃねぇかね?」

 「なるほど・・・あいわかった!ジェノベ!」

 

 クリムパスが赤鬼の説明を聴いて納得すると、帝国の王であるシシリーを守るために、魔女ジェノベへと通信水晶で連絡を取る。

 

 溜まっている魔力が水の様に入っており、それが中に入っていれば入っている分だけ、同じ色の水晶と連絡が取れる優れものらしいが、赤鬼はこれをスマホに似ていると思っている。

 

 『無事でしたか、クリムパス。それに勇者様も』

 

 水晶には相手の顔も映る様で、ジェノべが銀色の髪を揺らしながら赤鬼とクリムパスを見やる。その表情は急な襲撃によるのか、焦りが見て取れた。

 

 『こちらは今、帝国の精鋭と大臣達で、円卓会議場に─避─しているわ。クリ─パ』

 「何!?なんだ、ジェノベ!ジェノベ!」

 

 通信状況が悪いのか、声があまり聞き取れなくなってくる。

 

 まだ城下町に被害は無いのか、この城の敷地内に魔王軍が降り立ってきた様だった。

 

 「シシリー王が危ないかもしれない!」

 

 クリムパスが走り出そうとして、それを赤鬼と、武器庫から出てきたミートソーが止める。

 

 「まてまてクリムパス!これもってけ」

 

 ミートソーが手渡したのは、飲むだけで傷や疲労をある程度消してくれる、一般的な回復液の入った小瓶。

 

 それを赤鬼にも握らせて、ミートソーは再び武器庫に戻る。

 

 「ここで籠城するからよ!王を頼むぜ、クリムパス!勇者さん!」

 「無論だ!」

 「へいへい、勇者ね。いいけどよ、この武器に恥じない働きをするぜ、大将!無事でいろよ!」

 

 再度響く爆発の轟音に、クリムパスが魔法を詠唱していく。

 

 「マジカルマジックス・ソーエンズ」

 

 城内の道を脳内に映し、そこから最短で王の居る場所までをナビしてくれる魔法と、素早く移動する為の魔法、この二種類を使い、クリムパスはすぐにその場から移動してしまう。

 

 「王よ!!今すぐに!」

 

 帝国の中でも序列1という騎士の氏使命からか、赤鬼を置いて見えないぐらい早く移動してしまった。

 

 「俺っちもはやく追いつくか・・・あれ、そういえば道わかんねぇぞ・・・おい、ナシゴレン・・・居ねぇ」

 

 赤鬼もシシリー王の所に行きたいが、クリムパスは先に行ってしまい、ミートソーは武器庫籠城の為、内側に立てこもっている。

 

 そして赤鬼は一人で廊下に立っている。

 

 「・・・チッ、しゃーねぇな。最悪ぶっ壊して進むか・・・」

 

 赤鬼は迷子になる覚悟を持って、最悪この城を破壊する事も視野にいれてクリムパスを追いかけるのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 吊橋を超えた帝国の城へと襲撃に来た、魔王軍の襲来により円卓会議場は混乱に陥っている。

 

 「城下町は大丈夫なのか!?」

 

 シシリーの叫びに魔女ジェノベは、すぐに地水火風の司祭たちに偵察に向かわせる。

 

 「直接この城に乗り込んできた可能性は高いですね。王女と王、それに大臣たちはここに居てください」

 

 魔女の魔法で窓を銀そのものに変えて、扉も魔法陣による結界で封印する。外側からは開けられないように、より強力な魔法で、敵の進行を防ごうと言う作戦。

 

 「警備兵や訓練兵はまだ来ないのか?」

 

 普通ならば城を巡回する警備兵がこの騒ぎに乗じて、シシリー王の下に来ていないと行けないはずなのだが、ほとんどの兵士がここに来ていない。

 

 王の護衛兵達が魔法や、武器の準備を整えてこの円卓会議場を守りに入る。

 

 「今すぐ軍事室にいる兵士達に連絡を取ります」

 

 ジェノベが連絡水晶を取り出し、帝国城の兵士達が集まる軍事室へとその番号を飛ばしていく。

 

 『あろーあろー聞こえる?』

 

 軍事室への連絡は程なくして繋がった。だが、出てきた声は兵士とkなお声ではなく、とてつもなくふざけた声音の男性が、ジェノベの耳に入ってきた。

 

 「・・・貴様は何者だ」

 『おれたちは魔王様直属の親衛隊ボーンゴーレ直系・突撃将軍ナポリタ様の忠実な部下・・・マカロと申します。よろしくどうぞオウイエ』

 

 マカロと名乗った男の後ろでは、兵士達の声は聞こえない。変わりに聞こえてくるのは、まるで水を啜り、肉が千切れる様な音。

 

 「貴様はそこで何をしているのだ・・・」

 

 ジェノベは苛立ちと不安を抱えて、マカロを問いただす。マカロの声を聴いていたシシリーは、何かを察して悲しみの色を孕んだ瞳と、眉間にしわを寄せている。

 

 『グールって知ってる?人・・・ってか命をもぐもぐ食べちゃうあいつら。おれの部下なんだけどさ、少し早めの夕飯を食べさせてやってるんだよ』

 

 良く耳をすませば、ぐちゃぐちゃと肉を混ぜる様な音と、べちゃべちゃとみずみずしい音が鳴り、思わず耳を離したくなる不快な音がなっていた。

 

 マカロはグールと呼ばれる兵士変わりを使い、このオレキエッテ帝国の兵士を喰わせていたのだ。

 

 それを確信したシシリーは奥歯を噛み締めて、剣を引き抜かんばかりの怒りを宿していた。

 

 『今からぶっ殺しに行くからよ・・・王女とメイドと魔女は服脱いで命乞いの準備、しときなよ。オウサマは用無いから、すぐに兵士達の所に送ってやるよ。それともあれだ、ご自慢の勇者様とやらに頼ってみなよ、クソザコ帝国!!!』

 「よく回る舌だな。死ぬのは貴様の方だ。国も王も侮辱するとは、よほど死にたがりなのだな」

 

 マカロの挑発に、魔女ジェノベが何も見せない様な声音で淡々としゃべる。こんな安い挑発に乗るほど短期な性格ではないし、しかし王と国を侮辱した事は命を持って償ってもらおう。

 

 『ゲヒヒヒ。気の強い女は好きだぜ〜・・・全裸にひんむいて、帝国領歩かせてやろうか!おれの第209番目の女にしてやるよ』

 「好きに言っていろ。貴様の命日は今日である事が確定したぞ」

 

 そもそも魔女は屈強な男の方が好みだ。こんな卑劣な事を平気でする様な男は苦手だし、好みにも入らない。

 

 言って通信水晶を破壊すると、ジェノベは王に向き直る。

 

 「魔女ジェノベよっ!あいつらは我が帝国の民を、喰らっていたな!この城に入り込んできた帝国を侮辱した者共を、1人残らず殲滅せよ!」

 

 王の怒号に、魔女ジェノベは頭を垂れて美しい銀髪を揺らしながら、その命令を聞き入れる。

 

 ひとまずはこの部屋の防衛は、護衛兵士と自らの魔法による封印で大丈夫であろう。

 

 「敵はすべてこの魔女・ジェノべが殲滅してまいりましょう。国の仇だ・・・!」

 「・・・頼んだぞ、ジェノベ!」

 

 静かな怒りを秘めて魔女が動き出す。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 帝国の城内にて、訓練場では魔王騎空兵との交戦、警備兵も突撃兵との交戦、そして軍事室は制圧され、マカロ率いる屍鬼兵隊が城内を襲いかかってくる。

 

 「いつかあいつらもグールに引き込むとして、まずはこの国の魔女だよなぁ〜」

 

 口を開けば、涎の糸が上下の歯からネバァっと動く。

 

 派手な白いスーツに、両手には黄金の指輪をすべての指につけて、蛇柄の革靴を履いた、下品な男。その印象が大きく見える。

 

 マカロは屍の魔法を得意とする、魔王軍の兵士の一人。

 

 親衛隊の部下として働き、真の世界創造を目指す魔王アマトリに絶対の忠誠を誓う、優秀な男なのだが、女が大好物すぎていつも女を自分の道具みたく扱う。

 

 使えなくなればグール達の餌にすればいい。

 

 「魔女様はきっと良い声で泣くのだろうな〜?」

 

 マカロが下卑た笑いを上げながら、逃げ遅れた警備兵を一人、逃げ遅れたメイドをまた一人喰らわせてはグールの仲間入りにさせる。

 

 「はぁ〜最高に気持ちいいぜ」

 

 城内に居る兵士達は、こちらに立ち向かう者もいれば、恐れて逃げ出す者も居る。その両方を、グールの耐久のモノを言わせたゴリ押しで必ず屍鬼へと種族を変えさせてやる事に快感を覚えている。

 

 「んお?」

 

 歩くマカロ達の目の前に立つのは、見慣れない大男。赤い肌をしており、雄々しい一本角が頭に生えた謎の存在。

 

 間違いなく帝国にこんなやつは居なかった筈だと、マカロは頭の中で考える。

 

 もしかしたらこいつが例の勇者なのかもしれない。

 

 「なんだぁ、テメぇら」

 

 赤鬼が気づいたそのグール達の群れを従える男へと、睨みを効かせて声をかける。

 

 オリハル金砕棒を背中に携えた赤鬼は、グールの群れの中に帝国のメイドや兵士が居る事に気づき、一気に警戒と敵意の視線を出して、半歩後ろに離れる。

 

 「オーガ族?にしては身体がデカイな・・・もっとずんぐりむっくりしている様な気がするが、お前さんは何者だい?」

 

 マカロが余裕な態度で赤鬼へと質問すると、中指と親指を重ねておく。

 

 「俺っちか?俺っちはヘヴンホワイティネスの赤鬼じゃ。この世界じゃなんでか勇者とか呼ばれてるけどよ・・・」

 

 自分が勇者だと言う事を簡単に話してくれた。魔王軍が探し、必ず撃破する帝国が召喚した勇者。

 

 こんな所で会えるとは思っていなかった。マカロが指を鳴らすと、グールの群れが赤鬼へと突撃していく。

 

 「勇者の屍鬼(グール)なんてとても貴重だ!そいつを喰らえ!」

 

 マカロの指示でグールの群れが、狭い廊下に一気に溢れ出しては赤鬼へとその手を殺到させる。

 

 「なんだか知らんが・・・テメェは、帝国の兵士やメイドに何してんだ?」

 「しれた事だろう?おれ達のグール兵にしたのさ!」

 「・・・そうかよ」

 

 マカロの叫びにははっきりと敵意を感じ取り、そしてなにより赤鬼が尊敬するギンジの兄貴が一番嫌いなタイプだとも感じた。

 

 こいつは自分の目的のためならば、心を平気で踏みにじり、かつ誰であれ簡単に命を奪おうとする者。

 

 つまり悪。悪が相手なら正義のヒーローの出番だ。

 

 グールの群れが赤鬼を取り囲みながら、包み込んでいく。

 

 「そうら、勇者のグール!いっちょあがりっ!」

 

 マカロが下卑た笑みを浮かべながら、勝利を確信する。

 

 しかし。

 

 「グルオオオオ!!」

 

 オリハル金砕棒を振り回し、グールのドーム状の集まりにはオリハル金砕棒のひとふりで纏めて粉砕して来た。

 

 「・・・はっ?」

 

 マカロには目の前で起きた事が理解出来なかった。自慢のグールは耐久力に優れ、わざわざ力が増す夜に差し掛かる時間での襲撃を選んだのに、この勇者は一撃でまとめて10体は撃退したのだろうか。

 

 更にマカロの背後に並ぶグール達の一体が、胸から上を爆発させてその身体を四散させていく。

 

 ボンッボンッという肉体が弾け飛ぶ音と、血しぶきが舞い、肉片や骨片が無数に散る。

 

 「なんっ・・・!?」

 「テメェを狙ったのに、まだ上手く行かねぇな・・・!」

 

 赤鬼がオリハル金砕棒を振り回して、打ち出したのは空気。その空気を使い、マカロのグールを爆発させた。

 

 「この悪党がぁぁ・・・!」

 

 血の雨の中で両目を赤く輝かせ、オリハル金砕棒を担ぎあげて赤鬼は、マカロへと一気に接近する。

 

 「・・・ッ何をしている!あいつを倒せ!無理でも押し止めろ!」

 

 グールでは止められないと、本能で理解してしまったが、マカロは自分の身を守るために、この場のすべてをグール達に任せたいと思ってしまった。

 

 (なんなんだ!勇者ってあんなに強いのか??逃げねば、ナポリタ様にご報告を!!)

 「を゛っ!?」

 

 逃げようとしたマカロの前にはグールの身体が飛んできて居た。

 

 血を吹き出しながら身体をひしゃげた死体が、マカロの前に飛んできて真後ろには勇者の気配。

 

 「よう・・・逃げんなよお兄ちゃん」

 「ま、待て!取引をしよう!おれを助けてくれたら、絶世の美女に合わせてやる!なんだったら好きにしても構わない!」

 

 絶世の美女。その言葉は非常に魅力的ではあるが、赤鬼には通用しなかった。

 

 「俺っちには心に決めた人が居るからよ・・・!」

 「な、待て!そうしたら、金だ!金ならいかがかな!」

 「金か〜・・・使い道わかんねぇから別にいらねぇや」

 

 もう交渉の余地は無いとして、マカロはさっきまでの威勢を完璧に無くして、赤鬼に命乞いをしている。

 

 「おや・・・勇者様」

 

 戦闘音を聞きつけてやってきたのは、この帝国の魔女ジェノベ。

 

 帝国城の石の廊下でのこの戦いの有様を見て、ジェノベは感激している。

 

 魔王軍の襲撃に動じず、かつこの先程の通信相手を一方的に追い詰める姿に、微笑を浮かべている。

 

 「驚きましたよ勇者様。まさかもうすでにこのゲス野郎を倒しているとは・・・ふふふ」

 「魔女さんよ、他にも襲撃受けているみたいなんだが、こいつは任せてもいいか?俺っちは他の所も行ってみてぇもんで」

 「ええ、お任せください。ところでクリムパスは?」

 

 赤鬼がマカロの両腕を折ると、痛みに悶絶するマカロを魔女に投げ渡す。そのまま赤鬼はオリハル金砕棒を背中に担ぎ直して、ジェノベに向き直る。

 

 「クリントンのやつは俺っちを置いてオウサマの所行ったぜ。会わなかったのかい?」

 「・・・こっちには来なかったが・・・」

 「ああ、あの序列1の騎士様は・・・我らがナポリタ様が・・・すでに見つけて襲撃してるぜ・・・」

 

 赤鬼とジェノベの話す内容には、マカロが口出しをして、彼の腹部には魔女のヒールが深くめり込む。

 

 「黙れゲスめ。勇者様、クリムパスの事をお願いしても?」

 「任せとけや・・・って言ってもどこに居るかは分からんのだが」

 

 そんな話しをする2人がの真横にあるすぐ近くの窓の向こうから、再び爆発が起こる。

 

 「おのれ魔王軍・・・っ!」

 

 ジェノベは憤りに憤慨する表情で、折れたマカロの腕に力を込める。

 

 爆発の地点では、炎が巻き上がる。雷も同時に巻き上がり、更には夜にふさわしい月の光にも見て取れる力が渦を巻いている。

 

 「・・・!」

 

 赤鬼の眼が大きく開かれる。

 

 こんな唐突な魔王軍の襲撃において、道も場所も把握出来ていない赤鬼に取って最強の援軍。

 

 死後の世界にまで自分のために助けに来てくれたのかと、赤鬼は窓を突き破って行く。

 

 「勇者殿!?」

 

 ジェノベが様子のおかしい赤鬼へと手を伸ばすが、その手は届かない。

 

 「うおおおおお!!!!」

 

 けたたましく叫ぶ赤鬼は、思い切りその爆発の地点まで突き進む。

 

 「痛てて・・・サクラのやつ、変な所で落としやがって・・・」

 「うおおおおお!うおおおっ!兄貴ぃぃぃぃ!!!」

 

 グールの血液を浴びた赤鬼が、その爆発の中心に居た男・・・ギンジへと駆け込んで来ており、ギンジがそれに気づくとただの血まみれの化け物にしか見えなかった。

 

 「うわーーーーー!!!」

 「兄貴!どうして逃げるんですか!兄貴!兄貴ーーー!」

 

 どうみても今の赤鬼はただの化け物であったが、ギンジはわけがわからないため、逃げの一手に全フリしていた。

 

 それを赤鬼は感動の再開をしたいがために追いかける。

 

 「・・・勇者様が追いかけるアレも魔王軍の手先か?」

 

 ジェノベが窓から赤鬼の追いかけるあの男を見下ろすが、今はこおこでジッとしているわけにもいかず、マカロを連れて城内へ侵入してきた魔王軍の兵士を蹴散らしながら、防衛に入るのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 王の危機にすぐにお守りするためには、即座に行動しなければならない。 

 

 この帝国の魔法使いとして働く者であれば、それは当然の事であり一人ひとりの騎士や魔法使いの使命として義務付けられる。

 

 もちろん帝国の序列1として讃えられるクリムパスも同じ事だ。

 

 騎士として、王のすべてを守る者として、絶対なのである。

 

 しかしながらクリムパスも私情が出てしまう程の、苦い思い出もある。元・オレキエッテ帝国の王の最大護衛兵・ナポリタ。

 

 彼は剣の腕も魔法の腕も軍事作戦力もすべてが、クリムパスよりも上であり、憧れの存在でもあった。

 

 誰もが憧れ、尊敬した強き者であり、次期帝王になれるとも噂されるぐらいには高貴な人物であった。

 

 魔法歴の10年前、つまり7890年。

 

 彼は突如として裏切った・・・。魔法の霊石を手にしたいがために、たったそれだけのことで、裏切ったのだ。この国を、王を、信頼を。

 

 そして10年前にクリムパスを打ち破ったあの時から、否、この帝国に騎士として就任したその時からすでに魔王の手先である事を教えてくれた。

 

 それ故に帝国の襲撃や、遠征任務、帝国領での事件にはほぼ必ずナポリタがそこには居た。

 

 クリムパスが任務として行く先々に、この突撃将軍ナポリタが立っている。自分を見下すように、自分を殺すチャンスを伺う様に。

 

 「・・・ナポリタ、来てやったぞ」

 

 クリムパスが鈍色の鎧を戦禍の炎に輝かせて、城壁の内側に笑みを浮かべて立つ男・・・ナポリタの前まで来たのだ。

 

 大きく開けた通路の真ん中、連絡通路としても扱われている城壁の中で、クリムパスとナポリタが対峙する。

 

 呼ばれて来たわけではなく、王の下へ向かう道すがら彼を見つけた。

 

 今度こそ決着をつけるために。王の意思を傷つけたこいつを黙らせるために。

 

 「くっくっくっ・・・お前から来てくれるとはな。今度こそ死なせてやろう!クリムパス!」

 

 ナポリタが叫ぶと魔法の詠唱が始まる。

 

 魔法陣だけが浮かび上がるその魔法攻撃の色は鈍。

 

 無詠唱で魔法を発動する事が出来るのは、このナポリタの得意中の得意技。

 

 「死突(アルデンテ)!」

 

 ナポリタの突剣から繰り出された強力な突き攻撃は、空気を裂き、遠くの石壁にきれいな穴をあける。

 

 間違いなくクリムパスを殺すための大技に、敗けじとクリムパスも魔法の詠唱を行う。

 

 「ソーズマジカル・マジックソーエンズ!」

 

 クリムパスの得意とする魔法は、剣の魔法。魔力で形成された大小形状様々な剣を発射する魔法攻撃が、クリムパスの得意技。

 

 「シルバーアッシュ・ソーズ!」

 

 クリムパスの魔法攻撃がナポリタめがけて飛んでくるが、ナポリタは余裕の笑みを浮かべている。

 

 「これで攻撃が出来ると思っているのかね?・・・まだ我が魔法が発動されてもいないぞ!」

 「!?」

 

 言うとナポリタが先程の魔法陣を発動する。現れたのは剣。

 

 クリムパスよりも強力だと言うのがひと目でわかる禍々しい瞳の取り付けられた剣の召喚によって、それらがクリムパスの魔法攻撃シルバーアッシュ・ソーズを破壊していく。

 

 「バカなっ!」

 「バカも愚かも貴様だ!死ね!」

 

 再びナポリタの攻撃が突きこまれ、クリムパスは身体を石壁に叩きつけられる。

 

 「ぐあっ」

 「終わりだ・・・今までさんざん手こずらせてくれたな・・・!」

 

 ナポリタの凶刃が迫り、それでもクリムパスは諦めていない。

 

 こんな悪の志を持ったやつ、正義の志を持っている自分が敗けて良いはずがない。

 

 「まだだっ!!!」

 

 剣と剣がぶつかり、クリムパスとナポリタはお互いに火花を散らす。

 

 決着をつけるために、今日まで帝国の騎士として研鑽したこの力を、出し惜しみせずにクリムパスは立ち向かう。

 

 「ふはは!その負けん気も、今度こそ潰してくれる!泣いて謝らせてやろう!」

 「ほざくな裏切り者め!お前だけは私の手で・・・!」

 

 剣と剣、魔法と魔法がぶつかる激しい戦いが始まっていくのであった・・・。

 

 

続く

 

 

 

 

 




お疲れ様です。

今回のお話ではまさかの不在宣言を言い渡されたギンジが出てきました。この後の話しの流れ的にギンジだけは必要と思い主人公召喚!

次回はクリムパスvsナポリタからの、赤鬼加勢!

キャラネタ書きます

赤鬼
勇者として手に入れた新しい武器は、オリハル金砕棒。八角で重く硬い。空気を撃ち出す能力も健在。

クリムパス
相変わらず名前を間違われる。ナポリタと対峙した。

ミートソー
オレキエッテ帝国の兵士達の武器を作っている鍛冶職人。
赤鬼と意気投合。
名前の由来はミートソース

ペンネー
台車で突撃するメイドさん。

マカロ
屍鬼の魔法を操る威勢の良い悪趣味な男。
赤鬼にボコられかけたときに、抵抗できないように腕を折られた。魔女を自分の女にしたいが、それは叶わなさそう。
名前の由来はマカロニから。

ジェノベ
魔女。屈強な男の方が好み。

オーク怪人
「しばらく私の出番はなさそうだな」

触手の怪人
「あっしの出番もしばらくなさそうっすわー」

さて次回はvsナポリタ戦!赤鬼も活躍するよ!
ギンジも活躍・・・するかな?

とにかく頑張って次回も投稿します!仕事に負けずに頑張ります!
それでは、また次回!
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