正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです
 
休日だったので筆がノリノリのノリな気分で書き上げました。

魔法界編もこの話で約半分。もしかしたら増えるかもしれないけど、半分。

それではどうぞ!


54・vs突撃将軍

 光輝くトンネル。様々な光がいたる所から差し込み、ギンジ達を連れて行くサクラが上を見上げる。

 

 正確にはこのトンネルに上と下、左右と呼ぶ概念は無いのだが、とにかく向いている方向から上を見上げた。

 

 「ねぇサクラ、魔法界っていうのは、あとどれぐらいで到着するのかしら?」

 

 いくら歩き続けてもその目的にたどり着かない事で、カエデがサクラにたずねてみる。

 

 「うーん、実はもう付いているんだけどね、どこにも門が見当たらないんだよね」

 「え・・・それじゃあ僕達はこのまま歩き続けるの?」

 

 ケイタが一気に不安で顔を青ざめさせる。

 

 「そんな事は無いよ。心配しないで、無理やり開くから」

 「無理やり、開けられるの?」

 

 レンも実は魔法と呼ぶモノには興味津々であった。

 

 「なんでもいいけど、さっさと開けちまえばいいんじゃねーか?」

 

 ギンジはと言うと退屈そうに伸びをしながら、サクラ達に言うと、サクラもそれでいいかと顔を明るくさせる。

 

 「無理やり開けたら何かデメリットもあるんじゃないか?」

 

 ミドリコは拳銃の残弾数を確認しながら言うと、サクラは杖をぐるぐると回し始める。

 

 「んーん。そんな事無いよ!無理やり開けても私の腕なら皆無事に魔法界に到着出来るよ。多分帝国領に降りれると思うけど。あ、ギンジくんだけはどこか適当な所に落とされるかもだけど」

 「なんで俺だけ!?」

 

 あまりにも理不尽だ。

 

 「多分ギンジくんだけは重くて、途中で落としちゃうかも・・・ごめんね」

 「はぁーーー!?」

 

 この宇宙みたいな光景が続く空間で、ギンジの叫びがこだまする。

 

 「まぁギンジは重そうね」

 「確かに。恋愛面でも、ギンジは重そう」

 「た、体重の事だと思うけど・・・」

 「そういうわけだ、ギンジは離脱だな!」

 「人の気も知らねーで好き放題言いやがって!あと恋愛面は重くねーぞ!」

 

 いつもヘヴンホワイティネスの会話はこうなのだろうか。そうだとしたらとても面白くてとても楽しそうだ。サクラは後ろで騒ぎ始めるギンジ達を面白そうに眺める。

 

 しかし魔法界に時間が無いのも事実だ。

 

 あまり悠長に出来ないからこそ、サクラは強硬手段に打って出る。

 

 「よーしそれじゃあ皆行くよ!!マジカルマジカル!!」

 

 サクラの魔法でカエデ、レン、ミドリコ、ケイタ、ギンジが浮かび上がる。

 

 その内ギンジだけは身体が浮かび上がらず、サクラの切り出した魔法の門の光に先に飲まれて行く。

 

 「変な所に落ちたらごめんだけど、オレキエッテ帝国ってとこに向かって!日本語は通じるから!ごめんねギンジくん!」

 「わかったぜ!後で合流するぞー!」

 

 言うとサクラ達も門に飛び込んでいく。否、吸われていく。

 

 光に飲まれて行き、次第に草原や岩山、走る馬とか度固化市では絶対に見ない様な奇妙なモンスターの数々。おおよそゲームや本でしか見ないような存在が居る事で、ケイタは興奮が抑えられない。

 

 「・・・あ」

 

 カエデ達を魔法で運ぶサクラが、何かこわばった面持ちで声を出す。

 

 「今、『あ』って言わなかった?」

 

 カエデが不安そうな表情になりながら、サクラの顔を覗く。

 

 その表情は青ざめてかたかた震えている。

 

 「ごめん・・・道間違えちゃった・・・」

 「ええーーー!?」

 

 カエデの不安そうな表情は、不安そのものに変わってしまった。

 

 だとすれば一人で放り込まれたギンジの不安はいかほどか。

 

 例えるなら海外に無一文で放り込まれるのと同じだ。カエデは一気にギンジが可愛そうに思えてくる。

 

 「私達の方が帝国領に遠い所に出ちゃったよ、どーしよーカエデ」

 「どうしようじゃないわよ!あんたの産まれた場所でしょ!」

 「ギンジが危ない。どうしよう、ケイタ」

 「僕もわかんないよー!どうしようミドリコ!」

 「私に聴かれても困るぞ!」

 

 一気に緊張感が走り出し、ヘヴンホワイティネスと魔法少女は夜のこの世界にへと来てしまった。

 

 とにかくサクラの魔法で帝国領と言う所に行かねばならない。

 

 「急いでかっ飛ばすから、皆振り落とされないでね!」

 

 サクラが魔法でその場にいる全員を持ち上げると、一気に帝国領へと全員で飛んで行く。

 

 「ここからどのぐらいの時間がかかるの?」

 

 カエデの質問にサクラはかなりばつが悪そうな顔をしている。

 

 「そうだね・・・一時間ぐらいかな・・・ほんとごめん」

 「いいわこれぐらい。そんなことよりもギンジが可愛そうだわ」

 「もしギンジくんが帝国に付いていなかったら、私が探すから!行くよ〜!マジカルマジカル・・・!」

 

 サクラが魔法を唱えたと思った次の瞬間には、ジェット噴射の様に動き出し、全員にGがかかるが、明らかな高速度は移動していると解る。そして疾く空を移動していると言うのも理解出来る。

 

 「うわぁ・・・」

 

 ケイタが驚きと感動、ソレ以外にも色々あるが感動する。

 

 普通に生活していれば、こんな世界に飛ぶ事なんてありえないし、非現実的な世界と光景には驚かないのが難しいだろう。

 

 「本当に来たんだ・・・魔法界・・・!」

 

 とにかくありえない事の毎日に、角倉ケイタはこの世界で戦う力を身に着けたい、そう心から思うのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「兄貴!兄貴!俺っちですよ!赤鬼です!」

 「来るな!そんな血まみれの赤鬼なんて・・・え、赤鬼?」

 

 帝国の兵士も魔王軍の兵士も両方ぶっ飛ばしながら逃げるギンジに、赤鬼も同じく両軍の兵士をぶっ飛ばしながら追いかけていた。

 

 「ふざけんな赤鬼は死んでるし、あとなんと言うかそんな血まみれではないだろ!」

 「これには深いわけがありやして!」

 

 一応サクラから赤鬼が居るという話しを聴いていたが、変な場所に落とされ、しかも周りは交戦中。そして赤鬼は何故か血まみれ。

 

 「まさか兄貴までこんな死後の世界に来ちまうとは・・・はっ、そうだミドリコの姐さんは!?あの後無事に助けたんでしょうね?」

 

 オリハル金砕棒を地面に突き刺してギンジに訪ねた。そうであって欲しいという想いを込めて。

 

 「あ、ああ。一応あの後ちゃんと助けられたけどよ。あ、そうだ、ミドリコも来てるぜ。ここに来る前にはぐれたけど」

 「本当ですかい!いやっほーー!ミドリコの姐さんにまた会えるぜ!!!」

  

 意気揚々と高らかに叫び、2人に迫る魔王軍の兵士達を赤鬼が叩き飛ばす。

 

 「あれ、お前金棒・・・」

 「ああ、これですかい?この死後の世界で貰った俺っちの武器ですぜ!素晴らしいでしょう?」

 「いや、これあるんだけど・・・」

 

 自慢げに見せびらかす赤鬼に、赤鬼の形見として預かっていた、金棒を見せる。

 

 ギンジのは六角の棘付きだが、赤鬼が持っていた時は八角のオプション無しの形状であった。

 

 今も大切に持ってくれて居たことで赤鬼はさらに気を良くする。

 

 「そいつぁ兄貴が持っていてくださいな。いつか兄貴が手放す時が来たら、伝説の武器として語り継がれやすぜ」

 

 再び飛んでくる魔王軍の兵士を今度はギンジがぶっ飛ばす。

 

 「そうかよ!じゃあありがたく!」

 

 金棒を振り上げる。

 

 「使わせて!」

 

 金棒に力を込めて思い切り振り下ろす。

 

 「貰うぜ!」

 

 魔王軍の兵士の頭を思い切り叩き、そのまま地面まで金棒が振り下ろされると、地面に無数のヒビを作り出し、敵味方もろともまとめて隆起しいた地面でどんどん叩いていく。

 

 「兄貴、蒼い服を着てるのは味方ですぜ。あっちの黒いのを倒してくだせぇ!ヌハハ!」

 「お、そうなのか。いやー悪いことしたぜ。ミヤコの事でイライラしてたからな」

 「積もる話はありやすが、ひとまずイライラ発散に付き合いますよ、兄貴!」

 

 ギンジが右手に金棒を構え、赤鬼も左手にオリハル金砕棒を担ぎ上げる。

 

 「敵が黒ってのもちょうどいいぜ。ヘヴンホワイティネス」

 「出撃!ですね、兄貴!」

 

 何がなんだかわからないと言った魔王軍と帝国兵士達だが、こんな兵隊ぐらいならギンジだけでも軽く一ひねり。更にそこへ赤鬼の連携。

 

 パワー+パワーのコンビに、外側からの襲撃を任された魔王軍はまたたく間に塵芥と化していく。

 

 「え、英霊様だ!勇者様が召喚なされた英霊様だ!!!」

 

 襲撃に悪戦苦闘していた兵士達も勢いつき、この魔王軍の襲撃に勝利が見えてきた。あとは城内を・・・と思ったが、ジェノベがすべて倒して回っている様で、ほとんど心配はいらない様に見えた。

 

 「どんどん暴れてやりましょうぜ!」

 「行くぞオラァ!」

 

 金棒コンビの大暴れは勢いが止まらず、かつかなりの相性の高さに、圧倒的人数不利をものともしていない。

 

 まさしく怪人と呼ぶにふさわしいこのコンビは、後に魔法界の歴史に残るのだが、そんな事すら霞んでしまうぐらいの大暴れによって、魔王軍の襲撃はほぼ失敗に終わるのであった。

 

 「このままどんどん進めぇ!!」

 

 金棒だけに飽き足らず、ギンジは炎と雷も発動して、どんどん敵を倒すのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 度重なる剣の魔法、そして自分を上回る剣の腕。

 

 いくら研鑽を積んでも適わないと思ってしまう、達人の領域にクリムパスは涙を流したい気分だった。

 

 鈍色の鎧は傷つき、ところどころ破壊され、鍛えられた素肌は痣が出来る程殴られ、蹴られ、それでも諦めずに剣を取れば、魔法で追い打ちをかけられる。

 

 ナポリタとの戦闘はほぼ一方的に追い込まれていた。

 

 「もう邪魔者は居ないな。ここで、今度こそ殺してやるぞ、クリムパス!!」

 「くっ・・・」

 

 死んでなるものか。諦めれば、そこから魔王の支配という地獄が広がっていくのだから、死ぬのも諦めるのも無しだ。

 

 まだ腕も動く、脚も上がる、身体だって悲鳴を上げているだけ。

 

 まだ諦める理由なんて、何一つないのだ。

 

 「・・・我が名は、クリムパス!」

 

 クリムパスが剣をもちあげて、余裕綽々なナポリタへと向けて声を出す。

 

 「オレキエッテ帝国の秩序を守り、世の平和を築き上げる、帝国最強の騎士なり!!」

 「・・・その名乗り向上も懐かしいな。だが、もう今となってはただの戯言だ・・・死ねクリムパス!」

 

 最後。首を撥ねて倒すしか無い。クリムパスの覚悟を乗せた剣は、持ち主である彼女の声と魔法により淡い輝きをともし、ナポリタへと差し迫る。

 

 『覚悟!!』

 

 幅広のブロードソードによる横一閃と、細くしなやかなレイピアによる直線一閃。

 

 2人の騎士が互いをすり抜けるように、剣の交差が始まる。

 

 一瞬の光の後、クリムパスの背後にナポリタが立ち、ナポリタの背後にはクリムパスが立つ。

 

 ナポリタの革命の服は一切の汚れと切り傷を見せず、クリムパスの鎧は止め金と胸当て部分を破壊され、インナーのみとなり、さらに自慢の剣も完璧に破壊された。

 

 「黙って女らしく生きていればいいモノを・・・」

 

 膝をついてしまったクリムパスのうなじに突剣を構え、突き立てようとする。これで長い因縁に決着をつけるのだ。

 

 「騎士として・・・お前に殺されるわけにはいかん・・・」

 

 痛む身体を震わせて立ち上がり、クリムパスはナポリタの前に立ちはだかる。

 

 腕を広げて、強く睨む。

 

 もう剣も壊され、魔法でも勝ち目はないのに、それでも諦めないクリムパスの表情が壊れないのが非常に腹立つ。

 

 「お前じゃ勝てないとは解ったはずだ!」

 

 突剣を乱暴にあやつり、クリムパスのきれいな身体を傷つけていく。肉を裂き、肌を擦り、しかしクリムパスは倒れない。

 

 「・・・お前たち魔王軍みたいに・・・卑劣な事でしか生きていない、お前らと、我らの国は違う」

 「ほざけ!この世界は力がすべてだ!どんな存在も、自らを上回る力が正義だ!それを受け継ぎ、魔王様を神とするのが我らの役目だ!」

 「違う!!」

 

 受け継ぐのは確かにそのとおりだが、力だけではない。

 

 この世界の騎士が真に受け継ぐのは・・・。

 

 「誇り高き忠義の魂だ!お前はそんな事も忘れたのか!」

 

 クリムパスの不意打ちの頭突きにナポリタの顔が上がる。

 

 「貴様・・・!死突(アルデンテ)!」

 

 ナポリタの必殺技が、クリムパスに命中する。うまいこと腕の防具で防がれたが、最早関係ない威力に帝国序列1の騎士は吹き飛ばされる。

 

 「おっと・・・手酷くやられましたね、クリムパス」

 

 浮いたクリムパスを、駆けつけたジェノベの魔法によってキャッチされる。

 

 「・・・済まない・・・すまない・・・」

 「・・・」

 

 仲間がやられた事と、王よりも自分の意思を優先して戦いに挑んだクリムパスに、ジェノベはそこからは何も言わない。

 

 「大丈夫ですよ。後のことは、勇者様と英霊様がなんとかしてくれますから。貴女の責任意識も、ちゃんと理解しています」

 

 ジェノベは優しく言うと、クリムパスはジェノベの後ろから現れた2人の影に、眼を開く。

 

 一人は赤い肌の雄々しい一本角、勇者赤鬼。

 

 対するもう一人は特徴的な髪型に、勇者と同じく金棒をかつぎ上げた男。

 

 「女に手をあげるなんてな・・・どうするよ赤鬼」

 「へい。こいつは俺っちの仲間・・・っというか、命の恩人なんですわ。兄貴、ここは任せてくれやせんか」

 「・・・必ず勝てよ」

 

 一緒に行動した時間は短くとも、仲間意識で見ていた赤鬼はクリムパスがボロボロになるまで戦っていた事に敬意を評した。

 

 「勇者どのぉ・・・」

 「大丈夫だ。必ず俺っちが落とし前つけてやるからよ・・・」

 

 言うと赤鬼はオリハル金砕棒を打ち下ろす。

 

 「クリムパス(・・・・・)!そこで見てな、俺っちの本気、見せてやるからよ!」

 「・・・!」

 

 初めて名前を呼んでくれた。それがどこか嬉しく、クリムパスは勇者赤鬼の戦いに赴く背中を眺めるのであった。

 

 「手加減すんなよ、赤鬼」

 「どうかクリムパスの無念を・・・」

 「ヘヴンホワイティネスの赤鬼に・・・全部任せてくんな!!」

 

 ギンジとジェノベが赤鬼に託すと、ガッツを見せると言った赤鬼の豪腕が力強く握られると、そのままナポリタの前に立ちはだかる。

 

 「貴様が勇者か・・・なんというかデカイな」

 「漢はでっかくねぇとよ・・・仲間のために、落とし前つけてもらうぜ」

 「・・・勇者とて容赦はせんぞ!」

 

 ナポリタの語気の強い口調は、赤鬼は何も動じて居ない。そんなモノでは、赤鬼がビビることはない。

 

 「死突(アルデンテ)!!」

 

 飛ぶ斬撃にも見える衝撃が、ナポリタの握る突剣から放たれ、赤鬼の脇腹に当たる。

 

 見えないわけではないが、反応が遅れてしまう速度に赤鬼は一歩後ろに下がってしまう。

 

 「驚いたか!これが我が奥義だ!」

 「驚いた、が大した事ねぇな。兄貴が見てるし、負けてられねぇな!」

 

 次は赤鬼がオリハル金砕棒を振り回すと、ボンという音が鳴り、空気が打ち出された。

 

 ナポリタにはそれが見えたのか、身をかがめて避けると、後ろの石壁が大きくえぐれて崩れていく。

 

 「すごい威力だな・・・素直にそれは認めよう、勇者よ」

 「へっ、一発避けただけで偉そうにすんなや!」

 

 もう一度空気を打ち出し、ナポリタを目がけて発射する。

 

 赤鬼の攻撃の威力は人間界で怪人をしていた時よりもあがっており、ギンジから見てもそれは明白になっていた。

 

 「オラオラ避けてばっかりか!」

 「撃ち出すしか能のない勇者だとはがっかりだ!」

 「ほざけぇ!」

 

 ナポリタの安い挑発に乗ってしまい、赤鬼は冷静さを少し失ってしまう。そこを隙とみて、再び突剣が突きこまれる。

 

 「さらに・・・こうだ!」

 

 ナポリタを捕まえようと腕を振るう赤鬼へ、剣の魔法を叩き込む。

 

 無数に現れた剣の雨に、赤鬼は真上から飲み込まれてしまう。

 

 「勇者様!」

 

 ジェノベが心配そうに叫ぶも、ギンジは腕組みをしたまま静観している。その表情は口角があがり、特に心配なんかはしていない。

 

 赤鬼は確かに力もあるし、意外と起点の利く行動を取る事も多いが、彼の強みはそこだけではない。

 

 「見てな・・・ここからが赤鬼の逆転劇の始まりだぜ。あいつは勝つ!」

 

 ギンジはこの場で赤鬼が敗けるとは思っていない。必ず勝てよ、そう伝えたのだから彼が敗ける事は絶対にありえない。

 

 「勇者、哀れだな・・・」

 

 ナポリタがわざとらしくがっかりした様な態度を見せたが、赤鬼はまだ倒れていない。剣の雨を内側から破壊し、雄叫びと共にその姿を表す。

 

 「俺っちはまだまだ倒れる訳にはいかんのじゃ!この死後の世界において、ミドリコの姐さんとお会い出来るんだからなぁ!!」

 

 死後の世界というのは意味がわからないが、現れた赤鬼にナポリタは驚愕する。この魔法攻撃はクリムパスでは耐える事が出来なかったし、なにより破壊等された事の無い攻撃だ。

 

 「その姐さんという女にあわせてやろうか?魔王軍にお前の様な男が欲しいと思っていたところだ」

 「お断りだね。そもそも姐さんの事を見たことねぇだろうが!」

 「では、こうしよう。お前の望む女を、いくらでも作ってやるぞ。ホムンクルスであれば、問題あるまい!」

 

 ナポリタは決して恐れているわけではないが、赤鬼程の実力があればきっと魔王軍の繁栄に役立つと思ってのヘッドハンティングだ。

 

 しかし赤鬼はそれを断っている。

 

 「俺っちはミドリコの姐さん一筋だ!誰かが作る偽物じゃ意味がねぇ!!」

 

 オリハル金砕棒を振り下ろすがナポリタはその大上段攻撃を、横に避ける。

 

 「そうか・・残念だ!」

 

 赤鬼の好みを理解出来なかったナポリタは、そのまま赤鬼のがら空きになった顔へと自慢の必殺技を連続で打ち込む。

 

 「死突(アルデンテ)!!」

 

 その死角からの攻撃は赤鬼を怒らせるのには十分で、ナポリタが優勢に見えた。

 

 「どうした勇者!そのままか!先代勇者よりも弱々しいな!」

 

 煽りにも聞こえる様な嘲笑い方に、ジェノベとクリムパスが憤る。

 

 「勇者殿!負けないでくれ!」

 「貴様の様な男に・・・我らが勇者様を倒せると思っているのか!」

 

 ナポリタの攻撃はひたすら続き、赤鬼はついに膝をついてしまう。

 

 「フハハハハ!女を貰えばこんな事にはならなかったのにな!ミドリコと言ったか!?その女を見つけた暁には、このナポリタが娶ってやろう!」

 

 その言葉を最後に赤鬼は思い切りナポリタの首を掴んだ。

 

 「なんっ・・・!?」

 「テメェごときがミドリコの姐さんを娶るだと・・・」

 

 品性の無い男がミドリコに近づくなんてあってはならない。

 

 それと同時にこのナポリタという男は、どうも命や女を軽視している様にも見えた。

 

 「そ、その眼に・・・打ち込んでやる!!」

 

 首を持ち上げられても、ナポリタは諦めずに赤鬼に突撃する。

 

 「この私が突撃将軍と呼ばれる所以、お見せしよう!死突刃(アルデン・レア)!!」

 

 より強力なナポリタの大技が赤鬼の顔面、特に眼球にめがけて撃たれる。

 

 「穿(つらぬ)け!!」

 

 しかし赤鬼の眼に当たってもその大技は、弾かれるだけに終わった。

 

 「ハァ!?」

 

 攻撃が終わると赤鬼の怒りによる力任せの一撃が、ナポリタの地面に叩きつける。

 

 石の床をへこませて、強い一撃と共にナポリタが飛び上がる。

 

 「かはっ・・・なんだ、ふざけるなよ!」

 「ふざけてんのはお前だろうがぁ!」

 

 離れようとしたナポリタに肉薄する赤鬼。

 

 さらに離れようとするが、後ろの石壁にぶつかって逃げ場を失ってしまう。

 

 「人の女を娶ろうとするなんざ太ェ野郎だ!そもそもミドリコの姐さんの美しさを、テメェなんぞが簡単に手に入れらるか!」

 

 赤鬼の右拳に空気がまとわりつく。

 

 「あいつ空気を撃ち出すだけの能力しか無かったような・・・」

 

 まるでその光景は、赤鬼が空気を自分で操っている様にも見えた。

 

 ギンジが覚えている限りでは、力任せと空気を撃ち出す、それだけの能力しかなかった筈だが、今の赤鬼は自分の右手に空気を纏わせている。

 

 「だいたいテメェ・・・ミドリコの姐さんを俺っちから奪うつもりなら・・・」

 

 拳を打ち出す。ナポリタの顔にはあえて当てない様にして、寸止めにも見える拳の打ち出し。

 

 「空砕烈拳(くうさいれっけん)!!」

 

 空気を震わせる見えない波打つ衝撃。

 

 それがナポリタの頭の中で何度も揺れては、頭部をシェイクしていく。

 

 「半端な覚悟で行くと死ぬぜ・・・今みたいにな」

 

 赤鬼の言葉と必殺技の発動により、辺りは静まりかえる。

 

 ナポリタの瞳、鼻、口、耳。そこからどろりとした血液が流れ出てきて、そのまま白目を向いて膝から崩れ落ちた。その生命、生涯に終わりを告げたのだ。

 

 「す、すごい・・・」

 

 クリムパスが赤鬼の強さを目の当たりにした。自分では歯が立たなかったナポリタをこうも一方的に倒すとは。

 

 ジェノベも素晴らしいと拍手し、ギンジは強い笑顔を浮かべる。

 

 「な?言ったろ?あいつは勝つって!」

 

 ヘヴンホワイティネスとして、勇者として赤鬼は自らの使命を全うした。そして魔王軍・魔王親衛隊ボーンゴーレの一人、突撃将軍ナポリタを撃破した。

 

 「うおおおおおッ!ミドリコの姐さーーーん!!」

 

 けたたましい雄叫びにはやはりミドリコの名前を叫ぶ。

 

 残念ながらここに居るのは、ギンジとクリムパスとジェノベだけなのだが。

 

 「よくやったな!あかお」

 「姐さーーーーん!!」

 「ぐえっ・・・」

 

 ギンジが称賛の言葉を贈ろうとしたが、赤鬼はミドリコしか頭に入っていない様で、その場から走り去ってしまった。ついでにギンジを突き飛ばした。

 

 「な、なんだ・・・英霊様、今のは・・・?」

 

 クリムパスがギンジを呼ぶと、ギンジにも「俺にもわからん」と一言添えるだけであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 魔法界に降り立ったサクラたちは、1時間かけてようやくオレキエッテ帝国に到着した。

 

 しかし城下町の平和そうな雰囲気とは裏腹に、城の方は戦いの音が聞こえていた。

 

 本当なら街に下ろす予定だったが、サクラの提案によってカエデ達は、城まで飛んできていた。

 

 「あの黒いのが魔王軍!頼んでいい?ケイタくんを安全な場所に下ろすから!」

 「相手が黒なのがちょうどいいわね」

 「ヘヴンホワイティネス、出動、だね」

 「サクラ、あいつらに銃は効くのか?」

 

 ヘヴンホワイティネスとして戦える彼女達は、青と黒の兵士達が戦っている場所に飛び降りた。

 

 「行くわよ!!ヘヴンリー・インパクト!!」

 

 落下しながらも必殺技を打ち出し、黒の魔王軍の陣営の真ん中に激突するカエデと、それを

に追いつく様に降りてくるレンとミドリコ。

 

 「・・・また英霊様だ!勇者様の援軍が来てくれたぞ!」

 

 帝国の兵士達の勢いは死んでいないが、カエデ達の登場で更に勢いが最高潮になる。

 

 「正義のヒーロー、魔法界にも参上、ってね!」

 「後ろは任せて、カエデ」

 「援護するぞ。油断するなよ2人とも」

 

 カエデ、レン、ミドリコがそれぞれ戦闘の体制を取ろうとしたが、魔王軍が一気に崩れていく。カエデにもわからないが、敵が見えないなにかになぎ倒されて行く。

 

 「な、何・・・!?」

 「空気・・・?」

 

 カエデとレンが敵の新手を警戒するが、巻起こった土煙の向こうに居る人の影に、見覚えのある角を確認する。

 

 「ま、まさか・・・」

 「あかお」

 

 カエデとレンがかつての仲間であった赤鬼の名前を呼ぼうとするが、それは赤鬼の雄叫びによって遮られる。

 

 「姐さーーん!!!」

 「あ、赤鬼!!」

 

 周りが見えなくなるほど、赤鬼はミドリコの気配を本能で感じ取り、ここまで走ってきたのだ。それこそギンジと突き飛ばす程に。

 

 赤鬼がオリハル金砕棒をその場に落とすと、興奮度が一気に上がったのか、折れた右の牙と、ヒビの入った左の牙が下から生え変わる。

 

 黒い甚兵衛みたいな洋服を自ら引き裂いて、赤鬼は自分の身体をみせつけるようにしてミドリコに近づいた。

 

 「フーッ、フーッ・・・抱きますよ姐さん!!」

 「再開して言う言葉がそれか君は!!」

 

 怪人として男として、この衝動だけは抗えない。

 

 だが、ミドリコはハイヒールだと言うのに、思い切り赤鬼に飛び込んだ。

 

 野太い首に腕を回して、ミドリコから赤鬼に抱きついたのだ。

 

 「え、ちょ、姐さん!?」

 「生きてて良かった・・・!本当にずっと会いたかったんだぞ!」

 

 自分のために死んだと思われたが、実は生きていてくれた。

 

 命を賭けてまで自分を助けてくれた赤鬼に、ミドリコはずっとお礼を言えていない。赤鬼が居なければ今頃自分はどうなっていたかさえ想像出来ない。

 

 「えーと、ここって死後の世界っすよね?カエデの姉御?」

 「え?死んでないわよあたし達」

 「ここは魔法界、サクラの産まれた場所、そう聴いてる」

 

 つまり赤鬼は死んでいないし、ミドリコも死んでこの世界に来たわけではない。

 

 「死んでない?俺っち死んでいない?」

 「ところでいつまで抱き合ってるの〜?敵がまだいっぱい居るんですけど〜?」

 「ッ!ミドリコの姐さん、抱くのは後だ!先ずは魔王軍をぶっ飛ばすぜ!!」

 

 ミドリコの香りを胸一杯吸い込んだ赤鬼は超絶パワーアップを果たし、空気を全身にまとう。

 

 「・・・レン、気のせいだと思うんだけど、赤鬼のやつ、自分から空気を操らなかった?」

 「多分気のせいじゃない。怪人の能力が、上がってるのかも」  

 

 言う慣ればフェーズ2。その力にすでに覚醒していたのか、それとも元からあった能力なのか不明だが、とにかく赤鬼は以前よりも強くなっていたようだ。

 

 「うおりゃあああッ!姐さん!姐さんッ!!ミドリコの姐さんっ!!!」

 「私の名前を呼びながら攻撃するな!赤鬼!」

 

 ミニガンを乱射するミドリコの背後で赤鬼は、オリハル金砕棒を振り回していた。そんなミドリコの顔はどこか嬉しそうで、赤鬼も晴れやかな表情をしている。

 

 ヘヴンホワイティネスの力を見せつけるようにして、赤鬼はどんどん襲撃してきた魔王軍を蹴散らしていった。

 

 こうしてオレキエッテ帝国を助け出し、魔王軍は撤退を余儀なくされるのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 魔王の城。そこではボロボロになった一人の魔王軍の兵士が、伝令を伝えに大きい円卓の部屋にて報告書を読み上げていた。

 

 「突撃将軍ナポリタ様率いる部隊は、襲撃に成功、しかし現れた新たな勇者の尽力により、部隊は壊滅。さらに勇者は英霊を次々と呼び出し、我が魔王軍を壊滅。そして勇者は一騎打ちにて、ナポリタ様を討ったと・・・」

 

 読み上げているだけで信じがたい内容に、兵士は気を失いたい気分であった。

 

 そしてナポリタが討ち取られたことで、魔界軍師ペペロンチーと、破壊元帥カルボーナは眼を見開いて驚愕する。

 

 「馬鹿な・・・!?」

 「信じられん。ナポリタが敗けただと・・・しかも一騎打ちで・・・」

 

 どうやら今回の勇者は一筋縄では行かない、強者らしい。

 

 それを心にとどめると、ペペロンチーはテーブルを強く殴る。

 

 「おのれ勇者・・・我らボーンゴーレの一角をよくも・・・」

 「くそったれなやつだな、勇者。覚えとけよ」

 

 カルボーナが重そうな身体を動かし、報告に来た兵士の頭を掴む。

 

 大きな手と力強さは、これから兵士自身が何をされるのか解ってしまう掴み方だった。

 

 「必ず仇はうってやるし、魔王様の神となったお姿も見せてやるよ・・・おんどりゃあああ」

 

 叫ぶと同時に、兵士を投げ飛ばし、石壁に思い切りぶつけると、全身をぐちゃりと悲痛な音を鳴らして、兵士は死に絶えた。

 

 「・・・こうなれば全面戦争だ・・・」

 

 ペペロンチーが大きな胸を揺らして、舌打ち混じりにつぶやくと、カルボーナもそれに賛成する。

 

 「魔王様の計画にミスが生じちゃならねぇからな。日程と設備を整えて、すぐに進軍だ!」

 

 カルボーナの叫びに、ペペロンチーが頷く。魔王様を神にするために、より強い悪のちからがここに広がっていく。

 

 (ホウ・・・ココハ魔王ノ城ダッタノカ・・・)

 

 それを骨董品に紛れ込みながら、骨の怪人は覗き込んでいる。

 

 自分の体積を回復するために、機を狙っていたからだ。

 

 (実ニ面白イ事ニナッテキタ・・・マダチャンスハアルナ!!)

 

 目的を変えていく。先ずは魔王に自分を売り込もう。そして例の勇者を倒すために協力をしよう。骨の怪人がそう考えると、なんとかして先ずは自分の体積を増やす事に専念する事にした。

 

 魔王に取り入り、勇者を倒して、この魔王軍の力を手にして現実の世界に帰還する。

 

 そう、全てはヘルブラッククロスのために・・・。

 

 魔王軍は今後も地獄を広げるために、全力を尽くし、そして勇者をも倒すのだろうか。興味は突きないが、ヘルブラッククロスの怪人四天王として、骨の怪人は自分の新たな役割を全うするために、計算を張り巡らせるのであった。

 

 

続く

   

 




お疲れ様です。

赤鬼はいつでもどこでもミドリコの事しか考えてません。多分、ミドリコと結婚した後のことも考えている。ちなみに現代社会に溶け込めるようにサングラスでの変装もお手の物。

キャラネタ書きます

赤鬼
勇者と呼ばれるのがむずがゆい。今回ミドリコに会えたので、抱く。抱くしかない。いやむしろ抱かせてもらう。
そう考えてたら、ミドリコに抱きつかれて困惑した。
自分では自覚していないがフェーズ2に覚醒している。

佐久間ギンジ
英霊呼ばわりされているが、別に英霊ではなく怪人。

神宮カエデ
英霊じゃなく正義のヒーロー。

宮寺レン
英霊じゃなくビーム剣術の使い手。

甘白ミドリコ
一番場違いなスーツという格好で来たミニガンウーマン。
赤鬼に再開したことで、感極まって抱きついてしまった。

小町サクラ
開く門を間違えて更に道を間違えて、ギンジの方を先に帝国へ落とした。主犯。

角倉ケイタ
魔法界にやってきた事に感動した。ここで強くなるんだ!

クリムパス
やはり勇者殿は強いのだな!っと感心しているが、ナポリタを倒せず悔しい思いをのこしたまま。

ジェノベ
暴れる赤鬼とギンジと合流して、クリムパスの居場所まで案内してくれた人。意外と優しい。

突撃将軍ナポリタ
突撃あるのみ!って言う感じで突撃していたら魔王軍の親衛隊にまでなった人。赤鬼の怒りを買い、瞬殺された。でも弱いやつではない。

魔界軍師ペペロンチー
魔王軍の軍師。仲間がやられた事でおこぷんぷん。

破壊元帥カルボーナ
魔王軍のナポリタに並ぶ双璧とも呼ばれている。戦争の総大将を任される事も多い強者。荒々しい性格をしているのだが、仲間意識はそれなりにはあった様子。息が臭い。

骨の怪人
未だ頭蓋骨のみの姿。なにやら計画を構築している様だが・・・?

さて次回はミヤコを助けるために修行開始だ!
と、言うが、修行とは関係ない事をやらされるギンジ・・・
カエデもレンもミドリコもちゃんとまともな修行させてもらているのに、どぼじでなんだよおおお
カエデとギンジにも進展が・・・!?
な、回です。

次回もなるべく早く更新出来るように頑張りまっせ!!!
それではまた次回!
※皆でパスタ食べようね
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