正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです!
今年最後の投稿となります!

2022年色々ありましたね〜・・・。

私も物語を書き始めて、なんだかんだここまで続けられているのもそうですが、なんといっても仕事でパスタ工場に行けた事が思い出深いですね。
インターン生とかと口論したりして、めちゃくちゃな事もありましたし、毎日早出、残業、そして小説書く時間を減らされ風邪を引いたりして最悪でしたが、なんだかんだ7月〜12月は思い出深いです。

話がそれましたが、今回のお話で魔法界編も終わりへと近づいて行きます。

それでは、どうぞ!


58・ギンジと豚と骨の怪人と魔王の城

 

 遺跡の最下層の通路にて、カエデとミドリコ、レンとケイタが合流し、ギンジが向かっているであろう中枢という場所に、ヘヴンホワイティネスは突き進んでいた。

 

 「それにしてもケイタが戦える様になるなんてね・・・」

 

 今は学生服に戻ったケイタを見て、カエデが感心する。

 

 「これからは皆を守れる様に、僕も頑張るよ」

 「期待してるよ、ケイタ。でも、無理だけはしないことだ。君が傷つけば、レンが悲しむ事を忘れないようにな」

 

 ミドリコもケイタが戦える事は嬉しく思うが、年長者故にいらぬ心配を懐きやすい。

 

 しかしながら若者の成長を見ていると、微笑ましく見えて来ており、これからも頼りにできるだろう。

 

 「ミドリコ、ギンジはこの近くに居るのかしら」

 

 カエデが周囲を目視で警戒しながら、ミドリコに声をかける。ミドリコも気配を見ながらギンジを探しているが、ほぼ近くまで来ているとの事。

 

 「ギンジなら、きっと今頃、最後の敵を、倒してる」

 

 ギンジの戦闘力を考えれば、それぐらいは出来ているだろうと言う、レンの信用からの発言に全員が頷く。問題は相手が女性でなければ、なのだが。

 

 「きっと上手に切り返しぐらいしてるわよ。ギンジなら問題ないわね」

 「でも、一番カエデが心配してそう」

 「べっ、別に心配なんてしてないわよ!でも怪我とかしてたり、上手く戦えてなかったり、相手が女だったら・・・」

 「それが、心配って言うんじゃ・・・」

 

 カエデとレンが横並びで会話する。レンから見た今のカエデはなんだか浮足立って居る様に見えて、なかなかソワソワしている。

 

 「と、とにかく行こうよ。先に進まないと、ギンジも今頃なにしてるかわからないじゃん」

 

 焦る様な表情をしながら、ケイタが言葉を出すとカエデも「そうね」と一言短く返した。

 

 「近いぞ。ギンジも、最後の敵も」

 

 ミドリコの見える気配の中では、戦闘なんかは行われていない様にも見えるが、もしかしたらもう戦いは終わっているのか、そもそも始まって居ないのかも知れない。

 

 いざギンジが居るであろうその場所まで近づくと、声が聞こえる。陽気でお調子者のギンジの声が。

 

 その声を聴いて、我先にと走り出したのはカエデだった。

 

 「ギンジ!」

 

 曲がり角を超えれば、大きな蝋燭を灯した事で、非常に明るい部屋というか、ワンフロアというか、角張った空間へとカエデが飛び出す。

 

 そこに居たのは間違いなくギンジだった。

 

 の、だが・・・。

 

 「ブッヒッヒッヒ!それは苦労する人生だな!」

 「へへへ!そうだろ?いやーでもお前も大変だったんだな〜!」

 

 薄汚い豚の顔をした大男とギンジが、2人肩を組みながら談笑している。

 

 その光景を見たカエデはなぜだか非常にイラッとする。

 

 心配をしたのはこちらの勝手なのだが、だとしても何故この豚の大男とギンジが仲良く談笑してるのか。心配して損したとはこの事である。

 

 「あれ、カエデじゃん!お前らも・・・全員無事だったのぐはぁ!?」

 「無事だったのかーじゃないわよ!!」

 

 カエデを発見したギンジへ、カエデのドロップキックが炸裂してギンジが吹き飛んだ。首から聞こえてはいけない音が聞こえたが、多分ギンジは大丈夫だが・・・。

 

 「な、なにすんだよ・・・」

 「あー心配して損した!」

 「ブッヒッヒッヒ!愉快な仲間だなぁ!ギンジ!」

 

 ギンジの横にいた豚顔の男、トン・コッツがほがらかに笑うと、カエデは少し警戒するが敵意が無い事を知る。

 

 「いやさ、お嬢さん方も見目麗しいな。あ、修行だろう?」

 

 トン・コッツは余裕な表情を持って鍵を見せびらかす。

 

 それぞれギンジ、カエデ、レン、ミドリコが鍵を取り出すと、お互いのチームで半数ずつ持っている事が解る。

 

 「この鍵はギンジのモノだぜ。ブッヒッヒッヒ」

 「おう・・・実はトンの兄弟が持ってた鍵は、俺がちゃんと手に入れたぜ。あ、ちゃんと勝ったぜ!」

 「ちゃんと説明しなさいよ!」

 「あダダダ首!首しまってる!」

 

 カエデが憤慨しながらギンジの首を締め付ける。

 

 「まぁまぁ、ギンジがそれじゃあ喋れないよ」

 

 ケイタがいさめると、カエデはギンジから首を離す。

 

 それを見て、トン・コッツは相変わらずブッヒッヒッヒ、と笑う。

 

 ほがらかなこの笑顔を見ると、今までのコッツ兄妹よりかは話ができそうな雰囲気を持っている。

 

 「ギンジがちゃんと戦って勝ったのだろう?何があってこんなに仲良くなったのか聞かせてほしいな」

 「同意。ギンジ、しっかり説明しないと、カエデが許さない」

 「わかったよ・・・あ、でも首をしめないでくれよな!」

 「いいから話しなさいよ」

 「ブッヒッヒッヒ。そうだぞ兄弟、話してやんな」

 

 ヘヴンホワイティネスの質問攻めに、トン・コッツも一緒になってギンジを攻撃してくる。

 

 「あーじゃあ、俺がここに到着してからになるんだが・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 先ず俺がこの場所に到着してからだ。

 

 ここには既にこのトン・コッツが待ち構えていた。

 

 ま、会ってからお互いに自己紹介はしたんだけどさ、そこから鍵の奪い合いについて色々あってな・・・。

 

 「ブッヒッヒッヒ。ギンジ、この鍵が欲しいのだろう?」

 

 トンとか言うオークにも似てるやつが、俺に笑いながら声を荒げてくる。

  

 って言うか、つくづく俺って豚顔のやつと縁があるよな・・・。オーク怪人とかいう変なやつといい、今目の前にいるこいつといい。

 

 「もちろん欲しいぜ。まぁ、ただではくれないよな?」

 「当たり前だ。このコッツ兄妹・長兄であるトン・コッツ、大地を司る司祭!」

 

 声高らかに叫んでくれるが、俺はこういうやつ嫌いじゃないな。なんだか話してて悪い気がしない。

 

 うん、そうだよ豚顔に悪いやつは居ないんや!せやせや!

 

 「では、ギンジよ。鍵の奪い合い、始めようか」

 「急にヤル気だな。いいぜ、この修行と称した鍵の奪い合い、俺たちが勝たせてもらう!」

 「奪い合い・・・というよりは、我々は暴れたくてな。勇者もそうだが、もっと強い男と戦いたいっていうのが、本音さ」

 

 なんだ・・・結局こいつらも俺と同じで、暴れたいだけなんじゃないか?まぁ、俺は理由があって暴れてるだけなので・・・べ、別に暴力ふるいたい訳じゃないんだからねっ!

 

 トンが笑うと、俺も笑う。お互い口角を釣り上げて、一気に臨戦態勢を取ると、先に俺のほうがアタックを仕掛ける。

 

 先ずは俺個人のセオリーに則って、イメージを働かせる。

 

 何をしてくるか分からないから、壁でも使って飛んで見るイメージ。

 

 三角跳びの要領で壁を飛ぶと、三回程飛んでトンに直撃できるイメージ映像が出てくる。直撃のタイミングでの攻撃は、俺自慢の炎の攻撃。燃える拳ってかっこいいよね?

 

 (さっそく決めにかかるぜ!)

 

 直線状に走ってからいきなりの路線変更、そして壁に飛んで行く。普通なら誰にも反応出来ない速度で飛び出すと、俺はイメージ通りに壁を飛んで反射する様にして、トンへと向かっていく。

 

 ジグザクに進んだ事で、俺に狙いはつけられないだろっていう、目論見なんだが・・・これは通るだろ!

 

 「マジカル・アース・マジックズ・・・」

 

 トンもこれに対応してくる。魔法を唱えて攻撃か防御の手段・・・どっちだ・・・?

 

 「バース・フロージェン!」

 「うおっ!?」

 

 トンが魔法を唱え終えると、俺が飛ぼうとした最後の壁に岩が隆起して来た・・・尖っていて鋭利なその岩は、触れれば俺の身体を貫きそうだった。

 

 ま、当たったら痛そー・・・って感じだな。

 

 「当たらねぇけどなっ!」

 

 隆起してきた岩を蹴っ飛ばして地面へと転がり戻ると、すかさず金棒を召喚する。地面からも飛び出す鋭い岩を叩き砕きながら、トンへと突撃する。

 

 怪人の能力とはまた違い、魔法はどこまでの攻撃範囲、一つの魔法でありながら如何用にもその姿形を変える事から、俺は今までとは違う警戒をしていたんだが・・・なんだ、意外と攻略は楽勝か?

 

 しかし現実は甘くなかった。

 

 「マジカル・アース」

 

 トンが再び新たな魔法を唱える。どうでもいいけどこの魔法を唱える詠唱ってやつ、だいたいマジカルから始まるんだな。

 

 「マッド・ウォール!」

 

 声を高らかにして叫んだその呪文?によって登場したのは壁。地面から生えるようにして現れたその壁に、俺は金棒の振り回しが間に合わずにぶつかってしまった。

 

 しかもおろし金みたいに表面がザラついてて、コレが超痛かった。まじで痛い。

 

 ぶつかった衝撃で少し後ろに下がると、トンが壁を破壊して俺の目の前に飛んでくる。

 

 「魔法使いの戦い方は、魔法を撃ち合うだけじゃないんだぜ!」

 「・・・!?」

 

 太った身体を転がしながら、トンは俺に連撃を決めに掛かってきた。肉の大砲みたいなその姿は見ているだけなら滑稽なのだが、おそらく威力は凄まじいだろう。

 

 「豚狩美(ぶたかるび)!」

 

 豚カルビ?ああ、美味しいよね?

 

 「うっおおおっ・・・!!」 

 

 俺の身体に想像していたよりも早く、やはり想像以上の威力で体当たりをぶちかまして来やがった!

 

 防御が間に合わずに、後方へと吹き飛ばされると、魔法で作った壁があり、それらもおろし金の様に刺々しい表面。そこに俺はぶつかっていく。

 

 「くっそ、ふざけてる場合じゃなかった」

 

 怪人じゃなかったら死んでただろコレ。

 

 「ブッヒッヒッヒ!まだまだ行くぞ!」

 「もういっちょ来てみろ!」

 

 またあの美味しそうな必殺技でも打ち込んでくるつもりか、トンは再び身体を転がしてくる。

 

 俺も金棒を突き出し、遺跡の奥のドアらしき場所に狙いを定める。野球みたいに構え、左脚を上げる。

 

 金棒には速度を上げる為に雷を纏わせて、思い切り両手に力を込める。

 

 「さぁてお立ち会い!」

 「行くぞ、ギンジ!豚狩美(ぶたかるび)!」

 

 地面を削り取るような高速回転によって、再びトンが飛んでくる。いやシャレじゃなくて。

 

 バウンドしながら次第に速度を増して、俺の正面・・・ど真ん中を狙ってくるが、それは流石に解ってたぜ!

 

 「おっ・・・〜〜〜っりゃあ!!」

 「ぬぅ!?」

 

 俺を人間と侮ってたか?それとも人間っぽい何かと勘違いしていたのか、こいつが想像している以上に強い力で跳ね返す。

 

 「これには驚いた・・・だが!」

 

 天井に跳ね返り、次は床、その次は壁、魔法の岩、魔法の壁、天井・・・なんども勢いを増してトンが高速反射を繰り返す。まるで跳弾・・・。

 

 「ブッヒッヒッヒ!捉えられまい!」

 「・・・!」

 

 当たるかと思えば身体の横を抜け、後ろの壁から来るかと警戒すれば、今度は床を反射して天井へ。

 

 来るならさっさと来いよ・・・!焦らすな!

 

 「ブッヒッヒッヒ!さぁさぁ・・・受け止めてみろ!マジカル・アースエン・マジックズ・マジカル!」

 

 その巨体を跳ね返しながらも、トンが詠唱を開始する。魔法とこの物理攻撃の合わせ技で来るつもりか・・・!だとしたら俺の方が不利か?不利だな!

 

 「ロック・バレルドリューズ!」

 

 その魔法は岩石が無数に飛び交い、その次は鋭く鋭利な突起物と重なりながら、俺の逃げ場を埋め尽くしていく。

 

 「クソ!」

 

 逃げることは適わず、そして俺の破壊も間に合わず・・・っていうか金棒でさえ跳ね返してきやがる!やっべぇぞ!

 

 「これで・・・決めるぞ!超反射・特上豚狩美(とくじょうぶたかるび)!!」

 

 めしゃぁっと身体が潰れる様な音が腹の中で響く。俺の体内が押されて空気が絞り抜けて、その勢いは残したまま俺の身体を魔法の岩石と共に完璧に叩き飛ばした。

 

 めっちゃくちゃ痛ぇし、ダメージはものすごい・・・あのオーク怪人を超えるぞこの強さ・・・!

 

 「出し惜しみしてたら・・・勝てねぇな!」

 

 幾度も連なる岩石と土の壁を破壊しながら、勢いが止まると壁の中に埋め込まれたが、持ち前の怪人パワーでぶっ壊して脱出する。

 

 「俺も修行の成果があるんだ・・・農作業だけだったけど、これでも力の使い方、操り方はだいぶ理解出来たしな・・・行くぞ、トン・コッツ!」

 

 発動する能力は炎でも雷や飛行でも無い。

 

 ヒーローらしい力で、こいつを倒す。その為に脳内で完成だけはさせてた俺の力!

 

 ムーン・フォース。月島ルカ達ムーン・パラディースから受け継いだ俺の善なる力・・・!

 

 「月の力よ!俺に手を貸せ!」

 

 心の中にしまわれたムーン・フォースを呼び出して、俺はその月の力を身体に纏わせる。優しい月光が身体についてくる事で、俺は俺の為の変身スーツを身にまとう。

 

 鍔の無い刀、長ドスを構えてトンを睨みつける。

 

 「英霊と言うのは誰でも変身できるのか?羨ましいな?しかし、その姿が本気の体制か・・・」

 「いいや?いつでも俺は本気だぜ!」

 

 月の力を溜めたこの長ドスを振るうと、地面を走る金色の斬撃が飛んでいく。

 

 これはルカとアキハの教えてくれた大技の一つ、大月光斬(ブラストキャリバー)・・・。

 

 魔法の隆起を斬り、岩を斬り離し、トンへとめがけて飛んでいく。

 

 「おっと・・・」

 

 しかしながら俺の斬撃は残念ながら、魔法で生み出した土の壁で防がれてしまった。

 

 防御されたが、そこは対策済みってやつだぜ。

 

 「あまりがっかりさせてくれるなよ・・・」

 「言ってろ・・・!」

 

 ムーン・フォース使用時には、俺の炎と雷は使えない。だがもう一つの俺の能力である、金棒はこの変身時にも使用はできる。

 

 そしてこれは赤鬼の力の一端でもある。

 

 左手に金棒を再び召喚させてから、片手で思い切り振り回す。

 

 ボンッ!と強い音を鳴らすと、俺のすぐ目の前にある魔法の土壁に、見えない弾丸が飛び跳ねる。

 

 着弾した瞬間にその壁は内側から破裂するようにして、破壊されていった。

 

 「なに・・・!?」

 

 そりゃあ驚くよな。俺が飛ばしたのは魔法でも、力任せの衝撃じゃないからな。

 

 魔法で捉える事の出来ない赤鬼の力・・・。それは空気を打ち出すあの異常な能力。当たっただけでコンクリートをぶっ壊すあの技を、俺も勢いでやったら使えちゃった。

 

 とは言っても真似してみただけで、正確に同じ能力じゃないんんだけどね。これが出来るってのも、進化の怪人だからなのかな。

 

 能力模倣─そう名付けてみたがなかなか良いネーミングセンスじゃないか?

 

 空気をさらに打ち出して、再び防衛に出てくる魔法の土壁を粉砕していく。いや空砕と言うべきか?

 

 とにかくこの空気の打ち出しを金棒で行い、トンへと地道に近づいて行く。いい距離感を確保したら、今度はムーン・フォースによる強化状態で更に加速!

 

 「よう!土遊びはそろそろ終わりにしようぜ!」

 「ここまで近づけるとはな・・・」

 

 加速の先、俺はトン・コッツへと接近に成功した。今度は俺の反撃の番だ! 

 

 長ドスを振り出し、魔法の防衛手段を斬って潰していく。

 

 金棒で岩を粉砕、土は斬り崩し、あとは俺が直接この豚野郎を蹴るなり殴るなりさせてもらおうじゃねぇか! 

 

 「マジカルマジカっ!」

 「もう魔法は唱えさせねぇよ・・・」

 

 斬り崩した土くれを金棒で弾いて、トンの口内へと投げ込んだ。器用で馬鹿げているようだけど俺のイメージの能力だと、こんな事が実際出来ちまう。俺も気に入ってるぜ、この力。

 

 「ふごふご・・・!」

 「覚悟しやがれ!!」

 

 長ドスと金棒の斬撃と打撃の連続攻撃。容赦なく振り回す乱舞とも呼べるこのラッシュで、トンの身体を容赦無く攻め立てる。

 

 「うおりゃあーーーッ!!」

 

 金棒で叩き上げて、次は長ドスで斬り払い、大回転上段打ち下ろし、からの月光の溜めた斬撃。

 

 「大月光斬(ブラストキャリバー)!」

 

 地面から走らせる斬撃が飛び出し、至近距離のトンへと向かって行く。もうこの距離じゃ魔法の防御も出来ねぇだろうし、俺の勝ちだ!

 

 

 「ブッヒィイイイッアアアア!!」

 

 月の斬撃が遺跡の内部に煌めき、コッツ兄妹の長兄・トン・コッツを押し返した。

 

 「ブヒッブヒッブヒッ・・・強いな・・・その強さ、並の人生じゃなさそうだ」

 「うげげっ。立ち上がったよこいつマジかよ」

 

 何事も無かった・・・なんてわけじゃないが、このトン・コッツは立ち上がっては、清々しく笑ってやがる。ナンダコノヤロー。

 

 いやっていうか勝ったの俺だし、どっちかっていうともう鍵を明け渡して欲しいんだけど・・・。

 

 「ブッヒッヒッヒ・・・いいさ、この勝負自体はおれの負けだ。まぁ座れよ兄弟。お前の生い立ちや、お前の話を色々きかせてくれ」

 

 トンの薄汚い顔が、どこか柔和と言うかなんとなく仲間意識を持ってくれた事を理解すると、俺は言われるがままトンの目の前に座った。

 

 そしてお互いの境遇や、仲間の事・・・どうして俺がこの魔法界に来たのかなどなど・・・。

 

 色々と話す事が増えたり脱線したりで、なんだかんだで俺とトンは仲良くなったとさ・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「っていうのが、俺とトンの兄弟が鍵を手に入れる事になった修行の内容さ」

 「さ、じゃないわよ!」

 「ぐへぇあ!」

 

 ここまでの経緯を聴いていたカエデは、やっぱり心配して損をした気分になった。

 

 戦いはギンジの勝利で、かつ兄弟分を手に入れたとの事だが、本当にギンジという男はこういう時予測が出来ない。

 

 周囲に馴染めなかった男が、この世界にやってきてからお友達をたくさん増やすのは嬉しいし、カエデから見ても微笑ましいのだが、好きだからこそ過度な心配でギンジに強く当たってしまう。

 

 「でも、ギンジが勝ったのなら、良い。そこだけは私も心配、してtから」

 「まぁ、ギンジが敗けるとは思ってないけどね・・・あはは」

 

 レンとケイタがそれぞれ話し、ミドリコもギンジとトン・コッツが仲良く出来ているのを知りつつ、勝利した事には納得した。

 

 「これで鍵を開ければ修行の完了か。終わっちまえばわりとすぐだったな」

 「そうね。余裕とは言わないけど、あたし達にかかればこんなのラクショーよ!」

 「ブッヒッヒッヒ。この部屋の奥だ。旗を手にして、魔女に報告すれば今回の英霊達の修行は完了だな。さて、ギンジよ」

 

 トン・コッツが仲間になりました、みたいな雰囲気でギンジに声をかける。

 

 「改めて言うが、この魔法界へようこそ。危機に陥ったオレキエッテ帝国のピンチに協力してくれると聴き、実のところは期待していたのだ」

 「・・・俺・・・だけじゃなくて、俺たちヘヴンホワイティネスにこの魔法界のピンチは任せろ!ここで得た新しい力で、必ず魔王軍とやらをぶっ飛ばして来てやるからよ!」

 

 ギンジが声を高らかに言い放ち、次はカエデがつなげる。

 

 「そうね。どこに行ったって悪が栄えようとしてるならあたし達正義のヒーローが、全部背負ってあげるわ!」

 

 カエデの表情はギンジに負けず劣らず笑顔であった。優しいその表情にトン・コッツは目をひかれる。

 

 「私も、同じ。自分の未来を、守る為なら、どんな所でも寄り道していく。友達を助けたいから」

 「僕も同じ!悪は放おっておけないし、皆の力になりたいからね!」

 

 レンとケイタがカエデに続いて意気揚々と話す。その言葉の強さと、覚悟の重さの両方を知ったケイタの顔つきは少し前より大分男らしくなっていた。

 

 「ならば私は君達の未来を守りたいという意思を、背負って戦わないとな。ケイタも戦える様になった今、全員が今まで以上に死なない様にしないと行けないしな。無論、私もだがな」

 

 ミドリコも彼らに続いて声を出した。年長者として、よりギンジ達の面倒を見ていかないと行けない。生活よりも戦闘の方だが・・・。

 

 「そうか・・・ギンジ(兄弟)、お前は良い仲間を持っているな」

  

 ギンジと合流した事でこの薄暗い遺跡には、明るい活気が出始める。

 

 トン・コッツ率いるコッツ兄妹がここに揃っていてもなかなか出てこないこの空気感は、羨ましそうに眺めるので精一杯だ。

 

 「へへへ、そうだろ!皆俺の自慢の仲間なんだ!もちろん、あの赤鬼と、もう一人ここには来てないけどミヤコってやつも居てさ」

 「ちょっとギンジ!長くなるから後の事は遺跡出てから話しなさいよ」 

 「あ、ああそうだな。悪い。それじゃ、旗、もらってくぜ!」

 「ああ、もらっていけ。ブッヒッヒッヒ」

 

 コッツ兄妹との修行を攻略したギンジ達は旗を手に入れ、遺跡から脱出。

 

 

 その後はコッツ兄妹は魔女にしこたま怒られ、ギンジ達は帝国に戻り際、サクラとも色々近況を報告しつつ、オレキエッテ帝国に戻るのであった。

 

 この魔法界で得たモノは非常に大きく、来る魔王軍との戦いや、帰還した後の戦いにそれぞれが貢献出来る非常に有意義な修行であった事は間違いなかった。

 

 ギンジ、カエデ、レン、ミドリコ、ケイタがそれぞれ得た新しい力、修行の成果を発揮する時は近い・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 場所は変わって魔王城。

 

 コンキリエ魔王軍の所有する荒野に怪しく佇む巨城は、いつもそうなのだが普段よりも禍々しい魔力を纏い、強烈な殺気と空気を揺るがす程の悪意が満ち溢れ、あらゆる生命体が近寄れない様な異質な雰囲気が漂っていた。

 

 大部分が石と鉄で建造された魔王の居城には、暗黒に染め上げた鎧を身にまとう魔王アマトリを始め、2名の側近を従えている。

 

 妖艶な衣装を身に着けた艶めかしい女性の魔界軍師ペペロンチー。

 

 恰幅の良い身体と雄々しい威圧を感じさせる破壊元帥カルボーナを連れて、魔王城の円卓へとその三名が姿を表していた。

 

 そんな三人はより凶悪な闘気を放出しており、魔力が無い様な存在でも本能的に勝てないと察してしまう威圧を感じさせる。

 

 魔王の兵士達もその威圧に飲まれ、鎧の中でカタカタと身体を震わせる者も少なくはない。

 

 この三名が異様にも思える闘気や魔力を放出しているのには、仲間であり魔王の優秀な側近の一人であった、突撃将軍ナポリタが勇者によって撃破された事が大きな理由であった。

 

 そんな円卓の中心には、魔力を一切感じさせない不思議な存在が珍客として魔王城におとずれていた。

 

 「いったい・・・魔王様に何用なのだ?」

 

 美しい声とは裏腹に、この世界では普段ありえない魔力の無い存在を見て、敵意に満ちた表情と声音をしたペペロンチーが、机の真ん中に佇む奇妙な存在に声を掛ける。

 

 「・・・先ズハ、名乗ラセテ頂ク。我ガ名ハ、骨ノ怪人」

 「怪人?聞き慣れない種族だな。居たのか?そんなやつ」

 

 鉄球に取り付けた鎖を手元で巻きつけるとじゃらりと、重い音がなる。蛇が回るような鎖の音を鳴らしながら、カルボーナが疑わしい者を見るような目つきで、その口を開いた。

 

 魔王アマトリは無言で珍客を見ているだけ。しかし一度無礼を働けば、すぐに消す・・・そういった敵意を感じては居る。

 

 ただ消すと言ってもいたぶることは無く、魔王としての威厳の中で遊び感覚でパッと消すぐらいの感じだろうか。

 

 普段の骨の怪人ならば、こんな威圧だらけの集団には何も臆さないだろうし、話もスムーズに進められた筈。

 

 だが今の骨の怪人はわずかな血液とすすり、この魔王城に居る奴隷の死体を喰らい、なんとか頭蓋骨の形を取り戻せる所までは来ている。その程度の存在でしかない。

 

 今の自分は怪人四天王としての立場すら危うい姿であろう。

 

 ヘルブラッククロスとしての目的はたった一つ。この魔法界に居る魔王軍と協力体制、ひいては同盟を組み、ヘルブラッククロスに戦力強化に促すということ。

 

 そしてその為には、この魔王軍の要請する交換条件を飲むこと。

 

 成果を持ち帰る事・・・先ずはそれを出来ない事には、骨の怪人は帰るに帰れない。

 

 魔法少女をいつか仕返しをして、必ずヘヴンホワイティネスにも一矢報いる。それが目的。

 

 「我々ハコノ世界トハ違ウ世界・・・モウ一ツノ切リ離サレタ世界ニテ活躍スル、ヘルブラッククロス・・・魔王様、勇者ヲ倒ス為ニ、是非トモ協力ヲサセテホシイ」

 「協力だと?貴様の様なザコが・・・」

 

 ペペロンチーが骨の怪人の突拍子の無い言動に憤りを見せるが、魔王アマトリがそれを腕で制止する。怒りは収まらずとも勢いは止まり、ペペロンチーはその身体を椅子に沈ませる。

 

 「コノ骨ノ怪人・・・勇者ノ存在ヲ、ソシテ奴ノ弱点ヲ知ッテオリマス・・・」

 

 骨の怪人の瞳は爛々と輝き、底知れぬ闇を感じさせる。魔王から見て取れるその瞳の奥には、底知れぬ力への渇望、そして力による支配の未来を望んでいる事がよく解る。

 

 それと同じく骨の怪人も満足に動けない身体ながら、この魔王城で調べられる情報はなんでも集めてきた。

 

 勇者の存在や、オレキエッテ帝国の兵士状況、さらには奴隷達から得た近辺の環境問題や、魔力、魔法の素晴らしさ。

 

 極めつけは、勇者の召喚したと言う英霊の存在。まさかあの憎き怨敵達が来ているとは思わず、骨の怪人にとって大きなチャンスが訪れている様な気分であった。

 

 そしてなにより勇者の存在について、骨の怪人は信用に足る大きなアドバンテージがあった。

 

 「勇者の弱点ってぇなんだ?」

 

 口を開けば粘ついた唾液の糸が上下に開くカルボーナの言葉に、骨の怪人が抜け落ちた歯のないこうべをカチカチと鳴らしながら話し始める。

 

 勇者の名前は赤鬼。元同僚である事、そして何故かこの世界には自分よりも先に来ていた事。

 

 そして赤鬼がヘルブラッククロスを離反したのには、ある理由があった事を説明する。

 

 甘白ミドリコ・・・それが赤鬼の怪人が、ヘルブラッククロスを離反した原因。彼女さえ居なければ、きっと今頃もヘルブラッククロスとして力を存分に奮っていたはずだ。

 

 そしてその甘白ミドリコという存在を抑え込むことができれば、今現在勇者としてもてはやされている赤鬼を、一方的に攻撃も出来るはずだ。

 

 そして勇者と英霊・ヘヴンホワイティネスを撃破できれば、オレキエッテ帝国との戦いには、コンキリエ魔王軍の勝利で収められるということ。

 

 「ダガシカシ、勝利ヲ収メル為ニハ、我ガ身体ヲ取リ戻サネバナラナイ・・・ソコデ、私ハ魔王様ニ協力ヲ惜シマナイ・・・ソノカワリ、コノ身体ヲ魔法デ強化シテホシイ・・・」

 

 魔王アマトリはこの骨の怪人の奥底に眠る力に、興味が湧いていた。一息吹けば飛びそうな脆さがありそうなのに、勇者の事を知っているということ、そして別の世界の存在・・・。

 

 すべてが魔王アマトリが神になるのであれば、いずれ通らねばならない道のりだとしたら、この骨の怪人を自分の手中に収めるのもありだろうか。

 

 一瞬の沈黙の後に、魔王アマトリからすぐに返事が返ってきた。

 

 「良いだろう。貴様の身体は、この魔王軍が責任を持って改造させてもらおう。擬似的にとは言え、魔法は使用できる様にはしておいてやる。それと同時に・・・実は近々帝国に進軍を計画していてな」

 「ホウ・・・?」

 

 コンキリエ魔王軍がオレキエッテ帝国に進軍するのは、先にもあった通り突撃将軍ナポリタの仇討ちに行く事。いずれ倒さねばならない壁ならば、この後にでも進軍するつもりではいたのだが・・・。

 

 「丁度・・・貴様の様な【協力者】が欲しいと思っていたのだ・・・」

 

 魔王アマトリが骨の怪人の頭を掴み、魔王軍の親衛隊であるボーンゴーレの残り2人へと大声を上げる。

 

 そしてその声は魔王城すべての兵士達にも伝わる、伝令にもなっている。

 

 「聞け!我が軍の兵共(つわものども)よ!

 我らは今日より、良き協力者を手に入れた!

 そして今日より3日後!我らが魔王軍は勝利を収めるぞ!」

 

 帝国にある霊石を手にし、膨大な魔力をその身に入れ込み、魔王アマトリは神となる。

 

 骨の怪人という、都合の良い道具を手に入れ、魔王軍はより強固な力をこの骨の怪人に注ぎ込む。身体を取り戻させてもやる。

 

 ただし、この城を運べる程の巨大な身体になってもらう。

 

 そうとは露知らず、魔王の協力を得られたと本気で信じている骨の怪人。

 

 この世界における地獄はまたひとつ広がりを見せる。

 

 黒く、深く、大きく・・・。

 

 魔王城にはアマトリの高笑いが響き、荒野の禍々しさはより強みを増して行くのであった・・・。

 

 

続く

 

 

 




お疲れ様です。

今年最後の投稿となりました。

次回の更新は1月12日辺りをめどに再開していこうかと考えています。実家帰ったり、新卒入社に向けた仕事とかもそこそこ多いので結局1月頭は忙しいっていうね。仕事納め?ないよ私には。

次回更新を1月12日をめどとはしていますが、もし早く更新できるならもっと早くします。遅くても12日〜って事です

さて今回はキャラネタよりも、年末という事なので、ボツになった話のネタでも書こうかと思います。

話の流れや、展開的に面白くなさそうだな、と思ってボツになったお話たちです。

未来編
10年後の未来へと興味本位で飛んだギンジ・・・未来の度固化市はまともに人間が暮らせる環境ではなく、神と称した人類の敵、ヘヴンホワイティネスが人類を滅ぼそうとする・・・
・何かあった未来においてのお話で、ケイタがビーム剣術を使える未来でのお話の予定でした。未来の組織はグレーゾーン。
・ボツになった理由
ヘヴンホワイティネスが敵になるっていうのが個人的に嫌だった。あと、興味本位で未来へ飛ぶのも、ヘルブラッククロスと戦う本筋にあまり関係ないと思い断念。

ヘルブラッククロスの用心棒編
ヘルブラッククロスが雇っていた用心棒・天元坂アマナ。彼女とギンジの出会いによって、金だけでは解決出来ない、正義と悪の間に揺れる・・・というお話。
・序盤にさしこみ、最後までゲームの中にいたキャラクター・・・っという設定にしたかったのですが、リコニスを出す都合上アマナというキャラの出番は無く成りました。名前は気に入っているので何か別のお話で出せれば・・・
・ボツになった理由
リコニスと両立させるのは難しいと思い断念。そもそもヘルブラッククロスが怪人とか兵器開発が出来るのに用心棒を雇うのも変だな、と思い。

復活のゲヘナミレニアム編
内容は特に考えていなかった。
・ボツになった理由
実はサクラとレイナの2人にも悪の組織を残しておいて、それぞれギンジ達に恩義を感じさせる展開にしたかったのですが、退魔教会編でレイナが、魔法界編にてサクラが、サン・アンフェール編にてルカがそれぞれ恩義のある関係になるため、別にいらないかなっと思い。

ギンジ改めギンコちゃん編
おふざけかと思いきやヘルブラッククロスのドクターハルネにより、性別変更ビームを受けたギンジとカエデ。カエデは宝塚みたいなイケメンになり、ギンジは男性の欲望の詰まったクソドエロボディの気弱な女の子になるというお話
・ボツになった理由
あまりギンジが女の子になるというのが想像できなかった。そもそもTS要素をタグにいれてないし、恋愛面に動いても物語的にはなーどうかなーっと思い断念。

以上4つのお話がボツになったお話でした。でもたまに章の管理の際に、辻褄合わせと言うか、新たにお話を入れ直したりしてたりするので、当初は30話ぐらいで終わる予定が70話以上、いまでは100以上になっています。ちゃんと終わらせられるか・・・?
頑張ります!

それでは年末最後の投稿となりました!
皆様良いお年を!次回またお会いしましょう!
2022年、12月30日
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