ペペロンチーノって美味しいよね。
ペペロンチーも美味しいらしいです
by魔王軍のいち兵士さんからの情報提供
それではどうぞ!
「あれが勇者・・・初めて見るが、なんと言うか奇怪な奴だな」
魔王軍の自慢の精鋭を蹴散らしながら進む7人。
その中心人物となる赤い肌の巨漢を見下ろしながら、ペペロンチーは闇の魔力を片手に微笑んでいる。
自分の指揮なんてモノともせずに突撃してくるあの6人を、カルボーナはとても面白そうに眺めている。
「さてどうする・・・そろそろ我々が出るか?」
勇者の作戦か帝国の作戦かは不明だが、どうやら奴らは魔王城に向けた少数突撃を果たそうとしている様だ。
魔王軍の精鋭とて弱くないのだが、紙くずの如く7人のコンビネーションがそれぞれをカバーしながら確実に魔王城に近づいている。
それとは逆に帝国の兵士達は、誰一人として軍勢の中腹にまで迫ってきていない。皆城壁の防衛に全力を注いでいる。
上空から襲いかかろうとする部隊は、ほとんど魔法や障壁によって防がれ、城下町への侵入もままならない。
「ふむ・・・これではまともに攻め込むのは難しいか・・・」
ペペロンチーが鼻を鳴らしながら静かに言うと、隣に立つカルボーナはどんどん兵士達に突撃を命じている。
「ガハハハ!これはナポリタが敗けるのも納得かも知れんな。おう、出るぞ!魔王様の手を煩わせるわけにはいかん」
「仕方ないですね。カルボーナ、先手は任せても?」
「おうよ。お前はあいつらをひっかき回してやれ」
魔界軍師と破壊元帥。魔王親衛隊・ボーンゴーレとして二人は、魔王城に迫る7人に対して自らが出る事を選んだ。
「私達が本気を出すまでの実力かどうか・・・試させてもらうわよ・・・勇者!」
闇の魔法を展開させると、それは人が収まる程の大きさを成し、そこへカルボーナが先に入る。
見える距離ならばどこでも移動出来るペペロンチーの魔法で、ボーンゴーレの二人は7人の進む前へと姿を表す・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・
ギンジ達の突き進む道無き道には、ただの雑兵ぐらいの敵しか達はだから無い。決して弱くはないのだろうが、魔法を使われても鎧が高性能でもギンジとカエデのコンビネーションの前には型無しとなっている。
例え討ち漏らしてもサクラが魔法で吹き飛ばし、赤鬼は叩き潰し、ミドリコも銃で関節を的確に狙う。
レンとケイタは二人で背中を守りながら進み、攻撃の手段の無いケイタのカバーをレンが行いつつ、ケイタは回数の少ない魔法でなんとかメンバーを守っている・・・そんな状況である。
「オラ、邪魔だ!」
ギンジが両腕を広げると爆炎が巻き上がり、二本の鞭の様に姿を変えて、ラリアットの要領で目の前の兵士達を纏めて焼き倒す。
まだ残っているのを確認すると、次は雷で巻き上げて、カエデのヘヴンリー・インパクトで纏めてクリーニングする。
「やっぱり数が多いよ!」
「問題ないぜケイタの旦那ぁ!」
魔王軍の兵士二人がケイタを狙う。ケイタが魔導書を抱きかかえながら叫ぶと、赤鬼はケイタの頭を押して二人してしゃがむ。
空いた二人の背中にはレンとミドリコが待ち構えており、ビームアックスが振り回され、魔王軍の一人を斬り叩き、もう片方はミドリコの正確無比な拳銃裁きで関節を弾丸が貫通する。
そこへすかさず赤鬼のオリハル金砕棒が突き出され、後方に兵士を叩き飛ばすと、何体かをまとめてぶっ飛ばしていく。
「マジカルマジカル・・・ピンクタイフーン!」
サクラの魔法も負けじと前方の大群を空へと巻き上げて、赤鬼のオリハル金砕棒に乗ったレンとビームハンマー、更にハンマーに乗ったカエデ。
両腕のガントレットはギアを鋭く回転させ、インパクトを打ち込む体制が出来ている。
「姉御達に任せやすぜ!飛びなっ!!」
筋力任せのフルスイングでレンとカエデが上空に飛び出し、さらにレンのビームジェットハンマーによるフルスイング。
そこから大砲の如く飛び出したカエデのインパクトが、ピンクタイフーンごと敵を弾き飛ばす。
「必殺!テラマグナム・インパクト!!」
桃色の突風を内側から引き裂く様にも見える大衝撃が、敵陣のど真ん中に炸裂してどんどん敵をなぎ倒す。
「こ・・・こいつら強いぞ!」
「なんとしても止めろ!」
「生死は問わないと言われている!必ずここで止めるんだ!」
囲まれているのに、一人一人が怪物と称される程に強い。
これが新勇者赤鬼・・・否、ヘヴンホワイティネスである。
「こんなモンで俺達を止められるかよ!体感もっと多いヘルブラッククロスとこちとらほぼ毎日戦っとんぞ!おおう?」
完全にヤクザのノリであるギンジの恫喝に、魔王軍の兵士達が恐れ始める。
しかしギンジ達の前方に立つ兵士達の背後に、闇の魔力が浮かびあがるとそこから殺気を感じる。
魔王軍の兵士以上に強い殺気を感じ取り、一気に場の空気が重くなるのを感じた。
その闇の魔力の中からの殺気がより強くなるのを感じると、見えない闇の向こう側からは、鉄球が飛び出てくる。
「なんだ!?」
ギンジが叫んだ瞬間、魔王軍の兵士を突き飛ばしながら、ヘヴンホワイティネスを分断する。
カエデ、レン、ミドリコ、サクラの方にはもう一つの闇の魔力が壁を作り出すと、カエデ達の眼の前には黒を基調とした妖艶な女性が現れる。
もう片方のギンジ、赤鬼、ケイタの前には恰幅の良い太った巨漢が現れる。
不潔にも見える様な粘ついた前歯をむき出しにしたその大男は、勇者赤鬼との初対面に鉄球につながった鎖を手綱の様に操り、その眼その身体に強烈な魔力が闘気となって揺らいでいる。
「ガハハハ!お前らがだらしないから、ボーンゴーレが出てきてやったぞ!」
高笑いと共に鉄球を頭上で振り回して、部下である魔王軍の兵士達を草でも刈るかの如くなぎ倒していく。
「戦えねぇ奴はここで死ね!」
「めちゃくちゃだぜこの鉄球バカ・・・!」
部下を容赦なく見限りをつけ、鉄球で最後の兵士を撲殺すると、地面に重々しくめり込んだ鉄球。それを脚で踏みつけながら、ボーンゴーレと名乗った男がギンジ達ににらみを聞かせた。
「はじめましてだなぁ、勇者さんよぉ」
「誰だぁテメェは・・・はっ!ミドリコの姐さんがいない!」
ミドリコと分断された事に今更気がついた赤鬼だが、そんな赤鬼の顔面に鉄球が突きこまれる。
「危ねぇだろ・・・そんなモン投げつけたら・・・!」
ギンジがとっさに金棒で抑え込み、真上に弾き飛ばした。こうしなければ赤鬼が負傷していた可能性がある。
「すまねぇ兄貴」
「気にすんな。でも今は目の前に集中しろよ!」
「え・・・こんなやばそう奴と僕も戦うの・・・?」
「ガハハハハハ!元気が良いな!俺は魔王様親衛隊ボーンゴーレが一人!」
落ちてきた鉄球を再び脚げにしながら、巨漢は我が名を叫ぶ。
「破壊元帥カルボーナ様だ!!」
ギンジ、赤鬼、ケイタ
vs
破壊元帥カルボーナ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あらあら・・・こんな可愛らしい女の子達に、我が魔王軍の兵士は押されていたと言うの?」
妖艶な女性・・・魔界軍師ペペロンチーの作戦の一つ、分断は成功した。
「はじめまして、勇者の英霊さん。私は魔界軍師ペペロンチー・・・魔王様の親衛隊ボーンゴーレの一人・・・!」
「あんたがこの変な壁を作ったのかしら?」
カエデ達をとり囲む兵士達は、警戒だけは強くして、ペペロンチーの指示を待っている。
決して誰一人逃がすまいとした完全包囲網に、ペペロンチーは勝利を確信した笑みを上げている。
「お前達が魔王軍の最高司令か何かか?」
ミドリコは周囲を警戒しながら、コンバットナイフと拳銃を取り出しながら急に現れた目の前のペペロンチーを見やる。
「コイツは、この魔法界でも有名な闇魔法の使い手だよミドリコさん。魔王軍にスカウトされてからはずっと・・・悪事を働いてきた真の悪党よ!」
サクラの怒りの表情だけでも、倒さないといけないという事が解る悪の登場にカエデとレンがやる気に満ち溢れる。
「なんにせよサクラの故郷を脅かす敵なら、あたし達も協力するわよ!」
「同意。魔法界でも、私達ヘヴンホワイティネスの出番・・・」
「当然だな。早くこんな奴は撃破して、さっさとギンジ達と合流しよう!」
ヘヴンホワイティネスの自信に満ちた言葉は、サクラの志をより強く燃やし、ペペロンチーの憤りを増幅させる。
「・・・悪党だなんてひどいわ魔法少女・・・我々は神を創ろうとしているだけなのに・・・」
わざとらしい戯け方にサクラが更に表情を堅くする。
「あなた達の言う神なんて・・・ただの破壊の権化じゃない!魔王が今までやってきた事だってこの魔法界のいたる所を占領しては支配し、それが出来ないなら破壊して・・・おまけに今以上に魔力を得ても、生まれるのは神なんかじゃないわ!」
サクラは自分の故郷がこれ以上、魔王軍によって壊されるのが見たくなかった。
魔王軍は正義と称して自分達の行いを正当化する言い訳にして、侵略して来た。このオレキエッテ帝国をも壊し、奪おうと言うのだからもう許せない。
「この美しい世界をより美しくするには、我が魔王を神にする以外ないのよ・・・そして圧倒的な神の力によりこの世界は新たに産まれかわるのよ」
ペペロンチーの言葉は、本気でそうなると信じて疑わない者の声。
サクラの声は、本気でこんな事を止めたいと思う言葉。
そしてそんなサクラという友の為に、カエデとレンとミドリコは立ち上がった。
ヘルブラッククロスと戦うという大きな使命もあるのに、彼女達は友達の為にこの戦争にまで来たのだ。
「あらあら・・・そう。それじゃあ、魔王様が神となり、より美しい世界で暮らす気はないのね・・・?」
「あたりまえ!」
「結局・・・ヘルブラッククロスも魔王も、やる事変わんないのよ。なんでもかんでも力を誇示して、そして気に入らないのは全部壊してさ・・・他人の幸せを全部奪い尽くして、最後は笑ってる・・・」
魔王軍がどれだけすごい可能性を秘めていようと、カエデは悪は許せない。
「あんた達みたいな悪、絶対に許せないのよ!やるわよサクラ!」
「同意。私もこんなところで、終わるつもりは、ない。援護する」
「私の同じ気持ちだよ、カエデ、サクラ。皆でこいつを倒して、魔王も私達が倒そう!」
「うん!皆ありがとう!」
ヘヴンホワイティネスと魔法少女の共闘がここに始まり、魔界軍師を目の前にして臨戦態勢が取られる。
「それが貴女達の答えなのね。魔王様を愚弄した事を見逃してやろうと思ったが、どうやらここまでのようだな」
ペペロンチーの表情は怒りで引きつり、両手に闇の魔法が炎の様に展開されていく。
「ふふ、もうじき我が兵士達も帝国に攻め入る事だろう。そうなれば民の命というモノを使い、お前たちに地獄を味合わせてやろうではないか・・・」
「卑劣」
ペペロンチーに最初に接近したのはレン。ビーム剣を情け容赦無く振り抜いたが、空中に浮いた兵士によってその攻撃が止められる。
「・・・命までこんな風に使うの?」
「そうよ。こいつは今戦闘中だと言うのに、あくびを噛み殺していたの。そういう気の抜けた奴・・・嫌いなの、私」
兵士はペペロンチーを守ろうとしたのではなく、この闇の魔女が魔法で防御に使ったのだ。
「奪った命だけど・・・これは、許せない」
「あんた知ってるかしら」
レンにも怒りの表情が強く出てきており、そんな彼女の隣に立つカエデも笑みの無い強い怒りを宿した瞳で、ペペロンチーを睨みつける。
「未来じゃ命は尊いモノだって事を!」
「意味の分からない事ばかり言うわね、英霊って。ホラ、お前たちも早く動きなさい!」
ペペロンチーの命令によって、ヘヴンホワイティネスのとり囲む兵士達が一斉に攻撃を仕掛けて来た。四方八方から来る攻撃に、ミドリコはミニガンを取り出して妨害に入る。
魔法を相手に現代の武器で打ち勝つその光景は、もうミドリコ一人でも良いのではないかと思える程の一方的だった。
しかしやはり現代の武器では限界があるのか、兵士達はミドリコに刃を突き立てんと、徐々にその距離を狭める。
「必殺!」
「ビーム剣術!」
『ヘヴンズコンビネーション!』
カエデの格闘術、レンの剣術の2つが丁寧かつ豪胆に斬り込んでいく連携攻撃に、ミドリコの的確なミニガン掃射が挟み込まれ、敵兵士達がどんどん倒されていく。
そんな彼女達の上空ではペペロンチーの闇の魔法が降り注ぎ、サクラが防御魔法を張ろうと奮戦している。
「手下にだけ戦わせて、自分は安全圏で攻撃するつもり!?」
「つくづく卑怯で、卑劣。あれは、外道」
兵士達を正義の衝撃で倒す傍らで、レンもひどい言葉を浴びせていく。
「まったくだ・・・こちらを見下ろしているのも気に喰わないな」
ミドリコもその視線を嫌がり、ミニガンを上空へ向ける。もちろんサクラを狙わない様にして、正確に狙ってみる。
「愚かしいわね!マジカル・アンライト・マジカル・・・」
闇の世界に生きる者の、闇の魔法。古来より魂や生命を対価として、絶大な力を振るうことを許される、強力だが禁忌とされて来た魔法。
そんな魔法を代償無しに振るえるというこのペペロンチーは、魔法に関して言えば天才なのだろう。
「死になさい!ダークファイア・ランス!」
黒く、内側に淡い光を灯した炎が揺らめきながら、槍の形を形成していき、カエデ達をめがけて落ちてくる。サクラは空を飛びながらそれを避けるが、槍は一本だけではない。
何本も一度に精製され、確実に敵を倒す気でいる。
手下に任せっきりに見えて、その実力もやはり上位の魔法使いにふさわしい。
闇の槍の魔法。それらが一度にカエデ達に向かって落ちるのだが、軽い質量を持たない様なその槍達は、レンのビーム剣とサクラの魔法、そしてミドリコの乱射によって容易に打ち砕かれる。
雨あられの如く降る槍は手下達を巻き込んでいくが、ペペロンチーは一切気に止めていない。
「仲間じゃないの!?」
カエデの動揺する叫びには、サクラが首を横に振る。
「魔王軍にそんな感情なんて無いのよ!奴隷として扱ってるし、兵士達もそれを自覚してる!」
続けざまにミドリコの横に迫った兵士が脳天を貫かれて死亡し、死ぬ直前まで命を賭けて戦った姿に恐怖する。
普通に考えればこんな事あっていいはずがない。
「アハハハ!死にたくないなら離れなさい!逃げても殺すわよ!立ち向かえ!」
「なんてめちゃくちゃな事を命令しているんだっ!」
それが当たり前と言うべき態度のペペロンチーの言葉に、ミドリコにも怒りの闘志が宿り、許せない気持ちでいっぱいになる。
「さぁさぁ!臆した者には死を!逃げずに戦った者にも死を!魔王様に忠誠を誓った者はその命を賭けなさい!」
「いい加減にしろ!」
高く跳躍したカエデがガントレットをペペロンチーにぶつける。しかしその拳は魔法障壁いよって防がれ、身体と共に弾き返されてしまった。
「あら・・・そんなゴミに感情移入出来るの?流石勇者の英霊は、志が高いのね」
「仲間を大切に、出来ない人じゃ・・・私達には、勝てない」
続いてはサクラと共に上昇したレンが、ビーム剣の形状を槍に変えて突撃する。
「マジカルマジカル〜!エンチャント・パワフル!」
サクラの杖から飛び出したレンに、ピンク色の魔力が身体に取り込まれ、レンの空中での移動を早める。力も速度も著しく向上したレンはビーム槍と共に錐揉み回転しながら魔法障壁に挑む。
「マジカル・ビーム剣術!」
青白いビームはサクラの魔力を飲み込み、より強く強力な刃となる。色も桃色と青の混ざった渦巻きの刀身となり、ペペロンチーに突っ込んでいく。
「・・・ッ!」
「無駄な事ね!我が闇の魔法は誰にも破られない!」
「・・・ビーム槍術!シャンタンテ・ヴィント!」
さらに錐揉み回転の速度を上昇させ、全身をドリルにしたような突撃が障壁とぶつかりあう。
「行くわよミドリコ!」
「本気で頼む!」
地上では兵士達はペペロンチーの攻撃におびえて動かなくなった兵士達をよそに、カエデがミドリコを持ち上げている。スーツのパワーを活かした人間大砲を打ち込むつもりでいる。
「必殺!スイーツ・キャノン!」
迷彩服を着込んだミドリコをペペロンチーの背後に投げ飛ばし、ミドリコは昇る最中でコンバットナイフを魔法障壁にぶつける。
それは金属をこすらせ、火花を散らしながらさらにミドリコは、レンとペペロンチーの真上に飛び出す。
「これならどうだ!」
背中から取り出したのはミドリコの決戦兵器・ロケットランチャー。
「レンちゃん!」
サクラの伸ばした腕を取り、レンが爆撃の範囲から逃れる。
浮いているペペロンチーとミドリコの構図が出来上がり、さらに障壁に砲頭をくっつけてロケットランチャーの引き金を引いた。
ミドリコの自爆にも見える超強力な爆撃が障壁に炸裂すると、空気を揺るがす轟音と黒煙が舞い上がる。
「・・・!見えないじゃない!」
闇の魔力によって黒煙を振り払うと、次は真下からカエデの衝撃が強く叩き込まれた。
黒いスーツになったカエデの超必殺・デストラクション・インパクトが叩きこまれると、油断していたのか障壁ごとペペロンチーの身体がさらに上へと浮かんでいく。
ピシリ。そんな音が聞こえた気がした。
「小癪な・・・!」
闇の魔力から形成された大鎌を振り下ろし、カエデを叩き落とす。
「・・・もう一回!」
「何!?」
ペペロンチーの真上、まるで卵の様な形をした障壁の上にミドリコが立っていた。
燃えて破けた迷彩服の下は、黒地のタンクトップインナー。こんな姿を赤鬼が見たらきっと大興奮間違いなしだろう。
不安定な足場の上で、ミドリコはさらにもうひとつのロケットランチャーを取り出し、ゼロ距離発射を行おうと言うのだ。
もう一度撃てば、ミドリコが危ない。だが正義の為に戦う彼女は、こんな事で怪我する事を恐れていない。
「先ずは貴様から死ね!」
ミドリコの周囲に黒い魔法の刃が何本も並び、命を奪おうとぐるぐる回り始める。
「ビーム剣術・・・ゴエモン・ストライク!」
上に気を取られたペペロンチーの真下、つまり地上からは再度攻撃が飛んでくる。奇妙な形をした剣の形状、刀。
その斬撃波が飛び出し、魔法障壁をさらに打ち上げる。
ビシッ・・・またそんな音が聞こえた気がした。
「何度も不意打ちみたいな真似を・・・」
ペペロンチーの声が、魔力となって真下に居る英霊達に闇の弾丸が飛んでいく。
「マジカル・ダーカイズ・マジックズ!」
続くのは闇魔法の詠唱。より強力な闇の弾丸を生み出す、悪の魔法。
「ヘルフレイム・ダーカー!」
真上に立つミドリコごと黒い炎が包み、カエデ達も実体が無いのに身体を蝕む触れない炎をその身を襲われる。
手下達も燃やされその苦しみから、無数の苦悶の叫びが巻き上がる。
「くっ・・・なんてひどいことを・・・」
仲間も敵も無差別に攻撃し、カエデも黒い炎に押される。
レンもスーツを燃やしながら、黒い魔力を斬り払うが、手数が足りない。
「うわああああ」
ミドリコが痛みに耐えかね、落下する。
「マジカルマジカル〜!ホーリー・ライト!」
サクラもこの闇魔法に抵抗するべく、聖なる光の魔法によって炎を浄化させていく。
「ミドリコさ〜ん!」
落下するミドリコをキャッチして、サクラはペペロンチーの攻撃範囲の外へと抜けていく。
「ありがとう・・・生きた心地がしなかった・・・」
「あんまり無茶しないでね!」
「ああ。でも、これで・・・!」
魔法で身体が浮くという不思議な感覚の中で、ミドリコは腰から折りたたみ式のスナイパーライフルを取り出す。機械的な音を鳴らしながら、ミドリコの正確な射撃が発射されようとしていた。
普通ならばサクラが運んでいる上、さらに空中に居るのにライフルなんて武器は当たらないだろう。
しかしそれは普通の人間であれば・・・の話である。
甘白ミドリコは今や魔法を使えて、自身が傷つくことも厭わずにロケットランチャーを撃ち出す戦士である。
甘白ミドリコの魔法。それはこの魔法界での修行で得た力。
攻撃は出来ず、自分の身体能力を上げたりする事も出来ない。
しかし場所を問わず、色々な人種の気配を見る事が出来る。
名付けたその能力は第三の眼。銃を操り後方支援を主とする彼女にとって、最高の能力と言えるだろう。
カエデの様に圧倒的なパワーは出せない。
レンの様に近接戦が得意なわけでもない。
ギンジの様に怪人の能力を使えるわけでもない。
サクラの様な輝かしい魔法も使えない。
レイナの様な退魔の力があるわけでもない。
しかしそんなミドリコの得た力は、一見地味に思えるが、彼女にとっては最高の能力・・・。
それはどんなに悪い姿勢でも、銃を撃つのに適さない場所でも、彼女ならば誰よりも上手に扱う事の出来る魔法だからだ。
「この距離、この角度。絶対に外さん!」
空中に舞うミドリコの銃口から、怪人にも通用する専用弾丸のライフルバージョンが発射された。
重装貫弾・改。防御力の高い怪人をも貫く事の可能な、ミドリコの主力武装の一つ。
「ハッハッハッ!そんなチンケな小豆で一体何が・・・」
ビシぃ!・・・そんな強くヒビの割れる音が聞こえた。
「・・・は?」
確かに弾丸は発射された。その弾丸は鋭い弾頭を伸ばして、魔法障壁に突き刺さり、薄い壁を抜けた。
文字通りの貫通はまだ止まらず、障壁の向こう側、小さなヒビの向こう側へと勢いを殺さずに抜けていく。
闇の魔力で構築された絶対防壁を打ちやぶり、穴を開けるだけに留まらずに障壁の破壊までをも成功させた。
「な・・・なんだとぉ!?」
ヘヴンホワイティネスが一生懸命攻撃した事で、ヒビが入っていた事に気が付かず、ペペロンチーは障壁の破壊に驚愕する。
闇魔法による炎を再度発動しようと目論むも、今度は障壁がなくなった事で、カエデとレンが一斉に飛び出る。
カエデのダークヘヴンスーツと、レンのビーム両手剣が動じに正義の光を宿し、ペペロンチーの闇魔法と真っ向勝負を決めにかかる。
「ダークヘル・ファイア!我が闇魔法の前に燃え尽きろ!」
ペペロンチーの闇魔法が再び炸裂する。その暗き炎は確かに熱く、身を焦がすには十分であろう。実際スーツを超えたダメージがあるのは事実だ。
だけどこんな炎よりもっと熱く、もっと強い炎をカエデとレンは知っている。
故に、こんな魔王の前座に構っている暇はない。
「必殺!」「ビーム剣術!」
ヘヴンホワイティネスである彼女達が黒い炎に飲み込まれた。闇の炎の中は問答無用の真っ暗な世界だが、二人の少女達は正義の光を宿したスーツによって闇と悪の炎を打払う。
「
カエデの脚力から来る強烈な衝撃と、レンのビーム両手剣からの大斬撃波が2つの軌跡を描き、重なり、十字の型となりながら黒い炎を4つに裂きながら、突撃していく。
「・・・!馬鹿なぁ!!」
自慢の闇の魔法が突破された事で酷く動揺するペペロンチー。
「必殺!スカイフォール・ハンマー!」
十字の一撃は炎とぶつかりあった事で消滅したが、レンの両手剣による吹き飛ばしに乗ったカエデが、ペペロンチーをついに叩き落とす事に成功する。
「がハァ!?・・・ふざけるな、この私が、こんな奴らに!」
地上に落ちたペペロンチーに、ミドリコとサクラが立ちはだかる。
魔王の親衛隊がピンチだと言うのに、兵士達はと言うと・・・最早命惜しさに降伏気味であり、ペペロンチーからの扱いも最悪であった為に、誰も彼女を助けようとはしない。
「観念しろ、魔界軍師」
「あなた達魔王軍は、ここで終わりなんだから!」
これは悪い夢だ。実力もあり、魔王に仕える自分がこんな簡単に押されるなんてあってはならない。こんなの現実的じゃない。
「マジカルマジカル〜!ピンクミサイル!」
サクラの得意魔法が解き放たれ、ペペロンチーにミサイルが前段命中すると、大小様々な爆発が巻き起こり、高級な黒いドレスを燃やし、平原を転がっていく。
自分がこんな簡単に押されるなんて、これは夢、そう・・・悪い夢。
痛みが現実だと言っているが、これは夢なのだ。
平原に背中を引きずりながら転がっていったペペロンチーは、後頭部を丁度良い高さの石にぶつかり、一瞬、気絶する。
・・・。
・・・・・・。
「むにゃむにゃ・・・ううん?」
眼を開くとそこは蒼い空、白い雲。
これは夢だ。キレイな夢オチだ。
同じく綺麗な青空を仰向けで眺めたペペロンチーは、これが夢であったと安心する。
しかし今この瞬間を夢だと思っているペペロンチーに、二人の影が近寄ってくる。
これは夢ではないと教えてくれる、現実だと再認識させ、ペペロンチーを恐怖のどん底に落とす影。
「まだまだ、こんなモノ、じゃない」
「そうね・・・行くわよ、ダメ押し!」
カエデとレンが地上に降り立ち、倒れたままのペペロンチーを満面の笑みで追い打ちをかける。
「ヒィ!ああ、ああああ!」
ダークヘヴンスーツのガントレットからギアが高速回転し、レンのビーム剣の形状はジェットハンマー。
「ああああああ!!!!!」
妖艶で美女とも言える容姿端麗なペペロンチーは、カエデの連続攻撃とレンの連続攻撃、合わせて二重の殴打にその全身を打ち砕かれた。
カエデのオーバードライブ・レイジング、そしてレンのジェットハンマー・エクスペンダブルズ。
二人の超攻撃が、卑劣で外道なペペロンチーという悪を粉々に打ち砕いた。
「トドメは・・・」
「任せたわよ!」
二人動じにペペロンチーを打ち上げ、上空にゴミクズの様に跳ね上げられた。
そこへサクラの強化魔法を取り込んだミドリコのロケットランチャーが、火を吹く。
「これで終わりだ!魔法・ロケットランチャー!」
魔界軍師ペペロンチーは、カエデ、レンの連続攻撃で撃破されたのにも関わらず、最後はミドリコとサクラの融合攻撃により、空中で大爆発を起こして、黒焦げになりながら、敵陣の真ん中へと落ちていった。
「よーっし!倒したわよ!」
「皆の、力が合わさったから」
「しかし、魔法使いの敵と言うのは、なかなか手強い相手だったな」
ヘヴンホワイティネスの三人が健闘を讃え合い、サクラもそこに混ぜてもらう。
障壁による防御能力が強かったとはいえ、四人でこれなのだから、魔王はどれほどなのだろうか。
闇の魔力が解けた事で、カエデ達を分断した壁が解除されて行き、その向こう側ではまだギンジ達が戦っている様だった。
ボーンゴーレは残り一人。
勇者率いる英霊と魔法少女が、魔界軍師を下した事で、指揮官の片方を失った魔王軍は戦慄し始めるが、こうなったらもうオレキエッテ帝国の勝利は近いだろう。
もう片方の指揮官が倒されるのも時間の問題だろうと、魔王軍の敗北に一手かかり、ヘヴンホワイティネスは勢いをつけるのであった。
続く
お疲れ様です。
ボーンゴーレが一人倒されました!二人が協力しながら戦っていればワンチャン・・・あったかも知れません。
キャラネタ書きます
神宮カエデ
魔王軍もヘルブラッククロスもそんなに変わらない、ただの悪。
ただし仲間意識が目立ちやすいHBと比べ、魔王軍は手下も使い捨ての道具として見ている姿に、並ならぬ怒りが湧いた。
宮寺レン
魔王軍の手下の使い方と、戦い方に非常に嫌気が刺した。
修行で得た新しい武器はビーム槍、ビーム両手剣。
質量保存の法則って(ry
甘白ミドリコ
黒地のタンクトップインナーは赤鬼が興奮する。多分見つかったら戦場から連れ攫われる。最近人間離れしている人。人間なんだけどなぁ、おかしいなぁ。まぁ、ロケットランチャーだし、いっか!
実はスタイルがヘヴンホワイティネスの女性陣随一の腹筋、脚、しなやかな腕、形の良い指と爪をしており、赤鬼の採点としては一つ一つの部位が満点クラスであり、俺っちとしてはまずこの綺麗な身体を「途中から赤鬼が喋ってね?」
「バレやしたか。流石兄貴」
小町サクラ
魔王軍による故郷の破壊を阻止するのと同時に、骨の怪人の完全撃破を目論む。しかしながらカエデの協力姿勢と、レンの正義の意思の強さにより、彼女達に協力を要請してよかったと心の底から思う。
魔界軍師ペペロンチー
美人でスタイルも良いのに闇堕ちしており、扱う魔法も闇魔法。
手下は使い捨ての道具としての扱い方をしていた結果、最後は誰も助けてくれなかった。魔王軍の若手兵士には見た目の人気は非常に高い。
ちなみに軍師のくせに軍師っぽい所が出せなかったのも敗因のひとつ
・・・
さて次回は、vs破壊元帥。
迎え撃つのはギンジ、赤鬼、ケイタの三人!
魔王城に到達する最後の壁となる彼に、ギンジ達はどう立ち向かうのか!
赤い勇者と魔法界編もいよいよ佳境!次回もよろしくお願いします!
それでは、また次回!