正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちは魔王軍の兵士アトラクションです。

今回のお話で、魔法界編も佳境も佳境、魔法界編の終盤の始まりです。
まだ終盤じゃなかったの?って思ったそこの貴方。私もえ?まだ終盤入ってなかったのって思ってます。

それでも魔王軍との戦いも激化していきます
※今回のあとがきにはネタバレが含まれます。できれば最後にお読みください

それではどうぞ


63・vs魔王アマトリ

 

 魔王の野望、欲望は尽きる事無かった。絶えず他人に絶望を味合わせたい。ただそれだけの事を行うだけなのに、準備にはやたら時間がかかる。

 

 せっかく集めた自分の精鋭達も、今やヘヴンホワイティネスにほとんど撃破され、まともに残っているのは魔王である自分と、巨大な骨の怪人。

 

 その骨の怪人も今この瞬間は機能を停止し、その巨体を活かした進撃も止まっている。

 

 そしてとうとう魔王の玉座にも、新たな勇者が突撃を果たしてぶつかり合いを果たしている。

 

 黒い魔力の塊が輝いたかと思えば、それは次の瞬間に爆発をお越し、何度も赤鬼を硬い床に叩き落としている。

 

 その英霊達と、この世界の魔法使いも魔王アマトリの攻撃魔法に悪戦苦闘している。

 

 「おっとと・・・どうする?」

 

 サクラは魔法の爆発を切り抜けるも接近がまともに出来ないでいる。

 

 まともに空中戦を行えるのはサクラのみ。地上はひたすら赤鬼とレンが攻め立て、ケイタは所々魔法での援護を行うぐらい。

 

 ミドリコは二丁のサブマシンガンを適度にばらまいているが、まともに魔王には届いていない。

 

 「どうするもこうするも・・・!」

 

 爆風を腕でかきわけると、赤鬼はオリハル金砕棒を頭上で振り回す。

 

 空気を叩く様にゴウゴウと音を鳴らした武器は、それだけでも破壊をイメージしやすい。赤鬼の豪腕だからこそ出来るその振り回しに、魔王は眼を見開いている。

 

 「効くまで打っ叩く!これしかねぇ!」

 「何か別の作、それが無いと、これ以上はジリ貧になる」

 

 赤鬼とレンが横並びになり、そうは言いつつも赤鬼の突撃に合わせてレンもダッシュする。

 

 「ビーム剣術!」

 「空気ごと砕けろやぁ!!」

 

 レンのビーム剣の形状は蛇腹剣。連なる刃を鞭の様にしならせ、叩きつつ斬りつける武器。

 

 赤鬼は空気をオリハル金砕棒に巻きつかせて、レンの攻撃に合わせて空気砲を撃ち出す。

 

 「クリュソーレ・ヴィント!」

 「空鬼剛弾(くうきごうだん)!」

 

 蛇の様な頭を持った蛇腹剣は牙を見せつけるかの如く、魔王の障壁に攻撃を与えていく。

 

 赤鬼も牙を打ち鳴らし、視認出来る赤色の付いた空気の弾丸を撃ち出し、レンと赤鬼の協力攻撃となって障壁に突っ込んでいく。

 

 「ミドリコさん!今だよ!」

 「任せろ!魔法銃掃撃(バレットアーツ)!!」

 

 サクラの魔法で強化されたサブマシンガンの弾丸は桃色に変わり、ミドリコの銃乱射が次々と撃ちこまれていく。

 

 途中、ミドリコめがけた黒い爆発を華麗に避けながら回転しつつその弾丸は的確に障壁に叩き込まれていく。

 

 「第一の魔法!エンジェラ・アーマ!」

 

 ケイタの魔法がミドリコを包み、彼女にも白い天使の衣が鎧となる。そこからさらに身体能力が上がり、ミドリコはさらにアクロバティックな動きで銃を撃ち続ける。引き金が重くなっても、銃が熱くなっても、ミドリコの攻撃は止まらない。

 

 「・・・なぜ貴様には魔法が当たらんのだ」

 

 魔王アマトリの黒い爆発は殺意の塊そのモノとなりながら、ミドリコに向けられているが、ミドリコはこうしていながらもアマトリの向けてくる気配が見えている。

 

 第三の眼を持つミドリコに、即時発動しない魔法は有効打にはならないのだ。

 

 「余所見・・・してていいの?」

 

 アマトリの右側にレンが立ち、ビームジェットハンマーに変わった武器により、思い切り障壁が叩かれる。

 

 フルスイング+噴射による速度向上=破壊力を持つこの一撃も、アマトリの障壁には通用していない。

 

 「小癪な・・・散れ」

 

 アマトリが興味を持っているのは赤鬼だけ。英霊には興味を持っていないアマトリは、再び無詠唱でレンの足元に氷を張る。

 

 足首を絡め取られたレンは身動きが取れなくなり、そこへ黒い魔力が無数に浮かんでくる。

 

 「この至近距離、無数の爆撃・・・いくら英霊でも絶耐えれまい」

 

 冷たく小さく言い放ったその言葉に、レンの顔が強張る。

 

 だが・・・。

 

 「第ニの魔法!派生!エンジェラ・シクスシルド!」

 

 レンを守る為に、ケイタが近くまで飛び込んできており、第ニの魔法の派生技までを発動させる。

 

 「おー流石ケイタくん!」

 「旦那の漢が上がってんなァ!」

 

 ケイタには戦う為の力は低くとも、自分の恋人を守る事には殊更強いらしい。もう見ているだけではないケイタの覚悟と、新たな派生魔法。

 

 レンの周囲を守る様にして現れたその魔法は、通常よりもサイズは小さいモノの、レンの全方位を守れるぐらいには数が多い。

 

 次にはアマトリの魔法が炸裂してレンが爆発に飲み込まれる。

 

 「ふん・・・そんな小さな防御魔法を展開したところで、我が魔法を超えられる訳あるまい・・・」

 

 爆発の後の少しの静寂。

 

 「エンジェラ・シルドは・・・相手の攻撃を飲み込んで、跳ね返す魔法・・・ただの防御じゃないんだ」

 

 ケイタの震えている声は、恐れていてもアマトリをまっすぐ見つめており、確実に魔王を倒す勇気をその瞳に宿している。

 

 そして爆風の中では蒼白い輝きが一筋の閃光となり、次第にレンの姿が顕になる。

 

 彼女にダメージはそこまで無かったようだ。そしてビーム剣を両手で持ちながら切っ先をアマトリに向けながら構える。

 

 「ケイタの魔法は、小さくない」

 

 レンの言葉に反応する様に、ケイタの魔法は飲み込めた分だけ、魔王に向いている。

 

 魔王アマトリの攻撃を倍にして返すと同時に、レンのビーム剣術が同じタイミングで炸裂する。

 

 「ビーム剣術・シャトルフ・ヴィント!」

 

 爆発を乗せた回転斬りが障壁に命中し、アマトリを驚かせる。

 

 「ほう、ここまで来てもまだ諦めないか」

 「次はこっちだよ・・・!」

 

 サクラが大砲を用意、その砲身には赤鬼が装填されている。

 

 ケイタとレンが眼くらましをしている間に、サクラと赤鬼の連携攻撃が突きこまれようとしていた。

 

 「マジカルマジカル〜!」

 「思っくそかっとばしてくれや!」

 

 サクラの魔法が特大サイズの猫のハンマーを造り出し、砲身に火力を注ぎ込む。

 

 集束した桃色の猫の光が砲身を叩き上げると、重苦しい大砲の音と共に赤鬼が発射される。

 

 「赤鬼大砲!!」

 「がああああ空砕烈拳・魔法(マジカルくうさいれっけん)!」

 

 飛び出す風圧に首を持ち上げられながらも、赤鬼の両腕に空気を含ませた触れない拳が障壁を叩く。

 

 その一撃はレンの攻撃に合わせて、障壁をへこませる。

 

 「あと一撃・・・」

 「あと一回当たれば・・・」

 

 レンと赤鬼が悔しそうにそんな言葉を吐き出す。

 

 「サクラ!これで最後の爆薬だ!頼む!」

 

 影に隠れて潜伏していたミドリコが超強力な火力武装を用意していた。

 

 「これにサクラの魔法を流し込んでくれ!ペペロンチーを撃破したあの魔法みたいにな」

 「まっかせて!」

 

 桃色の魔力を解き放ち、ミドリコの持ち出した爆薬に流し込む。通常よりも火力を増して、速度も威力も桁違いになるミドリコの武装。

 

 その火力兵器はいつもの筒状のロケットランチャーとは違い、四角く角張っており、持ち運びの出来る大砲と言った見た目をしている。

 

 例えるならば火縄銃をそのまま大きくさせ、本当に江戸時代ならばどこかの勢力は使っていそうな巨大な砲包。

 

 引き金と撃鉄の近くには、ドクターミヤコプレゼンツと書かれた、ミドリコの決戦兵器の一つ。

 

 「対・巨大怪人用決戦兵器・ミヤコ式城崩し!」

 

 鈍色と木製のパーツが無骨なフォルムを見せつけており、ミドリコが踏ん張ってその弾丸を装填し、重さが倍になったその城崩しと名付けられたミヤコの作った兵器を腰まで担ぎあげる。

 

 「赤鬼!レン!今すぐ離れろ!」

 

 ミドリコの号令と共に、赤鬼がレンの腹に腕を回してその場から退避する。

 

 「・・・そんな兵器で我が障壁を破壊出来ると?」

 「魔王であれなんであれ、あまり日本の警察を舐めないことだ!」

 

 両手で抑え込んだその砲包の引き金を、思い切り引っ張ると、銃身が壊しながら魔法に強化された真っ黒な弾丸が飛び出す。

 

 重苦しい音を響かせ、投石の様な砲丸が飛ぶ事でアマトリの障壁に命中すると、眼の前で大爆発を起こす。

 

 空気を揺るがし、黒曜石の床や壁、宝石の散りばめられた装飾品や窓を内側から侵食する様に破壊していく。

 

 打ち出した衝撃でミドリコが後方に吹き飛ばされるが、赤鬼が全身で受け止めると、事なきを得る。

 

 「済まない・・・ありがとう、赤鬼」

 「気にしないでくだせぇ!」

 「それにしてもものすごい威力だ・・・一度部屋を出よう」

 

 ミヤコの加減の知らない科学者としてのスゴさを垣間見た気がする。

 

 圧倒的な破壊を一撃を見せつけるには十分なその爆発は、なおも広がり続け、魔王の玉座のワンフロアを完璧に破壊しつくし、おおよそ部屋だった場所に変わっていく。

 

 部屋を出てすぐの階段を降りきった所までその熱風と轟音が轟き、吹き出し続ける爆炎にミドリコもサクラも怖いとさえ思える。

 

 「今後ミヤコに兵器を作らせるなら、ギンジの許可を委ねよう・・・」

 「同感ですぜ姐さん。ありゃ殺意マシマシってもんですよ」

 

 なおも続く大爆発に階段まで焼き払われ、どんどん赤鬼達は撤退していく。

 

 これで倒せたとは思えないが、城ごと魔王を崩せるのではないかと思える大破壊が城を崩していく。

 

 「は、走ろう!これじゃ全滅する!」

 

 ケイタの情けない声で全員が冷静になると、大破壊の広がる魔王城を一目散で駆け抜ける。

 

 「オラオラ、死にたくねぇやつはここから飛び出せ!」

 

 赤鬼のオリハル金砕棒で壁にヒビを入れると、レンのビーム剣を突き刺す事で、大穴が開く。

 

 生きている魔王軍の兵士は何事か理解出来ていない様子だが、おそらく魔王が敗けたと悟り、全員急いで大穴から飛び出す。

 

 「全員出たな!赤鬼、急げ!」

 

 サクラが魔法でケイタとレンを運び出して先に脱出するが、赤鬼はミドリコに背を向けたまま、崩落が続く魔王城の奥を見つめている。

 

 「いいや。まだ兄貴とカエデの姉御が来てねぇ・・・」

 

 勇者としての使命もあるが、赤鬼はオリハル金砕棒を担ぎ直して、ミドリコに向き直る。

 

 「俺っちは勇者だ。自分の惚れた女を守るのも使命の一つだがよ、あの魔王がまだ生きてるとも解らねぇだろ?兄貴を探してくるから、後の事は頼みますわ」

 「・・・今度は死ぬなよ」

 「生きて帰ったら、今度は抱かせてくれや」

 「抱かせるか!早く行け」

 

 いつものミドリコの恥ずかしそうな言葉ではなく、苦笑混じりの返答に赤鬼は思い切り笑い飛ばす。

 

 二人の中に芽生えた信頼からの大笑いに、赤鬼は走り出す。

 

 「必ずギンジの兄貴とカエデの姉御をみつけて戻ってきやす!それまで無事でいてくれ、姐さんも、皆も!」

 「君もな!頼むぞ!」

 

 未だ破壊と崩落が進む城内を、赤鬼が走り抜け、ミドリコはサクラによって脱出する。

 

 ミドリコが城を出て、空中に浮かびながら振り返ると、あれほど大きかった巨城は半分以上崩れており、あの兵器によって本当にアマトリも倒したと思える程だった。

 

 しかしながらまだ不安は拭えない。ギンジ達の安否もそうだが、本当にアマトリは倒しているのか。

 

 腐った悪党とは言えど、あれでも魔王。ヘルブラッククロスで言うなら総統と同じ立ち位置の怪物。

 

 「やれやれ・・・城崩しとは大層な名前だが・・・本当に城を崩せるとは、恐れ入ったよ、ミヤコ・・・」

 

 今この場に居ない彼女の名を呼んでみる。ともすれば耳元からくふふというあの薄気味悪い笑い声が聞こえてきそうなモノだが、やはり聞こえない。

 

 必ずこの魔法界の危機を乗り越えたら、ミヤコを助けよう。

 

 彼女が味方でないと行けない理由を、眼の前の崩落を眺めながらミドリコはそう思うのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「おのれぇ・・・!」

 

 焼け焦げた漆黒の鎧を脱ぎ去り、魔王アマトリは苛立ちに満ちた顔で崩れゆく魔王城の最下層へと向かう。

 

 あの障壁が破壊された。そこまではよかった。

 

 自分の魔力が通用しない程の大きな衝撃と、燃え盛る炎。

 

 魔王としてのプライドが一瞬崩れそうな程の大破壊の一撃は、アマトリを驚愕させるのには十分すぎる程だった。

 

 「・・・まだだ、まだ我が魔王軍の最終手段が残されている」

 

 最終手段。この城を乗せる骨の怪人を再起動させると言うモノ。

 

 魔王アマトリが生きていれば、起動は出来る。

 

 この城の最下層まで行けば、魔王の全魔力を開放しては骨の怪人に注ぎ込み、オレキエッテ帝国を破壊しつくして逆転を狙う。

 

 最早そうすることでしか勝機を見いだせない。ヘヴンホワイティネスというヘンテコな集団もそうだが、今回の勇者の英霊達は皆イカれている。

 

 生き残っている魔法陣を展開させ、最下層へと向かおうとするが、どこにも転移が出来ない。

 

 「おのれ・・・勇者ぁ、ヘヴンホワイティネス!!」

 

 怒りを込めた黒い魔力により床を破壊する。八つ当たり気味なその攻撃により、床は砕け散りアマトリはさらに下層へと飛び降りるが・・・。

 

 「イテテ・・・あいつら派手に壊しすぎだろ・・・なにやってんだ」

 

 崩落に巻き込まれたのか、魔王の目の前には瓦礫に横たわる青年がなにやら語散ていた。

 

 人と同じ見た目をしているのに、おおよそ人間とは思えない黒い瞳。

 

 「・・・何みてんだおい」

 「貴様・・・」

 

 戦場となったオレキエッテ平原でこいつを見たことがある。

 

 破壊元帥カルボーナを撃破したこの男も、勇者の召喚した英霊であると認識している。

 

 「っていうか、早くカエデの所に戻らないと後でまた怒られそうだぜ・・・ったく理不尽だよな」

 

 ギンジは崩落の影響でこんなところまで落ちてしまっていたのだ。

 

 「勇者の英霊だな・・・」

 

 今一番鉢合わせたくない怪物の登場に、アマトリは憤りが強まる。

 

 「死ね!」

 「!?」

 

 いきなりの宣言に警戒する間も無く、ギンジは黒い魔力の爆発に飲み込まれた。

 

 「我が魔王軍は・・・こんあところでは終われん!」

 

 アマトリがギンジを片付けると、壁を破壊してすぐの部屋へと入る。真ん中に石柱を立てた寝室がカーテンで仕切られており、崩落の影響か小石やら瓦礫やらが、清潔感のあるこの部屋に流れている。

 

 「この奥に・・・最終手段が・・・」

 

 急ぎ脚でアマトリが部屋の奥にある隠し扉を開く。冷たい魔力が流れ込んでくるその扉の前で、アマトリは勝利を確信して一歩踏み出そうとする。

 

 「ちょっと待てよ・・・」

 

 アマトリの背後で肩を掴んで、立ち位置を入れ替える様にしてギンジが投げ飛ばす。

 

 「貴様・・・!」

 「さっきのは痛かったぞコラ・・・魔王軍ってのは話し聞かない馬鹿しかいねぇのか!」

  

 またもアマトリに立ちはだかる男の存在。

 

 「邪魔をするな!我が目的の達成はすぐそこなのだ!」

 「魔王軍の目的ィ?ああ、お前アレか、魔王サマか」

 

 ギンジの余裕な態度表情に、アマトリの精神はそろそろ限界になってきていた。

 

 「貴様ら虫けらごときにィ!我が野望を・・・邪魔させるモノか!」

 「お前の野望なんて神になるとかドヤ顔ででほざいてる奴だろ?魔王なんてのは皆そう言うんだよ。俺の世界でもそんな魔王(笑)がうじゃうじゃ居たぜ」

 「愚弄する気か貴様!」

 

 指を空中で回して線を描くと、黒い魔力の剣が取り出される。それを構えたアマトリがギンジに切っ先を向ける。

 

 「いいぜ、そーゆーのでいんだよ。この世界の魔王と、俺という怪人・・・どっちが上か白黒つけようぜ!」

 

 ギンジも魔王の気迫に負けじと、黒い炎、紫の雷を展開させる。

 

 今目の前に立つ相手が魔王とわかれば、最初から本気で立ち向かう。

 

 「フェーズ3!・・・行くぞ魔王!」

 

 コウモリの羽を生やしたギンジの真っ黒な、炎が突き出されるとアマトリの顔をかすめていく。

 

 「我が野望の前に跪け!」

 

 漆黒の剣を上段に振り上げてからの打ち下ろし、時間差で三本の刃がギンジに向かって走り出して行く。

 

 思っていたよりも素早いその斬撃に、ギンジは金棒フルスイングで応戦する。

 

 フルスイングの勢いそのまま、電撃を纏わせた金棒からさらにお返しの電撃球を飛ばす。

 

 ゆっくりと進むその電撃をアマトリの黒い爆発で相殺されると、全身に黒い炎での別の生物にも思える様な動きで、ギンジが爆風を突破してくる。

 

 「邪魔するな!」

 「邪魔はお前もだぜ!俺の友達の故郷を襲いやがってよぉ!」

 

 ギンジも一刻も早くサクラの故郷の襲撃をやめさせたい。しかし戦争が始まり、こうして戦わないと行けないならば、ギンジとてやるしかない。

 

 「そもそも俺の仲間はどうした!まさかとは思うが、お前に敗けた訳じゃねぇだろうな!」

 「勇者の事か!?奴らなら、好き放題に我が居城を破壊してどこかい行ったわ!」

 「そうかい、無事ならいいんだけど・・・よ!」

 

 お互いがお互いに肉薄し、金棒と漆黒の剣がぶつかり合う。

 

 剣の柄の部分で金棒を弾かれると、アマトリの小さく開いた左手から黒い魔法の弾が飛び出し、ギンジの胸にめり込んで行く。

 

 「うごっ」

 

 黒い弾が破裂する様にして広がると、体制を崩される。そこにすかさず漆黒の剣の乱舞が繰り出される。

 

 袈裟斬り、回転斬り、叩き下ろし、最後は蹴りで打ち上げると、トドメの黒い魔法の爆発。

 

 「空中では身動きは取れまい!」

 

 さらにアマトリの黒い魔法が展開されると、真っ黒なトラの様な生物が空中にいるギンジへと飛びかかる。

 

 「クソネコが!」

 

 人の胴体を簡単に噛み付ける程でかいアギトに、ギンジが咥えられてしまう。噛み砕こうとその顎に力を込めてくるが、体内放電によりトラは全身を焼かれてしまう。

 

 「隙だらけだ!」

 

 トラの口から脱出すると、ギンジの周囲には漆黒の剣が何本も召喚されている。

 

 「勇者の英霊よ、これで終わりだ!」

 

 その空間に並ぶ複数の剣が、アマトリの合図でギンジに飛び込んできた。

 

 「・・・〜〜ッぬあああ!!」

 

 紫電により全身を活性化させたギンジは、黒炎が走る脚と、金棒で漆黒の剣のラッシュを凌ぎ始める。

 

 目の前の1、2本を妨害しつつも背後の剣は防ぎきれず、かといって後ろに注意を背ければ、前方の刃に対応が遅れる。

 

 「くっそ・・・!」

 

 右手を地面に押し付けると、黒い炎を柱を周囲に展開させ、全ての漆黒の剣を破壊していく。

 

 攻防一体のその炎は、魔法とはまた違う別次元の炎であると理解しいたアマトリは先程の城崩しという砲丸から出てきていたあの異常な火力の炎を思い出す。

 

 「あれは貴様の炎か!」

 「なんの話だ!」

 

 黒い柱の隙間をすり抜け、ギンジは金棒に紫電を流し込んで魔王に再度肉薄する。

 

 「我が魔力に沈め!」

 

 漆黒の剣を横に振り抜きギンジの身体を捉えた。

 

 その黒い一閃となった剣裁きは、素人のギンジから見ても相当な実力者だと言うのが解る。だがそれでもギンジはその攻撃を前かがみの姿勢で避ける。

 

 「お前が例え魔王だろうと、ヘルブラッククロスだろうと、サクラの敵だろうと」

 

 空いた隙だらけの身体に、身体を反らさんばかりに思い切り紫電の蹴りをぶちかます。

 

 「お前が世界の悪なら・・・俺達ヘヴンホワイティネスの敵だ!」

 

 空中に打ち上げられたアマトリの目に映るギンジは、黒い炎、紫の雷、そして金棒を携えた、魔法も魔力も持たない怪物に見えている。

 

 「こんな綺麗な世界を破壊するだとか、神になるだとか・・・好きにやってろ!」

 

 イメージの中では飛翔し、アマトリをぶっ叩く想像をかきたてる。

 

 どれぐらいの力で叩けば、アマトリを倒せるか、あとどれぐらい黒炎を使えばいいか、そのイメージがギンジの馬鹿げた威力を生み出す。

 

 「でもこんな綺麗な世界を、自分勝手に壊すのだけは納得が行かねぇ・・・俺はお前を倒すぜ、魔王!」

 「くっ・・・潰れろ!」

 

 漆黒の剣を捨て、アマトリは両手に黒い魔力を展開させていく。両腕を交差させ、下にいるギンジに向けて魔王アマトリの強烈な魔法が発動されていく。

 

 「我が最大最強の闇魔法!喰らうが良い!」

 

 交差させた腕を開き、黒く輝く魔力の波がギンジ押し寄せる。

 

 確かに今まで以上に強さと、当たったら一溜りもないと思えるドス黒い魔力の塊がギンジを包みこもうと押し迫る。

 

 「悪はこの世に栄えないぜ・・・いい加減、負けを認めな!!」

 

 地上から空中へ。一筋の雷光のように飛翔し、黒い魔力の攻撃を一瞬で切り抜け、ギンジは魔王アマトリに肉薄する。

 

 その両手に握られた金棒は黒炎も紫電も纏わせており、怪人として全てが進化したギンジの強力な一撃がアマトリの頭部に深く命中する。

 

 「サクラの為にも、この魔法界の為にも、そして俺達がちゃんと帰ってミヤコを助けられる様にする為にも・・・」

 

 メキメキと金棒がアマトリにめりこんでいく。骨を砕きかねない強い一撃は炎により威力を増して、雷により速度を上げていく。

 

 「こんな所でうだうだやってる暇は無ぇんだよっ!!」

 

 トップスピードで金棒を振り下ろし、アマトリが地面に叩きつけられる。

 

 「ぐ、ぎぎ・・・我は・・・魔王だぞ・・・」

 「あっそ。悪いけど、俺、最強の怪人なんで!」

 

 地面に叩きつけられたアマトリに向かって、金棒を突き出しながらギンジも急降下していく。

 

 「神になるとかほざいてる王様に、守りたいモノをたくさん持ってる怪人に勝てる訳ねぇだろうが!!」

 

 ギンジなりに掲げている正義を重ねた金棒が、全体重を乗せてアマトリの腹部に突きこまれた。

 

 「落ちろッ!!」

 「ぐっ・・・ああああ!」

 

 石畳みに、思い切り勢いと怪人の能力を全て乗せた一撃により、床が崩落する。

 

 それと同じ様にアマトリが地下に叩き落され、ギンジは飛翔する事で事なきを得る。

 

 「・・・これで一件落着だろ。さて、そろそろ脱出しなきゃ、カエデに理不尽に怒られそうだぜ」

 

 良く耳をすませば未だに崩落は続いているようで、すぐ近くでは倒壊の音が鳴り、反響しているのがよく解る。

 

 「さっさと抜けるか・・・多分カエデもなんとかうまい事やってるだろ・・・」

 

 金棒片手に飛翔したギンジは、天井を破壊して魔王城からの脱出を開始する。

 

 魔王はギンジの手によって倒された。これで魔法界にも平和が蘇る事だろう・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・。

 

 ───ココハドコダ。

 

 意識はあるのに、何も見えない。

 

 ───ナニガアッタ・・・。

 

 聴力も失っているのか何も聞こえない。

 

 「・・・げほっ、ま、まだコアは生きているか・・・」

 

 何かが身体を這い回る様な感覚があり、自分の感覚の中でそれがあるのははっきりと理解出来た。

 

 「・・・ハァハァ・・・ハァ・・・力を・・・」

 

 何者かはこの身体を触り、そして何かの力を求めているらしい。

 

 ───力・・・ソウダ、力ダ。我ガ組織、我ラガ総統ノ為ニ、力ヲ。

 

 鼓動をうつ様な真っ白な壁が、わずかな魔の力を頼りに、反応のある人物を吸収していく。

 

 「・・・くくく、まだ、まだ勝機はあるぞ・・・」

 

 命は虫の息も同然なのに、その吸収した生命体の魔力は相当なモノだった。

 

 この体内に吸収したその虫の息の生命体を喰らえば、ほぼ抜け殻となった身体の修復さえ出来そうだと思わせてくれる。

 

 今自分の身体にめぐる魔力と、この邪悪な力を秘めた魔力を混ぜ合わせたらどうなるのだろうか。

 

 全身にその神経を張り巡らせながら、何も見えない聞こえないその人物・・・巨大化した骨の怪人は、自分の身体に入った存在に骨を隆起させて突き刺した。

 

 「がふっ・・・?」

 

 ───オオォ、力ガ・・・流レ込ンデクル。

 

 魔法というのは素晴らしい。やはりこの力を持ち帰れば、ヘルブラッククロスを強化出来るはずだ。

 

 「がっ・・・なぜだ・・・我が野望は・・・わが、やぼ・・・うは」

 

 吸収されたのは魔王アマトリ。勇者一行と戦い、その身体を傷つけられ、英霊とも戦い、死ぬ寸前まで追いやられた。

 

 そして今度は自分が利用しようとした、骨の怪人に不意をつかれ、身体から全てを奪わんとされている。

 

 「おおお・・・うおおおおおおお!!!!!!」

 

 更に尖った骨が触手の様に蠢き、アマトリの身体を貫いていく。

 

 グチャリ、ドシュ、ザシュン、バキリ・・・。

 

 肉を貫き、引き裂き、血をすすり、魔力を飲み込まれていく。

 

 「・・・はっ」

 

 魔王アマトリが意識を失うその瞬間、視界が開けた。

 

 明るくなったかの様なその空間には、手足が埋め込まれた壁、肉の様な床には首から上を出して吸収されている魔王軍の兵士。

 

 ペスカトレと呼ばれる親衛隊の二人も、その身体をバラバラに引き裂かれ吸収されていた。

 

 「・・・ッ」

 

 身震いがする。視界もモヤがかかり、段々沈んでいく。

 

 恐怖。魔王アマトリが久しく感じていない、恐怖だけがその空間にはあった。

 

 魔力を吸収し、肉体を吸収し、次は命でも吸収されるのだろうか。

 

 意識を失ったアマトリにそれ以上先の事を考える事は出来ず、ただただ絶望するしかなかった。

 

 そして魔王という存在はこの世界に消え失せ、変わりに残った魔王の魂と魔力は、骨の怪人に吸収される事となった。

 

 今・・・今この瞬間、現魔王アマトリは死に、新たな魔王の誕生の瞬間を迎えている事を、魔法界の誰も知らなかったし、知る由もない。

 

 ───さて、これぐライでいイカ。魔法ヲ手に入レた。後は、ヘヴンほわイティネスを・・・倒スのみ!

 

 手始めにこの世界を地獄に染め上げる。そしてこの魔法界を総統やヘルブラッククロスに捧げる。その為に、この力、惜しみはしない。

 

 新たなる魔王─骨の怪人、爆誕・・・。

 

 

続く   

 

 

 




お疲れ様です。

ギンジも活躍したよ!
魔王軍との戦いもそろそろ集結ではありますが、骨の怪人が魔王になってさあどうする・・・ってなっています。

さてここでヘヴンホワイティネスの宿敵であるヘルブラッククロスが動き出しますが、次回どうなる事やら。早くミヤコ出したいよおお

キャラネタ書きます

勇者赤鬼
オリハル金砕棒をえらく気に入っている。
ミドリコの姐さんに自分のオリハル金砕棒(意味深)をにぎにぎ・・・してくれるか?

甘白ミドリコ
相変わらずどこに兵器を隠しているのか分からない。
ミヤコが造りあげた城崩しは未完成品であり、今回何かの用途があれば良いと持ってきていた。っという事はいつも持ち歩いていた・・・?
完成品では、地形崩しがあるがまだ登場していない。
城崩しはその名の通り、魔王城をほぼ全壊させた。サクラの強化も入っているのだから完成品の威力は未知数である。火薬にはギンジの炎が入っている。赤鬼のオリハル金砕棒は触りません。

宮寺レン
ビーム剣術の幅は無限大。ケイタのためならいくらでも力を振るえる。

角倉ケイタ
第ニの魔法に派生技を作った。シクスシルド。
吸収出来る範囲は減るモノの、その範囲を拡大出来る六枚の盾を召喚出来る。

小町サクラ
魔王アマトリを打倒できたのか少し心配になっている。

魔王アマトリ
魔王の座を破壊され、ギンジにも敗け、骨の怪人の力で逆転を狙ったが、最後は吸収されてしまった。絶望を贈りたかったのに、自分が逆に絶望させられたとはなんとも皮肉よの。

神宮カエデ
自分一人でなんとか脱出してた。

・・・

次回、新たなる魔王の誕生、そして広がる魔法界の地獄の暗雲、オレキエッテ帝国の未来はどっちだ・・・。

敵はヘルブラッククロス、ならば勝てるのは・・・!

次回もお楽しみに!
次回もなるべく早く投稿出来る様に頑張ります!
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