今回、間があいてしまいましたが、実は書き途中だったプロットを間違えて削除してしまいまして、書き直しに時間がかかっておりました。
お待たせしてすいません。なるべく早く更新したかったのに!
今回のお話でいよいよ骨の怪人再始動!
それではどうぞ!
それはあまりにも巨大だった。
見上げた者の全てを覆い尽くす、巨大な影。
陽の光を遮り、雲が太陽を隠したのかと見間違える程、巨大。
しかし現実は違う・・・太陽を隠しているのではない。
太陽を背にして、大きな手足を這う様にして帝国の城壁にしがみついている。
石と魔力で構築された城壁は高くそびえ立つのに、それよりも遥かに大きい。そのでかさと人間の頭部に角を生やした様な白骨は、不気味さと得も言われぬ威圧を感じる。
(・・・なん、だ、アレは・・・)
ただただ驚愕するしかない。
巨大な骨が乗せていた魔王城が倒壊したと思えば、次は進撃を再開した骨の怪物。
城下町で最後の敵兵を倒したクリムパスもジェノべもアラビアも、そして帝国城に避難した民達も、その多大なる魔力の反応、そして巨大な怪物が城壁からこちらを見下ろしている骨の怪物。
(ブッヒ・・・なんだってあんなんが・・・)
その巨大な掌で押し込まれ、あちこち崩れかかった城壁の上で、トン・コッツはこちらを見下ろす様な骨の空洞の目を見上げる。
そして城壁からの侵入を試みた魔王軍の兵士も、シシリー率いるオレキエッテ帝国の戦士達も、ここに来て進撃を再開したこの怪物をその視界に入れて、ようやく理解する。
邪悪な魔力、生物を根絶やしに出来そうな殺意、そして。
「・・・なんと言うことだ」
圧倒的な力の反応。
アマトリが魔王として反応した時も感じた、魔王としての魔力反応。
「・・・」
骨の怪物見上げるシシリーは、城壁を押しただけでその動きを一度ストップさせた骨の怪物へ、大きな恐怖心を抱く。
それと同じ様に魔王軍の兵士も、直感で新しい魔王の誕生を感じ取れたのか、困惑をも抱いている。
「シシリー帝王サマ〜」
直視してしまい身動き出来ないで居たシシリー達に、上空から元気な声が聞こえてくる。
「魔法少女サクラ!ただいま戻りました!ヘヴンホワイティネスもみーんな無事です!」
やはり魔王城の中でも激戦が繰り返されたのか、サクラの頬に黒いすす汚れみたいなモノがついていた。
彼女が先に帰還した事で、シシリーも感嘆の思いが溢れ出てくる。
見上げれば骨の怪物の胸骨が見えるのだが、その隙間をぬってミドリコ達が急降下で降りてくる。
桃色の魔法陣が荒れた平原に展開され、そこにレン、ケイタ、ミドリコが先にゆったりと降ろされ、ヘヴンホワイティネスも無事な様子だ。
「姉御ぉぉぉぉぉ!!!死ぬ死ぬ!」
「あんた怪人でしょ!その前に勇者でしょ!クッションになりなさいよ!」
「いやいやいくら俺っちが怪人で強靭でミドリコの姐さんの未来の夫でもふぎゃっ」
平原に急降下してきたのはサクラだけでは無いようだ。
「いやーなんとか生きてた・・・」
「あたしの衝撃の力が活躍したわね」
カエデと赤鬼もあの高い所から落ちる事で脱出していた。
「カエデ!無事だったか」
ミドリコとレンがカエデに駆け寄り、無事に再開出来た事に女性陣は安堵する。
「よう、王様。なんとか戻ったぜ」
「・・・無事に魔王は倒せたようだが」
「ああ。多分倒した・・・けどよぉ」
赤鬼とシシリーは同時に真上を見上げる。
骨の怪物は動きを止めているが、またいつ動き出してこの城壁を破壊してくるか分からない。
「そういや兄貴は?カエデの姉御」
倒壊した魔王城の庭から飛び降りようとしていたカエデを見つけた赤鬼が、クッションになれというめちゃくちゃな命令を聞き入れて今に至るのだが、そういえばギンジがここに居ない。
「カエデ?」
「ぎ、ギンジは落ちちゃって・・・助けに行きたかったけど、あいつならもう脱出してるだろうって思ってたんだけど・・・」
ギンジがまだ戻っていない事に気がついたカエデは、少し泣きそうな顔をしている。
「兄貴・・・」
「ギンジならきっと無事だよ!何気ない顔で戻ってくるって」
赤鬼とケイタがカエデをフォローする。元々魔王城が倒壊する原因を作ったのはミドリコだが、その場にいながら後先考えて居なかったのは、赤鬼達も同じだ。
「でもまぁ兄貴なら大丈夫でしょう。空飛べやすし」
「そうそう、俺空飛べるしな。あんまり高度高く出来ないけど」
「ギンジも早く戻れば、カエデも安心できる」
「え?誰が戻れば?誰が安心するって」
赤鬼とレンの間にいつの間にか帰還していた主人公、佐久間ギンジがさも当たり前のようにここに戻って来ていた。
「皆どうしたんだよ、なんの話をして・・・」
「あんたの話じゃー!」
見事なドロップキックからの回転着地を決めたカエデにより、ギンジは城壁へと蹴り飛ばされてしまった。
「戻ってくるなら、空から来なさいよ!」
「り・・・りふじんだ・・・」
城壁に頭から突き刺さったギンジを一度放っておく。助けに行けなかった事もあり、急に無事に戻ってきた事もカエデには嬉しい事なのであるのは間違い無い事なのだが。
「ええい勇者よ!ひとまず、中で話そう。アレをどうにかせねば、対策を講じたい」
帝王がボロボロになったマントを翻しながら赤鬼に告げると、赤鬼は頷いた後に、再び上を見上げる。
見上げた視界の先に映るのは、巨大な魔王城を乗せた大地をその背中に埋め込んだ骨の怪人だったモノ。
次に首を下ろしてミドリコを見つめる。
「早く戻ろう。行こう、赤鬼」
ミドリコが険しい表情で赤鬼を細則する。
(・・・この
自分が惚れた女に手招きされるのはなかなか良い気分だ。
赤鬼が牙をカチリとはめ込む様な音を鳴らすと、帝国兵達とシシリーと共に地上防衛戦の凱旋を行いながら城下町へと帰還していった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
城壁に入り石畳の道を少し歩いた先には、無数の魔王軍の鎧や、旗が落ちており、ここでの戦闘も非常に大変なモノであったのだろうとケイタは推測する。
綺麗な町並みは見渡せる限り破壊の跡が広がっている。それだけ守るにしても人的資源が少なく、クリムパスもジェノべもアラビアも疲労困憊となった状況でもある。
故に、城下町は捨て、城には一切近づけさせない。ギンジのその作戦により、本当に被害は命にまでは及んでいないらしい。
「さて・・・作戦会議を行う・・・」
簡易的に用意された椅子と木のテーブルには、城の会議にも使われた城壁と城・・・つまりオレキエッテ帝国の模型が用意されている。
次に、北側の城壁には新しく骨の怪人が両手を押し付けている模型が用意されており、未だ動く気配は感じられない。
では死んでいるのかと言うと、それも違う。
あの巨大な骨の怪人はまだ生きている。
「考えたくないが・・・アレが魔王になっている様な、嫌な気配を私は感じている」
クリムパスが腕を抑えつつ、苦悶の表情で告げると、ジェノべも同じく頷いていた。
「ウッシッシ・・・イケメンの魔王アマトリに似た様なモーヤバそうな魔力の他に、なんかいろいろ混ざってる様な反応もある。だよねケイタきゅん」
「次ケイタに、話かけたり、触ろうとしたら、容赦しない」
「ま、まぁまぁ」
ギュウ・コッツの最後の言葉にレンが高い殺意で返す。
しかしながら魔力を持っているこの世界の住人は、全てが口を揃えて多数の魔力が混ざっている等、魔王アマトリの力を感じる等、様々ではあるモノの、答えは全員同じ事を言い合っている。
「あの巨大な怪物からの反応と魔力・・・クリムパス、彼らに水晶を」
シシリーがクリムパスに命じると、メガネの様な形をした水晶を持ち出して、それらを勇者赤鬼達に手渡す。
「勇者殿、その水晶越しで、あの巨大な怪物をご覧に入れてください」
言われるがままに、ギンジ達がその水晶を越しに骨の怪人を見つめると、身体の表面からは虹色の様なうねるオーラが空を覆う程広がっており、所々黒いオーラの中に小さく赤いオーラも出てきている。
「なんだあのキラキラしたやつ・・・」
「それが魔力です。英霊殿」
魔力。つまりあの大きなオーラは単純な実力とでも言うのだろうか。
「ほーん?」
魔力そのモノに興味は無いが、試しに赤鬼を覗いてみる。赤鬼の強靭な身体はそのままに、一切そういうオーラが出てきていない。そこまで実力が無いと言う事になるのか。
「魔法界基準ではそうなるね。でもまぁ魔法が使えない種族も居たりするし、特別なアレでもないんだけどね」
サクラの補助でだいたいの所は理解出来たギンジだが、ついでにサクラも水晶で見てみる。
桃色の魔力がゆらゆらと蠢いており、その光は優しくサクラを包んでいる。
その次はミドリコ。名が体を表しているのか、緑色の魔力、うっすら白い魔力が交互に出たり消えたりとしている。
ケイタの魔力は真っ白なモノだが、ほとんど使い切ったようで、あんまりまともに見えない。元々ケイタの魔力なんて少ないのだが。
「そろそろ続けても良いかね」
シシリーの言葉に、全員が帝王に視線を動かす。
「問題はあの魔力の量だ・・・あんなのは・・・魔王アマトリでさえも出す事の出来なかった領域だ。どうしたら良いか、皆の意見を聞いておきたい」
「え、ちょっと待って帝王サマ!」
オレキエッテ帝国はまだ終わりを迎えたくないのか、戦いを継続するつもりで居た。
しかしサクラはまだ戦う彼らを見て、そろそろ戦いをやめて欲しいとさえ思っている。元々自分が討ち漏らした敵にまで迷惑をかけるつもりはないからだ。
「まだ何か言おうとしてるみたいだけど、きっともう何を言っても無駄だと思うぜ。俺達の敵がここまで大きくなったんだとしたら、もう倒すまで終わらねぇだろ」
ギンジがサクラを呼び止める様に言う。その声音と態度は少し苛つく様な喋り方だが、ギンジと共に赤鬼も頷いている。
問題なのはこれからあの骨の怪人が動き出したらどうするか・・・それだけだ。
「要は新しい魔王が誕生しました、だけどこのままじゃ帝国は負けそうだから、戦いはやめて私に任せろ〜ってのを言いたいんだろうけど、一人で勝つ算段があるのか?」
「それは・・・」
ギンジ達がピンチの時に、自分は友達の敵を討ち漏らして、さらにはこの魔法界の危機に手助けまで要請したのだ。自分勝手だとは思っている。
だからサクラは自分の責任として、骨の怪人をちゃんと撃破したいのだが・・・。
「今ここにいるのはサクラだけじゃないわよ。あたし達もいるんだから!」
「それに、あいつを倒せば、私達もレベルアップできる」
カエデとレンもサクラの前に近寄りながら声をかける。友の故郷の危機なのだから、彼女立ちヘヴンホワイティネスがサクラのピンチに駆けつけるのも当たり前だろう。
「最強の魔法少女でも、そういった事には弱いな!」
シシリーまでもそう言い放つ。
「ここには俺達、ヘヴンホワイティネスがいる。勇者赤鬼もな!」
「あれが新しい魔王だってんなら、俺っちにもぶっ飛ばす権利があらぁな!どら、さっさと作戦会議でも始めましょうや」
正義のヒーローとしての友であり、仲間。全員がサクラを囲み、不安を隠す様な笑みを見せる。
もうこの魔王の誕生において、サクラ一人の戦いだけでは無くなったのだ。
ギンジも、カエデも、レンも、ケイタも、ミドリコも、赤鬼も。
帝国に所属するクリムパスも、ジェノべも、アラビアも、コッツ兄妹も、シシリー帝王も。
あとなぜか城壁内部に避難してきた魔王軍の兵士達も。
「・・・なんでこいつらも?」
「へい。自分ら、勇者さんに命を拾われたので!」
「あ、そう・・・いや、まぁいいけど」
ギンジが当たり前の様に入ってきた魔王軍の兵士のリーダー格の人物に睨んでみるが、どこか赤鬼に似た様な後輩気質が場の緊張感を抜いていく。
「では改めて」
シシリーが魔王となった骨の怪人の模型を指でつつく。
「これがあの新しい魔王である骨のモンスターだが・・・呼称は魔王とする。こいつをどうやって破壊するか、だが」
威厳に満ち溢れた顔も今日ばかりは驚愕と動揺を隠せないでいる。
「まず手当たり次第に攻撃し、脚を崩すのはどうでしょうか」
クリムパスの提案にはシシリーは首を横に振る。
どこまで頑丈なのかはわからないし、魔法がまともに効くとは思えないという理由から否定に入る。
「では頭部に魔法を撃ちつづけるのはいかがでしょうか」
続くジェノべの提案にも却下だ。理由は単純、戦争直後においてそれだけ魔法攻撃が出来る魔力を持っている者が果たしてあと何人いるか分からない。
「じゃあよぉ俺っちと兄貴で、おもっくそ叩いて回るのはどうだ?」
「お、いいなそれ。かなり有効じゃないか?」
「あの巨体をあんた達二人で本当に出来ると思う?」
カエデの訝しむ声にギンジと赤鬼はすぐに目を逸らす。
「敵が動かない今、全員の力をひとつにして戦うべきだ。疲弊しきっている所に申し訳ないが、今こそ全員で総攻撃すべきだと私は思う」
ミドリコの作戦は非常に現実的であり、シシリーもこれには難色は示さない。
しかしながら今生存している兵士達は、何人戦えるのか。
オレキエッテ帝国の兵士は、ほとんどが疲弊しきっている。一人ひとりが強くとも、魔王軍の数の多さに押されていたからこそ、今はもうあまり力が出ない。
新たな魔王が城壁一枚隔てて居なければ、休息も取れたかも知れないが。
対する赤鬼に命を拾われたと言う魔王軍。彼らは魔王城から直接ここまで来てくれた様だが・・・ざっと数えても20名程しか居ない。
平原から襲撃していた魔王軍は、ほとんどがシシリー率いる第一防衛線がこれらを撃破している。
そして帝国の中でまともに戦える戦闘員は・・・。
帝国序列1の魔法剣士・クリムパス。
帝国序列2の魔女・ジェノべ。
帝国兵を束ねる女傑・アラビア。
地水火風の司祭・トン、ギュウ、トリ、ジン・コッツ兄妹。
そして魔法少女サクラ。
付け加えるは正義のヒーローヘヴンホワイティネス。
いかに勇者とその英霊が強くとも、流石にこの巨体を相手にするのでは部分が悪いとさえ思えてしまう。
そこに帝国陣営、魔法少女が加勢しても・・・足しになるのかどうか。
「むぅ・・・」
シシリーが模型をまだ睨みつけている。その険しい表情は誰も彼もが不安になる程である。
「どうするか・・・」
誰を戦線に立たせるか。そこが次の悩みどころでもある。
本当なら自分が一番矢面に立ち、民である兵士達を先導して戦わないと行けない。
新しい魔王の最速の誕生に、正直すくみ上がっている。今この瞬間、戦う為の準備や作戦を考えるまではいいが、今度はあのデカイ骨の魔王と戦うとなった時、命惜しさに逃げ出してしまうかも知れない。
ビビリな本性を持つシシリーは、この先に控える戦いが不安でしょうがなかった。
「帝王サマよ、ちっとご相談なんだけど・・・」
「相談?なにかね」
そんな悩ましく熟考するシシリーに声をかけたのは、あの不遜な態度で強気なギンジという英霊。あの勇者赤鬼が召喚した英霊なのに、位は赤鬼よりも上らしい。
そんな彼の言う相談とはなんだろうか。
「実はよ、多分話したと思うがあの骨のやつ・・・怪人って言ってさ、俺達ヘヴンホワイティネスの敵なんだ」
「確か、怪人とか言う種族なのだったな?」
「そうそう。怪人。あれは・・・わかりやすく言うと、俺達が本来暮らしてた世界の魔王軍みたいなポジションにいる組織が開発した・・・
英霊達の住む世界にも魔王軍に匹敵する怪物軍団がいるのだろうか。
「ヘヴンホワイティネスというのは、敵が多そうだな。それに、苦労しそうだ」
「いっぱいするぜ苦労はよ。そこで、相談の本題なんだけど」
帝王相手に臆さないギンジは、づけづけと強気な口調でシシリーに言葉を発していく。
「良かろう。この帝王に聞かせてみよ」
人にも見えるが人ではないギンジに、シシリーも帝王の風格を見せつける様にして言葉を絞り出す。
「あの怪人は俺達の敵だ。倒すんなら、俺達ヘヴンホワイティネスが全力で相手させてもらう。そこで俺達を雇わないか?」
「あいにくだが英霊を雇える程帝国は裕福ではなくてな・・・」
「支払うのは金じゃなくていいよ」
おおよそ人間とは思えない瞳を輝かせ、ギンジは勇ましい笑顔を見せつける。
「いつか俺達がとてつもなくピンチになった時、もしくは俺達の敵と最後の戦いの時が来た時・・・そんな時に、俺達ヘヴンホワイティネスの味方になってくれないか?今回俺達がした様に、俺達に加勢してほしい」
正義の意思を宿したその言葉は理解が及び行った。しかしながら帝王を相手にそんな事をわざわざ言うとは、この英霊ギンジはかなり大モノかもしれない。
「その変わり・・・今日の俺達はあの骨の怪人をぶっ飛ばしてきてやるからよ、この帝国の未来、俺達にも背負わせてくれ」
見ず知らずの帝国の為に、ここまでの男気を見せるギンジが、なぜ赤鬼よりも位が高いのか。
きっと不器用ながらも優しさがあるからなのだろう。同じ怪人というカテゴリーにくくられていても、人間らしい優しさを持ち合わせているからなのかも知れない。
「ふっ・・・良いだろう。では君達の加勢、救援・・・いつか我がオレキエッテ帝国が手助けをしに参ろうではないか!」
帝王シシリーがギンジと同じく笑みを見せる。ほんのわずかな会話ぐらいしかしていないが、彼ら二人の中には間違いなく絆が芽生えた瞬間でもあるのだろう。
「よおおーーーっし!作戦とか決まってないけど骨の怪人ぶっ飛ばしに行くぞーー!」
「うるさっ」
「同感だよレン・・・」
ギンジの気合の雄叫びにレンとケイタは耳を塞ぐ。
「まーたあんたは勝手に色々決めちゃって・・・」
「ま、ギンジくんらしいけどね・・・」
カエデとサクラもギンジの言動によってある程度救われた事もあるが、今回も彼が上手くまとめてくれた。
ヘヴンホワイティネスのリーダーでも無いのに、ここまで勝手に話しを進めるのはある意味才能なのかも知れない。
細かい事は全部カエデやレンが決めて、ミドリコは援護し肝心な所はギンジが殴りに行く。そして今度は適材適所でケイタが動き、赤鬼はギンジと同じ様に殴る。
今この場には居ないが、ミヤコも加わる事でヘヴンホワイティネスは最強の力、最強の頭脳、最強の正義を持つ事になる。
これから戦う強敵は魔王・骨の怪人。
迎え撃つのはヘヴンホワイティネス。
戦闘の準備に入る為、ありったけの回復薬を持ち出し、オレキエッテ帝国とヘヴンホワイティネスは次なる撃滅作戦に向かう為、それぞれ作戦とは呼べない粗雑な戦いに出向くのであった。
なぜかギンジが言うなら勝てそうな気持ちが、自然と湧き出るからだ。
(・・・期待してるわよ、バカギンジ)
カエデは先に走り出したギンジの後ろ姿を見つめ、信愛を乗せた瞳と、その背中をかっこいいと思いつつ、怪人人間佐久間ギンジの後を追いかけるのであった。
魔法界の歴史に残る戦争はもう少しだけ続く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼の明るさが終わりにつれて、魔法界の大空の陽は次第にその色を朱に染め上げて行く。
まるでこらからもう一度大きな戦いが訪れる前触れなおか、どことなく美しい空は怪しさをその光を指し示しているかの景色だった。
防衛戦の緊張感が抜けないまま、オレキエッテ帝国の戦士達はそれぞれが休息を取りながらも、気の抜けない感覚で居た。
それは調子に乗っているギンジも同じである。
「兄貴」
帝国の歪んだ城壁の上で、夕日を背にするギンジに赤鬼が声をかける。
気合いを入れたとしても、やはり一人になればどこかその表情は神妙である。
「俺達は勝てるかな」
弱気になっているわけではないが、ギンジは少しだけそんな事を赤鬼にたずねてみる。
「勝ちやしょうぜ・・・俺っちも敗けられない理由をまた手に入れたんだ。ヘルブラッククロスの怪人が魔王になろうと、俺っち達正義のヒーローが敗けるわけにはいかんでしょう」
「・・・」
何事もなく無事に終わればそれで良いが、ギンジは今までの経験からまともに勝てるとは思えていない。
今だ動きだす気配を感じない骨の怪人の頭部を、眺めながら赤鬼とギンジは城壁の上で肩を叩き合う。
「この世界にまでコイツが来ていた事は驚きやしたが・・・まぁ、俺っちなら敗ける事はないでしょう。同じ怪人四天王として、そして元ヘルブラッククロスとして・・・コイツとはここで決着をつけたいんでね」
赤鬼が手の骨をバキバキと鳴らすと、ギンジもそれを真似してバキバキと骨を鳴らしている。
「必ず勝って・・・ミヤコを助けに行くぞ」
「へい。俺っちも出来る限り兄貴の役に立てる様に頑張りますぜ」
「へへへ、頼りにしてるぜ」
綺麗で美しく、しかし怪しい雰囲気の夕日を二人で少しだけ眺めると、二人は城壁から降りて仲間の待つ場所に向かう事にする。
「とりあえず飯、食いましょう」
「思えば朝飯から先は何も食べてなかったから、腹減ったな」
勇者と英霊。二人の男は再開の喜びと、これから先の未来に向かう為の他愛もない話しをしつつ、ふざけながらも緊張感を持ちつつ、食事を取る事にしたのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
闇。
暗くて、深くて、恐ろしくて、怖くて、でも好奇心が勝って、道無き道の先の見えない真っ暗な空間に、その手を伸ばしたくなる。
力が満ち溢れ、肉の無い腕なのに筋肉でもあるかの様に、肩ごと腕を大きく突き出して堅い何かを掌で叩いた時、ピクリとも自分の身体が動かせなくなった。
自分のコアに無理やり力を流し込まれたからか、それとも魔力を吸収した反動か・・・。
意識もある。コアの中の鼓動も感じる。
そして怪人としての力だけではなく、もう一つの力。
(まホうか・・・)
この闇の中にいるのは、骨の怪人。ヘルブラッククロスに所属し、総統に仕える直属の部下・怪人四天王の座に付く者。
魔法。普通の人間や怪人では到底操る事の出来ない、超常的な力の総称。
怪人が使う能力とは似て異なる力は、骨の怪人がその存在を羨み、なんとしても持ち帰りたい能力である。
そして強力なその力を、より大きな勢力として持っている魔王軍とコンタクトにも成功した。
そんな魔王軍はどうなったのか、今の骨の怪人には分からない。気配も感じない上に最早どうなったのかさえ分からない。
(・・・でも、モウいイカ)
魔王軍とて自分に有利に動けば、最後はヘルブラッククロスとして全てを奪い尽くすつもりで居た。
そんな事よりもこの身体に溢れる、不思議で邪悪な力。これが全身隅々まで行き渡る充実感が非常に気持ちが良い。
もう何時間こうしているかも解らないが、段々意識も前よりはっきりし始め、指に力を込めてみたい。
自重から解る重さの違いや、身体の規模感もいつもの骨だけの身体に比べれば更に大きくなっている事に骨の怪人は気がついた。
・・・。
(・・・魔法のちから・・・ひとツ、使ってみるか)
魔法の使い方なんて解らないが、頭の中に言葉が文字となって骨の怪人の中に流れ込んでくる。
(・・・おお、この魔法は)
そんな流れ続ける魔法の呪文・・・詠唱と呼ばれる魔法の条件は、その魔法の中身までも説明文みたく閲覧する事も出来た。
ならば最初にこの魔法を使ってみよう。ここがどこだか解らないが、最早そんな事はどうでも良い。
(む・・・視界が・・・)
その空洞の瞳には、黒い眼球と赤い瞳孔・・・怪人の瞳が浮かび上がる。
身体も動かせる様になったのか、まずは空いたままの口を閉じてみる。
顎の骨がゴギゴギと鳴ると、何かのざわめきを感じる。
開いた眼が最初に捉えたのは遠くの山に挟まれる様にした、美しくも怪しく光る夕日。
次に指を動かす。何かに尖った指が食い込む事で、ボロボロと破片と思わしきモノが崩れ落ちていく。
もう一度口を動かして見る。開ける事で、魔法陣が展開していく。黒い魔法の光が浮かぶと、そこから最初に選んだ魔法の文字が浮かぶ。
(マジカルリガトーニ・マジックツァー・ファルファッレ)
脳内で浮かんだ言葉と、魔法。
漆黒の光線を吐き出した後に、着弾した場所を破壊する強大な魔法。
魔法陣が二重、三重し、五芒星までが描かれた骨の怪人の口内の魔法陣。
そして中心地に現れる最後の魔法陣の模様。
黒い瞳を模したヘルブラッククロスのメインマーク。それがう赤美上がる事で、いよいよ何かの存在達が騒ぎ始める。
(いまさら気づいたのでは、モう遅イ)
これは最初の魔法という形で魔法少女にやられた身体を復活してもらい、前以上に強くなった怪人の祝砲。それを手始めに発動した。
名も無き魔法だが、名付けるならば・・・。
(ヘル・タリアッテレ・バースト)
こんな美しい世界を、一撃で地獄に変えてやろう。ヘルブラッククロスが望む、暗くて恐ろしい力による支配を成功させる為に、この世界に攻撃を開始する。
・・・・・・・・・・・・・・・・
黒い光線が放たれた。
皆この瞬間に気を抜いていた訳では無いが、その光線の発動までは誰も気づけなかった。
夕日に向かって飛び去った光線は、帝国の旗が取り付けられた城の上部を一瞬で削り落とすと、空気を切り裂くが如く、空に轟音が響く。
夕日を挟む巨大な山をも削り崩して、文字通りの大破壊を残して行く。
「・・・!?」
カエデはそんな轟音に驚き、飛んで転ぶ程には驚いていた。
「──!!─!」
空を走る光線の音が大きすぎて、誰が何を話しているのか、それとも叫んでいるのか分からない。
視界が揺れる程の轟音が止むと、鼓膜に走る痛みと共に静寂だけが残る。
「帝王様!!」
シシリーが呆然と立ちすくむ姿を発見したジェノべは、急いで帝王の下へと駆けつけたが、シシリーと同じ景色を眼にした時、ジェノべもその惨劇の姿に我が眼を疑う。
守るべき筈の民が居る帝国城の上半分が、綺麗に削り取られており、砂の様な城の一部が空中を舞う。
「魔王・・・!」
少し離れた場所ではクリムパスが北の城壁を見上げる。
「うわー・・・めんどくさそ」
「ンゲーゲッゲッ・・・」
クリムパスより城壁の近い所で、トリ・コッツとジン・コッツが顔を引つらせながらも城の有様と、空の彼方に消えた黒い光線を見つめていた。
「おだやかじゃねぇなぁ・・・」
ギンジもカエデと共に立ち上がり、北の方角から押し潰す様な魔王の殺気に、心がざわつく。
「アラビア・・・」
「ここに」
シシリーが虚空を見つめる表情で、アラビアを呼び出した。彼女はいつもの軍人気質な態度ではなく、いつでも帝王の為にその命を捧げる覚悟を持った戦士の出で立ちをしている。
「今すぐ城に戻り・・・民の無事を確認せよ。そしてもし一人でも生き残りが居るのであれば・・・遠くに逃げよ・・・」
あの城には王女も居た筈。彼の帰りを待つポモドロがもしかしたら死んでしまったのか・・・そう決めつけるのは早計かも知れないが、自分の城がこうなってしまった以上、もしかしたら被害は大きいのかも分からない。
「・・・ケイタ、大丈夫?」
「あ、ありがとう・・・一体何が・・・」
レンも少しだけ自分の身体に落ちてきた小石を落としつつ、ケイタを守る様にしてビーム剣を展開している。
「ミドリコさん、赤鬼さんはどこに?」
「む・・・そう言えば姿が見えないな・・・」
サクラの魔法でミドリコも無事だった様子だが、今この通路の簡易テーブルで食事を取っていたメンバーの中で、赤鬼だけその姿が見えない。
「おいおい、帝王サマが呼んでるってよ」
赤鬼を探そうと見渡す面々の中で、ギンジだけは平然としていた。
「ギンジ、あたし達・・・勝てる、よね?」
腰を抜かしてしまったのか、カエデはギンジの身体にしがみついている。そんな彼女の顔は非常に弱気な形になってしまっている。
「弱気になんなよカエデ・・・大丈夫だって、絶対俺達が勝つ・・・」
「あんたも・・・怖いんじゃない?」
煽る訳では無いが、ギンジの顔もいつもみたいなお調子者の笑みが無い。明らかに驚愕による強張りがある。
「・・・ビビってねーぜ」
嘘だ。正直勝てる気がしない様な魔法の存在に、今回ばかりはビビってしまった。
「ギンジくんでも怖がる事あるんだね・・・」
「・・・言うなよ」
「怖いと思える方が、人間らしくていいと思うぞギンジ」
サクラとミドリコも苦笑している。
シシリーが呼んでいると伝令を飛ばしに来た兵士についていく事にしたギンジ達は、この先に控える戦いにおいて恐怖心しか残っていなかった。
「ううううオッラァァァァ!!!」
北の城壁へと走り出し、雄叫びを上げるのは赤鬼。
その豪腕で掴むはオリハル金砕棒。
雄々しい一角が空気を裂いて、赤い烈風となりながら石の壁を昇る。
今にも崩落しそうに斜めに傾いた城壁の上に、飛び出した。
勇者赤鬼はヘルブラッククロス怪人四天王、そして新魔王・骨の怪人の大きな瞳に対峙する。
「地獄みてぇな事・・・やってくれたなぁ。ミドリコの姐さんや、兄貴達、王サマや、クリムパス・・・死んだらどーすんだおい」
「赤鬼か・・・久しぶりだな。死ね」
赤鬼を握り潰せそうな巨大な手を城壁に押し付けると、その身体を乗り上げてきた。
そして黒い魔法陣を描く口を開き、地獄そのものとなる強大な魔力を秘めた光線が解き放たれた。
オレキエッテ帝国最終防衛戦
vs魔法界新魔王・骨の怪人!!
続く
お疲れ様です。
いやーほんとおまたせしてすいませんでした。あの時削除を押さなければ・・・!
あまりにも眠すぎて、終電のがしてたから会社でタブレット起動してやってたんですけどね・・・間違えてしまった・・・ハハハハ
わろてる場合ちゃうぞ!!!!
キャラネタ書きます
骨の怪人
新しい魔王になった怪人。
コンキリエ魔王軍の事は、用が済んだら消すつもりでいた。
魔法の詠唱にはパスタが使われている。
ファルファッレとリガトーニがそれです。
超巨大な四足移動型みたいな怪人になっているが、城の上半分を消しとばしたり、山を破壊したりとその魔法の威力は魔王アマトリ以上。
好みの女性はふくよかな人。
シシリー
いつも死尻0って打ち間違える。
城の破壊には、得も言われぬ感情がわいた。
アラビア
シシリーの命令には絶対したがう女傑。
オーク(魔法界産)
めちゃくちゃ紳士な人達しか居ない。戦闘力は多分赤鬼と同じぐらい。
オーク怪人とトン・コッツの関係で登場せず。
強面で乱暴なのかと思ったらエルフの人たちが風邪を引かない様にしたり、パスタ料理が得意な人達が多い。
エルフと結婚する事もまぁまぁ多い種族だが、紳士なので強引な事はしない。
先代勇者
名前は不明。あまり強くないらしく、帝国をおいて逃げた。
・・・
次回、ヘヴンホワイティネスvs魔王骨の怪人!
いよいよ赤い勇者と魔法界編最後の戦い、開始!
ギンジ達は、赤鬼は、オレキエッテ帝国は平和を取り戻せるのか!
次回もお楽しみに!!