正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです!

なんなのかよくわからん話になってしまいましたが、自分なりに頑張ってみました!

それにしてもいやーブラック企業だなー。完全週休2日制のヘルブラッククロスに入社したいです。入社したらまずは戦闘員になります。そしてギンジにぶっ飛ばされます。終わります。

今回のお話も少し間が空いてしまい、どうもすみません。
お待たせして本当に、本当にすいません!決してやる気が無いわけじゃないんです!仕事が忙しすぎるんでぃす!

今回のお話では赤い勇者と魔法界編最終決戦終幕!

それではどうぞ!


66・大精英霊佐久間ギンジ

 

 オレキエッテ帝国の北の城壁がついに破壊されてしまった。

 

 そこから身を乗り出すかの様にして、巨大な白骨の魔王がその頭、腕・・・骨が、瓦礫を押しのけて突撃を果たして来た。

 

 「・・・!」

 

 遠くでもその迫力がわかる。シシリーを始め、帝国に生きる者達、生命体と一括にカテゴライズされている存在であれば、城壁を破壊した巨大な骨の怪物が、人類の・・・この世界の敵・魔王であると理解した。

 

 倒さねばならない。ここに居る全ての命が、そう判断した。

 

 しかし・・・絶望に染まりかけた帝国には、まだ希望が失われていなかった。

 

 大きな闇とより強い絶望が迫る城下町に、小さくとも闇を打ち払わんとする光と、誰にも消す事の出来ない、そして誰もが待ち望んだ大いなる希望が、魔王の前に立っている。

 

 赤い勇者。赤鬼と名乗る帝国が召喚した切り札。

 

 そしてもう一人はそんな勇者赤鬼が兄貴と尊敬する、英霊佐久間ギンジ。

 

 二人が魔王の大きな頭骨の前に立つと、並々ならぬ大きな殺意を醸し出している。赤鬼も勇者として持つ事が許されない殺意を出し、ギンジも英霊として出す事が許されない様な強い殺意。

 

 最早誰も口には出さないが、あそこまで行くと最早勇者だとか善なる者だとか言うラインを超えている。

 

 「勇者・・・」

 

 崩れた城下町でシシリーは二人の背中を、その眼に焼き付ける。

 

 例え人間で無くとも、例え元々悪に居た身でも、今は帝国の為にその命を賭けて戦ってくれている勇者だと信じて、シシリーは震え上がる兵士たちに剣を引き抜いてみせる。

 

 「皆の者!」

 

 帝王の大声が、後ろに控える兵士達を立ち上がらせる。恐怖を払拭させる掛け声に、元魔王軍の兵士たちまでもがシシリーの言葉に反応した。

 

 「今こそ勇者の為に、そしてこの帝国、ひいては世界の未来の為に、命を賭ける時が来た!!総員!死力を尽くして・・・」

 

 こんな事を言える立場であってもシシリーは、本当は今でも逃げ出したい。あんな大きな怪物に立ち向かって勝てる訳ないと、心のどこかでは無理だと諦めている。

 

 それでも・・・この国を守る王なのだ。死ぬとしても、もう二度と逃げない。退いてはいけない最後の戦い。

 

 高らかに上げた剣は、夜に沈もうとする陽光をわずかに跳ね返す。

 

 「死力を尽くして、魔王と戦うぞ!!」

 

 帝王シシリーの宣言に、帝国の兵士が沸き立つ。

 

 「ついて来るのだ!魔王にこれ以上、我が国を壊させやしない!!」

 

 上げた剣を魔王が佇む方向へと向けていく。

 

 「行くぞぉ!!」

 

 オレキエッテ帝国の最後の戦い・・・果たして勝者はどちらに。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「カエデ・・・カエデ・・・大丈夫か」

 

 頬を軽く叩きながら、気絶したカエデを起こそうとミドリコが必死に声をかける。

 

 骨の怪人によってエネルギードレインを受けたカエデとレンは、今日はもうまともに戦う気力はおろか、ヘヴンリングのエネルギーすら残されていない。せいぜい変身が限度だろう。

 

 「み、どりっこ・・・」

 

 カエデの隣で藁に寝かされたレンは、意識を取り戻すとミドリコへと手を伸ばす。

 

 ミドリコが仲間を連れて避難した場所は、北の城壁からかなり離れた西側の城下町の牧場の様な木製の部屋。

 

 簡素な造りであちこち燃えカスだったり、ヒビだったりと戦闘の跡が残る部屋だが、ここならばなんとか出来るだろうと、ミドリコは3人を担いでここまでやってきた。

 

 「レン!大丈夫か?」

 「すこし・・・ふらふらする」

 

 身体を起こそうとするも、レンにも疲労は大きい模様。彼女はすぐに頭を藁に埋める。

 

 レンが寝返りを打つようにして、隣を見る。

 

 親友であるカエデの向こう側には、能力が解除されたケイタの姿が見て取れた。

 

 「ケイタなら無事だ・・・あんな攻撃を受けたのに、見た感じではどこも出血はなさそうだぞ」

 

 ミドリコの言う通りでケイタに外傷は無いように見えた。

 

 「そっか・・・ああ、よかっ・・・」

 「・・・今はゆっくり休むといい。今まで戦いすぎたんだ、私達は」

 

 度重なる疲労、戦闘、そして今回の精神面に大きく残りそうな大ダメージ。最愛の恋人が無事だと解った時、安心感が勝ったレンは、そのまま眠りについてしまう。

 

 本当は戦いに行かないといけないのに、それでももう身体が言うことを利かない。

 

 カエデも呼吸は乱れて居ないから異常は無いと判断し、ミドリコは彼女達を起こす事を諦める。

 

 今はもう、まともに戦えないだろう。

 

 カエデもレンもミドリコもケイタも。

 

 「・・・流石に疲れたな・・・ギンジ達はだいじょうぶか・・・」

 

 ミドリコにもここに来てダメージが大きくなっている事に気づく。

 

 「・・・ねむるわけには・・・」

 「寝てても大丈夫だよ・・・」

 

 顔色の悪いミドリコ。そんな彼女の居る部屋に、ある一人の少女の声がした。

 

 桃色の髪を揺らしながら、折れた杖を片手に持ちながらサクラがここまで来ていたのだ。

 

 「サクラ・・・」

 「ちょーーっと油断したけど・・・まだ私は戦えるから・・・」

 

 サクラは笑顔を作ってみせる。顔がススで汚れて、魔法少女の装束も所々やぶけている。

 

 痛みで引きつった笑顔だが、もうこれ以上ミドリコ達に無理をさせたくは無い。サクラも覚悟をここで決めたのだ。

 

 「ここまで戦ってくれて、ありがとう」

 「お礼なんてとんでもない。むしろ最後まで戦に行けなくて申し訳ない。もっと・・・彼女達を守る力が私にもあればな・・・」

 

 自分の無力を思い知った気分だ。ミドリコはケイタの気持ちを今少しだけ理解出来た気分でもある。

 

 「後の事は・・・私とギンジくんと赤鬼さんで片付けてくるね」

 

 どうにもならないと思うかも知れない。それは無謀だと、ミドリコは声を出して言いそうになってしまった。

 

 だけど・・・同じ正義の志を持つサクラの決意を固めた表情に、ミドリコは何も言わない。

 

 「・・・君たちは若い。まだ、死なないでくれよ」

 「もっちろん!私の故郷をこんなにするんだから、今よりきついお仕置きしてやるんだから!私も最後までヘヴンホワイティネスの味方として戦うからね!」

 

 それだけ伝えてサクラとミドリコはお互いに笑みを交わすと、部屋から飛び出していくサクラ。

 

 (・・・今回ばかりは、本気の魔法・・・使お)

 

 友達の敵を逃し、果ては怪我までさせた。

 

 サクラの魔法少女としての最大の責任を持って、あの骨の怪人を倒そう。それしか彼女達に報いる方法が思い浮かばない。

 

 「・・・もう許さないんだから!」

 

 それと同じ様に故郷をここまで破壊され、サクラの怒りも最大にまで来ていた。魔法少女サクラは、自身の持てる魔力を全て解き放つ最大魔法を発動する準備に入る為、サクラは帝国の夜空へと飛んで行くのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 城下町に進撃した骨の怪人の攻撃は非常に苛烈極めるモノだった。その腕を振りあげれば、大きな影が身体を覆い尽くし、地上に立つ兵士達をほぼ一撃必殺に等しい威力で、撃滅してきている。

 

 まともに戦えるギンジ達でさえ避けるのに精一杯の攻撃。

 

 「あれだけの範囲とリーチがあれば、もう何でもありだな」

 

 加えて魔王や他の魔王軍から吸収した魔法の攻撃。 

 

 黒い魔力に形成された攻撃がほとんど援護攻撃さえも無力化し、接近できても攻撃がほぼ通らない。例え攻撃魔法が命中しても、微々たるその攻撃力ではまともに通用していない。

 

 「死ね!死ね!死ネェ!!!」

 

 人類の巨悪となる骨の怪人の魔法が町に炸裂する。炎とも違う、風とも違う、異質な魔法が次々と命を奪う。

 

 「諦めるなァ!!」

 

 兵士達を鼓舞するのはクリムパスとジェノべ。彼女達も戦線に復帰し、ギンジ達の援護を再開している。

 

 「思っくそかっ飛ばすからな!」

 

 赤鬼は同じく戦線に戻ってきたコッツ兄妹と共に、協力しながら攻撃を開始している。

 

 オリハル金砕棒を構え、トンを思い切り殴り飛ばす。人間砲弾とも呼ぶべきその吹き飛ばしに続いて、ギュウも第ニ射として飛ばされる。

 

 『マジカル・アースアンドアクアズ!』

 

 トン・ギュウの二人の兄弟が同時に魔法を唱えると、大地と烈水の融合魔法そのものとなりながら、二人が骨の怪人の頭部に突撃を開始する。

 

 『コッツ・ブラザーフッド!』

 

 兄弟故のコンビネーション攻撃は、怪人の額に直撃するのだが、まったく気にもしていない。

 

 「トン!!使え!」

 

 クリムパスが浮遊しながら剣の魔法を召喚し、トンに投げ渡す。

 

 「次は・・・こちらの番だ!」

 

 アラビアが腰の剣を引き抜きながらジェノべの魔法を纏うと、雷光の魔法剣が完成する。

 

 そこへトリ、ジン、ギンジも同時に駆け出し、骨の怪人の右腕を破壊しにかかる。

 

 右腕は依然大きくまだ誰もまともに傷をつけられていない。

 

 「めんどくさいけど、あんたがいるんじゃ・・・平穏なんてなさそうなんで」

 「ンゲーゲッゲッ!さっきは良くもやってくれたな!」

 

 兄妹二人の風と炎が融合し、炎の渦が勢いを増して行く。そうして出来上がった炎の渦にはギンジの黒炎が混ざりあい、さらに大きな災禍の大渦が完成し、骨の怪人の右腕の振り下ろしに合わせて突き出す。

 

 「吹き飛ばせーーー!」

 

 ギンジの合図によってジンが暴風を操り、災禍の大渦とアラビアの雷光剣が同時に発射される。

 

 「愚か者めが!」

 

 再び骨の怪人の口に黒い魔法陣が展開されるが、顎をかち上げるかの様に、赤鬼とクリムパスが下から飛びあげる。

 

 「その汚ぇ口を塞ぎやがれコラ!」

 「覚悟しろ魔王!」

 

 口を無理やり塞がれ、動きが一瞬止まってしまう。そのタイミングで、右腕の災禍の大渦が命中する。

 

 「例え魔法で強化されてても、中身は怪人の細胞だ!怪人の攻撃は怪人で無効に出来る!・・・時もある!」

 

 ギンジの考えは今までの怪人との戦いにおける、なんとなく経験談でのお話に過ぎないのだが、それでもあの魔王も元は怪人。

 

 きっと攻撃の手段があるとした仮設は、同じ怪人の攻撃でぶつかり合えば、必ず反撃の一手が生み出されると言う。

 

 「つまり、いつもの殴り合いだな!流石兄貴だぜ!」

 「俺たちなら絶対に勝てるぞ!赤鬼!手ぇ貸せ」

 「ガッテン!」

 

 災禍の大渦に飲まれる右腕が再び上がってくる。

 

 兵士達も迫力に負けじと、魔法で応戦を開始する。そんな攻撃の列を離れて、城下町の中でも比較的綺麗な時計台まで走り出していくギンジと赤鬼。

 

 「勇者殿、英霊殿も何を・・・?」

 

 クリムパスも赤鬼の所まで追いかけている。

 

 向かう先は時計台。

 

 「あの時計台をぶっ壊して、骨の怪人にぶつける!」

 「なっ・・・!?あれはこの帝国でも由緒正しい歴史ある・・・」

 「帝国の未来と時計台、どっちが大切なんだよ」

 「そ、それは言うまでも無いが・・・トンと・・・ごにょにょ」

 「兄貴!どうやらクレンペラーはトン・コッツとの思い出の場所らしいから壊しくてほしくないらしいですぜ」

 

 クリムパスがごにょごにょ言い始めるのを聞き逃さなかった赤鬼は、デリカシーも何も無い発言を出し始める。

 

 「わー!わー!解った!何もないから、壊せばいいだろう!あと、クリムパスです」

 「いやぁ、悪いな・・・クリスタル」

 「クリムパスです」

 

 ギンジと赤鬼とクリムパス。3人とも時計台の前に立ち、ギンジは一度ムーン・フォースを発動する。

 

 「驚いた・・・英霊殿は、色々な能力があるのだな」

 「俺っちの兄貴だからな。このお方こそ最強の怪人であり、ヘヴンホワイティネス最強の男なもんで」

 

 二人が話ながらも、ギンジは長ドスの月光の力を開放し、時計台をジグザクに斬り崩す。流れる様に見えて雑な斬り方は、赤鬼に似た力まかせ感を感じる。

 

 「赤鬼!クランベリーと一緒に、時計台を叩き出せ!」

 「クリムパスだ!」

 「任せろ兄貴!」

 

 斬り崩された時計台をクリムパスが剣の魔法で、刃だらけにコーティングし、赤鬼はホームランスタイルで思い切りかっ飛ばす。

 

 刃の取り付いた瓦礫は空気により、その軌道を完璧に操作されており骨の怪人に次々と命中していく。

 

 これ以上の進軍をさせない為にも、使えるモノはなんでも使って妨害しないといけない。

 

 「そういやサクラはどこ行った?」

 「先程から姿が見えやせんね。ひょっとしたら姐さんと一緒にいるかも知れやせん。見てきやしょうか?」

 

 最後の瓦礫を発射して、赤鬼がギンジに向き直りながら声をかける。

 

 「いや、ミドリコ達と一緒にいるなら大丈夫だろ・・・多分」

 「そうですかい。にしては心配そうな顔してやすね、兄貴」

 

 カエデとレンとケイタが戦闘不能になる、ミドリコも戦線から離脱している。カエデとレンに至ってはエネルギードレインをモロに貰ってしまった為に、今日は戦線復帰は難しいだろう。

 

 仲間をやられてギンジは黙っていない。赤鬼も同じく、自分の大切な人に手を出されてはもう容赦するつもりはない。

 

 死なないでいてくれるのであれば、離れてて貰った方が精神的にはありがたいのだが、隣にカエデが居ない事でギンジは内心とても心配していた。

 

 「けどまぁ・・・今はあいつを倒すのが先決か」

 

 時計台を根本から斬り崩した瓦礫の上で、ギンジは再度フェーズ3い戻る。

 

 骨の怪人は刃だらけの瓦礫が頭部に突き刺さっており、しかしそれを全く気にしていない。

 

 「英霊殿、次は何をするのだ?」

 

 剣の魔法を持ちながら、クリムパスがギンジに尋ねる。ギンジは次にもう一つある兵士達の駐屯所に金棒を向ける。

 

 「アレを使って攻撃しよう。俺と赤鬼で壊して、とにかく遠距離で攻撃する」

 「私はどうすればいい?」

 「そうだなー・・・あ、でっっっかい剣とか作れないか?」

 「魔法であれば・・・可能だが・・・」

 

 クリムパスの剣の魔法により、ギンジが希望する巨大な剣は作成自体は可能。しかし一つの懸念があり、それをクリムパスは相談してみる事にする。

 

 時折ギンジ達を狙った黒い光線が飛んでくるが、距離感を考えれば普通に避けられる為、さして気にならない。

 

 「作る事は可能だ・・・だが作っている間に、狙われるのは間違いないだろう・・・ましてやソレをぶつけるのも・・・」

 「あ、ぶつけるのは気にしなくていいぜ。使うのは俺だからよ」

 

 どういう事だろうか。この英霊は発言もめちゃくちゃな事も多い上に、あの勇者赤鬼が兄貴と呼び慕われている。

 

 そして見た目通りの重さも想像できる巨大な剣魔法を、今度は自分が使うとまで言い始めた。

 

 「見た目はなんでもイイぜ。巨人とかが使えるよーな、とにかくバカでっっっけぇ奴!そんで、お前が狙われると言う問題だが、それも解決の手段を思いついていてな・・・」

 「・・・?どんな作戦なのだ?」

 「いやぁ俺っちに聞かれてもな・・・」

 

 ギンジの言う手段はどんな内容なのだろうか。かなり気になるのだが、一度駐屯所に向かう事にしたギンジ達は、時計台のあった場所から離れるのであった。

 

 「赤鬼、あの建物は根本からぶっ壊してから、クリムトに強化してもらって投げ飛ばせよ」

 「クリムパスです」

 「了解したぜ・・・でもその言い方だと、兄貴は別の事をしそうですね?」

 

 街道を駆け抜けながら、赤鬼がギンジに向けて言葉を出した。その隣で走るギンジは別の道に向かって走っている。

 

 「そいつが狙われ無い様に、ちゃんと作戦を考えたんだ。これでなんとかダメージが入ればいいけどな。俺が戻るまで魔法の剣はつくるなよ!」

 「へい!」「了解した」

 

 ギンジが二人に作戦を任せると、そのまま骨の怪人の居る場所に走り抜けていく。

 

 兵士の亡骸、瓦礫、シシリーの頭を飛び越えて、骨の怪人の目の前にギンジは舞い戻った。

 

 「英霊か?何をしていたのだ?」

 

 戦況を見守るシシリーの後ろからギンジが来た事で、少し動揺するが再び骨の怪人に注目する。

 

 「トン!トンは居るか!?」

 「どうした兄弟!」

 

 大地の魔法でレンガをまとめた土塊を投げようとしていたトンを見つけ、ギンジは彼の元に走って近づく。

 

 「お前に守って欲しい奴がいる!来てくれないか?」

 「・・・?まぁ、良いが。何か作戦なのか?」

 「ダメージが入るか分からんけど、クリムパスに巨大な剣を作ってもらおうかと思ってな」

 「ブッヒッヒッヒ・・・守ってほしいのは、クリムパスの事か」

 

 土塊の攻撃で骨の怪人を妨害したトンは、かなり納得行った表情をしている。鼻についた土の汚れを拭い去ると、トンはギンジの肩に手を乗せる。

 

 「あいつをまたブヒらせたいからな。いいぞ、守ってやる」

 「ぶ、ブヒらせ?」

 「兄弟は気にしなくていい。クリムパスはどこにいるんだ?」

 「こっちだ!」

 

 ギンジとトンが戦線から離れようとすると、骨の触手が伸びて道を塞ぎ妨害してくる。

 

 先端の尖った鋭く鋭利な触手は、ジェノべの魔法とアラビアの剣により、またたく間に粉々にされて行き、ギンジとトンの走る道が開かれる。

 

 「めんどくさっ・・・」

 

 ジンは指を鳴らすと、視認出来る緑色の風が飛び出し、ギンジとトンを飛ばす。数秒でも早くクリムパスと赤鬼の下に届ける為だ。

 

 「さて・・・」

 「こちらも腹を決めよう」

 

 ジェノべとアラビアが骨の怪人の前に立ち、剣と魔法をお互いに構え、この大きな頭部を持つ魔王へと強く出る。

 

 「オオオオォォォォ!邪魔をすルなぁァ!!」

 「邪魔なのは、お前の方だ魔王!!」

 

 けたたましい咆哮を上げる魔王骨の怪人へ、ジェノべは魔法陣を展開させて攻撃を開始する。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 帝国の遥か上空。魔法界に星が輝き始める夜空に飛び出したサクラは、自分の出せる最大の魔法を発動する為に、無数の魔法陣を展開及び固定をしていた。

 

 「・・・次で、最後・・・」

 

 サクラの魔力をそれぞれの属性ごとに展開させ、発動してから一つに集約してから発動する大魔法・エレメンタルピンクフレア。

 

 サクラが母親である先代魔法少女アズサから受け継いだ、最強の攻撃魔法。発動したのはマージ・ジゴックとの最後の戦いの時に発動した限り。

 

 桃色の魔法陣の展開を待つ間にサクラは、自分の魔力残量を確認する。

 

 物凄い勢いで減り続けている魔力を見て、サクラはこれで倒せなかったら・・・なんて悪い事を想像してしまう。

 

 母が産まれ、自分も産まれた故郷を守る為に、家族には内緒にしてここに来ているサクラだが・・・もし失敗して自分が死ぬ様な事があれば、両親はどんな思いになってしまうのだろうか。

 

 (だめ・・・集中しないと)

 

 今は失敗する事を想像してナーバスになっている場合ではない。

 

 大魔法エレメンタルピンクフレアを完成させ、骨の怪人に決定打を与える。これに限る。

 

 桃色の魔法陣の展開が完了した。最後の魔法陣が展開完了により、攻撃魔法が全て夜空の果てに解き放たれると、それが虹の様にカラフルになりながら、サクラの所に戻ってくる。

 

 「・・・この魔法で、今度こそ!」

 

 骨の怪人を倒す。自分が討ち漏らしてしまった責任と、友達の戦いへの協力を今後もしていく為に、サクラの中の最大最強の攻撃魔法が発動された。

 

 「よーし!どかんと行くよおおーーー!」

 

 やがて虹の輝きは桃の一色だけに固まって行き、地上に戻るサクラの行動に合わせて追尾していく。

 

 「小町家最大の攻撃魔法!たんとめしあがれ!」

 

 決死の魔法が更に速度を増して、まばゆい輝きを空に残しながら、地上で暴れる骨の怪人へと向かって飛んでいく。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「こ、これで良いのか?英霊殿」

 

 クリムパスの魔法で作り上げた巨大な剣は、どうみてもギンジが扱おうとして扱えるようには見えない程巨大。今の骨の怪人なら扱えそうな大きさだが、ギンジはこれで良いと言う。

 

 「こんなデケェの・・・兄貴と【同じぐらい】ですかね?」

 

 赤鬼は冗談も交えながらギンジに笑みを見せる。

 

 「いやいや俺のはもっと【デカイ】」

 「ブッヒッヒッヒ!見せてみろよ兄弟」

 「ええ・・・ここでズボン下ろすのはなぁ」

 「要らんことを話合っている場合か!」

 

 クリムパスの怒号で男性陣はくだらない話を終える。

 

 「こんな巨大な剣・・・本当に扱えるのか?攻城用の魔法だぞ?」

 「問題ないぜ。これさ、城壁まで上げる事は出来るか?」

 

 ギンジの指差す城壁は、北。既に倒壊しているのだが、まだ生きている足場部分に持っていきたいと言う。

 

 剣を作る間は、ジェノべ達が防衛と引きつけを買って出た様子で、トンは流れ弾の防御を行っていた。

 

 ギンジと赤鬼も一度前線に戻っては、クリムパスが武器を完成させるまでの間に、トンとクリムパスを二人きりにしていた。

 

 「城壁まであげたあと・・・その時にいよいよ使うんだな?」

 

 クリムパスが鈍色の鎧を締め直し、魔王の暴れる音に過敏に反応する。

 

 「大丈夫だ・・・!城壁に運ぶのは、トンとクリムパスに任せるぜ。俺と赤鬼は、お前らが見つからないように、大暴れを再度開始する」

 

 言うとギンジと赤鬼は再び前線に戻る。

 

 二人が走るのを確認すると、クリムパスとトンは二人して浮遊の魔法で、巨大な剣を上げて行く。

 

 「こ、こうして二人で運び出すのは・・・なんだ、共同作業みたいで気分がいいな・・・」

 

 帝国の未来がかかった戦闘の最中に、クリムパスは何を口走っていたのだろうか。あわてて口を紡ぐが、トンは剣を隔てた向かい側で目をそらしている。

 

 「ブッヒッヒッヒ・・・クリムパスが良ければこの戦いの後も、共同作業をしても良いぞ。おれは・・・構わんしな」

 「ジェノべを倒して、帝国から離れたいと考えていたのではないか」

 

 コッツ兄妹は帝国領では有名な野盗であり、ジェノべに見つかった彼らは容赦なく叩きのめされ、かれこれ10年以上はジェノべの手下・・・もとい地水火風の司祭として活動させられている。

 

 いつかはジェノべを倒してこの帝国から脱出しようとしていたらしいのだが・・・。

 

 トン・コッツはクリムパスとの出会いにより、様々な困難を乗り越えながら暮らしていると、自然とそんな気も起きなくなってきていた様だ。

 

 「・・・全て終わったら、ま、またブヒらせてくれるか?」

 「いいぞ。夜から朝まで・・・たっぷりと、な。ブッヒッヒッヒ」

 

 お互いの信頼と愛情が混ざりながらも、完璧に陽が消え失せた夜空に、その巨大な剣が浮かんで行く。倒壊した城壁に向かって。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 止まる事のない骨の怪人の暴虐は、次々と圧倒的な破壊力を示して来ている。

 

 破壊。それも悪意が秘められた確実な破壊。

 

 悪の組織の怪人が、自分の私利私欲の為の破壊を、心行くまで楽しんでいる。魔法界に住む人々にはそう見えている。

 

 「ハハハ!どうしたオレキエッテ帝国!ヘヴンホワイティネス!」 

  

 骨の怪人にも何度か攻撃しているモノの、決定打はいつまでも取れていない。

 

 唯一攻撃として有効だったのは、頭部に突き刺さった刃の瓦礫。

 

 あとは建物をぶつけようが、魔法で攻撃しようが、ギンジと赤鬼が攻撃してもその進行を遅らせるだけ。

 

 胸部の骨に見えかくれするコアにも、なかなか攻撃が届かない。

 

 そこでギンジの考えた作戦としては、クリムパスに作って貰った巨大な剣で一刀両断を画策している。

 

 しかしそんなギンジにも、余裕を見せる骨の怪人にも、予想していない事が急に現れた。

 

 それは大空に突如として光出した、桃色の閃光。

 

 夜空を明るく照らす、一筋の閃光が・・・。

 

 「こっちに落ちて来る!?」

 

 ギンジが空からの光を見て驚きからその声を上げる。すると骨の怪人もその首をもたげて空を見上げる。

 

 忌々しい覚えのある正義の志を宿した、あの魔法。あの色。あの力。

 

 「魔法少女ガァアアアッ!!!」

 

 自分が死にかける原因になったあの魔法少女だけは、必ず返り討ちにして四肢を潰して犯す。怪人としての欲求も混ぜ合わせた怒りを孕んだ声で、空からの桃色の光に対して黒い魔法陣が展開させられる。

 

 「魔法少女・・・ってこたぁ、ありゃサクラのお嬢かい」

 「サクラの奴・・・隠し玉でもあったのか!」

 

 正義の魔法による桃色の光の中に、サクラが居る事がなんとなく解ったギンジは急いで攻撃体制に戻る。

 

 目指すは頭部に突き刺さった刃の瓦礫。

 

 あれを起点に頭部を叩き壊す。それがギンジが今思いついた新たな作戦。

 

 「マジカルマジカル〜!!!」

 

 サクラも地上に迫りつつあり、自分の最大魔法を持ってヘルブラッククロス・骨の怪人を撃破に挑む。

 

 ここまでくれば骨の怪人の引きつけも完了したの同然。ギンジは赤鬼にここを任せて、クリムパスとトンの待つ倒壊した城壁へと登り始める。

 

 「今度こそ、その力を貰い、貴様を倒す!覚悟しろ、魔法少女!」

 

 骨の怪人が手元に攻撃をしかけて来る帝国の面々を無視し、上空に迫るサクラを黒い魔法により、正面から魔法と魔法がぶつかる。

 

 「エレメンタルピンクフレア!」

 「リガトーニ・ダークヘルブラッククロス!」

 

 黒い光線を更に強化した凶悪そのモノを体現する光線と、サクラがその身に走らせる桃色の大魔法が激突し、空間を振動させる衝撃が帝国の城下町に響き渡る。

 

 「うっ・・・あああ〜〜ッ!!!」

 

 サクラの決死の大魔法が、骨の怪人の大魔法に押されている。鍔迫り合いにも似た魔法の押し合いには、骨の怪人の魔力の方が上回っている模様。

 

 「オオオオオオッ!!!」

 

 しかしそこへサクラの手助けをする事にしたギンジが、クリムパスの作り上げた巨大魔法剣を持ち上げようと、城壁の上で全力で剣をあげようとしている。

 

 「いくらなんでも無茶だ!」

 「無茶でもなんでも・・・やるしかねぇんだよ!!」

 

 クリムパスの制止も聞かずに、ギンジはとにかく剣をもちあげる。hフェーズ3の黒い炎を全身で吹き出しながら、とにかく剣を持ち上げるつもりで居る。

 

 「その武器を上げるつもりなのか?」

 

 ギンジ、クリムパス、トンの3人が立つ城壁に、帝王であるシシリーがやってきた。彼の険しい表情は月の光に当てられ、より深みを増している。

 

 「・・・英霊ギンジよ・・・君にこの剣を操る力があれば・・・本当にあの魔王を倒せるのだな?」

 「操るって言っても、一発使えればそれでいいんだけどな!」

 「・・・そうか。ならば・・・」

 

 帝王シシリーはギンジに向けて、小さな魔法の杖を向ける。

 

 「この杖はこの見た目に反して、身体を壊すかもしれない程の強大な魔力を秘めている。魔力の塊をつけた、我が帝国の秘宝でな・・・」

 

 シシリーはこの魔法の杖が、魔王アマトリが狙っていた霊石の正体である事をギンジに伝える。

 

 「そんなモン、俺に使って大丈夫なのか?」

 「問題ない。どちらにせよ、本来ならば勇者の身体に、褒美として使うべきモノであったからな・・・」

 

 シシリーがサクラと骨の怪人の大魔法のぶつかり合いを眺める。

 

 「力を求めた神の力が宿る魔法の霊石、その杖。英霊よ、君が使えばきっと道を間違えない正しい使い方が出来るはずだ。どうか・・・再三の頼みで申し訳ないが・・・この帝国を、魔法界を救ってくれ!」

 

 もう勇者だとか英霊だとか人間だとかの問題ではなくなって来ている。

 

 帝王が深々と頭を下げると、ギンジはそうする事の重みと覚悟を受け取った気分になる。この美しい世界を守り、生き、そして愛しているシシリーがここまでするのだ。

 

 ギンジも同じ様にその重さに恥じない覚悟を持つ必要がある。

 

 「力を求めた神、ね。それじゃ、遠慮なく使わせてもらうぜ」

 

 シシリーから受け取った魔法の杖を握ると、ギンジの右腕に反応して、粒子状になっていく魔法の杖。

 

 そんな魔法の杖はギンジを認めたのか、ギンジの腕だけではなく身体、頭、脚・・・全身に魔法の力が宿る。

 

 隅々にまで行き渡る魔法の力は、ギンジの体内に新たな力を呼び起こさせる。

 

 炎は魔力で更に強くなり、雷と飛翔の力は更に強大になり、月の力も更にその防御力を飛躍的に上昇させている。

 

 もう一つある赤鬼から受け継いだ金棒は六角のトゲが、丸みを帯びてより粉砕の為の形状、力を取り戻している。まさしく赤鬼と同じでこれなら空気をも砕けそうだと思える程に。

 

 そしてギンジの能力としてもう一つあるイメージの能力は相変わらずだが、もう既に巨大魔法剣をどう操るかの想像が出来上がってきている。

 

 そのイメージ映像の中でのギンジは、巨大魔法剣をコアへとぶん投げている映像が浮かび上がっていた。馬鹿げた映像でも、ギンジのイメージに失敗はほぼ無い。

 

 「あとは・・・信じるしかないか・・・この力を、魔法を!」

 

 サクラの大魔法と骨の怪人の大魔法がぶつかる中、ギンジが城壁から見えるのは・・・骨の怪人の胸部。その大きな身体を反らせて真上を向き、両腕は支える為に城下町に突き刺している。

 

 胸部の骨に隠されたコアは隙間から丸見えになっており、今からだったら確実に狙えるだろう。

 

 「元々は頭にぶっ刺してやるつもりだったけど、これだったらコアを狙うか!」

 「頼んだぞ兄弟!」

 「英霊殿!お願いします!」

 「行け!英霊よ!今こそこの帝国最大の力を得た君こそが、この魔法界の滅びを回避する最強最大の大精英霊だ!」

  

 大精英霊。それは全ての英霊を従わせ、勇者に力を貸す存在。

 

 全ての伝記に残る、最大の力を持った英霊の事。

 

 シシリーから見て、霊石をその身に宿したギンジは、まさしく大精英霊として写ったのだろう。

 

 「任せろ!今の俺ならなんでもできそうだぜ!」

 

 クリムパスの作り上げた巨大魔法剣の柄を握る。

 

 両手で持ち上げると、その剣は紙でも持ち上げたかの様に軽く上がり、しかしながらその剣の重さはしっかり身体に伝わっている。

 

 (なんだ・・・?軽い・・・けど重い?)

 

 この力は一体なんなのだろうか。何かを軽くする?否、なんでも扱える様になる?

 

 「・・・」

 

 片手で持ち上げ、指先でバランスを取る様にしても、その剣はとてつもなく軽く、ほんの少しだけならば指先から強く上げてもフワリと浮いている感じだった。

 

 魔法の霊石の力の詳細は不明だが、こうやってモノを軽く出来るのであれば問題ないとする。

 

 あとはイメージ通りに動いて骨の怪人のコアに、この巨大魔法剣を叩き込むのみ!

 

 「覚悟しな・・・骨の怪人、いいや、魔王サマよぉ・・・!」

 

 城壁から剣を胴横に構え、片足を上げたギンジは骨の怪人めがけて大きな剣をぶん投げた。

 

 最早斬る用途よりも叩き潰す用途に近い巨大魔法剣。そんな煌めく魔力で形成された剣には、ギンジの黒炎、紫電を両面に走らせ、文字通り魔法剣となって骨の怪人へと突きこまれていく。

 

 「ぐっ!?貴様ァアァァアアア!!」

 

 骨の怪人がギンジからの巨大魔法剣に気づくと、支えに使っている左腕を防御に使う。

 

 しかし・・・。

 

 「さーせーるーかーーー!!」

 

 甲高い少女の声。

 

 「ビーム剣の形状は・・・金棒で良いのね?なら、あとはお願い」

 

 もう一人の少女の声。

 

 「頼まぁ!姉御達!!」

 

 地上では、疲労困憊になっているカエデとレンが赤鬼に希望を託す為に、ここまで復帰して来ていた。

 

 もう戦うには至らないが、それでもカエデは赤鬼に必殺技を放とうとしている。

 

 肝心のミドリコとケイタは・・・。

 

 「やっと・・・追いついた・・・死ぬかもしれないけど、僕も皆と戦うんだ・・・」

 「ギンジ・・・君に最後の武器を託す。使ってくれ」

 

 ボロボロになりながらも、ようやく復帰してもこの有様である。しかしながら、仲間にまかせてばかりは居られないと、ケイタもここまで踏ん張ったのだ。

 

 ミドリコから受け取った武器は・・・甘白ミドリコ自身が決戦兵器とうたう最強の兵器・ロケットランチャー。

 

 「お前ら・・・大丈夫じゃねぇだろうけど、いいのか?」

 「構わない・・・私達も、ヘヴンホワイティネスだ・・・でも、出来る援護はこれ限りだ!」

 「うん・・・あとは、お願いするよ、ギンジ」

 

 ケイタもミドリコもカエデもレンも、これで精一杯。今日ここで使える力の最後を使う。

 

 時刻は丁度──0時を迎える頃。

 

 それと同時にケイタの魔導書に淡い光が浮かび上がる。

 

 魔力がほとんど残っていないケイタは、死ぬ事を臆さずに、第三の魔法を唱える。一日一回、最大の強化魔法・・・。

 

 「必ず、か、勝てよ・・・第三の魔法・エンジェラ・カジャオング」

 

 指先から強化魔法のほとばしる光弾が弾かれ、それがギンジの身体に入り込むと、再び神とも魔王ともつかない禍々しさと正義の象徴たる様なマントに身を包んだギンジの進化が行われた。

 

 一方、左腕に迫る巨大魔法剣を叩き落とそうとした骨の怪人はと言うと・・・。

 

 「必殺!オーガ・インパクト!」

 

 カエデの最後の必殺技には信頼と敵意を込めて、本気で赤鬼を投げ飛ばす。

 

 赤鬼の右手にはオリハル金砕棒。

 

 勇者の左手にはビーム金砕棒。

 

 「赤鬼・・・!」

 

 ギョロリと大きな怪人の瞳が動く。骨の怪人は、ここに来て支えとなる左腕を失う事を予感した。かつての同僚、怪人四天王の赤鬼の手によって。

 

 「オオオオオッ!!」

 

 空気を裂く赤い勇者は、2つの金砕棒を空中で構える。正義の志を持った赤鬼の、空気をも砕き崩す最強の二振りが繰り出された。

 

 「骨も空気も砕けやがれぇぇっ!!」

 

 空気を自分の周囲で動かし、足元から圧縮して体格の良い赤鬼の身体を超速回転しながら、骨の怪人の左腕へと激突していく。

 

 赤鬼のパワーから繰り出される双金砕棒は、少し空気が触れるだけでも文字通り破壊の一撃とも成りうるパワーを秘めている。

 

 カエデの必殺、レンのビーム剣術、赤鬼の空気。

 

 それらが3つ混ざり合う赤き勇者の最大の攻撃。

 

 「名付けるならァ・・・」

 

 ──鬼必殺・ビーム空鬼乱舞とでも名付けようか・・・!

 

 大回転により何度も骨を削り、砕き、叩き、弾き、崩し、破壊する。

 

 「ッ!!?」

 「ヌッハハァーッ!砕けたぜ!」

 

 赤鬼の怪力により、ついに左腕を粉砕する事に成功した。

 

 そこをチャンスと見た巨大魔法剣が黒炎と紫電の勢いを増して、骨の怪人の胸部のコアへと再び突撃を開始した。

 

 「おし!もう一本折ってやるよゴルァ!」

 

 巨大魔法剣の上に赤鬼が着地し、その場所から見える支えとなっている右腕めがけて飛び出す。

 

 左腕が砕けた事でバランスを崩した骨の怪人の光線が弱まり、真上からくるサクラの大魔法の勢いが増す。

 

 胸部にはコアを潰さん勢いで剣が突き刺さっているのに、その光線は止まらない。

 

 それほど骨の怪人の執念も強いのだろうか。

 

 「グッオオオオオ!!!!」

 「ここで滅びなさい!魔王!ヘルブラッククロス!」

 

 サクラの大魔法は1段階勢いを増して、赤鬼は右腕を破壊しに向かう。

 

 そしてギンジは・・・。

 

 「兄弟、いいんだな!?」

 

 トンの大地の魔法による大きなタワーが完成させられており、クリムパスと共にギンジを支えている。

 

 赤鬼とサクラがうまいことやっている間に、ギンジがまた新たな提案を思いついたのだ。

 

 霊石の能力を解明出来そうな何かを理解し、ギンジは高い所から飛び降りて攻撃しようと言う。

 

 そんなギンジはトンに担ぎあげられ、右手には金棒剣、左手にはミドリコのロケットランチャーを装備している。

 

 「投げろぉーー!」

 「お気をつけて!」

 

 ギンジの号令によってトンがいよいよギンジを骨の怪人へと投げる。

 

 「行くぞ・・・骨の怪人!!」

 

 サクラの大魔法とぶつかり合う黒い光線は潰れたコアからも吹き出しはじめ、地上を襲い始める。

 

 「マジカルマジカル・マジックバイト・アンブレウス!」

 「マジック・マジクルス・アンチマジックズ!」

 

 ジェノべとアラビアが二人同時に魔法を詠唱すると、真っ白な魔力で構成された光輝く鎖と防御癖が展開されていく。

 

 骨の怪人の肩に巻き付く様に拘束して鎖と、コアからの光線を反射する反射ぼ大盾が骨の怪人の抑え込む。

 

 「エンチャント・ウインド!」

 「エンチャント・フレイム!」

 「エンチャント・アクアズ!」

 

 ジン、トリ、ギュウの3人もそれぞれの属性を赤鬼に付与すると、赤鬼が再び大回転を繰り返す。

 

 「豪壊鬼乱舞(ごうかいおにらんぶ)!」

 

 風は暴風となり、炎は爆炎となり、水は烈水となり、赤鬼の双金砕棒と混ざりあい、先程の攻撃よりもより強くなっていく。

 

 破壊の竜巻。怪人と魔法のコラボレーションによって生み出された、この世界でしか出せない究極の一撃が、骨の怪人の右腕を一撃で粉砕する。

 

 ついに支えを失った骨の怪人は今度こそバランスを崩して、黒い魔力の光線が止まってしまう。

 

 「これで・・・」

 「終わりだァ!!」

 

 骨の怪人の視界に現れたのは魔法少女と進化の怪人。

 

 「エレメンタルピンクフレア!」

 

 先にサクラの魔法が骨の怪人に突きこまれていく。頭部に深く命中したサクラの大魔法は、文字通り桃色の爆発をお越し、先に刺さっていた刃の瓦礫を介して大きなヒビ割れを作る。 

 

 額から鼻へ、鼻から口へ、口から顎骨を割れる程の大きなヒビ。

 

 しかしこれだけではトドメをさせていない。

 

 あと一撃。

 

 「あと一撃・・・任せて良い?」

 「任せろ!」

 

 サクラの隣に居るギンジがまずはロケットランチャーを、残っている弾数分発射する。

 

 その爆発はいつもミドリコが撃つよりも、疾く骨の怪人へと着弾しては連鎖的な大爆発を起こす。

 

 霊石に秘められた力は、ただ魔力が込められているだけではない。その魔力を秘める事に成功した者を、【落とす】能力だと言うのがギンジには伝わった。

 

 巨大な剣をもちあげる事が出来たのは、能力の一部でしか無い。

 

 本来の【落とす】能力。それは、床でも壁でも、大空でも確実に決めた方向に【落とす】魔法。

 

 「重力魔法・・・!」

 

 サクラが目を見開いて、ギンジの魔法に注目する。

 

 金棒剣を大上段に構え、ギンジは思い切り黒炎、紫電、月光の力を開放する。

 

 カエデが繋ぎ、レンがサポートし、ミドリコが渡し、ケイタが託し、赤鬼が共に戦った。

 

 コッツ兄妹が尽力し、クリムパスが作り、ジェノべが援護し、アラビアが走り、サクラが作ったチャンス。

 

 ギンジの金棒剣にもう一つ、重力の禍々しい力が纏い始める。

 

 「うおおおおおォォォォ!!」

 

 ギンジが雄叫びにも近い最後の攻撃を開始する。

 

 「行って、ギンジ!」

 

 カエデが両拳を握りながらギンジに応援を送る。

 

 「兄貴ぃ!」

 

 赤鬼も地上に降り立ち、ギンジを見上げる。

 

 『どうだ!!』

 

 城壁ではトンとクリムパスが二人同時に声をあげる。

 

 「・・・」

 

 もう声を出す気力も無いが、レンは力強い眼でギンジをみつめる。

 

 「征け!大精英霊!佐久間ギンジ!!」

 

 最後にシシリーの大声がギンジにもう一つ力を与える気分になる。

 

 「ヘヴンホワイティネス・・・!」

 「お前なんかに手こずってるわけには行かねぇんだよ!

 さっさとくたばれ!!」

 

 重力によって骨の怪人に【落ちてきた】ギンジは、魔法での防御が間に合わない程の速さで、大上段に構えた金棒剣によって骨の怪人のヒビに入り込み、堅い骨を斬り裂き、コアを斬り、地面に落ちていく。

 

 大精英霊佐久間ギンジの最後の一撃により、骨の怪人は頭部から胸部にかけてを斬られ、コアの活動が停止した瞬間に骨の部分は全て液状に溶けて崩れていく。

 

 「・・・オォ・・・総統閣下・・・」

 

 コアから絞り出す様な声を発し、骨の怪人は魔力と共に消え始める。

 

 「ヘルブラッククロス・・・ニ・・・栄光・・・アレ・・・ェ」

 

 最後に背中を向けたギンジに黒いコアからトゲが飛び出るモノの、赤鬼によって握られ、折られてしまう。

 

 最後の悪あがきは失敗に終わり、赤い勇者である赤鬼がコアを粉砕する。

 

 金砕棒によって砕け散ったコアは、キラキラと綺麗な輝きだけは残して、そこに住まう生命体は何もかも反応をなくして消え失せた。

 

 「・・・!」

 

 シシリーが魔王の反応が消えた事を確認すると、大きな喜びから大声を上げる。

 

 帝国と勇者の勝利だと、それを告げる声は魔法界の夜空に遠く響き渡った。

 

 「やったな・・・兄貴」

 「ああ・・・俺がな」

 

 二人して肩を叩きあい、液状に解けた骨を見て、二人して大爆笑する。

 

 「でもトドメは俺っちが刺した」

 「MVPは確かに赤鬼さんだね・・・」

 

 サクラもその輪に入るが、ギンジは色々と力の吸収やら疲労やらが一気に襲いかかり、その場に倒れ込む・・・かと思いきや。

 

 「お疲れ、ギンジ」

 「おう・・・無理させてごめんな、カエデ・・・」

 

 カエデの腕にもたれそうになりながらも、ギンジはゆっくりと瓦礫に倒れる。頭だけはカエデの脚に乗せてもらい、ギンジとカエデは夜空を見上げる。

 

 「べ、別に無理なんてしてないわよ。あたしも、あんたが心配だから、頑張ってここまで来たんだし」

 「それを無理してる・・・って言うんじゃねぇの?」

 「うるさいわね!」

 

 ギンジとカエデの間を邪魔する者はひとまずは居ない。

 

 「・・・もうすぐ、帰れるかね」

 「どうかしらね。でも、魔王を倒したんだから、あたし達は約束を守ったわよ。早く帰りたい?」

 「そりゃーもちろん。ミヤコが待ってるしな。ルカとレイナも俺達を待ってるはずだし・・・」

 

 そういえば今は度固化市の町はどうなっているのだろうか。

 

 「でもよ、この先何があっても、お前と一緒なら行けるって、全部倒せるって思ってるんだ。だからさ、これからも・・・」

 「何言ってんのよ、馬鹿ね。あたしだってあんたの事好きなんだから、信用してるのよ?敗けるわけにはいかないじゃ・・・ない・・・」

 

 今カエデは自分自身が何を口走ったのか解っていなかった。

 

 「ギンジ?今の聞いてた?」

 「・・・」

 

 膝下に倒れるギンジからの返事はない。

 

 「ギン・・・ジ・・・?」

 「スー、スー」

 

 カエデは内心大混乱しながらも、ギンジの顔を恐る恐る見てみる。覗いたその顔はサングラスによって瞳は隠れているモノの、口を半開きにして眠りについていた。

 

 何かを言いかけたのに、ギンジは今日の戦いの疲労によって、カエデの膝下で眠ってしまったのだ。

 

 「・・・ふふ、馬鹿ギンジ・・・」

 

 周りの兵士や、赤鬼達は、気づいていないフリをしているのか、カエデとギンジの所には近づいてこない。

 

 でも今はそれがありがたい。カエデはギンジの頭を優しく撫でると、平和を取り戻した魔法界で・・・ほんの少しだけ自分だけの幸せを噛みしめる様な気分で、ギンジの寝顔を堪能するのであった。

 

 

続く 

 

  




お疲れ様です。

いやー長かった魔法界編も次で終わりだー。
骨の怪人にはいつかこうなる役目を与えたかったので、どこかでサクラとぶつけて魔法界に紛れ込む・・・という話にしたかったのと、こうして魔法界の戦いに現れ、魔王として君臨するという演出にしたかったのですが、ようやく叶いました!

キャラネタ書きます

骨の怪人
魔王。最後悪あがきは無駄に終わった。

赤鬼
勇者らしく攻撃出来た!

神宮カエデ/宮寺レン/甘白ミドリコ/角倉ケイタ
戦闘不能に近い状況だったけど、なんとか持ち直してギンジ達に最後の加勢に向かった。

大精英霊佐久間ギンジ
アマトリが狙っていた魔の霊石をその身に宿し、新たに得た力は重力魔法。フェーズ4の疑似覚醒は日に二度も行った疲労が戦闘終了したあとにまとめて身体に襲いかかってきた。

トン・コッツ/クリムパス
共同作業とか、夜から朝までたっぷりと・・・等、二人は実は恋人?
それとも、恋人未満?真相は二人しか知らない。

トン以外のコッツ兄妹
最後に赤鬼にエンチャント魔法で援護してあげた。

ジェノべ/アラビア
あんまり見せ場は無かった。ごめんよ

鈴村ミヤコ
今は柏木タツヤによって誘拐されている。

オーク怪人
一ヶ月ちょっと出番が無い。

触手の怪人
まだ出番が回ってこない

藤原
言わずと知れたセクハラおじさん。
ミドリコに逮捕状が出された時、出番がなかったけど、何をしていたのでしょうか・・・

・・・

次回・赤い勇者と魔法界編、最後のお話。
次回の次回・新章開始!
番外編を間に挟もうか考えていますが、そこは私の気分しだいと言うことで。

それではまた次回!!
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