正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです!

最近休日のせいもあって、めちゃくちゃだらけてました!

更新も遅れて申し訳ないです。ですがやみたかったのだ!
毎日会社忙しくて涙

さぁ、更新の方も頑張って生きますよ!それでは、どうぞ


67・さらば魔法界、またな勇者

 

 コンキリエ魔王軍とヘルブラッククロスの歪な協定は、ヘヴンホワイティネスによって崩され敗れ去った。

 

 オレキエッテ帝国は勝利の余韻もつかの間、すぐに町の復興に励む事になっていた。

 

 石材を叩き、木材を切る音と人との喧騒。

 

 暖かい日差しに照らされ、城に住む者だけではなく、この帝国に住まう全ての住人が一致団結しながら大規模修繕に励んでいる。

 

 そんな平和への一歩を踏み出している帝国民をよそに、ギンジはサクラと魔術医療の専門医によって身体を観て貰っている。

 

 ケイタも同じく魔法の使い過ぎで魔力酔いを起こしており、一日経った今もフラフラしていて体調が優れない様だ。

 

 「ふむ・・・魔力の無い身体なのに、魔法が使える様になるとは・・・」

 

 サクラはギンジの検診結果の資料を見ながら、興味深く進化の怪人の能力を持っているギンジをマジマジと見つめている。

 

 診療所があるこの部屋は帝国城の中庭に仮設させて貰っており、戦いによって大勢出来た負傷者をここに運んでは、治療をしてもらっている。

 

 カエデもレンも栄養注射を射ってもらい、ミドリコは赤鬼によって包帯ぐるぐる巻きの刑に処されていた。

 

 ミドリコは特別大怪我しているわけではないが、綺麗な身体に何かあってはイケないと、赤鬼が全部治療を買って出た。

 

 新たな魔王となった骨の怪人を撃破したギンジは、あのまま気絶する様に眠りに入り、昼頃に眼が覚める頃にはこの仮設治療所にて治療を受けていた。

 

 ギンジが帝王シシリーから授かった魔の霊石。力を求めた神の力が宿る魔法の杖に組み込まれた石は、ギンジの体内に入り込む事で新たな力を得る事になった。

 

 その新しい能力は・・・重力魔法。

 

 使い方を誤れば、星そのモノを転覆しかねない、最大の魔法。

 

 ギンジの中に入ったその能力の実体をサクラに聞かされるまで、半信半疑だったギンジではあるモノの、内容を聞いてみればなんで魔王がこの霊石を欲しがったのかも納得が行く。

 

 「重力で星すら色々出来るンなら、まじで神サマ級だな。そりゃあ、神になるとかほざき始めるわな」

 

 椅子に態度悪く座るギンジがそんな事を言うと、サクラも苦笑している。

 

 「ギンジくんなら悪用はしないと思うけど、度固化に戻った時は一応無理やりな使用は控えてね・・・何が起こるか分からないから」

 「うーん、そうだな。戦闘以外には使わない事にするよ」

 

 サクラの注意を素直に聞き入れ、ギンジは椅子の上でうなずく。

 

 「さて、と」

 

 サクラが立ち上がると、ギンジ伝える事は全て伝えた様子で、治療所から離れていこうとする。

 

 「あと一時間程したら自由に動いていいよ。皆でごはん食べようって、帝王サマもおっしゃってたし」

 「おう。昨日何も食べてないし、実は結構腹減ってるんだよね〜」

 

 思えばほぼ一日戦い続けて、骨の怪人撃破後は何も食べずに眠ってしまったのだ。それはかなりお腹もすくだろうし、疲労も回復しきらないだろう。

 

 「それじゃ、お大事に」

 

 サクラがそれだけ告げると、扉に手をかける。

 

 ふと、大事な事を言い忘れていた事を思い出したサクラは、もう一度ギンジに向き直る。

 

 天真爛漫の笑顔を見せたサクラは、ヘヴンホワイティネスであるギンジにちゃんとお礼を伝えてなかった。

 

 「魔法界を救ってくれてありがと!ギンジくん!」

 「気にすんなよ。これぐらいお安い御用だぜ」

 「今度は私の番だね!皆でミヤコちゃんを助けに行こう!」

 

 サクラがちゃんと伝えなければいけない事を伝えると、今度こそ治療所から出ていく。

 

 その後ろ姿を見ていたギンジは、この世界におけるちゃんとした友達・・・いや、仲間が居るんだと再認識する。

 

 もう自分はかつての生きた屍じゃない。

 

 人の為に戦い、平和の為に生き、まともに恋だってする。

 

 希望を持って、今を生きている。

 

 人間を取り戻して、ギンジは過去を払拭した気分に、少しだけ涙がこぼれそうになる。

 

 「さーて、まともに動けるまで一時間・・・何をして待つかな」

 

 いっそ能力の特訓でもしようか。もしバレたら方方に怒られそうなので、それはやめておく。

 

 カエデが近くに居てくれれば、こんなに退屈はしないのだが。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 ギンジの居る治療書から少し離れた、帝国の中庭。そこに落ちてきた城の瓦礫に囲まれた魔法の図書館に、ケイタを中心としてカエデ、レンが呼び出されていた。

 

 ケイタは車椅子みたいな奇妙な形をした椅子に座らされ、レンの手押しによってここまで来ていた。

 

 呼び出した張本人はサクラ。

 

 一体彼女がヘヴンホワイティネスになんの用だろうか・・・。

 

 「ごめーん!お待たせ〜!」

 「おはよサクラ」

 

 少し遅れたサクラ。カエデは何も気にせずに挨拶をする。

 

 「いやはやごめんね。ちょっとギンジくんの治療を手伝ってたからさ」 

 

 ギンジはいつもどおり無事である事を伝えると、カエデは一層強く微笑みを出す。

 

 「それで、私達を呼び出したのは、何か緊急の用事?」

 

 レンがケイタの肩をさすりながら、サクラを見つめて口を開いた。

 

 「・・・今から言うことは可能性のお話なんだけど、一応心に秘めておいてほしいな。ケイタくんに関する事だから・・・」

 

 平和の日差しが降り注ぐこの中庭に、サクラはひとつ不穏な空気を漂わせる。

 

 「・・・?」

 

 レンはそんな空気感に疑問を持ちながらも、一先ずはサクラの話を黙って聴く事にする。

 

 ケイタも顔色は悪いが、サクラの話に耳を傾けている。

 

 「・・・いいね?それじゃあ話すよ」

 

 サクラが少し苦い顔で口を開く。

 

 「ケイタくんね、魔法を使える様になったからって、無理はしないで。君には本当に申し訳ないけど、戦う為の才が本当に無いの。君が魔法を使えるという事は、言うなれば赤ちゃんの身体にギンジくんの力が入り込んでいるモノだと思ってほしいな」

 

 少しの静寂の後に、再びサクラが会話を続ける。

 

 「いくら死ぬ事が怖くないって言っても、使い続ければ本当に早死にするよ。魔法界なら延命出来ても、度固化に戻ったらそう簡単に君の治療は出来ないの。無理をしないで、本当に。レンちゃんが悲しむし、もしケイタくんが死んじゃったら、君を戦える様にした私の責任も重いんだよ」

 「・・・」

 

 だからと言ってせっかく手に入れた魔導書を手離したくはない。

 

 ケイタは自分の心の中で、白い魔導書を握りしめる思いでいる。

 

 「だから・・・」

 

 この次はサクラはカエデとレンを見つめる。その瞳の力強さは、思わず背筋が伸びる。

 

 「ケイタくんが無理をしない様に、カエデとレンちゃんがちゃんと見守ってあげて。この力は・・・魔法使いは誰にでも扱えても、ケイタくんにははっきり言えば、身体にかなり負荷がかかるし、人より少ない魔力で、無理やり他人をドーピング出来る能力なんて、いつ倒れてもおかしくないんだからね!」

 

 戦う為の才、戦う力自体が人より少ないケイタは、修行さえすればどうにでもなるとさえ思っていた。しかしながら角倉ケイタにふりかかる試練はまだまだたくさんあるようだ。

 

 「君が人の為に・・・レンちゃんの為に力を使う動機や理由は、とても素晴らしい事だし、きっとそれを誰も否定はしないと思う。だけど・・・」

 

 言葉に詰まってしまいそうになる。

 

 ケイタだって生半可な覚悟でこの世界に付いてきた訳ではないことを知っているだけに、サクラは段々申し訳なくなってくる。

 

 「レンちゃんと約束して、カエデと契約して。絶対に無理して魔法を連発しないって。ここで私にその表明が出来ないなら、悪いけど魔導書は没収しまーす!」

 「そうね・・・あたしもサクラの言う事には賛成。ケイタ・・・もし、無理して倒れる様な事があれば、あたしも許さないわよ」

 

 カエデはケイタの事の重大さを改めて認識した。中学から一緒の親友で、今は共に戦う仲間である。

 

 そんな彼には、宮寺レンという見目麗しい恋人も居る。こうなった以上仲間であれば、絶対に死なせるわけには行かない。

 

 「ケイタ・・・私も、同じ気持ち。一緒に戦える様になっても・・・あなたが死んじゃったら、今の私に、戦う理由が、見いだせなくなる・・・」

 

 もう自分の未来を守るだけの戦いでは済まない領域にまで来ているのだ。2102年の未来を救う戦いは、レンだけの戦いじゃない。

 

 そこにはレンを中心に守りたいモノ、失ってはいけない者がたくさん出来ているからだ。

 

 「うん・・・ごめん。少し・・・調子に乗ってたかも・・・ごめん、ごめん」

 「死なないで。あなたが居ないと、私・・・」

 「あーえっと・・・あたし達、お邪魔かしら?ねぇ、小町さん?」

 「その様ですわね、神宮さん。後は若いお二人にこの場をおまかせしますか・・・」

 

 『オホホホ、ごきげんよー』

 

 二人して何を言っているのか。とにかくケイタはこれ以上、命を無駄使いするわけにはいかない。

 

 その事をレンと固く話し合い、二人は何度目かわからないキスをする。

 

 戦いへの誓いと、二人のこれから先の未来を守る為の誓いの証として・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「姐さん、どこか痛みやすか?」

 「いや、問題ないよ。そんなに気にしないでくれ」

 

 また違う別の治療所には、赤鬼が釘で手打ちした、

 【みどりこのあねさんと俺っちの部屋】 

 という看板を打ち付けた仮設治療所にて、傷の治療をしている。

 

 治療と言ってもミドリコは複数箇所の打撲と、肩や背中に軽いやけどがあるぐらいだ。

 

 後は年齢から来る過労だろうか。

 

 「ギンジ達の所には行かないのかい?」

 「ここから俺っちは離れねぇ。この帝国の住人が、ミドリコの姐さんをやらしー眼で見てるからなぁ」

 

 それはとんだ自意識過剰だろうが、なぜだか赤鬼が言っていると本気でそう見られているのかも知れないと、少し邪だが自信がついていく。

 

 「私にそんな眼で見る人なんていないだろう・・・」

 「いーや居る!絶対に居る!」

 

 なぜこんなにも頑な所があるのだろうか。

 

 「だいたい、姐さんがどんだけ魅力的かわかってますか!あんた・・・国宝級に美人なんだぞっっっ!」

 「なっ、どうして君はそうやって私を褒めちぎるんだぁ・・・」

 

 困惑と自信。赤鬼はいつでもミドリコのプライドが高揚する言葉を出してくれる。それほど大事にされているのと同時に、照れくささも出てきてしまう。

 

 「美人で器量も良くて、おまけに夜は・・・」

 「夜は?」

 「あんなアダルトな趣味をもって、俺っちを悩ます」

 「オイそれ以上言うな。ロケットランチャーが火を吹くぞ」

 

 ミドリコの趣味はともかく、赤鬼はミドリコへの愛を隠す気が無い。

 

 「・・・俺っちは、あんたを本当に愛しているぜ。あんたにその気がなくって・・・例えばギンジの兄貴とくっつきたいなら、その協力だって惜しまない」

 

 赤鬼が少し熱を放出すると、椅子に座る。ギシリと重たい音を軋ませた椅子に態度悪く座ると、赤鬼は一息ついてからミドリコを見つめる。具体的に見つめているのは包帯で太く巻かれた胸の部分だが。

 

 (うーん、今からでも味わいたい)

 

 きっといつものクールな声音とは違い、可愛らしい声を上げてくれるだろう。

 

 それは良いとして。

 

 「・・・赤鬼、少しだけ愚痴を聞いてくれないか?」

 

 ミドリコは少しだけ虚ろな瞳で赤鬼に告げると、赤鬼の姿勢がよくなる。

 

 「あれはそう・・・私が自衛隊に所属していたときだ・・・」

 「きっとめちゃくちゃ可愛かったんでしょうな〜」

 「んんっ!話の腰を折るなっ!」

 「あっ!その顔!めっちゃかわうぃ〜・・・あ、これカエデの姉御から学んだワカモノコトバっちゅーやつらしくて」

 「だから話の腰を折るなと言っとろーに!」

 

 再開の喜びがあるからか、赤鬼はテンション高くミドリコをからかう。からかう事でミドリコの表情が色々と変わり、それを見るのが自分の心を潤してくれる気分になっていく。

 

 自分が惚れた女、甘白ミドリコ。彼女とこの先を生きていける事がなによりも嬉しい。

 

 そうしていけるチャンスをもう一度手に入れた事で、赤鬼はふざけている様に見えて、その裏ではもう何があってもミドリコを守り通す。その気持ちの方が一杯になっていた。

 

 「・・・」

 

 赤鬼は急に黙り、しかしながら表情はゆるい笑みを乗せて、ミドリコをじっくりとながめている。

 

 「・・・どうした、赤鬼?」

 「いやぁ・・・やっぱ綺麗だなってな」

 「〜〜ッ!」

 

 どうしてこの男はこんなにも自分を喜ばせ、恥ずかしくなるような照れる様な言葉を簡単の吐き出せるのか。

 

 顔を赤くしながらミドリコは赤鬼の向かって、その辺に落ちている木片を投げる。

 

 投げると言っても軽くぶつけるぐらいで、赤鬼の堅い胸筋に当たったそれはひらひらと床に落ちていく。

 

 「ヌハハ、今の投げ方のかわいいですな!」

 「・・・〜〜ッ」

 

 どんどん顔が熱くなってくる。

 

 赤鬼に言われれば、なんでも嬉しくなってきている自分が居る。

 

 鼓動が強まる。

 

 呼吸もやや早くなる。

 

 嬉しいと思う感情が強くなる。

 

 腕が震えて、指先に力が入らなくなって、赤鬼から目線が移動できなくなっていく。

 

 この感情こそ、甘白ミドリコが26年間生きていて、得たことの無かった大きな感情。

 

 今までのどんな男にも持ち合わせる事の無かった感情。

 

 恋。

 

 今は認められなくても、いつかミドリコは赤鬼に素直に自分の気持ちを出す瞬間が訪れるかも知れない。

 

 (・・・今は、まだだめだ・・・)

 

 だめと言いつつ、だめと思いつつも、近づいてきた赤鬼の手を握る。

 

 硬くて分厚い赤い皮膚から赤鬼の熱と鼓動が強くなっていくのを感じる。

 

 「俺っち、強引にはしませんから」

 「あ、当たり前だ!この馬鹿者・・・」

 

 今この瞬間だけは、お互いに感じている事は同じなのだと、ミドリコも赤鬼も想う事になるのであった。

 

 きっと二人はあと少し、なにかのキッカケで大きく進展出来るのであろうか・・・。

 

・・・・・・・・・・・・

 

 魔王を撃破してから約24時間、つまり一日ぐらい。

 

 俺達は何日目かの夜を迎えた。

 

 多分3週間ぐらいこの魔法界に滞在しているから、本来の世界では3日ちょいぐらいかな?時間が経っている筈だ・・・。

 

 「あわわわ忙しいですぅー」

 

 銀の台車にトレイを乗せて食事を運ぶのは、ペンネーというメイドさん。おっぱい大きくて眼がそっちに行きがち。後ろから殺意を感じたのであまり視界に入れない様にしよう。うん、俺はまだ死にたくない。

 

 魔王を倒して、ここオレキエッテ帝国は復興を進めつつも、順調に活気と命の輝きを取り戻しつつある。

 

 いやー本当にサクラの故郷を救う事ができて良かったな。

 

 それで俺達が今何をしているのかと言いますと・・・。

 

 「皆の者!まずは大規模な復興に入る前に、よくぞコンキリエ魔王軍を撃退した!今宵の勝利は、我々と勇者赤鬼、そして英霊達の加勢の賜物!」

 

 中庭に用意された大きなテーブルに、それぞれ兵士達やその家族、帝国の民なんかが、なけなしの食材を大盤振る舞いしては宴が開始されようとしていた。

 

 「まずは帝国、そしてこの魔法界に生きる者達へ、平和を取り戻したこの日常を楽しんでくれ!かんぱーーーい!!!」

 

 帝王シシリーの涙ながらの音頭に、この場に居る人達全員がカップを片手に大腕を広げた。

 

 上がったその腕同士カップ同士、様々なところでぶつかり合いながら、バシャバシャとお酒だか水だかがこぼれていく音、グラスの割れる音がする。

 

 絵に描いたような大宴会の光景に、俺は平和を守れた事に歓喜している気分になれた。やっぱ平和ってのはこーじゃないとね〜。

 

 「そういや、レンとケイタはどこに行ったんだ?」

 「魔力酔いがどうのこうので、せっかくの宴は欠席よ。でも、レンはともかく、ケイタは無理しすぎだわね」

 

 なるほど。そう言われれば確かに、魔法界に来てからケイタは頑張りすぎてたかもなーとは思う。俺ももっと冷静にならなきゃなー。

 

 度固化に戻っても、あいつの魔法には頼りに出来るはずだからな。 

 

 「兄貴、兄貴!もう食べていいんすかね!」

 

 赤鬼は向かいの席でミドリコと隣同士で座ってる。

 

 こいつらなんかお似合いだよな。

 

 そんな二人は宴の開催と同時の喧騒によって、眼の前に出されたローストビーフ的な黄金色のソースがかけられた肉を前に、赤鬼は空腹により興味津々、ミドリコはお酒をもう飲み干している。

 

 「あんた何食べるの?」

 「あーそうな・・・そこのポテトサラダ的な奴・・・」

 「じゃああたしもそれにしよっ」

 

 わざわざ同じの選ばなくても・・・とは思ったけど、なんか同じの食べようとしているカエデが可愛いと思えて来ちゃったので良しとしよう。悪い気もしないしね。

 

 「何よジロジロ見て・・・」

 「いや・・・何も」

 

 どうしたんだ?なんで薄ら笑いで眼をそらしちゃったの俺。

 

 なんでか?それは・・・やっぱ可愛いんだよな、カエデって。

 

 ヘヴンホワイティネスの神宮カエデは、この俺佐久間ギンジの推しと言っても過言じゃないキャラなんやぞ!!

 

 冷静に考えたら推しと一つ屋根の下で暮らしてるって、それなんて薄い本?それなんてラッキー?

 

 おまけにミヤコっていう俺への好意全開少女も居るんやぞ!!!

 

 愛・・・それを全くではないけど、あんまり知らない俺に愛を全開にするミヤコ。

 

 カエデも前ほど辛辣じゃなくなってるし、どっちかって言うと信用してもらえてる。

 

 おまけに二人共可愛い。ああ、俺は前世でどんな得を積んだのでしょうか、神よ!

 

 話が逸れたけど・・・やっぱり仲間としても、好きになるっていう意味でも、カエデとミヤコ、二人共大切なんだな。

 

 前の俺じゃ何も見いだせなかったけど、こうやって誰かの笑顔を守るのも存外悪くないよな。

 

 こうなったら、本当に正義のヒーロー目指しちゃうか?いや今既に正義のヒーローとして活躍してるんだけどさ。

 

 「そうだ、ねぇギンジ」

 「なんだ?」

 

 カエデがポテトサラダを食べながら俺の肩を叩いてくる。っていうか上品に食べるなぁ。可愛いなぁ。ぐふふニチャァッ。

 

 「後で話したい事があるんだけど、寝る前とかでいいから、ちょっと付き合いなさいよ」

 「おう。全然いいぜ」

 

 少しだけ真面目な表情と言うか、陰りがあると言うか。悪い感じじゃないけど、カエデがそんな口調と雰囲気で俺に話してくる。

 

 とりあえず変に浮かれる俺の上には、サクラとジェノべが花火の魔法で空を彩り、クリムパスはトン・コッツと楽しそうに食事してたり、赤鬼はシシリーと肩を組みながら大酒飲み勝負をしている。

 

 平和を取り戻したこの大宴会は、まだまだ続きそうだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「ありがと、ここまで飛んでくれて」

 

 宴会から抜け出す様にして、ギンジとカエデは削り取られた城の上に来ていた。一応シシリーの許可を貰い、カエデの希望で夜空を飛びながら、美しい満月の見える削れた城の断面に来ていた。

 

 歪に崩れた城の瓦礫に寄りかかりながら、二人は満月を眺める。

 

 「話ってなんだよ」

 

 ギンジは宴会から持ってきた干し肉をカエデに手渡すと、カエデはニヘラとした笑みを浮かべながらそれを手に取る。

 

 心地よい夜風に煽られながらも、下の方はかなり騒がしい。それでも静寂と夜の美しさによって、大宴会の騒がしさが気にならない。

 

 「ん・・・お礼を言いたいなーって。ガラじゃないけど」

 

 カエデがギンジを呼び出したのは、お礼を言うだけの簡単な事。

 

 「あたし達って、元々3人で戦ってたじゃない?」

 

 元々のヘヴンホワイティネスは、カエデ、レン、ミドリコの三名がヘルブラッククロスと戦ってきていた。

 

 本来のゲーム通りならば、2022年6月までに、壊滅の危機に陥るのだが、世界的なイレギュラーとなったギンジの加入により、崩壊は免れ、しかもヘルブラッククロスになんとか勝てている。

 

 今回の魔法界の一件も、正直ギンジが居なかったらどうなっていただろうか。

 

 カエデの心情としてはギンジのおかげで、自分が強くなる動機にも成り得ている。それほど今のカエデにとってギンジは大切で、頼りになる仲間である。

 

 そう思うのはきっとレンとミドリコと赤鬼とケイタだけ。

 

 カエデにはもう一つ付け加えたいモノがある。

 

 それが何か・・・恋である。好きになっているということ。

 

 「正直に言うとさ、あたしもあんたの事、怪人だからって信用してなかった時もあるけど、でも今はあんたがどんどん強くなってる事が自分の事みたいに嬉しいのよ?」

 「改めて言われるとなんだか照れるな・・・」

 「あたしの下僕なんだからそれぐらいで照れないの!」

 

 干し肉をちぎり、一欠片口に放り込むカエデ。

 

 「暴走だけは心配だけど、ギンジが強くなって、あたし達の未来の為に戦ってくれて・・・その、一緒に生きてるってところとか、さ」

 

 戦いはいつだって生死が伴う。毎回厳しい戦いが続き、それでもなんとか勝利を収めている。いつだって余裕と思った事は無い。

 

 でも・・・それでもギンジが居てくれた事で、戦いが少し楽しくも思えてきていた。楽しんでいる訳では無く、ギンジと一緒に戦える事が心から楽しく思える。

 

 数少ないギンジと共に戦う時間。平和と未来の為に戦う、それこそが共に生きているという事を実感出来る。

 

 戦いが終わって何か言い合いをしたり、お互いを褒めたり、お互いを心配したり。

 

 いつの間にか、カエデの心の中にはギンジが居て、ギンジの心の中にもカエデが鮮明に居座る事になる。

 

 満月に手を伸ばし、掴む様にして手を握る。

 

 「今回も勝てたし、次回も期待してるわよ、ギンジ」

 「それ、何度目だよ」

 「何度でも言うわよ。あたし、結構あんたの事・・・」

 

 一瞬言葉が詰まる。だけど、今なら言える。

 

 「あんたの事、嫌いじゃないから!これからも一緒に、戦ってくれるかしら。下僕じゃなくて、相棒としてね!」

 「・・・!」    

 

 かつてのカエデからこんなにも信頼を寄せられてる事になるとは。

 

 ギンジが得たかった信頼、信用の証は形にはならないモノ。それでも、この言葉をヘヴンホワイティネスから聞けた事がなによりも嬉しい。

 

 ふと、頬に走るのは一筋の粒。涙。

 

 「え、ちょ、何泣いてるのよ!」

 「え・・・!?ああ、いや・・・なんでだっ!?」

 

 サングラスを外してギンジが涙を拭き取る。一筋だけのソレはすぐに収まるが、カエデはギンジの顔を見て驚いている。

 

 「・・・どうした?まだ涙出てるか?言っとくけど、泣きたくて泣いてるわけじゃないからな!」

 

 言い訳じみた内容に、カエデは何も返さない。

 

 「ギンジ・・・今、視界ってちゃんと見えてる?」

 「ん?ああ、満月も、下の宴会も、お前の可愛い顔もばっちりだぜ」

 「そ、そう・・・」

 

 確かにギンジの身体の見た目は人間。中身は怪人。

 

 怪人には特有の瞳がある。黒い眼球に瞳孔が赤くなる、あの不気味な生物の瞳。

 

 それが今一瞬、普通の人間に見えた。カエデの眼には確かにそう見えた。

 

 怪人は涙を流さない。では、ふとした瞬間に流す事になったら、どうなるのだろうか・・・。

 

 溢れる程涙が流れれば・・・。

 

 「なんだよ、何かあったのかよ」

 「え、ううん。何も・・・気にしないでいいのよ、馬鹿」

 「なんだよソレ・・・」

 

 二人して再び満月を見つめる。

 

 「月が・・・綺麗だなぁ・・・」

 「そうね・・・」

 

 今ギンジは自分が何を口走ったのか、一瞬で理解する。本心で月を綺麗と思い、そんな事を言っただけなのだ。

 

 きっと月を綺麗と思うのは、ムーン・フォース改があるからだ。身体にそれがあるからだ。

 

 話を逸らそうとして、ギンジは干し肉を一気に食べる。

 

 「俺も・・・あれだよ、お前の事きらいじゃないからよ・・・」

 「なーにー?ごにょごにょ喋ってないで、もっと大きな声でいいなさいよー」

 

 そうは言いつつもカエデは満月ではなく、そっぽを向いている。

 

 「・・・」

 「・・・」

 

 お互いに心臓が痛くなる。気恥ずかしさと気まずさ、そしてお互いが嬉しいと想うところまで来ている。

 

 でもギンジの心の中には、カエデだけが居るわけじゃない。

 

 もう一人。

 

 鈴村ミヤコも居る。

 

 もうソレ以上の事は言えず、言葉も出せない。

 

 二人のとりとめない会話もここらで終わりにして、ギンジとカエデは再び宴会に戻る事にした。

 

 ヘヴンホワイティネスの掴んだ勝利の大宴会は、明け方近くまで続いたのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 昼頃まで眠りについたギンジ達は、そろそろ帰ろうかとサクラと相談しているところだった。

 

 無事だった客室を使わせてもらい、ギンジ達はそれぞれ身支度を終えて、次の戦いへの英気を十分に養った。

 

 この魔法界で得たモノは非常に大きい。

 

 今後の戦闘に役立つ修行で手に入れた力。

 

 ケイタの加入と、赤鬼の復活。

 

 そしてギンジの重力の魔法。

 

 なによりも大きいのが仲間全員の結束力を高められた事。

 

 サクラがギンジ達の話を聞き入れる事で、シシリーに報告する。

 

 その内容を聞いたシシリーは、帝国の民達と共に大規模修繕に入る為に、お見送りが出来ないと言う。

 

 「赤鬼さんも、勇者だからいつでも戻ってきてくださいって、言ってたよ」

 「命を救われたからな。恩義はこれだけじゃ返し切れてないぜ」

 

 勇者として命を拾われ、魔王軍を倒し、骨の怪人まで撃破した。それだけで十分と、オレキエッテ帝国が判断したのだ。

 

 故に赤鬼は、元の暮らしていた世界に帰る許可が降りた。これでミドリコ達と共に暮らせるのだから、シシリーの計らいによって赤鬼は勇者を降りる事も出来るかも知れない。

 

 実際勇者という名分を持つのはギンジの兄貴ぐらい。それしか頭にない赤鬼はすぐに降りようとも考えたのだが・・・。

 

 「勇者の称号、板についてきたんじゃないか?」

 「ヌハハ、姐さんに言われたらなんだか悪い気はしやせんね。よっしゃ、度固化市に戻っても、勇者継続って事で」

 「こういう時ちょろいよな、赤鬼って」

 「ちょ、兄貴〜!」

 

 こうしてヘヴンホワイティネスは6人になった。

 

 怪人人間・佐久間ギンジ。通称進化の怪人。

 

 正義の衝撃・神宮カエデ。

 

 未来を守る剣術使い・宮寺レン。

 

 爆撃女戦士・甘白ミドリコ。

 

 空気すら砕く鬼・赤鬼・通称ヘヴン4。

 

 魔導に歩みだした者・角倉ケイタ。

 

 ここまで揃えば、きっとヘルブラッククロスが伸ばす魔の手から、平和と未来を守れるだろう。

 

 ただ、これだけのメンツが揃っていながら、お見送りが無いのが少し寂しい。

 

 「こう見えても俺達正義のヒーローなんだけどなぁ」

 「謝礼を求めても無駄よギンジ。いいから、あたし達はすぐ戻って、ミヤコを助けに行くのよ」

 「同意。ケイタも、同じに思ってる」

 「えっ!?ああ、うん!そうだよね」

 

 全く意識していなかった不意打ちに、ケイタは眼を丸くしているが、絶対に話を聞いていなかったに違いない。

 

 「帰る為の門は開けておくね。先に行ってるね!」

 

 サクラが窓から飛び出して、魔法の杖で気持ち良さそうに飛び出すと、すぐにその姿は視界の外へと消えていく。

 

 「じゃあ、俺達も戻るか」

 

 この後度固化市に戻れば、そこに待っているのはミヤコを助ける為の戦い。きっとあの柏木タツヤという大幹部、そこに従う怪人達との激しい戦いが待ち構えているに違いない。

 

 とは言え赤鬼も復活し、きっと戦力的には五分・・・否、ヘヴンホワイティネスの方が7ぐらいだろうか。

 

 「皆準備は済んだな?では、帰ろう」

 

 ミドリコが年長者として切り出すと、城のエントランスホールの、ヒビ割れた扉に手をかける。

 

 そうして開いた重々しい扉から、光が入り込むと眩しくて眼を細める。

 

 「早く行こうぜ・・・」

 

 ギンジも扉を開けると、眩しさに眼がなれてくる。

 

 それと同時に・・・城の入り口から続く石段に兵士達が並んでいる事がひと目見て解った。

 

 「全軍ッ!剣を掲げよオォッ!」

 

 左右の兵士達が、剣を引き抜き、連鎖する様に綺麗に剣のトンネルが出来上がる。

 

 号令を上げたのはアラビアだった。

 

 「わぁ・・・」

 

 ケイタが驚きに声を上げる。

 

 「全軍ッ!最敬礼!そして・・・」

 

 左右の兵士達の列を抜けると、ジェノべ率いる魔法部隊がオレキエッテ帝国最大の敬礼と、感謝を込めた魔法を空に解き放つ。

 

 昼間の空にはっきり見える様に、赤色の魔法の花火が舞い踊る。

 

 「なんでぇ・・・お見送り、無いんじゃなかったんか」

 

 赤鬼が大層嬉しそうに青空に浮かぶ赤い花火を見上げる。

 

 「申し訳ありません、勇者様。帝王様がどうしても、と」

 「ヌハハハハ!あんにゃろう、粋な事するなぁ」

 

 豪快に笑うと、赤鬼は清々しい笑顔でジェノべに手を差し伸べる。

 

 握手の姿勢を取った。

 

 ジェノべもその手を握ると、二人して硬い握手を交わす。

 

 「あんたらは俺っちの命の恩人だ。ここは第ニの故郷って言っても過言じゃねぇ。また危険が来たらいつでも知らせてくんな。大暴れしてやるからよ」

 「頼りにしていますよ、勇者赤鬼。貴方にもご武運を」

 

 二人が握手すると、ジェノべが道を開ける。

 

 その後ろには、コッツ兄妹がそれぞれ自分の魔法を空に打ち上げ、更に帝国の民達が花束やパスタを上に放り上げる。

 

 「ありがとー!」

 「勇者様〜!」

 「お元気で!」

 「感謝!」

 「またくうさいれっけんおしえてー!」

 

 勇者赤鬼へ向けた最大の賛辞の言葉が送られる。

 

 長い道、帝国全土で盛り上げる勇者のお見送りの道を、赤鬼は手を上げながら子供や、淑女、農夫へ向けて一人ひとりへオリハル金砕棒を振り上げながら、挨拶をしていく。

 

 「ブッヒッヒッヒ!また会おうぜ兄弟!」

 「ケイタきゅんもギンジきゅんも元気で居ろよ!ウッシッシ!」

 「はぁ・・・めんどくさいけど、感謝はしてる。またね」

 「ンゲーッゲッゲ!次合う時は、もっと強くなってるぞ!元気でな」

 

 ケイタは一瞬背筋を震わせ、ギンジもカエデもレンもミドリコも、それぞれに挨拶を返していく。

 

 「お待ちになって。勇者殿」

 

 声をかけたのは王女ポモドロ。

 

 荘厳な衣装ではなく、布の簡素な洋服に身を包み、民と同じ立場として赤鬼達を止めた。

 

 「この世界の危機に現れ、魔王を滅ぼした者、勇者。私は貴方という存在を、この魔法界の歴史において、そして私の生涯の内に忘れる事はないでしょう。よくぞこの世界を救ってくれました」

 

 ポモドロは赤鬼とギンジに向けて、帝国のペナントを手渡す。

 

 「またこの帝国に来た時は、このペナントを見せてくれれば、貴方達ならばいつでも快く迎え入れますよ。もちろん、後ろの英霊達も」

 

 ポモドロの笑顔は勇ましく、美しい。

 

 カエデもレンもミドリコも、この人は強い、そう思った。

 

 「世話になったなぁ・・・あんた程綺麗な人なら、シシリー王も満足だろうよ。その美貌と国を支える責任感、尊敬するぜ」

 「口がお上手ね。シシリーと出会っていなければ、少し気持ちが揺らいでしまうかも」

 「ヌハハ、あんたは上玉だが、残念。ミドリコの姐さんの方が上なんでな」

 「私と張り合わせるな!っていうか失礼だろう!やめろ!」

 

 ポモドロが話を楽しそうに聴くと、道を開ける。

 

 「さよならです。勇者殿。いつかまたお会いしましょう」

 「そちらもお元気でな!次合う時は子供の顔みせてくれや!」

 

 バッチリデリカシーの無い言葉を告げると、ポモドロと赤鬼はここでも握手を交わす。

 

 そして帝国のボロボロになった道の終わりには、サクラが開いた魔法門が展開されており、シシリーとクリムパス。

 

 ミートソーとペンネーもここに待っていた。

 

 「オイオイオイ、粋な事してくれたなぁ!」

 「ハッハッハッ!済まないな!」

 

 シシリーと赤鬼が拳をぶつけあう。

 

 「出来ればこの国に、ひいてはこの世界に残ってもらいたいが、そうも行かないのだろう?」

 「俺っちにゃやるべき事もあるんでな。それに兄貴達の力になりてぇんだ」

 「フッ・・・そうか」

 

 シシリーがギンジの顔を見ると、帝国の剣を掲げる。

 

 「君にも世話になったな。大精英霊佐久間ギンジ」

 「いいって。俺達もめちゃくちゃだったけど、無事に終わったんだしさ」

 

 ギンジもはシシリーの言葉に苦笑混じりにそう返す。

 

 「いつか・・・ヘヴンホワイティネスがより大きな戦いに身を投じる時は、我がオレキエッテ帝国が全軍を持って加勢しよう。君たちの戦いの勝利を信じているぞ」

 「へへへ、ありがとうよ。いつか手を貸してくれよな」

 

 ギンジの金棒とシシリーの剣が上で交差して、軽くぶつかるとシシリーが道を開ける。

 

 ミートソーも赤鬼に敬礼し、ペンネーもパスタと花束を上に放り上げる。

 

 「勇者殿!」

 

 最後にクリムパスが赤鬼に剣を掲げる。

 

 「よう・・・お前にも色々世話になったな」

 

 赤鬼がオリハル金砕棒を持ち上げ、同じ様に剣を掲げる。

 

 クリムパスにしても赤鬼にしても、この世界においては一番長い間時間を共にしただろう。

 

 赤鬼にとってもクリムパスにとっても相棒。そう言っても差し支えない程、お互いを信頼しあえたかも知れない。

 

 「トンの奴と幸せにな!」

 「今はその話はいいだろう。いつでも私達を呼んでくれ。必ず勇者殿の・・・いや、赤鬼の力になる為に、私達が向かう。そして、信じてくれ!私はもっと強くなる!トンを守れるように、そしてこの帝国と魔法界の平和を維持出来るように!もう誰にも敗けない為に!」

 

 鈍色の鎧と紫の髪を揺らしながら、クリムパスはより大きな声で赤鬼に笑みを見せる。同じ様に赤鬼も笑みを見せ、お互いの武器を頭上で軽くぶつけあう。

 

 「強くなったお前を見せてもらうぜ!じゃーなクリムパス(・・・・・)!」

 「ああ、またな!勇者!」

 

 サクラが魔法の門を開き始める。いよいよギンジ達が元の世界に帰る時が来た。

 

 「名残り惜しい、が、まぁ・・・」

 

 赤鬼は拳を強く握る。

 

 「俺っちは兄貴達と居る事にしたからよ。これからも頼んますわ!」

 

 勇者の言葉にカエデが赤鬼の背中を強く叩く。 

 

 「当たり前よ!」

 

 次にレンが口を開く。 

 

 「同意。ミドリコを悲しませたら、許さない」

 

 ケイタも同じく赤鬼に笑みを乗せて、元気に声を出す。

 

 「僕も赤鬼の事信じてるよ」

 

 そしてギンジが赤鬼を軽く叩いた。 

 

 「お前が居なきゃ、俺達も危ない時もあるかも知れないからよ。頼りにしてるぜ」

   

 最後にミドリコが勇ましい表情で赤鬼を見つめている。

 

 「私も、君を信じているからな。もう居なくなるなよ」

 「ヌハハ、もちろんですぜ姐さん。皆!」

 

 サクラの魔法の門に全員が入ると、次第に帝国の面々の送迎が大きくなっていく。

 

 サクラも入り、その内側から門を閉めていく。

 

 「もうしばらくは来れないよ!閉めるよ?いいね?」

 「おう、いっちょ盛大に容赦なく閉めてくれや」

 

 サクラが言われた通りに扉を閉めると、一瞬で静寂に包まれる。

 

 振り返れば、宇宙の様な空間。星や銀河の様に見える、魔法の通路。

 

 「それじゃあ、皆で帰ろう」

 

 ギンジの言葉で、全員がうなずく。

 

 「ギンジくん、今現在、向こうは8月28日。25日から3日も離れてた事になるよ」

 

 サクラの言うことは、それだけミヤコが危険にさらされ、残る事になったレイナとルカにも危険が及んでいるかも知れないということ。

 

 「・・・もうそんなに経ってたのか。でも」

 

 ギンジはカエデ、レン、ミドリコ、赤鬼、ケイタの顔を順番に見ていく。

 

 これだけの仲間が居るのだ。きっとミヤコを助ける事が出来る。

 

 「今の俺達なら、絶対に敵に勝てる!なんとしてもミヤコを助けるぞ!」

 『おー!!』

 

 サクラを含めた全員が声高らかに団結すると、ヘヴンホワイティネスは度固化市へと帰路につくのであった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 一方その頃・・・。

 

 南度固化市、聖カエルム教会。

 

 かつては退魔教会が悪事を働き、裏で秘密裏に行動していた本拠地だが、今は同じ退魔教会に所属する熊沢レイナによって、正しい方向へと支配権を取り戻した教会。

 

 色とりどりの花が、生命の美しさ、輝きを放つ花壇に、無数の鉛弾が散らばっている。

 

 コンクリートに転がる小気味良い音が、辺り一面に広がる様な感覚があり、レイナとナルミはこの教会に襲撃してきた怪人と交戦を繰り広げていた。

 

 ギンジ達が魔法界の危機を救いに飛び出してから、早3日。

 

 ミドリコの逮捕状を取り消す為に奔走し、ヘルブラッククロスの好き放題暴れる襲撃に、レイナとルカは一生懸命戦ってきた。

 

 「貴様に・・・ルカは渡さない!破邪の剣!」

 

 眼の前の怪人は機関銃が腕に取り付けられた、銃の怪人。

 

 彼はルカに不意打ちを果たした挙げ句、ルカを自分の嫁にしようとほざき散らかしている、

 

 「ギャーハッハッハッ!」

 

 半狂乱に笑いながら、銃の怪人は再び機関銃をばらまく。子供達の眠るこの教会をこんな怪人にこれ以上破壊はさせない、ルカも渡さない。

 

 「ムーン・ディザスター!!」

 

 教会の鐘から飛び出したルカは、怪我を抑えながらも銃の怪人の頭部に、月光の盾を突き刺しながら身を捻りながらぐちゃりと、怪人を斬り裂いた。

 

 「おっふぅ・・・イキそ・・・」

 

 機関銃から不発弾を出すと、銃の怪人はそこに倒れ爆発した。

 

 「最後まで気持ち悪いやつだ・・・!」

 (ルカ!もういいから休みなさい!)

 

 息も荒く、アキハに諭される程に、ルカは疲弊していた。

 

 「ギンジ達が戻るまでの辛抱だ。無理せずに今夜は休もう」

 

 レイナの手を掴み、ルカは無言でうなずいた。

 

 「ところで・・・」

 

 レイナがナルミのお尻に手を伸ばそうとしている赤いジャケットの、ヤクザみたいな顔つきをおじさんに睨みを聞かせる。

 

 「藤原さん?何をしているんですか?」

 

 手錠を見せつけながらレイナが言うと、藤原は慌てながらレイナに謝る。

 

 「もー軽い冗談じゃーん!ヤになっちゃうなぁ〜!」

 「いい加減にやめるべきですよ?藤原さん?」

 

 そんな藤原の後ろには、右腕を包帯で巻いたイロがいそいそと藤原の頭を叩いた。

 

 「とにかく、怪人は倒した・・・。一度戻るぞ」

 

 レイナが言うと、一同は全員教会に戻る事にする。

 

 この三日間、まともに休めない程には敵の襲撃に対応している。

 

 そろそろ本当にギンジ達に帰還してもらわないと、全滅もありえてしまう。

 

 「・・・ギンジ、君は大丈夫だよね」

 

 教会の女神像に祈りを込め、レイナは愛するギンジの帰還を願うのであった。

 

 

続く

 

 

 

 




お疲れ様です。

今回で赤い勇者と魔法界編は終わりで、次回新章であるミヤコ救出編が始まります!

長いお話でしたが、今後も楽しんでこの物語を書いて行きます!

キャラネタ書きます

佐久間ギンジ
カエデに月が綺麗ですね、って言った。

神宮カエデ
ギンジの事、嫌いじゃないから!

宮寺レン
ケイタが魔法を使うにあたって、無理させないようにしないと・・・

角倉ケイタ
無理したら、死ぬぞ!って釘をさされた。

甘白ミドリコ
いつものスーツ姿に戻ってます。
赤鬼に恋をしているのに、恋をしている事をまだ認めない。

勇者赤鬼
ミドリコ愛をいっぱい持ってる。許可さえあればいつでもミドリコを抱きしめられるし、愛情でいっぱいに出来る覚悟がある。

小町サクラ
魔法界の危機を救ってくれたギンジ達に大きな感謝と恩義を持った。

クリムパス
赤鬼に名前を覚えてもらえた

熊沢レイナ
久しぶりに登場した。相変わらずギンジがいっぱいちゅき。

月島ルカ/天体アキハ
レイナと共に協力しながら敵勢力を撃破している。

山吹イロ
武者の怪人に右腕を斬られたが、サクラの魔法で一応くっつけて貰っている。でも安静にしていないと行けない。

銃の怪人
怪人キラーエリートとして派遣された怪人。ルカを嫁にしようとしたが断固拒否された。次回、出番あり

怪人キラーエリートとは?
ドクターパープルの造った怪人と戦闘員の融合兵器。
銃の怪人、女王ナメクジの怪人、超性欲の怪人、進化の怪人(二代目)が居た。

25日〜28日の間に女王ナメクジの怪人以外は全員レイナとルカにやられた。

・・・

さて次回はいよいよミヤコ救出編開始!
しかし、最初のお話はなんとレイナ、ルカ、藤原さんのメイン回!
あの時藤原さんは何をしていたのか・・・!
レイナとルカはゆりゆりしたり、イロは女王ナメクジの怪人とゆりゆりしたり、藤原さんは柏木タツヤとホモホモしたり・・・

そんな訳あるか!ちゃんとまじめにレイナとルカと藤原さんのメイン回だよ!

間が空いてしまいどうもすみませんでした。それではまた次回!
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