正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちは、アトラクションです

いやー新年会開くの早いよ。去年流行りのアレに感染したのに、出席に捺印してんじゃねー!誰だよおしたの!って感じで、なんだかんだ新年会に出席しておりました。あと友人の結婚式にも。

結婚式いいなぁ、おでもしだい
相手?いねぇよ!!!!!!!!

今回のお話では衝撃の展開?が待ち受けてるかもしれません。それでは、どうぞ


71・キラーエリート・4

 「邪魔をするな!ヘヴンホワイティネス!」

 

 真夜中の住宅街に、銃の怪人の絶叫がこだまする。戦っているのはヘヴンホワイティネスではなく退魔警察とムーン・パラディースの2名なのだが。

 

 銃の怪人はルカを発見するなり、結婚したいと口走りながら容赦ない銃撃を繰り返して来ていた。

 

 「イロさんは離れててください!」

 「そうするよ?」

 

 恐ろしい怪人の銃撃の間にルカが防衛して立つと、その後ろにイロが駆け抜けていく。斬られた右腕を抑えながらの走りは、かなり苦痛を伴う。

 

 銃の怪人は相変わらずレイナをヘヴンホワイティネスと決めつけ、なんとしても撃破しようと躍起になっている。

 

 しかしレイナに気を取られれば、ルカが攻撃し、ルカに気を取られれば、レイナが情けを一切かけない退魔の攻撃が迫ってくる。

 

 近距離戦を得意とする美女二人に、遠距離主体の銃の怪人には非常に部が悪い。それにも関わらず銃の怪人は力任せの格闘術で、ルカを押し返したり、レイナと負けず劣らずの攻防を繰り返している。

 

 今日だけでもレイナは、暗黒騎士型鎧の怪人、犬の怪人、そして今朝はこの銃の怪人と交戦をしている。

 

 ルカも同じく鋼の怪人、蜘蛛の怪人、今朝は謎の怪人とも交戦している。

 

 いくら精神力が強かろうと、二人の美女は戦い尽くしの一日で、疲れが出てくる頃合いである。

 

 「しぶといな・・・」

 

 ルカが月光盾を何度もぶつけているのに、この銃の怪人は一向に倒れる気配が無い。それどころか益々闘気が増している。

 

 「いい加減にあきらめて、この銃の怪人と結婚しやがれぇ!」

 

 ルカに突き出す様にして向けられた、股間のバルカン砲をターボさせると、重苦しい音を鳴らして大量の鉛玉が噴射されてくる。

 

 「断・固・拒・否!!」

 (そうね。あれじゃデキないじゃない)

 「そうじゃなくても僕はあんなのと結婚はごめんだ!」

 

 そもそも結婚の意味をちゃんと理解しているのかさえ怪しい。あんな怪物との新婚生活は想像もしたくない。

 

 「月島君に近づくな下郎!破邪の滅剣!」

 

 より退魔の力を増した虹色の剣は、両手で扱う程の大きさとなり、レイナが銃の怪人撃破に向けて突撃する。

 

 「だーかーらー邪魔すんなって!」

 

 バルカンの動きを止めて、今度は全身をレイナに向ける。身体に取り付いた全ての銃口をレイナに向けると、エネルギーを集束させた弾丸が、両腕、両膝、股間の銃口から一斉発射される。

 

 「怪人銃術!偉大なる先輩の奥義(イース・トゥルバレンツ)!」

 

 赤黒いエネルギー弾がレイナの滅剣へと着弾した事で、爆発が巻き起こる。

 

 間違いなく重症、生きていてもその身体を木っ端微塵にする事が出来ると、銃の怪人が自負する最大の大技が解き放たれた。

 

 「レイナさん!」

 「ハァ・・・ハァ・・・結婚、しようぜ」

 

 この大技はかなり体力を消耗するのか、片膝をついて呼吸を荒くする銃の怪人。彼を見て好機と捉えたルカが、アキハの心の力を借りて月光盾を大上段に構えたあと、アスファルトに突き刺す。

 

 強い月光の力を携えた盾から、二人の月の力を込めた光線が撃ち放たれる。

 

 「大月光線!」

 

 月の色を宿した強力な善なる力が、疲弊して動けない銃の怪人へと向かって飛んでいく。

 

 「ぐっ・・・おおぉ!?」

 

 両腕の機関銃で防御するも、到底防ぎ切れる威力では無く、その強靭な身体に宿る防御力をも貫いている。きっと先程までの元気な状態であったなら、ルカの最大奥義は通らなかった事だろう。

 

 月光の力を宿した光線が悪そのモノである銃の怪人へと、深く命中して身体を焼き尽くす。

 

 「おおおッ〜〜〜・・・ッ!!!ぬはぁ!!」

 

 両腕の機関銃で光線を切払う様にして、左右へと弾かれてしまった。流石にこの状態でしぶとさを出され、ルカもアキハも驚愕してしまう。

 

 「ばかな!まだ動けるのか・・・!」

 (次の一撃よ!)

 

 アキハの指示によりルカが盾を手に取り、思い切り突撃する。盾を使った体かましをぶつけ、本気の力で銃の怪人をなぎ倒す。

 

 しかし銃の怪人は夜空に機関銃を撃ち放つ事で、コンクリートに着地する。

 

 (まだ倒れないの!?)

 

 アキハにも焦りが見え始めている。まだまだ余裕な笑みを浮かべる銃の怪人が、再び動ける気力、体力を取り戻したのかルカに向けて求愛を繰り返している。

 

 「この銃の怪人と結婚すれば、毎日気持ちよくしてやるぜ?不安なんていらない、力が支配する世界にで共に暮らそう!毎日ときめかせてあげるからさぁ!」

 「まったく魅力の無い誘い文句だな!」

 「じゃあ、夜景の見えるホテルで、熱が冷めるまで一緒に抱き合おうぜ!お互いの愛にエンジンがかかるまで・・・」

 

 本当にルカを愛しているとは思えない、性的に寄った発言にルカもアキハも憤慨する。そういう色恋にみだらに堕落させられた仲間を思い出し、この銃の怪人だけは絶対に倒さねばならないと、二人の心がより強くシンクロした。

 

 (こいつ・・・サン・アンフェールみたいな事ばかり!)

 「僕も今同じ事を思ったよ・・・こいつだけは今ここで倒そう!」

 

 ルカの力強い姿勢と発言、そして銃の怪人の一つ足りとも同情出来ない提案に、もう一人の女性もルカの横に立った。

 

 「・・・私も同じ気持ちになったよ。こんな奴は早く打払うべきだ」

 

 レイナも修道服をボロボロにしながらも、破邪の剣を両手に構えている。

 

 ゲヘナミレニアムと戦った時、自分の油断が招いた結果とは言え、貞操を失った時の憤りをレイナも思い出してしまった。あんな極悪で気持ちの悪い記憶を思い出した結果、共に戦う友であるルカに、あんな惨めな気持ちになる経験をさせる訳には行かない。

 

 そして・・・レイナの姉妹同然の家族も、下衆な大人達によってその身体を弄ばれた。

 

 なんとしても彼女を・・・月島ルカを守りたい。レイナはそう思うのと同時に、また一つ退魔師としても、退魔警察としても誓いを立てた気分だった。

 

 「私は・・・君の様に、そしてナルミ()にも、二度と屈辱を味合わせない為に戦う事を選んでいるんだ。本当に人を愛する事を知らない下衆に、我々の意を示そう・・・」

 「はいっ!あいつだけは絶対にここで!」

 

 『倒す!』

 

 もう女性が悪の手によって泣かない様に、悲しみで涙を流さないように、レイナとルカは全力で銃の怪人に挑む。

 

 「ギャーハッハッハ!かかってこいよ!敗けたらお前ら、全裸で詫びさせるぞ!」

 

 銃の怪人の失礼なモノ言いは、これ以上無い侮辱。

 

 所詮怪人なんてこんな存在だ。

 

 「知っているか、この世界において最高に魅力のある怪人は・・・」

 

 レイナが破邪の剣にさらなる退魔の力を流し込む。霊力を飲み込んだその剣は、レイナの手を守るレイピアの様な形状へと変わり、さらにリーチが伸びている。

 

 「進化の怪人・・・だけだ!」

 

 レイナのその言葉・・・ある怪人の名前を聴くと、銃の怪人の目元はピクつく。彼もまた自分の上位に立つであろう怪人の名前を出されて、怒りが見え隠れしている。

 

 破邪の領域の更に上、邪を打払う剣から魔を打払う剣へとその姿を変える。

 

 破魔の剣。退魔師として、退魔警察として彼女の信念に揺るがな一本の剣を構える。

 

 ルカもアキハと心を深く通わせて、月の盾を十字架の形に伸ばしていく。強く硬く、全てを守れる様に強くなったその盾は、ルカの決意を表している。月食の色になった十字架と満月の盾を構える事で、ルカとレイナに戦闘態勢が戻った。

 

 それを合図として銃の怪人へ二人同時に駆け出す。

 

 ヘルブラッククロスによる悪事で、これ以上女性が苦しまない様にする為に、正義の志を持った二人の戦士が、大技を決めにかかる。

 

 銃の怪人が二人に向かって、全ての銃口を向け猛攻撃の合図となる体制を取る。

 

 「怪人銃術!ヘル・トランプル!」

 

 赤黒いエネルギー弾を錐揉み回転させて撃ち出すと、ルカが十字盾を回転させながら真上から叩き落とす。

 

 アスファルトと同時に砕けたエネルギー弾が弾け、それと同時にレイナも破魔の剣を突き刺す様にして構え、エネルギー弾を貫いて突破する。

 

 火花が散り住宅街に炎が舞い上がるも、レイナは気にせずに突撃を続ける。

 

 「こっ・・・の!」

 

 レイナの眉間を狙った銃口と、銃の怪人の心臓を狙ったレイナの破魔の剣。

 

 「レッドムーン!」

 

 月食の大盾を持ち上げたルカが紅く輝く満月の盾を銃の怪人に向け、レイナよりも早く突進をぶちかました。

 

 「嫁のクセに、夫の邪魔するな!」

 「僕はお前なんかの・・・お嫁さんにはならないっ!」

 

 レッドムーン・アストラルパイク。中心に尖った攻撃用の装飾を、回転させた盾そのモノで銃の怪人の背後から打ち上げる。

 

 先端に乗せたある刃部分が銃の怪人の背中の装甲と肉、骨をえぐりながら胴体を持ち上げる。

 

 「流石だ、ムーン・パラディース!」

 

 飛び出したレイナが、ルカへと感謝の言葉を述べる。

 

 「破魔の──!」

 「やめろ!ここで死んだら、夢の新婚生活がぁぁ!」

 

 命乞いにも等しい言葉を完全に無視して、レイナは破魔の剣を銃の怪人の心臓へと突き立てる。

 

 「螺旋滅剣!」

 

 ドリルの様に心臓に突きこまれた破魔の剣は、問答無用でヘルブラッククロスという悪の組織に造られた怪人を、今朝とは違い確実に仕留める為の一撃となり、銃の怪人は断末魔を上げる事も無く、力なくルカの盾から滑り落ちた。

 

 戦いが終わってここに残るのは静寂。炎や、ブロック塀の破壊後や、砕けたアスファルトはそのままに、急いでここから離れないと行けない。

 

 「終わったかな?」

 

 イロが顔色を悪くしながら、レイナとルカの所へと姿を表す。出血もあったためか、かなり顔色が悪い。

 

 「急いで私の住む教会に行きましょう。月島君、手を貸してくれ」

 「はい・・・もちろんです」

 

 こうして退魔警察、ムーン・パラディース、公安警察は南度固化市へと逃走する事に成功した。

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 戦いが終わり静寂だけが残る通路で、銃の怪人は静かに瞳を開く。

 

 映るのは蒼白い月。自分が恋い焦がれた月。

 

 「・・・くっふっふっふ・・・まだ、終わらんよ・・・」

 

 地面に付いている背中に、誰かに押し上げられる気がした。

 

 血は止まらず、装甲も砕けて、背骨に至っては空間でも空いたのか、ぺこぺこと浮いている気がする。

 

 だが・・・。

 

 「・・・ギャーハッハッハ!!!!」

 

 痛みとは甘美なモノで、この交戦においては自分は覚醒したとさえ思う。

 

 夜空に高く笑うと銃の怪人がムーン・パラディースの向かった場所へと、ゆっくりと歩みを始めた。

 

 「あいつ・・・ルカって言ったな・・・いい名前だなぁ」

 

 その名前を毎晩耳元で囁いてあげたくなる、そんな美しい名前。

 

 血湧き肉が踊る。高揚と興奮を持って、銃の怪人は月島ルカを全力で手に入れると決めた。

 

 彼女を幸せに出来るのは自分しか居ないと、勝手に決めつけて・・・。

 

 まだ・・・悪の進撃は止まらない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 公安局20階。

 

 特別監禁室で待機を命じられた藤原は、下の階が騒がしいのをなんとなく不安に思っていた。

 

 何の騒がしさかは知らないが、尋常じゃない悲鳴と・・・何か気持ちよさそうな叫びがたくさん聞こえてきた。

 

 おじさんを抜きにしてなにやら楽しそうな事と思うのと、恐ろしい感覚が腹の中に貯まる感覚。

 

 「中年にはきびしーぜーこう言うの」

 

 おっかなびっくりしていても、結局この部屋からは出られないのだ。ならば何が起きていても、自分は知らぬ存ぜぬをしておけば良いのだ。

 

 これからどうなるのか。半日以上ここに居たせいで、性欲が溜まってしょうがない。セクハラを働いて解消できなければ、藤原はニュー藤原になってしまう事だろう。

 

 「・・・なれたらいいけどね」

 

 おじさんの声は弱々しい。何が迫って来ていても、今ならば容易に降伏しそうなぐらいには弱々しい。

 

 退屈なのだからしょうがないだろうが、藤原は極めて危険な状態にある事をまだ知らない。

 

 「無いとは思うけど、怪人とかがこの公安局に攻め込んできて、おじさんを殺しに来たり・・・カカカカカ!」

 

 汚らしい笑い声をあげて、そんな妄想はありえないと、今藤原が寝そべるソファに足を乗せる。

 

 「あー退屈だ・・・若い女のお尻、触りてぇ」

 

 具体的には甘白ミドリコとかの、ハリのあるお尻。スラックス素材のスカート越しからでも堪能できる、あのお尻を・・・。

 

 「あー無理だ!寝れん!おじさん、お酒でも開けちゃおっかな!」

 

 ソファから勢い良く飛び上がり、台所に積んであるワインラックへと向かう。革靴を鳴らして入る台所はとても日本の常識的にはありえない優越感と、常識外れな感覚にわずかに心が踊る。

 

 「グラスグラス・・・」

 

 水を飲むのに使用したグラスを取りにリビングに戻ると、玄関に位置する電子ロックの扉が音を立てて開くのを聞き取れた。

 

 「・・・」

 

 インターホンも鳴らずに、電子ロックの扉が開いた事を怪しいと即座に判断した藤原は、ワイングラスを逆さまに握ると、廊下に続く扉の前で待機する。

 

 この数分の大騒ぎに、なんの許可の無い玄関の解錠・・・きっと何かが起きている。

 

 コツ、コツ、コツ・・・と誰かが侵入して来た。足音から察するに土足である事は間違いないだろう。

 

 「・・・誰だぁ?」

 

 リビングの扉の向こう側、つまり廊下の方は明かりを付けていない。暗い通路の奥には誰かの人影がうっすら確認出来る。

 

 声を潜め、息を潜め、身を潜める。絶対に不意打ちを決めてここから脱出しよう。

 

 その際顔を見られず、確実に両腕両足をしばりつけて、もし女なら少しセクハラしてからこの部屋を出よう。

 

 リビングの扉が金属の小さな音を鳴らして、ゆっくりと開かれていく。手首が見えたタイミングで、ワイン瓶を頭上に構えた藤原が、攻撃を開始する。

 

 もちろん頭に当てるつもりは無く、顔の手前に留めるフェイント。それを起点にして片方の空いている手で、侵入者の手首を掴む。

 

 そのまま力任せに後方に引っ張ると、侵入者をリビングに倒す事に成功する。

 

 そしてワイン瓶による二度目のフェイントで、顔を狙って振り下ろすが、銃声と同時に手元のワイン瓶が破壊される。

 

 飛び散った赤いアルコールが、藤原の顔にかかってしまう。

 

 (まずい!銃持ってるのか、相手はどんな奴か、見てねぇ!)

 

 ワインがついた顔をジャケットで拭おうと腕を動かしたが、すぐに腕を拘束されてしまう。

 

 硬い鉄製のリング、手錠によって両腕を拘束されてしまい、そのままリビングに転がされる。

 

 「くっそ!痛ぇ!なにすんだ!」

 

 力一杯叫ぶおじさんに、侵入者は同じ様に力一杯叫び返した。

 

 それはどちらかと言うと怒号に近い。

 

 「何するんだーは、こっちのセリフですよ!藤原さん!」

 「な、なんでおじさんの名前を・・・ってアラ?」

 

 ワインが流れ落ち、視界が開けて来るとそこに居たのは・・・。

 

 「小鳥遊さん?」

 「ええ、小鳥遊です。まったく、急に攻撃してきたからびっくりしましたよ・・・ほんとこのおじさんは・・・」

 

 この部屋に侵入して来たのは小鳥遊アキラ。こうも簡単に藤原を拘束出来る女性公安はなかなか居ない。

 

 もっと落ち着いて判断出来ればよかったのだが、藤原は芋虫みたいに身体を動かしながら、アキラにすり寄る。

 

 「よかった、退屈でおじさん死にそうだったんだ。ここから出して?早く、お願い・・・もう我慢できないの・・・」

 「気持ち悪いです。あと酒が感染りますので、近寄らないでください」

 「酒は感染らねーやい!」

 

 言い合いをしながらも、手錠を外してもらった藤原は、手首を抑えながら痛みと拘束から開放される。

 

 するとアキラは藤原に没収していたスマホを渡す。

 

 「これ、お返しします」

 「おう・・・ありがとさん。それにしても、どうして小鳥遊さんがここに?」

 

 藤原がワインの香りをばらまくジャケットを脱ぎながら、アキラに聞いてみる。何故このタイミングでアキラが来たのか、藤原にはそれが解らない。

 

 スマホを返された時点で、自分は釈放なのだろうが・・・。

 

 「・・・この公安局が襲撃されました」

 「イッ!?マジで!?」

 「はい、本当です・・・相手の数は、たった一人・・・いえ、一人だったと伝えるのが正しいでしょうか」

 

 この公安局をたった一人で襲撃した存在。ここ最近の藤原の生活感でモノを言うのであれば、間違いなく相手は怪人だろう。

 

 ヘルブラッククロスがここを襲撃して来たのだ。その事実を知った途端に藤原がイヤな顔をし始めた。

 

 思い返せば6月・・・あの佐久間ギンジというグラサン坊主を助ける為に、半ば無理やり参加させられた戦いにおいて、藤原はタコの怪人と交戦し、ボッコボコにされた。

 

 あれは一対一とは言え、一方的な戦いになっていた事を思い出す。

 

 そして前回とは違い今回はたった一人で・・・。

 

 「相手は・・・まさかとは思うけど」

 「ええ。怪人です。それも非常に恐ろしく、その・・・」

 

 アキラはあの怪人の能力について口籠ってしまう。ここにたどり着くまでに、何度かは見てしまった人間の悲惨な末路。

 

 あの怪人の出す液体に触れただけで、神経を操られる様な恍惚な表情、そして自分自身も感じた事のある・・・あの絶頂に浸された感情。

 

 少々羨ましいとさえ思ってしまう様な、あの凄惨でとても気持ちがよさそうな空間、空気に、アキラはどうしても女性として目をそらす事が出来なくなるような、上手く説明出来ない不気味なのに嬉しくなってしまいそう感情を抱いてしまっている。

 

 「その怪人ってのは・・・今どこに居るんだ?」

 

 藤原がスマホの電源を点けながら聴くと、アキラは人差し指を下に降ろし、フローリングに指を向けた。

 

 それが暗に示しているのは、この公安局の下に居ると言うこと。

 

 そしてここから一番下・・・つまり1階へと逃げるには、どうしても途中のエレベーターを使うしか無くなる。

 

 「怪人は今何をしてるんだ?」

 「・・・これもまた驚きの連続ですが、もう2名違う怪人が来ています。名を雪の怪人、暴力の怪人」

 

 アキラがざっくりと救援に来た2名の怪人について報告すると、藤原もざっくりとミドリコに聴いた事のある話だなぁ、と頭をぼんやり動かす。

 

 「それで、私が来たのは・・・貴方を逃がすためです。貴方が、あの怪人・・・女王ナメクジの怪人に狙われているからです!」

 「なんだその名前・・・いやでも女王様か・・・ふへへ、悪くないね。女王様に狙われる・・・」

 「貴方個人ではなく、貴方の命の方ですよ」

 「前・言・撤・回!殺されてたまるか!」

 

 こうして藤原と合流したアキラは、特別監禁室から慎重に部屋を出る事にした。

 

 どうしておじさんの命が狙われているのか、それは解らないがとにかくどういう訳か藤原は女王ナメクジの怪人に命を狙われている。

 

 見た事の無い怪人に命を差し出すわけにも行かない為、藤原とアキラは急ぎこの公安局からの逃走を試みる事で話がまとまった。

 

 「そう言えば、側近の奴はどうしたんだ?」

 

 アキラの側近・・・石川の事を思い出して、アキラの顔に陰りが出来る。悔しそうに唇を噛んで藤原をにらみつけるが、優秀なあの部下はおそらくもう戻って来ない。

 

 「・・・あー今のでだいたいわかったよ。もう何も聞かん」

 「そうしてください」

 

 二人して下層に向かう傍ら、公安局のあちこちから激しい激突音が何度も響き続けている。おそらく救援に来たという雪と暴力の怪人が、女王ナメクジの怪人とが交戦しているのだろう。

 

 自分の命も大切だが、今はこの建物が崩れないか心配になってくる。

 

 「こっちです!はやく行きましょう!」

 

 アキラの叫びに反応して藤原はエレベーターに乗り込む。先ずは10階に降りてから、さらにもう一つのエレベーターに乗り込まないと行けないのだが・・・。

 

 降りてすぐには、藤原でも鼻を曲げる程のむせ返る生臭さが、この狭い通路に漂っていた。

 

 「なんだこのにおひ・・・」

 「・・・嫌な匂いだ」

 

 心底嫌悪感を出すアキラは、まっすぐ下層に降りれるもう一つのエレベーターへと突き進む。

 

 粘液に浸された通路を進みながら、身体をバラバラにされた警官や、藤原の見知った顔が並んでおり、それを眼に入れるだけで一気に恐怖が背中に回ってくる。

 

 ここは地獄。

 

 そう思えてしまう地獄絵図。

 

 「女王ナメクジの怪人っていうのは、元々一人だったんだろ?さっきチラッと聴いたけど、一人【だった】って言うのはなんなんだ?」

 「・・・その粘液に触れると、あの怪人によって操られる事になる。詳しくは解らないが、とにかく人形みたいになるし・・・見た目はゾンビみたいになるな」

 「へぇ、この精子みたいのが・・・ゾンビにね。まるでB級映画だ」

 

 ほんの少しふざけて見るが、アキラからは返事がない。

 

 (やつはどこに居るんだ・・・)

 

 今のアキラには藤原の逃がすというのもあるが、それよりも女王ナメクジを探して部下の無念の為に一矢報いてやろうと思っている。

 

 アキラがオフィスの前まで走ると、動きを止める。そのオフィスは部屋名を見ると、喫煙所と書かれたプレートがセットされていた。

 

 (!)

 

 アキラの脳内には電球が点灯した様な閃きが出てくる。

 

 あの固形粘液には、消化器の液体を吹きかける事によって、乾かし固まらせる事が出来る。

 

 その事を忘れずしっかりと覚えていたアキラは、消化器を喫煙所から取り出してくる。

 

 「そんなの何に使うんだよ」

 

 藤原が怪不思議そうな表情で尋ねると、アキラは不敵に微笑む。

 

 「これで・・・あの怪人に一矢報いてやるんですよ」

 「オイオイ逃げるんじゃねーのかよ・・・まぁでも」

 

 藤原がここに来るまでの間に見た顔なじみや、女性公安が倒れているのを見て拳を握る。

 

 ただ逃げるのではそれでは敗けを認めた様な気がしてしまう。

 

 仇討ちまでは行かなくとも、アキラの言いたい事、仕返ししたい事を理解した藤原は、もう一つ喫煙所の灰皿の埋め込まれたテーブルの裏に手を突っ込む。

 

 ガコンッ!と強いアルミの音を鳴らすと、そこから出てきたのは緊急事用の小さな消化器。

 

 「おじさんも手伝ってやるよ、小鳥遊さんよ」

 「お願いします。必ず、奴を・・・」

 

 ただの人間である以上、彼女に出来るのはこれだけだろう。だが、この消化器の噴射で確実に何か妨害は出来るはずだ。そう信じて藤原とアキラの二人は、決死の覚悟を持って下層へのエレベーターへと向かうのであった。

 

 尤も、藤原からすればこのまま戦いを避けられるのであれば、それに越したことはないのだが。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 女王ナメクジの怪人の攻撃はすべてあの固形の粘液だけ。白く濁っていてプルプルしている、触り心地の良さそうな液体をこちらに飛ばしてくるだけ。

 

 一個だけ攻撃的な能力なのが、♡の形をしている巨大なキャノン砲。あれだけは暴力の怪人も雪の怪人も、本能で避けるぐらいの選択肢しか出来ない。

 

 当たれば確実に致命傷を与えてきそうなあの攻撃に、二人して打つ手が無くなる状況を簡単に作られてしまう。

 

 「はーはー・・・どうする?」

 

 暴力の怪人が自販機を影にして隠れつつ、後ろに隠れる雪の怪人に尋ねる。

 

 「どうするも・・・困ったわね」

 

 暴走が停止した暴力の怪人と雪の怪人は、再び女王ナメクジの怪人と交戦していたが、あの粘液のせいでまともな攻撃が出来なくなってしまっていた。

 

 触れれば怪人であれ神経に到達し、毒を流し込まれる。

 

 そういう意味合いでは防御にも使えて、ナメクジ分隊による飛びつき攻撃も油断が出来ない。

 

 だがオーク怪人に言われた通り、ここで怪人が暴れているのであれば倒さねばならない。

 

 これ以上人間との共存が遠のく事を避けたい暴力の怪人は、鞭を取り出して自爆覚悟で攻撃する事も考えたが、雪の怪人がそれを制止させたのだ。

 

 そもそも氷結の力があればそれで液体を凍らせる事が出来る。

 

 凍りつかせて、動けなくなった所を暴力の怪人が叩く、この戦法で戦っていたのだが、それを嫌がった女王ナメクジの怪人が粘液防御をしながら、距離を置くと言う戦法に変わったのだ。

 

 うかつに近寄れず、攻撃をしかける度に逃げられるので、こちらは疲弊するばかりだ。

 

 「どうやって近づこうか?」

 「人間を囮にするのはごめんよ。使えないし、逆にこっちが不利になるわ」

 「あいつの人間を操れる様にする能力も厄介だよな」

 

 二人してこそこそと話す姿を、一匹のナメクジが発見する。

 

 それを見た雪の怪人が優しく吐息を吹きかけると、ナメクジが凍りついて壁から剥がれ落ちて行く。

 

 しかしそうする事で連絡が取れなくなったナメクジ同士のネットワークにほころびが出来るのか、次第に次々とナメクジ分隊が救援に来た怪人二人を取り囲んでくる。

 

 こうなれば逃げるしかない。一刻も早く本体を探して撃破すべきだ。

 

 「邪魔よ!」

 

 黒い扇子から冷気を放出して、すぐにナメクジ分隊を凍結させる。そのナメクジ達の上を滑る様にして、暴力の怪人が先に出るが・・・。

 

 「げげっ!」

 「アハッ♡こっちから来てあげたわよ♡」

 

 その凍りついたナメクジの道、暴力の怪人が滑る正面には、固形粘液の波を作りながら、両腕から大波を仰ぐ様にした女王ナメクジの怪人の姿があった。

 

 「粘液海将(タイダルローション)♡」

 「わー!こっち来るなぁぁぁ・・・あぷっ♡」

 

 女王ナメクジの怪人の身体と正面からぶつかり、暴力の怪人の顔が大きな胸に挟み込まれてしまう。

 

 「もう逃げられないわよ♡はい、天国イキ確定〜♡」

 「むごああああ!」

 

 優しくヌルヌルの全身に抱きしめられると、暖かさとヌルつき具合が重なってしまい心地よさが暴力の怪人の全身に巻き上がる。

 

 怪人として女性を抱きしめるよりも、遥かに次元の違う心地よさに、暴力の怪人の心が溶けて行きそうになる。

 

 「その唐変木(暴力の怪人)から離れなさい!」

 

 粘液の大波と共に突撃を果たす女王ナメクジの怪人に、雪の怪人が大雪と氷柱を召喚させると、いよいよ公安局が大自然と快楽の大いなるぶつかり合いが始まった。

 

 しかしながら寒さに弱い女王ナメクジの怪人は、固形粘液で防御すると、大雪と氷柱は飲み込まれては粘液の熱に溶かされていく。

 

 数秒で内側から凍りついていくのだが、こうなると女王ナメクジの怪人は距離を置くだけの時間稼ぎに成功する。

 

 「はーい暴力ちゃんの廃人完成〜♡あーかわいい♡」

 「あばば・・・♡」

 

 快楽に打ちひしがれた顔をしながら、暴力の怪人はにゅるりと女王ナメクジの怪人の身体からずり落ちて、足元でピクピクと痙攣している。

 

 「そ・れ・じゃ・あの娘、とっ捕まえて来て♡」

 「あー♡うー♡」

 

 暴力の怪人がピクピクと全身を痙攣させながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

 「そんな・・・暴力の!」

 

 雪の怪人も暴力の怪人が捕まってしまった事で、戦意が少し削がれてしまう。

 

 あーうー唸りながら佇むその姿は、間違いなくゾンビそのモノだ。

 

 「やった♡怪人を言うこと聴かすの初めてだから、成功できて嬉しい♡ご褒美あげるからぁ♡雪ちゃんをめちゃくちゃにしてあげなさい♡」

 

 妖艶な笑みを耳たぶを唇で挟み込みながら命令すると、暴力の怪人が鞭を取り出す。

 

 「はい♡かしこまりました♡」

 

 すぐに取り出したのは調教用の鞭。四角く細長い鞭を取りだした暴力の怪人がすぐに攻撃行動を開始する。

 

 「裏切り者の一撃(モードレットスパンク)

 

 攻撃を仕掛けたのは雪の怪人にではなく、女王ナメクジの怪人にであった。容赦の無い完璧な不意打ちによって、女王ナメクジの怪人は苦悶の表情を見せながら、公安局の壁に叩きつけられる。

 

 「なんっで・・・♡」

 「暴力の・・・!」

 

 暴力の怪人が固形粘液を拭い払うと、もう一つの鞭を取り出す。

 

 「お前の様な未完成品(・・・・)の怪人の能力なんて、オレら欠陥品(・・・)の怪人に通用するわけねぇだろうが!」

 「だ、騙したな!」

 「初めて焦った顔が見れたわ・・・」

 

 暴力の怪人が鞭を構え、雪の怪人も黒い扇子に雪の結晶を乗せて構えている。

 

 正義を信じ、正義の為に戦う怪人二人が、女王ナメクジの怪人に今度こそ手痛い一撃を与える。

 

 「自信過剰の一撃(ベイリンスパンク)!」

 「強雪練舞(きょうせつれんぶ)!」

 

 逃げ場の無くなった女王ナメクジの怪人に、文字通り暴力となる攻撃と、雪の結晶が輝く怪人連携攻撃が、女王ナメクジの怪人の全身に降り注いだ。

 

 身体は凍てつき、そこから実体に届く猛烈な暴力が、華奢で綺麗な身体を傷つけていく。

 

 「がっ・・・あああっ!!」

 

 粘液による防御が取れなくなり、身体を凍てつかせられては、身体から粘液の放出も出来なくなる。

 

 そうなれば最早この怪人二人には勝てなくなっている。

 

 「クッソオオオオ!!お前らだけは、絶対に許さないからなぁあ」

 

 ぶちキレて居ても綺麗で美しい顔と身体を引きずるようにして、飛んで逃げる女王ナメクジの怪人。

 

 追いかけようとした暴力の怪人の前の前には、粘液の波に隠れていたナメクジ分隊が飛び出して妨害に入ってくるが・・・。

 

 「見つけた!」

 「おじさんも加勢するぜ!」

 

 暴力の怪人と雪の怪人がナメクジ達に攻撃をしかける瞬間、先程逃した人間が消化器を持ってナメクジ達を乾かして行く。

 

 噴射された液体はどうやら、ナメクジ達にはかなり猛毒な様で、すぐに道を開けてしぼんでいく。

 

 「くっ・・・あれはフジワラ・・・ああ、ああああクソクソクソ!」

 

 女王ナメクジの怪人が、藤原を発見するや否や、美女には似つかわしくない、クソという単語を連発して心底悔しそうにしながら、粘液溜まりに逃げ込む。

 

 「覚えてろ!必ず、我々ヘルブラッククロスが、ヘヴンホワイティネスをも凌駕し、柏木様や総統が望む世界を創ってやるからな!お前たちにはその世界には連れてってやらないからっ」

 

 女王ナメクジの怪人が粘液溜まりから飛び出して、後ろを振り向きながら走り続けるが、何か壁にぶつかる。

 

 それは壁ではなく人。人間。

 

 スーツを粘液だらけにし、全身で女王ナメクジの怪人を塞いでいる様に見えた。

 

 「た・・・か、なし、さん」

 

 顔は泡立つ粘液によって見えないが、その大男は何かを発言していた。

 

 「どけ!どきなさいってぇ!」

 「よくやった!本当に、よくやった!」

 

 先程雪の怪人が助けた人間、アキラが消化器のホースを女王ナメクジの怪人の頭部めがけて噴射する。

 

 この大男は、間違いなくアキラの側近・石川ヒロキである事を、ひと目見て理解したアキラは、最大の想いを吐き出しすかの如く、思い切り噴射し続ける。

 

 「石川の・・・公安局の仇だぁ!」

 

 勢い良く噴射された消化器が、女王ナメクジの怪人を今度こそ捉えて、全身が乾いていく。

 

 「ついでにおじさんも・・・モミモミ・・・よいしょぉ!」

 

 一瞬藤原が女王ナメクジの怪人にセクハラを働いた後、消化器で頭をぶん殴った。乾いて動きが鈍い女王ナメクジの怪人には、これだけでも大ダメージになっている。

 

 「くっ・・・もはやこれまで、か・・・」

 

 身体にヒビが入り、女王ナメクジの怪人は自爆しようと、最後の能力・・・サキュバスの怪人のフェーズ2の能力を開放しようとしたが、寸前で雪の怪人が吐息を吹くと、女王ナメクジの怪人の身体が凍結していく。

 

 完璧に氷のオブジェそのモノとなった雪の怪人が、氷の中で意識を失った。

 

 「・・・っ」

 

 女王ナメクジの怪人の粘液によって、限界を迎えた石川という大男は、その場に倒れてしまう。

 

 「いいのか?」

 

 藤原がアキラに尋ねるが、アキラは首を横に振るだけだ。今更こうなってしまった石川を助けようにも、あの粘液に触れれば自分もあの快楽の【仲間入り】を果たしてしまう。

 

 「そういえば、この怪人・・・柏木の事を呟いていたわね」

 

 雪の怪人が女王ナメクジの怪人の遺言じみた発言を思い出し、アキラと藤原は血相を変える。

 

 柏木というのは、この公安局の公安警察が知らない人は居ない程の有名人であり、成績も検挙率もトップに居る男の事だ。

 

 「・・・繋がっちまったな」

 

 藤原が顎ヒゲを触りながら、以前の凍結騒ぎの時に柏木タツヤが居ない事と、今回の怪人の襲撃においても柏木タツヤが居ない事、そしてこの怪人が柏木タツヤとヘルブラッククロス、ヘヴンホワイティネスを知っている事・・・それはつまり・・・。

 

 「信じられない事だが、柏木は・・・ヘルブラッククロスと内通していた、という事になりますね」

 「え?あの大幹部って公安警察と内通していたんじゃないの?」

 

 アキラの推理に暴力の怪人が訝しむ表情を作る。

 

 「どういうことですか?」

 「ああ、ほら・・・柏木大幹部って、オレ達が居た組織においてはそこそこ地位のある奴でさ・・・元々ヘルブラッククロス側であって、公安警察は・・・こう、世を偲ぶ姿?みたいな?」

 

 藤原とアキラも二人して顎を抑える。どうも柏木タツヤ居つからかは不明だが、この公安局を裏切っていたようだ。

 

 そんな事を10年前からタツヤの事を知っている藤原とアキラは、信じられないと言った表情をしている。

 

 同じ公安警察として凌ぎを削り、班が変わっても、妻が死んだ時も仲良くしていた藤原にとってはかなり信じがたい状況になっている。

 

 「・・・こいつぁ、深く調べる必要があるな」

 

 藤原の目は正義と真実の為に燃やす、警察の瞳をしていた。

 

 最近はそこまで面識はなくても、また飲みに行こうとしていたぐらいの仲だったのだ。

 

 必ず真実を突き止めて、柏木タツヤを逮捕しないと行けない。

 

 「小鳥遊さん、おじさん、ちょっと明日から本庁言ってくるわ。あんたの緊急許可があれば動きやすいんだけど・・・」

 「・・・いいでしょう、許可しておきます」

 

 藤原が珍しく真面目に敬礼すると、アキラも同じく敬礼する。

 

 アレが人間同士の挨拶なのだと見て理解した暴力の怪人は、見様見真似で雪の怪人に敬礼してみる。

 

 「・・・私はしないわよ。なんか泣いちゃいそうだから」

 「そんな事で無くなよ・・・」

 

 雪の怪人が扇子をしまうと、アキラと藤原に近寄ってくる。

 

 「おじさまとそこのお嬢さんはこの後どうするのかしら」

 「とりあえず、第4のオフィスに戻る」

 

 まだ粘液の残る道を危なっかしく見通しながら、藤原は消化器を担ぎ直す。

 

 「どうしてまた?」

 

 アキラと雪の怪人が、二人して藤原を見つめる。

 

 「・・・嫁の写真、置きっぱなしだからよ、取り戻しておきてぇ」

 

 そう言うと藤原は10階から下に降りれるエレベーターへと向かって行った。

 

 アキラと暴力の怪人と雪の怪人もそれに続く形で、下へと降りていくのであった。

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。 

 

 (あー・・・♡このまま砕いてれば、完全に勝てたのにねぇ♡)

 

 氷漬けにされた女王ナメクジの怪人が、氷の中で歪な笑みを見せる。相変わらず能力は使えないが・・・。

 

 (おいでぇん♡私のコ・ド・モ・達♡)

 

 氷の柱になった女王ナメクジの怪人の周りには、様々な粘液から大量に熱を運んできたナメクジ分隊。

 

 元々の高い体温と、熱々の粘液を持ってすればこれぐらいの氷ならば、数分で溶かし切れる事だろう。

 

 今はとにかく逃げねば。その上でドクターパープルに任務失敗の報告と、妨害してきた怪人について報告しないと行けない。

 

 資料でしか見たことしかなかったが、元怪人四天王の雪の怪人も居た事・・・いずれ確実に仕返しをしてやろう。

 

 そう考えながらこの解凍を開始し、女王ナメクジの怪人は次なる報復の為の準備に入ろうとしていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 繁華街エリア・クアッドタワー前・・・。

 

 ドクターの怪人は月に向かって、満足気に仰いでいた。 

 

 その左手は真っ赤に燃える手。

 

 その左手には・・・。オーク怪人の軍服。

 

 首根っこを掴まれる様にしたオーク怪人は力無く、ドクターの怪人に引きずられている。

 

 先程の交戦の開始から、たった数分でオーク怪人が敗けたのだ。

 

 「・・・ぶひゅう・・・まがい、者め・・・」

 

 血反吐を垂れ流すその顔で、オーク怪人はドクターの怪人に悪態を突いてみるが、ドクターの怪人は何も気にしていない。

 

 「パパ、ママ・・・全部俺が導いてあげるからね」

 

 ドクターの怪人がまるでミヤコの様に瞳に奈落の様な暗さを宿し、まるでギンジの様に力強く笑みを浮かべている。

 

 「くっふふふ・・・ああ、楽しみだ」

 

 薄気味悪い笑い方はそのままに、ドクターの怪人はキラーエリートとして初めての戦果を上げた。

 

 「・・・貴様じゃ・・・無理だ」

 「まーだ言ってるよ。この雑魚怪人が」

 

 ドクターの怪人がオーク怪人の言葉を聴く度に、自分に勝てなかった奴が一体何を言っているのだろうかと、そんな気分になる。

 

 繁華街エリアにて、オーク怪人がごみ捨て場に投げ捨てられると、なんとしてもこの怪人を止めないと、とその手を伸ばすも腕が上がらない。

 

 「・・・待、て・・・ぇ」

 

 振るえる身体で追いかけようとするも、今度は足に力が入らない。

 

 「・・・」

 

 その視線からドクターの怪人が見えなくなるまで、オーク怪人は瞳を閉じる事なく、小さく低く、誰にも聞こえない声でドクターの怪人へ制止の声を出し続けたが、最後までそれが届く事はなかった。

 

 8月25日、23時58分。

 

 ギンジ達が魔法界に飛び立ち、早くも日付が変わろうとしていた瞬間だった。

 

 

続く 

 

 

 

 




お疲れ様です。

個人的には女王ナメクジの怪人気に入っているので、もっと生きててええんやで?

キャラネタ書きます

熊沢レイナ
世の中の女性の味方。
破邪→破魔→破悪の三段階あり、破悪の免許取得には落ちた。

月島ルカ
世の中の女性の味方。
かつて仲間がひどい目にあったのを、直接目の前で見ている為、銃の怪人の発言には許せないモノを感じた。独自に研鑽した力で、初登場時よりもレベルアップはしている。

天体アキハ
趣味はルカと自分が悪の組織にひどい目にあう小説を書くことだが、最近はお○スタ→の○スタのコンボ。世○樹リマスターについて奮起している。

銃の怪人
ムーン・パラディースを生前の人間時代で好きだった為か、ルカのことを忘れて居ない模様。結婚してめちゃくちゃにしてやりたいらしい
メガ○ン3リマスターに奮起していた過去あり

女王ナメクジの怪人
藤原抹殺が失敗した事と、暴力の怪人のだまし討ちに憤慨した。焦ると妖艶な喋り方を忘れるタイプ。
ペル○ナリマスターにわっしょいしている。

小鳥遊アキラ
独身ではあるが彼氏は居た事はある。いずれも殉職している為に、もう恋人は作らないとの事。スルメイカが好き。
バ○ックの完全移植版に歓喜。ゲームやりそうにない?意外とやるんですよ

藤原
柏木タツヤとはそこそこ仲が良かった模様。今回ヘルブラッククロスとの繋がりがあった事に動揺を隠しきれないでいる。
嫁さんの写真を大切にしている。

オーク怪人
なんか敗けてた。その真相はまた別のお話で。次回の出番は無い。

ドクターの怪人
なんかオーク怪人をボコった。自分の存在について何か気づいたらしく、行動を開始する。
好きなゲームは対魔○ア○ギ

・・・

さてリマスターのゲームがたくさん来ていて、嬉しい限りですぞぉ
いや違うねん

次回は8月26日開始!まだまだ続くキラーエリート編!ミヤコの出番もあるぞよ!
なるべく早く投稿出来る様に頑張るぞよ!
それではまた次回!
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