正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはブヒ。アトラクションブヒ。

今回のお話ではなんとまともに戦闘がありません。

久しぶり(多分ほとんどの人が忘れているキャラ)いナルミも再登場します。ナルミって誰だっけ?ってなった方は、是非退魔教会編を呼んでみてください(宣伝)

それではどうぞブヒ


72・キラーエリート・5

 8月26日。

 

 刺激的な1日を過ごしたセクハラおじさんはついにニュー藤原へと姿を進化させ、警察組織の中枢・度固化警察本部へと足を踏み入れていた。

 

 調べる事、知らなければいけない事、そして・・・。

 

 「柏木・・・」

 

 入れ違う人々を横目に、藤原は同僚の名字を静かに呟いた。

 

 時刻は朝10時を回る頃──。

 

 本庁と呼ばれるこの警察本部は、公安、機動隊、派出所勤務、警察の卵達がたくさん出入りを繰り返し、この度固化市全体で勤務することになる警察という職業に就く者達は、全員ここに通う事になる。

 

 そこから派遣先を決められ、出世をすれば刑事になり、公安警察として働いたり・・・。

 

 皆様々な理由があって警察にはなるが、この本庁で働く事を夢見る者も多い事だろう。20数年前の藤原も、第一希望としてはここで働く事を夢見ていた時期もあった。

 

 公安警察に配属・・・いや、正式名称は・・・。

 

 警視庁公安部・組織犯罪対策科第1班へと配属されるまでは・・・。

 

 「小鳥遊参事官の緊急捜査依頼ですね。では、こちらへ」

 

 受付の可愛い女性から案内される。いつもの藤原ならば鼻の下を伸ばして、セクハラを働こうといかがわしい妄想を行うだろう。

 

 だが今は違う。

 

 今は・・・かつての同僚であった柏木タツヤ巡査長の情報、とにかく集めないと行けない。

 

 案内されてたどり着いたのは、全国で警察官として働いている個人のデータベースを照会出来るデータルーム。

 

 参事官という恐ろしい地位に立つアキラだからこそ、ここに入る許可を得られたのだ。

 

 「さて・・・時間は無限にあるぜ。尻尾掴んでやるからな」

 

 藤原・・・否、今はニュー藤原。

 

 具体的に変わったのは、ヤクザみたいな赤いジャケットでは無く、黒を基調としたちゃんとしたスーツなのだが。

 

 「ズィーフーのスーツジャケットは安くていいね」

 

 革靴もそのアパレルブランドで仕入れた新品である。

 

 「さてと」

 

 おじさんはプラネタリウムにも似た、巨大な天板を見上げる。

 

 ここで得られる情報はなんでも見つけないと行けない。

 

 柏木タツヤの情報を得て、そして必ずヘルブラッククロスとの繋がりを確定的な証拠として持ち帰る。

 

 (持ち帰ってどうするんだ・・・?)

 

 一瞬自分の行動に答えが見いだせなくなる。

 

 だけど、それでも。

 

 藤原は自分が警察として、悪事を見逃さない様にしたい。その気持ちを取り戻したのだ。

 

 そしてその気持ちの裏には、どうしても甘白ミドリコの顔がチラついてしまっている。

 

 真面目な彼女に感化されたのかもしれない。

 

 「おじさんの底力、見せてやろうか・・・!」

 

 気合を入れてスーツごと袖をまくると、藤原はデータベースに侵入を開始した。

 

 手に触れるだけで水面が揺れる様なモニターは、どこまでも冷たくどこまでも深く、そして知りたい個人の情報をいつまでも収納をしている、電子の海。

 

 おじさんの覚悟を持って、タツヤの情報を持ち帰る事は出来るのだろうか・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 聖カエルム教会の朝は穏やかで居て騒がしい。

 

 かつてギンジ達とここで食事をした時も、子どもたちの騒がしさがあった。

 

 食卓を囲む大聖堂では、食物へのお祈りを神へ捧げると同時に、捧げ終えると食事を楽しみにしている子供達が、一斉に食事へと手を伸ばす。

 

 皆今か今かと空腹を抑えており、元気一杯に食事を取っている。

 

 もちろんここで住むレイナも27年間の人生でほぼかかした事の無い行事であり、彼女もここでの朝食を楽しみにしている。

 

 この教会の教皇を努めていた五天に変わり、その地位を付いだ若きシスターである磯上ミツキは、子どもたちの笑顔と喧騒を心より神に捧げていた。

 

 「すごい・・・元気だな・・・」

 

 そんな数え切れない子供達の笑顔と、大盛況な食卓の隅では月島ルカが客人として迎えられているが、ど真ん中で食事をする気にはなれないとの事で、ここで食事をしている。

 

 ルカの隣では同じく客人扱いとなる、山吹イロも同じ様に食事を始めていた。

 

 「本日はゆっくりしていってください。神もそう仰られております」

 

 痩せた身体に、埃ひとつ無い黒い修道服に身を包んだミツキが、ルカとレイナに飲み物を運んでくる。

 

 透き通った美しい声は、それこそ天使の声に親しいモノを感じる。

 

 それと同時に、幽霊とほぼ同じ存在であるアキハは召されかかっていた。

 

 (・・・ここ、死にそうだわ。気を抜くとアタシ、消えるかも)

 「滅多な事を言わないでくれ。レイナさんも大丈夫だと言っていただろう?僕が寂しくなるからどこにも行かないでくれ」

 

 ルカとアキハの会話は、傍から見れば一人で会話している様にしか見えない。それを何度か見ているイロはルカという存在に宿る、もう一つの心に会ってみたいとも思っていた。

 

 「ところで、レイナさんはどちらに?」

 

 ルカがミツキというシスターに声をかけてみる。朝起きてからと言うモノの、熊澤レイナの姿が見えていないのだ。

 

 「はい。レイナはただいま本業の為に仕事に向かったようです。神がそう仰られております」

 「そ、そうなのか。ありがとうございます。後で連絡してみます」

 

 銀のスプーンを持ちながらルカがお礼を言うと、ミツキは女神像に再びお祈りを捧げる。

 

 「おお、神よ。この不貞なる私めに、お礼の言葉が届きました。これも神へのお祈りを毎日告げたからなのですね。おお、神よ」

 

 少し変わった人だが、レイナが一番安心してこの教会を任せられる、最高責任者であると伝えられ、ルカもイロもミツキという存在に助けられた様な雰囲気だ。

 

 「ところで・・・」

 

 ミツキが目線をルカに向ける。整った顔立ちと、本当に神を信じている彼女の姿勢はとても良く、ルカは思わず息を飲んだ。

 

 「困った事がありましたらすぐに呼んでくださいね。共に平和を護る者として、ご活躍には期待しておりますよ、ムーン・パラディース」

 

 まだ名乗って居ないのに、彼女はルカの正体を知っている様子だった。

 

 「我々もこの街を守ろうと日々奔走を続けています。何か困った事があれば、我々退魔教会にいつでもご連絡を。神を信じる者同士、この世界で生きるのであれば皆家族ですから・・・!神もそう仰られております」

 

 ミツキの熱の入った言葉に、意気込みは伝わったルカとイロは、喜んでその言葉を受け入れる。

 

 そんな談笑しながら食事をする彼女達の下に、もう一人近づいてくる者が居た。

 

 年齢的には10代後半に見える、身体の形が出来上がりつつある少女。しかし顔は上半分を黒いバイザーで隠している、銀色の修道服を身に着けた少女。

 

 無口で何も喋らず、しかし穏やかな雰囲気を持っている彼女は、ルカとイロではなく、アキハと心で会話をしているのか、どこか繋がりを持っている様子。

 

 口角が少しだけ上がった少女は、ルカの隣に座ると食事を開始する。

 

 静かに丁寧な仕草で食事をする少女は、ただひたすら無言である。

 

 「ご紹介が遅れましたね。彼女の名は如月ナルミ。詳しい事は省きますが、あのレイナの姉妹です」

 「ああ、そうなのね?はじめまして、山吹イロです?」

 「・・・」

 

 軽い会釈を済ませると、ナルミと呼ばれた少女は食事を続ける。

 

 「申し訳ありません。彼女は神を信じていたのに、不幸にもお慈悲に恵まれなかった子でして・・・もう言葉を発する事が出来なくなってしまいまして・・・」

 

 ナルミが喋れなくなった原因を知っているミツキは、詳しい事は喋らない。しかしそれでもルカとイロは彼女と仲良くしようと、共に食事を続ける。

 

 「レイナがきっといつの日か、ナルミの心を取り戻す事が出来れば・・・」

 

 磯上ミツキは退魔師ではないが、退魔教会に所属するシスターである。かつてはこのカエルム教会でレイナ、ナルミと共に食事をし、共に暮らしていた姉妹同然である。

 

 ソレ故に教皇となって本部からここに戻った時、ナルミがこうなった経緯を聴いたミツキは、レイナと共に五天が許せなくなった。

 

 神は報復をしては行けないと言っていても、この憤りは人として正常なモノである。それを神に反してでも、いずれは五天をこの手で葬りたい、そう思える怒りがきっちり残っている。

 

 「さて、お食事が終わったらゆっくりしていってください。後の事はここの孤児達で・・・」

 「いや、僕達も手伝いますよ。磯上さん」

 「そうね?洗濯でも食器洗いでもなんでもやるよ?」

 

 ルカとイロが笑みを乗せて言うと、ミツキは少しだけ驚いたが、すぐに笑顔に戻す。

 

 「ふふ、ではお願いいたしますね。150人分の洗濯と、食器洗いはとても大変ですよ」

 「任せてください!」

 

 ルカが元気よくその返事を返すと、ミツキは再び驚く。

 

 一方、ナルミとアキハは何を会話しているのかと言うと・・・。

 

 【(アキハさん、レイナはギンジが大好きでね、うんたらかんたら)

 (うーむ、それはなかなか厳しい条件ね。実はルカも多分ギンジの事を好いていて・・・)】

 

 お互いに恩義がある関係上、戦いにはならないとしても、ルカの恋を、レイナの恋を応援する彼女達の心の中で熱く、甘い話が何度も展開され、食事が終わる頃には、ナルミとアキハはズッ友にまでなっていた。

 

 なにせナルミはもう喋りたくても喋れない。まともな会話をしたのだって久しぶりなのだ。

 

 友達が出来て嬉しくなるのは当然の事だろう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 まだまだ真夏の厳しさが続く中、レイナは警察組織の中枢・本庁へと足を運んでいた。

 

 目的はもちろんミドリコの逮捕状の取り消しだ。

 

 本来ならば上司であり、事情を色々知っている山吹イロを連れて来るのが正しい判断だろう。

 

 しかし腕を斬られて安静にしていないと行けない。いくらサクラの魔法で治療されているとは言っても、本当に安静にしているのが良いと、レイナは判断した。

 

 ここで逮捕状取り消しの為の有意義なカードを一枚失っているが、友でもあり仲間でもあるミドリコを助ける為に、レイナは自分の出来る全力を以て逮捕状の取り消しにかかる。

 

 もうその話をつける所まで来ていた。

 

 「甘白巡査についての情報ですね。現在逮捕状が発行されておりますが・・・」

 

 受付の女性が神妙な面持ちでレイナの顔を見る。

 

 「ええ、逮捕の為に必要な情報を洗っておきたい。そのために私がここに来たのです」

 「了解いたしました。ではこちらへ。ただし公安警察所属では無い方へ提供出来る情報は限られておりますので、あまり深入りはしない事をここに契約していただきます」

 

 ただの刑事と公安警察では、立場が違う事から調べられる事は少ないと受付は言い放つ。レイナはそんな事は100も承知と言った態度で、とにかく情報を洗いたいのだ。

 

 逮捕する為ではなく、逮捕状を取り消す為に。

 

 「ではこちらへ。先客が居ますので会話等はしない様にお願いします」

 

 受付に案内されたのは電子の海と呼ばれるデータベース。全国で働く警察の情報を照合する事の出来るデータルームなのだが・・・。

 

 「ん?」

 「え?」

 

 先客とはレイナの大分予想外のおじさんが出てきた。

 

 「・・・どうしてここに居るんですか」

 「あーいや・・・ははは」

 

 乾いた笑いをしたのは藤原。

 

 「久しぶりだなー熊沢!」

 「ごまかさないでください。どうしてここに居るんですか!」

 

 6年前、かつて東度固化市の警察訓練校時代い、拳銃の扱い方を教えてくれたかつての教官であった藤原が、レイナと再開をした。

 

 久しぶりだと言うのに、レイナが覚えているのはひたすらお尻を触られた事だけ。

 

 どうしてこの男がここに居るのだろうか。またセクハラを働かれる前に、ここで抹殺しておきたい。

 

 「いやーちょっと色々あってな・・・」

 

 ヒゲを剃り、黒いスーツになっている藤原の・・・ニュー藤原の表情はどこか陰りが見える。物憂つげな目つきと何かを決意した男の顔をしている。

 

 「・・・何かあったのですか?」

 「・・・いやここでは喋れないな。今、時間いいか?」

 「私の調べモノの為にここに来たのです・・・あまり時間はありませんが・・・何のお話ですか?」

 

 いつもの藤原とは違う表情をしており、レイナにはそれが少し気になっている。

 

 「・・・俺の部下に逮捕状が出されてよ・・・その事について刑事さんとお話がしたいんだが、どうだい?」

 「!!」

 

 藤原というセクハラ教官の話に、今レイナが走る内容と同じモノを感じ取り、二人はデータベースから少し離れた喫煙所へと向かう事になった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 中央度固化市の公安局は、現在閉鎖状態にある。

 

 原因は昨日ヘルブラッククロスの怪人による襲撃が入ったからだ。

 

 その事を包み隠さず話した藤原の話しに、レイナは険しい表情で話しを聴いていく。

 

 「襲われたのは私達やギンジだけじゃなかったのか・・・?」

 「ん?あのグラサン坊主の事知ってるのか?」

 「・・・まぁ一応」

 

 レイナには刑事以外にももう一つ職業がある。それは退魔師。

 

 世に蔓延る人には太刀打ちできない悪を払う、魔を退ける者。

 

 おそらくだがこの藤原はヘルブラッククロスの事は知っているだろうが、ミドリコの事情の事は知らない筈。なので当面自分の事情については話さないつもりで居た。

 

 「まっさかさー・・・甘白っていう、うちの部下が居るんだけどさ、そいつがなんでか逮捕状出されちまってよ・・・」

 「ぶほっ」

 

 タバコを気怠く吸いながら話す藤原に、レイナは手にしていた栄養ドリンクを吹き出した。まさかこのセクハラおじさんの部下がミドリコだったとは・・・。

 

 「そんでさーあいつ、ヘヴンホワイティネスっていうのやってるんよ。自称正義の味方ね。もうびっくりだよおじさん。なんだってこの街で戦ってきていた甘白ちゃんが逮捕状出されちまうかなぁ・・・」

 「・・・」

 

 これはもう話すべきだろうか。レイナの戦う理由と事情を。

 

 話そうと意を決した瞬間藤原が再び口を開き、レイナの発言を遮られてしまう。

 

 「ヘルブラッククロスもヘヴンホワイティネスも、どっちもどっちだろあんなん・・・守りたいモノの為に頑張るのは結構な事だがよ、おじさんみたいに熱を出しすぎて、何か大切なモン失ってからじゃ遅いんだぜ」

 

 自分の人生経験上での言葉を出すが、藤原はハッとした表情で元に戻す。自分の経験が全て他人と同じでは限らないのに、決めつけがましい事を口走ってしまった。

 

 そもそもミドリコの逮捕状を取り消し、そこに繋がる原因になった柏木タツヤの情報を洗いに来ているのは、その熱があるからなのだから、今のは失言だったと藤原は頭を描く。

 

 「いえ、でも言いたい事は分かります・・・私も実は甘白さんの逮捕状を取り消しに来たんですよ」

 「マジでか。こりゃーいい情報仲間になりそうだね」

 「そうですね。でも触らないでください。変態が感染ります」

 

 隙きあらばお尻を触ろうとする藤原に、レイナが厳しく咎める事で藤原はタバコを灰皿に投げ入れる。

 

 綺麗に入ると藤原はベンチから立ち上がり、レイナに詰め寄る。

 

 間近で見ればヒゲの剃り残しが見える顎が目に入り、レイナは怪訝な表情と嫌悪感が同時に出てくる。

 

 「なんでお前は甘白の逮捕状の事を知っているんだ?それと、ヘルブラッククロスの事も知っているみたいだが」

 

 先程のちょけた感じは一切なくなり、藤原の貫禄ある言葉にレイナは息を飲みそうになる。

 

 「・・・ッ」

 「普通の警察なら知っている名前でも、あの中身を【知っている】反応を見せたのは間違いじゃなかったか?」

 

 それに付け加えてギンジの名前を出したのも失敗だったかもしれない。公安警察としての情報心理を利用したやりかたを身にしみた所で、藤原はレイナから離れる。

 

 「なーんてな!ビビった?」

 「・・・?」

 

 にこやかなセクハラおじさんの表情に戻り、藤原が脅かしに対してせせら笑う。

 

 「ヘルブラッククロスやヘヴンホワイティネスを知っていても不思議じゃねぇだろうな。何せ、あのグラサン坊主の事を知ってるんだ。神宮のガキの事も、宮寺っていうガキの事も知ってるんだろ?」

 「・・・意外とやり手なんですね、藤原さん」

 「カッカッカ!これでも公安警察なんでな!」

 

 ここまで離せば次はレイナの番だ。本筋はミドリコの所ではない、藤原が何を調べていたか、だ。

 

 「・・・藤原さんは、どうしてここに?ここで何をしていたのですか?」

 

 レイナの質問を聞き入れると、藤原は二本目のタバコに火をつける。

 

 「・・・ヘルブラッククロスっていうのには、それぞれ階級があるみたいでな、ほら警察でいう巡査、警部補とかさ」

 

 煙を吐き出して藤原は話を続ける。

 

 「上に行けば行くほど実行権限とかある・・・ってのはおじさんの妄想だけど、実際あんな怪人とか兵器を造る奴らだ、何かしらあんだろ」

 「・・・」

 「でな、おじさんの調べでは、っていうか昨日発覚した事だが、おじさん達中央の公安局に、ヘルブラッククロスと内通している太ぇ輩がいるんだわ。名前を柏木タツヤ。名前ぐらい聴いた事あんだろ?」

 

 柏木タツヤ・・・その名前を聴いてレイナは過去何度か度固化市の警察組合において表彰されているその人物を思い出す。

 

 真面目で警察官の鏡とまで言われているあの男だ。

 

 しかしあまり記憶に無いので今は流す事にする。

 

 「そいつがもう10年以上ヘルブラッククロスと内通している事が、なんとなくだけど繋がっちまった」

 

 藤原がデータベースで吸い上げた情報をこまめに思い出して行く。

 

 2012年、柏木タツヤ25歳。

 

 ・中央度固化市で勢力を拡大しつつある組織を追いかける為に公安警察に転勤。

 

 2013年

 

 ・山吹イロに捜査の腕を買われ、組織犯罪対策科第一班に所属開始。

 

 同年、ヘルブラッククロスの動きの一つ、略奪任務というモノと衝突。

 

 同年、公安内発砲事件のおり、藤原と共に一人の死者を出しながらも犯人逮捕に尽力した。

 

 「この事件は・・・まぁいずれ細かく話す機会があれば、おじさんが話すぜ・・・」

 

 2014年

 

 ・山吹イロと共にその情報を細かく探している。同年、検挙率全国1位となり表彰。

 

 2015年

 

 ・事あるごとに巨大な犯罪組織を撲滅、そのツテで武器を所持を公安内で行い、改造したり合法の下武器の販売を行っていた。

 

 「おじさんとしてはこの2015年が怪しいと見ているぜ。13年、14年にはきっとヘルブラッククロスと本格的に繋がりを持ったと睨んでる。詳しい事はやっぱりわからんけど、あいつが武器を作り始めたり弾丸の安く仕入れている所とかも、今になってみればかなり・・・」

 

 藤原が深く考えながら自分の調べた内容をレイナに伝えて行く。

 

 2016年

 

 ・公安警察として相変わらず検挙率は全国個人でトップ。

 

 同年、格闘術も強くなり全国警察官特殊警棒術総合ランキングでは2位(1位は小鳥遊アキラ)

 

 2017年

 

 ・単独行動が増えたが、やはり公安警察。動向を捉える事が難しくなってきた。

 

 それでも出勤時は武器の改造や特殊な弾丸を作成。  

   

 2018年

 

 以下、2021年まで同上。

 

 2022年

 

 無断欠勤が増えた。

 

 8月26日、甘白ミドリコが組織犯罪への加入をしたと判断し、緊急で逮捕状を出した。

 

 その後の消息は不明。

 

 「ここまでがおじさんの記憶した内容だ。何か質問はあるか?」

 

 藤原がここまで話すのは、レイナを信用しての事だろう。ミドリコの逮捕状を出したのは柏木タツヤであり、おそらくそれはヘルブラッククロスに取ってヘヴンホワイティネスが目の上のたんこぶ状態だから。

 

 更に言えばヘヴンホワイティネスのメンバーとして名前も顔も割れているのが甘白ミドリコだけだからだろう。

 

 組織犯罪の撲滅を謳っておきながら、本当はヘヴンホワイティネスを壊滅に追い込む事が目的・・・。

 

 「とても有力な情報提供、ありがとうございます。私としても出来る事がたくさん増えた気がしますし、それに何よりも・・・」

 

 レイナが藤原を真面目に見つめる。

 

 「ちゃんと警察として動いているのを久しぶりに見た気がしますよ、藤原さん」

 

 いつもがセクハラばかりの印象しか無く、拳銃の教官時代の方が記憶に新しいのだが、レイナは藤原を尊敬自体はしている様だった。

 

 「さて、私もそろそろ情報を探さないと・・・」

 

 この数時間後に、レイナは甘白ミドリコの逮捕状の取り消しを達成し、変わりに柏木タツヤを逆に逮捕すると言う手配までやってこなした。

 

 ヘルブラッククロスを壊滅する戦いの為に、レイナはもう一つ決意する。

 

 まだ自分の戦いは完全に終わっていない、ならばギンジの為にもう一回戦わないと行けない。

 

 そうしなければ本当の意味での平和が帰って来ないと、そう確信したからだ。

 

 警察だけでは太刀打ち出来ないこの戦いに、特殊能力を持ったレイナの決意と覚悟は、これからの戦いに赴く彼女をより強くした。

 

 「ところでおじさん帰る場所ないの・・・今日だけは熊沢の家に泊めてくんない?いや本当何もしないから」

 「いいですよ」

 「マジ!???!!!?」

 「はい。その代わり、100を超える子供達の相手をしてくださいね」

 

 レイナと藤原が当初の目的を終えた事で、二人は真夏の昼間から夕方に変わろうとする美しい空の下を歩いていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 水滴の落ちる音がした。

 

 その音が鳴る事で、音が幾重にも連なって反響していく。やがて音が遠くまで通って、聞こえなくなるとまた一つの水滴が落ちてくる。

 

 一度に落ちるのは一つだけではなく、何個かが同時に落ちる時もある。

 

 「く・・・ふふ、ふ」

 

 シルバーのシンクにお湯を一杯溜めた、お風呂の様な箱には小さな少女が湯船みたいに寝かされ、頭だけは外に、ソレ以外は全て肩から下は暖かく気持ち良い温度のお湯に入れられていた。

 

 黒みがかったセーラー服はそのままに、折られた指もそのままに、痛みが無いようにその身体を湯船に入れられていた。

 

 「はーいドクター♡お湯加減かいっかが〜♡」

 

 すりガラスの向こう側で、妖艶なシルエットを覗かせる女性。

 

 昨晩何者かに敗北をしてアジトに戻ってきたようだが、能力をタツヤに買われてここに居る彼女は、ミヤコの入る湯船にひたすら粘液を流し込んでいた。

 

 管を通してぶりゅぶりゅと出てくる粘液は、神経毒。固形の粘液がミヤコのお腹に乗っかると、でろんでろんの粘液がお湯に混ざり合いながらミヤコの身体をピリピリと焼いていく感覚が残っていく。

 

 しかしながら精神力が強いのか、ミヤコは全身に走るむず痒い感覚と、恍惚になりそうな感覚2つを残しながらも、気丈に振る舞っている。

 

 「くっふ・・・♡こ、んなの、別に、なんでもないね」

 「強がっちゃってまー♡常人ならとっくに起きてこれない量を投与しているのに・・・♡もしかして気持ちよくない♡?」

 

 湯船の中で身体がピクリと反応してしまう。溶けきらない固形の粘液が脚の間をぬるりとすり抜けるだけで、気をやってしまいそうになる。

 

 背中に張り付いた髪の毛が粘液と共にうなじに擦れるだけで、声を上げそうになる。

 

 でもどんな事をされても泣かないし声も出さない。

 

 どれだけ辛くても、こんな事で陵辱されたと認めてしまえば、ギンジに合わせる顔が無くなってしまいそうで悔しいからだ。

 

 「ドクターミヤコ陵辱プロジェクト♡流石柏木様は考える事が秀逸ですわ♡おら、いい加減気持ち良いって認めろ♡メロン泥棒♡」

 「〜〜ッ♡おこと、わりぃい・・・!」

 

 ズルリと胸の周りに粘液が回る。くすぐったい感じと、今感じてしまった悔しさが両方押し寄せてくる。

 

 ミヤコはいうなれば半分怪人であり、半分人間。粘液の効果が出やすいのにも納得が行ってしまう。

 

 「わたしは、ギンジ君としか・・・気持ちよくないから、くふふ、ざ、残念でした・・・っは、ハァ・・・」

 

 またギンジという男の名前が出て来た。

 

 「ふーん♡それじゃあ、ギンジ君とやらがここに来たら、折れてくれるのかしら♡」

 

 すりガラス越しの怪人は、ミヤコを煽る様に言葉を放つ。

 

 「無理だね・・・ギンジ君は、君なんかより1億%強いから」

 

 しかし予想外の答えばかりを返すミヤコに、すりガラスの向こう側から悔しさがにじみ出ている。 

 

 「楽しみねぇ♡その子、ドクターミヤコの想い人なんでしょぉ♡」

 

 すりガラス越しの怪人、女王ナメクジの怪人がイタズラな笑みを浮かべているのが、見えていなくてもミヤコには解ってしまった。

 

 「私がその子を捕まえて♡目の前で快楽に溺れさせてあげる♡」

 「フゥン?無理だと思うよ?」

 「どうして♡男なんて皆・・・」

 

 女王ナメクジの怪人に最後まで言わさせずに、ミヤコは更に煽り返す様な口調で言葉を投げた。

 

 「わたしの造った最強の怪人だから・・・パープルの雑魚が生んだ君みたいな品性の無い怪人じゃぁ、絶対に・・・無理ぃぃい♡」

 

 鎖骨に粘液が浸されると気持ちよくなってしまう。

 

 全部ギンジに触ってもらえた事の無い所で、そこには悔しさが色濃く出てきたしまったような恐怖感も混ざっていた。

 

 そんな情けない声を出しながらも、ミヤコは身体に降り注ぐ未知の快感に必死に抵抗している。

 

 「どうせ勝つのは柏木様よ♡そこでせいぜいよがってなさい・・・」

 「くふふ、ふふ・・・勝つのはギンジ君だけ。ソレ以外の勝利はありえないので・・・くふふ」

 

 最後の最後までムカつく返ししかしてこないミヤコに、女王ナメクジの怪人はソレ以上何も言わない。

 

 そこから姿を消してミヤコは本当の意味で一人になる。

 

 強気に振る舞っては見たモノの、なんとかして拘束を解いて粘液風呂から出ないと本当にどうにかなってしまいそうだ。ギンジ君の事しか考えられなくなって、暴走でもしてしまうのでは無いかと思ってしまう。

 

 「くふふふ・・・紫、良い怪人を造ったね」

 

 あんな怪人は男性にしか造れないだろう。

 

 かつての部下の容赦の無い怪人に、ミヤコは感激さえしていた。

 

 ミヤコが襲いくる快感に身悶えしながらも、この浴槽の中でまた一つ水滴が落ちた。

 

 身体に張り付いたセーラー服がまた気持ち悪い。

 

 でもこれも全ては後で確実にギンジに救出して貰ったら、数百倍の気持ちよさに変わるのだろう。

 

 そうなる事を期待しながら、ミヤコは並々ならぬ精神力で、この粘液風呂による地獄を耐えて見せるのであった。

 

 (待ってるよ、ギンジ君。必ず来てくれるって信じてるよ。あと大好きだよ・・・本当に好き、大好き、だいすき、だいすき・・・)

 

 そう念じていればなんとなく快楽が和らいで行く様な気がして、ミヤコはギンジ愛に溢れた瞑想を繰り返すのであった。

 

 

続く

 

 

 




おつかれ様です。

どうしよう、こんなにキラーエリート編引っ張るつもりなかったから、あとがきに書くことないぞ、どうしよう!

アトラクションはパスタが好きです(苦し紛れ)

あ、一個まともなモノがあった

警察関連の単語や組織情報等があったりしますが、この作品はフィクションです。決して本物の警察と同じに見ないでください。
また本物とこの作品の警察情報関連はたまたま同じモノがあっても繋がりや関係性は一切ありません。

よし!これで良いじゃろう!

キャラネタ書きます
 
ニュー藤原さん
黒いスーツに変わったセクハラおじさん。ヒゲの剃り残しがある。
奥さんはセクハラで堕とした。
本名?いつか出る
神宮カエデの父親、ソウジロウとは同級生。顔なじみ程度ではあるが、カエデの事を神宮のガキ呼ばわりである。カエデ本人の前ではそれを隠している。

熊沢レイナ
警察の拳銃訓練での教官であった藤原との再開には驚いた。
ちゃんと警察している藤原は尊敬出来るが、セクハラばかり働いているおじさんは死刑。

山吹イロ
イロって変換した後○○色のって入力したい時、イロのせいで邪魔になる。ご退場願おうか!
・・・え?その予定は無い?最終話まで生き残る・・・?はい・・・

月島ルカ
子供っていいなぁ・・・でも僕は結婚出来るかわからないしなぁ・・・
いや、ギンジとは結婚しない・・・ぞ・・・

如月ナルミ
詳しい詳細は退魔教会編キャラネタで。
今現在命令権がレイナにある為、今も退魔師として活動自体は出来ている。

磯上ミツキ
神への信仰を絶対としているシスターであり、カエルム教会の教皇。
退魔師では無いが、退魔教会の裏方で働いている。
生涯独身。愛を伝える立場であり、自分には神への信仰だけで良いというストイックな信者。それとは別に宗教団体は大嫌い。前ダイナマイトを投げ込んでお縄に付いた事もある。それでいいのか教皇・・・

鈴村ミヤコ
ギンジ君大好き。本当に愛してる。きっと次顔を見たら好きが爆発して押し倒す。え?貞操?ギンジ君との不貞?働いてないよ???寝込みは襲ってるけど寝てるだけだし・・・?
現在粘液風呂で追い詰められている。

女王ナメクジの怪人
出ました変態快楽至上主義!!
語尾に♡をつけるキャラ。
現在26日。魔法界編最後のキャラネタにおいて、28日を過ぎても生きているので、キラーエリート編で唯一死なないキラーエリート。

そもそも銃、超性欲、ドクターの怪人は死ぬのか・・・?

・・・

次回はレイナvs超性欲の怪人、勃発!
一方カエルム教会では、銃の怪人が再び現れ・・・!
な回です。オーク怪人の敗北の真相はもう少しまってね。

それではまた次回!

運営に怒られないか心配になるぜ、女王ナメクジの怪人さんよぉ!
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