ようやく70話突破記念の番外編が出来ました!
実はあみだくじを造れるアプリで、誰が主役になるかなーなんてやってたらトン・コッツが選ばれたので、彼とクリムパスを主役にした番外編を作りました。
どうして二人が交際する事になったのか、っていう話しになっています。まぁその理由はどうしようも無いんですけどね!!!!
それではどうぞ!
白レンガで象られた四角い部屋が並ぶ大きな一室。そこには金の装飾が施されたベッドがあり、壁には剣を立て掛け、その隣には小さな盾。
更には打ち身台という、人の胴体に似たトルソーも置いてあり、一言で言えば物騒な雰囲気。
しかしながらクローゼットと、ベッド、そして小さな鏡の置かれた机を見ればそこは寝室だと言うのがひと目で解る場所になっている。
高級な羽毛をふんだんに使った温かい布団とその大きさは、一人の大人が入って丁度良い広さ大きさをしているモノだった。
そんなベッドの上で、紫色の髪を汗で、身体を様々なモノで塗らしつつも、身体を布団で巻いて隠す様にして顔だけを出している女性の姿。
一人で限界とも言える大きさのベッドには、その女性と違いもう一人の姿が肩から先を出して、女性の顔を見つめている。
ギチギチに詰め込んだ様な狭さを感じるが、そのベッドの上で二人の男女がほぼ身体を密着させて居た。脚を絡ませて、お互いが離れない様に・・・。
女性の名前はクリムパス。魔法界オレキエッテ帝国序列1の魔法剣士であり、今この寝室にて淫れていた人である。
対する男の方は、豚っぽい鼻が目立つがそれでも人間という顔の形をした大柄な男、トン・コッツ。
魔法界・オレキエッテ帝国の地水火風の司祭の一人であり、魔女ジェノべに毎日コキ使われている元野盗である。
クリムパスのとろんとした顔を見て、トンの満足気な顔を見て、二人動じに顔を近づける。
むちゅ、むちゅ・・・とわざとらしく音を鳴らして、キスをする。
愛情と信愛と、言い表せない全てが混ざりあったキスをして、二人の耳元にいやらしい水音が這う様に聞こえてくる。
「ん・・・すごかった・・・」
「ブッヒッヒ・・・可愛かったぞ」
長く、重く、しかし短く、軽く、そんなキスを終えて二人が再び見つめ合いながら、そんな言葉を交わし合う。
今日はお互いの仕事が終わるなり、クリムパスの寝室に集合し、濃密で狂おしい程、身体を重ねて愛し合っていた。それこそ誰の声も届かず、誰にも邪魔されない様にして・・・。
布団の中で二人が手をつなぐ。指を絡ませて、クリムパスの親指の根本が、トンの親指を擦る。触れ合う指の感触が、二人の夜の火照りを少しずつ冷ましてくれる。
「・・・痕、残ってしまうな」
クリムパスの首元に、ひと目数えるだけでも4つ以上の鬱血の痕。
鎖骨のやや上、喉の真ん中や首筋等・・・。
「魔法で今治す・・・」
仕事に支障をきたしては行けないと、トンが軽い治癒の魔法を唱えようと、頭を支えていた左手を回すが、クリムパスがその手を右手で止める。
「大丈夫だ・・・その、こういうのがあると・・・なんだ」
言葉に詰まってしまう。柔らかい枕の上に頭を落としながら、眼を逸してしまうクリムパス。
顔が赤くていつもの勇ましさを微塵も感じられないが、その変わり女性らしさというか、トンだけがこの瞬間にしか見られない彼女のもう一つの側面を眺める。
「こういうのがあると・・・?」
「・・・〜〜ウレシイ・・・から、消さないでいい」
どうせ鎧で隠れるのだ。普段の帝国の職務上、アクセサリーを付けても隠れてしまうし、見せびらかしたりする事もしない。が、ネックレスやピアス、イヤリング等のアクセサリーをプレゼントされれば、女性であれば誰でも嬉しい。
しかしクリムパスはそんなプレゼントも、仕事中には汚れてしまうし、訓練をしていれば壊れたり紛失してしまうかも知れないと、トンからせっかく貰ったプレゼントを全て大切に保管しているだけなのだ。
故に・・・首につけられたこの痕が、たまらなく嬉しい。
(だからやたらとキスをせがまれたのか・・・)
トンが今日一日中、クリムパスと二人っきりになる度に、そんな事を囁かれていた。
耳元で囁かれる度に鎧を吹き飛ばしては、今すぐに誰もいない部屋に運びだそうかと思ったが、その時はなんとか理性を働かせて事なきを得たのだが。
そんな事を思い出しているトンの身体に、不意にクリムパスの手が伸びる。
ひたり、とクリムパスの右手がトンの胸板に押し付けられて、撫で回してくる。
「どうかしたのか?」
普段のトンからは想像も出来ない程優しい声で、クリムパスが再び目線を合わしてくる。勇ましさと、可愛らしさと、上手く言葉に出来ないが再び胸の中に熱がこみ上げる様な、熱い感覚がトンの中に再度生まれてくる。
「いや・・・初めての時を思い出して、な・・・」
帝国序列1のクリムパス、魔女のパシリ・・・もとい、地水火風の司祭であるトン・コッツ。
この二人は今から5年前、今の様に仲良く一夜を過ごすキッカケを作る、ある一日の事をトン・コッツは思い出していく。
そう、あれは・・・あの時は忘れもしない、お互いがお互いを好きになった瞬間の話し・・・。
・・・・・・・・・
TIPS
・装備品は、キャラクターに装備させないと意味がないゾ!
・クリムパスは幽霊が苦手だゾ!
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魔法歴7895年、双子の月、45日。
魔法界・オレキエッテ帝国はコンキリエ魔王軍の襲撃もほぼ毎日あるが、数が少ない為現状は城壁や上空の守りを固めるのでなんとか防戦を維持出来ている。
それも地水火風の司祭の防御魔法のおかげだと、民の人々は言う。
もちろん本当はそれだけでは無い。帝国魔法騎士団の尽力もある事を忘れては行けない。
だと言うのに、民衆は見た目が派手な魔法の方に見入り、成果は全て魔女ジェノべ率いる地水火風の司祭だと拍手喝采である。
「私達も頑張っているのだが・・・」
クリムパスが少し悔しそうに、拳に力を込める。ここで「私だって頑張ってるんだぞー!」って怒ってもあまり意味がないし、シシリー帝王が大切にする民に対してそんな事を言うべきではない。
騎士としての本来の使命を忘れては行けない。私怨を交えてはそれこそ騎士どころでは無くなる。
「ンゲーッゲッゲ!今日もコッツ兄妹の大活躍だぜぇ」
下卑た笑いと知性を感じさせない笑い声を上げながら、左右に白く染め上げた髪のど真ん中を立てて、その立てた髪は真っ赤に染めている男が凱旋中の帝国騎士の列にわざとらしくぶつかってくる。
「まったく・・・今日は魔法を使いすぎて疲れているのに、この笑い声を聴くと・・・憤りが・・・」
「奇遇ですね。私もです」
クリムパスの声に同調するようにして、隣を歩くアラビアが憂鬱な顔をする。
あのトリ・コッツという男は、いつも勝利の時にこういった大声でバカ笑いをする。それがとても女性陣には受け入れられてはおらず、当然白い眼で見られている。
「・・・」
巨馬の上で椅子に座るトン・コッツが、寡黙な印象を抱かせる程静かだ。
(・・・あの紫色の髪の騎士・・・名前は確か・・・そうクリムパス・・・あの戦い方や、逃げずに前進する姿、ぜひ褒めたいモノだがどうしたモノか)
トンは見下ろす訳では無いが、少しだけ巨馬の足元を歩く魔法騎士、クリムパスの顔を覗いてみる。
(それにしても最後に城壁を守ったあの土の魔法。素晴らしい練度だった。元々は野盗だが、褒めても良いだろう、うむ)
帝国に泥棒として攻め込んできた時は、容赦なく斬りつけたが、今はシシリーの命令もあり、コッツ兄妹とはそれなりの信頼を置いている。
ただし会うことは無いため、それまでなのだが。
特段忙しくは無いのだ・・・会おうと思えば会えるし、一度会って軽くお話でも・・・そう考えてはいたのだ。
(ブッヒッヒ・・・帝王のねぎらいの言葉が終わったら、声でもかけてみるか)
(帝王からの功労が終わったら、一つ声でもかけてみようか・・・?)
二人して考えていることは一緒であり、二人してこの帝国を護る一人の兵なのだが、お互いにタイミングが合わさる事は少なく、合っても二人が会話する事は無かった。
だから今日、今日こそがその会話をするというチャンスかも知れない。
「・・・今日はジェノべに【予定】を聴いてみようか」
「おい、ギュウ。兵長のアラビアに【予定】を聴いてみろ」
トン・コッツとクリムパス。二人の戦士が、邂逅する日が遂にここに来た。
・・・・・・・・・
TIPS
・クリムパスは前衛向き。魔法も使えるが、バフや味方への援護は出来ないゾ!
鈍色の鎧はオレキエッテ帝国では一番武勇の大きい者だけの装備だゾ!
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今日の魔王軍の襲撃は相変わらず数は少なく、しかし魔王アマトリの野望を成就するべく帝国に眠る霊石を奪い取ろうと、全力を尽くしては居る。
それでもクリムパスを始め、オレキエッテ帝国軍はコンキリエ魔王軍と戦っていた。なんとかして撃破出来ている。
今ならきっと本拠地に突撃しても勝てるのでは無いかと、そう思えてしまう。
「いや・・・それは早計か」
7890年、つまり今より5年前、この帝国で序列1だった騎士が謀反を越して、魔王軍に寝返った事を昨日の事の様に思い出す。
クリムパスが憧れ、共に肩を並べて戦いたいと、この人の為ならば命をも賭け事が出来ると、言うなれば心酔に近かった事まで、いらない事を次々と思い出す。
ナポリタという先輩の事を思い出し、少し頭痛がする。未だ裏切られた傷は癒えていない。
帝王の功労が終わり、それぞれの自由時間を手にした兵士達は各々自由な事をして過ごしに行く。
謁見の間を出て行くと、クリムパスの目の前には漆黒のローブに身を包み、妖艶な長い手袋を装着した銀の髪の魔女、ジェノべが立ちふさがるようにして、ここに現れた。
細い黒曜石の通路に急に現れるのと同時に、薔薇の香りが辺りに広がり、一気に周りの兵士やメイド達がその視線をジェノべとクリムパスへと集中させる。
「何か用かジェノべ」
この現れ方はいつもの通りだ。だから別に驚いたりはしない。
そんな事より、癒えない心の傷とどう立ち向かおうか、それを考えていたので、あまりにもぶっきらぼうな態度を取ってしまった。
「何か用よ。この後暇かしら」
ジェノべはその事を知っているからか、特別な態度で話したりはしない。いつも通りの二人と言った所だ。
「・・・何をするんだい」
「ムフフフ・・・ちょっと来なさい」
「え?」
クスクスと笑うジェノべがクリムパスの腕を掴み、魔法でその姿を消す。薔薇の香りが充満したその通路では、メイド達があの二人は百合なのでは無いかと言う噂が広まりつつあるのであった。
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TIPS
・クリムパスはひいおばあちゃんがエルフ族。つまり血気盛んだゾ!
・魔法界のエルフはどこかの世界に住む怪人級の強さだゾ!
・クリムパスは花粉症。花料理と花屋は好きだゾ!でも一番は・・・
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コッツ兄妹は元々四人兄弟の野盗であり、その日暮らしをする為には他人から何かを奪わないと行きていけなかった。
「兄ちゃーん、次の目的地はどこよ」
鶏冠を目立たせる様な髪色のトリが、長兄であるトンへと地図を手渡しながら、次なる強奪の場所・・・つまり生活費の大元の場所を聴いてみる。
「ブッヒッヒ、次はあのオレキエッテ帝国だ。金銀財宝や、美男美女が集い、食事も美味い場所だと聴いている」
「ウッシッシッシ!美男だと?それはとてモー良い!」
トンの隣では白黒の斑模様で全身をペイントしている、牛を思わせる風体をした大男が、美男というワードだけを切り取って興奮し始める。
彼の名前はギュウ・コッツ。生粋の
もう一人荷馬車の上では、緑色の髪をした少女が、気怠そうにして大空を眺めている。大の字に寝そべり無防備にも思えるその姿は、本当にめんどくさそうにしている姿そのモノである。
「あーめんどくさ。そろそろちゃんとした生活しようよ」
その少女の名前はジン。何もかもをめんどくさそうにしていて、やる気の無さを見て取れるコッツ兄妹の末っ子である。
「ちゃんとした生活とは言っても、おれ達はまともな学は無いのだ。あるのは生きる為に必死に身に着けたこの魔法と、他人から奪う事しか無いのだから、少しは生きる為にやる気を出せ」
トンがジンに注意すると、ジンはため息一つで起き上がる。
「ンゲーッゲッゲ!トンの兄ちゃんも、そろそろ女を見つけないとな」
「・・・こんな学もない、顔も良くない、さらには野盗。こんな男を好いてくれる奴なんて居ないさ」
欲を言えばまともな生活をしたいし、嫁も欲しいが・・・それでも、トン自身恋愛なんて出来るはずが無いと、心の底からそう思い込んでいる。
「行くぞ」
オレキエッテ帝国の城壁が近くなり、コッツ兄妹が次の強盗を開始する為の準備に入る。
目指すは帝国城。そこに眠る様々な財宝を手にし、この魔法界の闇で生きていくべき兄弟の目的が開始された。
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TIPS
・トンは魔法も得意だが、肉弾戦も強いゾ!中距離オールラウンダー。
・トンはクリムパスを愛しているゾ!
・トンはデブだけど脂肪の裏側には魔力と筋肉が一杯だゾ!
・子供は70人ぐらい欲しいらしいゾ!
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帝国城は豪華で守りも厳重。
侵入にはすぐに気づかれたが、スラムで育った彼らの結束力は強く、兵士なんてすぐに撃退していた。
警備兵も別に強くなく、簡単に蹴散らしては突き進み宝物庫を目指す。
余裕。そう思っていたトン達は、ある二人の兵士とぶつかる事で、その考えが覆される事となる。
鈍色の鎧を身にまとい、紫色の髪をした美女、クリムパス。
銀色の長髪と漆黒の衣装が、妖艶さを引き立たせる魔力そのモノの存在、ジェノべ。
「タフなギュウが一撃だと・・・!?」
ジェノべが迎撃として打ち出した魔法は、宝物庫の扉ごとギュウを一撃で戦闘不能にした。
そしてジンも油断していたのか、クリムパスの剣の魔法で一発アウト。
「トリ!あの魔女を頼む!おれは・・・」
「野盗め・・・!」
トンと対峙するのは、クリムパス。彼女は名前だけならばトンも知っている、この帝国の有名人だ。
騎士として強く気高く、勇ましい。
女性らしさと高い気品も感じられ、小顔でキリッとした目つきと表情は、これは人気も出るわけだと、トンは内心理解する。
あとなんと言っても可愛い。そう思える。
だけど今は敵同士、戦わないと行けない。勝つ事が出来ればきっとお持ち帰りも出来るかも知れない。
「せいっ!」
容赦なく振り下ろされた剣と、ジェノべの大魔法が、今度は宝物庫ごとトンとトリを吹き飛ばす。
まるで歯が立たず、一瞬だった。
強烈な魔力の流れを感じ取り、金銀財宝もろとも強盗兄弟は吹き飛ばされ、あえなく帝国の牢獄行きになった。
その後も脱獄を繰り返して行く内に、魔法を覚醒したり強化されたりで、だけどジェノべにボコボコにされながら結局死刑か奴隷かで選ぶ事となり、奴隷の道を進む事になるコッツ兄妹であった。
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TIPS「もうねーよ」
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コッツ兄妹が投獄され、ジェノべの奴隷と生きる事になって数年後、彼らは地道に更生して行き、魔法学や歴史学、戦闘学に果ては教養。
それらを学ばせてもらい、帝王であるシシリーと仲良くなった事で、ジェノべの統括の下、地水火風の司祭として働く事になった。
そんな折、コンキリエ魔王軍の襲撃も始まり、ナポリタの裏切りもあり・・・。
トンが功労の後に、クリムパスを見つけられなかった為、アラビアに直接声をかける事にしていた。
ちなみにギュウは男兵士と遊びに行こうとしているらしく、仕方なく自分がアラビアへと向かうのであった。
「おや地の司祭。何か用か」
アラビアの声は元々野盗であると言う理由からか、非常に刺々しい声をしている。ソレ以上近づけば確実に殺すと言わんばかりに。
「いや・・・なんだ、クリムパス殿はどこに居るかと・・・」
トンがたまたま話しをしたいだけなのだが、そんなトンの顔の横をすり抜ける様に飛んでくるナイフが一本。
石壁に突き刺さったナイフは非常に鋭く静かに、音も無く刺さった具合だ。
「彼女に何か用かね・・・?」
「ああ、いや・・・」
特別な事を話すつもりは無いのだが、ただ素晴らしいと言いたいだけ。それだけなのだが、アラビアはクリムパスの親友であり戦友でもある。
彼女の幸せを願っている友人という立場から、悪い虫が寄りつくのは許せない。
「先程の防衛攻撃、見事だったと伝えたいのだ」
(最近やたらとこの人の話しをするが、クリムパス、この人の何が良いんだ?)
まだそこに恋心は無いのかも知れないが、クリムパスが防衛戦を終える度に、アラビアに話しているトンの功績・・・。
「クリムパスならばおそらく魔女殿と、薔薇の庭園に居るだろうが・・・」
「魔女の所か・・・済まない、ありがとう」
トンが一言お礼を述べると、アラビアに背を向けてその場を後にしようとするが、アラビアがそこへすかさず肩を掴む。
「・・・もしクリムパスにちょっかいをかけるならば、この私が許しはしない」
「肝に命じておく・・・」
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TIPS「だからもう無いって」
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魔女ジェノべが所有する薔薇の庭園。鮮やかな薔薇と、若干の土臭さと、日差しが水を弾いてキラキラとした輝きがより薔薇を際立たせる。
そんな庭園の真ん中、ジェノべの部屋のすぐ近くの庭には、丸いテーブルと香りの良い紅茶。
噴水を眺めながら、薔薇を視界に入れつつ、優雅な一時を過ごせそうな穏やかな場所。
そんな場所で本当に穏やかな表情を見せながら、クリムパスは紅茶を一口、二口と飲んでいる。
しかし穏やかなのは数分だけ。
「鼻がむず痒いのだが・・・」
「ああ、花粉症だモノね」
クリムパスはどんどんくしゃみが抑えられなくなりそうな顔をしており、それを見たジェノべがくすくすと笑う。まるで妹をからかう姉の様な光景だが、花粉症に苦しむクリムパスはたまったモノではない。
「だめだ、出る・・・は、は・・・」
「後ろ向いて」
ジェノべが人差し指をクリムパスに見えない様に動かす。軽い魔術をかけた様だが、くしゃみに気を取られているクリムパスは、そんな事に気づかずに背後を向く。
「当たり前だっくし!」
手を抑える事が一瞬出来ない事に気づいた時にはもう遅く、くしゃみが出るのを抑えられなかった。それどころか女性としてとてもデリカシーの無い、手で抑える事をせず、鼻水が飛んでしまう。
「うー・・・魔法を使ったな・・・」
「いや・・・おれは使っていないが」
クリムパスが目元を抑えながら、手元の布で鼻を拭う。そのまま視界が開けると、地のローブに身を包んだ男が、同じ様に鼻水を拭き取っている。
これはその男のモノではなく、クリムパスによってつけられたモノだ。
「随分可愛らしいくしゃみをするのだな、ブッヒッヒ」
この庭園に現れたのはトン・コッツ。
「あ、済まない。その、汚してしまって・・・」
「大丈夫だ・・・それより、辛いのか?花粉症」
「魔法花は身体に毒だからな・・・かなり。それより、どうしてここに?ジェノべに何か用事かな」
クリムパスとトンが話している間に、ジェノべの姿は消えていた。あとはこの二人に全てを任せようとしている。
そもそもジェノべはトンが抱いている感情が何かを知っていて、こうなる事を仕向けた。
だから後は進むも転ぶも、本人次第である。
恋をしているとは本人達も気づいている訳では無いのだが。
「あーその・・・」
トンが紅茶のポットを開けて中身を飲むと、クリムパスの方を向く。
「先程の防衛戦、とても素晴らしかった。あの剣技もそうだが、勇ましい進軍も・・・」
「何を言う!貴方の土の魔法も、この防衛に一役買っていた!とても素晴らしかった!」
二人してお互いを褒めてると、どこか顔が熱くなるのを感じた。
(元はあんな殺意丸出しの剣を振り回していたのに、何故こうも可憐に見える!?)
(元々帝国を狙った泥棒だったのに、何故なんだ・・・鼓動が止まらない・・・)
ナポリタの時とは違い、違う速度の鼓動に困惑するクリムパス。
「・・・この後時間があるなら、ご飯でもいかがかな」
どうしてこんな事を口走ったのか解らないが、クリムパスが言った事で、トンも無言で頷く。
「あ、ああ。おれで良ければ、行くとしよう」
その後は二人で食事をし、お酒を飲みながら他愛も無い話しをお互い繰り返していく。
互いの立場から来る苦労の話し、シシリー帝王を護る信念の話しや、騎士として護るべきモノの話しをしていき、そのまま夜中まで進んでしまう。
お互いに意気投合し、挙げ句の果ては宿街エリアまで進んでしまいそして・・・。
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TIPS
・TIPSさんは過労死したゾ!過度なストレスには耐えられないんだゾ!
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朝。酒瓶が転がる部屋の中で、ベッドが置いてある。
クリムパスが目を覚ますと、柔らかく、しかし硬い何かが身体の下に横になっている事がわかった。
まだお酒の抜けきっていない頭で、ゆっくりと視界を開きながらソレが何かを理解していく。
(完全に・・・ヤッてしまったーーー!!)
お酒を飲みすぎる事は良くある事なのだが、こういう風に男性と一夜を過ごす事は無かった筈だ。
それほどまでにお酒が進み、何か人恋しさを感じてしまったのだろうか。
トンの身体に体重をかけ無いように、静かに身体を起こす。
「・・・クリムパス殿、起きたか」
「や、やぁおはよう・・・トン殿・・・」
お互い沈黙。気まずい静寂の中で、クリムパスは昨日の自分の発言を思い出していく。何か失礼な事を言ったかも知れない、と。
しかしそんな発言は一切無く、どちらかと言うとトンのほっぺをぷにぷにしていたり、耳をかじったり、キスしていたり「ぬああああ!」
酔っ払うとどうしてこうなるのか。更には、昨日の夜、ここに来てからの記憶もはっきりしてくる。
あの身体に抱きしめられて、分厚い腕、力強い男性の腰、何よりも心が満たされたと思った、あのキス・・・。
全ての男性を過去のモノにした、囁く様な愛情たっぷりの言葉の数々。淫れ合うには十分な程のお酒、お酒、お酒。
ふと鏡を見ると首の左側、肩より上のエラより下の丁度良い所に、鬱血の痕。
「その・・・済まなかった。痕は魔法で消す。それと・・・」
顔色の悪いトンがクリムパスに頭を下げる。
「
「・・・え?」
ひくりと、口角がひきつる。そして鮮明な記憶がどんどん思い出されていく。
『ふぅー!ふぅー!クリムパス、好きだ、全部愛してる!』
『好き!好き!ああ、好きぃぃいいい!!』
そう言い合いながら、淫れ続け咲き乱れ、その後気絶したのだ。
「・・・痕を消すから、動かないでくれ」
「い、いや!大丈夫だ!」
鎧を装備してすぐに部屋を出る支度をする。なんとなくこの痕を消されるのが嫌だと思ってしまったのだ。
「・・・責任、取ってくれ」
「ぶっひ・・・あ、ああ、もちろんだとも」
「痕の事じゃないぞ。私の事だぞ」
「もちろんだとも。おれはもう昔の野盗ではないし、真面目に生きていると自負はしている!」
二人して何を言っているのだろうか。ただの酒の迷い、しかしお互い長い事ぶつけられなかった言葉が、何故か恋愛の一線を超えたのだ。
「か、帰るか」
「ブッヒッヒ、そうしよう」
こうして地の司祭と、帝国序列1の魔法騎士は、お互い何事も無い風を装って城に帰還したのであった。
それから二人が交際を開始したと言うのはまたたく間に知れ渡り、二人はそんな噂話をまんざらでも無い顔をして暮らす事になるのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「トン?」
そんな5年前の事を思い出しながら、トンはクリムパスの声で正気に戻る。
目の前ではクリムパスが、眼を♡にしながらトン・コッツを見つめている。
「ん・・・」
クリムパスが勇ましさを無くして、変わりに美しくキレイな女性として、トンと再び唇を重ねる。
「もう遅いし、今日は寝るか?」
「こんなすごい夜を過ごしたばかりでもう?」
クリムパスの細い腕がトンの首に回ると、布団が剥がれ落ちる。身体を起こして、抱きしめ合う二人の男女は今日何度目か解らない、濃厚で濃密でとても甘くて嬉しいキスをする。
「いつか勇者にも、兄弟にも、子供を見せてやりたいな」
「そう思うなら・・・もう一回・・・ね?」
トン・コッツとクリムパス。
二人の相性は何故か最高で、二人の愛の結晶はもうすぐ完成する事を、本人も魔法界もまだ知らない。
いつかその二人の子供は、勇者赤鬼の伝説を聴いて勇者を目指そうとする事も、この二人は知らない。
それでもきっと・・・美しく輝く未来において、この二人はどこまでも幸せに暮らすのだろう。
番外編〜トン・コッツとクリムパス〜完
続く
お疲れ様です。
こうしてトンとクリムパスは交際に至りました。交際する前に一線超えるのは魔法界では良くある事なのでセーフ。
キャラネタ書きます
オレキエッテ帝国とは?
魔法界に存在する国の一つです。ギンジ達がぶっ潰したコンキリエ魔王軍と戦ってます。
小町サクラの故郷でもあります。
ジェノべ
クリムパスとトンの恋心には気づいていたが、それを恋を認識させるまでの一手を担った。お酒はあんまり飲まない。すぐ酔うし、すぐ暴れる。
トン・コッツ
クリムパスにブヒブヒ言わせるのがお好み。こぶたビキニを装備させると、赤鬼みたくリビドーが止まらない。
クリムパス・ユキヒーラ・ソルトショーショー18世
行平鍋を使い、パスタを茹でる時に塩を少々入れる事が得意。名のある貴族出身だが酒のせいで勘当されている。その後帝国では真面目に働いている。トンとの間に子供を授かったら騎士引退。
アラビア・オンタマ=ザ=カタユデエッジ
温卵と硬湯で卵大好き。
シシリー・オレキエッテ・ショーチュロック2世
オレキエッテ帝国では焼酎は貴重品。ロックで二杯まで。
ポモドロ・ワインガータクサーン・アリマンガナ
ポモドロの故郷はワインがたくさんある。嫁ぎ先のオレキエッテ帝国にワインを大量輸入している為、ワインとパスタには困らない国となった。
アマトリ
魔王。コンキリエ魔王軍を率いる神になるとか言い出したやべーやつ。
5年後の未来においては、ギンジ達に敗れた挙げ句骨の怪人に、文字通り骨抜きにされてしまった(意味は違うが)
・・・
さて間に番外編を挟んでしまいましたが、次回は本編に戻ります。
正義連合vs怪人キラーエリート、乞うご期待!
それではまた次回!