ちょっとバイオ止められないんだけど!
でも執筆もコツコツ頑張っております!ちょっとサボりがちでしたが、次回も頑張って書きますし、今の所エターの予定もありませんので!
今回のお話もお楽しみに!それではどうぞ!
ドクターパープルが怪人キラーエリートと超級戦闘員達を引き連れて、正義連合の拠点となる場所に襲撃を開始した同時刻・・・。
中央度固化市、オフィスエリア。
戦闘員を引き連れて車道の真ん中を闊歩する、ブーメランパンツとチワワの顔した、筋骨隆々の犬の怪人。
警察という組織が残っていても、ヘルブラッククロスに対して干渉しうる存在である公安局が事実上の機能停止に陥った今、彼らはドクターパープルの指示の下、この街のこのエリアに襲撃を行おうとしていた。
もはや人々はその姿に恐れては道を開ける一方である。
「おいそこのお前」
犬の怪人がパンツを上に引っ張り上げながら、一人の戦闘員に指示を下す。ぴっちりもっこりした存在感を醸し出している。
「チワワ、今女が欲しい。チワワのは途中で膨らむから、皆きゃんきゃん言うんだ」
パチィン!
ブーメランパンツから指を離すと、筋肉で分厚くなった腰にゴムのぶつかる痛そうな音が鳴る。ぴっちりもっこりしっかり存在がある。
「い、今からですか?」
小雨となった夜中のオフィスビルエリアには、そこまで人は歩いていない。せいぜい終電ギリギリを目指す社畜の皆様が居るだけだ。
「お言葉ながら犬の怪人様」
指示を下された戦闘員は犬の怪人の荒唐無稽な指示に、疑問を感じ得ない態度で言い返す。
「この時間に犬の怪人様の好みの女性は居ませんよ・・・それにドクターから貰った指示はそうじゃぐっはぁ」
指示に異を唱えた戦闘員が喋り終える前に、犬の怪人が思い切り蹴り飛ばす。
戦闘員はまたたく間に姿を空に飛ばされる。何かの会社のビルの角に戦闘員がぶつかり、歪に身体を曲げながらアスファルトへと落ちていく。
簡単に戦闘員を蹴り殺した犬の怪人に、戦闘員達は背筋が凍る思いでいる。
「目的も達成する!」
続いて犬の怪人は大股開きで腰を落とし、右足を高く上げる。
そして雨で濡れたコンクリートに右足を深くめり込ませる。
「チワワは女を食べる!」
同じく左足を高く上げて、また下ろす。勢いの強いその足は、やはりコンクリートに深くめり込む。
「大暴れの開始だ!わん!わん!おー!」
犬の怪人の吠える言葉に、戦闘員達が一斉に行動を開始する。
犬の怪人の左右を抜けて走り出す戦闘員を尻目に、犬の怪人も行動を開始する。
「チワワ、大暴れするぞー!」
場所は変わって湾岸エリア。
ここにも人気の無い場所であり、しかし近くの海の闇に呼応する様に、うっすらと闇に紛れた存在が戦闘員を引き連れて、どこからともなく襲撃を開始する。
「ホッホッホッ・・・」
漁港のライトにその足と思わしき部位を伸ばして、紐の怪人はその姿を自ら照らし出す様にして、自分の姿を表した。
現実では絶対にありえる事の無い棒人間の形をして、頭の部分に一つ目があり、さらに一本の頭部には二本の角らしき三角の形をした謎の姿が、湾岸エリアに君臨した。
「ここでの目的は・・・わかっていますね?」
どこか後ろで、どこが正面か解らないその姿に、戦闘員達は全員無言で頷く。
「よろしい。では、始めましょうか。ある目的と、ついでの略奪を」
両腕を下へ向けて広げる様にして、紐の怪人はクツクツと笑って見せる。その姿はどことなく冷たい威圧を感じて、戦闘員達もすぐに行動を開始する。
ここで何かを喋れば癇癪を起こされて殺されかねない。そんな理不尽に死ぬのは受け入れられない者だけが、紐の怪人の背中?を見て共に行動しているのだ。
「さぁ、暴れますよ!絶対に目的のアレを見つけるのです!」
紐の怪人が際限無く伸びる紐の能力で、近くをフォークリフトを持ち上げて振り回しながら、狂気的な事を発しては大暴れを開始する。
更に場所は変わって住宅街エリア。
細かく言うと全損したカエデハウス跡。
無数の触手を伸ばしては、瓦礫を打ち崩して破壊を跡を更に色濃くしていく。
「オヒョヒョ・・・あっしも色々させてもらえるのは嬉しいですよ。あーこれドクターミヤコのマシンです。丁重に扱えよ」
この住宅街エリアの襲撃を任されたのは、宇宙人の様な頭をした触手の怪人。
瓦礫を粉砕したり溶かしたり・・・様々な方法で、ドクターミヤコ関連のモノを探しては戦闘員達に運搬させている。
ある程度の重要な事が終われば次は、住宅街エリアの中心に降り立ち、本来の目的を開始しようとしていた。
触手の本来の用途通り、寝込みを襲うことで目的のアレを見つけようと言うのだ。
「さてさて〜それを組織に運んだら、後は紫に渡しておけよ。あっしと、B班は街に出て襲撃を開始じゃい」
意気揚々と・・・そして虎視眈々と、誰もがヘルブラッククロスの探しているアレをいの一番に見つけ出そうと躍起になっている。
オフィスビルエリアの犬の怪人も。
湾岸エリアの紐の怪人も。
住宅街エリアの触手の怪人も。
三者三様、ある一つの目的を達成しようと、アレをおびき出そうと奮起している。
目的、指示は立った一つ。
『出てこい、ヘヴンホワイティネス!!』
3日程姿を消している彼女らを見つけ、倒せ。
それがこの怪人達の目的であり、指示でもある。
現れないのであれば、こちらからおびき出す。
そして必ずドクターミヤコが組織をクビにされる前に命じていた、ヘヴンホワイティネス陵辱プロジェクトを達成させたい。
それが彼女への手向けになるからだ。
憎き怨敵を貶める、怪人達の大襲撃が開始された・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・
圧倒的な数の不利をモノともしないかの様に、レイナ達の反撃と抵抗心が、より超級戦闘員達の加虐心を更に悪辣な力強さを加速させる。
右足を銃弾で撃ち貫かれたルカは、まともな立ち回りをする事が出来ず、なんとか藤原が彼女を担ぎながら教会内部に逃げる事に成功する。
すかさずその隙だらけの背中に迫る戦闘員達は、イロの援護射撃とミツキの神を信じる暴力によって事無きを得るが、敵陣の真ん中に取り残されたレイナとナルミは最早教会に戻ることは不可能になっていた。
退路は無くなり・・・教会での籠城戦は最早不可能だ。
多少安全な場所は限り無く近く、果てしなく遠い所になってしまった。
「ナルミ、大丈夫か!」
「・・・」
2人の美女は背中合わせになりながら、戦闘員の群れを一人ずつ撃退していく。
破悪の剣は効力を維持出来ず、破邪の剣で応戦している。
疲労も強く出てきて、判断も鈍ってきている。
ナルミも札の枚数が少なくなってきた上に、先程のモード・ウメミツキの発動によって体力も底を付きかけている。
無理な戦いと日をまたぐ命がけの戦いが連日続き、更には雨。
小雨とは言え全身を覆うスーツを身につける戦闘員とは違い、彼女達は野ざらしに近い。
徐々に劣勢に運ばれている・・・その事を理解していながらも、2人の退魔師は、巨悪と戦わざるを得ない。
一人の超級戦闘員の改造した右腕が、レイナの顔面に迫る。
とてつもなく大きい壁が、恐ろしい速度で迫りレイナの防御に合わせて華奢な身体を空高く打ち上げる。
八頭身のモデル体型が空に舞えば、戦闘員達は下卑た歓声を上げて、次はナルミに迫る。
ナルミが取り出した札は『疾風』。
その札を使い、空に頭上に飛ばされたレイナの救助に飛び出すが、ナルミの足を絡めとる様にした戦闘員達が、ナルミを石床に引っぱって落とす。
「ナルミ!」
そしてそれを見ているしか出来なかったレイナは、空中で体制を整えると、破邪の剣を二本持ちながら、ナルミに身体に触ろうとする戦闘員達をめがけて、虹色に輝く剣を振り下ろす。
落ちる勢いでナルミを救援しようとするも、視野が狭くなった彼女の背後には空飛ぶ装備を整えた超級戦闘員が、背後でレイナの背中を叩き、そしてナルミと同じ様に石床に叩き落とす。
「がぁっ!?」
身体中の空気を抜かれる様な衝撃が全身に走り、起き上がろうとするレイナとナルミに悪の手が無数に迫る。
「クソ!触るな!やめろ!」
暴れようとする聖女の手足を抑え、ナルミも札を取り上げられる。
二人してうつ伏せにされ次に2人の美女に迫るのは、容赦のない暴行の数々。
踏みつけられ、殴られ、叩かれ・・・そしてそこからは無数の高笑い。
「クソ!クソ!クソぉ!」
いっそ涙を流したくなう程に、数の暴力がレイナとナルミを襲う。
そして教会の内部には、ルカが踏ん張って盾を支えるも、これも数の暴力によって抑えこまれてしまっていた。
藤原の羽交い締めにされては容赦の無い暴力の数々、イロは降伏しているが首を締め付けられて青い顔をしている。
ミツキも自慢の格闘術で奮戦しているが、一人を倒すまでに横から後ろから上から超級戦闘員達の改造スーツの猛攻を受け、全てを捌き切れていない。
こうなっては抑え込まれるのも時間の問題になるだろう。
「ん〜もう少し抵抗出来るモノかと思ったけど、もう無理そうだね」
小雨の中龍の怪人が広げた傘の中で、ドクターパープルが仮面の奥からくぐもった声を漏らす。
戦況としても、80人vs6人では、そもそも勝たせる気など無いのだ。ドクターパープルはそれでも彼女達がもっと抵抗出来るモノだとタカをくくっていた様子。
龍の怪人も毒蛾の怪人もほくそ笑みながら、無様な姿にさらされる正義連合の女性達を嘲笑している。
サーっと降り続ける小雨の中で、レイナの悔しさを孕んだ叫び声が響き、それを上書きする様に地獄に住まう住人達の下卑た笑みが声高らかにこだまする。
正義も悪もここまで来れば関係無い。勝てば正義なのだ。
ヘルブラッククロスの襲撃はここだけじゃない。
未だに姿を見せないヘヴンホワイティネスをあぶり出す為に、怪人達を街に送り込んだ。
中央度固化市に絞って、正義のヒーローをおびき出す。
「完璧な作戦ですね、ドクター」
機械の怪人が満足げに言うと、「当たり前だろう」とドクターパープルは返す。
(さあ、早く現れないと、君たちの仲間は終わるぞ、ギンジ。私は敵になると言った以上、ドクターミヤコ以外には容赦しないぞ)
心の中で師の最高傑作へ挑発を贈る。雨音すらかき消す悪の高笑いは、教会を潰さん程に大きくなる。
「あまりやりすぎるなよ。ソレらは全て私の材料だ。実験のな。怖いたいなら他の女を当ててやるから、そろそろ回収に動け」
大幹部ドクターパープルの言葉一つで、超級戦闘員達がレイナを担ぎあげる。
もう助からないだろう。
(ああ、ギンジ──)
掠れる心と滲む視界が薄れゆく意識をより強めていく。
それでも、最後まで悪に屈しないと決めた以上、レイナは諦めたくなかった。
最後に出るのは我が身可愛さかも知れない。
だから本気で今の状況で、助かりたいと願ってしまった。
ナルミもルカも藤原もイロもミツキも。
きっと全員そう思っているに違いない。
(助けて・・・ギンジ!)
心の中で、想い人の名前を必死に呼んで見る。いつだって・・・正義の志を持った彼は、佐久間ギンジは自分のピンチに助けに来てくれると信じていたのに・・・。
彼は来ない。
正義のヒーローは現れない。
(ああ、そうか・・・)
熊沢レイナはかつて恩師である二階堂マサヨシを見捨てざるを得ないとは言え、魔人との戦いにおいて撤退せざるを得なかった。
次は如月ナルミを死なせてしまい、モノ言わぬ人形になっていた事に疑問を持てなかった。
恩師と姉妹同然の親友、この2人を助けられなかったバチが当たったのだろうとレイナは思い込む。
(これはきっと・・・私への、神様が与えたバツなのだろうな・・・)
そう思えば少しだけ心が楽になる気がした。
「おーい」
レイナは動けなくなった脱力した身体に、抵抗の意思を見せつける事が出来なくなり、ついには退魔装束の変身が解けてしまった。
担がれるその身体に、より一層の疲労が襲いかかる。
「おーいって」
戦闘員同士で何か話しているのだろうか・・・。
もう正義と悪の戦いに対して、リタイアしてしまった気分になったレイナに、暖かい何かが流れこんでくる気がした。
「おいおいお前だよ、シカトすんなよこのヤロー」
「・・・!?」
聞き覚えのある声。
熊沢レイナは今この瞬間まで待ち望んだ、正義のヒーローの姿を目の当たりにした。
「そいつから手を離せよバカブラッククロス」
くすんだ金髪にツーブロック、オールバックの髪型。
真夜中だと言うのに、シルバーフレームのサングラスをかけている。
黒の七歩袖のシャツに、黒いパンツ。
「まぁいいや。シカトこくなら・・・オラ!」
その手に握られた金棒を振り回すと、レイナを担いでいた戦闘員が、レイナだけをその空間に取り残して、木々の中に吹っ飛んで行く。
「ああ・・・!」
ここでその姿を見て、その声を聴いて、その力に助けられて、退魔警察熊沢レイナは、想い人の姿を再認識する。
「かなりピンチみたいだったな。遅れて悪かった!」
「ギンジ・・・!」
ふわふわと浮いたその身体は脱力していて力が出ない。それでも、嬉しさと、恐怖を払拭したその光そのモノの男の存在に、レイナは涙を流す。
嬉しくて、報われた気分で・・・レイナは大粒の涙を流して、その名を叫んだ。
「遅いよ・・・ギンジ」
「悪ぃ悪ぃ・・・正義のヒーローは遅れて来るからな!」
レイナとナルミを浮かばせる様にして、ギンジは教会の方へと、傷ついた美女2人を動かす。
そしてギンジの隣に、いいや、ギンジの周りに集まるのは、彼の仲間達だ。
正義のヒーローは・・・一人だけじゃなかった。
白と赤のスーツを装備して、両腕のガントレットからは鋭いギアの回転音が聴こえる。
プラチナブロンドを揺らして、キッとした目つきをした顔立ちの良い美少女。
その美少女の隣に立つのは、白と青のスーツに小柄な体格。
左手に握られたのは現代科学では到底実現不可能な、蒼白い光を灯らせたビーム剣。
まだいる。
リクルートスーツの様なスーツ姿に、ふんわり巻いたポニーテール。複数のホルスターを身に着け、雨の中でも輝きを放つキレイなハイヒール。
左右の腰には拳銃、ストッキングに巻き付いた小型のナイフ、バレットベルト。後ろ腰には折りたたみ出来るライフルに、背中には丸い筒状の大砲、ロケットランチャー。
その女性の隣には、誰よりも高い身長で、雄々しい一本角をその頭にはやしており、ギラギラと輝く八角棒を右手に握る男。
黒い甚兵衛と赤い肌が絶妙にマッチしており、並々ならぬ闘気を感じる。
そしてその中で目立ちはしないが、ここに立つ戦士の一人として、白い光を宿す本と思わしきモノを胸に抱えながら立つ少年。
見違える程にその姿は勇敢で、そして一人の仲間として迎えられている。
そして最後に天真爛漫な表情で、ピンクの魔女装束に身を包んだ、桃色の髪を雨で濡らした少女が、レイナの前に姿を表した。
「遅れてごめんなさい、レイナさん・・・」
「サクラ・・・皆も・・・」
超級戦闘員と6人の正義のヒーローがバチバチににらみ合い、一触即発の空気が一気に貼り詰める。
「思いっきりやるわよ!」
「同意。私達の“仲間”に、手を出した事、後悔させる」
「無論だ。どこに行こうとも、もう逃げられない事を教えてやろう」
「ヌハハ、姐さんも兄貴も、姉御も旦那も気合入ってるなァ」
「僕も・・・これは許せない!」
レイナとナルミが、サクラ達の救援によって助けられ、藤原もイロもミツキもすでに救助されていた様子。
「後はギンジくん達にまかせて!私達は一度離れるよ!」
サクラが負傷した者達を魔法で持ち上げると、一瞬にしてその姿をどこかへと飛ばす様に消えていく。
「さーて・・・お待ちかねだぜお前ら」
ギンジが金棒を前方に構えて、怒りの色が強い表情で超級戦闘員に吠える。
「こっからは!ヘヴンホワイティネスが相手してやる!」
ヘヴンホワイティネスが、この地獄の雨の止ませる様にして、この聖カエルム教会へと姿を表したのだ。
佐久間ギンジ、神宮カエデ、宮寺レン、甘白ミドリコ、赤鬼、角倉ケイタ。
「・・・ここで現れるのか、ギンジ」
ドクターパープルが勝利の一手直前にして、最大の敵が現れた。
「・・・いや、もう敵同士だったな。はじめまして、だな」
「お前がミヤコに変わる大幹部か?随分出世したなぁ!」
紫もギンジも、ミヤコのお願いを忘れては居ない。ここで再開したからには、逃げるか立ち向かうかしないと行けないのだ。
正義と悪の戦いが、今始まろうとした。
「行け!相手はあのヘヴンホワイティネスだ!遂に姿を表した自称正義のヒーロー集団に、眼にモノを見せてやれ!」
ドクターパープルの号令を聴いて、超級戦闘員が一斉に襲いかかって来た。
それに対抗して、ギンジ達も一斉に攻撃に転じる。
8月28日、午前0時49分。雨は止み、曇。
所によりヘヴンホワイティネスが降った日だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
俺達はサクラの生まれた故郷である魔法界でのひと悶着を終えて、元いた街に帰還している最中だった。
宇宙みたいなキラキラしたこの道は、全部魔法の力で作られた道だと言う。この世と魔法界を繋ぐ、人やら何やらを運ぶ道だと説明されてもよくわからん。
まぁ要は魔法使いが居れば誰でも通れる、関所みたいな役割らしい。たまにイタズラをして入れる人も居るには居るらしいが、そういう奴は漏れなく魔力酔いにされて帰されるらしい。
「いやー姐さんとの暮らしが待ってるなんて嬉しいなぁ〜」
赤鬼がふわふわ浮きながら、嬉しそうに鼻の下伸ばしてやがる。どんな想像してるんだ?
この道はなんか不思議な力で身体が浮いて進めている。サクラは魔法の杖に座りながら、スムーズに動いて進んでる。
無重力?水中?
そこまでは行かないけど、多分遠からず近すぎずな感覚だ。多分ね。多分だよ。
星が煌めいた宇宙の空間には、風の通り道になっている様で、よく耳を済ませれば涼しげな音が、俺たちの耳元を通りすぎて行く。
「ギンジくん、あれから身体の調子はどう?」
サクラが振り向かずに俺に聴いてくる。緊張感を感じさせない言葉は俺が早めに返事出来そうな、テンポ良く会話が出来る。
「大丈夫だぜ」
おそらくサクラが聴いているのは、俺が魔力の無い怪人の身体なのに、魔法界でオレキエッテ帝国の霊石を吸収したからだろうな。
ミヤコが聴いたら喜びそうだよな。俺ってば魔法まで使える様になっちゃって。
俺たちは魔法界はオレキエッテ帝国にて、赤鬼が居るという目撃情報がサクラから入った。その時はミヤコをあのロリコン野郎・柏木とか言う奴に攫われてたから、なかなか納得しづらい事だったが・・・まぁ今になって見れば、赤鬼も連れて帰る事も出来たし、なんと言ってもケイタが魔法使いになって戦力になれた事も大きいよな。
これで俺もカエデもめちゃくちゃ強くなれた訳だし、ひょっとしたらミヤコ救出も案外簡単なんじゃないか?いや、そんな事は無いな。
だって相手はあのヘルブラッククロス。俺たちは正義のヒーローのヘヴンホワイティネス。
敗けるつもりは無いけどとにかく敵は未知数だしな。油断しちゃいかん。
「ねぇギンジ」
おっとお次に声をかけてきたのは、絶世の美女(俺基準)の神宮カエデさん。こいつ顔はめちゃくちゃ可愛いから、たまに眼を見て話せなくなる時あるよな。無い?あるんですよ、奥さん。
宇宙みたいな空間道でふわふわ浮かびながら、カエデが俺の方を振り向く。魔法界で貰った貴族の洋服は、なんというかカエデにめちゃめちゃ似合っている。
金のレースをあしらったシャツ部分に、肩が出たローブと腕の袖から指先を出している。
スカートは専用にカスタマイズされたのか、背面部分に足先まで伸びた燕尾服みたいになっていて、膝下ぐらいまである衣装。
あと季節に合わせてか生足になっている。ヘヴンホワイティネスおじさんの俺にはこの衣装はかなりご褒美です。
あとプラチナブロンドをいつもは降ろしているのだが、この衣装の時は丸めてクリップでまとめている。普段隠れている耳が出ているだけで、この印象の変わりよう。
俺の魂が勃っ「そういや旦那〜」
・・・なんだよ赤鬼コラ。俺は今眼福を味わっているんだ。ケイタと2人でイチャイチャしてろ!邪魔すんな!
「ギンジ?」
返事が無いまま神妙な顔つきでもしていたのか、俺の顔にカエデの顔が近づいていくる。
「あ、ああ悪い。少しぼーっとしてた」
「これから戦いに行こうというのに、随分余裕じゃない」
あーまーた始まったよ。どうせ煽るんだろ。
「ま、その方があんたらしくていいわ。でも戦いになったらボサッとしないでよ」
「おうおう任せとけ!お前の事もちゃーんと守ってやるからよ!」
「当たり前でしょ!あんたはあたしの下僕なんだから!」
またいつものやり取りが始まる。一番先頭を進むサクラも顔こそ見せないがきっと苦笑しているに違いない。なんだよ、何笑ってるんだオイ。
「頼りにしてるわよ」
「・・・おう」
そこで俺とカエデは拳を軽くぶつける。でもカエデはまだ話しが終わって居ない様で、俺の近くから離れない。
「最初に聞こうと思ったんだけど、戻ったらミヤコを助けるわけでしょ?その後、あんた達ってその・・・」
妙に口籠るな。
「ま、また2人で寝たりするわけ?」
ブッ!
「確かに、ミヤコのギンジ愛は異常。毎日、2人で寝てるのは、流石にどうかと思う」
ここに来てレンまで話しに入ってきた。
別に俺だって寝たくて一緒に寝てる訳じゃないやい!
あいつが勝手に俺の布団に入ってくんだよ。しかもエアコンを最低温度にしてな。
寒いとさえ思う様な部屋の温度の中、羽毛布団で寝るっていう背徳極まりない贅沢な空間で、あいつが俺の身体で暖を取りながら寝ようとするんだよ。
くふふーギンジ君〜ってな。言っておくが何もしてないぞ!
「あの・・・あたしも、一緒に・・・」
「ん?何か言ったか?」
もじもじしちゃって・・・何か言った様に聞こえたが、なんて言ったんだ?
「うるさい!」
「なんでぇ!?」
もう一度聞こうとしたら思いっきりぶっ飛ばされた。なんだこいつ。
そして俺はみるみる内に仲間達の列から離れていく。
「ああ、駄目だよ!ここは勢いがあると、バラバラに離脱しちゃうから、ギンジくんだけ変な所に帰還しちゃうよ!」
そういう大事な情報はもっと早く言ってくれる?
「兄貴!」
おお赤鬼!お前はやっぱ優秀だな。こうやってすぐに追いかけてきてくれる。
勢いをつけて空気弾で飛ぶと、赤鬼は俺よりも強い勢いですぐに俺を追い越して、宇宙空間の奥に飛んでいく。
うんうん、やっぱ馬鹿だ。優秀ってのは取り消す。
「何をやっているのだ!」
おお、次はミドリコ!頼む!
年長者のミドリコの姐さんならきっと上手い事・・・。
「あ・・・」
何か行動を開始する直前で、サクラが不吉な発言をした模様。
「サクラ?今、『あ』って言わなかった?」
カエデがサクラの肩を触ると、引きつる笑い顔でサクラが振り向いた。
「ごめん、道間違えちゃった」
「またー!?僕たちまた違う所に落とされるの!?」
ケイタの言うまたって言うのが解らんが、どうやら色々問題が起こったらしい。そうこうしていると、俺も重力魔法で皆の居る所に戻る事にしているのだが、一体何があったんだい?
どしたん?話し聞こか?
「中央度固化の工場エリアの魔法門を超えちゃって・・・その、もう一回戻らないと」
「おいおい嘘だろ!」
「そりゃ無いですぜ!サクラのお嬢!」
赤鬼どうやって戻ってきたんだ・・・?
「えーとえーと、強制的に開放するから、それで無理やり度固化に戻ろう!」
強制開放ってアレだろ、俺だけ帝国に落としたアレの奴だろ?もう一度アレやるの?また孤立しない?平気?不安なんだけど俺。
「なんでも良いわ!この景色も見飽きたし、そろそろ戻ろう!」
カエデも仕切り始めているし、それでもアリだと思うぜ。うん。
サクラがレンとケイタに挟まれながらあーだこーだ言い合っているが、確かにこの宇宙空間みたいな場所も見納めだろ。
いい加減戻らないと、ミヤコが今どうなっているか、そっちの方の不安と心配が勝つ。
あと本音を言うと俺もミヤコに会いたい。
「ええーい!ごめんだけど強制開放!」
「サクラ!」
ミドリコも止めようとしているが、もう間に合わない。
サクラの杖を中心に魔法の紋章が光と共に炸裂して、俺たち全員を閃光で包んでいく。
眩しくて絶対に眼を閉じてしまう様な光と、眩しさが消えた瞬間に俺たちの身体に冷たい何かがポツポツと当たってきた。
「これは・・・」
俺たちが一瞬で魔法の道を抜け出たらしく、そこがどこだがマジで分からなかった。
だけど一つだけ言えるのは・・・。
「サクラてめぇーー!!!」
本気で叫び、俺は・・・俺たちは全員とんでもない自体に発展していった。
そして次の瞬間、ここがどこなのも理解した俺たちは、もう二度とサクラのナビでは魔法の道を通らないと決める事にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「わああああ!」
空気と冷たい水滴と思わしきそれらが、この場に居合わせた正義のヒーロー達にぶつかっていく。
ギンジとサクラは飛びながら、仲間達を回収する事に成功した。
そしてそこが何かを知った時、ギンジは本気で命の危機を感じた。
暗くて、薄くて、しかし冷たくて。
熱気すら感じるその空間は掴む事の出来ない、モヤの様な何かを突き抜けてギンジの身体が貫いていく。
担いだカエデとレンを重力魔法で浮かばせて、次にサクラが拾ったケイタとミドリコも魔法で浮遊する。
赤鬼も同じ様に捕まえようと思っていたのだが、彼は空気を操りながら、器用に身体を支えている。
「ここどこなのよ!」
カエデが辺りのモヤを手で払いながら、状況確認を行う。
空気の薄さを感じながらも、レンもビーム剣を振ってみる。
モヤは切れるだけで、その形をすぐに崩して煙の様に消えていく。
「マジでここはどこだ?サクラ?」
ギンジもサクラに聴いてみるが、サクラはやはり引きつった笑顔を見せている。
「ごめんね・・・ここがどこだか、私、わかっちゃった」
サクラは最早悪びれてすらいない様な口ぶりで、どんどんギンジ達に不安の表情が強くなる。
「どこだここ?」
「空」
「・・・今なんて?」
「お空」
「もう一度聴くけど、なんて?」
「SKY!空!雲の中なう!」
『ふざけんな!!』
勢い余ってギンジとカエデの息の合った罵声が飛んでくる。サクラはもはや平謝りするだけになっている。
「道を間違えちゃったんだもん!ごめんて」
「いいや、もうしょうがねぇよ。ところでカエデ、レン」
ギンジが美女2人にニコニコと声をかける。
「何よ」
「どうしたの?嫌な、予感がする」
「鋭いね。俺たち今、逆さまみたいだぜ」
何を言っているのだろうかこの怪人男は。
サクラもケイタも赤鬼もミドリコも全員正位置と言うか、ちゃんとした向きをしている。
「えーと・・・ここに来た瞬間、落ちる感覚がしたんだよ。で、重力魔法を使いましたと、ここまではいいかな?」
「ギンジ、何を言っているんだ?」
ミドリコもギンジに訝しむ顔つきで聴いてくる。
「もしかして私の魔法よりも強いって事かな?」
「・・・重力の使い方がサクラの魔法より強いかはわからんけど、広範囲であればあるほど・・・効果時間も短いようで・・・あの、効果が切れそうです」
「あんたも戦犯じゃないのよ・・・ああああ」
雲の中、空の上、そして重力による浮遊。
頭を向けている方向に向かって、最初にカエデが落ちていく。
次にレン、その次は赤鬼。
最後にケイタ、サクラ、ギンジ、ミドリコが落ちていく。
「落ちるーー!」
ケイタがパニックにお陥りながら大声で叫ぶ。
「悪い!重力の使い方良くわかって無くてよ!」
「高笑いしてる場合じゃないでしょ!バカ!このバカ!」
自分達は雲の中、大空の中に居て全体重で落ちている。
「こうなったら地上に近づいたタイミングで、私の魔法で無事に着地できるようにふああああ」
落ちながら喋ったからかサクラの口内に空気が入り込む。風圧と勢いがものすごい速度で身体にのしかかり、落ちる速度を倍増していく。
特に赤鬼に至っては空気を操りながら我先に雲を突き抜けて行った。
ギンジ達も雲を抜けていく。次々とヘヴンホワイティネスが小雨を産み出す雨雲を内側から晴らして行くと、その衝撃が辺りの雨雲を破壊していった。
「見ろよ!」
ギンジとカエデが手を引っ張りながら、指をさす。
「わぁ・・・」
その方向、その一面には絶対に誰も見たことの無い、度固化市全域の夜景。空から見える絶景ならばカエデも見たことがある。
しかし飛行機やヘリコプターでは到達する事の出来ない高度から見下ろす景色は、この場に居る誰もが見たことのない感動的な景色が視界いっぱいに広がっていた。
「輪になれー!」
赤鬼が空気を掴みながら、重装備のミドリコをキャッチしてはそう叫ぶ。
ギンジがカエデの腕を引っ張り、カエデはレンの手を掴み、レンはケイタと手を繋ぐ。
やがて高度を維持していた赤鬼とサクラが、ミドリコを輪の端に加えて、数珠繋ぎの様に7人の輪が出来上がる。
雲も次第に視界から消えて行き、パラシュートよろしくの地上の景色が鮮明に写り始める。
風に煽られて7人が降りようとしている場所は制御出来ず、何かの建物をどんどん超えていく。
本来の戻る場所とはだいぶ予定が違う事になっているが、そんな事より7人全員無事に着地する事の方が重要だ。
「そろそろ急降下するよーー!」
「急降下?僕達は降りるんじゃ・・・」
サクラが全員に告げると、ケイタは不安な表情を見せる。
「おおおおい、どうして急降下なんだ!どうして急降下なんだ!」
ミドリコもパニックになっている。
(そう言えばミドリコって高い所苦手だったかしら)
カエデが頭の中でそう考えると、いきなり下へとサクラ以外の6人が突き落とされる様にして、地上へと落ちていく。
「魔法DE絶叫マシン!楽しんでふあああ」
サクラの悪ふざけがどんどん皆を不安にしていく。
「サクラてめぇーーー!」
思い切り落ちていくギンジ達がサクラの方を向きながらも、どんどん地上に近づいていくのが理解出来た。
「おい!全員変身しとけ!赤鬼はミドリコを守れ!」
ギンジの指示でカエデとレンはヘヴンスーツに変身し、ケイタは魔導書の力を開放する。
赤鬼はミドリコの身体を手繰り寄せて、硬い胸に彼女の頭を抱きしめる。
そうこうしていると、彼らの視界には大きな十字架を乗せた建物に近づいていく。各自防御を固めておけば、たいした被害は出ない事になるだろう。
「うおおおそろそろなんか建物にぶつかるぞ!」
「壊してもいいわよ!神宮財閥が全部弁償してあげる!」
カエデの心強い発言によって、6人が今日最後の雨となるかの如く、木製の建物に落ちていった。
そこがレイナの拠点である聖カエルム教会だと知るのに、そうそう時間はかからなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ギンジ達が教会に直撃してから数秒。本当にダメージはほとんど無く、あんな悪ふざけがあってもサクラなりに魔法で軽減してくれたのだろう。
教会内部に破壊行動を開始する戦闘員の一人が、ヘヴンホワイティネスを見つけると叫び出してきて、しょうがないからコレを片付けるギンジ。
「うーん、あいつらは無事か?」
そしてヘルブラッククロスが居るということは、重要な略奪場所なのかとギンジは頭を撚る。
特に何かの問題があるとも思えず、一先ず木の床を進むと・・・。
「オラっ!オラっ!」
人が人を殴る音が聴こえる。
多分、と言うよりも確実にヘルブラッククロスが暴力を奮っているに違いない。
「軽く助けてやるとするか」
そして音のする方へ向かえば、ほぼ同じタイミングでカエデと赤鬼も突撃を開始してきていた。
その後ろにはレン、ミドリコ、ケイタも一緒に居た様で、戦闘員を軽く蹴散らすとヘヴンホワイティネスは助けた人物が藤原だと知る。
特にレンは片足を震わせて気を失っているルカを肩に担いでいた。
ギンジがルカの凄惨な姿を見て、怒りを走らせながら藤原に近寄る。
「おい!おっさん大丈夫か!?」
全員の合流には何もないまま、ギンジはボコボコにされた藤原を起こす。
すでに虫の息みたくなっている藤原は、ギンジの顔を見て、次にミドリコの顔を見て安堵する。
「甘白ちゃん・・・遅ぇよ。グラサン坊主も、神宮のガキも・・・」
「すみません・・・」
ミドリコは重苦しい表情をしながら謝罪をする。
「でもよ・・・おじさん達、頑張ったぜ。行けよ、向こうには熊沢も戦ってる・・・助けてやってくれ」
レンが片足に力の入らないルカを長椅子に寝かせてあげると、イロもミツキも、正義のヒーローの登場によって歓喜の見せている。
「とりあえず積もる話は後にしよう。ギンジ、私は今・・・」
ミドリコが声を震わせながら、ギンジに向けて言葉を放つ。
「血管がキレそうだ・・・!」
上司の無残な姿、友の凄惨な姿を見て、甘白ミドリコは重装備を全て開放する。
もちろんそれはギンジも同じであった。
ヘヴンホワイティネスにとっても縁が深い“仲間”のこの姿を見て、ギンジは〈大好きな人達〉が、今守れなくて傷ついてしまっている。
自分だけでも残るべきだったか、もっとはやく魔王を倒していれば、なんて事を頭の中に後悔としてギンジの心を抉る。
「・・・ミドリコ・・・そりゃきっと、俺も、皆同じだぜ」
遅れた以上、起きたことはしょうがない。
ならば・・・大切な仲間を護る為に、失わない為に今この怒りを地獄にぶつけよう。
ヘヴンホワイティネス、帰還して早々正義の鉄槌を下す時が来た。
〈大好きな人達〉を傷つけたお礼をしてやる時がやってきた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ってな訳で大暴れさせてもらうぜ!」
金棒を思い切り振り下ろし、花壇の道のコンクリートを破壊していく。その衝撃はドクターパープルの立つ足元にまで破壊の一撃が伸びていく。
超級戦闘員でも耐えられない者も居れば、そうでない者も居る。
飛んで避けた者達は、ミドリコのミニガン掃射により撃ち落とされる。
「あの女を先に倒すぞ!」
一人の戦闘員がそう言うと、一斉にミドリコめがけた改造スーツの腕が伸びてくる。
「汚い手で私に触れると思うか?」
ミドリコに伸びてくる手を前に、彼女はにやりと笑う。その次の瞬間・・・ミドリコの背後から赤い肌の大きな身体をした怪人が、自分の身の丈程もある大きな八角棒を振り下ろしてきた。
その手を砕き、腕を粉砕し、戦闘員を見えない何かで強く吹き飛ばす。
空気。オリハル金砕棒を振り下ろしながら、空気を打ち出していた。
叩き出された空気の弾はボンっと音を鳴らして、ミドリコに迫る戦闘員達をボウリングの様に弾き飛ばした。
「兄貴!姐さんの援護は俺っちにまかせてくだせぇ!」
オリハル金砕棒をかっこよく振り回して、赤鬼はギンジ告げる。
「後ろは気にせず、姉御達と共に突っ込んでくれやぁ!」
「へへへ、やっぱり頼りになるぜ」
言いながらもギンジは水面蹴りで背後の戦闘員を蹴り飛ばす。
「やるわよ!」
次はカエデがガントレットのギアを回して、スチームが噴出される。
そして拳を鳴らすと、スタイルの良い身体から想像を絶する程の衝撃が殴りだされた。
左右に別れる超級戦闘員達を、今度はレンが追い打ちをかける。
スカイブルーの髪を揺らして、左手にはより輝きを増したビーム剣。
形状は・・・手元から大きく手を護る様な形状となり、西洋の剣に似た形になっている。
「ビームフランベルジュ!」
その大振りさも、片手で振り回せる軽さも、リーチも、幅も全てがレンにとって扱いやすい剣。
勇者の剣のイメージがつけやすいその形状に、レンとカエデが左右に並び立ち、右の拳と左のビーム剣が並ぶ。
「ほら、ケイタもこっち来て!」
「ケイタ、あなたは、真ん中」
魔導書を開き、角倉ケイタも左右の美女の間に立つ。
左手で抑え、右手の人差し指と中指を伸ばして、戦闘員達へと指を向ける。
「目標はヘルブラッククロス!数はいっぱい!」
白い魔導書が光り輝き、ケイタは2人の美少女へ魔法を唱える。
「第一の魔法!エンジェラ・アーマ!」
天使の羽衣の鎧がカエデとレンに展開されると、ここでようやくカエデとレンが喜んだ表情になる。
長く共に戦う事の無かったケイタが、ここに来て一緒に戦える事に、喜びが隠せない。
魔王との戦いではあまり余裕が無かったがこの瞬間、この戦いにおいて本当の意味で仲間になったケイタの意思の強さが、何よりも嬉しい。
特にレンにとってみればこれ以上嬉しい事は無いだろう。
「必殺!」
「ビーム剣術!」
ヘヴンホワイティネス2人の大技が、ギンジが暴れる超級戦闘員の群れの中に炸裂する。
「メガトン・インパクト・改!」
「ヒーローソード!」
正義の大衝撃と、蒼き勇者の剣が2つ合わさって超級戦闘員達を空に打ち上げていく。
「まだまだ、こんなモノじゃない」
「行くわよ!レン!ギンジ!」
「あの俺巻き込まれてるんですけど?」
「ごちゃごちゃ言わないで、ギンジ」
「あれ?俺が悪いの?ねぇ?」
何故かカエデとレンの攻撃に巻き込まれたギンジだが、そんな彼も黒い炎と紫の雷を展開している。
徐々に身体の色を灰色に変えていく、ギンジのマジモードとも呼べるフェーズ3。
そしてカエデもダークヘヴンスーツを開放し、レンもビームフォームを発動する。
「俺らの仲間に手を出したんだ!」
「もう許さないわよ!」
「元々許すつもりも、無い」
ギンジ、カエデ、レンの3人がとにかく突撃しては超級戦闘員達がゴミのように吹き飛んでいく。舞うは人、しかして塵芥。
そんな超級戦闘員達が吹き飛ばされる中で、一本歪な形をした、目玉に触手が生えただけの何か不気味な存在がギンジへとにょろにょろ向かってきた。
(ぱ・・・ぱ・・・)
祝福の怪人がギンジの目の前に飛び出してきた。
父親に取り込んで貰えれば、いつか復活出来るから・・・そしてこの世界の王になれるから。
喧騒の中で不意に現れたその触手の目玉を見て、ギンジは表情一つ変えずに、ソレを炎で燃える拳で思い切り殴り飛ばす。
「なんだこいつ?」
(ぱぱああああ!!!)
完璧に燃えカスになってしまった触手は、ギンジの顔を最後まで目に焼きつけようと、その断末魔を最後に炭となって消えた。
「・・・」
「そろそろこっちも出ようか」
ドクターパープルに迫りそうな程の、ヘヴンホワイティネスの勢いに、龍の怪人と毒蛾の怪人が防衛に出ようとするがドクターパープルがそれを阻止する。
「いいや・・・行け、鎧の怪人!」
ずっと控えていた鎧の怪人がギンジ達に突っ込んでいく。それを見て龍の怪人の警戒体制が解かれ、毒蛾の怪人もつまらなさそうに頭に手を回す。
「新たに改良したフルプレート型鎧の怪人だ!止めてみせろ」
ドクターパープルが高笑いしながら叫ぶと、フルプレート型の鎧の怪人は隊列を編成して、大幹部と怪人の盾になる。
「逃さないわよ!超必殺!」
腕を後方に伸ばして赤と白のオーラが両腕に螺旋を描く。
そして勢いを乗せて前に突き出す。正義の超衝撃を持った天使が、悪の鎧の隊列を撃ち崩さんとして、解き放たれる。
「デストラクション・インパクトぉ!」
鎧の胴体を容赦なく貫き、ドクターパープルにその衝撃が飛び出してくる。
「おっと・・・」
しかし姿勢を崩す事なく、ドクターパープルは無傷のままで居た。
龍の怪人がカエデの衝撃を防御して、抑えきれない分を空へと蹴り飛ばした。
「恐ろしい力だな・・・さて、我々はそろそろ帰らせてもらうよ」
「なっ!逃げるつもり!」
カエデが飛び出してドクターパープルに突撃するも、龍の怪人が彼女を抑える。
「邪魔、しないで」
その背後からはレンが突撃するも、今度は毒蛾の怪人が毒の壁でレンを塞ぐ。
程なくして壁は斬り崩され、その奥に立っているのはレンではなく、ギンジの姿。
「大幹部様よぉ!邪魔すんじゃねぇぜ!」
毒をも燃やす黒い炎を吐き出し、ドクターパープルに迫る地獄の炎。
「邪魔をしているのはそちらだろう?」
ドクターパープルがあくびを噛み殺しながら言うと、次は機械の怪人がマシンの壁を作り、黒い炎を遮断する。
「君たちが怒るのも当然か・・・ま、だが」
仮面の奥の瞳がギンジと合う。お互いの眼が見えている訳ではないが、かつての友同士の感覚で解る。今ギンジと紫は確実に見えている。
「ここで我々と交戦しても良いだろうが、それでは君達ヘヴンホワイティネスの目的は達成できないだろう?そもそも本来の目的とは違う筈だ」
「!?」
(適当に切りあげろ。ここにドクターミヤコは居ない。早くしないと、手遅れになるぞ)※目線で話してます
ドクターパープルが飛び出して来たギンジに、改造スーツの電撃銃を向けていた。
すかさず撃たれたギンジは、空中で撃墜されてしまい、石床に落とされた。
「私も大幹部だ。舐めないでもらおう」
巨悪に身を置くドクターパープルの攻撃がギンジに当たったことで、注意がソレたのか、カエデは龍の怪人に蹴り出され、レンも毒蛾の怪人の攻撃を後方へと飛びながら避けるので精一杯になっていた。
「ここだけではなく、街にも怪人を派遣している。これの意味がわかるかな?
「てめぇ・・・!」
ドクターパープルがヘヴンホワイティネス全員を煽るようにして、再び鎧の怪人と超級戦闘員をけしかけてきた。
「兄貴に触るんじゃねぇ!」
後方支援に回っていた赤鬼とミドリコが救援に駆けつけ、鎧の怪人と超級戦闘員が吹き飛ばされる。
ついでに護衛に立つ3怪人も風圧に押されて、ドクターパープルは眼の前に手が届く寸前にまで来た。
「これで!」
ミドリコが構えたのはロケットランチャー。大幹部を逃がす訳には行かず、やむを得ないとしても不殺を貫くミドリコとは思えない選択肢だが、それだけミドリコも怒り心頭なのだと理解出来る。
火を吹き上げて弾頭が射出される。
しかし・・・。
真っ白な白濁とした液体がドクターパープルの背後から、大幹部を守るシールド見たくドーム状の展開される。
弾頭はどろどろした液体に飲み込まれ、爆発する事なく沈むように消えていく。
泡立つその粘液はとても白濁としており、甘い香りが戦闘している場所に漂い始める。
「ふむ・・・防衛反応は正常に動く様だ。上出来だ、女王ナメクジ」
「うふ♡これで生きてていいのよね♡?」
女王ナメクジの怪人が、粘液の中から姿を表してギンジと眼が合う。
「ふーん♡?あれがギンジ・・・」
「撤退」
女王ナメクジの怪人がギンジの顔を見て、小悪魔さながらの笑みを見せるが、その目の前には恐ろしい殺気を見せた。それにビビった女王ナメクジの怪人が、自分の粘液の中に姿を隠す。
「中央度固化市に絞って、怪人を派遣している。正義のヒーローが居ないと、街はめちゃくちゃになるかも知れないな・・・くくくく」
「この・・・最低の悪人め!」
カエデが悔しそうな声に怒りを乗せて、再度突撃しようとする。ギンジも同じように構えるが、赤鬼とケイタが2人の前に立つ事で冷静さを取り戻す。
「では・・・また会おう、ヘヴンホワイティネス。残念だ、退魔警察もムーン・パラディースも捕まえられないなんて・・・ああ、残念」
わざとらしく、しかし馬鹿にした態度に、ますますカエデの憤りが高まる。
粘液のドームの中に龍の怪人、毒蛾の怪人、機械の怪人が次々と入りこみ、大幹部の逃亡を許してしまう。
そしてそれの追撃をしようとするカエデとレンに、鎧の怪人達が再び隊列を組み直して壁となり立ちはだかる。
「兄貴、姉御!今は深追いしてる場合じゃねぇぜ!教会の方にも鎧の怪人が来てらぁ!サクラのお嬢が魔法で立てこもってるけど、限界があるぜ!」
「・・・!わかったわよ!」
ヘヴンホワイティネスは今日初めて、大きな屈辱を味合わされた。
友を傷つけられ、街は守れず、敵は取り逃した。
「今はこっちに集中するしかねぇか・・・!」
勢いを殺さないままギンジとカエデは息のあったコンビネーションで、この場の戦闘を継続するのであった。
その激しい戦闘は雨があがってから、夜明け近くまで続くのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦闘も終わり、子供達はまだキャンプに出ているのがラッキーだった。
ボロボロになってしまった教会の中では、サクラの魔法によるある程度の応急処置が行われた。
今は28日の15時を過ぎた所。
ルカとレイナは今は治療魔法の効果が落ちないように、2人が入れる大きさの部屋のベッドでそれぞれ療養している。
レイナもナルミもルカも、怪我においてはサクラの魔法でなんとかしてもらったが・・・。
「ううう〜・・・」
ガチガチと歯を鳴らしながら、ルカは痛みの消えない足を丸めてシーツにくるまっている。涙がべっとりと頬を濡らして、恐怖に悶絶している。
「・・・」
レイナも同じだった。ルカ程ではないにしても、もし助からないと思ったら・・・そして連れていかれていたら・・・。
そう思うと苦しくなる。
組織につれて行かれれば、何をされるのかなんて・・・。
悪い想像はたくさん出てくる。結果助かってはいるし、ギンジも間に合ってくれた。
でも・・・。
(ギンジが来てくれなかったら・・・私はきっと・・・)
ほろり、少しの涙が溢れてくる。
「熊沢さん・・・」
ルカがシーツに身体を隠しながら、レイナに声をかける。
今は悪い想像に身をやつしては苦しくなるほど震えていたルカだが、レイナも涙が溢れた所を見て、少しだけ我を取り戻す。
それでも震えが止まらないのは事実だ。
「ぼ、僕は・・・無力でした・・・」
銃の怪人の能力に押され、怪我ひとつあるだけで・・・戦闘員には勝てなかった。
またギンジ達に助けて貰った。
レイナのピンチにも駆けつけることが出来ず、ただ暴力の前に無残に倒されてしまっていた。自分の不甲斐なさ、実力不足を痛感して、次は恐怖が重く苦しめて来た。
ルカとアキハの心には、その大きな悪の恐怖が植え付けられた、嫌悪感と吐き気を催すような気持ちでいっぱいになった。
「・・・ぎ、ギンジ為に・・・力になりたかったのに、誰も守れなくて・・・おまけに街まで襲撃されていたなんて・・・」
中央度固化に絞った襲撃が開始されている、その事実を知った時ルカは自分がここに逃げるようにして教会に来た事を恨んだ。
誰も悪い訳ではないのだが、それでも悔しさが払拭出来ない。
自分だって正義のヒーローなのに、強くあろうと、強くなろうと、ギンジ達にも敗けない強さを手にしていたはずなのに。
結局勝てなかった。
「つきしまく・・・」
レイナがルカを手招きする。
「おいで、ルカ」
「ふぁい・・・」
涙声のルカを自分のベッドに招き入れて、2人の美女が手を握り合う。
「わかるよ・・・怖かったよね」
「うぐっ・・・ひっ、ひん・・・」
レイナの胸の中で、ルカが泣きじゃくる。
「私もだよ・・・すごく怖かった」
ルカの頭を撫でる。優しく、悔しさと恐怖に泣きむせぶ少女へ、レイナは優しくその手を握り、頭をなでてあげる。
「怖いことは悪じゃないよ。もちろん、泣く事も、震える事も」
レイナは言葉を続ける。続けながら、ルカの手を握る手に雫が落ちる。
「非日常に暮らしていれば、こんな事いくらでもある。だから、私も強くなろうって思っていたんだ。泣かない事や、ふるえないことや、こわが・・・る事だって・・・!」
レイナもこらえられず、涙を流す。
その声は喉を狭めて、絞り出すようにしたかすれた声。
月島ルカにも、熊沢レイナにも、同じ共通点がある。
それは同じ女性だと言うこと。
そしてもう一つが、非日常に身を置く者だと言う事。
共に正義の為に戦う彼女らにだって、怖いことはたくさん遭遇する。
悪に負けそうになる時が、一番辛い事だろう。
だから・・・レイナもルカも思い切りその身を寄せ合って、悔しさと苦しみを背負って、またはぶつけあって、それでも忘れないようにして、力いっぱい抱き合う。
「こわかったよ・・・」
「レイナさん・・・?」
「ほ、本当にこわかったんだ〜!ギンジが来てくれなかったらって思ったら、うう、君を守れなかったらとか、もし誰かを失ってしまったらとか・・・うう、うあああーーん」
普段強くて、気高い彼女でも怖いと思う事があったのだ。
「・・・だから」
レイナがルカのおでこに、自分のおでこをくっつける。2人の泣き顔はおそらく笑ってしまう程ブサイクかもしれない、もしくは泣いても美人かも知れない。
「だから、恐怖で涙する人が居なくなる世界を、私は守りたいんだ・・・はぁ・・・泣きたいわけじゃないが、どうしても、な」
「いえ・・・いいんです。僕も、少しスッキリしました・・・」
月島ルカと熊沢レイナは、もしかしたら似ているのかもしれない。どこが似ているか、それが解るのはルカとレイナだけだ。
「・・・怖かったら、泣いたっていい」
「レイナさんも、怖かったら、僕に言ってください・・・」
まだ頼りないかも知れなくても、それでも同じ正義の志を持つ者同士、心の拠り所には絶対になれる。
2人のヒーローが涙を流しながらも、手を取り合い結託した瞬間だった。
「・・・安心したらお腹、すいたね」
「何か食べに行きましょう、レイナさん」
「ふふ、そうしようか。先ずは涙を拭かないとな、ルカ」
「はい!」
こんなに立ち直りが早いなんて、やっぱりレイナは強い人だと・・・ルカは尊敬の眼差しを贈る。
「ああ、そうだ」
まだ少し涙声のレイナが、ルカに背を向けたまま思い出した事を告げる。
「君に・・・ギンジは渡さないぞ。ルカは、ギンジの事が好きだろう?目を見てると、なんとなく解るんだ」
本職現役の刑事からすると、そういう事もわかってしまうらしい。
「なぁ!?そ、そんな、僕は別に・・・」
「・・・彼を好きなのは、他にも居るようだ・・・罪な男だな、ギンジは。私もギンジが好きだし、誰にも渡したくないんだ」
少し遠い目をしながらも、レイナはインナーシャツのまま部屋の扉を開ける。
「さぁ、何か食べよう。食事もまた心を作る一つの行動だよ」
「は、はい・・・」
月島ルカと熊沢レイナ。
2人の共通点が一つ増えた。
お互いに佐久間ギンジに惹かれているという事。
ヘヴンホワイティネスの帰還に合わせて、正義連合が本格的に行動を開始出来る時期が迫っていた。
後は中央度固化に一度戻って怪人達をそれぞれ撃破しに行ったギンジ達が戻ってくれば、本来のギンジ達の目的を開始出来る。
「今度こそ・・・ギンジ達の役に立とう」
「はい!」
眠っているアキハを起こさないようにして、ルカとレイナは教会の食堂に向かうのであった。
真夏の日差しがとても心地良く、食堂にはさんさんとした夏の香りが広がっているのであった。
続く
お疲れ様です。
っという訳で、今回のお話でキラーエリート編は終幕です。相変わらずめちゃくちゃな感じかもですが、ほんの少し暇つぶしでも出来ればな、という気持ちで今日も頑張っております。
次回のお話ですが、新章の開始になります
ミヤコに関わる重要な話しになりますし、ギンジにも関わる重要な話しになります。
キャラネタ書きます
佐久間ギンジ
まだ重力の使い方が上手くいっていない。自分の息子?をぶっ飛ばしたけど虫か何かと思っている。
神宮カエデ
ギンジと一緒に寝たいらしい。抱き枕的な感覚で居る。もちろんギンジが枕。
宮寺レン
ビームフランベルジュって何?
甘白ミドリコ
相変わらずロケットランチャー系女子。
赤鬼
相変わらずオリハル金砕棒系鬼
角倉ケイタ
魔導書の力を頑張って使いすぎないようにしている。
わかっているな、使いすぎると死ぬからな!
熊沢レイナ
やっぱり怖い事ってあるよね
ギンジが来てくれた事で更に好きになった。
お前も退魔師にならないか?
月島ルカ
レイナと仲良くなった。だけどギンジに惚れている事を見透かされて、前よりもギンジを意識するようになってしまった。
紫
ギンジの立場も解るが、はやくドクターミヤコを助けに行ったらどうかな?心配しているのだよ・・・早くドクターミヤコを幸せにしてやれ
女王ナメクジの怪人
ギンジとの初対面を果たしたが、特段顔も悪くないじゃん♡
きっと夜の方もすごいんでしょ♡
触手、犬、紐の怪人
最初に出番があったけど、後半は出番もないままボコられた。ちなみに街は大損害を与える事には成功。カエデがキレた。
・・・
次回は新章突入!
大幹部柏木タツヤや、ミヤコとギンジ、ヘヴンホワイティネスvsヘルブラッククロスの大きな戦いになります!
ようやく主人公復帰!それではまた次回!!頑張って行くぜー!