意外と早いタイミングで投稿できた。
今回のお話は少し短めですが、新章の始まりなのでスタートはこんな感じで行ってみよー!
今回はミヤコの主役回でございます。くふふふ。
それではどうぞ!
79・鈴村ミヤコという少女は
8月30日。25日にヘルブラッククロスに捉えられたミヤコは、未だ救出に来ていないギンジに想いを馳せている。
どこかのホテルのように立派な一室では、外出を除きある程度の自由を与えられている。寝心地の良いベッド、ミヤコの身体には快適な広いお風呂、飲み放題のウォーターサーバー。
頼めば戦闘員が食事を運んでくれている。
暮らす、という事であれば何も問題無い空間である。
欲しいモノはなんでも頼めば持ってきてくれて、柏木タツヤが居れば一応部屋の外の豪華な廊下に出る事だけは許可される。
ミヤコも一応見覚えのある場所ではあったが、あまり興味の無い事はすぐに忘れてしまう性格の為、ここがどこなのかを考える必要があった。
いつ、どこで、どうやって来たのか。
それを思い出すのに不必要に時間もかけてしまっていたが、やはり思い出せない。
「・・・」
ミヤコは身体に入った毒素の苦しみと戦いつつも、愛するギンジの顔をちゃんと忘れずにここに居る。
「あれ・・・コレって」
窓から程近くの丸いテーブルに、ティーポッドがある。それを手に取りながら、ミヤコはできたての紅茶をコップに注ごうとした直後だった。
ティーポットのせっかく注いだ紅茶を、その場に捨ててコップの底を見てみる。
水に濡れると文字が浮き出る特殊な精工のコップには、ミヤコの大嫌いなアイツの文字、アイツの名字が浮き出てきた。
四角い金の枠の中に二重の丸線が引かれ、そしてその枠の中にはあの文字。
「神宮・・・」
その名字と企業の名前を見るだけで吐き気さえする。どうして今まで気づけなかったのか。
それは解らないがミヤコはコップをカーペットに叩きつける。
神宮財閥の下請け会社の陶器コーポレーションとか言っただろうか、確かそんな名前の企業のモノだ。
作りのレベルの高いそのコップを思い切り破壊すると、ミヤコは泣きたい気持ちになる。
「どうせ見るならギンジ君の方がよかったよ・・・」
吐き捨てる様に呟いて、窓の奥を眺める。カーテンを開けて、強い真夏の日差しがミヤコの眼をつぶらせる。
そのまばゆい光の向こうに広がるのは、襲撃にも使った事のある有姪海岸。
そこの場所は覚えているのに、この場所は覚えていない。
・・・。
ここは夢の怪人にも襲われた場所だ。
夢の世界であの異質な怪物に襲われ、夢の世界を脱出した後は、ギンジ君と楽しく朝食を食べた事もあるあの場所だ。
「ギンジ君との思い出さえ忘れるとは、わたしも落ちたね・・・」
少し自分のいい加減さに腹が立ち、そしてすぐに冷静さを取り戻す。
「そうか・・・ここは」
ミヤコが窓から離れて、次にコップの破片が散らばる床を乗り越え、一室の布団、枕の方に手をかける。枕を裏返して高級な生地に薄く見え隠れする、この場所が提供する枕の文字を見て、ミヤコは薄く笑う。
「神宮リゾートホテル」
鈴村ミヤコが捉えられている場所は、神宮財閥所有の帝国リゾートホテルの一室だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここを手に入れる為に随分と時間をかけてしまいましたよ。
わたくし、こういう強引な事は専門外なのですがね。
「貴様!」
貴様、というのはわたくしの事でしょうか?
高そうなグレーのスーツと、立派なお髭が似合っていますよ。
「これは申し遅れました、わたくし・・・警視庁に務めております、柏木タツヤと申します」
「ええい、自己紹介などいらん!このホテルを開放しろ!」
この男は不躾にも程がある言い方をしてきました。
ま、普通の人間ならそう言うでしょうね。恐怖に敗けずにわたくに物申すのは素晴らしい心の強さでしょうかね。
「えーと、あなた神宮財閥のトップの方ですよね?いいんですか、警察にそんな事言ってしまって」
わたくしが顔を近づければ、だいたいの人はビビリますよね。だって警察と悪の組織の二足の草鞋、そんな立場に居る存在に驚きも恐怖も何もない人なんてそうそう居ませんしね。
「私が神宮財閥のCEO、神宮ソウジロウと知っての狼藉か!」
そう、このお方は神宮ソウジロウさん。あのヘヴンホワイティネスの神宮カエデの実父。
そんなCEO(笑)のおじさまは、今なんと戦闘員に五体抑えられてボコボコにされてまーす。
しかしまぁ・・・ここを見つけて、ドクターミヤコを収容する場所を入手するのには先ず、街を混乱させて・・・インフラの妨害、それからここの襲撃。
街の方に派遣された触手、犬、紐の怪人は漏れなく撃破された様子ですが・・・ここがバレなくて良かったですよ。まぁ、リコニスさん以外には誰にも喋っていないんですけどね。
邪魔する者は全員痛めつけ、黙らせるのに随分時間がかかりましたよ。
最後はこの神宮財閥のトップ(笑)が私兵を引き連れてこちらに向かってきましたが・・・怪人を与えればまぁ簡単に黙りますよね。
そして最後にこのソウジロウさんですが、あろう事か一人で戦闘員の小隊を壊滅させて、まさかまさか鋼の怪人に一杯食わせるとは・・・財閥って末恐ろしいですね。
「貴方はそこで大人しくしていてください。これから、面白い余興が始まりますからね」
「ふざけるな!ここは私のホテルだ!貴様の様なテロ以下の輩に、このホテルを自由に使えると思うなよ!」
「負け犬の遠吠えってやつですね・・・」
テロ以下とは・・・我々ヘルブラッククロスはテロなんてしませんよ。我々は日本を力によって転覆しては、この社会を真に正しい世界へと創り変えようとしているだけなのですから。
「柏木様」
動けなくなるまで暴れようとするCEOの後ろから、もう一人の戦闘員が話しかけてくれました。一体何事でしょう?
「お忙しい所失礼致します。実は・・・」
ほう・・・ドクターミヤコが脱走、ですか。たいしたモノですね、厳重なロックを解除してあの高級VIPルームから脱出するとは。
「このホテルの中に、新怪人四天王の皆様を開放してください。後にわたくしも出ます」
その指示を聴くと、戦闘員は敬礼してからすぐに行動を開始しました。いいですよ、忠実な部下は大好きです。
「では・・・CEOはある程度痛めつけたら、地下の倉庫にでも放っておいて下さい。わたくしも用事が出来ましたので」
ドクターミヤコを早く見つけてお仕置きしないと行けませんね。
それと・・・まだ抵抗しようとする宿泊客も、怯えきった従業員もまとめて始末しないと行けないですからね。
「くく・・・」
ああ、楽しみです。結局誰がどうしようと、わたくしの目的も組織の目的も、誰にも邪魔なんて出来やしない。
あのヘヴンホワイティネスも姿を表した様ですし、とても楽しみです。
「せいぜい無様に足掻いてみてくださいね、ヘヴンホワイティネス」
誰にも聴こえない様に、静かに・・・そう、本当に静かにわたくしは闇を広げる言葉を呟いておきました。そうする事でやる気も出ますしね。
わたくしがこの大きな部屋を出る傍らで、神宮ソウジロウはまだ何やらを騒いでいますが、もう無理でしょう。ここまで来ればわたくしの勝利も近いですし、なによりヘルブラッククロスも確実に勝利の一手まで来ています。
怪人四天王、大幹部、そして組織の最終兵器の完成。
野望の成就はもうすぐそこまで来ているのですよ。
この世の正義なんて、全てが力。そう信じているわたくしは、静かに扉を閉める。
さて・・・逃げた花嫁を見つけないと行けませんね。
革靴を鳴らしてこのホテルを歩くのはとても心地が良いですよ。
次捕まったらどんな顔をするのか、とても楽しみですね。
きっと今のわたくしの顔を見るだけで、失禁でもするんじゃないんでしょうか?
ねぇ?鈴村ミヤコさん?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まさかあんなロックでわたしを止められると思っているなんて、甘くみているね?」
ミヤコが部屋を脱出してから、モノの数分でエレベーターを止められた。ある程度の構造は理解出来ている。
そこから脱出するのも簡単だろうと思っていたが、防火扉を閉められ、エレベーターもストップ。
意外にも脱出がバレるのも早かった。
だけど、普段運動していないミヤコでも、敵から逃げるのは得意だ。
エレベーターに刻まれた数字のレリーフは、30と書かれていた。つまり今ミヤコが居るのは30階だと言うこと。
次に・・・今ここに居るのはVIPエリアだと言うこと。
更に分かっているのは、もうすでにヘルブラッククロスによって、この神宮リゾートホテルは襲撃を受けた後だと言うこと。
「さーて、どうしよう、くふふ」
薄気味悪い笑い声を隠さずにミヤコは笑ってみせる。
流石に半分怪人の耐久力を使っても、30階から飛び降りるのは得策とは考えがたい。ギンジじゃあるまいし、ミヤコでは生きていても骨がバラバラになる。
そもそも生きて居ないと、ギンジに会えないしギンジと素晴らしく濃密な愛の時間を過ごせない。
「必ず生きてないと・・・くふふふ」
人気がまるでしないホテルの道は、嫌な静けさと悪に満ち溢れた香りがしていた。ただの高級のホテル、それだけでは無く、下卑た悪の巣窟になっているのだ。
「くふふ、こんなの、カエデモンキーに知れたら世界でも壊せるぐらい怒るんじゃないかな。くふふふ」
最後い笑ったのは、あの神宮カエデが怒り狂った顔を想像してからだ。どうにも可笑しく思える。
微笑ましい想像は程々にして、ミヤコは下に降りれる階段を探しにホテル内部を徘徊しに戻る事にする。
監視カメラがあるのは分かっていたが、それでも堂々とホテルの廊下を走り抜ける。いくらコソコソしていても、バレる時はバレるのだ。
強い日差しが当たる窓を何枚も抜けて、どうにか下の階に降りられる階段を探していく。
「ぜぇ、ぜぇ、広い・・・」
息を切らしながらもミヤコは階段を探し回る。どうせもう脱走はバレているに違いないし、その上おそらく戦闘員だけでは無く怪人もこちらに向かってきている。
戦闘員は逃げ切る事は出来ても、怪人や柏木タツヤがここに来て鉢合わせてしまえば、たちまちミヤコの敗けになる。
「ぜぇ、ぜぇ、早くにげない、と・・・ぜぇ、くふふ、ぜぇ」
運動不足がたたってか、足腰が痛くなる。蒸す様な暑さがミヤコの身体を蝕み、汗も止まらない。
大粒の汗をボロくなったセーラー服の袖で拭うと、拭きとった額から汗がにじみ出てくる。
暑くて、苦しくて、それでもミヤコはここからの脱走を試みた。
「ぜぇ、ギンジ君が今どう、なってるか、はぁ、知りたいしね」
全ては愛するギンジの生死を確認したい。彼が死んでいるとするならば、きっと生きている意味はもう見いだせず再び孤独になるだろう。
でも生きているならば、なんとしても会いたい。
「会って・・・」
会って・・・愛し合いたい。全てが消えるまで、全部終わるまで、とにかく一つになりたい。
鈴村ミヤコはもう自分で分かっていた。
本当はギンジの心が欲しいと思っていながら、今は自分の方がギンジに心奪われていた。
カーペットの道を、長い遠い道を走り続けて、ミヤコはついに階段を見つける。
防火シャッターも降ろされていない。
ならばこれをチャンスとして、ミヤコは下の階層に駆け下りる。
「くふふ、とりあえず水がほしいな」
ここまで来るのに大分時間を使ってしまった。
汗も止まらない。
少し休憩がてら水でも飲みたい。
とは言え脱走を知られている以上、あまり悠長にもしていられない。
「くふふふ・・・ぜぇ、さて・・・どうするのかな、柏木」
ここから先、おそらく待ち構えるのは戦闘員と怪人。
ミヤコを捕まえる怪人が触手、犬、紐の怪人なのであれば、言葉巧みに躱せる自信があるし、自分の味方として操る事も出来る筈だ。
そして最悪なパターンとしては、リコニスや柏木、紫の造った怪人。
これがミヤコの前に立ちはだかるとすれば、ミヤコ一人では勝ち目がない。例えミヤコの専用装備があったとしても、勝ち目は薄いだろう。
階段を降りきった先、突き当りのフロアはYの字に別れたホテルの道。
29階から28階に進む階段は存在せず、壁になっていた。
「くふふ、難しいね・・・逃げ切るのは」
今現在29階。ゴールは1階。
ヘルブラッククロスのダンジョンとなったこのホテルから、ミヤコは無事逃げる事は出来るのだろうか。
「果てしなく遠い道のりだよ。ギンジ君に会うのも難しいなんて、まったく・・・」
自分は愛するあの人に想いを伝えたいだけなのに、どうしてこんな目に合わないと行けないのか。それが納得行かない。
「そうだねぇ、うんうんまったくって気持ちだよね」
ミヤコが気づかない程近く、そして気配も無く、その声が聴こえた。
「!?」
その声は頭上から聴こえた。
汗でベタついた黒髪を揺らして、ミヤコは天井を見やる。
驚きに瞳孔が開いたその瞳に見えたのは、怪人の瞳が6つもあるグロテスクな顔をした、腕が六本ある怪人の姿。
燕尾服に身を包み、物腰仕草そのモノは丁寧に見える。
だが、その姿からミヤコも感じるのは、得も言われぬ重圧な闘気。
「誰かな?」
ミヤコは口角を不敵にあげて、その顔を崩さないまま怪人に声をかける。
「お初!オイラは蜘蛛の怪人。この度、ヘヴンホワイティネスを撃退したとして、新しく怪人四天王になったイケ怪人さ☆」
地球を割ってしまいたくなるほど苛つく喋り方に、ミヤコは無言のままでいる。
そして蜘蛛の怪人はキレッキレの動きで天井から飛び降りると、ミヤコに顔を近づけて信じられない事を口にする。
「さ、気持ちよくなろうぜ」
何よりも怖気のする言葉だった。
・・・・・・・・・・・
チュインッ!
コンクリートや木製の何かが、糸を弾く。そんな音が聴こえた。
弦楽器の弦を一本、指先で弾いた様な音。
その音が聴こえた瞬間、ミヤコの眼の前でホテルの廊下の一部が削れる様にして崩れた。
壁を削り、柱を崩し、窓は音も無くバラバラになっていく。
床も綺麗に四角く削られ、その断面図は粗が一切無いキレイな切り取り方。
蜘蛛の怪人の糸攻撃は、ミヤコが興奮しては怪人開発のプロフェッショナルとして、一喜一憂する気持ちになりながらも、なんとか糸に捕まらずに逃げ切れている。
「ほいほいほい!逃げるなよぉ、オイラと気持ちいい事しようぜ〜糸で縛られるのって、痛気持ちいいんだぜ〜」
蜘蛛の怪人はまるで余裕な態度と声音で、ミヤコに性交を迫る。
女ならば誰でも良い怪人らしい欲望に忠実な怪人だ。紫がこれを造ったのならば、師として弟子の成長と成果を素直に褒め称えたい。
「くふふ、困ったな〜・・・」
糸の攻撃はほとんどミヤコには当たらず、逆にミヤコ以外のモノを的確に狙っている。
足場だったり、置物だったり、ホテルの壁だったりだ。
それらを蜘蛛の怪人が自分の方向に引き寄せる様にして、細切れにしている。
ミヤコの行動を阻害する様に、しかしミヤコを傷つけない様に。
個人の性格はともかく、怪人の能力としてはかなり優秀な様だ。
「オイラと気持ちい事すればアレよー甘いとろける時間をプレゼントするよーシャッチョサーン?モリモリ気持ちよくなって、一緒にイケるよー?オジョーサーン?」
チュインッ、チュインッ、チュインッ。
「わわ、危なっ、ほっ・・・ひぃ!」
「あー柏木さんのお嫁さんて、ビビる声も可愛いんだね。オラ、来いよクレバー抱いてやる」
燕尾服の胸元を開けながら糸を射出しては、ミヤコの数歩先を糸で破壊しては妨害してくる。
「くふふふ、君とはお断りかな・・・」
あんな怖気のする顔の怪人だったら、例えギンジ君だとしても無理だ。眼が6つもあるのはマジで無理だ。
「わたしを抱いていいのも、わたしの初めてを貰えるのも、進化の怪人だけなんだ。ごめんね」
「じゃあ進化の怪人の後でいいからさ、ヤろうよーシようよー」
「ああ、カエデモンキーが怪人を嫌う理由が少し分かった気がするよ」
そこまで走りながら、ミヤコはあるモノが眼に入った。
四角い箱状のモノに地下鉄製の小さな扉の様なモノ。それは地下焼却炉行きと書かれた箱。
取っ手のついた箱の扉は、人一人ぐらいは簡単に入れそうな四角い蓋がついている。人一人ぐらいとは言っても、それはあくまでミヤコの身長基準での目測ぐらいでしか無い。
息も絶え絶えではあるが、ミヤコはそこでようやく動きを止める。
それと同時に蜘蛛の怪人も動きを止める。
糸の射出も止めて、ようやくミヤコを捕まえようと、のしのし近づいてくる。
「ねーねー、蜘蛛の怪人」
「なんだい。オイラ、お前さんを気持ちよくしたいんだが良いかね?」
「くふふ、残念だけど【小さい】のには興味が無いの。わたしはほぼ毎晩【大きい】のしか見ていないから」
「なら見てみるか?身の丈にあった振る舞いをしろ」
ミヤコと蜘蛛の怪人は相対する様にして、直線状に立つ。
「見せてやる、とっておきの・・・オイラのブツをなぁ!」
蜘蛛の怪人が出したのは、粘着性の糸。ミヤコの挑発に乗った様に見せかけて、ここでミヤコを捕まえるつもりでいたらしい。
しかし、ミヤコはそれを読んでいた。
「くふふ、そうすると思ったよ」
怪人開発のプロフェッショナルとして、ミヤコは行動を読んだ。そうなるように誘発までして。
「蜘蛛の糸の射出って、人間の目視では視認できない程の速さって、知らなかったようだな!オラ、気持ちよくなるんだよ!提示せよ」
粘着糸が2人の中心、真ん中にまで伸びる。
「くふふ、それは虫の基準だよ。怪人の体積で打てば、当然重さが増える。更に大きくなる。そして・・・」
粘着糸がミヤコの顔の前にまで伸びる。
「取った!気持ちよくなろう!いちご泥棒!」
「視認出来る」
粘着糸がミヤコの顔を捉えず、奥の箱の蓋にくっついてしまう。
顔に当たる直前でミヤコが糸を避けたのだ。
「ふんっ!」
粘着糸をひっぱり、箱の蓋が手前に引っ張られて壊れてしまう。
「くふふ、人間だったら避けられないと、そう思っていたね?」
粘着糸を手元まで戻している蜘蛛の怪人に、ミヤコが勝利を感じた笑みを見せる。
そして蜘蛛の怪人に見せつける様にして、ドクターミヤコはメガネを外して自分の左目をまざまざと見せつけた。
「わたし、ただの人間じゃないんだよ。半分は怪人、半分は人間、全て合わせて・・・
「だからなんだってんだい?オイラと気持ち良くなる未来は変わらんって!」
ここまで来ても蜘蛛の怪人は諦めていない。
「そう?意外とそんな事無いかも知れないよ?くふふーふふ」
ミヤコの不敵な笑みに、蜘蛛の怪人はますます何かの焦りを感じる。
「クソ、なんだそのムカつく顔!可愛いね」
そして蜘蛛の怪人がミヤコを捉える攻撃を開始しようとした瞬間、鈴村ミヤコは後ろ振り向いて全力で走り抜ける。
「あれ、逃げるの?無理しなくていいんだよ」
「くふふふ、さようなら!」
「って待て待て!それは、その先はおい!」
ミヤコが走り出した先を見て、それが何かを理解して蜘蛛の怪人は途端に焦りだす。しかし糸を射出すれば、ミヤコを傷つける為に攻撃が出来ない。
粘着糸を取り出そうと準備をするも、蓋にくっついたまま切断するのを忘れていた。
この状況、このタイミング、この逃走経路の確保。
そしてミヤコの向かう先。
その場所は・・・。
「ダストシュート・・・!一杯食わされた!」
あまつさえ、蓋を破壊して逃げやすくしてしまった。
「くふふ、怪人の身体なら・・・多少は・・・!」
もしかしたらどこか折るかも知れないが、なんとしてもここを脱出しないと行けないミヤコは、一か八かでこのダストシュートに飛び込んだ。
「待てぇぇーー!」
蜘蛛の怪人が粘着糸を再び射出するが、ダストシュートの入り口では無く、そこから少し右にズレた所に糸がくっつき、ミヤコはそこから少し遅れてゴミの通り道を落ちて行った。
「クソ!オイラとした事が。やべーよ、柏木さんに怒られちまう」
29階。
ダストシュート前にて、標的を逃した蜘蛛の怪人はやるせない気持ちになりながら、ミヤコを追いかけようと地下を目指す。
すぐ近くのエレベーターのボタンを押すが、反応が無い。
「あ・・・客とか従業員が逃げられない様にするために、電源落としたんだったな。今宵の月の様に」
またしても自分達のミスによって、皮肉にも今度は自分がエレベーターを使えなくなる事に困る事となった。
・・・・・・・・・・・・・
現在の状況
神宮ソウジロウ、地下倉庫で監禁。
鈴村ミヤコ、ダストシュートでひゅーー。
29階→?階。
蜘蛛の怪人、29階で憤慨する。
柏木タツヤ
・・・・・・・・・・・・・・
続く
お疲れ様です。
久しぶりに蜘蛛の怪人も出てきましたね。こいつを出す度に、物語がほっこりする気がします。絶景かな。
キャラネタ書きます
鈴村ミヤコ
言わずと知れた怪人開発のプロフェッショナル。
そしてギンジ愛にまみれた強欲の怪人二代目。
ギンジ君といちゃいちゃしたり、ギンジ君とラブラブしたり、ギンジ君と良い夫婦したりしたい。毎晩大きいのを見ているとは・・・。
「あ、触ってないよ。くふふ」
聴いてません。
蜘蛛の怪人
相変わらず気持ちよくすればコロっと堕ちると思っている。
まんまとミヤコに出し抜かれた。
神宮ソウジロウ
リゾートホテルで仕事していたらヘルブラッククロスの襲撃に出くわした。私兵を引き連れて撃退を試みたが、鋼の怪人と武者の怪人により返り討ちにあった。現在地下倉庫で監禁中。
柏木タツヤ
公安警察だが、ヘルブラッククロスの大幹部でもある気味の悪い男。
ミヤコと結婚しようとしているのは、あくまで彼女の心を壊すため。
ギンジが戻ってきたら眼の前でひどい事してやろうと考えている。
ロリコンの癖に頭良い。
・・・
次回はギンジ達も再度出てきます。
ミヤコ探しと治安の回復に務める中、ギンジの前にあの女が現れ・・・
なお話を予定しています。よければぜひ。
あと最後に、この章ではギンジがなつかしのセリフを言います。どこで言うのかもお楽しみに。
それではまた次回!またお会いしましょう!