正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちは、アトラクションです。

4月入ってから忙しいですね。新卒にはモンスターしか居ないんか、と。

体調を崩さずに皆で4月を乗り越えよう!


81・その少女は恐怖を知り

 神宮邸。この日本に知らない人はほぼ居ないと言われる巨大な財閥企業、神宮財閥の本拠地であり、神宮カエデの実家。

 

 四角く広がった大きな柵の中にそびえ立つ様な巨大な家と、白煉瓦が綺麗に敷き詰められた枯れ葉一つ無い、完璧な清掃が行き届いた道を超えた場所にあるスペースは、神宮の家で働く者は全てが敷居を超えて歩く道になる。

 

 この居住のスペースとも呼べる大きな場所の更に奥、神宮ソウジロウが本来の仕事をするに当たって使われる、ドーム状のこれまた大きな建物があり、そこには木の根が張り巡らされた、財閥の家としては少し怪しい建物があった。

 

 美しい木々に囲まれた建物は一見すれば不気味さと、お化け屋敷の様な怖さをも感じさせる。

 

 しかし近くで見れば見るほどとても手のかかる造りをしており、張り詰めた木の根も、何本も別れる様にして張り付くのに相当の年月をかけているのがわかる。

 

 意図的にそうさせたデザインで造られているとこも含めて、神宮財閥の一つ一つのこだわりが伺い知れる。

 

 そんなドーム状の建物の中にある、外の見た目とは裏腹に内装はとても綺麗で荘厳な雰囲気な通路は、ここが仕事場だと言うのを忘れてしまう程快適な空間であり、とても財閥のトップがここで仕事をしているなんて信じられないだろう。

 

 そんな豪華な内装の中の通路で、長い黒髪を一つに束ねた、一瞬だけ見ればその後ろ姿は女性の様にも見える人物が、ある場所を目指して歩いていた。

 

 ピシッとしたスーツに、歩幅の大きさ、肩幅の広さを見てそれがすぐに男性だと理解出来る。

 

 その男性が歩く右腕には、『神宮財閥御庭番衆』の文字が書かれている赤い腕章。

 

 卸したてとも見える程新品同然に綺麗なスラックス。

 

 背広も動揺にシワや埃ひとつ無く、しつけ糸のつっぱりなんてどこにも感じない清潔感あふれる姿。その背中には束ねている黒髪が一本も乱れる事無く、真ん中で揺れている。

 

 そこまで見ていれば綺麗な身なりをした、神宮財閥の人間だと理解出来て更に言えば、この敷地内を守る事に命をかけている番人だと言う立ち位置だろう。

 

 一番物騒なのが、姿勢の良い身体に非常にマッチしている、腰にかけられ、スーツの裾をわずかに上げている長い何か。

 

 長くて棒にも見えるし、棒にしては丸みの少ない形をしている。

 

 彼が腰にかけているモノは、白い鍔をつけた美しい木々の装飾が施され、手元に入る枠の中では、『神宮』のレリーフが刻まれている。

 

 刀。それがこの男性の腰に装備された、神宮財閥を守る男の武器。

 

 彼の名前は十五夜(じゅうごや)ヒトシ。

 

 掘りの深い目元に生の輝きを宿した、好青年。

 

 その印象がより強く見えるオールバックにしたロングテールのヘアスタイル。

 

 きっちりした性格が見て取れる真面目な印象のヒトシは、自分がお仕えするべき少女からの呼び出しで、心を踊らせていた。

 

 (カエデお嬢様・・・!ついに私を指で使う時が来たのですね!)

 

 8月30日。午後17時。

 

 この日、この神宮財閥の次期CEOとなる、神宮ソウジロウのご息女。

 

 神宮カエデが血相を変えて、自分を指名してくれたのだ。

 

 (御庭番衆隊長として、とても嬉しく思いますぞ)

 

 幼き頃からカエデの成長を見守ってきていたヒトシは、ついに自分を呼び出す程の大きな局面に立ち、成長の一歩を踏み出そうとしているのと勘違いしていた。

 

 「全てこの私目におまかせください!!」

 

 カエデお嬢様の期待に答えるべく、ヒトシは大声でカエデに呼び出された場所に向かう。

 

 円卓会議場と書かれた部屋の中では、何やら会話の声が聴こえていた。

 

 「失礼します──」

 

 ヒトシがノックをして、円卓会議場に入室する。

 

 きっとこの会話の声は、カエデの学校の友人のモノだ。

 

 なるほどこれは勉強の為に呼ばれたのか、とヒトシは尚更期待の意思を強くして扉を開けた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 神宮ソウジロウ。その名と、人物をオーク怪人は聴いた事があった。

 

 一度襲撃の為に情報を調べておいて欲しいと、ドクターミヤコに命令され、彼女の為にわかる事は全て調べた事さえある。

 

 弱点である家族、強みとなる個人で所有するには大きすぎる私兵財団、そしてなにより何代も渡って確実な方法と手段を用いる経営手腕。

 

 正直言ってオーク怪人でも知識勝負だったら、勝つのは難しいとさえ思わせる、様々な意味合いを持って大きい存在であると思わせた。

 

 まさかあの神宮ソウジロウの娘が、あのヘヴンホワイティネスであるとも思わなかったし、その襲撃を行おうとした計画を練っていた翌日、オーク怪人はヘルブラッククロスを裏切って、ヘヴンホワイティネスに寝返ったギンジに敗北したのだ。

 

 昔と言うほど昔ではないが、遠い過去の思い出の様に感じる。

 

 「あ、そろそろ来るわよ。怪人バカ3人はサングラスかけてよ」

 

 オーク怪人の今居る場所は、神宮財閥の本拠地であり、さらに中枢となる円卓会議場。

 

 ドクターミヤコを奪還するためにギンジが集めた、ヘヴンホワイティネスを中心とした、オーク怪人が知る限り最大限の実力を持った最高峰の人物達だ。

 

 そしてこのオーク怪人をバカと言い放ったのは、ヘヴンホワイティネス、通称ヘヴン1の神宮カエデ。

 

 「おいおい、俺はいつでもサングラスだぜ」

 「あんたもバカなんだからいいのよ」

 「理由になってねー」

 

 オーク怪人の隣に座る男は佐久間ギンジ。

 

 そんなギンジは、神宮カエデと息の合った会話をしており、オーク怪人は少し寂しく感じる。

 

 「俺っちもサングラスかけてますぜ!準備は万端だオラァ!」

 

 何気に一番気合が入っているかも知れない、そんな掛け声を上げたのは赤鬼の怪人。

 

 元々は怪人四天王の一人だった怪人が、何かの間違いなのか、それともこの怪人の気分だったのかは不明だが、気がついたらこの怪人もヘヴンホワイティネスの一番槍みたく持ち上げられている。

 

 しぶしぶサングラスをかけたオーク怪人は、ギンジと赤鬼と同じ様にこれから部屋に入る人物に正体をバレない為の措置を取る。

 

 この円卓会議場に居るのは、ドクターミヤコの最高傑作である、進化の怪人こと佐久間ギンジ。

 

 ヘヴン1・神宮カエデ

 

 ヘヴン2・宮寺レン

 

 公安警察・甘白ミドリコ

 

 ヘヴン4・赤鬼

 

 魔に踏み入れた少年・角倉ケイタ

 

 退魔警察・熊沢レイナ

 

 魔法少女・小町サクラ

 

 ムーン・パラディース・月島ルカ

 

 そしてオーク怪人。

 

 一応戦闘要因ではないが、山吹イロと藤原と言う赤いジャケットを着た中年の男もここに座らされていた。

 

 「失礼します─」

 

 扉の外から声が聴こえた。落ち着いた男性の声が、オーク怪人の耳の中に入ると怪人だと騒がれる事に少しだけ警戒する。

 

 (ブヒ・・・なぜ私が部屋に入る者に、それも人間に正体を知られてはいけないのだ)

 

 自分は怪人。ヘルブラッククロスの怪人であり、ドクターミヤコの一番の側近なのだ。

 

 何故そんな事でやきもきしないと行けないのか。

 

 「来てくれてありがとう、十五夜」

 

 円卓会議場に入ってきた男は、スラリとしており姿勢良くテーブルに向かってくる。

 

 「お礼なんてとんでもありません。お嬢様」

 

 カエデの前でヒトシが片膝を付いて丁寧にお辞儀を行う。

 

 「ふん・・・」

 

 オーク怪人からはカエデと、十五夜と呼ばれた男の関係性と、その関係性の中での動きと主従関係がとても退屈に思える。

 

 (リコニスでは無いが、この場面を破壊してやりたいな)

 

 今、自分が本気で暴れれば、きっとあの男とヘヴンホワイティネスを捻り潰す事は出来るだろうか。

 

 しかしそんな事はきっとギンジがさせてくれないだろう。ついでに言えば赤鬼も邪魔をしてきそうだ。

 

 ドクターミヤコを助けなければいけないのに、無駄に命を削る事をしなくても良いだろうと、オーク怪人は上から目線で物事を考える。

 

 「カエデ、この人は?」

 

 レンがヒトシの姿を見てからカエデに視線を動かしつつ、カエデに聴いてみる。

 

 「彼はこの財閥の御庭番衆の隊長でもあり、あたしの執事なのよ。なんでもソツ無くこなせる最強の執事、ね」

 「お嬢様、あたし、ではなく、わたくしと呼称くださいませ」

 

 カエデの一人称に品が無いと注意するが、カエデはいつも通りのわがままな通しを行う。

 

 「おいおいカエデって普段家だとちゃんとお嬢様してるのか〜?」

 

 今度はギンジがちゃちゃを入れると、ヒトシが腰にかけている刀に手をかける。

 

 額には血管を浮かばせて、ギンジに殺意の目線を向ける。

 

 「貴様・・・カエデお嬢様になんだその態度は。どこの馬の骨とも知れん者が、愚弄する気か?」

 

 一瞬で空気が悪くなる。ギンジもへらへらした態度はなりを潜め、怪人らしい敵意を見せてしまう。

 

 「ちょっとヒトシ!止めなさい」

 「・・・」

 「なんだよ、何見てんだよ。何か言えよ」

 「ギンジも!やめて!」

 

 今2人が言い争いなり、喧嘩なり始めればオーク怪人も少しだけ気が晴れるかも知れない。

 

 しかしそんな事が起きる事は無く、2人の敵意むき出しの視線は程なくして収まった。

 

 「あんたはあたしの下僕なんだから、余計な事しないでいいのよ!」

 「げ、げぼ、く!?」

 

 カエデがギンジという不躾にも程がある存在に対して、下僕と言い放った事に、ヒトシは信じられない表情をしている。

 

 「おうよ、この方はカエデの姉御の下僕であり、俺っちの兄貴なのさァ!文句でもあるかいこんちくしょー!」

 「よさないか赤鬼!」

 

 ギンジに向けられた殺意が気に入らなかったのか、赤鬼が憤慨するがそれをミドリコが制止させる。ミドリコが止めに入るだけで一瞬にして椅子に座り直す赤鬼は、傍から見たら飼い犬の様に見える。

 

 「お、お嬢様・・・彼らはいったい・・・そ、そもそも、何故私が呼ばれたのでしょうか・・・」

 

 この円卓会議場にて、様々な年代層のカエデの友人?達が集められ、ヒトシは自分が呼ばれた理由が分からなくなってしまった。

 

 決して勉強を教えるとか、恋愛相談を聴くとかではなくなってしまっている。

 

 おまけにカエデお嬢様の下僕と言う変な男までここに居る。

 

 「ギンジ、一応あんたの社員証あるんだから見せてあげなさい」

 「ああ、ほら」

 

 嫌そうな顔をしているが、ギンジは懐から神宮財閥の社員証を取り出すと、それをヒトシに見せびらかす。

 

 【佐久間ギンジ】

 社員番号00124563

 役職・神宮カエデの下僕

 

 【以上、この者を神宮財閥本社勤務の者とする】

 

 「ふざけるな!!」

 

 ヒトシが内容を見てギンジの社員証を手で払う。

 

 役職がお嬢様の下僕とか聴いたことが無い。それは誰もが思う事だが、ヒトシはギンジの胸ぐらを掴んでカエデの目の前に引っ張り出す。

 

 「お嬢様!こいつはどう見ても輩ですよ!YAKARA!」

 「なんだよオイ!輩じゃねーよ!」

 「ええい貴様は喋るな!お嬢様に菌が感染る!」

 

 ひどい言われようである。

 

 神宮財閥の人間はひたすらギンジを苛つかせる人しか居ないのだろうか。

 

 「ブヒ・・・いいから本題を話すべきではないのか?」

 

 暴走しそうなこの雰囲気の中で、オーク怪人が声に重さを乗せて話し始める。

 

 「いい加減時間が無いのだぞ。この私が貴様らと協力するのはこれっきりにしたいのだ。早く初めたらどうだ」

 「何よ・・・豚の癖に偉そうに・・・」

 

 ここでもカエデとオーク怪人によって空気が悪くなるが、今度はギンジが間に入って止める。

 

 しかし止める事は間に合わず、ヒトシが刀を引き抜いてオーク怪人に迫ってきた。

 

 「貴様らぁ!我らがお嬢様に向かってなんて口の聴き方を!」

 「・・・飾りではないのだろう?その刀。試すか?」

 

 うんざりするほど待たされているオーク怪人は、ヒトシに向かって見せている視線を動かさず見つめている。

 

 「もう!十五夜はとりあえず動かないで、あたしとこの下僕の話を聴きなさい!あたしの眼の前で刀を引き抜くのは禁止よ!」

 「御意・・・」

 

 カエデの命令には素直に聞き入れるヒトシは、オーク怪人には眼もくれずカエデの隣に戻る。

 

 「・・・それじゃあ、先ずはあたしから話すけど・・・」

 

 カエデが腕を組みながら立ち上がると、ヒトシが椅子を引いて立ちやすい様に補佐する。この仕草が執事らしく、少しだけギンジが羨ましく思う。

 

 (俺にもあんな仕草が出来ればなぁ) 

 

 とは言えギンジがカエデの為にそうする姿を想像すると、少しこそばゆい。

 

 ギンジを初め全員の視線がカエデに集中すると、カエデがひと呼吸置いてから、これからヘヴンホワイティネスがすべき事を話はじめた。

 

 「先ず・・・ギンジからの報告にあった通りで、今有姪海岸にあるあたしのリゾートホテルが、ヘルブラッククロスに襲撃されているみたい。これについては家の者が探りをいれた結果、間違いないみたい」

 

 カエデの口調は淡々としており、全員の耳に良く入る。

 

 「次に・・・こっちで調べた結果なんだけど、先程からお父様と連絡が取れなくて、正直参っていたのよ。そしたら、ホテルの中にはあたしのお父様が居るって報告まで貰ったわ」

 

 カエデの話す内容がギンジの心臓を掴んでくる。ミヤコだけではなく、そこにはカエデの父親まで居るようだ。

 

 「お、お嬢様・・・そのヘルブラッククロスとは・・・?」

 

 十五夜ヒトシはカエデが正義のヒーローとして活躍している事実を知らない様子で、困惑している。仮にも自分の上司でもあり、雇い主である財閥長・神宮ソウジロウがその聴いたことの無い組織に囚われている。そう聴こえる内容にヒトシは更に困惑していく。

 

 「ごめんなさい。あまり悠長に説明している場合じゃないの。そこに居るあたしの下僕の・・・」

 

 カエデが今から言おうとしていた事は、ミヤコの事だった。

 

 ギンジに対するあの想いは本物。それを知っているカエデは、自分の恋している相手でもあるギンジのを造ったミヤコの事をなんと呼ぼうか一瞬迷ってしまった。

 

 だけど・・・。

 

 カエデにも、レンにも、ミドリコにも、ケイタにも、赤鬼にも。

 

 そしてギンジにも、間違いのない共通認識があった。

 

 「・・・あたし達の仲間が、そのテロ以下んぽゴミ組織に捕まってるのよ」

 「・・・つまり、カエデお嬢様のお仲間を救出するべく、私が呼ばれたと言う事でございますか?」

 

 年下でも自分が守らなければならない護衛の対象は、キッとした表情で強くヒトシを見つめる。

 

 「そうよ・・・そしてもちろんだけど、あたしのお父様も助け出すわ・・・」

 

 カエデは右腕にかけている赤いリングをヒトシに見せつける。

 

 「カエデ・・・」

 

 長らく隣で戦ってきた相棒であるレンは、カエデが今から何をしようとしているのか理解した。

 

 自分の正体をヒトシに教えるつもりだ。

 

 「いいのか。教えても」

 

 次はギンジがカエデに声をかける。カエデは無言で頷くと、ギンジとレンにヒトシという人間の強さを改めて教える為に、再び声を出す。

 

 「ええ・・・ここに居る十五夜は、あたしが知る限りでは、ミドリコと同じぐらいの強さを持ってるわ。あたし達の事情を知ってくれれば、彼は協力する。出来ないなんて言わせないわ」

 

 一直線を貫き通すカエデの言葉に、ヒトシは硬唾を飲み込む。

 

 そこからカエデの取った行動は、赤いヘヴンリングの力を開放した姿の変容。つまり・・・変身であった。

 

 円卓会議場に眩い光が溢れると、一瞬にして閃光が強まり、光はカエデの身体に纏わりついていく。

 

 光が収まると、十五夜ヒトシの目の前に現れたのは、カエデのボディラインを強調させる白を基調としたスーツに、胸から足まで赤いラインの入った、バトルスーツの姿は現れる。

 

 「お、お嬢様・・・」

 

 この日・・・十五夜ヒトシは、自分が仕えるべき主君の息女が、ニュースや町中で見たことのある、あの正義のヒーローの姿を目の当たりにした。

 

 「・・・あたし、正義のヒーローなの!」

 

 その一言は混乱を大きくすると同時に、まだ幼いと思っていた少女が、巨悪と戦う程に成長している事にヒトシは感動した。

 

 「・・・十五夜、あたしの、いいえ」

 

 純白のヘヴンスーツの姿のまま、カエデは今の自分を改めてヒトシに告げる。

 

 「わたくしのお父様と、仲間の救出・・・手伝ってくださるかしら」

 

 神宮カエデの、令嬢としての言葉で、その重みのある発言はヒトシの耳に強く入り込んだ。

 

 もちろん神宮御庭番衆隊長の答えは・・・。

 

 「この十五夜ヒトシ、命に変えても・・・お力添えをさせていただきます」

 

 片膝をついたヒトシの一礼に、カエデは嬉しそうな顔で新たな戦力を受け入れた。

 

 目的は神宮リゾートホテル。

 

 向かうはヘヴンホワイティネス、退魔警察、魔法少女、ムーン・パラディース。

 

 そして神宮御庭番衆隊長。

 

 そしてもう一人の男・・・。

 

 「・・・ふん」

 

 つまらなさそうに鼻を鳴らすのは、オーク怪人。

 

 彼だけはこの空間の中で、ひたすら退屈と悪意に満ちた表情を見せていた。こんな事で時間を使っていて良いのだろうか、と。

 

 今こうしている間にも、ドクターミヤコはあの柏木タツヤによって苦しめられているのでは無いか。

 

 辛い思いをしているのでは無いか。

 

 そうだと分かっているのにも関わらず、どうしてギンジまでもがこんな事に時間を使っているのだ。

 

 それがとにかく気に入らなかった。

 

 一つの輪に混じらない孤立した怪人が、平穏の中には決して相容れないまま、闇が色濃くにじみ出ていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 各々がリゾートホテルへの出撃の準備をする中、カエデとレンはオーク怪人に呼び出されていた。

 

 元々敵同士でありお互い信頼が無いからか、かなり険悪な状態になっている者同士、呼び出すと言う事に何か裏があるようにも思えた。

 

 しかし裏なんて何も無い。

 

 オーク怪人が問いただしたい事は、こんな事をしていて手遅れになるのでは無いか?という心配事。

 

 ならばオーク怪人一人で救出に行けば良い・・・自分だけの力で突撃すればその方が早いだろう。

 

 しかし・・・そうする事だけでは、ミヤコの救出は出来ないとオーク怪人は既に観えていた。

 

 オーク怪人のフェーズ2としての能力、確定未来。

 

 断片的にしか観えない数秒先だったり、数時間先だったり、何日後の一部の未来を切り取って脳内に映像化するオーク怪人の固有能力では、単身で乗り込んでも、怪人四天王に止められ敗北する未来が観えていた。

 

 故に一人では無謀。

 

 しかしオーク怪人に頼れる存在は居ない。

 

 だけど早く母親と同等の存在を早く助けに行きたい。

 

 それなのにヘヴンホワイティネスは悠長に事を構えている。

 

 それがオーク怪人にはとても気に入らない。

 

 本気でドクターミヤコを助けるつもりがあるのだろうか。それがオーク怪人の気になる所である。

 

 「ブヒぃ・・・!」

 

 歯を食いしばりながら、ドスドスとわざと足音を立てては、廊下を肩で歩く姿が異様に見える事だろう。サングラスをかけていれば、怪人と認知されていないのと裏腹に、仮の姿に認知されている姿は大柄な軍人そのモノ。

 

 使用人は疎かある程度の戦闘技術を持った人でさえ、人間とは思えない強烈な怒りと殺気に道を開ける始末である。

 

 オーク怪人がカエデとレンを呼び出した際に、カエデには場所を指定されていた。その場所は円卓会議場から少し離れた所にある、神宮財閥の私兵達の訓練場。

 

 そんな所に場所を移動させると言うことは、恐らくヘヴンホワイティネスも気づいている。オーク怪人が怒っているという事に。

 

 ここから一戦交えるつもりは無いが、どうせあのヘヴンホワイティネスの事だ。きっと難癖をつけて来てはオーク怪人の事を仲間外れにでもするのだろう。

 

 そんな事は確定未来を観なくても解る、解りきっている。

 

 オーク怪人の目の前にある扉を開けば、その先は神宮カエデに呼び出された訓練場。四角いリングの他、辺りを見渡せば木製の打ち身台や、訓練用の武器が並べられた壁に、休憩室と思わしきガラス張りの小さなボックス席などもある。

 

 財閥所有の訓練場とだけあって、すぐ近くのトレーニングルームもヘルブラッククロスの戦闘員養成所と遜色ないレベルのクオリティを醸し出している。

 

 そんな四角いリングの上。ど真ん中では赤と青のヒーロー2人が、オーク怪人を待ち構えて居たのか、変身したままの姿でオーク怪人を迎え入れた。

 

 「あんたからのお呼び出しなんて、不気味な事もあるのね」

 「・・・私達に、そこまで邪険にしないで、ほしい」

 

 当然そのヒーロー達は、神宮カエデと宮寺レン。

 

 お互いに相容れない敵同士だったからこそ、今でもここに集う三人は険悪な関係に近い。

 

 会わない理由ならば、今でも敵同士だから。ギンジが間に入るからこそ、この場の三人は嫌でも顔を合わせてきた。

 

 「邪険にすると言うのであれば、それは貴様らもだろう。いい加減立場をわきまえるのだな」

 

 偉そうな態度でオーク怪人はカエデとレンに嫌味を言い放つ。

 

 それを聴いたカエデはより強くオーク怪人を睨みながら、両腕のガントレットを鋭い回転音を響かせる。

 

 静寂の中に金属のギアの回る音が鳴っている。それはまさしくヘヴンホワイティネスの戦闘態勢が整っている事を表すには十分な反応。

 

 「ミヤコを、お互いに助ける・・・その筈なのに、どうしてオークは、私達を敵視しているの」

 

 今度はレンがビーム剣に握る力を強くする。カエデとは違い、どこかオーク怪人と友好的な姿勢をわずかには見せている。

 

 「ブヒ。知れた事、貴様らなどの手を借りずとも、私一人でもドクターはお救い出来る。お前たちの仲良しごっこの茶番を見せられるだけでも、人間同士の馴れ合いには怖気がする」

 

 それはあまりにも残酷な嘘だった。理由なんてどうでも良い。オーク怪人にとっても、誰とでも分け隔てなく接する事が得意なカエデでも、この2人は性格的に合わないのだ。

 

 合理的に考えながら効率よく動こうとする者。その為に捨てられるモノは何でも捨てるのがオーク怪人。

 

 出来る限り助けられる者は全て助けて、例え悪人でも命までは奪わず、仲間でも友達でも大切にするのが神宮カエデ。

 

 元々敵同士、今でも非協力的な、仲間とも敵とも言えない微妙な関係性。

 

 ギンジが居なければ、一生口を聴くことすらありえない、そんな関係。

 

 だけどお互いに協力しないと行けない共通の目的が出来た。

 

 それはドクターミヤコという、ヘヴンホワイティネスにとってもオーク怪人に取っても大事な仲間が、敵に囚われていると言う事。

 

 「あんたの親みたいな存在なんでしょ、ミヤコって」

 

 カエデが静寂の中でも良く聴こえる声量で、リングに向かってくるオーク怪人に声を出し続ける。

 

 「私を造り、ギンジを造ったお方だ。そう呼んでいるだけで、実際に親では無いがな。貴様らは。ドクターに恩義でもあるのか?」

 

 どうしてカエデ達もミヤコを助けたいのか。その真意を聴いておきたいのも事実だった。

 

 「あたし達の装備や、未来の技術のメンテしてくれたり、ギンジのメディカルチェックしてくれたりさ・・・これまでの戦いだって、バカミヤコが居てくれなかったら、結構危ない局面も多かったのよ」

 「私達の装備だけじゃなくて、賑やかな雰囲気もくれた。もう、ミヤコは捕虜なんて、器じゃない。大切な、仲間の一人」

 「ブヒ。そう思うなら、何故あんな茶番で時間を使っているのだ?助けに行くべき場所が解り、敵の目的も把握した・・・だのに・・・」

 

 硬く拳を握りながらオーク怪人は軍帽を払い落とす。

 

 「・・・あたし達だって別に何も考えてないわけじゃないわ。あんたみたいな子豚ちゃんに言っても分からないんでしょうけどね」

 

 カエデもガントレットとブーツのギアを回転させる。そうする事でスチームが吹き出てくる。

 

 レンもビーム剣を蒼く光らせて、オーク怪人の次なる動きに警戒する。

 

 「あんたは別に参加しなくても良いのよ?別にあたし達の仲間になろうとは思っていないんでしょ?」

 「ふん・・・いつまでも減らない口だな、ヘヴンホワイティネス」

 

 カエデの挑発を聴いてから次は軍服を脱ぎ出す。投げつけた軍服は宙を舞いながら、硬いコンクリートに落ちていく。

 

 「どうも貴様の言葉は信用ならん。本当にドクターミヤコを助ける気があるのかどうか・・・これから教えて貰おうでは無いか」

 「上等よ!あんたこそ、いい加減素直になってあたし達と協力しなさいよ!」

 

 カエデからこんな言葉が出るのは、きっと実力を知っているから。オーク怪人の強さ、ミヤコへの忠誠心の高さ、そしてなによりギンジとも対等に渡り合える力を持っている事。それを知っているからこそ、本当はカエデもオーク怪人に協力して欲しいのだ。

 

 だが・・・令嬢でもありヒーローをやっている自分が、そんな事を辛酸を舐めさせられたオーク怪人に言うのは、プライドが許さない。

 

 そんな事はオーク怪人も一緒だったが、お互いそこはもうどうでも良くなってきた。

 

 とりあえず・・・。

 

 「あんたの事!」「貴様らを!」

 『ぶっ叩く!』『捻り潰す!』

 

 四角いリングにオーク怪人の震動する拳と、カエデのガントレットがぶつかる事で、強い衝撃がお互いの腕に重く響いてくる。

 

 体重とパワー的にはオーク怪人の拳の方が重く、カエデのガントレットを肩ごと弾き返す。

 

 空いた身体にオーク怪人の手刀が入り、カエデのスーツをへこませてリング外へと吹き飛ばした。

 

 大ぶりな行動を取ったオーク怪人の背後には、レンのビームハンマーが振るわれており、確定未来で観えていたオーク怪人は、足取り軽いステップを踏み込み、右足後方踏み出し蹴りを向かわせて迎撃する。

 

 体制の悪いこの状況では、オーク怪人の右足を押し返す事に成功して、レンのビームハンマーがジェット噴射を吹き出す。

 

 突撃する勢いはそのまま、レンが全身を使ってさらにハンマーの勢いを増してオーク怪人の四肢を捉えた。

 

 両手両足でハンマーを受け止めても、オーク怪人への攻撃が止むことは無い。

 

 今度はカエデが戦線復帰し、ガントレットからスチームを噴出していた。

 

 「必殺!ヘヴンリー・インパクト!」

 「ふごぉ!?」

 

 正面はビームハンマー、背面はヘヴンリー・インパクト。2つの強烈な攻撃がオーク怪人を挟み込んだ。2つの一撃を同時に当てた事で、2倍ではなく二重となる攻撃は、オーク怪人の芯を捉えた強力な攻撃であった事は間違いない。

 

 「おのれ、小賢しい!」

 

 背面。カエデからの衝撃が収まると、ハンマーからの勢いを利用してカエデを掴む。そして今度はレンからのハンマー攻撃に乗るようにして立ち上がると、カエデを思い切りレンに向かって投げ飛ばしてきた。

 

 明らかに常人離れした彼女達だが、オーク怪人も怪人の中では常軌を逸した行動を取る事を、カエデとレンは忘れていた。

 

 「くあっ!?」

 「きゃあ〜〜!」

 

 ヘヴンホワイティネスが2人揃って訓練場に叩き落された。

 

 今度の攻撃はオーク怪人のターン。オーク怪人の姿は訓練のライトに背中から当てられており、その後光の差し込むような姿は地獄で生まれた豚の頭骨を被った死神の迫力を持っている。

 

 かつてギンジが仲間に入る前に戦った時の、正真正銘ヘルブラッククロス時代のオーク怪人と同じ迫力。

 

 地獄から這い出た、地獄の豚。オーク怪人。

 

 常に先を考えながら動き、戦いにおてもその冷静さを失わない、ヘヴンホワイティネスの強敵だった男。

 

 否─今も彼の強さは健在。ミヤコのメディカルチェックを受けていないのにも関わらず、衰えて居ない。

 

 むしろより研ぎ澄まされている。

 

 「征くぞ・・・」

 

 拳を作りながらオーク怪人は歩みを早めて、巨体に似合わない速度でカエデとレンに肉薄し、手刀を思い切り振り下ろす。

 

 「本気ね・・・!」

 「これは、防げない!」

 

 美少女2人を分断させる程の気迫を持った手刀に、カエデとレンは左右に転がりながら手刀を避ける。避けた先の壁と床は、少し遅れてから一直線の傷跡が破壊音を響かせた。

 

 「ビーム剣術!」

 

 レンのビーム剣の形状は長剣。長くリーチを増した剣は、破壊力こそ通常なモノの、操り方次第では片手剣やハンマーよりも手数が増えやすい。

 

 「ビーム長剣乱舞!」

 

 突き、叩き降ろし、振り回し、斬り上げ、突き刺し、大上段斬りを連続で繰り出すレンの攻撃に、オーク怪人は振動する豪腕で一撃ずつ冷静に対処していく。

 

 より確実に、より堅実なガードはレンの攻撃を捌いてなお余裕を見せている。

 

 しかしそこへカエデも連続攻撃を繰り出し、オーク怪人は必然的に立ち回りが苦しくなる。

 

 いくら確定未来が観えていても、その直前の行動を制御しきらないと行動に勝ちパターンが見いだせなくなってしまう。

 

 「必殺!ドライヴ・レイザー!」

 

 カエデの得意とするガントレットの猛ラッシュ。白金の鉄拳から振出される一撃は、オーク怪人の既には少し厳しい威力を誇る。

 

 オーク怪人から見た左からは、カエデの連続攻撃。右の方はレンのビーム剣。

 

 2つの攻撃が、一つの防衛と幾度もぶつかり合う。その最中、オーク怪人の次なる考えとしては、カエデの動きを止めてからレンを倒す事だ。

 

 その為の最善の動きを考えるのだが、一先ずは防衛に専念しないとならないだろう。

 

 カエデの左拳と、レンのビーム長剣による連携攻撃により、オーク怪人のガードを崩すと同時に後方に押し返す。

 

 足から煙が出るほど後退させられ、オーク怪人は腕をぷらぷらと振り回して余裕を見せてみる。

 

 「オーク怪人、どうして、貴方はそこまで強いのに、こんな事しか出来ないの?」

 

 レンの問いかけにオーク怪人からの答えは、ただの一つしか返さない。

 

 「ブヒ。私はドクターミヤコがそうあれと命じて、私をお造りになった。あのお方のご命令だけが私の生きるすべであり、道標だ。ドクターが死ねと言うならば、喜んでこの命を散らそう」

 

 彼女が望むのであれば、全てを壊す事も行おう。

 

 ドクターミヤコが自分を責めない様に、ドクターミヤコが恋に敗れた時に、オーク怪人に八つ当たりだってしたって構わない。

 

 再びギンジと一緒になりたいのならば、どんな強硬手段も厭わない。

 

 ヘルブラッククロスに戻るならば、そこに付いていこう。

 

 共にヘヴンホワイティネスになると言うのならば、それでも構わない。

 

 壮大に言っているが、要はとことん自分が無いのだ。それでもオーク怪人は今ここで、ドクターミヤコが自分とギンジと紫に話してくれた約束の為に、精一杯生きているのだ。

 

 全てがドクターミヤコの為になるように、オーク怪人は全力で彼女を助けないと行けない。

 

 そして本当は解っている。一人では助けられない事を。だからギンジが集めた者達と共に、お互いを信用して戦わないといけないのに、プライドのせいでヘヴンホワイティネスとオーク怪人はこうなってしまっている。

 

 「別に死ななくても良いでしょ」

 

 カエデが少しだけ呼吸を整えながら、それでも臨戦態勢は解かない。その表情はどこまでもオーク怪人の顔を睨むばかりだ。   

 

 「あんたはミヤコを助けたいの助けたくないの、どっちなのよ」

 「愚問だなそんな事。助けたいに決まっているだろう!」

 

 ドクターミヤコはいずれあの佐久間ギンジと幸せな未来を歩むのだ。

 

 その幸せの為に、オーク怪人はこんな所でつまずいている訳には行かないのに・・・。

 

 「ドクターミヤコは・・・今もきっとご不安な気持ちのままだろう・・・」

 

 オーク怪人がビーム剣とガントレットに受けた痛みが走る両手を、広げては握ってを繰り返して見た。十分なダメージを誇る2人の攻撃は、きっとミヤコ救出に役立つ事だろう。

 

 「・・・貴様らは、ドクターミヤコを救出したらどうするのだ?」

 

 先程は捕虜ではなくなった・・・みたいな事を聴いたが、実際の所はわからない。ヘヴンホワイティネスの考える事など、あまり信用するのも癪ではある。

 

 だが・・・あーだこうだと言っている場合でも無いのも事実だ。

 

 ここまで来て戦っている事も、本当は間違っているのも解っている。

 

 だけど、譲れないプライドがどうしても邪魔をしてしまう。

 

 意地を張っていて問題ごとが大きくなってしまっては、元も子もない。

 

 「あたし達、別にどうもしないわよ。さっきも言ったけど、仲間なんだから、あんたが思うような変な事は絶対に無いわ」

 「何かすれば、きっと、ギンジが怒るしね」

 「ま、ミヤコはあたしの眼の前でギンジと・・・くっつくのは許せないけど」

 

 きっとミヤコを救出して元通りの日常になったら、毎日ギンジに抱きつきに行くミヤコを見る事になるだろう。それを思うとカエデは少し憂鬱な気分になり、それと同時に怒りの炎がメラメラと盛り上がる。

 

 「・・・言っとくけど、あんただってあたし達の邪魔しないんだったら、特に何も無いんだからね。ミヤコを助けないとギンジだってうるさいのよ、いつものギンジらしくないって言うか」

 「それはカエデも同じ。いつもギンジの事、心配してる」

 「そんな事この豚ちゃんの前で言わないでいいのよ!」

 

 カエデがレンの口を塞ぎ、オーク怪人の方を再び睨む。

 

 「とにかく、ミヤコを助ける事に不安があるなら、そんなモノ不要よ!あたし達だけでも助けられる所を、あんたにも協力させてあげてるんだからね!」

 「ブヒ・・・やはり貴様の手助けなど要らぬわ!」

 

 纏まろうとしていた会話が、カエデの悪気の無い発言によって、再び交戦が開始した。

 

 こんな事をしている場合じゃないと、全員解っているのに・・・。

 

 結局どちらが勝つかまで勝負が続き、カエデとレンがギリギリオーク怪人の動きを止める所で、勝負の決着はついたのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 8月30日。午後21時。場所は円卓会議場。

 

 未だにカエデは父親であるソウジロウと連絡は取れない。

 

 だが・・・もう既に場所は解っている。

 

 ヘルブラッククロスは今回相当上手く襲撃を立ち回った様だが、今回もきっと阻止してみせる。

 

 夏の夜空の下で、それぞれヘヴンホワイティネスを始めとした正義連合が着実と出撃を開始しようと、足並みを揃え始めていた。

 

 「いいかー、先ずは作戦から行くぞー」

 

 ギンジが戦闘メンバーを集めて、カエデから貰った情報と周辺の地図を見ながら説明を開始する。

 

 リゾートホテルの道は一直線に広がっていて、神宮リゾートホテルエリアなんて呼ばれていてもおかしくないぐらいには、店や水族館等もある本当に大きなホテルである。

 

 そんな道には、執事達の報告によれば戦闘員らしき存在が、様々な略奪や破壊を繰り返し行っており、文字通りの地獄絵図がそこには繰り広げられていた。

 

 「そんな事聴いちまったらよぉ、俺たちの出番だよな!」

 

 ギンジの一言で、カエデもレンもミドリコもケイタもうなずいた。

 

 少し遅れてレイナも、サクラも、ルカも力強く頷く。

 

 赤鬼とオーク怪人は、ギンジの言うことにふむふむと耳を傾けている。

 

 「ホテルをどう進むつもりなんだ?」

 

 ヒトシがギンジの説明途中に割って入ってくる。

 

 「その戦闘員?とやらは、普通の警察では止められない相手なのだろう?で、我々がいくら強くとも・・・数を相手にするのは不利ではないか?」

 

 通常の人間の思考なら、出来ても1vs1で戦うのが理想だ。相手の数が多ければ多いほど、戦闘と言うモノは不利になる。

 

 しかしそんな事ギンジはしっかり承知の上で、サングラスをつけた強面変質者の笑顔を見せる。

 

 「不利なのは100億%ぐらい当たり前な事だぜ。ヘルブラッククロスってどこからあれだけの頭数増やしてるのか、俺は疑問に感じてた所なんだ(まぁ、本当は調べる気無いんだけどね)」

 

 ギンジは自分の心の中から、金棒を取り出すとその先端部分をオーク怪人に向ける。

 

 「作戦はこうだ。正面から突撃。それをやるのは、俺とオークだ」

 「兄貴!俺っちも正面から行きてぇ!」

 

 赤鬼が元気よく手を上げるが、ギンジはミドリコの方に指を指す。

 

 「赤鬼、お前はミドリコと一緒に居ろ。ついでにお前とヘヴンホワイティネス陣営は、ホテル突入組だ。あ、あといざよいパイセンも」

 「二度と私をいざよいと呼ぶな。十五夜(じゅうごや)だ。いざよいは十六夜だ」

 

 ヒトシが血管をおでこに浮かばせながら、キレそうな顔でギンジに詰め寄る。だけどギンジには特に効いていない。

 

 ヘヴンホワイティネス・カエデ、レン、ケイタ、ミドリコ、赤鬼、そして十五夜ヒトシはホテル突入組。

 

 「ギンジくん、私達はどうすれば良い?」

 

 今度はサクラがギンジに向かって質問して来た。まったく悪びれる事の無いサクラの天真爛漫の笑みは、空から落ちた時の悪ふざけ感を思い出す。

 

 「正義連合は・・・ホテル裏口潜入組だ。どちらかと言うと、怪人や兵器に対応して欲しい」

 

 ギンジの提案に対してはレイナが足を組みながら、返事を返した。

 

 「了解した・・・つまり、君は正面からの陽道、私達は怪人や兵器の対応、神宮君達はホテルに突入し、お父上とミヤコ君を助けに行く、だな?」

 「流石だな!頼むぜ。ルカもあんまり無理すんなよ」

 「心配には及ばないよ。僕の怪我の治療は万全では無いが、それでも君たちと一緒に戦いたいんだ」

 

 レイナ、サクラ、ルカの三名は怪人や兵器の対応。

 

 加えてこの夜の時間帯。

 

 「ヘルブラッククロスに襲撃されたんだ。俺たちも襲撃仕返してやろうぜ!音楽堂の時みたいにな!」

 

 ギンジを助ける為に襲撃したヘヴンホワイティネス。

 

 そして今度はミヤコを助ける為に襲撃を開始するヘヴンホワイティネス。

 

 場所は神宮リゾートホテル。

 

 ヘヴンホワイティネスの過去最大の大きな戦いが、少しずつ進んでいた。

 

 「オーク」

 

 皆が活気付く中、ギンジはオーク怪人の肩を軽く叩く。

 

 「必ずミヤコを助けるぞ」

 「ブヒ。当たり前だ」

 

 進化の怪人・佐久間ギンジと元・ヘルブラッククロスオーク怪人。

 

 2人の奇妙なペアがここに誕生した。

 

 この後2人は先行してリゾートホテルに向かい、戦闘員達を蹴散らす陽動作戦を開始しないと行けない。

 

 ギンジはオーク怪人と言う最強に味方をつけた気分で居て、今度こそどんな奴が相手でも敗ける事は無いと、今度こそミヤコを守り通せると。そう思うのであった。   

 

 「よーし、それじゃあ行こうぜ!」

 

 ギンジが高らかに金棒を振り上げた事で、ミヤコをヘルブラッククロスからの奪還を目指す戦いが始まろうとしていた。

 

続く

  

  

 




お疲れ様です。

次回はいよいよミヤコ奪還編の物語が大きく動き出し始める回となります。お楽しみに!投稿遅くてごめーんねっ!

キャラネタ書きます

十五夜ヒトシ
神宮御庭番衆の隊長。
年齢は20。幼い頃からカエデやソウジロウを守るために、暗殺術や抜刀術を学んできた。執事としても優秀。
戦力的にはミドリコとほぼ同じ。ギリ怪人に勝てる。
ちなみにギンジと赤鬼、オーク怪人、女王ナメクジの怪人には勝てない。

オーク怪人
ドクターミヤコに愛されたい願望がある。
ドクターミヤコからは確実に信頼を置かれている数少ない人。

神宮カエデ/宮寺レン
ミヤコの事を仲間だと信じている。彼女が居ないと装備のメンテが出来ない他、普通にヘヴンホワイティネスの戦力強化が叶う為に、ちゃんと仲間として認めている。

・・・
次回は再びミヤコ回半々、ギンジ回半々になります。投稿遅くても頑張って書きますのでどうか楽しんでいってください!
それでは、また次回!
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