少し間が空いてすみません。GW満喫してました。タブレット実家に持っていくのを忘れて続きが書けず遅れました。
そして話が長すぎるので、少しプロットを変えて、今回は赤鬼と正義連合のお話でまとめております。流石にオーク怪人とヘヴンホワイティネスの分まで入れてたら話が長くなりすぎてしまうので、そちらもすみませんでした!自分の管理能力の低さががががが・・・これでも管理者なんだけどなぁ・・・
今回の後書きのはネタバレが含まれますので、出来れば最後にお読みください。
それではどうぞ!
神宮リゾートホテルを見上げられる大きさのレストランフロアは、今は華やかだった雰囲気を一変させて、地獄の粘液が戦闘員を巻き込んで白濁としていた。
建物にもべちゃりと液体が付着し、床にもいやらしく粘つく液体がそこらじゅうに巻き散らかされている。
その粘液はまるでスライムの様にぷるぷるしていて、ねっとり暖かかったりひんやり冷たかったり、人によっては丁度良い温度となっている。
「ぐっあああ〜〜♡♡」
「んほぉおおお♡♡」
野太い男性の声で嬌声を上げているのは、ヘルブラッククロスの戦闘員達だ。黒を基調としたパワードスーツを、真っ白な白濁の粘液に晒され、得も言われぬ快感に打ちひしがれている。
ビクンビクン、と身体を痙攣させて悶絶する戦闘員は、もう助かる事は無いだろう。
なぜならこの粘液は人の身体に強制的な発情効果を促す、神経毒。その人の血液すら媚毒に造り変えてしまいそうな、強力な猛毒が人を快楽地獄へと誘う最悪な毒攻撃。
その猛毒を辺りに撒き散らすのは、女王ナメクジの怪人。
豊満なボディは男なら誰もがその目を動かし、水面の様に揺れる大きな胸、触れば指が吸い付きそうなお尻、撫でるだけでも大金を使い果たしそうな脚線美。
それらは女性として美しい身体、プロポーションを完璧に彩られており、ツリ目が強調された顔も美人と言う部類に入るだろう。
高い鼻も、柔らかく艶のある唇も、そして自身が放出する粘液によって光沢感満載のレオタードが、全てのエロティックな美しさを外面に叩き出している。
「ほーら♡ちゃんと離れないと、巻き添えになっちゃうよ♡」
腰を曲げて上目使いで言われれば、戦闘員は従うしか無い。見ているだけでも男の興奮が抑えられ無さそうな、あざとい声と仕草で皆イチコロにされている。
──あんな女と一晩寝られれば、きっと天国に行ける。
今この場に居る戦闘員達は、みんなそう思っている。
「
オトナの女性の香りを振りまく粘液に、夢現な戦闘員に一気に現実に引き戻させては、粘液が空気圧で剥がれ落ちる様に吹き飛ばされていく。
「ねぇ〜♡あんたも気持ちよくなろうよ〜♡」
女王ナメクジの怪人が足の筋肉を妖艶に見せつけながらしゃがむ姿勢で、赤鬼をいやらしく見つめる。屈強な赤い肌はさぞ快楽に強そうだ。
「ハン、お断りだなァ!」
黒い甚兵衛を空気でなびかせながら、自慢のオリハル金砕棒を肩に担ぐ。同じ怪人である以上快楽による欲望は常に大きい。
牙を擦りながら赤鬼が睨むのは、女王ナメクジの怪人。こんな女怪人が居たならば、きっとギンジじゃ勝てなかった事だろう。
「お前じゃ到底ミドリコの姐さんの魅力に敵わないからな!」
「みんなヌルヌルになればそんな事も言えないわよ♡」
余裕な笑みを見せる女王ナメクジの怪人だが、その瞳は笑っていない。ここに居る目的はヘヴンホワイティネスの襲撃の妨害、及び彼女らの殺害。無抵抗になれば貰って良いと言った指示。
相手が男ならば容赦をしなくて良い。なぜなら快楽に叩き込んでしまえばそれで良いのだから。
それさえ出来れば、女王ナメクジの怪人の勝利が約束される。
レストランフロアの石床にこびりついた粘液を、赤鬼が力強く踏みつける。
その粘液は触れるだけでも肌から体内を侵食して、快楽に溺れさす最大最悪の猛毒。
しかしそれをわざと踏みつけた赤鬼は、足元をぐりぐり擦るだけでその能力は対して効果を発揮していない様子。
「確かに、ちょっとビリッとすんな・・・」
この感覚は怪人が女を喰らう時に出てくる、ホルモンの分泌に近い感覚があった。赤鬼が辺りを見渡せば戦闘の余波によって、戦闘員があちこちで痙攣しながら悶絶している様を目にする。
この粘液には人を狂わす、抗えない能力がある。こんな粘液が世界中で溢れたら・・・ミドリコとの幸せな未来が壊れてしまう。
「ね♡これでそのミドリコとか言うのがズブズブ沼にハマってくれたら、あんたもハメられるし、ミドリコちゃんも気持ち良いし、イイコト尽くしじゃない♡ヘルブラッククロスと一緒に、性と暴力にまみれた世界を創りましょうよ♡」
「だからお断りだっ!」
女王ナメクジの怪人のふざけた勧誘は失敗に終わった。この怪人はあろうことか、赤鬼の愛するミドリコを勧誘の材料にしたのだ。
もうそれだけで万死に値する。
オリハル金砕棒を強く握って、赤鬼は女王ナメクジの怪人に憤慨する。こいつだけはこの世界で確実に生きていてはいけない、怪物であると判断する。
「お前ごときが!ミドリコの姐さんを交渉材料にしてんじゃねぇ!」
手にした獲物を振り上げて、美女に突撃する赤鬼。
「そう・・・それじゃあ、あの世でシコシコしてな♡!」
鬼機迫る赤鬼に対してはもうこれ以上の会話は無理だろう。
「一人でね♡!!」
大上段から来る破壊の一撃を、頭の頂点かた受け止める。オリハル金砕棒の先端が頭部に命中すると、飲み込まれる様にして顔が溶けて行く。
その溶けた顔が上下左右に開くと、首だった部分に大量の小粒ナメクジ達が赤鬼の武器にびっしりと張り付いていく。
「うげげ!気持ち悪りい!」
女王ナメクジのナメクジ擬態。その能力と技が発動されて、オリハル金砕棒を次々と飲み込んでいく。
豊満な身体だった所も、胸から粘液を噴出させて赤鬼の身体に快楽の液体をぶつけようと姑息な手段を使ってきた。
分厚い筋肉の身体に粘度の強い液体が付着し、身体に鳥肌が走る赤鬼。
(・・・コレに何度も当たるのはマジぃな)
いくらミドリコ一筋の赤鬼でも、強制的な快楽攻撃にはやがて手出しが出来なくなっていくに違いない。
オリハル金砕棒を手放して、すぐに後方に下がって行く。次の攻撃手段を考えて打つにも、肝心の武器は敵の術によって使えなくなり、本体がどこに居るのかさえ分からない。
(どこだ・・・!?)
赤鬼の視界には、腰まで粘液で溶けた女王ナメクジの怪人のダミー。そんな怪人の身体にぶっ刺さったオリハル金砕棒の、無残な姿。
「はーい、捕まえた♡」
声がしたのは後方。下がっている赤鬼を捉えようと、次の罠をしかけた女王ナメクジの怪人の術による、粘液の壁が赤鬼の背中を捉えた。
「むおっ!?」
「もう逃げられないわよ♡ほら、闇堕ちしな♡」
粘液の壁は赤鬼を取り囲む様にして、壁が丸く広がっていく。
「
振り向いた赤鬼を抱きしめる形で、白濁とした粘液が赤鬼の身体を飲み込んだ。とてつもない快楽の奔流が、赤鬼の脳内を狂おしく焼いていく。
「キャハハハハハ♡!」
丸い柱となった粘液のすぐそばで、女王ナメクジの怪人が高笑いを上げる。歪な笑顔でさえ美しいその仕草と甲高い笑い声が、赤鬼を煽る様にして口元を手で隠す。
「随分あっけないのね♡そんなんじゃ、私には勝てないわよ♡」
「ぐっ・・・おっ・・・おお、おほ・・・♡」
怪人としての能力の質が上がっている。その事を実感した女王ナメクジの怪人は、以前自分を騙し討ちして来た雪の怪人と暴力の怪人の、あの勝ち誇った顔を思い出す。
きっと今の自分も同じ顔をしているだろう。今度は、女王ナメクジの怪人が勝利を収め、雪の怪人と暴力の怪人に、この粘液による快楽地獄を味合わせてやる。
ヘヴンホワイティネスへと寝返ったこの裏切り者の始末を完遂させ、今度こそ怪人キラーエリートの存在価値をヘルブラッククロスに知らしめる時が来た。
「快楽堕ちしたら、その顔を拝んでから殺してあげる♡」
快楽の波に藻掻く赤鬼を楽しそうに眺めて、女王ナメクジの怪人は人差し指を唇に押し当てて、艶かしく新たな被害者の量産を楽しむ。
「ぐっ・・・ぷっ・・・お♡おお♡」
快楽の奔流が苦しい。赤鬼は視界が真っ白に染まりつつあり、かろうじて見える白い壁の穴ぼこからは、女王ナメクジの怪人の勝ち誇った顔が見え隠れする。
(ミドリコの姐さん・・・ギンジの兄貴・・・)
ここに来る時・・・ギンジにはああ言ったが、本当はカエデに頼んで自分だけはギンジの手助けをしたいと、頭を下げていた。
ホテルの突入を果たす事で自分がミドリコを守りながら突き進もうとも考えていたが、ここではギンジの為に自分が身体を張りたいと、意思を主張したのだ。
頭が悪くて、後先もまともに考えず突き進む事が、赤鬼の人生。
ミドリコに惚れて、ギンジに敗けて、ヘヴンホワイティネスとして活動して、今度は自滅して、かと思えば勇者になって、そしてまたギンジの子分として再び力になろうと奮闘して。
今の自分があるのは全てミドリコと出会えたからだ。そんな自分と離れ離れで戦わないと行けなくなった時、彼女は不安を押し殺してギンジの下に行く事を許可してくれたのだ。
それも全ては赤鬼が勝つと信じているから。
赤鬼自身も、自分がこんな事で心を揺るがされるとは思っていなかった。気持ち良いぬるま湯が、全身を包み込んで行き赤鬼の力が弱まっていく。
(・・・)
こんな気持ちの良い感覚が全身に広がって、しかしそれはこんな怪人の能力による効果。
ミドリコの為に全てを捧げ、怪人としての欲を全て断ち切って来た赤鬼に、強制発情はかなり効いていた。
ミドリコの身体を見て興奮して、ミドリコを褒める度に興奮して、ミドリコと会話するだけで、ミドリコの息使いを見ているだけで、ミドリコが勇ましい顔をするだけで、赤鬼の心はどうしようもなくリビドーが膨れ上がっていた。
理性を本能が上回りそうな程、いつも苦悶していた。
その爆発が、今ここで開放された。
このままでは敗ける。敗けて、一生ミドリコに会えない。ギンジにも勝つと啖呵を切ったのに、敗けてしまう。
それだけはあってはならない。産まれた場所を自分勝手な理由で離れて、好きになった人と共に暮らせる平和な未来を創る為に、赤鬼はヘヴンホワイティネスにまでなったのだ。
「俺っちはぁ・・・♡」
身体の熱を、闘志をもう一度身体に手繰り寄せる。粘液に包まれた身体を丸めて、全身の筋肉を膨張させていく。
手に握るのは拳では無い。粘液に濡れていても、力は入る。
では赤鬼は何を握ったのか。
それは闘志、怒り、性欲、熱意─様々なモノに言い換える事が出来るが、そんなモノでは無い。
「空気を・・・まとめて・・・」
握ったのは空気。それを手の中で圧縮させて行く。
「あら♡まだ抵抗出来るの♡」
赤鬼の動きが藻掻く事では無くなったのを確認すると、女王ナメクジの怪人は再び悪辣な笑顔を見せて、そしてその瞳は笑っていない。
「もういいから、さっさとイキ死ね♡!」
女王ナメクジの怪人が両腕に粘液の束を作りだして、足元にもナメクジ分隊を召喚する。
一気に膨れ上がる粘液は一つの固形の塊となり、赤鬼はおろかこの場に居る全ての人間を埋めつくせそうな大きさの、性と色欲の限りが詰まった球体になっていた。
その球体を両腕で上げて、赤鬼が飲み込まれている粘液の壁に叩きつける為に投げつけた。
「
触れるだけで死んでしまう快楽の塊。ソレで死ねるならば、本当の意味での天国行きかも知れない。白く濁った球体が赤鬼の居る場所にまで飛び、大きなスライムの様に耳にこびりつきそうな、重たい粘着音が一面に響き渡る。
どろり、ごぼり、ずちゃり・・・その音をどう例えて良いか分からない快楽の音がなり終わると、一つの気泡が浮かび上がる。
その気泡がまた一つ、二つと増え始め、粘度の高い泡がパチッと小さな音を鳴らして破裂していく。
「勝てたわ♡まだ息があるなら、○○○を出して死んだら♡?」
最後に挑発をする女王ナメクジの怪人が、この泡を見てまだ赤鬼が生きていると見た。だが、ここまでの快楽攻撃を受ければ、もう助かる見込みは無いだろう。
「・・・ん」
泡を通して潰れた粘液の中から声が聴こえた。
その声はまだ諦めていない、漢の声。
「・・・嘘でしょ」
諦めさせる事すら出来ない、赤鬼の確かな気配がまだそこにはあった。
「れっ、ん」
粘液に大きな気泡が膨れ上がる。
「くうさい・・・」
泡の中は濃度の高い快楽の力が充満している。虹色の油の様な膜を張った色をしており、粘液を希釈するとこの色になる。水も無いのに、内側から赤鬼の能力で押し広げられて、かなり薄伸ばしにされているのだ。
「空砕、烈、拳」
言葉が聴こえた。女王ナメクジの怪人にはっきりと聴こえるまでに、まだ終わっていない赤鬼の、必ず勝つと豪語した漢の声が。
「そんな、嘘、嘘よ!」
いつもの余裕をなくして、女王ナメクジの怪人が思い切り叫んだ。自分の能力は先に逝った同僚達よりも、強くなったと、成長したと感じていたばかりなのに、この怪人はそれを乗り越えて来た。
「
ついに粘液が破られた。膜を内側から破り、固形の粘液と詰まったナメクジを吹き飛ばして・・・。
空気による触れない拳が、女王ナメクジの怪人の能力を上回り、空気を打ち出す能力だけで、粘液を突破して来た。
赤く膨張した身体は粘液に濡れて居た。触れているだけでも快楽を流し込まれそうな欲望の塊に、赤鬼は理性を取り戻して完璧に克服した。
「よう・・・お前の気持ちいい快楽攻撃、堪能したぜ」
黒い甚兵衛に付着した固形の粘液を腕で払い落として、赤鬼は牙を打ち鳴らす。雄々しい一本角を尖らせて、喉からは鬼の戦慄きを唸らせる。
「わ、私の能力がお前なんかに!」
「ヌハハ、俺っちもお前も、まだ発展途上だ。完璧な能力じゃない者同士だが・・・まぁ、そうだなァ」
赤鬼は右手で空気を引き寄せる。空間の奥にあるモノを手繰り寄せる様に腕を引くと、女王ナメクジの怪人の後頭部に、硬くて太く、長くて重いモノがぶつかってきた。
「イッた!・・・はっ!」
ソレはオリハル金砕棒。赤鬼の新たな武器であり、赤鬼が今一番愛用する彼にしか扱えない八角の棒。
右手でソレをキャッチすると、赤鬼はオリハル金砕棒に取り付いた粘液をふた振りで全て落とし切る。
そうして肩に担いだゴツい武器を再び手にした赤鬼の姿が、女王ナメクジの怪人の視界に広がった。
粘液を払い落としたオリハル金砕棒は、振られた事で熱を帯びていた。表面に付着したわずかに濡れた部分、溝に挟まったナメクジ達が焼かれて消えていく。
「
尊敬する兄の炎をイメージした、赤鬼の新たな戦術。
地獄で燃え続ける業火は、進化を果たしたオリハル金砕棒のもう一つの姿であり、地獄を乗り越えた勇者の剣にも見えた。
「私の、私の能力は・・・絶対なのよ!!!」
焦りと怒りと憤りと屈辱。全てが混じってまともな事を考えられなくなっていた女王ナメクジの怪人に、赤鬼の赤く燃える一撃が振り出された。
「俺っちはなぁ、毎回毎晩毎日毎朝毎度ずっとなァ!!」
右側に燃える金砕棒を構えて、女王ナメクジの怪人へと赤鬼の人生史上最大の一撃が繰り出された。
「ミドリコの姐さんの愛と欲望で一杯なんじゃァァ!」
「がっ・・・ふっ!?」
美しい身体に、焼き付く八角の重たすぎる一撃により、左腕がめちゃくちゃに折れていく。
あばら骨にも到達して熱撃が身体を貫通していく。
「あっがああああ!!!」
殴られた重さと一撃によって、女王ナメクジの怪人が石床に転がって行く。
骨が砕かれ、肉が焼けて、体内にまでその熱が支配していく。ナメクジの天敵とも言える高熱により、体中の空気、酸素が抜けていく思いだ。
「熱い!熱ちゃぁ、熱ちちいぃ!」
こんな美女を殴って心が痛まないのだろうか。女王ナメクジの怪人は、能力も使えなくなってひたすらこの苦しい高熱から逃げ出そうと、身体を転がしている。
「
もう一度赤く燃えるオリハル金砕棒を振り上げて、高熱を再度最大温度にまで上がっていく。
女王ナメクジの怪人は最早逃げられないと悟って、赤鬼の最後の攻撃の前にありったけの声を出す。ここで死んでしまったら、ヘルブラッククロスの威厳もあったモノではない。
そうでなくとも命は惜しい。もっと気持ち良い事がしたい、させたい。
赤鬼の一撃が振り下ろされそうになった瞬間、死の覚悟を収めないと行けない強烈な迫力が、女王ナメクジの怪人の瞳に写った。
「待って!やめて!お願い!なんでもしますから!」
「
勇者赤鬼として、ヘヴンホワイティネス赤鬼として、天に届く燃える地獄の八角棒。
その一撃、威力は、地獄の閻魔大王も泣き出す、正義の鉄槌。
女王ナメクジの怪人の身体を正確に捉え、焼き付くす破壊の打撃がクリーンヒットし、全身を四散させて爆発していく女王ナメクジの怪人。
「あ・・・♡イキそ・・・♡」
その言葉を最後に、頭だけになった彼女は広がっていく様な高熱に内側から焼かれていき、炭の様にボロボロになった頭部が、風に煽られながら焼き消えていった。
「これで世のオトコもオンナもミドリコの姐さんも、一安心だぜ」
燃えるオリハル金砕棒の高熱を収めて、赤鬼は石床に先端を突き刺す。その横に、隠し持っていた粘液でべちゃべちゃになった、ヘヴンホワイティネスの旗を突き刺す事で、この戦いへの勝利を告げた。
レストランフロア・入り口広場の戦い
勝者・ヘヴンホワイティネス・赤鬼
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
繰り返される暴風。
その風が巻き上げられるだけで、人一人の身体が容易に吹き飛びそうになる程の強い風。
ヘルブラッククロスの新たな怪人、霊鳥の怪人が操るは腕と同化した大きな翼。
猿を毛皮の様な身体は、自身が巻き起こす暴風に煽られても毛並み一つ動く事は無い。
「フゥーハハハハ!」
けたたましい大声で高笑いを上げては、レイナ達を見下ろし高みの見物をしているだけの怪人。
「あんな高い所からこの強い風をお越し続けられてたら、手出しが出来ないな」
舌打ちでもしたそうに、レイナが修道服を暴風で揺らす。その手に握られたのは虹色に輝く破邪の剣。
「私だけ空から攻撃してみようかな・・・」
レイナの隣では桃色の魔法少女の装束を身に着けた少女、サクラが霊鳥の怪人を見上げていた。
「僕もあれを叩き落とす作戦を考えているけど・・・」
(どうやって叩き落とそうかしらね)
更に2人の後ろには、深緑色のバトルスーツを装備した正義のヒーロー、ムーン・パラディース・月島ルカと、彼女の心の中に住まう者である天体アキハが霊鳥の怪人の暴風について対策を講じていた。
ルカの盾ならば、あの暴風に耐えるが身動きが取れない。
サクラの魔法ならば空を飛べるが、霊鳥の怪人の攻撃がサクラに集中してしまう。
レイナは地上からの攻撃手段を多数持ち合わせていても、これだけの強い風が相手では、間違いなく落とされる。仮に風を抜けたとしても、空を自由自在に飛び回る怪人に当たるとは思えない。
加えて相手の戦闘能力は未知数。夜空を飛び回る霊鳥、その神々しさをホテルを背にして地上に佇むレイナ、サクラ、ルカの三名を見下ろしていた。
「さぁさぁ!どいつから啄まれるんだァ!?」
雄叫びを上げながら両腕の翼を羽ばたかせては、再び瓦礫や木材を吹き飛ばし、レイナ達をよろめかせる。
「あの暴風をどうにかしないと・・・!」
ルカが盾で暴風を防ぎながら背に隠したレイナとサクラに声をかける。
「・・・一泡吹かせるには・・・」
レイナがサクラとルカの能力を見て考える。
レイナは反撃の為の戦術や戦略を考えるのは得意だった。
先ずは魔法少女サクラの持つ能力。
それは魔法─人を超越した、超常の力。
退魔師である自分が見れば相対する能力ではあるが、その能力は魔力と呼ばれる目に見えない体内に宿るエネルギーを使用して、武器や攻撃そのモノ、攻撃手段たりえるモノを呼び出す力。
炎や光線、大砲やハンマー等を召喚しては、それらを自在に操る攻撃を得意としている。
サクラは魔法の杖を使う事で空を飛ぶ事も可能としている。
霊鳥の怪人との戦いにおいては、きっと彼女の飛行能力が役に立つだろう。
(サクラには飛行における撹乱と、魔法による防御を、か)
続けざまに振るわれる暴風をルカが抑えながら、レイナは思慮深く考えていく。
次は月島ルカ。真正面の防御における戦いならば、彼女の右に出る者は居ない筈だ。
銃の怪人の攻撃すら防ぎ続けるのは、並大抵の力では無いはず。
おまけにこの暴風でさえ踏ん張る事だけで抑えられているのは、彼女の能力と大盾による恩恵は大きい。
なんと言っても諦めない心や意思の強さは、昔の自分を見ている様で弟子に近い感覚を覚える。
驚く事にこの大盾は光線、体当たり、ブーメランシュート、叩きつけと文字通りの武器として機能もしている。ルカの月の力があれば、たかだか空を飛ぶだけの怪人に一撃当てる事は可能では無いだろうか。
(常に防御に立ち回りながら、霊鳥のやつにどう集中させるか)
次に自分の退魔の力。破邪の剣、破魔の剣、破悪の剣。
この剣は強大な邪を宿す志を持つ者を斬る事が出来る。普段はゲヘナミレニアムの魔人に対して効力を発揮させていたが、今現在はヘルブラッククロスの怪人に適応させている。
通常は西洋の剣に近い形をしていて、虹色に輝く美しい武器。
この力ならばあの怪人にも間違いなく通用するだろうが、問題はどうやって当てるかだ。
破邪の剣は巨大化させる事も可能で、それを打ち出す事も出来る。
(あの空飛ぶ相手には巨剣で攻撃してみるか・・・?)
ともあれレイナの考えはまとまった。空を飛びながら暴風を巻き起こす怪人に、痛烈な攻撃を当てる手段を・・・。
「ルカ、サクラ、良く聴いて欲しい─」
大盾の後ろに身を寄せ合いながら、レイナがサクラとルカに耳打ちをする。内容はもちろん霊鳥の怪人に対する攻撃手段を編み出して、これを成功させる為の作戦を話している。
「─勿論、成功するかは賭けだ。だが、このままではいずれあの怪人を逃す事になる。それでは敗けと同じだし・・・」
レイナの顔が勇ましくクールな表情のまま、サクラとレイナに告げる。
「あの怪人を倒す事で、ギンジ達の勝利が近づく。この戦いはもう、ギンジの戦いだ。私達が出来るのは、
レイナの言葉を聴いたサクラとルカの2人が、静かに頷いた。
「フゥーハハハハ!誰から食われるか決まったか!?」
ルカの盾めがけた暴風を再度巻き起こして、霊鳥の怪人は大技を決めにかかる。
視認できる暴風の渦が出来上がり、その先端のいは燃える鳥の様な鋭い目つきをしている。
赤く燃える暴風が鳥の形を成して、その尻尾には暴風の渦が後を追いかける様にして、地上に立つ三人へと突きこまれた。
「
夜空を一瞬にして昼間の様な明るさを照らし出し、ルカの盾へと正面衝突を開始する。
熱が広がるこの一撃がルカの月光に反応して、辺りに強い衝撃と炎が巻き上がる。
「僕を相手に太陽を出すなんて、喧嘩を売られた気分だ!」
(アタシも同じ気持ちよ。あの怪人、甘く見てるわね)
ルカの大盾が太陽鳥の嘴を押し返す。怒りを懐き、侮りを受け取ったその攻撃に、ルカの盾に強い月光が輝く。
「そのまま・・・返すよ!」
腕も千切れんばかりにルカが盾を打ち上げて、炎を打ち返した。
それと同時に桃色の閃光が炎と横並びに飛び始める。
「マジカルマジカル〜!」
炎と共に飛んでいるのはサクラだった。魔法少女の真髄たる魔法攻撃を、空飛ぶ霊鳥の怪人に向けて発動しようと言うのだ。
「フゥーハハハハ!甘いな!」
サクラの突進まがいの攻撃と、自分で打ち出した炎の渦はその場から移動する事で避けられる。
「避けるなんてずるい!」
「鳥っていうのは皆ずるいんだよ!」
嘴を広げて挑発する霊鳥の怪人に、サクラがかちーん、と頭を動かす。
そんな飛び立つサクラの後方には、桃色の光に囲まれながらも小さな魔法陣が展開されていた。その魔法陣は夜空の中に輝いていても、気にしてみないと見えないほどの大きさ。
それらが何個もサクラの飛び回る後方に、等間隔で設置されていく。
「お前は最初に落としてやろうか!」
空中戦においてはきっとこの霊鳥の怪人が優位に立つ。
鋭い爪を輝かせてサクラを捕まえようとして、風をその身で切りながら突っ込んでくる。桃色の装束は鮮血で汚れればさぞ汚くなりそうだ。
だが爪はサクラを掴む事は無く、虚しく空を切る。捕まる直前でサクラが魔力の出力を上げて強く飛び出す事で、空中移動の速度を上げているからだ。
「チッ!喰らえ!」
腕と同化した両翼を大きく振り上げて、再び暴風を叩き起こす。それは空中に向けられた、サクラの移動範囲を大きく捉えたより強い暴風だ。
「うわっとと・・ああ、くっ、きゃあああ」
暴風の範囲外に抜ける事は出来ず、サクラは空中では踏ん張れずに夜空に高く放りあげられる。
そこへすかさず霊鳥の怪人がサクラを捕まえようと、足の爪をむき出しにして突っ込んできた。
「狙い通りだ・・・破邪の飛剣!」
今度は地上でレイナが退魔の力で錬成した、破邪の剣を投げてきた。その形状は普通の破邪の剣とそう変わらないが、鍔の所に小さな羽が生えている。天国で幸せのラッパを吹く天使の様な、羽。
飛行を可能としたレイナの新たな剣が投げられて、霊鳥の怪人の翼をかすめる。
「油断したな!お前の敵ならここにも居るんだぞ!」
「メス共がぁああ・・・」
両翼を広げてレイナの立つ場所へと、暴風の球体を作り上げる。
何度も何度も強く翼を羽ばたかせて、練り上げられた暴風の球体は強く、通常打ち出すよりも束ねて叩き出す破壊の威力を高めた球体。
「
切り裂き、叩き、圧壊させていく暴風の塊。それがレイナから見ればとてつもない大きさで、破壊そのモノを体現している様に見えた。
だが・・・。
「さーせーるーかー!」
痛む右足に力を入れて、レイナの正面にその背を向けて大盾を地面に突き刺すのはルカ。彼女が現れた事でその盾が暴風の塊を真正面から受け止めて、かつ最大の防御を繰り出す。
「がっ・・・ああああ!!」
しかしコレほどの大きさの暴風は、盾ごとルカの身体を蝕んでいく。
その真後ろに居るレイナも同じだった。その威力は尽きる事無くレイナとルカの身体に大ダメージを与え続けて来る。
「ま、だだ!」
ルカの大盾に月の力が流れ込んでいく。
黒く、淡い月の光を宿すのはイクリプス。月食の力。
より強くより大きくより誰かを守れる力。
この力でもっと強く。もっと守りながら仲間が戦える力を解き放つ。
「僕だって・・・ギンジを勝たせるんだ!」
黒く禍々しく変わる盾は憧れへのイメージ。
カグヤ・ビートよりも攻撃的なイメージを宿す、月食の力。銃の怪人との戦いで操った時よりも、大きな盾の力。
「まとめて返す!
「フゥーハハハハ!跳ね返すだと!?おもしれーオンナ!」
暴風の塊はこの逆境の中で活路を見出したルカの反撃により、霊鳥の怪人に向かって二度も跳ね返された。
「その暴風ごとやり返してやるぜ!」
再び霊鳥の怪人が作り出したのは、暴風の塊。圧縮した暴風が向かう中余裕な表情で暴風返し返しを行おうとしていた。
「マジカルマジカル〜!」
夜空に響く甲高い少女の声。
「マジカルラブリーにゃんこハンマー!」
空中に浮かぶのは魔法少女の巨大な猫の顔が描かれた、猫の球槌。
霊鳥の怪人が巨大な猫を見て大きく驚く。
「な、なんだアレは!!おもしれーオンナ!」
魔法少女サクラが戦線に戻り、大きな猫ハンマーを振り下ろす。
重苦しく空を潰し風を左右に振り分ける攻撃は、非常に遅く鈍い。
そんな攻撃であれば霊鳥の怪人は簡単に避けられる。
「一度攻撃を止めるか・・・フゥーハハハハ!楽しくなって来たぜ」
猫ハンマーをおちょくる様に飛び回ると、霊鳥の怪人が誰よりも高く夜空を舞う。再び暴風の攻撃を広範囲に行う為だ。
「・・・ん?なんだコレは」
高く飛ぼうとした霊鳥の怪人の視界には、桃色の何かが空中に浮いていた。
それは幾何学模様で円型のふわふわ浮いている様に見える。
「やーい、ようやく見つけたの?」
霊鳥の怪人に追いついたサクラが、真後ろで霊鳥の怪人を煽り始める。
「なんだコレは・・・」
その時まで冷静だった霊鳥の怪人が少しだけ冷や汗を流す。
「それ?よく見てご覧よ。たっくさんあるよ」
にんまり笑う少女の笑顔はとても可愛らしく、怪人がこぞってこの魔法少女を食べたいと言うのも頷ける。この甲高い声で鳴いてくれれば、さぞ心がスッとする気分になるだろう。
しかしその笑顔は今はとてつもなく不穏なモノに感じられた。
「ソレね、私達のお姉さまの作戦の一部。触れたら爆発する魔法陣」
イタズラ好きの少女の笑い声に、霊鳥の怪人の背筋が震えた気がした。
霊鳥の怪人が焦りを感じつつも、今飛んでいるこの場所の辺りを見渡せば、いたる所にサクラの展開した魔法陣が無数に張り巡らされていた。
これら全てが触れれば爆発する魔法陣だと言うのであれば、この魔法少女も危ない筈・・・。
(いやいや待て待て!もしかしたらこいつには適用されずに、すり抜けていく・・・とかもあるかもしれねぇ!)
霊鳥の怪人のその考えは当たっていた様で、サクラがニヤリと笑えばすぐに真下に降下していった。その魔法陣をすり抜けながら落ちていく少女の顔は、霊鳥の怪人の瞳とサクラの瞳が重なる。
サクラのその顔を、その瞳を見て霊鳥の怪人に寒気がした。鳥肌が立ち、怖気がして不安になった。
その原因がこの魔法陣。
「今だよーー!レイナさーーーん!」
サクラの大声が地上に居るレイナとルカに良く聴こえた。
霊鳥の怪人への反撃手段が整った合図だ。
「良くやった、サクラ!」
レイナが無数の破邪の剣を指と指の間に挟みながら、落ちてきたサクラが新たに展開した、大きな魔法陣に剣を投げつける。
「破邪の・・・!」
無数に錬成し、無数に投げつける。レイナが産み出す破邪の剣は、サクラの展開する魔法陣に吸収されていく。
そんなレイナを守る様にしてルカが、イクリプスの盾を大きく構えている。
レイナが投げ、サクラが飲み込み、ルカが守る。
投げられた破邪の剣はと言うと・・・。
「どわぁぁーーー!?」
霊鳥の怪人の周囲に展開された魔法陣から、虹色の剣が何度も射出されていた。確実に空中で逃げ場が無くなる様にするために、サクラが飛び回りながら展開した魔法陣。
その魔法陣からレイナの剣が何度も飛び出して、360℃上下左右、夜空という状況において確実に逃げ場をなくした霊鳥の怪人に、虹色の刃が何本も突き刺さってダメージを与えていく。
風を貫きながら肉体を抉る剣の数々、ソレは確実に勝利を狙った最大の攻撃手段。
「破邪の・・・!!」
当たらなかった剣はレイナの右肩へと落ちてくる。突き刺さるその剣は、少しだけレイナにダメージを与えてしまうが、それでもレイナは破邪の剣を投げるの止めないでいる。
それよりも不発した破邪の剣を防いでいるルカも、レイナにだけはなるべく当てない様にして盾を構えている。
魔法陣から無数に飛び出す破邪の剣。
それと同じく防戦一方になった霊鳥の怪人。
更に退魔の霊力を練り上げながら、最大の一本を召喚しようとするレイナ。
「おのれフゥーざけるなぁ!」
無数の破邪の剣が刺さりながらも、霊鳥の怪人が思い切り暴風を起こして魔法陣と破邪の剣を風で叩き落とし、魔法陣は破壊されてしまう。
「今度はこっちから・・・反撃するぞ!」
「破邪の・・・!!!」
霊鳥の怪人叫びを無視して、レイナが両手で最後の一本を錬成した。その一本はレイナが破邪の領域で出せる最大の大技。
「破邪の
打ち出された虹色の処刑刃は、サクラの魔法陣に向かって飛んでいく。
ルカも月の力、月光線をサクラの魔法陣に打ち出し、サクラは2人分の大技をその魔法陣に吸収させた。
「
霊鳥の怪人が3人が立つ場所を目掛けて暴風を纏った急降下を成して、スピンしながら地上すれすれを滑空する。
ミサイルの名に恥じない強力な攻撃だと、誰もが解っていた。
だが、サクラが霊鳥の怪人の真正面に立ち、その背中をレイナとルカが支える。
大きな魔法陣は空中の魔法陣との繋がりを無くした事で、もう先程の攻撃は出来ない。
ならばこの魔法陣を使って・・・そのまま打ち出す!
「マジカルマジカル〜!」
「破邪の・・・!」
「月光!」
魔法、退魔、月の力。
3つの能力が混ざり、3つの能力が解き放たれるこの時限定の、最大の力。
『ヘヴン・ホワイトファング!』
魔法陣はより輝きを増して、桃色の光の中に、月の淡い光に呼応して、虹色の大きく強い力が明滅し始めた。
解き放たれた最大の力は、天国に立つ審判の如き巨大な剣。
その最大の剣が、ミサイルとなった霊鳥の怪人の嘴と激突を開始する。
嘴を守る強き暴風と、3つの能力の混ざった巨剣。
全てはヘヴンホワイティネスの勝利の為に、ギンジのこの戦いの勝利の為に・・・3人の美女が繰り出した最大奥義が霊鳥の怪人を相手に炸裂した。
この力押しに勝てなければ、次は無い・・・!
「行っけぇぇええ!!」
レイナが霊力を込めながら強く叫ぶ。こんな怪人に手間取っている場合では無いのだ。
退魔警察として、そしてヘヴンホワイティネスと同じ志を持つ者として、更にはギンジへの想いをありったけ込めて、夜空の下の激突に敗けないぐらい大声で叫んだ。
その想いに応えたのか、巨大な剣は声によって力を増して、暴風に守られる嘴に勢いを付けて刃をくっつけた。
「ふぐぅううおおおお!!!」
霊鳥の怪人が踏ん張りながらも刃との激突に、敗けそうになっている。先程の無数の攻撃がここに来て、集中力を落としているのも効いている。
それでも暴風は収まらない。この暴風を止めるとすれば、それは自分の死ぬ時だ。
霊鳥の怪人は本来ここには居ない筈の怪人だった。
本当ならば戦闘ではなく、柏木タツヤ大幹部の
だが予想がズレた事で正義連合やヘヴンホワイティネスの襲撃を許し、ここでの妨害を任された。
その変わりの褒美として、正義連合を倒せば怪人大幹部の席を用意してやる・・・その言葉を信じて霊鳥の怪人はここでの戦闘を買って出た。
だと言うのに・・・。
「ぐっかああぁ・・・!!」
どれだけ叫んでどれだけ力んでも、暴風は徐々にその勢いを落としていき、変わりに敵の剣が大きく強くなっていく。
「これで終わりだ!」
ルカが強く言うと霊鳥の怪人に怒りが激しく大きくなる。どれだけ思っても、敗けるつもりはないし、こんな奴らに敗けるつもりはない。
それなのに、自分の力は落ちていく一方だった。
「クソ!クソ!クソオオオ!!」
ついに暴風の渦を纏う嘴が消え失せて、変わりに視界一杯に広がるのは大きな剣の切っ先、先端である。
「そんな・・・馬鹿な!!」
「バカはお前の方だ!召されよ!」
嘴が剣とくっつき、次の瞬間にはその硬い嘴を真っ二つに斬り裂いた。その勢いは止まらずに霊鳥の怪人の顔を斬り貫き、頭部を左右に分けて、胴体も左右に裂いて、足先でさえ綺麗に別れた。
霊鳥の怪人がそこで斬られた事により、剣は消滅して霊鳥の怪人は断末魔を上げる事なく黒い霧となって爆散していった。
「・・・私達の勝ちだ」
レイナが静寂を取り戻したこの場所で、ルカとサクラに振り向いてにこやかな笑顔を見せると、サクラとルカの2人も笑顔で返す。
霊鳥の怪人を倒した事で、もうここに魔の気配を感じなくなった。そうして3人の正義連合はヘヴンホワイティネスが向かったであろう神宮リゾートホテルへと歩みを進めるのであった。
ショッピングフロアの戦い
正義連合vs霊鳥の怪人
勝者・正義連合
・・・・・・・・・・・・・・・・・
現在の戦況
赤鬼、ホテルへと突き進んで居る
正義連合、霊鳥の怪人をしばき倒した→ホテルへ
ヘヴンホワイティネス、新怪人四天王との激突中
オーク怪人vs梟の怪人、現在交戦中。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
リゾートホテルの地下から、岩盤を削り拓いた海が流れる人工のトンネルに、複数人の足音が響いていた。
その場を歩くのは5人。それぞれが高級なスーツを着ていて、人工的に埋め込まれた石の通路の奥にあるクルーザー船へと、足並みもバラバラに歩いていた。
「もう、終わりで良いのですか?父上」
体格の良い身体に、黒みがかった白髪の男が戦闘を歩く白スーツの男、父上と呼ばれた男に声をかける。
「構わない。一先ずの目的は達成したのでな」
荘厳な雰囲気を併せ持ちつつ、黒い地獄の様な威圧も醸し出す、父上と呼ばれた男の後ろ姿。
「おぼっちゃま、船の支度は済んでおりますが・・・本当によろしいので?」
5人の内一人、唯一白いスーツではなく漆黒の革スーツを着た老執事が、先頭を歩く父上に声をかける。
目の形にあっていないサングラスをかけた執事は、人工のトンネルの中で、後ろを歩く三名の人物の顔を一人ひとり見回す。
先程の体格の良い男の名は、神宮ヒシヤ。
その少し後ろを歩くのは、同じく黒みがかった白い髪を長く伸ばして、前髪を左側だけ垂らして左目を隠した少女、神宮カクミ。
一番最後尾ではポケットに手を突っ込み、白スーツをだらしなく着崩した男が歩いていた。
一番筋肉質な身体と、スーツを筋肉でパツパツに押し広げている高身長の男も、黒みがかった白い髪をドレッドで伸ばして後ろで結びつけたコーンロウと呼ばれる髪型にした、神宮オウテ。
彼ら3人、全て神宮の家の産まれの者であり、それぞれの瞳がもう人間を辞めている者の色になっていた。
人間で言うならば白目の部分は真っ黒になり、瞳孔と呼ばれる部分は赤く染まっている。
そして・・・先頭を歩くこの男も、瞳は見えないが後ろ姿だけでも気配はもう人のソレでは無くなっていると・・・老執事・歩兵ミツナリは感じ取っていた。
父上の名前は神宮ソウイチロウ。
本来ならば正式に18代目神宮財閥のCEOになる予定だった男。
ある計画の失敗で財閥からは除名され、家族も全員露頭に彷徨うハメになった。
神宮ソウジロウの兄であり、弟よりも優れた経営手腕、分析能力、株式市場の誰よりも早い状況判断。
建築、金銭の動き、利益のとり方、帝王学、発想力。
その全てが弟よりも優れた、神宮一族切っての天才だと言われ続けたこの男も、今では家族全員をヘルブラッククロスの怪人化の為に使い、自分の諦めていない計画、その野望を達成する為の駒として見ている。
「・・・カエデの事は良いのですか?」
神宮カクミが父親に声をかけるが、ソウイチロウは足を止めてカクミに殺意を送る。実の子供に出して良い気迫ではない事を、カクミは口に出して言いたかったが、なによりも恐怖がその瞬間に勝ってしまう。
言葉を紡ぎ、喉から声が出なくなってしまう。
「お前らの様な出来損ないは、私の役に立てる様に動いてくれればそれで良い。オウテ、ヒシヤ、カクミ。お前たちだけは、あの子を・・・」
あの子。ソウイチロウがそう呼ぶのは、自分の姪である神宮カエデ。
「名前で呼び捨てにするな・・・」
「はっ・・・い・・・」
カクミに向けられた殺意は明らかに親子の常軌を逸したモノであり、うつむいたままカクミは静かに返事をした。
クルーザー船の近くまで歩き出し、この場に居る5人は船を視界に入れる。
神宮ソウイチロウの設計の下、作り上げられたこの船。見た目はどこから見てもただの大型クルーザー船が、人工のトンネルの海に浮かんでいた。
神宮・セント・ドゲンカ・ヲノー。
それがこのクルーザー船の名前であり、神宮をどうにかしないと行けない、とかそんな意味合いがあるのだとか。
「では、戻るぞ」
ソウイチロウが家族と執事にようやくその顔を見せた。
元々ここに来たのも、ソウジロウを貶める為であり、その代価として自分達は力を組織に提供してもらう。
その第一の目的を達成した神宮ソウイチロウ達は、恐らくここに来ている神宮カエデをここで連れて帰る事はせずに、捨て置いとく事にした。
今は・・・得た力を制御しておく事のほうが重要であり、早くここから離れるに越したことはない。
「・・・天の果てへ・・・」
ソウイチロウの厳格の顔つき、顎にあるヒゲと白い髪。
その中で、双眸が暗闇に飲まれて赤く光りだす。
彼もまた・・・怪人という領域に立ち、地獄に魅入られて力を得た一人だった。
クルーザー船が動き出し、人工のトンネルを抜けて、暗闇の海を真っ直ぐ突き進み始める。荒い海も、ただの闇夜も、今のソウイチロウからすれば、全ての計画が順調に動き出しただけ、その祝砲が放たれている。
その気持ちだけで、これから先の未来に期待を寄せられた。
(10年・・・長かったな─)
ソウイチロウがクルーザー船の椅子に座りながら、自分の右手を見つめて握る。
10年前に計画は失敗したが、10年後である今、その失敗を取り戻せば良い。
今度は・・・怪人の力を使って・・・。
続く
お疲れ様です。
ミヤコ奪還編ももうすぐ半分だった所、次回で半分になります。
次回こそはオーク怪人とヘヴンホワイティネスのお話に!
キャラネタ書きます
女王ナメクジの怪人
一般男性であれば勝つ事は正直無理なレベル。アホほど性欲も強いので一晩で400戦ぐらい出来ないと一方的に絞られる。
女性同士もイケる。でも赤鬼に勝てなかった。
赤鬼
女王ナメクジの怪人の液体を持ち帰って、カエデの姉御かミヤコ姉さんにプレゼントしてあげよう。
霊鳥の怪人
ものすごくイカ臭えですわ!
技名は全て神話の霊鳥に由来する。
趣味は子供達とニチアサで語る事。女攫いは好きだけど、子供は襲わない。子供っぽい趣味がたくさんあるが、イカ臭っせえですわ!
熊沢レイナ
作戦は要約すると、難しい事は考えず3人でボコろう!
サクラの魔法に強く、ルカの防衛に弱い
小町サクラ
魔法陣と魔法陣を繋ぐ魔法で作戦を援護した。
レイナの退魔に弱く、ルカの防衛に強い
月島ルカ
暴風や攻撃に耐えるという事や、レイナの防御に役立った。
サクラの魔法に弱く、レイナの退魔に強い
神宮ソウイチロウ
神宮カエデの伯父であり、カエデを使った野望を計画している。
10年前は失敗したが、10年後の今、成功すると信じている。
神宮家を追放されたが、持ち前の頭脳でハイパー頑丈に生きてきた。
改良された怪人の珠で怪人化した。
自分の子供達は全員駒の扱いであり、妻にはカエデ一筋な所を気味悪がられて逃げられた。その後殺害した。
神宮オウテ/ヒシヤ/カクミ
ソウイチロウの子供達。
長男・オウテ、次男・ヒシヤ、長女カクミ(末っ子)
この三人も怪人の珠で怪人化したが、父親と同じく改良品を貰った。
父親からは愛情を貰って居ないが、指示、命令には絶対服従。
オウテ20歳、ヒシヤ19歳、カクミ17歳
名前の由来は将棋の王手、飛車、角
歩兵ミツナリ
神宮ソウイチロウ、ソウジロウの父親であるソウヘイが子供の時からの執事。弱い89にして現役。怪人の心臓を移植してもらった事により、若き力が戻ったとも。半怪人化している。カエデの爺ちゃんであるソウヘイ、ソウジロウ、ソウイチロウを全員ぼっちゃま呼びしているので、忠誠心は皆無に等しいが、ソウイチロウ派についている。
ソウイチロウ一派の出番は一先ず終わり。再登場までお待ちください。
・・・
次回こそはオーク怪人と、ヘヴンホワイティネスのお話に!
梟の怪人を倒し、新怪人四天王も撃破出来るのか!
ヘヴンホワイティネスを応援してね!
ヘルブラッククロスも応援してね!
それではまた次回!元気モリモリでガンバルゼェエエエ!!!