正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちは、アトラクションです

最近仕事も忙しくて、嫌になっちゃいます。
100年ぐらい有給取りたいですね。

今回のお話は、前後編に別れる様な形で章の半分となるお話にしております。これはその前編。

それではどうぞ!


85・だけど、離れ離れになり

 神宮リゾートホテル。ここは一年中人々が癒やしと安寧を求めて、極楽を楽しむ神宮財閥所有のホテルである。正しき行いを続けて来た財閥の由緒正しきホテルは、今は地獄の如き理不尽な破壊行為によって、美しい姿は無残なモノとなり、そこかしこに激しい破壊の音がひびき続けて居る。

 

 そしてそのホテルの中腹部分、神宮のプレートをも壊された廊下のすぐ奥・・・。

 

 中層の大きな調理場では、地獄から産まれた豚と梟、その2人がお互いの守るべきモノを手にする為に大激突を繰り広げていた。

 

 オーク怪人は自分に起こる未来が観えて、梟の怪人は相手の考えている事が映像化される能力。

 

 似て非なる能力が、ここに来てお互いの確実な一撃を生み出せないでいた。

 

 (厄介な能力だな)

 

 オーク怪人の右足から鞭の様にしなる蹴りが繰り出されても、梟の怪人はそれを軽々しく避ける。

 

 対する梟の怪人も隙きだらけだらけに見えるオーク怪人に、攻撃を当てても驚異のタフネスから背中で跳ね返してくる。

 

 少しずつ一撃のダメージを与えても、いつかは押し返される。

 

 「ホー、こっちはお前の考えている事なんて丸わかりなんだ。無駄な抵抗は辞めて死ぬべきだぞ」

 「ブヒ、さっきからそればかりだな。語彙力無いのか?」

 

 梟の怪人の挑発はオーク怪人には通用しない。舌戦ならオーク怪人に分があるだろう。

 

 「やはり・・・思い知らせるホーホーはこれしか無いか」

 

 梟の怪人が喋りながらぎょろりとした怪人の瞳を蠢かせる。それと同じで腕を振り上げて拳を構える。

 

 オーク怪人も無言で拳を構えて、梟の怪人と目線を合わせる。

 

 ジリジリとした熱気が空間を捻じ曲げて、ぐにゃりとした様に見える程の熱さが2人を中心に広がっていく。

 

 「・・・」

 「・・・」

 

 お互いに無言なまま次の攻撃を警戒し、お互いに睨みを効かせる。

 

 (ホー、来たか)

 

 先に動いたのはオーク怪人。

 

 考えている内容は──先ずは真正面から行き、左から蹴る!──それが解れば、梟の怪人は右に避ければよいだけ。

 

 オーク怪人がその巨体に見合わない素早さで接近すると、確定思考で理解していた通りに、右に身を翻した。

 

 しかし蹴りはしていたモノの、オーク怪人が右足で後ろ蹴りを繰り出し、梟の怪人の胸にめがけた鋭く軍靴がめり込んだ様に見えた。

 

 「ぬぅ、防御したか・・・小癪な」

 

 軍靴が当たる前に両腕を交差させて、上手いこと蹴りを防いだ梟の怪人。

 

 (ホー、今の一瞬で蹴りを考えたのか・・・骨が痺れるっ)

 

 両腕にクリーンヒットしたのか、防御をしたのにダメージが入っている。梟の怪人はオーク怪人の知能の高さを素直に称賛出来ている。

 

 しかしどうあっても、次を考えるというのは自分の方が上だと、梟の怪人は自分の勝利を信じて疑わない。

 

 「行くぞ、梟!」

 

 再び地獄の豚が叫び、地獄の梟もそれに反応する。

 

 次はオーク怪人の突進。巨体を丸めて肩からのタックルは、見た目以上に大きく見える。

 

 だがこれだって避けてしまえば・・・。

 

 ──このタックルも避けるに違い無い!──

 

 オーク怪人の思考が読めた。つまり避けた後にまた何かをするつもりだ。

 

 ならば・・・。

 

 梟の怪人が足を大股で開きながら踏ん張り、両腕を広げる。

 

 (玉砕するつもりか!?)

 

 早く倒れるならばそれでも構わない。しかしオーク怪人がそう思っても、確定未来の映像は、受け止められた勢いで梟の怪人が立つ後ろのコンロに投げ飛ばされる・・・その映像が見えた。

 

 (・・・ならば!)

 

 オーク怪人はそのまま勢いを強くしていき、梟の怪人の胴体ど真ん中を狙いを定めて、思い切りタックルを決める。

 

 確定未来の映像の通り、突っ込んだ勢いを利用した巴投げが炸裂する。

 

 「ホー!?」

 

 確かに梟の怪人はオーク怪人を真上に投げ上げた。だが、その次はオーク怪人が梟の怪人の首の毛皮を掴み、地面に堕ちる衝撃で逆に梟の怪人を持ち上げたのだ。

 

 怪力。文字通りの圧倒的なパワーで、梟の怪人を見上げるオーク怪人がそのままコンロめがけて梟の怪人を叩き落とした。

 

 「ホガァ!?」

 

 頭から叩き落されて、梟の怪人が悲鳴を上げる。

 

 「ホー、調子に・・・乗るな!」

 

 猛禽類の足爪がオーク怪人の軍服を貫き、身体をひっかき回す。

 

 全身を瞬時に切る攻撃に、オーク怪人はまたしても軍服をおしゃかにしてしまい、それと同時に全身から出血していく。

 

 「ぐぬぅ・・・」

 

 血液で視界を遮られたオーク怪人の両肩を掴み、梟の怪人がシンク台にオーク怪人を何度もぶつけていく。

 

 豚の顔の形にシンクがへこみ、ところどころに血液にまみれていく。

 

 赤く鮮血に汚したキッチンの床に、オーク怪人を擦り付けてスライディングの要領で梟の怪人がオーク怪人に追い打ちをかける。

 

 「勝つのは我々ヘルブラッククロスだ!誰にも我が大幹部、総統の邪魔はさせん!ホー!!」

 

 猛禽類の足でオーク怪人を何度も踏みつける。爪が肉に刺さり腹部に穴が空き、肉を潰していく。

 

 「ぐほっ、ブヒっ・・・いい加減に、しろ!」

 

 両足を上げて梟の怪人の首を真後ろから締め上げて、前方に押し倒す。足を降ろした勢いで立ち上がり、梟の怪人も同時に立ち上がる。

 

 お互いの距離は腕を伸ばしきらなくても、手が届く距離だ。

 

 「ホー!」

 「ブヒぃ!」

 

 オーク怪人の鋭く重い拳、梟の怪人の軽くとも痛い拳。

 

 二つ同時に腕を交差して、お互いの顔にクリーンヒットする。

 

 「ホー、舐めるな!」

 「貴様こそ、甘く見るな!」

 

 そこからは頭突きが同時に繰り出され、脳に響き渡る衝撃。

 

 同時に動き出しては、爪と軍靴の突き出し蹴り。

 

 オーク怪人の強力なブロウパンチ、踵落とし、タックル、手刀。

 

 梟の怪人の強力なラッシュ、回し蹴り、正拳突き、拳法。

 

 調理場全体を回る激しい殴り合いが長く続く。

 

 そのどれもがお互いの能力を駆使した先読み勝負であり、攻撃と防御を同時に兼ねる、激しい激突の連続。

 

 何度も吹き飛ばされては、何度も殴り返し、何度も同じ状況が続いていく。

 

 「私はドクターの未来の為に、ここに立っているのだ!」

 「私も同じだ、大幹部とヘルブラッククロスの未来の為に、ここに居るのだ!」

 

 オーク怪人の言葉に、梟の怪人が叫んで、再びオークの攻撃を避けられた。

 

 腕を何度もぶつけ合う攻撃に、終止符を撃つ。

 

 梟の怪人がオーク怪人の背中をはっきりと捉えた。

 

 次の攻撃で、命が尽きるまで、この猛禽類の爪で・・・殺してやる。

 

 そう息巻いた梟の怪人に、オーク怪人の後ろ蹴りが伸びてきた。

 

 (ホー!さっきと同じだ!もう読めている!)

 

 軍靴の重苦しい蹴りの靴底の面が、梟の怪人の視界に広がってきた。さっきと同じく、防御すれば・・・。

 

 (!?)

 

 しかし両腕は上がらなかった。

 

 その事がきっかけで反応が遅れた梟の怪人の胸に、再び蹴りが伸び切って当たってしまった。

 

 (ボォォ!?)

 

 ボギボギ・・・と体内で骨の鳴る音、いやこれは骨の折れる音。

 

 それが体内で響いて、梟の怪人が調理場の壁に叩きつけられる。

 

 「ごほっ・・・なんでだ、腕が上がらん・・・」

 「そうだろうな・・・ハァ・・・」

 

 蹴りがようやく当たった事で、オーク怪人が迫るが出血がひどい為か、片膝をついてしまう。

 

 元々最初に当てた蹴りは、反射神経だけで動かしたが、どうせそれも防がれるのは解りきっていた。ならば、防御に多用するあの腕を壊してしまおうという、オーク怪人の次の一手としての布石だった。

 

 だが相手はどうやら人の考えが読めるらしい。

 

 ならばもっと強い蹴り、これで攻撃する。その考えだけで思考能力を働かせて、思い切り蹴りをかました。

 

 その後に続くお互いのラッシュにおいても、同じ。出来ればダメージを取りたいが、焦ってもこちらの攻撃が当たらず、相手の攻撃だけを貰うハメになる。

 

 ならば次々と来る攻撃を受け止めつつも、自分と同じ状況になって貰う。そうする事で、この梟の怪人は常に防御に腕を使う。

 

 そしてそこまで腕を使えば、当然タダでは済まない(・・・・・・・・)と。

 

 梟の怪人の腕は既に砕けている事を、自分自身で理解出来ていなかったのだ。

 

 自分の武器でもあり、盾でもある翼の腕。

 

 「これで勝ったつもりか・・・ホー、まだ腕が砕けただけだ」

 「・・・怪人としては一流の様だな・・・だが!」

 

 壁から落ちた梟の怪人が、腰を器用に使って立ち上がり、オーク怪人もその全身から血液を流しながら立ち上がる。

 

 お互い構えるのは右拳。

 

 腕が使えなくなろうとも、ヘルブラッククロスの裏切り者を倒そうとする梟の怪人の覚悟をその眼で見たオーク怪人が右手だけで戦うという意思を見せたのだ。

 

 (お互い・・・産まれる時期と、造ってくれるのが・・・)

 

 豚と梟。交わる事のない2人の怪人が同時に走り出した。

 

 オーク怪人が右手を・・・雪の怪人と戦った時みたく振動させて、梟のか怪人の右手へと突き出した。

 

 二つの拳がぶつかり、オーク怪人の振動する拳が梟の怪人の拳を完璧に破壊し、羽の毛皮を剥がして骨を打ち砕き、肉を粉砕していく。

 

 (ドクターミヤコだったら、我々はきっと良き友になれただろうな)

 

 覚悟に覚悟の雄叫びを上げて、オーク怪人が梟の怪人を右腕ごと彼女を殴り飛ばした。

 

 振動と破壊が肉体にまで届いた梟の怪人が、その身体をキッチンの巨大冷凍庫に叩きつけられて、動けなくなってしまったが、オーク怪人のトドメの一撃が繰り出された。

 

 ギンジに喰らった事のある、音楽堂での戦いを思い出し、右足を振動させながらの一閃の如き蹴り。

 

 振動一閃蹴。ブレる事なく梟の怪人の胴体に確実な一撃を叩き込み、冷凍庫の扉ごとその生命を葬った。

 

 「・・・強敵だった・・・」

 

 動かなくなった梟の怪人を壁から引き剥がし、その亡骸を大鍋に突っ込み、生きている水道から水を取り込んでいく。

 

 それをコンロにかけて強火で茹で始める。

 

 「貴様は喰らって行く。死体を誰かの手に渡すわけにはいかんのでな・・・私が勝ったのだから、文句は無いだろう」

 

 ボロボロになった身体を引きずる様にして、オーク怪人は少しの休息を取るのであった。

 

 今はこんな事をしている場合では無いだろうが、友と認めたこの怪人の亡骸を自分の身体に取り込んで居る間に、もう一人の友がドクターミヤコを救出している頃合いだろう。

 

 神宮リゾートホテル・調理場の戦い

 

 オーク怪人vs梟の怪人

 

 勝者・オーク怪人

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 神宮リゾートホテルの一階、エントランスホールではまだ激戦が続いていた。

 

 自分の父親を助ける為に、自分達の仲間を助ける為に、なんの罪も無い人達を苦しみや恐怖から助けるために、ヘヴンホワイティネスがここまで来たのだ。

 

 そんな彼女達を妨害するのは、ヘルブラッククロス。

 

 新怪人四天王となってその席に付いた怪人達は、鋼の怪人、蜘蛛の怪人、武者の怪人の三名。

 

 鋼の怪人と相対するは、ヘヴンホワイティネス神宮カエデ。

 

 蜘蛛の怪人と交戦するは、ヘヴンホワイティネス宮寺レン。

 

 武者の怪人と対峙するは、ヘヴンホワイティネス甘白ミドリコ。

 

 蜘蛛の怪人の視認するには困難を極める、糸の攻撃。触れれば勢いと重みで全てを切断する鋭い攻撃は、全身をビームで包むレンには存在していて、存在していない。

 

 武者の怪人の繰り出す斬撃は、ほぼ生身になっているミドリコには至極強烈な攻撃になるが、今のミドリコはいつもと違い、様々な武装を一つにまとめ上げて、更に武器を身体に装備している完全武装。

 

 鋼の怪人が向ける先、肉体の全てが鋼化する攻撃は重くて強い。悪の側面を全て詰め込んだ容赦の無い攻撃がカエデのガントレットと激しくぶつかる。

 

 「どうしたヘヴンホワイティネス!オイラ達を倒すんじゃなかったのか!?」

 

 蜘蛛の怪人の粘着糸による妨害、武者の怪人による斬撃の横入れ、鋼の怪人の圧倒的なパワーで繰り出される一撃に、カエデもレンもミドリコも正直手を焼いている。

 

 彼女達のコンビネーションが悪いのではない。彼らのコンビネーションが完成しているのだ。

 

 無論一人で戦っても、相応に強いが、なにより戦う場所が悪い。

 

 カエデとレンは前に出られるが、ミドリコが爆撃攻撃を行えず、遠距離攻撃を得意とするミドリコに集中してしまう。

 

 そこを狙われたカエデが鋼の怪人と蜘蛛の怪人により動きを止められて、レンが武者の怪人によってビームを斬られる。

 

 3vs3の戦闘が続き、カエデもレンもミドリコも状況がかなり悪い。

 

 「無謀・・・だっ」

 「そうだな。どちらにしても拙者達に勝てるとは思わない事だ」

 

 鋼の怪人と武者の怪人が強い口調でカエデ達に言い放つ。

 

 それでもヘヴンホワイティネスである彼女達は、敗けるつもりは無いとその視線に輝きを失わせない。

 

 「・・・レン、ミドリコ、お願いがあるの」

 

 カエデが目線を逸らさずに、2人にお願いを口にする。

 

 「・・・大体予想は付くけど、何?」

 

 レンは口角を上げてカエデのお願いに耳を貸す。

 

 「君のお願いならいくらでも聴くさ。この状況なら尚更な」

 

 ミドリコもシルバーボウガンを構えながら、カエデに耳を傾けていた。

 

 「このまま混戦していても拉致が開かないわ・・・あたしが敵を分断するから、ヘヴンホワイティネス皆それぞれバラバラに戦うのはどう?」

 

 カエデがレンとミドリコに一瞬視線を動かしながらそう話すと、カエデがブーツのギアを鋭く回す。

 

 「どいつから気持ちよくなるか相談は終わったかー?」

 「あたしが今から床をぶち抜くから・・・後はわかるわよね」

 「おーい、オイラは誰からでもいいぞーベロキスすっぞ。オラ口あけろ」

 「解った・・・私はあの武者の怪人を相手する」

 「私は、あの蜘蛛の怪人。必ず、倒す」

 「おいおいおーい!シカトかー?後で気持ちよさが身体に毒だぞ」

 「ありがとう。あたしはあの鋼の怪人を倒す。皆で勝って、ミヤコも連れて一緒に帰るわよ!」

 

 カエデの左右に並んだレンとミドリコが、カエデの肩を軽く叩くと、それを合図としてカエデが思い切り前に飛び出した。

 

 「先ずはお前か!いいぜ、来いよ。一緒に子作りしようね」

 「さっきからうるっさいのよ!!!」

 

 怪人達に届く僅かな距離でカエデが飛び上がり、両足のギアが回転して発光する。眩い光が眼くらましとなり、眼くらましになった。

 

 それをチャンスとしたカエデが思い切り、エントランスホールの床へと急速落下して必殺技を叩き込む。

 

 「必殺!ヘヴンリー・スタンプ!」

 

 カーペットを踏み砕き、床には大きな亀裂が入る事で、蜘蛛の怪人と武者の怪人がバランスを崩してく。

 

 「小賢しい真似を──!」

 

 武者の怪人が刀を引き抜こうと腰を落として構えるが、その正面。

 

 ミドリコがシルバーボウガンの矢を飛び出したまま、武者の怪人へと突進して、そのダッシュの勢いのまま近くのレストランから見える大きな窓ガラスへと走っていく。

 

 「死なばもろともか─」

 「いいや、駄目で元々だ!」

 

 矢は止め金に突き刺さり、武者の怪人に傷は無い。しかし、ミドリコが引き金を絞る事で、その矢は射出されて後部の矢じりについた爆薬が至近距離で爆発する。

 

 シルバーボウガンが傘状に開き、爆風を防ぎながら武者の怪人だけは窓ガラスの向こう側へと吹き飛ばされていく。

 

 落ちた先は噴水と川が一つになった、ホテルの景観として一役買っていた美しい小道。

 

 そこの石床に転がっていくのを確認したミドリコは、ワイヤーフックを使って武者の怪人が落ちた場所に向かっていく。

 

 同じタイミングでは蜘蛛の怪人がレンのビーム剣を受け止めて、糸とビームの衝突が始まっていた。

 

 「不意打ちだと!?オイラを騙せるなんて思うなよ!唾交換するぞ」

 「もう騙してる。『言葉使いに気をつけろ』。後ろに、カエデが居るよ」

 

 レンが指さした方向を警戒した蜘蛛の怪人が振り向いたが、そこには誰も居ない。少し離れた場所のレストランに爆発が起こったぐらいだった。

 

 「なんっ゛!??」

 

 ここまではただの嘘。ここからがレンの不意打ち。

 

 ビームハンマーの出力を上げた、重たく大きい9本の棘がついたビームハンマーが、蜘蛛の怪人を胴体を横薙ぎでぶっ叩かれた。

 

 「ビーム剣術!」

 

 すぐに形状を変えて、次はドリル。

 

 空中に浮いた蜘蛛の怪人にしっかりが狙いを定めて、レンのドリルが突きこまれる。

 

 「ドリル・リヴェンジ!」

 

 ドリルを高速回転させながら、蜘蛛の怪人に飛び出していき防御で出された粘着糸をたやすく斬り開く。

 

 「この・・・粘着糸の防壁(アシダカグモ)!」

 

 蜘蛛の巣の様な形状の盾が展開されて、ドリルはその糸をも斬ろうとするが糸が絡まり回転が止められる。

 

 ドリルの先端は蜘蛛の怪人の顔の寸前に迫っていた。

 

 「動きが止まればこっちのモンだぜ!オラ足開け」

 

 左三本の腕にまとわりつくのは、キラキラと白く見える糸。その糸が束ねられて拳を守るグローブの様な姿になり、レンの胴体をめがけて振出される。燕尾服を揺らしてスマートな姿勢から繰り出される三本ストレートパンチに危機を感じたレンはドリルを元のビーム剣に戻して、後方に回転にながら避けていく。

 

 「避けたのは正解だぜ。この糸は斬糸(ざんし)。触れるだけで斬っちまう、オイラの得意な糸でな。この糸の上手い使いどころは女湯に入っているトモカちゃんのバスタオルを上手い具合にピッと切込みを入れてうんたらかんたら」

 

 長々と話している間にトモカという単語が出てきて、レンの中にとてつもない怒りが湧き上がる。

 

 最近トモカがお風呂に入るのが怖いと言っていたのを思い出して、レンはビーム剣をハーフブレードに形状を変えて、居合抜きで自分と蜘蛛の怪人の足元をくり抜いた。

 

 「そしたら日焼けで小麦色になったトモカちゃんの背中が綺麗でうおぉぉぉぉ」

 

 話している間に落ちてしまう。そんな蜘蛛の怪人が6本の腕で糸を展開させて、落ちるの阻止する。その姿は自分を中心として蜘蛛の巣。

 

 しかしその形の糸の展開で難を逃れても、その巣の中心にレンがビーム剣を真下に向けて落ちてくる。

 

 「ビーム剣術!ヘヴンフォール!」

 

 落ちる勢いと体重、全てをビーム剣に流して、一滴の雨粒の如く蜘蛛の怪人に蒼白い雫が落ちた。

 

 雫と呼ぶにはあまりにも殺意の込められた、強力な一撃。

 

 「お前だけは、許さない」

 「こっちだって許さんぜ!無理しないでいいんだよ」

 

 レンの一撃が当たる事で、蜘蛛糸がブチブチとちぎれ、今度こそ2人同時に地下1階に落ちていく。

 

 思い切り人一人分の体重を乗せた落下速度は、非常に強くて蜘蛛の怪人に一本取った形になる。

 

 「本当はお前に、またがるのは嫌だけど、最後に天国に連れて行ってあげる。『感謝しろ』」

 

 蜘蛛の怪人から立ち上がると、レンは飛びながら蜘蛛の怪人から飛んで離れる。

 

 「オイラを怒らせたなぁ・・・見せてやるよ、強いオイラの姿を・・・」  

 

 蜘蛛の怪人が燕尾服を引き剥がして、背中からもう二つ腕が出てくる。それは人間らしい形はしておらず、虫の様な甲殻がついて針のような毛がびっしり細かく生え揃った腕。

 

 文字通り蜘蛛の手のようだった。

 

 他の6本の腕も同じく背中から伸びた腕のように変容し、腰から大きくて気持ち悪い蜘蛛の臀部が盛り上がる。

 

 蜘蛛の怪人の真の姿となり、8本腕を地面につけて6つ眼の顔をギョロギョロと動かしながらレンを睨みつける。

 

 文字通りの蜘蛛としての姿となった蜘蛛の怪人が、足も変容させて巨大蜘蛛の様になっていた。

 

 ふざけて、不気味な姿だが明らかにさっきよりも強くなっている。その気迫がレンに緊張感をもたせるには十分な異様な雰囲気である。

 

 「こいつがオイラの・・・フェーズ3だ!」

 「ギンジみたく、黒い炎は出ないんだね。雷も」

 「蜘蛛糸ビームなら出るぜ」

 「ビームならこっちが、本物」

 

 地下にある広大な空間で、蜘蛛の怪人とレンが激突を再度開始した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 鋼の怪人だけはカエデの不意打ちに対応したのか、少し離れた位置取りで孤立していた。

 

 カエデの不意打ちと亀裂による崩落に巻き込まれなかった鋼の怪人は、カエデが自分を見つけたのを確認すると、両腕を鋼化させながらカエデに近づいていく。

 

 カエデも両腕のガントレットのギアを回しながら、鋼の怪人に向かっていく。

 

 その足取りはお互い、強く、しかし軽快。

 

 「・・・一対一に持ち込んで、勝てる算段が?」

 

 鋼の怪人が足を止めて、カエデがキッとした表情で鋼の怪人を睨む。

 

 「当たり前でしょ。確かに、あんた達は今まで戦ってきたどんな怪人よりも強いっていうのは認めるわ。けどね・・・」

 

 カエデが人差し指を鋼の怪人に向けて、強く言葉を出す。

 

 恐怖に負けている場合では無い。勝たねばならないのだ。

 

 この戦いは・・・ギンジの為でもあるし、自分の父親を助ける為でもあり、なによりも平和と未来を守る戦いなのだ。

 

 「あたし達正義のヒーローが、強い弱いで敗けていたら、救えるモノも救えないのよ!さっさと出ていきなさいよ、この変態組織!」

 「出て行かせてみせろ・・・この世は力が全てだ。力だけがモノを言う権利がある・・・」

 

 その言葉を最後に、鋼の怪人が構え、カエデも同じく四肢全部のギアを強く回る。

 

 先に手を出したのはカエデ。右ストレート、右フック。その二つは避けられ、鋼の怪人も鋼となった右手を振り回し、左腕を振り回してカエデの首を狙うが、お互いに攻撃は避ける。

 

 避けた勢いでカエデは鋼の怪人の背後を取り、延髄に向けた三日月蹴り。勿論鋼の怪人は背面全てを鋼としてその攻撃の防御に成功する。

 

 「このっ・・・!」

 「むぅん!」

 

 着地したカエデが出したのは、左足のハイキック。

 

 鋼の怪人も一歩に前に出て、すぐに振り向き様に左の鋼ハイキック。

 

 鋼と未来の技術による衝突が、衝撃を生み出し、カエデは片足でバランスを取れずに転びそうになる。

 

 その隙を見た鋼の怪人が膝を曲げて腰を捻り、身体を横にしながら両腕を伸ばす。腰を曲げた事でカエデに拳を突き出し、そのリーチが踏み込み一歩分増える。

 

 転びそうになったカエデに容赦なく打ち出された鋼の拳に反応して、浮いた足で反撃に転じるが、勢いは鋼の怪人の方が上だ。威力で勝る事は無く、カエデが倒される。

 

 「〜〜っ!」

 

 ヘルメットで守られているとは言え、後頭部をぶつけて頭を押さえる。痛みがじんわり広がっていく感覚もつかの間、カエデの顔を目掛けた鋼の足による追撃が迫ろうとしていた。

 

 「危なっ!」

 

 横に転がりながら足を上げて、跳ね起きて姿勢を整えるが、それを見計らった鋼の怪人の更なる攻撃が繰り出され、カエデは防戦一方に陥る。

 

 やはりこの怪人は強い。的確な攻撃、容赦な繰り出される鋼の拳。

 

 そしてそれら自分の能力を防御にも攻撃にも用いて、隙間無く相手の反撃を許さない戦い方。

 

 おまけに油断をしていない。

 

 だからと言ってカエデが弱いという訳でもない。彼女も多数の死線をくぐり抜け、ここまで勝利えを得てきた。

 

 鋼の怪人が強くとも、カエデは敗ける訳には行かない。

 

 「必殺!」

 

 両腕のガントレットに衝撃を込めて、両腕を背後に回す。

 

 その一撃の重さはカエデ自身でも驚く程の強さを秘めた、正義の大衝撃。

 

 「させる・・・かっ!」

 

 鋼の怪人も黙って見ている訳が無く、カエデに全身鋼鉄のまま突っ込んでいく。

 

 だが接近よりも早く、カエデの必殺技が叩き出される。

 

 「テラマグナム・インパクト!!」

 「・・・!!」

 

 鋼の怪人の腹筋は鋼によって、普通のモノよりも数倍硬い皮膚となっている。それに対してカエデの解き放つ正義の衝撃が、鋼の奥に隠された実体に届いたのだ。

 

 強力な衝撃が全身をくまなく浸透していき、身体が痛みで曲がる。

 

 その衝撃が抜ける事無く、普段の数倍重くなっている鋼の怪人の身体を浮かして後退させた。

 

 先程よりもより勝ち気な印象を思わせるカエデの顔を見て、鋼の怪人は強者である彼女に胸がときめいていた。

 

 「・・・いいぞ。倒しがいがある・・・な」

 

 身体を上げてカエデに微笑みを見せたまま、彼女から眼を離さない。恋をするという感覚がこれならば、なんと胸が踊るモノだろうか。

 

 これほどの強さを、自分に期待をもたせる【力】を持った相手が居る事に、鋼の怪人が大きく喜びながらカエデを視界から逃さない。

 

 これだけの力を持っているのならば、きっと彼女もヘルブラッククロスの望む世界、そしてその先にある計画を聞けば賛同してくれるかも知れない。

 

 「聞け・・・ヘヴンホワイティネス」

 

 鋼の怪人が静かに口を開き、カエデに計画の全容を話そうと言葉を放った・・・。

 

 その姿は荒れたエントランスの中に一人立つ、荒野の旅人の様な姿と威圧がそこにあった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 武者の怪人を降ろして、ミドリコも武者の怪人の目の前に立った。

 

 これは銃と刀の戦い。石床には止め金がチャリチャリと擦れる音が、風の音と共にミドリコの耳に聞こえてくる。

 

 あの至近距離の爆撃を受けて、武者の怪人は未だ戦える余力を残しているようだった。

 

 「怪人とは恐ろしい生き物だな・・・あれで傷ひとつ無いとは」

 

 ミドリコがシルバーボウガンを腰に構えたまま、重たそうに持ち上げると、中の弾薬が重みで擦れて騒がしい音が鳴り出す。

 

 実際とても重たく、これを持ったまま長距離走る事は難しいだろう。

 

 「見た所特殊な力は無いようだな。それで拙者に勝つつもりか?」

 

 武者の怪人の言うとおり、ミドリコにはこれと言って特殊な能力が無い。敷いて言えば魔法界での修行で得た、相手の気配を見る力ぐらいだろう。

 

 それ以外は様々な重火器を無数に操り、最後はロケットランチャーで〆る。それがミドリコのやり方だ。

 

 だがこの怪人は爆薬の付いたアローランチャーでは、無傷に等しい。

 

 この怪人に勝つには、もっとより多くの弾薬と爆薬が必要だろう。

 

 と、今までのミドリコならそう考える。

 

 今のミドリコならば、完全武装となった今、爆薬も矢も弾丸もナイフもそれはもう無数に用意してある。

 

 シルバーズ・ミドリコ・スペシャルを操る彼女のシルバーボウガン。

 

 バレットローラーを揺らして、矢を発射弓に装填され、腰にぶらさげた手榴弾を両手に構える。

 

 こんな所で爆撃すればけが人だって出るだろうが、ヘルブラッククロスが支配を完了した今、ここに一般市民なんて居ないはずだ。

 

 「私からのプレゼントだ。受け取れ!」

 

 形の良いしなやかな腕を振り上げて、投げられたのは手榴弾。

 

 武者の怪人に投げられたそれはピンで引き抜くタイプでは無く、衝撃を加える事で爆発するタイプのモノ。丸みを帯びたモノではなく、木製のスティックの付いた骨つき肉によく似た形の手投げ爆弾。

 

 「姑息な女だ・・・斬る!」

 

 背中に携えた大きな刀を二本、武者の怪人が振り下ろすように引き抜くと、手投げ爆弾達が全て綺麗に斬られて、不発に終わる。

 

 斬る・・・という点においては予想していたミドリコだが、それが不発に終わるとは予想外だった。

 

 「爆弾ならば勝機が見えると思ったか──」 

 「・・・!」

 

 武者の怪人がミドリコに向けて刀を見せびらかすと、刀身には爆発の源となる爆発線が刀に巻きつけられていた。

 

 刀を操る神業を見せられた気分になった。

 

 「──どうだ、今度は貴様の弾も、矢も斬ってみせよう」

 「そうか・・・それじゃ、これも斬ってみせろ!」

 

 ミドリコが取り出したのは二丁のサブマシンガン。

 

 その形はどこにでもある片手で撃つことの出来る、所謂ミニタイプ。しかし特徴的なのは、ミドリコが構える手元の下に異様に長くなった、ストックマガジンだ。

 

 シルバーボウガンの中に内蔵されていた、ハイロングのマガジンと、2丁拳銃を勢いよく振り抜いて、変わりにシルバーボウガンは石床に突き建てられている。

 

 十字架を模したその形状は、天使の扱う審判の十字架であり、まさしく法と秩序の下に命を預けたミドリコが操る武器そのモノの姿をしていた。

 

 きつく縛ったポニーテールが海から運ばれた潮風に煽られて、ゆっくりと揺れる。

 

 武者の怪人の前方が開いたスカートタイプの鎧も、潮風に煽られてゆらりと大きく揺れる。

 

 両者敵の動きを今かいまかと待ち構える。

 

 良く耳を済まして、風の音、もっと遠くの海の音が聴こえてくる。

 

 もっと集中して敵を見続ける。ジリジリと夏の熱気が2人の身体を包み込んでいく。

 

 ここでこれから行われるのは所謂死合。

 

 風が止む音か、それとも波が少し荒くなった時か、はたまたどこかの戦闘音が静まった時か。

 

 「・・・」

 

 武者の怪人は静かに刀を抜いたままの姿勢で、手は腰の下に垂らしている、その手に握られるのは、爆発線を斬り取った長刀だ。

 

 「・・・」

 

 ミドリコが構えるのは異様な長さのストックを装備したサブマシンガン二丁。腕を上げたまま、武者の怪人に銃口が向けられたままだ。

 

 2人はそのまま待ち続ける。攻撃の瞬間となるタイミングを。

 

 「・・・!」

 「・・・!」

 

 風が止んだ。

 

 「うおおおおお!!!!」

 

 叫んだのは武者の怪人だった。

 

 風が止んだ瞬間に、ミドリコは引き金を引いた。

 

 無数の弾丸が炎と共に銃口から吹き出しては、武者の怪人に向けられて、断絶する事無く弾が連続で発射されていく。

 

 ハイロングマガジンに込められた弾丸の総数は、1000発。

 

 それを二つ合わせて2000発。

 

 2千モノ弾丸を武者の怪人に飛んでいくが、武者の怪人は長刀を二本手元で振り回して、プロペラの如く回転させながら全ての弾丸を斬り飛ばしていく。決して自分には当てないようにした、確実な防御。

 

 「当たれ・・・!当たれぇぇぇーーーっ!!」

 

 ミドリコがこの怪人を倒す為に、必死に言葉を吐き出した。

 

 今ここでこの怪人を倒さねば、と。必死の想いで銃を撃ち続ける。

 

 弾丸が一発も当たらないまま、刀は武者の怪人に迫って行くだけ。

 

 刀と武者の怪人の間に、弾丸が来た時に、刃が綺麗に薬莢を切り裂く。そして落ちて削られた弾丸は、武者の怪人の足元に転がる。

 

 ミドリコの左右には、弾丸の筒が何個も飛び出して行き、コロコロとした金属の音が、銃撃音に混ざって聴こえてくる。

 

 残りは何発だ?

 

 700か、500か、200か、それとももう撃ちきりに近いか。

 

 いずれにせよ撃ち切ったら、次の攻撃は武者の怪人の番になる。

 

 火を吹く銃口の火炎が弱々しくなっていく。もう弾切れが近い合図だ。

 

 耳を痛くさせる程の連射音が弱まっていき、その音は急に止まる事になる。

 

 カチン。その音が聴こえると、それは弾が完全に無くなった事を示す音になった。先程のバラララとした音と弾では無く、銃口は煙を吐き出す。静寂にはさっきまでの銃の音が遅れて聴こえる様な感覚と、眼の前で武者の怪人が振り回していた刀が空を斬る音だけ。

 

 武者の怪人も銃撃が止んだ事を確認すると、手元の回転を緩めて行きながらミドリコの悔しそうな顔をまざまざと見る。

 

 「残念だったな。全て斬らせて貰った──」

 

 刀には傷や歯毀れが一切無く、ソレを構える武者の怪人の表情は誇らしげだった。

 

 「自慢の種はもう終わりか?では──」

 

 武者の怪人が二本構えた刀をジャグリングの様に回して、ミドリコに接近を開始する。ミドリコから見える気配には、両腕、左右からの確実な殺意。

 

 「──死ね」

 

 腕の届く距離では無い所で、武者の怪人が二本の刀を挟む様にして振り出すと、ミドリコへめがけた見えない斬撃が飛んでくるのを気配では観えた。

 

 だが、気配で解っていても・・・反応は遅れた。

 

 (死・・・ぬ)

 

 もう何秒と数える事無く、ミドリコの身体は胴体が真っ二つになる残酷な未来が想像出来た。

 

 これではもう・・・。

 

 眼を閉じて、身体を強張らせて、耐えようの無い攻撃を耐えて見せる。

 

 斬撃はもう迫っている。惜しいのはシルバーボウガンを背後に置いた事だろうか。

 

 たらればの話を今さら思いついても、今のミドリコには死を回避する選択肢が無かった。所詮彼女は、甘白ミドリコは特殊能力を持たない、ただの人間。

 

 人間では怪人には勝てないのだ。

 

 「・・・」

 

 瞳を閉じたミドリコは暗闇の中で、自分の選択肢を後悔していたのかも知れない。

 

 もう身体は斬られたから、もう終わっているのかも知れない。

 

 (済まない・・・カエデ、レン・・・ギンジ)

 

 眼を閉じたまま、甘白ミドリコは自分の死を悲観した。

 

 (済まない、赤鬼・・・っ)

 

 受け入れるしかないこの死に、後悔をしながら。

 

 「・・・なんだ貴様は」

 

 ミドリコが静寂の中で、自分の身体がまだ無事である事を、遅れながら感じ取る。

 

 強張って固まったその身体をゆっくりと動かし、まだ自分は死んでいない事に安堵する。それと同時に、ミドリコの視界に見えたモノは、黒い甚兵衛を着た、大男の後ろ姿である事を、今この瞬間で理解する。

 

 「俺っちが誰かって・・・?」

 

 武者の怪人の目の前に、ミドリコを守る様にして現れたこの漢は、ミドリコに変わって斬撃を受け止めてくれたらしい。

 

 ミドリコはその姿に、嬉しさと期待、ヒーローの様な素晴らしさを見る。

 

 「俺っちは・・・」

 

 赤い肌。

 

 雄々しい一本の角。

 

 黒い甚兵衛。

 

 そして右手に握られたのは、魔法の世界の素材をふんだんに使った八角の棒。

 

 オリハル金砕棒。

 

 「俺っちは、ヘヴンホワイティネス・甘白ミドリコの大黒柱ァ!」

 

 左足を思い切り石床に叩きつけて、右腕を豪快に振り回す。

 

 啖呵を切ったその姿、その漢は・・・。

 

 「ヘヴンホワイティネスの赤鬼たぁ、俺っちの事よ・・・!」

 

 ここに来て、ミドリコを助ける為に、この戦いに勝つ為に赤鬼が追いついたのだ。

 

 「旧怪人四天王の赤鬼・・・裏切り者だったか?」

 「新怪人四天王の武者・・・覚悟しとけよ」

 

 赤鬼は斬撃を喰らっても平気な素振りで、ミドリコに振り返る。

 

 驚愕の一言で飲まれたミドリコは、赤鬼と眼が合うと心から嬉しい気持ちで一杯になる。

 

 「あ、あかおに・・・」

 

 泣きそうな声でミドリコが赤鬼の硬い胸にしがみつこうと迫るが、赤鬼は人差し指でミドリコの唇をおさえる。

 

 「今ァ、触ったら止まらなくなっちまわぁ。姐さん、この戦い・・・俺っちも手を貸していいか?」

 「・・・勿論だ」

 

 ミドリコがシルバーボウガンを背負い直す。赤鬼とミドリコ、2人が並び武者の怪人と対峙する。

 

 「・・・よかろう」

 

 武者の怪人も刀を構えると、次々と刀を引き抜いていく。

 

 人差し指と中指に、中指と薬指に、薬指と小指にそれぞれ大中小の刀を装備して、武者の怪人が本気の威圧を見せる。

 

 まるで強い風でも吹いたかの様な、強い殺意の威圧。

 

 両手両指に備えた刀が右手の刀に収束して行き、6本全ての刀が揺らした刀身の後を追いかける様な、刀に変わった。

 

 残像光の様に、一際鈍い色を宿した刀が、武者の怪人の手元で揺れるとまた5枚の刀身が大きく揺れながら、動きに反応して一つの刀身に戻ってくる。

 

 「これが我が奥義・第三ノ力(ふええずすりぃ)

 

 武者の怪人がミドリコと赤鬼をその視界から離さずに、刀を上段に構えた。

 

 「六限(むげん)の刀・・・いざ、尋常に──」

 

 ミドリコと赤鬼も武者の怪人から逃げないで戦う覚悟だ。

 

 一人だったさっきまでは勝てる気がしなかったが、今は・・・。

 

 「姐さん、必ず守りやす!気にせずに、銃でもなんでもぶっ放してくれやぁ!」

 

 今は・・・。

 

 「ああ、任せてくれ!」

 

 ミドリコがシルバーボウガンからアローランチャーを射出し、赤鬼もそれに援護を行う。

 

 武者の怪人の刀の攻撃とも同時に繰り出され、3人の力が噴水を繋ぐ石床に激突していった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

現在の戦況

 

赤鬼、ホテルについたらミドリコがピンチで助けに来た。

 

ミドリコ、赤鬼vs武者の怪人(フェーズ3)

 

カエデvs鋼の怪人

 

レンvs蜘蛛の怪人(フェーズ3)

 

ギンジ、まだミヤコを探している。

 

オーク怪人、梟の出汁汁を飲んでいる。

 

ケイタ、ヒトシ、柏木タツヤを追っている。

 

正義連合、一般市民の避難誘導を開始。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ホテルのVIPフロア。

 

 そこでは下の喧騒は全く聴こえず、嘘の様に静かな空間と豪華な装飾が施された、破壊の跡が一切残らない清潔な空間。 

 

 そこにある小さな通路の、小さな穴が天井に取り付けられていた。穴にはハッチが取り付けられて、その穴の奥はとにかく暗い。

 

 ゴソゴソと音を立てて、その穴の奥から人の呼吸の様な音が聞こえる。

 

 「くふふふ・・・くふふふふ・・・」

 

 そう・・・中に居るのはこの笑い方で、誰でも解る。

 

 ドクターミヤコ、鈴村ミヤコ、二代目強欲の怪人、ギンジ君の嫁。

 

 様々な異名があるが、今の彼女はとてもありえない姿をしていた。

 

 美しい純白のウェデイングドレス。

 

 ケープのついたドレスは、ミヤコが着るにはまだ早く、幼さも相まってある種の興奮要素が見え隠れする。

 

 しかしながらこの少女の行動力には、経緯を評したいと神宮ソウジロウは思う。

 

 彼女の行動原理はたった一つ。

 

 「早くギンジ君に会いたいな〜くふふ」

 

 うっとりした恋する少女は、通気口の小さな道をウェデイングドレスのまま這いずっている。

 

 「まだ脱出出来なさそうだが、大丈夫なのかね」

 「あらオジサマ。大丈夫だよ。根拠なんてモノは無いけど」

 

 ミヤコの後ろを這いずっているソウジロウは、蒸し暑いこの通気口で未だゴールの見えない脱出道を探していた。そろそろここから出て、水を飲みたい気分だ。

 

 だがそれはミヤコも同じ事だろう。

 

 2人の脱出劇に、明るい光が差し込むのはもう少し先のお話・・・。

 

 

 

続く

 

 

 




お疲れ様です!

後書き・・・書くことないぞ・・・どうしようか。

キャラネタ書きます

梟の怪人
鳥臭っせえですわ!最後は出汁にされた。オーク怪人が友と認めた少ない強敵。

オーク怪人
振動する拳って白ひ○みたいやな

蜘蛛の怪人
フェーズ3の能力は変異体ヘル・タランチュラ
トモカの丸裸を堪能していた過去が発覚。レンを怒らせた。

武者の怪人
フェーズ3の能力は六限の刀。刀身を揺らすと残像の様に刀が追いかけていき、6連斬りを可能とする。

鋼の怪人
彼が語るヘルブラッククロスの魅力については次回。
カエデと決着を着ける時も次回。

神宮カエデ
プライドを強く持って鋼の怪人の撃破に挑む。

宮寺レン
トモカの風呂場を覗いた事に憤りがマックス。蜘蛛の怪人と、変態は滅ぶべし。

甘白ミドリコ
武者の怪人に殺されかけたが、赤鬼の加入によって勇気を貰った。
これもうガチ恋してるでしょ?認めろ

赤鬼
ミドリコに変わって斬撃を受け止めた。別に痛くねぇ。

・・・

さて次回は・・・
ヘヴンホワイティネスvs新怪人四天王決着・・・!

まだギンジとミヤコは会えず・・・

でも頑張ってまいります!またプロット変更だよとほほーーー!
でも皆様が楽しめる様に頑張りますので、お待ち頂ければと思います!

それでは、また次回!アトラクションでした!
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