今回、柏木タツヤ戦を書きたかったのですが、どうしても良い感じにまとめられず、インスピレーションも働かず・・・。申し訳ないのですが、うまく筆が進んでおりません。
なので変わりに、休憩感覚で番外編をはさみます。本編を楽しみにしてくださっている方は本当にごめんなさい!なるべく良い様に持っていきますので!
それでは番外編!どうぞ!
その日は・・・とてもとても寒い夏の日だった。
いつも僕の為にアルバイトをして帰りの遅い姉を待つ夜、夏休みも終わりに近づいた、2学期を楽しみにする自分と、一週間早く終わる夏休みに憂鬱な気分になる自分。
2つの気分の中で揺れ動く、僕の奇跡の様な出会いの日だった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「姉さん、遅いな・・・」
僕の住む家のマンションの一室。
なんてことないフローリングは、夏ということもあり冷房をつけた部屋の中で、時計に目を動かす。時刻は19時頃を回る頃合い。
「今年の夏休みも楽しかったな」
帰りの遅い姉さんの事を心配に思いつつも、時計の横にあるカレンダーを見て、今年の夏休みについて思い出を振り返れば、ほとんど姉さんと遊びにでかけていた事した無いのだが、それがとても面白い毎日だったと痛感する。
「・・・」
エアコンから送風される冷めたい音が、静かな部屋にかすかに聞こえる。
「っくし」
くしゃみが出た。
「・・・?」
今のくしゃみには何か違和感を覚えるモノで、僕は少しだけ身体が震えたのを感じた。いや、これは確実に身体が冷えて震えている。
冷房を強くしすぎただろうか?
食卓に置かれたエアコンのリモコンに目線を動かせば、設定されている温度は26℃で、そこまで低いとも言えないぐらいだろう。
電気代がもったいないが、姉さんは今は家に居ない。帰ってくる10分前には温度を28℃にしておけば、姉さんにバレて怒られる事は無いだろう。
僕達、真鍋姉弟は、いわゆる孤児に近い関係だ。
姉さん・・・真鍋ハルネは、僕、こと真鍋アオハル(天才)の姉であり、僕を超える天才。
母さんも父さんも事故で死んでしまった時に、僕たち姉弟は手と力を合わせて、生きていこうと決めていた。
僕は勉強を一生懸命頑張って、姉さんは仕事を頑張って。
高校三年生ともなれば、アルバイトをするのも普通と、姉さんは生活を支えるために毎日頑張っている。僕の為に貯金もコツコツしてくれて、本当は自分の趣味だったり、お友達と遊びに行きたいとか、色々あるだろうに。
それでも僕の為に色々頑張ってくれている姉さんには、本当に頭が上がらないよ。
で、僕はと言うと・・・。
勉強を頑張りつつも、スポーツに趣味に、色々と自由にさせて貰っている。本当は僕だって働きたいけど・・・。
「・・・姉さん、大丈夫かな」
色々と考え込んでいたら、時間は30分を過ぎていた。けれども姉さんから連絡は来ていない。
おかしい。いつもなら姉さんは必ず電話をくれる筈。筈、と言うかそうしている人だ。こんなに遅くなるならもっと早く、それも確実に電話かメッセージを送ってくれるのが、僕の姉だ。
「んぅ??」
今一度スマホを確認してみているのだけれど、姉さんから連絡は来ていない。それどころか、スマホの画面の右上・・・電池のマークと並んで表示される電波の部分が、圏外になっている事に気がついた僕は、喉からうなる様な疑問の声を出していた。
「圏外、どうして?」
唯一の家族との連絡が取れなくなった事で、僕は不安な声でスマホを握る。指先から腕全体が震わしながら、ソファに腰かける。
「・・・寒いな」
ソファの近くに置いてある小さな食卓に手を伸ばして、エアコンを停止させる。
ピピー。小さな機械の音を鳴らしてエアコンが止まる事を確認して、僕は次にテレビを点ける。当たり前だが、エアコンを止めるだけではこの寒さは無くならない。
「な・・・」
ちょうどテレビは外の気温やその状況についてキャスターが説明している最中だった。
僕はその状況・・・この度固化市が、トンデモない事になっている事に気が付き、眼に入った映像に絶句した。
それはあまりにも突拍子も無い事で、そして季節的に日本では絶対にありえない様な空間が液晶テレビの向こう側に写っていたからだ。
『と、突如中央度固化市を襲った大雪ですが、まだ止まる気配がありません!』
ニュースキャスターは半分泣きそうな顔で、鼻先を赤くしながら傘をさして必死に状況を伝えていた。平日の夜だと言うのに、どこのチャンネルもこの街を襲っている異常気象の話題でもちきりであった。
『い、今すぐ・・・に、暖かくして、い、家から出ないでくだ』
映像越しでも解る。
「これは・・・何が起きているんだ」
ニュースキャスターが、映像で写っている身体の下。見切れている映らない所から、どんどん薄く透明な膜の様なモノが、身体に張りつていく様に見えた。
カメラマンも身体が動かないのか、ついさっきまでブレていたカメラが、斜めに傾いたまま、映像にもなにか硬い膜が張り付いて行き、映像が一気に切り替わる。
ひまわり畑の静止画と共に、【しばらくお待ちください】との文字が入力された、放送事故等があった時に使われる、たまに見る事の出来るアレに、僕は少しだけテンションが上がる。こんな異常気象だと言うのに不謹慎なのは解っているが、それでもこんな放送事故は滅多に見れるモノじゃない。
「はは・・・」
その後はニュースのスタジオの映像に切り替わり、アナウンサーがどうたらこうたら言い合っている。避難警報よりも、普段の冬より厳重な防寒対策を取れと発令しているけど、衣替えはとっくに終わらせている。
今からそんな対策なんて無理だろう。
「大雪・・・それも。この中央度固化に固まって・・・」
こんな急な大雪に対応できるご家庭はどれだけ居るのだろうか。
どちらにせよ、僕はこの真夏の大雪にテンションが上がりつつ、大変寒い思いをしながら姉さんの帰りを待つ事にするのであった。
「あーーー寒い!助けて!ヘヴンホワイティネス!」
これが怪人だとか悪の組織の攻撃だとか、そんな決めつけにも等しい考え方で、僕は憧れの正義のヒーロー・ヘヴンホワイティネスが、都合よく助けてくれると思って、その名を叫んだ。
でも来ない。現実は無情である。
そうして僕は、この寒さとの戦いを始める事にした。
・・・・・・・・・・・・・・
真鍋
年齢・16、性別・男性
度固化野命神高等学校2年生。
得意科目・社会、数学、経済、理科。
好みの女性・姉(性格的な意味合いであり、異性としては見てない)
何がとは言わないが、長く、太く、硬く、長持ち。かつ、自分の意思で何度でも動かせる。何がとは言わないが、何がとは言えないが。
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あれから猛吹雪が止んで、寒さはそのままだけど、お風呂のお湯さえ凍てつかせる夏に来た猛冬に、僕はなんとか死なずに耐える事が出来た。台所やお風呂はついにつららを作り出す程に、北極基地みたいな有様だけど、僕は勝利した。
摩擦と、厚着と、ガスのストーブを利用した最強の暖房を利用した僕は、猛吹雪に打ち勝つ事が出来た。いや、出来たというか・・・都市ガスだからほぼ無制限に使用してただけなのだけれどね。
ふぅ、と一息ついて、結露で一杯になった窓をタオルで拭き取ってみる。ジッとしていれば寒いけど、動いてみれば意外となんとかなるモノだ。
最初は寒すぎて凍死するかとも思っていたけど、結構僕はこういう環境に適応出来る体質?なのかも知れない。
窓を拭き取れば、向こうに見えるのは夏という季節においては、絶対にありえないし、ありえてはいけない光景が、僕の視界一杯に広がっていた。
「わぁ・・・」
夜空と無数の明かりと月の光。
それらが照らして、視界に見せてくれるモノは、雪。
白く、どこまでも続いていそうな銀の世界が、向かいのマンションや住宅、遠くに見える繁華街のクアッドタワーにまで広がっていた。
『猛吹雪は止みましたが・・・私達の氷は溶けません!』
先程季節外れの猛吹雪の中で、必死になって状況を伝えていたキャスターが、口元だけは溶け始めたのか、カメラ越しに自分たちの無事を伝えている。
モノすごい生命力である事。僕にもそういう、普通の人じゃない何かをほしいな。例えば憧れのヘヴンホワイティネスみたいな・・・。
いや、無理か。そもそもあんなのは、あくまで自分の憧れで良い。僕がなりたいと望んでもなれないし、仮になれたとしても・・・あんな痛々しく戦う彼女達の様に勇ましく、強くあろうとして巨悪に立ち向かう事が僕には出来ない。
「ひょっとしたら大雪も、例の悪の組織が原因なのかな。ははは」
ちょっと冗談めかして自分で自分のありえないジョークに、妙な現実味もあってか、僕は一人で凍てつく部屋の中で笑う。
『アオハル〜お姉ちゃんよ〜電話に出て〜』
寒さに敗けない様にした僕の厚着の中から、スマホの着信音が鳴る。
これは姉さんが僕の為に録音してリズミカルに作ってくれた着信音。
声“は”可愛いよね。声“は”ね。
「はい、姉さん。大丈夫?」
スマホを取り出してすぐに姉さんの着信に出る。そう言えば圏外が直っていた事に、僕は安心しながらも姉さんの声を聴いてみたい気持ちで一杯になった。
『もしもし!?ワタシよ!あんた大丈夫?寒くない?怪我してない?寂しくない?ご飯食べた?』
ああ、この何かした?ラッシュを聴いて安心したよ。これは間違いなく姉さんだ。機械越しに聞こえるのは、厳密に言うと同じ声では無いらしいのだけど、これは間違いなく姉さんの口調、姉さんのイントネーション、姉さんの声。
「ありがとう姉さん。こっちは特に問題ないよ」
『そう?ほんと?気にしないで何でも言いなさいよ?』
「心配性だなぁ。それより姉さんはまだ帰れないの?」
時間は23時近い。いくら高校生でも、この時間で外を出歩いていたら、いささか問題ごともあるかも知れない。
『そ、そそ、そうなのよ。まだ帰れなくて・・・それで、ごめんだけど、迎えに来てくれるかしら。あ、今はバイト先の上司の方と一緒に居てね』
「ああ、前に話してた濃紫さんだっけ?良くしてくれてる人だよね」
実際に僕は会ったことは無いけど、姉さんはこの濃紫という人に色々学ばせてもらえているらしい。実業家で、繁華街近くのタワーマンションで暮らしていて、自分のお店も持っている素晴らしい経営者なのだとか。良く姉さんだけご飯を食べべさせて貰えているらしいし、ひょっとしたら姉さんにも恋する時期が来たりして・・・なんてね。
『この大雪じゃあ車も出せなくて・・・繁華街エリアまで送ってくれるって言うから・・・アオハルも来てくれる?』
「解った。いいよ、冬用のブーツも必要だよね?」
『え!?ああ、ああ、そうね。ありがとう。気が利く所、お姉ちゃんは高く評価しているわよ』
「あはは。ありがとう。うん、うん・・・解った、すぐに迎えに行くよ」
今思ったけど、僕が迎えに行っても結局歩き辛い所を二人して転びそうになるんじゃ・・・って思ったけど、姉さんはあれでも女の子だし、僕も姉さんを守れる様にしないと駄目、だね。
「それじゃ、また後でね」
濃紫さんにもお会いしてみたいし、この大雪の道を歩くのもだんだん楽しみになって来たし、僕は姉さんを迎えに行くと言う建前で、雪道を歩いてみたいという本音を隠して、家を出ていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
濃紫さん
本名・
年齢・?
性別・男性(ハルネ談)
度固化市全域で事業をしている実業家で、様々な分野のお店を幅広く統括している。
D・Pホールディングス会長。
アオハルの姉のハルネと仲が良いらしく、アオハル曰く「濃紫さんのお話はほぼ毎日聴きますね。話している時だけ、こう、姉さんが女性の顔になっていると言うか・・・」らしい。
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怪人四天王。それは私達に与えられた、四人の怪人の総称。
鏡の怪人、骨の怪人、赤鬼の怪人、そして私、こと雪の怪人。
赤鬼の怪人は、組織を裏切り(退職?)して敵であるヘヴンホワイティネスに寝返った後に、自爆により死亡を確認?している。
骨の怪人はなにやらブツクサ魔法の力が、とか言っている。
鏡の怪人も政府に直結する公安なる組織の拠点を叩きに出撃している。
そして私は、ヘヴンホワイティネスをおびき寄せる為に、この度固化市という街に自分も能力を発動している。
怪人としては規模がでかく、そして未だかつて誰にも真似出来ていない最大最強最上級の能力。
大雪。天候操作。氷の召喚。氷結。
それが私、雪の怪人の能力であり、すべてを凍土に変える事が出来る、私だけの能力。
私に与えられた任務は街の襲撃と同時に、ヘヴンホワイティネスの撃破。
私を造った親同然の存在、総統はその指示を私に与えた。
ヘルブラッククロスは力による闘争と、力による支配を世界の正しき姿形として、私達怪人にそう命じている。
力、暴力、性欲、金、欲望。
すべて、私達怪人にそうあれかしと願って与えられた使命と、存在価値。
生き残れなければ、怪人として生きる意味が無く、生き残る為に、私は自分の能力をずっと使い続けてきた。
でもね・・・。
「ミヤコ様〜〜!」
怪人に心なんて無いと思っていた。
そんな私に心とは何かを教えてくれた、もしかしたら総統よりも大きな恩をくれたかもしれない、私にとって何よりも大切にしたい人。
ドクターミヤコ。・・・様。
私がこの街の襲撃を成功させて、ミヤコ様にお会いして、そして自分が本当にしたい事を改めて考える事が出来た。
ミヤコ様をこの命に変えてもお護りする事・・・。
それが私、雪の怪人が一番したい事。
普段は・・・あの進化の怪人に身の回りの事は任せるとして、私はもう一度ミヤコ様に会った時に、不甲斐ない自分を見せる事が無い様に、今一度怪人としての自分を見つめ直す道を模索して行こう。
どちらにせよ・・・ヘルブラッククロスから逃げると決めた以上、私を裏切り者として刺客も来るだろうし、困ったモノね。
ミヤコ様とのいっときのお別れは寂しいし、泣きそうになっちゃうけど、今は・・・いいわ。
「顔見たら、また泣いちゃいそう」
感情が昂ぶれば昂ぶる程、この身体は冷えて、能力が強まっていく。今は・・・もうミヤコ様の暮らしに迷惑をかけない様にする為に、私は泣かない様に必死に繁華街エリアを出ていく。
一先ず向かう先は・・・。
「ああ、東に裏切り者や、他組織の残党が集まる集落があるとか・・・気になるわ。行ってみようかしら」
黒い雪の結晶の白装束をまとって、私は自分で作り出したこのホワイトロードを抜けようと、繁華街エリアから東へと突き進む事にした。
ここから先で、まさか・・・あんな出会いがあるなんて・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
雪の怪人
性別・女性
年齢・多分3歳
総統に造られた怪人の一人で、産まれた時から怪人四天王として活動していた。ヘルブラッククロス徹底的な暴力のやり方には、疑問を抱いていたが、ヘヴンホワイティネスの出会いや、ミヤコとの再開で心を手に入れた。赤鬼と同じく組織脱退者。理由は一身上の都合の為。
能力・氷結、雪、天候操作等。
範囲は非常に大きく、ギンジであっても流石に天候操作は出来ない為、条件を整えればギンジをも完封は可能。
感情が昂ぶると子供の様に泣き叫ぶ。
B・79ーW・66ーH・90
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヘルブラッククロスの怪人は多かれ少なかれ、性の衝動が大きい存在が多い。それは男性怪人にだけ多い様な印象だが、そんな事は無い。
女性の怪人も同じぐらい、大きな性の衝動を欲望として持っている。
サキュバスの怪人や、剣士の怪人、鏡の怪人だってそうだった。
勿論、雪の怪人も。
雪の怪人の身体は非常に冷たく、逢瀬を迫られた男性、特に一般市民は、彼女に裸にされるだけで凍結してアウト、この世の終わりを即日迎えさせる事で、熱を感じられない怪人となっていた。
手を繋ぐ気持ちよさも、甘くしびれて無くなってしまいそうな感覚も、弾け飛ぶ様な身体の重ね合わせも、雪の怪人は何一つとして経験が無かった。
難儀な身体だと総統は言った。
素晴らしい能力値だと、ミヤコは言ってくれた。
どちらに信用が及ぶか・・・雪の怪人はその時からミヤコの事を信じていたのかも知れない。
東に向かう道すがら、自分が作り出した天候の影響によって発生してしまった、氷の壁に手を当てて、両手で飲み込む様にして氷壁が吸い込まれていく。
「・・・」
袖から出てきた自分の白い肌を見て、ミヤコの顔を思い出す。
ミヤコが造り出したと言う、あの最高傑作。名を進化の怪人。
同じ人間の様な見た目をしていて、それでいてミヤコが一緒に居るだけで幸せそうな顔をしていた。
ミヤコ自身がそう言った様に、きっと自分の恩人はあの怪人、進化の怪人に惚れている。
それが現実的な事だから、羨ましい話だ。自分は・・・。
(まだ、この手で好きな人さえ触れないのに・・・)
落ち込みながら腕を氷壁から引き抜いて、カーペットを巻くようにして氷が柔らかくなりながら、雪の怪人の両腕に吸収されて行った。これで道は開けた。
住宅街の道を真っ直ぐ進んで、雪の怪人は人影を視認できた。
もしかしたら・・・この状況を監視している戦闘員の可能性もある。まだ脱退を知られていないから、変に事を大きくされる心配は無いだろうが、作戦の場所からかなり離れているので、そこを突っ込まれたら面倒だ。
見た限り一人の様子。
ならば凍結させて、雪に埋めてしまえば・・・。
「あの・・・大丈夫ですか?」
その人影は、ただの人間。この真夏の猛吹雪に対抗したのか、結構な厚着をしている。
「あの・・・寒くありませんか?」
ただの人間、それも少年が雪の怪人の顔を覗く。
「・・・何か用かしら」
泣いて腫れた怪人の瞳を見ているのに、この少年はさほど驚いていないどころか、自分を心配している。それは雪の怪人の姿、格好が白い着物一枚だけだからだろう。
「用も何も・・・その、失礼ですが、寒くないですか?あ、いや・・・聴くまでも無いですね」
言うと少年は巻いていたマフラーとニット帽を、雪の怪人にそれぞれ付けてあげる事にした。
「・・・?」
「あ、ごめんなさい・・・急に触ったりしたら、セクハラですよね。あは、あはは・・・」
雪の怪人はこの時、自分に触れた少年に違和感を覚えた。
手袋越しでも普通の人間が雪の怪人に触れば、その触れた場所から瞬時に凍結させてしまう。
なのに・・・何故だろうか。
この少年は、今雪の怪人に触れていても、特に何も無い様子で、それどころかマフラーとニット帽までつけてくれた。
「・・・!」
黒い瞳を見開いて、雪の怪人が少年の手を握る。両手で掴んだ少年の手は、本来雪の怪人が苦手とする熱をほんのり感じられる。
だけどこの熱は・・・特別嫌な熱だと感じない。雪の怪人が生きていて初めて、鼓動が早まるのを感じた。
なんとも言えない不思議な感覚。
短めの髪で人間で言えば普通の顔。鼻筋がくっきりしている少年の顔に、雪の怪人は何故か解らないけど、眼が離せなくなっていた。
「ありが、とう・・・」
自分はまったく寒く無いし、まったく気にならないのだが、この少年がくれた行為を無為にするのもなんとなく悪い気がして、ただなんとなくお礼を言った。
「ああ、気にしないでください。その、とてもお綺麗でしたし、この寒さの中でそんな薄着なのも、何か理由がある事だとは思いますが」
少年が少し気恥しそうに言葉を紡いでくれた。
「あ、申し遅れました。僕、真鍋アオハルって言います」
「・・・そう、人間にはそういう名前があるモノね」
これが、この大雪の攻撃の後に出会った二人の物語。
真鍋アオハルと雪の怪人。
何故かアオハルはこの人(?)に触れても何も無く、雪の怪人も自分に触れる事が出来る人間の男性と出会った事で、大きく心境が変わっていく。
この人ならば・・・きっと、もしかしたら、多分、おそらく。
自分の心をもっと大きく、そして大事なモノのひとつに出来るのでは無いだろうか。
「あの・・・もし良ければ、お名前を聴いても?」
「ええ・・・私は・・・雪の怪人」
「ええ!?怪人!?」
恐らく人間の反応はこれが正解だろう。怪人という悪の組織が造った超常的な生物。それが目の前に居れば、どんな人でも恐れるし、きっと迫害される可能性の方が高い。
だけど・・・この人間、アオハルは違った。
アオハルは最初こそ驚きはしたモノの、雪の怪人の冷たくて小さな手を掴んで見せた。
手袋越しなのに、やはりアオハルは凍結しない。
「こんなに綺麗なのに、貴女怪人なのですか!」
「・・・!?」
またも自分の事を綺麗だとか言う。そんな事言われた事も無ければ、自覚した事も無い。
ただ怪人のモットーとして、男性は醜悪に寄って、女性は美女に寄らせて造られているだけ。その方が心を堕としやすいのだとか。
アオハルが雪の怪人の両手を優しく包むように握ると、雪の怪人もなんでかそれが嬉しくなって、アオハルの手を握り返す。
冷たい、小さな手。
暖かく、大きな手。
これがドクターミヤコの言う、一目惚れに近い事なのだろうか。
だとしたら、自然と楽しみになれるこの気持ちや、アオハルと言う少年の行為を、決して無駄にはしないと思えてくる。
「あ、しまった・・・。姉さんを迎えに行かないとなんだ。あ、これ僕の連絡先!」
アオハルが当初の目的を思い出して、自分のスマホにあるQRコードを見せる。雪の怪人がスマホを持っているわけではないが、それを理解した雪の怪人は、アオハルの手を少し強く握ってみる。
「また・・・お会い出来るかしら?」
「え、勿論ですよ。僕も、また貴女とお会いしたいです!」
その言葉を聴いて、雪の怪人は胸が締め付けられる気分になって行く。初めて会ったのに、この少年から離れずに、もう少し一緒にお話してみたいと思えてしまう。
「それじゃあ、これ」
アオハルが次に手渡したのは、一枚のメモ。そこには自分のチャットアプリのIDと電話番号の書かれた一枚の紙。
「ご連絡、待ってますね」
元気に腕を振りながら、アオハルは雪の怪人の横を通り抜けていく。
「絶対!待ってますから!」
「あ、はい・・・」
雪道をおっかなびっくり歩いていくアオハルの後ろ姿を見ながら、雪の怪人は目を離せないでいる。彼の後ろ姿が見えなくなるまで、雪の怪人はアオハルの事だけを見つめていた。
これが護りたいと思える感情の一つならば、雪の怪人はきっと・・・初めて恋というモノを無自覚ながら、心にもう一つの新しい気持ちを得た。
「マナベ・・・アオハル・・・覚えておくわ」
ミヤコとはまた違う、大きな心の拠り所。そうなる未来がもう少しで、二人に訪れるのであった。
(な、なんだか悪い気がしなかったわ。それに・・・胸が、熱い?)
なんとも不思議な感覚。熱なんて、この身体には無いと思っていたのに。
(アオハル、君・・・覚えておくわ)
珍しく初対面の人を相手にしても、大泣きする事も無かった雪の怪人は、もう一度彼に出会える事を心より楽しみにして、東へと向かうのであった。
夏の雪道を、しずしずと、雪の怪人が通る。
アオハルも同様に真夏の寒さを、心に溢れた暖かい気持ちだけで歩いていく。
二人の運命の出会いは、二人の心に大きく強く刻まれた。
続く
お疲れ様です。
サブキャラのアオハル君と雪の怪人の出番でした。
実は雪の怪人も序盤に出してから、ギンジと絡ませようとしていたのですが、出番はこんな感じになりました。これで良かったかも。
3つの戦線というお話を書いている間に、途中で雪の怪人は他の誰かとくっつけなさい、と神からのお告げが聴こえたので、こうしました。
雪の怪人はお尻が弱点です。叩くと泣きますし、触られたら凍結します。
Qアオハルは何故雪の怪人に触れても平気なの?
A怪人の能力に自然適応したタイプだからです。ケイタも同じ
Q雪の怪人は死ぬの?
Aまだ決めてません
Q途中からケイタとアオハル、キャラ被ってなかった?
Aミドリコとレイナもキャラ被ってる。笑って見過ごしてください。
Qアオハルは青春するの?
Aします。めっちゃ雪の怪人と青春する予定です。
Q雪の怪人って能力強すぎない?
A強いです。環境を変える能力は彼女だけなので、いま現状彼女を超える怪人はギンジとオーク怪人だけになっています。単純な力量だけならば、龍の怪人も上です。
Q雪の怪人って経験人数は?
A0に決まってる。あ、この後一人になる。
Q好きなパスタは?
A全部
・・・
さて次回は今度こそ柏木タツヤ戦!頑張って書きます!それでは、また次回!