正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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皆様こんにちは、アトラクションです

今回執筆や投稿が大幅に遅れて申し訳ございません。

仕事が忙しいしか理由が無く、家に帰ってもゲームやる時間も執筆する時間も無い程に疲弊する毎日を過ごしておりました。

ただ、もう少しで夏休み期間に入るので、まぁまぁ執筆のペースも取り戻せると思います。

それでは、どうぞ!


91・監獄襲撃・1

 どこにも窓はなく、どこにも光が差し込む事もなく、ただただ暗くて狭くて、空気の籠もったコンクリートと鉄で区切られた部屋で、柏木タツヤは拘束されていた。

 

 椅子に座らされ、麻のローブで纏められた拘束具。

 

 腕は一ミリも動かせず、交差させながら両肩につけられてガチガチに固定されている。

 

 膝も曲げられず伸ばしきっては、付け根、腿、膝、脛、足首と、拘束のリングをかけられて一歩も動き出す事が出来ない有様。

 

 更には自殺防止の為か、口をあけさせる猿轡を取り付けられている。

 

 ヘルブラッククロスの大幹部でもあり、公安警察の席にも座っていたこの男には、最早まともに更生させる事は不可能だ。ならば法が取った柏木タツヤの処遇は・・・処刑。

 

 (悪くない人生でしたかね)

 

 今更組織の誰かが自分を救出しに来る事なんてきっと無いだろう。

 

 大幹部でありながら、新怪人四天王を全滅させ、作戦も失敗。

 

 それどころか、組織の怨敵であるヘヴンホワイティネスとの戦いに、タツヤは敗れた。敗れて、ギンジ達から奪った何もかもを奪い返された。

 

 佐久間ギンジという存在の力の大きさは、タツヤが知る限り最高のモノで、ヘルブラッククロスの今後の未来においては絶対に必要となる、圧倒的な力。

 

 自分が操る瞬間移動や、特別に改造した三つ揃いの見た目の、パワードスーツでも彼には敵わなかった。

 

 

 (素晴らしい実力でしたが、敵、なんですよねぇ)

 

 ドクターミヤコの造りあげた最高傑作。それが佐久間ギンジこと、進化の怪人。

 

 そんな怪人に敗北した事が、ミドリコによる逮捕のきっかけとなる。

 

 そして柏木タツヤはこの凶悪犯罪者の集う巨大な監獄へと連れてこられた。

 

 (わたくしが逮捕状を出した人に、逆に逮捕されるなんてね・・・)

 

 皮肉が効いた状況に、タツヤは少しだけ馬鹿らしくなる。もう少しで、自分が勝っていたのに。

 

 あと少しで・・・。

 

 敗北の満足感と、組織としての悔しさを混ぜ合わせながら、タツヤは暗く光を通さない真っ暗な天井に視界を動かした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 虹層作市(にじそうさくし)

 

 度固化市から南に進んで、2つ山を超えた先にある街。

 

 規模としては度固化市同様、東西南北に中央を加えた、とても大きな街。

 

 北に行けばテーマパークや、レストランの並ぶフードエリア。

 

 南に行けばセレブの集う高級住宅街エリア。

 

 西に行けば様々な学業を専門とする学校や、小、中、高、大学が無数に並ぶ学生エリア。

 

 東に行けば普通の住宅街と、普通の暮らしが出来るビルエリア、住宅街エリア、お食事の場所等が並んでいる。

 

 特にこれと言った大きな悪行も並んではいないし、平和な環境が揃っている。悪の組織もこの街には存在していないのだ。

 

 しかし他の街とは違い、この街は大きな特徴を持っている。

 

 それは中央の街全体が、大きな刑務所になっていると言う事。

 

 警察や法律関係の従者が集い、ここで暮らしている。

 

 街と一言言っても、巨大な刑務所が形成された異様な光景を隠す為に、この周辺に街を創り、人を集めていつしか平和の街の象徴としてこの虹層作市が出来上がっていた。

 

 こんな街では中央の警察達がすぐに行動に出るために、悪事を働こうと思って大きな犯罪者が目立つ事も少ないのだ。

 

 「〜♪〜♫」

 

 その中央の街でサマーカーディガンを着用した瓶底眼鏡をかけた少女が、鼻歌を周りに聞こえる様にして大股で歩いている。

 

 翻るスカートの中が見えようと、お構いなしに脚を上げて強く一歩ずつ歩き続ける。

 

 見た目は学生服のどこにでも居そうな陰キャ女子と言った雰囲気のあるこの少女は、後ろに学ランを着用した長身の男子学生もその少女に続くように歩いている。

 

 「畑中先輩」

 

 学ランの男が低く落ち着いた声で、半歩前を歩く少女・・・畑中リコに声をかける。

 

 「な〜に〜爆ちゃん」

 

 爆ちゃんと呼ばれたリコの後輩は、襟を正す様にしてリコに隣を歩き、先輩がどこに向かっているのかを聴いてみる事にした。

 

 「先程から目的が見えません。何をしているのですか?」

 「え〜視察〜?とかいう理由だったら、爆ちゃんは納得する?」

 

 短めに剃りあげた短髪を手で撫でる様にしながら爆ちゃんは、リコの言葉に苦悩する。相変わらずこの人は何を言っているのかわからない。

 

 同じ生徒会に所属し、同じ学校の生徒なのだ。

 

 もっとちゃんとした内容で自分に話してほしい。

 

 「視察ってなんの視察ですか?」

 

 後輩として態度は崩さないようにしながらも、爆ちゃんはリコに質問をしてみる。この際何を言おうとも、言われようとも、爆ちゃんの納得する会話なんて来ないのだから。

 

 「ん〜例えば・・・あの巨大な刑務所とか?」

 

 リコが指を指した先に見えるのは、左右のビル群に挟まれた向こう側に、白く丸いドーム状の建物。

 

 その建物のど真ん中には日本の警察のマークが巨大なレリーフとなって、建物の入り口の真上にセットされている。

 

 「監獄刑務所じゃないですか!学生で視察とか出来る訳ないじゃないですか!」

 「やっぱり爆ちゃんもそう思う〜?」

 

 適当に見えても眼だけは真面目に刑務所を見ているリコに、後輩の爆ちゃんは頭を抱えている。

 

 「あのでも・・・中に入って、色々お勉強させてもらえるのは出来るのでは無いでしょうか?」

 「あ〜それだ!頭いいねぇ〜」

 「いえ・・・」

 

 リコに褒められると素直に嬉しいのだが、それを照れ隠しで邪険な態度で返す。

 

 「んっんっー」 

 

 次にリコが喉を鳴らす。

 

 その次は親指と中指をこすり合わせて、パチン、パチン、と二回指を鳴らす。

 

 「・・・?」

 

 爆ちゃんのすぐ近くで何か不穏な空気が動いたのを感じたが、リコが袖を引っ張った事で元に戻る。

 

 疑問に感じたのはリコのこの謎の行動についてだ。視察と称した刑務所への社会勉強もそうだが、喉を鳴らしたり、指を鳴らしたり。

 

 あと鼻歌も歌っていた。一体何をするつもりなのだろうか。

 

 「計り知れない・・・」

 

 この人の行動や頭の中で考えている事は、所詮一年生の自分にはわからない。

 

 一先ずは彼女の言うとおりに、付いていこう。きっと何かものすごい事を繰り広げてくれるかも知れない。それが自分の勉学に取っては、とても有意義な事になるかも知れないのだから。

 

 学ランの襟を再度正して、爆ちゃんはリコの後ろをついて行くのであった・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 「今指を鳴らしたよね」

 

 半ズボンと短髪、そして蛾の羽を背中に生やした活発な少年の様な見た目をした怪人が、ビルの屋上で無邪気に微笑む。

 

 何も遮るモノの無いビルの屋上では、誰かに目撃されてしまったら、怪人にとっては余計な騒ぎを炊きつける原因にもなる為、普段ならこんな場所には集まらない。

 

 でもそれはあくまで怪人としても素性が知られてしまうからだ。

 

 「オヒョヒョヒョ、あっしらも行動を開始しますか」

 

 少年の様な怪人、毒蛾の怪人の横で無数の触手を取り出しながら、宇宙人の様な見た目をした触手の怪人が青空の下で、サングラスをかけなおす。

 

 怪人達は本来その見た目を隠して行動するには、ソレ相応の変装や、コンテナに隠れた襲撃等をして目的地に向かう事がほとんだ。

 

 だが最近になって一般市民に怪人とバレるのは、怪人の能力とか見た目ではなく、瞳が人と違う事が原因だと言うのがドクターパープルの研究で判明した。

 

 実際にサングラスをかけるだけで、鏡に写した自分の姿が本当に人間そのモノの顔である事が解った時、触手の怪人はおおいに喜び、龍の怪人と共に触手でクリクリしていた。

 

 「チワワそろそろ出撃したい。わんわんハッハッハ」

 

 犬の舌を出しながら真夏の暑さにやられながらも、不気味に膨張した筋肉を見せつけるのは犬の怪人。彼もまた犬の頭に装備出来る様に改良されたゴーグル型のサングラスを装備しており、相変わらずもっこりしたブーメランパンツがその存在感を醸し出している。

 

 「ホッホッホッ・・・怪人大集合ですね。とても楽しみになってきましたよ」

 

 しわがれた様な声にほんの少しの丁寧さを入れた、紐の怪人もこの屋上に来ており、今現状監獄を視察している大幹部の支持を待っている。

 

 一体どこが表でどこが裏なのかわからない、棒人間の見た目をした紐の怪人だけはサングラスを装備出来ず、変わりに一本のロープみたく巻きつける様にして龍の怪人の腰にかけられている。

 

 そんな龍の怪人はいつものカーゴパンツに軍靴、黒いタンクトップという出で立ちに、伸びた髪を一つに束ねた女軍人の様な印象がある。

 

 整った顔立ちに険しく硬い顔をしているが、サングラスを合わせる事で更に怖い迫力を見せてくる。

 

 『全員準備は整ったかしら』

 

 それぞれの怪人達・・・。

 

 触手、毒蛾、犬、龍、紐。

 

 屋上にたむろする怪人達の手元に持っている手鏡から、透き通る声が全員の耳に入ってくる。

 

 それぞれが手鏡を顔の前に持ってくると、そこには自分の顔ではなく、鏡の向こうに白い包帯で眼を隠した鏡の怪人の姿があった。

 

 プラチナのカラーにした髪色に、オフショルダーの羽衣、まるでボンテージのようにも見える身体に巻きつけられる様な衣装は、身体の美しさ、女性としての見た目に悪い印象をもたせる様な見た目をしている。

 

 総統の寵愛を受け、総統の欲望に為されるがままの彼女は、今は怪人四天王の最後の生き残りである。

 

 『そちらに大幹部のリコニス、機械の怪人と──の怪人が向かっているわ。なんとしても監獄刑務所に侵入して、柏木タツヤを連れ戻して来なさい。これは総統の命令でもあるわ』

 

 総統の命令。それはヘルブラッククロスに所属する者であれば何よりも優先される事であり、何よりも大事にしないと行けない絶対の言葉。

 

 「監獄刑務所にはリコニスはついて居るのかね?あっしはあいつ嫌いなんだよなぁ」

 「チワワもあいつ嫌い。なんか臭い」

 

 触手の怪人と犬の怪人が二人してリコニスの悪口を言う。

 

 「さっき指を鳴らしてたよ。もうすぐあそこにつくんじゃないかな?」

 

 あどけない表情で毒蛾の怪人が白いドームの方角へと指を指す。

 

 『刑務所に到着したら、柏木タツヤを見つけるまで好きにして良いわ。意味は解るかしら?』

 

 鏡の怪人の余裕たっぷりな笑みを乗せた言葉に、怪人達は各々悪辣な笑い声を返す。

 

 「そういやこの刑務所って、過去ヘヴンホワイティネスや退魔警察、あと魔法少女やらが倒した犯罪者とかが居ますよね?あれらをもし見つけることが出来たらどうしたら良いですか?」

 

 吸盤と瘤がたくさんついた触手の先端を揺らしながら、触手の怪人が一つ考案を飛ばしてみる。すると鏡の怪人の表情は一切変わらず、鏡の破片を一枚上げて、触手の怪人にその先端を見せつけた。

 

 『ヘルブラッククロスに忠誠を誓うのであれば抱き込みなさい。でも個人の自由を求めて我々に邪魔をしようとするならば・・・』

 「・・・殺して良い」

 

 鏡の怪人の言葉には意外にも龍の怪人が反応した。

 

 今回の作戦は総統の命令通り、柏木タツヤを奪還すると言うモノ。敗北を許されない立場に立つ彼をどうするのかは、総統にしかわからない事だ。

 

 ただこの場に立つ怪人達は、言われた通りに行動すれば良い。

 

 邪魔をする者が居るのであれば殺す。

 

 目的を達成出来なければ、全員殺される。

 

 「ホッホッホッ・・・。我々ならば失敗する事は無いでしょう」

 

 紐の怪人が笑うと、全員も緊張感を無くす。そもそもここ、虹層作市には正義の志を持つ様な存在の反応は発見されていない。

 

 だからリコニスもああやって日常の姿のままでありながら、今回の敵陣の近くまで突き進んでいるのだ。もしそういった存在が居れば、真っ先にリコニスの正体がバレて、既に交戦が開始されている筈だ。

 

 今現状それが無いのであれば、ここに自称正義のヒーローの存在は無いと言う事が明確だ。

 

 敵が居ないのであれば、好都合だ。

 

 『それなら、リコニスの次の合図で行動を開始しなさい。次の合図は──』

 

 鏡の怪人がそれぞれに指示を下そうとした瞬間、ドームの方では一つ大きな爆発が起こった。

 

 真夏の白昼堂々の中に鳴るには、あまりにも大きな爆発の音。

 

 『ああ、合図が飛ばされたようね。それではお願いね。必ず柏木タツヤを奪還しなさい』

 

 鏡の怪人の指示が終わると手鏡が音もなく割れて行き、怪人達の足元に崩れ落ちていく。

 

 「それじゃ、やるしかないね〜」

 「・・・行くぞ」

 

 毒蛾の怪人と龍の怪人が、煙の巻き上がるドームの方を睨み、ビルの下に盛り上がるどよめきと喧騒が耳に心地よい。

 

 「チワワ、柏木の事嫌い。あいつ蒸れた匂いしそう」

 「どっちにしても、邪魔するならサクっとやっちゃいやしょう」

 「絶対に逃してはいけませんよ・・・!」

 

 今の柏木タツヤには異質な怪物(恐怖の象徴)が居ないのだ。例え特殊能力を使われようとも、この怪人の数ならば確実に殺せるだろう。

 

 抵抗するなら殺せば良いし、抵抗しないなら総統の下につれていく。

 

 そもそもリコニスが居る以上、抵抗なんて無謀だろうが・・・。

 

 「爆発が合図ってなんだか興奮して来るなぁ」

 

 毒蛾の怪人が楽しそうに言うと、触手の怪人もニタニタと微笑む。

 

 「でも一番興奮するのは、なんの罪も無い一般市民を絶望のどん底に叩き落とす事だよね」

 

 触手の怪人が毒蛾の怪人に同調する様に言うと、犬の怪人も大四股踏みをしながらその内容に賛同する。

 

 「間違いない。わんわんおー!」 

 

 二度目の爆発が大空と街に響く。その二度目の轟音が鳴ったと同時に、屋上に集まった怪人達も行動を開始した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「タスケテー。犯サレチャウー」

 

 爆発の音が聞こえた瞬間、中央の街はより大きな混乱に抱きしめられていた。

 

 街中の人々が混乱し、または呆然としている中、カーディガンを来た女子学生が一人首根っこを巨漢に掴まれていた。

 

 瓶底眼鏡にはヒビが入りながらもまだメガネの形をなしている。

 

 リコの首を掴んでいる巨漢は、黒いコートの様な出で立ちをしており、髪は逆立って居る。

 

 肌の色は仄かに赤く、瞳の色は・・・黒く、赤い。

 

 「そ、その人を離せ!」

 

 一人の警官が拳銃を構えるが、巨漢は何も動じない。それどころかリコを盾にして拳銃を撃てない様にさせている。

 

 「ワータスケテー、コワイー」

 「・・・」

 

 リコの方も特別怖いと思う様な顔をしておらず、それどころか自分達を囲む警官隊の数を確認している様な眼の動かし方をしている。

 

 「・・・ん〜もういいよ」

 「御衣」

 

 リコが静かに言うと、巨漢も静かに返事を返す。

 

 リコが演技をしている生活の中で、さらに怯えた演技をするのが嫌になったのか、あっけらかんとした口調に戻る。

 

 それと同時に警官達の数も確認出来た事で、とりあえずのドーム突撃の手はずは整った。

 

 「じゃあ、もう殺っちゃって良いよ、爆ちゃん」

 

 リコの狂気に満ちた笑みを見た警官達が、何かの異常に気づくが、もう遅い。

 

 警官達が少女の姿に夢中になっている隙に、巨漢が警官の視界に広がる様にして現れる。そして大きな手のひらで頭を掴むと・・・。

 

 ボッ!

 

 警官一人の頭部が瞬時に爆発し、首からしたが力無く床に倒れる。

 

 「・・・この腐れチ○ポが。誰に向かって銃を向けていやがる」

 

 爆ちゃんと呼ばれたどうみても怪人のその男の名前は、爆撃の怪人。

 

 触れたモノを爆弾化させ、即時爆発も可能なフェーズ2の怪人。

 

 覚醒して間もなくリコニスの通う学校に、人間として送り込まれた為に、彼はリコを先輩と呼ぶ。そして、大幹部であるリコニスに忠誠を誓う怪人でもある。

 

 「うっ・・・」

 

 警官の一人が拳銃を降ろさずに警戒体制に入るも、爆撃の怪人が足元の死体を掴んで警官隊の群れに投げ飛ばす。

 

 すると警官隊の列に入るのと同じタイミングで、肉体を爆散させて辺り一面に複数人の肉片飛び散る、地獄絵図を完成させる。

 

 「動くな!止まれ!」

 

 背後に揃っている警官達もそれぞれ特殊な拳銃を装備している様子だったが、そんな拳銃の銃口達が、横から振り回された黄金の線によって全て斬り崩されていく。

 

 「ほらほら〜逃げないと、殺されちゃうよ〜?」

 

 黄金の線の正体は、先程の少女・・・だった者だった。

 

 黄金のショルダーアーマー、黄金のレガース、黄金のアームガード。

 

 そして黄金を地肌に触れさせないように、ラバー性のインナーを着用し、臍の出たスタイルの良い身体を全面に押し出している、少女の姿。

 

 「ま、逃げても殺すんだけどね〜・・・」

 

 真ん中に立つ警官の左右では、爆撃の怪人が瞬時に爆殺を達成させて、警官の横顔に血液が張り付く。

 

 「へ・・・あ、あああ!!」

 「動きを止めるつもりならさ、さっさと攻撃、しないと私達を止めることは出来ないよ?」

 

 リコニスが黄金の刀を最後に生き残った警官の腹部に、スッと突き刺しで手元に血液がぬるりと流れてくる。

 

 「逮捕するつもりなら、尚更・・・ね?」

 

 意識が遠のいて行く中で、警官の瞳が閉じられていく。

 

 もうそこにリコニスと爆撃の怪人の声は聞こえていなかった。

 

 「さーって・・・」

 

 溜まりに溜まったフラストレーションを開放する時が来た。

 

 リコニスが黄金の刀を肩に抱えながら、白いドームの入り口の近くにまで歩を進めた。

 

 きっと学生服のままではこのドームに近寄る事も出来なかった事だろう。

 

 そして街の方は、爆撃の怪人が触れた店、電柱、建物・・・全てが同時に、同じ時間で、同じ時期に一斉に爆発を迎えていた。

 

 ドームへの攻撃は機械の怪人が行い、街の混乱を招く行為は、爆撃の怪人が行い、そして刑務所への突撃はリコニスと他の怪人達で襲撃を開始する。

 

 「あと数分もすればこの街もニュースに乗ることでしょう。急ぎましょう、先輩」

 「そうね〜。ギンジちゃん達もこっちに来ないかしら?」

 「噂のヘヴンホワイティネスですか。今ここに来られても厄介なだけでは無いですかね?」

 

 爆撃の怪人が近くにあったバイクに触れて、爆弾化が完了させると、刑務所の入り口に向けて爆弾を投げつける。

 

 あのヘヴンホワイティネスが我々ヘルブラッククロスの邪魔をしに来ても、この爆撃で全部片付けられる。ギンジと呼ばれている男についても、爆撃の怪人なら勝てる。

 

 自分ならば絶対に勝てると、混迷極める中央の街で爆撃の怪人はリコニスの半歩後ろを歩いていく。

 

 「ここに来るのがギンジちゃんだけなら良いのにな〜」

 

 言いながら刀を振り回して、ドームから逃げてくる一般市民を容赦無く斬り殺す。

 

 「襲撃、開始よ」

 

 口角をにじり上げてリコニスの言葉が告げられる度に、より悪の志が強く深く染まっていく様な気がしていく。

 

 リコニスの後ろ姿を視界に入れながらも、爆撃の怪人は先輩に大きな憧れを懐きながら、監獄刑務所へと陽気な突入を果たすのであった。

 

 柏木タツヤ奪還作戦、開始──!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 暗く、果てしない闇の広がる様な、冷たく恐ろしい広間─。

 

 明かりを点ければその部屋は広く、大きく開けた空間である事も解りそうな大きな部屋だが、そこはある一箇所を除いて明かりが点いていなければ、人も居ない。

 

 耳を済ませても音はせず、眼を凝らしても誰も居ない。

 

 一箇所、ただその場所に一人の体格の良い男が椅子に座っている。

 

 部屋の中心となる三段の上り台の真ん中に、地獄の様な黒い生地の軍服じみた服装と、暗闇に良くも悪くも怪しく輝く紅の眼光。

 

 未だ謎に包まれた男は、総統とこの場所で呼ばれている。ここは総統の座る静寂の間であり、ヘルブラッククロスの中枢部となっている。

 

 背もたれにどっしり寄りかかり、肘掛けに肩肘ついて頭を支えながら、長く強い脚を組んで静寂と暗闇を優雅に過ごすこの姿は、一見すればただの偉そうな男にしか見えない。

 

 だが、この場所に座るのは、黒き地獄を統べる王。

 

 そしてそれに魅入られた人であり、人ならざる存在、怪人。

 

 「総統閣下─」

 

 この暗闇の中で透き通る様な声音が、総統の耳に聞こえてくる。

 

 これは女性の声。包帯で眼を隠した羽衣に身を包んだ様な服装の女性の怪人、鏡の怪人が一枚の手鏡を持ちながら、総統に近寄ってくる。

 

 足音一つせずに歩み寄るその姿は、総統の好みに添ったのかかなり妖艶な脚の動きと、腰のくねり。

 

 それらと対を成す様な胸や、肩の美しさ。

 

 「私も出撃の準備が整いました。いつでもご命令を」

 

 鏡の怪人が総統の背後で見上げる様に告げると、総統も椅子を回して鏡の怪人を見下ろす。

 

 悪。その一文字で完成されている強烈な威圧と、荘厳さを併せ持つ総統の眼光が、鏡の怪人にプレッシャーとして重くのしかかる。

 

 「ヘヴンホワイティネスの単独撃破、出来るのであろうな?」

 

 鏡の怪人の出撃の目的は、虹層作市にヘヴンホワイティネスの登場をさせない事。

 

 つまる所は足止めである。

 

 「我々はあの子供達を甘く見ていたようだ。決して油断出来ない領域にまで、奴らは近づいている・・・」

 

 総統の言葉に、鏡の怪人は口を挟まない。

 

 今の総統は、いつもの欲望と力を用いて自分を抱いてくれる、優しい総統ではない。組織として、そして自分の目的の為に、世界を創ろうとする王の威圧が、鏡の怪人に向けられている。

 

 「・・・コレを達成出来ないとしても、今回は不問とするが」

 

 総統の言葉の一つひとつに、得も言われぬストレスを与えられている気分に陥る。腹の底に響く様な地獄からの声は、怒鳴られている訳でも無いのに、非常に不機嫌にさせられそうな程の声音をしている。

 

 不問、つまりは鏡の怪人がヘヴンホワイティネスの足止めと、単独撃破という作戦が失敗する前提で話されている。

 

 力も実力も証明出来なければ、いくら総統に可愛がられていようとも、結局は捨てられてしまう。

 

 「柏木を連れ帰るまでに、お前がヘヴンホワイティネスを止めてくれていれば良い。貴様一人で、あの小娘に勝てるとも思えないのでな」

 

 あまりにも信用されていない。

 

 だが、この信用の無さを実力で返すことが出来れば、もっと寵愛を受けさせてくれる。

 

 このお方の欲望に、自分ごときが、もっと付き合う事を許してくれる。

 

 「必ずや、目的を達成して参ります」

 

 鏡の怪人が膝を折りながら総統に頭を下げる。その短い仕草だけでも、女性の芳香と可憐さが醸し出ている。

 

 総統の言う通りに、倒す事はもしかしたら出来ないかも知れない。だけど、ヘヴンホワイティネスの足止めをして、出来るならば一人だけでも殺す。

 

 足止めが出来ないのであれば、道連れで二人は殺す。

 

 「ヘルブラッククロスの栄光を手にする為に・・・!」

 

 総統へそれを告げれば、次の行動は急いでヘヴンホワイティネスの出現に先回りして妨害する事。

 

 それを行う為にも鏡の怪人が手鏡の中に入り、その場から姿を消した。

 

 美しい女性の姿がなくなれば、この暗い大広間に残っているのは、静寂と、総統一人だけ。

 

 「・・・」

 

 総統の頭の中では計画を確実に実行に移す為の計算を行いつつ、ある一人の男の存在も気にかけている。

 

 進化の怪人、ヘヴンホワイティネスのNo3、佐久間ギンジ。

 

 「ヘヴンホワイティネス、か」

 

 ここまでギンジ達に邪魔をされるとは思っても居なかった。

 

 肩肘をつきながら総統はもう一つの未来を考える。

 

 あのイレギュラー存在、佐久間ギンジがこちらの味方になったままだったら、と。

 

 淡い妄想、希望的観測でモノ事を考えた所で、それはもう手に入らない。

 

 邪魔をするならば始末するだけ。そうやってヘルブラッククロスを構築して来たのだから、今回もそうするだけで良いのだ。

 

 暗闇の中で、地獄の王が静かに微笑む。

 

 悪を際限なく溜め込んだ強大な闇の顔で、悪の組織の王が嗤い続けた。

 

 その微笑みは、近く行われる事になるであろう、ヘヴンホワイティネスとの決着の行く末に、心を踊らせている総統の数少なくなった娯楽の様なモノだった。

 

続く

 

  

 




お疲れ様です。

何故総統は柏木タツヤというロリコン敗北者を助けようとしているのでしょうね。

キャラネタ書きます

リコニス
言わずと知れたクレイジー大幹部。
相変わらずギンジちゃんのことを考えている。今回の作戦においては、柏木タツヤが何か抵抗するつもりなら容赦なく殺害しようと目論んでいる。

爆撃の怪人
新キャラ。
フェーズ1の能力は触れたモノの爆弾化。制限時間5分以内に任意爆発させないと爆弾化解除。人でもモノでもなんでも爆弾にできるが、水や空気等は爆弾化が付与出来ない。
フェーズ2の能力は擬態。
これにより全怪人唯一のサングラス無しで人間に変装できる。

触手の怪人
龍の怪人とクリクリしていたらしい。
龍の怪人とはウマが合わないけど、そういうのは合う。
ぅちら身体の相性はピッタリだね・・・はぁと
人間変装時にはメガネをかけた研究員の様な姿らしい。

犬の怪人
サングラスをかけた際の変装は、チワワのマスクをかぶったプロレスラー。顔意外全部素の状態と変わらない。
好きな犬種はセントバーナード

紐の怪人
棒人間な見た目をしているからか変装不可。
今回は龍の怪人の腰に纏められた。

龍の怪人
変装時の姿はアメリカ系の女軍人らしい。
触手の怪人は嫌いだけど、身体の相性は(ry
ガチ百合であることを忘れては行けない

毒蛾の怪人
女の子だけど少年みたいな姿をしている怪人。
変装時は紫色のワンピを着た小学一年生ぐらいの姿らしい。
相変わらず強気なメスガキ

機械の怪人
「何故私だけは喋る場面が無かったのだ」
瞳と思わしき所まで機械の為変装不可。
そのかわりステルス機能が搭載。

鏡の怪人
ヘヴンホワイティネスの足止め、出来れば撃破をする為、街に出向くそうです。総統ラブ。

総統
いよいよヘヴンホワイティネスを強敵と認定した。それでも我々が敗けることは無いだろう・・・と思っているらしいです。

・・・

次回は監獄襲撃・2!
リコニスと爆撃の怪人、そして他の怪人達も柏木タツヤの捉えられている独房を目指して進撃開始!
そしてヘルブラッククロスに立ちはだかるのは、まさかのあいつら!!

それではまた次回!感想や応援、お待ちしております!

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