唐突ですが、女性のタンクトップ姿って良いですよね。
龍の怪人は結構私の好みが詰まっています。
いつか番外編で龍の怪人が主役となる話しも作ってみたいですね。
それでは、どうぞ!
虹層作市中央の大監獄。
凶悪な犯罪者が収容させられては、死と言う人生の終わりを待つだけの退屈な牢屋。
そのコンクリートと鉄で囲まれている部屋の中で、退魔教会や、魔法使いによって特殊な拘束をされている者や、様々な極悪犯と名付けられた者達が、上の階から聞こえる地響きや、爆発の音でどよめきが広がっていく。
鉄で編み込まれた通路と、何本モノ電線が張り巡らされた壁と天井はとても近未来的な雰囲気をしており、ここが日本だと言う事実を知らなければ、外国の収容所だと勘違いもおこしてしまいそうだ。
「にゃ〜ん・・・」
ある一つの鉄格子の中で猫の毛並みをした、猫らしい可愛い声をしているが、どうにも猫っぽくない見た目をしている人の形をしているだけの、その生物は上の騒ぎが耳に入っている様だった。
猫の眼をぎょろり、ぎょろりと動かしながら、僅かに振動する天井を眺める。
「ニャハハ、ついにこの監獄も襲撃の対象に入ったのかにゃ?」
この猫男の名前はガット。
元サン・アンフェールの幹部であり、ムーン・パラディースとの戦いに大きく貢献した猫の超人。
しかし、彼はムーン・パラディースの崩壊は出来ても、ヘヴンホワイティネスに勝つことは出来なかった。
全身を砕かれても、この監獄での治療によってなんとか復活を果たしているのだが、それでもここから出られないのでは、自慢の爪も振るう事が出来ない。
「暇だ・・・なんとかして暴れられないかニャー?」
好奇心を全開にした瞳が大きく開かれて、爪もニョッキリ飛び出させる。
だがこの電子ロックされている扉は開くことが出来ず、ガットの攻撃を持ってしても破壊は不可能だった。
向かいの独房・・・そこにある電子ロックの扉の奥の小部屋には、毛深い身体をおとなしくさせて、座っているイノシシみたいな大男が、ひたすら悪態をついている。
「ブシシシ、ここを襲撃する奴らが居るとは、本当の馬鹿野郎が居た様だな。どうせ、全員返り討ちにあうのだだろうが、間抜けな奴らも居た様だな」
ヘヴンホワイティネスでもヘルブラッククロスでも無い男に敗けた、イノシシの超人、チョトツ。彼もまた自由の無い監獄に捉えられて、無気力に毎日を過ごしていた。
いつも頭に浮かぶのは、あの豚の顔をした怪人、オーク怪人の事を思い出す。
そして自分を強化できる変身アイテムだった、サン・フォースを破壊した、あの女の事も・・・。
「出られないから仕方ないが・・・でも、もう一度外に出たら」
チョトツもガットも考えている事は同じだった。
サン・アンフェールの復興など、この際どうでも良い。
ヘヴンホワイティネスに報復する。
死んでも消えない屈辱を身体に叩き込んで、心も魂も精神も全てぐちゃぐちゃにしてから、殺してやる・・・と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
正面玄関から直接突入したリコニスと爆撃の怪人は、情報収集等一切せずに大暴れを開始。
触手、紐、犬、龍、毒蛾、機械の怪人も上空から空いた着弾地点から、監獄のドームへの侵入を成功させる。
「今から穴を開ける」
機械の怪人がドリルのアームを展開させると、硬いコンクリートを削り初め、地下への侵入経路を無理やり作り出す。
「おひょひょ、下の方はすごい事になってますなぁー」
触手の怪人が手すりに寄りかかりながら、すぐ下の階、入り口のある場所を見下ろす。その先に広がるのはたくさんの死体と、所々焦げたエントランス。
受付のカウンターは真っ二つに破壊され、築き上げられた死体の山はおおよそ人であったモノ達が、様々な人体パーツを適当に積み上げられている。
黒焦げになった人や、頭部だけになってしまった人間達が、それは無残な姿にさせられている。
綺麗に斬られた警官も、無残な警官も、きっとリコニスの逆鱗に触れているのであろう。特別な理由なんて無いまま、リコニスの癇癪という逆鱗に・・・。
「オヒョヒョ、あれじゃどっちが怪人が解りゃしないぜ」
押し寄せる警官達の首を横一列に跳ね飛ばし、手元で回した黄金の刀でさらに胴体を纏めて吹き飛ばす。
改造された黄金の刀も強くなっており、パワードスーツが無ければおおよそ人に扱える代物では無いのであろう。
「あっはは、皆ザコなんだね〜♡」
毒蛾の怪人もリコニスの無双状態に眼を輝かせながら、死んでいく警官達を嘲笑する。
「空いたぞ!」
機械の怪人の指示により、大きく開き穿かれたコンクリート大穴に、まずは龍の怪人と紐の怪人が侵入し、次々と怪人達が穴に入り込んで地下に侵入を開始する。
機械の怪人だけは、ステルス機能を展開させてから穴ではなくリコニスと爆撃の怪人が暴れる一階へと降りる。
「さて、どこかに機械を扱う、マザーブレイン的な部屋があるはずだ」
分電盤みたいなモノでも良い。
このまま警官や特殊警備兵と戦っても、敗ける事は絶対無いが、どうせならもっと大きな混乱を招きたいと機械の怪人は考える。
その為には、この監獄に居る囚人達を一斉開放させて、ヘルブラッククロスの作戦を成功しやすくしようと考える。
「・・・派手に壊してくれるな、大幹部」
受付のカウンターのPCに触れてみたが、リコニスが破壊した事でハッキングでの地図情報を得るのは難しそうだった。
「・・・監視カメラ、は・・・発見」
天井にある丸いドーム状の黒くなったカメラを発見する。それに近づいた機械の怪人は、小型ドローンの様な姿となり、カメラのハッキングを開始する。
「さて・・・柏木タツヤはどこに居るのか」
ハッキングを開始。それにより、この監獄の全容を確認に入る。
「地下に侵入した奴らは・・・まぁ大丈夫か。それから・・・」
機械の怪人がハッキングがてら、外に眼を通す。カメラに写ったのは、軍事用トラックや、戦車等がこの虹層作市の中央の街に大きな隊列を組んでこの監獄刑務所に向かってきている様だった。
「・・・意外と楽しくなりそうじゃないか」
機械による瞳と思わしきライトを照らし、軍隊の到着を待ちながらハッキングもすすめる。
誰が呼び出したモノか分からないが、軍隊の出撃までくればこの街で戦争が起きるということだ。
「ヘルブラッククロスもついに、軍事企業と戦う事になるかね?楽しみだ」
機械の自分の感情が出来たのも全て、ヘヴンホワイティネスとの戦いに敗けた事が原因だ。時折不要と思いつつ、こういう時に高揚するのがたまらなく嬉しい。
「ハッキングも終わった・・・では、私も行くとしよう」
リコニスと爆撃の怪人が切り開いた、血と肉片で汚れた道を進み、機械の怪人も地下へと侵入を開始するのであった。
地下に向かいがてら、2つの電気信号を飛ばす。
オール・アンロック。これは全ての電子ロック式の扉を開く命令。
オール・デリート。これは再度ロックを出来ない様に、命令コードを全部消去して、別のパスワードに書き換える命令。
「それでは、お楽しみいただこう・・・」
機械の怪人による侵略の合図となり、ヘルブラッククロスの本格的な襲撃が、今この瞬間開始された─。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
重苦しい装備に身を包んだ警備兵達が独房エリアに集い初め、上の階層の騒ぎにどよめきと警戒が強まっていく。
警報は鳴っていないが、地響きと爆発音が何度も鳴れば、この騒ぎがただ事ではないと誰もが感じている。
ニチャついた顔の囚人の一人が重装兵の緊張を孕んだ顔を見て、涎をわざと舌に含ませた嫌な音を鳴らしながら重装兵を見つめている。
「こっちを見るな犯罪者」
「じゅるる、てめぇこそさっさと上に行けよ。これは闇の社会に生きてきた勘だけど、相当やっばい事がおこってるじぇへへ」
小太りの気持ち悪い囚人が唾を飛ばしながら話してくる。この態度と汚らしさに、いっそ持っている警棒で叩き潰してみようかと思うが、重装兵はそれを諦める。
一枚の鉄扉を隔てているのだから、どちらにしても攻撃なんて出来ない。それどころか、お互いにできる事を言えば唾を飛ばし合う事ぐらいだろう。
「おい!何をしている!」
別の独房の方から声が聞こえた。
重装兵がそちらに向かうと、警備兵が拳銃を引き抜いて、独房に銃口を向けていた。
「い、いや知らねぇよ!勝手に扉が開いたんだ!」
流石に凶悪犯罪者とも言えど、拳銃には勝てないのか慌ただしく両手を挙げては、抵抗の意思は無いポーズをしている。
「少しでも変な動きをしてみろ、銃殺はいつでも許可されているんだからな!」
警備兵がそう叫んで、後ろの重装兵も警戒をする。
そんな勝手に開いた独房の向かい側にある独房が開く音がした。重苦しい鉄の扉を横に引いて、大きな体格をした巨漢の犯罪者が満面の笑みをこぼしていた。
「!?おい、貴様も何を・・・」
重装兵がその気配に気づいて、巨漢を止めようとするが、左右からオレンジの囚人服を着たまた別の犯罪者が襲いかかってきたのだ。
「ヒャッハー!」
「自由だぜ!!」
嬉々として重装兵に掴みかかり、巨漢の犯罪者も両手からボキボキと骨の音を鳴らしている。
凶悪犯罪者が左右と正面から来ていたとしても、所詮丸腰。武装している重装兵には勝てないと思っていた。
すぐに盾と警棒で応戦に入ろうとしたが、巨漢の犯罪者からのとても重たい拳骨がヘルメットを叩き割って、顔面を撃ち抜いた。
「がぁ・・・!?」
「おーっと痛かったかね?」
巨漢の犯罪者が重装兵を殴り倒した背後では、警備兵は華麗な足技を披露する犯罪者によって後頭部をカチ割られて倒れていた。
巨漢が見渡した周囲には、独房がほとんど開き始めて、我先に飛び出した囚人達の群れが、警備兵、重装兵、女性の教官を相手に問わず一斉に悪の手を伸ばしては、暴力と一方的な虐殺が始まっていた。
暴力は心地よい。罵声を浴びせるのも気持ちが良い。
「出遅れたぜぇ・・・!」
オレンジの囚人服の袖をまくり、巨漢の犯罪者・・・ナカムラは、再び日の当たる世界で、悪事を働こうと心を踊らせた。
暴力と、悪事、犯罪をすべて混ぜ合わせて、この監獄から出ていく事を許された、一握りの運命に選ばれた者だと、自分を信じて行動を開始した。
「このナカムラ様のシャバデビューだ!女を抱かせろ!弱いものいじめをさせろ!金も酒も肉も全部持ってコーイ!」
高笑いをしながら金網の道を大股で歩き、また一人重装兵を殴り飛ばす。
警備兵も、武装兵も関係ない。全員殴り飛ばして、ナカムラは自分の強さに酔いしれる気分でいる。
「この俺こそが最強の犯罪者なんだー!」
また一人警備兵をぶっ飛ばした。喧騒と取っ組み合い、騒音と叫び声。
もみくちゃになっている兵と囚人の入り乱れた、道なき道を暴力で全て切り拓いていく。
ナカムラの犯罪伝説が、ここに始まろうとしていた瞬間だった。
「アオンッ!」
「え・・・」
真上から、犬の様な鳴き声。吠える時の甲高い声が、少し野太くなった様な声が、ナカムラの真上から聞こえた。
それと同時に頭の上に何かが乗った。正確には降ってきた。
首に一気に体重が乗り、身体が重さに耐えきれない程の何かが、犬の鳴き声と同時にナカムラの身体に襲ってきたのだ。
「ふぎぃっ!!?」
巨漢の身体がいびつに曲がっていきながらも、ナカムラにはまだ意識があった。犯罪伝説はもう無理そうだが、せめて何が起こったのか確認しようと、なんとか意識だけは残してみた。
倒れた身体で見える視界は、数多の囚人とこの監獄の兵達が戦う大乱闘の景色、それと同時に、自分よりも大きく筋肉の詰まった背中。
生半可な鍛錬では到底たどり着けない様な、太く逞しい両足。
腰にそびえるのは黒いギリギリを狙ったかの様なブーメランパンツと思わしきモノ。
筋骨隆々、筋肉おばけ、鬼の子・・・様々な存在と言葉がナカムラの脳内を一瞬で駆け巡る。
しかし一番気になったのは頭部だ。
ボディビルダーの如く、半端ない身体。
プロレスラーの如く、逞しい身体。
大横綱の如く、強い身体。
なのに顔は・・・。
「ヘルブラッククロスの登場だ!チワワの登場だぁー!人間全員ぶっ殺ォォォォウス!!わん!わん!おー!!」
意味不明な事を高らかに宣言する犬の大男にの登場によって、ナカムラの伝説は幕を開くことなく終幕となった。
(い、犬・・・?)
チワワの顔がこちらに向いた事で、ナカムラは自分の幼少期を思い出す。
誕生日に母親と一緒にペットショップに行った事を・・・。初めて買って貰った犬がチワワであった事、あの時の思い出を・・・。
(か、母ちゃん・・・お、俺、頑張って更生するよ・・・そしたら頑張って金ためてさ、一緒にまたチワワを買いに「ドーベルマン!」
優しい思い出を振り返るナカムラの本音を、犬の大男が大声でかき消す。なにゆえドーベルマンなのかは誰にもわからない。
犬の大男がナカムラの眼の前で右足を後方にあげ、踏み込む姿勢で思い切り後方に引き上げるその姿勢は、間違いなく蹴り飛ばすシュートキックの体制。
「シュート!」
「うげっ!!?」
ちょうど足元で転がっていた手頃な巨漢・ナカムラを見つけた犬の怪人が、思い切り蹴っ飛ばして、大乱闘の戦渦の中に押し込んで行く。人の入り乱れる道なき道を、人というボールで人をなぎ倒しながら無理やり切り拓いて行くその様は、いうなれば因果応報。
そして拓いたのは、犬の怪人。
必殺技は、ドーベルマンシュート。
「オヒョヒョ、犬っち、気合入っているね。これはあっしも敗けてられないよ」
そんな犬の怪人の背後では、無数の触手を広げながら怪しく笑う宇宙人の様な顔をした触手の怪人。
機械の怪人が開けた大穴は空洞を抜けて、地下10階にまで伸びていたのだ。そこへこの大乱闘、そして犬と触手、二名の怪人の襲撃。
「さーって、僕たちもはじめよっか?」
「・・・」
更に上からゆっくりと降り立つ様に現れるのは、少年の様な見た目をした毒蛾の怪人と、身体だけはとても女性らしさを醸し出す、タンクトップとカーゴパンツ姿の龍の怪人。それと腰に巻かれた紐の怪人。
「邪魔するなら、殺せ」
龍の怪人が静かに告げた瞬間に、怪人たちは人を遥かに凌駕する力を発動しながら、混迷極まる金網の広場の大乱闘に混ざり、大暴れを開始した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
監獄刑務所、地下20階。
分厚いコンクリートと鋼鉄で固められた監獄の中は、今や大混乱を極め、警備兵vs囚人達の激しい攻防が繰り広げられていた。
独房の扉がいきなり開いては、中から次々と囚人達が飛び出して行く。
長方形に広がった大きな通路では、オレンジ色の囚人服を来た犯罪者達が、警備兵に我先にと攻撃を開始する。
それと同時に、人とはちょっと違う者達もまた、ここから解き放たれようとしていた。
ある者は猫の人間の様で、またある者は人と同じ身体つきをしているのにも関わらず、明らかに人間ではありえない強烈な殺意をにじませていた。
「フォッフォッフォッ・・・」
ある一つの独房からは、オレンジの囚人服の姿のまま、身体を曲げた老人が騒ぎに乗じて脱出していた。
部屋を出たその老人の名は、赤天。元退魔教会の執行役員であり、裏では悪事を働いていた下衆の極み。
「これは何か、良い事が起きている様じゃのぉ〜」
ニヤニヤと笑う老人の顔は、悪辣そのモノ。悪意に満ち溢れた老人の顔はとても人間とは思えない邪悪を秘めていた。
「さてさて、ここでも喧嘩が始まっているのであれば・・・それ」
手錠も解錠された今、赤天は退魔の術を使用する事ができる。退魔教会のトップでもあった赤天にかかれば、札が無くとも高位の術を発動が出来てしまう。
赤い退魔の術を円型に展開すると、それを眼の前で掴み合いをしながら暴力を制そうとする警備兵と囚人めがけて吹き飛ばした。
円型のソレは回転ノコギリの様に、たやすく人間の身体を斬り裂いて奥に暴れる阿呆共を一投の内にほとんど倒していく。
あの小僧共に殴り倒された時、赤天は自分の未来を悲観してしまった。だが、この自分の実力を見れば衰えていない事を改めて実感し、更にはヘヴンホワイティネスへの報復でさえ思い着けそうな気分に陥った。
ヘヴンホワイティネスだけではない。
「レイナとナルミは元気かのう?」
あの生意気な娘達の事を想像して、赤天はよだれをわざとらしく垂らして、囚人と警備兵達の喧騒を眺める。
自分の作り出した死体の上を歩き出して、赤天は白く変色した眉毛に触る。さながら考え事でもするかの様に、赤天はこれからの楽しみを考える。
その赤点が歩き出した少し上の階層の独房エリアでも、手すり越しに血や肉片が飛び散る混戦が繰り広げられていた。
「
人と人の隙間を縫うように、またはすり抜ける様にして白い猫眼の怪物が人間という一括りのカテゴリーの存在に爪傷をつける。
「ブシシシシ!どけどけ!」
全身を使った分厚い筋肉のタックルをかますのは、イノシシみたいな怪物。敵味方関係なく轢き飛ばす事で、左右に人間をぶっ飛ばしていく。
「そいじゃあ、あーしの舞でも見せようかね」
もう一人、猫とイノシシの間に立つのは、片目を閉じてこれまた同じオレンジの囚人服の上半分だけを脱いだ男が。
「サン・アンフェールの流儀!お見せしてやらぁ!」
2つの鉄棒を振り回しながら、もう一人現れた男が放射能を発動させる事で、周りの人間達が全て苦しみだして倒れていく。
「先ずはボスとゾネの奴を見つけないとな」
イノシシ男・・・チョトツが太い腕に力を込めながら言うと、猫のガットも舞の男、ソル・レヴェンテが3人ここに集って、この混乱に乗じてサン・アンフェールの復活、及び脱出を目論もうと地道な計画を開始した。
サン・アンフェール、赤天の居る階層の下、手すりから身を乗出せば下が覗ける大きな穴の下では、更に凶悪な死刑囚と集まるエリアがあった。
その中心部には、さらに人とは思えない様な怪物級の犯罪者が、警備兵達をなぶり殺しにしていた。
地下25階、死刑囚エリアでは警備兵達相手に殲滅が完了しているのか、それぞれが下卑た高笑いを上げている。
肌が鋼鉄の様に真っ黒に輝くのは、かつて退魔警察レイナによってブタ箱行きにさせられた、鋼鉄の魔人。
その隣で鋼鉄の魔人の肩に肘を乗せながら、気だるそうにニヤけているのは、ギザギザした歯を見せびらかす様な特徴的な顔をした男は、鎌鼬の魔人。
その向かい側では囚人と兵の死体の山を築き上げて頂点に座り込む、魔法の闇人。
禍々しい暗いオーラが、まるで湯気の様に身体から吹き出しており、そこらで高笑いをしている生き残りの囚人達も、彼を王の様に崇めている。
凛々しい顔つきと、一見すれば高貴な産まれにも見えるその顔が、このむさ苦しい監獄において、顔、そして強さが崇拝されているのだろう。
「・・・元マージ・ジゴックの最高責任者・・・恐ろしいぜ」
鎌鼬の魔人が死体の山に座る、魔法の闇人に目配せをする。魔法の闇人の持つ圧倒的な戦闘力と、一個人で持てる能力の振れ幅に、大きく関心を寄せていた。
炎、雷、氷、風、地、樹、爆、聖、光、闇。
様々な能力を一人が同時に出すのは、基本的に異人と呼ばれる者達には、能力の範疇を超えない事がベースとなっている。
鋼鉄の魔人ならば、硬化、身体の強化等がそれに該当する。
そんな中、この魔法の闇人は、様々な攻撃手段を持ち、自分に襲いかかる囚人と警備兵をまたたく間に殺害し、この山を築き上げた。
「ゲヘナミレニアムの、最高幹部の者だな、君たちは」
魔法の闇人の声はとても高く、女性らしさを含ませる様な声音をしている。深く、それでいて熱気に包まれたこの死刑囚エリアで、マージ・ジゴックと、ゲヘナミレニアムがここで邂逅していた。
「ボクちゃん、あんたと戦うつもりは無いんだけどさ、仲良くしない?」
鎌鼬の魔人が魔法の闇人へ、ヘラヘラしながらも警戒を残しつつ、交渉に入ってみる。
魔法の闇人はそんな鎌鼬の魔人の言葉を聴いて、表情一つ変えずに指先を二人の魔人に向けて来た。何かの攻撃の合図かと一気に身構えるが、ポスっと情けない炎が指先から漏れ出てくる。
「ふふ、いいよ」
冗談っぽく笑ってきた魔法の闇人に、二人の魔人たちは少しだけ緊張感が抜けていく。
炎がすぐに消えると、この指先のマジックはただのジョークなのだろう。
「それじゃあ、先ずはここから出ないとね」
魔法の闇人が上を見上げれば、そこは未だに響き渡る警備兵達の阿鼻叫喚。囚人達の大笑い。
それと骨を砕かれ、肉を引き裂かれる耳に心地よい音の数々。
「はは、我々を見下していたゴミ共が、次々と死んでいるよ」
魔法の闇人の手が光ると、死体の中から二人程人形の様に操られた存在が出てくる。
腹まで伸びた白いひげを血で汚した老人の様な男の死体。
オレンジの囚人服を焦がし、ボロボロの顔になった男の死体。
この二人はいずれも、サン・アンフェールと名乗っていた様
だが、今では魔法の闇人の手によってこの通り無残な姿にされている。
「この死人形達だったら、きっと面白い事をしてくれそうだ・・・」
表情の変わらない魔法の闇人が、無言のまま何かを命じると、死体ふたつだけではなく、死体の山の方からも無数の人形たちが動き始める。いびつに曲がった手足を動かしながら、ぞろぞろと動き出している。
「魔法少女にも用事があるけど、先ずは・・・」
魔法の闇人が立ち上がり、その左右に鋼鉄、鎌鼬の魔人が付き従うようにして歩き、その後ろにはまだ生きている囚人達がギャングの様な歩き方で、後ろに付き従う。
「それじゃあ、脱獄劇を始めようか」
魔法の闇人がまたも表情を変えずに言葉の激を強めると、一斉に歓が湧き上がり、地下から地上への大進軍を開始したのであった。
「ゴミ掃除もついでにしておかないとね・・・はは」
魔法の闇人の静かな一言が、鋼鉄の魔人の背筋をブルリと震わせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「トイプードルラリアット!」
犬の怪人が次々と囚人達をなぎ倒しながら、新しい必殺技の名前を高らかに吠える。
「ブルドッグラッシュ!」
両手に握りこんだ拳には、ブルドッグの顔をしたオーラが、殴られた場所にはブルドッグの顔が刻みつけられる。
「ドーベルマンシュート!」
分厚く太い脚から繰り出される蹴りは、素足であろうとも重装兵を蹴り飛ばす程の威力を誇り、鉄製の扉でさえひしゃげてしまう。
「ウルフドッグオオハリテ!」
腕を鈍器に見立てたおお振り回しで、顔に平手打ちするだけの技なのだが、これが非常に強かったのか、警備兵の頭部をたやすく弾き飛ばす。
「アキタケンギロチン!」
飛び出した犬の怪人の股に警備兵が挟み込まれ、脚の筋肉だけで身体中の骨を粉砕し、肉を潰し、命を終わらせる、犬の怪人の新しい必殺技の数々。
「あっしも敗けてらんねぇ!」
タコの様に伸ばした触手を無数に展開させて、鈍器、ドリル、イボ、瘤、拳、針、様々な形状をした触手の先端を警備兵と邪魔をする囚人へ向けて、触手の怪人の攻撃が炸裂する。
「アルティメットフェーズ3・インバリッドエクストラエクストレイルエクスパンションアウトキャスト・スターダスト・タンタクル!」
ただの触手の百烈拳にしか見えない高速の触手裁きに、囚人達は一人ひとり確実に命を取られ、女性囚人(美人に限る)と、女性教官は触手の怪人によるテクによってメロメロにされている。
「オヒョヒョ・・・あっしら同期組は、こんな石コロ以下の奴らになんか負けやしやせんぜ!」
「チワワ、絶対ヘルブラッククロスの目的のために、こいつら全員殺していく!」
進化の怪人と同時期に造られたこの怪人二人は、今やヘルブラッククロスの一番の鉄砲玉の様になっており、纏めて正面に立つ邪魔者達を即殺を繰り返している。
「この混乱、間違いなく機械の仕業だよね」
「・・・」
毒蛾の怪人が頭に手をやりながらてくてく歩き、龍の怪人に声をかける。龍の怪人も同じ様な姿勢をしており、毒蛾の怪人の言葉にただ真面目に静かにうなずいている。
囚人も警備兵も機械の怪人によって、独房からの脱出を可能となり、警備兵や救援で駆けつけた正義の兵達との戦いが勃発している。
「ホッホッホッ。これでは柏木さんの所には到達出来ませんね。して、どうやって柏木さんが捉えられている場所に向かうのです?」
龍の怪人の腰に巻かれた紐の怪人が、しわがれた様な声を放つ。
そもそものヘルブラッククロスの怪人達の目的は、大幹部柏木タツヤの奪還。ここまでの大混乱は必要無いとも考えたが、どちらにせよこんな状況なのであれば、囚人達も警備兵も殺して進むしか無い。
「あっしらの話しを聞き入れる奴も少なそうですし、もういっその事全員殺して行けば良いんじゃないんですかぁ?」
触手の怪人のため息混じりの言葉には、誰もが賛同している。
「チワワ、とにかく突き進む。殴りぬく!」
「キャハハ、やる気まんまんチワワちゃん♡じゃあ僕も突き進もうかな〜」
顔だけチワワの犬の怪人と、少年の見た目をしたメスガキ毒蛾の怪人が黒く赤い瞳を輝かせる。
「そうと決まれば、早く柏木さんを取り戻しに行きやしょう」
触手の怪人が一言で告げる事で、全ての怪人達が頷く。このまま地下を目指して行けば、おそらくは柏木タツヤが居る筈だと信じて。
「どんどん進んでいけば、チワワ、いつか会えると思っている。それより、リコニスと新人はまだ合流しないのかね」
犬の怪人が四股を踏みながら話す。その事には全ての怪人が同意したのか、地下を目指せる様に階段なりエレベーターなりを探しに向かう事にしている。
「まぁ、リコニスさんなら、上手くやってるでしょ。あっしらはあっしらで別行動しているんですし、ささっと目的を達成しましょうや」
「ホッホッホッ、触手さんの言うとおりですよ」
ヘルブラッククロスの怪人達が確実な結束力を着けると、再び行動を開始する。
「ポメラニアン・・・!」
囚人達の大暴れしている金網の道に、先陣を切るのは犬の怪人。
硬い肩を敵にめがけて思い切り走り出す。その姿勢はタックルの様なモノだが、犬の怪人の全身に、獰猛なポメラニアンのオーラが纏わりつき、より驚異を感じる迫力を見せている。
「マッスルブレイカー!」
全長190センチもある筋骨隆々の犬の怪人のタックルによって、囚人達も警備兵達も次々と薙ぎ倒されていく。
もっとも正しい表現としては、轢殺が良いかもしれない。
「どんどん行くぞえぇ!!」
犬の怪人の号令は怪人達の士気を上げたのか、戦闘メインに出ている触手、龍、毒蛾の怪人の鼓動を早め、より獰猛に、より残忍な感情をわき建てる。
破壊衝動も、性欲も、戦闘意欲も、全てが掻き立てられた。
「ニャハハ、さっきからうるさいぞ貴様ら」
「ブシシシ、とりあえず死んどけ」
突き進む犬の怪人と触手の怪人の頭上から、猫とイノシシの顔をした何物かが妨害のためか、それともただの八つ当たりなのか不明だが、攻撃を繰り出してきた。
イノシシの両腕を組み込んだハンマーの様な攻撃は、犬の怪人の顔面を捉えて、来た道を引き帰させる様に押し返す。
触手の怪人は反応が間に合ったのか、猫の何かからの爪の攻撃を、皮膚の硬い触手で防御に成功するも、2つの鉄棒を持ったもう一人の妨害者によって、足元を掬われて浮いた身体にイノシシの大男によるタックルにより、後方に跳ね返される。
妨害してきたその男達は、全員オレンジの囚人服を着用しており、ひと目でここの囚人であると言う事が理解出来た。
「あっし達を、ヘルブラッククロスと知っての狼藉か?」
すぐに立ち上がった触手の怪人は既にキレた表情をしていて、眼の前に現れた怪人モドキに怒りの目線を向けている。
犬の怪人も同じ様に、チワワの犬歯をむき出しにして唸っている。
「ヘルブラッククロス?マジか、あのヘルブラッククロスか」
鉄棒を肩に持ち上げた男、ソル・レヴェンテが驚きに満ちた表情を見せる。
「ブシシ、だが、関係無い。かつての敵なのであれば、我々サン・アンフェールの復活の狼煙として、こいつらを殺せばよいのだ」
イノシシ男、チョトツの放った言葉に龍の怪人が額に血管を浮かばせるが、そこに立ちはだかる様にして、紐の怪人が腰から滑り落ちては、いつもの棒人間の姿を見せる。
「この虫けらは今・・・ヘルブラッククロスを殺すと言いましたか?ヘヴンホワイティネスとムーン・パラディースに敗けた弱者の分際で、我々をコケにしてくれましたね・・・」
ワナワナと震える紐の怪人が、犬の怪人と触手の怪人の真ん中に立つ様にして、3人が並びた立つ。
向かい打つかの様に、サン・アンフェールのチョトツ、ガット、ソル・レヴェンテの三名もここに立つ。
「今度は敗けん。この世界を支配するのがサン・アンフェールだと言う事を、貴様らヘルブラッククロスを撃破して今度こそ知らしめてやろう!」
チョトツの自信に溢れた言葉に、犬も触手も紐も、完全にキレた。
「龍さん、毒蛾さん」
紐の怪人が振り返らずに残った二名の怪人の名前を呼ぶ。
「ここは私達にまかせて、貴女方は柏木タツヤを取り返しに行くのです。ここまで我らの組織を愚弄されれば、っもう黙っておけません!」
紐の怪人の瞳が開き、思い切り紐の両腕を伸ばして行く。これは紐の怪人が戦闘体制に入った合図。
「チワワ、サン・アンフェール嫌い。なんか弱そう」
「自信があるようだな、チワワ小僧」
「お前こそ、井の中の猪だと言うことをわからせてやる」
犬の怪人vsチョトツ
「あーしの舞でお前みたいな棒人間もイチコロよ?ヘルブラッククロスだからって、何にでも勝てるとは思わない事だぜ?」
「随分と下に見られている様ですねぇ・・・心外だ!」
紐の怪人vsソル・レヴェンテ
「あっし達の邪魔をすると言う事は、すなわち地獄に反逆するという事。死ぬ覚悟は出来て居るのだろう?」
「ニャハハ、陽と地獄、どっちが勝つかなんて解りきっているさ」
触手の怪人vsガット
三者が三者とぶつかりあう交戦が今にも始まりそうになっている中、龍の怪人と毒蛾の怪人はその間をすり抜けて、地下への階段を突き進んで行く。
「どっちが勝つと思う?」
「・・・」
毒蛾の怪人の無邪気な声に、龍の怪人は何も答えない。
「まぁ、あいつらだって敗ける事は流石に無いか」
いつもヘヴンホワイティネスに妨害されては、必ずボコられて帰還している怪人達だ。そこらの怪人や、他の組織の怪人クラスの存在より鍛えられている。
そもそもヘルブラッククロスこそが、この悪の志を持つ上で最強の組織だと、龍の怪人も毒蛾の怪人も自負している。
「よーっし、ちゃちゃっと行こうか!」
「・・・」
「なんか喋ってよ姉さーん・・・」
毒蛾の怪人の軽口に何も言い返さない龍の怪人は、ただ黙って、監獄の地下へと走って向かうだけであった。
柏木タツヤ奪還作戦、進捗40%!!
続く
お疲れ様です。
思ったより監獄襲撃のお話は長くなりそうなのですが、あと三回ぐらいで終わる予定です。そこからは主人公たちの出番も復活!
キャラネタ書きます
触手の怪人
組織の事はなんだかんだちゅき。
犬の怪人
犬種の名前を使った必殺技を全てスモウの技と言い張る。
紐の怪人
サン・アンフェール?あったねそんなゴミ組織。
龍の怪人
無口。毒蛾の怪人は女の子なのだが、百合を発動しないのは、妹みたいなモノだから。次回、彼女も戦います
毒蛾の怪人
無視されると結構傷ついちゃうタイプ。
好きな男性は弱いのに心が折れない男。いじめがいがあるから。
機械の怪人
いらぬハッキングで監獄内を大混乱に導いた人。
チョトツ
久しぶりに登場したサン・アンフェールの超人。
ヘルブラッククロスに勝つ気で居る
かつてオーク怪人とミドリコのペアに敗北した
ガット
猫ちゃん。カエデに報復をしたいらしい。
かつてカエデに敗北した
ソル・レヴェンテ
舞と放射能で攻撃してくる歌舞伎野郎。
かつてレンに敗北した
鋼鉄/鎌鼬の魔人
かつてレイナにボコられて、刑務所行きにさせられた変態ドスケベ狂人コンビ。鋼鉄の魔人はナルミ(その当時はウメミツキ)にボコられた。
魔法の闇人
魔法界から人間界にやってきて、サクラにボコられたマージ・ジゴック総帥。実は先代魔王。アマトリに全部任せて、自分はハーレム王国を創ろうとしたけど魔法少女によってその計画は中止させられた。
・・・
次回は龍と毒蛾の怪人コンビ戦闘開始!そしていよいよリコニスと爆撃の怪人も出番復活!!監獄襲撃・3へ続きます。多分全体としては・5で終わる予定です。
それではまた次回!