香風家に兄がいたら……   作:whitebait

7 / 7
お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。

はい、本当にお待たせしてしまい申し訳ございませんm(_ _)m
リアルの方が忙しかったり、課題に追われたりして
なかなか執筆する事が出来ませんでした。

不定期更新にはなりますが今後ともよろしくお願いします
m(_ _)m




第7羽 小麦を愛した少女と小豆に愛された少女その3

パン作りを行った次の休日。

ココア達4人は、千夜の喫茶店に向かっていた。

 

 

「この辺りのはずなんだけど」

 

先日のパン作りの際に、

 

『パン作りでお世話になったお礼に、うちの喫茶店に招待するわ』

 

というふうに千夜の喫茶店に誘われたのだ。

 

「どんなとこか楽しみだね」

 

「なんて名前の喫茶店なんですか?」

 

「あま……うさ……だったかな」

 

「甘兎とな!?」

 

「チノちゃん知ってるの?」

 

突然ダンディな声が聞こえるがチノの腹話術と言い張っているので、怪しまれることは無い。

 

(え……今ので誰も何も思わないわけ?明らかに怪しいじゃん)

怜央は思ったが言うのは薮蛇な気がしたのでスルーする。

 

ココアはまだしもリゼにもばれていないので怜央はとても不思議にも思っている。

 

「おじいちゃんの時代に張り合っていたと聞きます」

 

「確かにじいちゃん、ババアがどうこうってよく店で言ってたな」

 

「ここじゃないのか」

 

「ここみたいですね」

 

「看板だけやたら渋い……面白い店だな」

 

この町らしく外壁が赤く塗られた木組みの家には、年季の入った木製の看板がついてる。

看板には「庵兎甘」と書かれている。

 

「……オレ、うさぎ、あまい……」

 

「甘兎庵な」

 

「俺じゃなくて庵ですよ、ココアさん」

 

甘兎庵の扉を開き四人は中に入っていた。

 

「「「「こんにちはー」」」」

 

「あら、みんな!いらっしゃい」

 

中に入ると着物にエプロンを付けた千夜が出迎えてくれた。

 

「あっ初めてあった時もその格好だったね、お店の制服だったんだ〜」

 

「あれはお仕事でようかんお得意様に配った帰りだったの」

 

「あのようかんおいしくて3本いけちゃったよー」

 

「3本まるごと食ったのか!?」

 

「流石に健康に悪いですよね?」

 

「うさぎだ」

 

「置物かと思ったぞ」

 

「あんこはよっぽどのことがないと動かないのよね」

 

チノが近づくとあんこの視線がチノの上に乗ってるティッピーに向くとテーブルの上から、チノの上にいるティッピーに飛びつく

 

「じいち……、ティッピーー!!」

 

「チノ!!」

 

「チノちゃん大丈夫!?」

 

チノが驚き尻もちをつく。

ココアが手を取りチノを立たせる。

 

「びっくりしました……」

 

「あのうさぎ……許さん……」

 

ティッピーは叩き落したあんこはそのままティッピーを追い回している。

 

「わぁぁぁーーー!!」

 

「縄張り意識がはたらいたのか?」

 

「いえ……あれは一目ぼれしちゃったのね」

 

「「一目ぼれ?」」

 

「恥ずかしがり屋くんだと思ってたのに、あれは本気ね」

 

千夜は笑顔で手でハートを作る。

 

「あれ?ティッピーってなんとなくオスだと思ってた」

 

「ティッピーはメスですよ」

 

(まあ中身は違いますが)

 

ティッピーは叫びながら店外へと飛び出していき、あんこもそのあと追っていった。

4人はテーブルに着くと、千夜が4人分の抹茶を持ってくる。

 

「私も抹茶でラテアートを作ってみたんだけど、どうかしら?」

 

「わっどんなの!?」

 

「ココアちゃんみたいにかわいいのは描けないんだけど、北斎様に憧れていて……」

 

「浮世絵!?」

 

「なんでそんなに上手く描けるんですか……」

 

抹茶に描かれていたのはそれぞれ女性の顔と山、そして波の絵だが、浮世絵のようなタッチである。

 

「芭蕉様にも憧れて俳句もたしなんでいて……」

 

4つ目の抹茶には「ココアちゃん どうして今日は おさげやきん? 千夜」と書かれている。

 

「風流だ!!」

 

「俳句も上手ですね、あとメニューを頂けますか?」

 

「はい、お品書きよ」

 

千夜からおしながきを受け取ったリゼが開く。

内容を見た瞬間リゼは顔をしかめる。

 

「煌めく三宝珠……、雪原の赤宝石……、海に映る月と星々……、なんだこの漫画の必殺技みたいなメニューは……」

 

チノと怜央もわからないのか顔を見合わせて首を傾げている。

 

「わ〜抹茶パフェもいいしクリームあんみつも白玉ぜんざいも捨てがたいなあ」

 

「わかるのか!?」

 

(あ〜そういう感じなのね……)

怜央はココアの解読からヒントを得て察した。

 

「じゃあ私黄金のシャチホコスペシャルで」

 

「よくわからないけど海に映る月と星々で」

 

「花の都三つ子の宝石」

 

「輝く三宝珠2つでお願いします」

 

「ちょっと待っててね」

 

メニューを取り終えると千夜は厨房に向かう。

 

「和服ってお淑やかな感じがしていいねー」

 

「……」

 

「着てみたいんですか?」

 

千夜の後姿を視線で熱心に追うリゼの様子に気づくチノ。

 

「いやっそういうわけじゃっ……!」

 

「リゼちゃんならきっと似合うよ」

 

「そっ、そうか?」

 

「うん、すっごくカッコイイ」

 

「「……」」

怜央とチノはココアとリゼのイメージには差があると感じたが黙っていることにした。

 

「お待ちどうさまー」

 

「リゼちゃんは海に映る月と星々ね」

 

「白玉栗ぜんざいだったのか」

 

「チノちゃんは花の都三つ子宝石ね」

 

「あんみつにお団子がささっています!!」

 

「怜央くんは輝く三宝珠を2つね」

 

「やっぱり三色団子だった」

 

「ココアちゃんは黄金の鯱スペシャルね」

 

「鯱=たい焼きって無理がないか?」

 

「さあ召し上がれ」

 

「「「「いただきます」」」」

 

みんなで手を合わせて千夜が作った甘味を食べ始める。

 

「う〜ん♪美味しい〜♪」

 

「このお団子……桜の風味!」

 

「この三色団子美味しいな」

 

「あんこは栗ようかんね」

 

じー……

 

「どうしたの?」

 

「こっちのを食べたいんでしょうか?」

 

「あの目って……」

 

怜央は、あんこの目を見てあんこの狙いを察した……

 

「しょうがないなーちょっとだけだよ、そのかわりあとでもふもふさせてね」

 

ココアはスプーンにアイスを乗せてあんこを誘うが、あんこは本体の器に一直線に向かうとすごい勢いで食べ始めた。

 

「本体まっしぐら!!」

 

「やっぱり本体狙いだったか……」

 

ココアの料理の大半を食べ尽くし、満足したあんこを千夜が台に戻す。

 

「それにしても、このぜんざいおいしいな」

 

「うちもこのくらいやらないとダメですね」

 

「もっと頑張らないとか……」

 

「それならラビットハウスさんとコラボなんでどうかしら?きっと盛り上がると思うの、コーヒーあんみつとか」

 

「タオルやトートバッグなんでどうかな」

 

「私マグカップ欲しいです」

 

(ん……?)

 

(え……?)

 

(料理の方じゃなくて?)

 

「「「「ごちそうさまでした」」」」

 

チノはあんこの方をじっと見ている。

 

「チノちゃん、あんこには触らないの?」

 

「あ〜その事なんですけど……」

 

「チノはティッピー以外の動物が懐かないらしい」

 

「怜央くんは大丈夫なのに?」

 

「俺は特別懐かないとかは無いですね……」

 

怜央は、チノが全く懐かれず、いじけてしまったチノを慰めた頃を思い出した。

怜央には、なぜチノが懐かれないが全く予想がつかない。意を決したチノが席を立ち、あんこに近づく。

あんこはやはり微動だにしない。

チノが指先で恐る恐るあんこの耳に触れる。

 

「っ!」

 

あんこの耳がピクリと動いてチノはびっくりするが、やはり本体は動かないし逃げない。

次は背中をそっとゆっくりと撫でる。しかしあんこは動かないし逃げない。

さらに両手でゆっくり抱き上げ、あんこの顔に頬をこすりつけた。だがあんこは動かないし逃げようとしない。

あんこに逃げないことを感じたのか最後は頭の上に乗せる。

 

「すごい……!もうこんなに仲良く……!」

 

「頭に乗せなきゃ気がすまないのか?」

 

「クセになってるんだと思います……」

 

チノ以外が、やり遂げてドヤ顔をするチノを見ていた。

 

「じゃあそろそろお暇するか」

 

荷物をそれぞれ持つとテーブルから立ち上がる。

 

「みなさんまた来てくださいね」

 

「私の下宿先が千夜ちゃんの家だったらここでお手伝いさせてもらってたんだろうなー」

 

着物の制服を着て千夜と2人で、働く姿を想像するココア。

 

「今からでも来てくれていいのよ、従業員は常時募集中だもの」

 

「それいいな」

 

「同じ喫茶店ですしすぐ慣れますね」

 

「甘兎庵でも頑張ってくださいね」

 

「じゃあ部屋を空けて空けておくから早速荷物をまとめて来てね」

 

「誰か止めてよ!」

 

トントン拍子に話が進んでいくので悲鳴をあげるココア。

 

「千夜ちゃんまたねー」

 

「ごちそうさまでした」

 

「またなー」

 

「今日はありがとうございました」

 

4人は甘兎庵を後にして帰路に着いた。

 

「昔はお店とライバルだったんだよね」

 

「今はそんなこと関係ないですけどね」

 

「実際今まで忘れてましたし」

 

「私たちもお客さんに満足してもらえるように頑張らなきゃね」

 

「だなー」

 

(あれ……なんか物足りないような……?)

 

怜央はいつも聞こえてくるダンディな声が聞こえないことに違和感を感じた。

 

誰も気づいていないが、チノの頭の上に乗っているのがあんこなのである。

 

「なんじゃこの栗羊羹!?甘すぎるわ!甘すぎ甘すぎ!旨すぎ旨すぎ!甘すぎ甘すぎ!」

 

「あら……?」

 

その頃、ティッピーはなぜか甘兎庵の台で栗羊羹を頬張っていた。




次回から男子高校生組の名前もカタカナにしようと思います。

次回は遂にシャロちゃん登場です!!(多分)

気長にお待ちください!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。