聖人と呼ばれるタコ   作:サソリス

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ほとんど見切り発車で草


プロローグと現実確認

「今日でユグドラシルも幕引き……寂しくなりますね。たこつぼ万歳さん」

「……ぬぁ? あ、すまん。たこわさの作り方を思い出してて話聞いて無かったわ。すまないがももんがさんもう一回いいか?」

「ハァ……本当にたこつぼ万歳さんはタコが好きですよね」

「俺はタコが嫌いだッ!!!」

 

 DMMORPG、2126年に体験型オンラインRPGとして売り出されたこれまでに例を見ない画期的なゲームだ。とことんリアルを追求し、多様な機能を身に付けたDMMOは当然の如く熱中する者が後を絶ず、それでこそリアルすら犠牲にして様々なゲームを楽しんでいた。けれども何事にも終わりはある。どんなに人気なコンテンツであっても終焉を迎える事は防げないもので俺のやっている《ユグドラシル》もまた、例外では無い。

 

 

「そ、そういえばさっきほどまでヘロヘロさんがログインしてたんですよ。入れ違いになっちゃいましたね」

「マジ? あのスライム野郎ぉ……結局最後まで金を返さなかったのかよ」

「あぁーあの神器級(ゴッズアイテム)の代金ですか」

「まあ! 俺も正直忘れてたところあるし! あんまり気にして無いんだけどな!!!」

 

 異形種でのみ構成されたギルド、アインズ・ウール・ゴウン。その拠点であるナザリック地下大墳墓の最下層である玉座の間ではギルドマスターである【モモンガ】と唯一彼と同じく最後まで残ったギルドメンバーである【たこつぼ万歳】はもうすぐ訪れる終わりの時を両者これまでの思い出に浸りながら待っていた。

 

「滅茶苦茶気にしてるじゃないですか……」

「だってさぁー! アイツ毎度会うたびに返す返すって言ってたんだぜぇ。思わず期待しちまうってもんよ!」

 

 肉一つ無いスケルトンとバスケットボールほどの大きさのタコが触手を器用に扱い、感情を表しながら語り合うこの光景……うん、地獄絵図かな? 

 ゲーム内の光景でなければきっと正気度を消失し、SAN値が危険領域まで達していただろう。

 

「たこつぼ万歳さんって本当に騙されやすいですよね……」

「たこつぼぉ」

 

 沈黙する二人。だがその沈黙はやがて笑いに変わり、静かだった王座の間に楽し気な笑い声が響き渡った。そして二人してその視界の隅に映る時計はこの素晴らしき世界の終わりである午前0時を刻むのだった。

 

 

※※※

 

「ま、終わんなかったんですけどね」

「突然なにを言ってるんですか、たこつぼ万歳さん?」

「ひーとーりーごーとー」

 

 今の状況を簡単に説明しよう。

 

 ユグドラシルのゲームを遊んでいた。

 ↓

 もうすぐサービス終了ですね、悲しいです。

 ↓

 笑って終わろう、またの出会いに乾杯ッ! 

 ↓

 あれれ? まだ終わってなくない??? 

 ↓

 なんかNPCが高性能化してて草

 ↓

 ってかコレゲームの中に入ってないか??? ←いまここ!! 

 

 まさか一昔前に流行った小説のような出来事に俺達が巻き込まれるなんて思っても見なかったぜ。にゅるにゅるっと体を動かす。けれどその感覚は今までの感覚とは全く違う。それもそのはずだ、俺の体は今タコへと変わったのだから。大きく変わった俺の体、まるでタコの如く無数の触手が生えるそれは完全なる異形の種。現実なら一目見るだけで悲鳴を上げてしまうそれを鏡などで確認するけれど、俺はそれに対し全く違和感を感じない。多分精神面も大きく変化してるんだろうな……

 

「ってかモモンちゃん、もう少し優しく運んでくんない? 肋骨が当たって痛いんだけど」

 

 ほんで現状の説明だけど、今の俺ってば完全にタコだから満足に自分で歩けないんだよね。だからナザリック内に配置している高レベルのNPC、守護者達を決闘場へ集め、集会みたいな事をするらしいモモンガに俺を運んでもらってるんだけど……流石はスケルトン。骨々でちょくちょく後頭部? に骨が刺さって痛いゾ。

 

「我慢してくだいよたこつぼ万歳さん、俺だってこの体に馴れて無いんですから……」

「ハァ?! 人型風情が文句言ってんじゃね! 黙ってタコ様を運びやがれ!」

「今のキレる要素ありました!??」

「無いな」

「え、えぇ……」

 

 そんでもって闘技場のある六階層に到着した俺達。地下であるにもかかわらず製作者であるブルー・プラネット渾身の出来である自慢の満点の星空が俺達を照らしていた。そしてローマにあるコロッセオの如き石造りの壁が囲むこの場所に足を踏み入れた途端、何者かが全力疾走にぶっ飛ぶかの如く走って来た。

 

「いらっしゃいませぇぇぇぇぇぇ!!! モモンガ様にたこつぼ万歳様ッ! あたしたちの守護階層までようこそ!」

 

 彼────ではなく彼女の正体は第6階層守護者が1人、名をアウラ・ベラ・フィオーラ。種族はダークエルフでそのオットアイが特徴だと思う……知らんが。

 

「アウラか。少しばかり邪魔をさせてもらおう」

 

 威厳ある声で答えるモモンガ……っプ、明らかに作ってる声で笑えるぜ。事前にナザリックの王であるロールプレイをして権威を保つって彼から聞いて無ければ大笑いしてた所だ。んで、此処からが本題なんだがそんなロールプレイを俺も求められてる訳で……うん、メンドクサイ。モモンガが俺もやってくださいって土下座しそうになるぐらいになるまで頼み込んで来たからやるけど……ハァ、メンドクサイ。けど、やるか。

 

「アウラ」

「はい!」

 

 俺がアウラへ声をかけるとヌフフとした感じだったアウラが突然、ピンっと気を張ったような感じになった。え、何で呼びかけただけでこうなるの? 

 

「出迎え、ご苦労様です」

「ぁ、ぁぅ」

 

 そう言って触手を伸ばし、頭を撫でてやるとプルプルし始める。その後、何故か涙を流し始めた……えぇ。そんなに優しく撫でられる、嫌なのぉ??? 

 

 俺がやるロール。それはモモンガが圧倒的な強者的な覇王ロールだとしたら俺はその逆、誰へでも手を差し伸べる聖人ロールプレイだ。何故かと言うと単純に俺がたっちみーさんの如く、人助けが好きだからってのが理由だ。実際ユグドラシルでソロプレイしてた時も自分の種族を隠し、PK以外の人達を助けてたからな。だからその経験から聖人ロールプレイぐらいなら俺でも楽に出来ると思ってたんだけど……初回でコレとか正直自信がなくなる。

 

「も、モモンちゃんモモンちゃん! アウラ泣き出しちゃった……どうしよ」

「知りませんよ。恐らくですがたこつぼ万歳さんの容姿が生理的に無理だったんじゃないですか???」

「マジで?」

 

 まぁ確かに正直このキャラを作る時、俺自身も【触手キモ過ぎワロス】ってな具合で爆笑して、その後女性プレイヤ―達に滅茶苦茶嫌われたりもしてたけどさ……恐らく俺らプレイヤーに絶対的な忠義を示している子でも俺は駄目なのか……悲し過ぎるゾ。コソコソっと二人でモモンと話た後ゆっくりと頭を撫でていた触手を離す。すると彼女は素早く流していた涙を袖で拭った。

 

「アウラ、兄弟であるマーレは何処に?」

 

俺がそう聞くとマーレは未だに涙が収まらず声も出せないのか鼻水を啜りながら後方を指さした。すると丁度そのタイミングでアウラとそっくりの少女――――に見える男の子、彼女の弟であるマーレ・ベロ・フィオーレが降りて来た。

 

「お待たせしました。モモンガ様、たこつぼ万歳様」

「いや、大丈夫だとも」

 

そう答えたモモンにキラキラとした目で彼を見つめ、やがてはモモンに持ってもらっている俺の姿が目に入りピシッと背筋を伸ばす。何、ホント。何で皆がそろって俺を見た途端にこんな風に変わるんだ??? 何て考えている内に話は進み、事前に俺と打ち合わせていた通りに事を成す。

 

「それで今日は少し手伝って欲しい事があってね」

 

第六階層にて守護者が集まるまであと1時間ほど。俺達は自身の戦闘能力のチェックの為、戦闘準備を始めたのだった。

 




【ステータス】

名前:たこつぼ万歳(TAKOTUBOBANNZAI)
性別:中性(男性)
役職:至高の41人の1人
住居:ナザリック地下大墳墓 第九階層の自室
属性:極善(カルマ値:300)

種族レベル
旧世界の神(クトゥルフ)――――15Lv
始まりの混沌(ウボ・サスラ)――――10Lv
終わりの混沌(ニャルラトホテプ)――――15Lv
ほか

職業レベル
・聖女――――10Lv
・神官騎士――――10Lv
・聖戦士――――5Lv
ほか

【呼び名】
聖タコの皮を被った底の見えない混沌。
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