異世界に転移させられたので、いろんな人(外)に恩を売って生きていく 作:おれは
「突然だけど、貴方にはこの異世界でハーレムを作って世界を混沌に陥れてもらいます」
「いや、なんで??」
目を覚ませば、そこはどこかの知らない森だった。そして隣にいた、銀髪でギリシャ神話っぽい服装の吊り目美人さんから、そんな宣言を受けた。
「申し遅れましたね。私は貴方を暇つぶしでこの世界に転移させた邪神です」
「簡潔で最悪な自己紹介を聞いてしまった」
「五百人くらいのハーレムを築いて、千人くらい殺して、千五百人くらい子孫を残すまで元の世界には帰しません」
「それもう帰るに帰れないやつじゃん」
イザナミイザナギ? その西洋っぽいビジュで日本神話ネタ入れてくるんだ。
あまりにもぶっ飛びすぎてて全然現実味が湧かないが、どうやらやばいことになったらしい。困る。
「というか僕、普通の男子高校生ですけどいいんですか? たぶん映えませんよ?」
「そこはほら、スキルだとかで盛ればどうにかなるから」
「邪神でもスキルはくれるんですね」
「まあ、まともな物をあげる気はないけれど」
「ええ………………」
「そうだわ。せっかくだから、貴方の出自とか特徴だとかに応じたスキルを授けましょう」
邪神が僕の頭上に手を翳すと、そこから紫色の怪しげな光が放射され、妙に生暖かいそれに身体が包まれる。
「はい、今ので何かしらのスキルが発現したはずよ。ステータス開いて」
「はあ」
脳内で念じてみれば、ゲームの画面っぽいUIが宙に浮かぶ。
「【名前:
なるほど、よく見るRPGのソレだ。スキルなどの情報欄があったのでタップしてみる。
「【ユニークスキル:『
イマイチ概要が分からないが、確かに全然まともそうではない。説明文の詳細を読む。
「『対象は人間以外。亜人でも人外でも動物でも可。施した恩に応じて相手から報酬を貰える。返す恩は受けた側の主観に応じる。強制的な洗脳ではなく、契約の形に近い』と。ふうん、面白そうですね」
「うおっ!?」
いつの間にか隣に擦り寄ってきていた邪神が、テキストを読み上げてニマニマと笑った。完全に玩具として見られている。というか、コレ他人にも読めるんだ。
「そこは邪神のパワーです。そもそも私の授けたスキルだし」
「由来がよくわかんないんですけど」
「たぶん先祖返りとか隔世遺伝みたいなアレですね。あなたの血の中に、桃太郎や浦島太郎、鶴の恩返しに小さな葛籠のおじいさんの遺伝子が混ざっているわ」
「えっ、全然知らなかった」
生まれも育ちも一般家庭だと思っていたが、まさかそんな面白い家系図だとは。それはそれとしてスキルの使い方がよく分からない。
「仕方ないですわ」
あからさまに嘆息した邪神が、背中をこちらに向ける。
「肩、揉んで」
「え?」
「ほら、いいから」
困惑しつつ、言われるがままに華奢な肩に触れる。全然指が入らない、めちゃくちゃ凝ってる。邪神にも肉体的疲労は溜まるらしい。
「貴方……普通に筋がいいわね」
「はあ、どうも」
「そんなものでいいです」
邪神が肩を動かせば、ぽきぽきと子気味いい音が響いた。結局どういうことなのかと首を傾げれば、どこからか安っぽい効果音と【肩揉み:+100】という表示が出た。
「わ……!」
「こうやって、売った恩が数値化されるの。で、一定量の恩を消費して
「えー、打算ありきの人助けはヤダな」
「善人みたいなこと言わないで、萎えるので」
先程のステータス画面を見て、詳細を確認する。なんか恩返しの要求もここからできるらしい。《料理》とか《洗濯》とか、ある程度メジャー(?)な行動がリストになってる。でも大体高い。肩揉みの100では到底何も要求できない。
「そりゃあ私、プライド高いですし」
「関係あるんだ」
「恩消費値は、相手の認識によって変わってくるみたいね」
相手が「この程度では恩に報えていない」って認識ならめちゃくちゃ安いってことか。打算的で嫌だが、頼りたい用途に応じて色々な人に恩を売るのが一番なのかもしれない。
「さて、じゃあ私はそろそろ帰ります。あとは貴方が頑張る姿をニヤニヤ眺めさせてもらうわ」
「最後に一ついいでしょうか、邪神さん」
「あら、何かしら?」
「あの……これ見てもらってもいいですか?」
先程のスキルの詳細画面。そこに、恩を売った対象と恩の数値が一覧になって表示されている。一番上にデカデカと表示された邪神さんのドヤ顔の隣の数値は、100を超えて500に差し掛かりつつある。
「は……? なんで……?」
「思ったんだけど、そもそも僕は邪神さんのお願いで異世界にいるわけじゃん。それはつまり、ここにいる限りずーっと恩を与えていることになるのでは……?」
「ハァー!?!? そんなの言いがかりです! とりあえずスキルを取り上げて、元の世界に返して──って、なんで上手くいかないの!?」
「ここ、読んでみてください」
「『尚、恩を売られている間はそれを仇で返すことはできない』──と、なるほど」
膝を折った邪神さんは、上目遣いで言った。
「……肩でもお揉み致しましょうか?」
「あ、間に合ってるんで大丈夫です」
そんなこんなで、僕の異世界生活が始まった。