異世界に転移させられたので、いろんな人(外)に恩を売って生きていく   作:おれは

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二恩目『責任取ってもらうからね』

 

 とりあえず街を目指すべき、ということで、僕と邪神さんは森の中をとぼとぼ歩いていた。

 

「というか、邪神さんだと長くて呼びづらいので、名前とか教えてもらっていいですか?」

 

「イヤです。知りたくば恩を消費する事ね」

 

「あ、よく見たらスキルのとこに書いてあった。ヴィラさんって言うんですか、いい名前ですね」

 

「!?」

 

 恩を返す上で名前を知らないのは不都合だろうから、妥当といえば妥当か。呼ばれた彼女はと言えば、「人ごときに我が真名を呼ばれるなんて……」と謎のショックを受けている。どんまい。

 

「街まであとどれくらいかかります?」

 

「一時間くらいでしょうか」

 

「うーん、微妙に遠い」

 

 とはいえ、謎の虫(燃えてる)や謎の鳥(凍ってる)、謎の獣(なんか帯電してる)が闊歩する異世界の森を歩くのは意外と面白いので、まあ悪くはない。それらを眺めながら歩いていれば、突如、女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

「キャアアアアア!!」

 

「あら、今のは──」

 

「結構近かったですよね……! いきましょう、ヴィラさん!」

 

「ええ、そうですね」

 

 妙に笑顔のヴィラさんを連れ、悲鳴の方へと向かう。木々を抜けた先の見晴らしのいい草原で、傾き倒れた馬車と、それを囲むように獣の群れが向かい合っていた。

 

「な……! アレはさっきの、なんかビリビリした狼みたいなやつ!」

 

 体長1メートルほどの狼が、九匹。数はそうでもなくとも、あの鋭い爪や牙、そしてビリビリにかかれば、きっと人なんて一溜りもない。

 

「助けなきゃ……!」

 

「ええ、そうですね」

 

 相も変わらずニコニコ笑顔の彼女は、まったく動く素振りを見せない。

 

「……もしかして、恩使わせようとしてます?」

 

「ええ、そうですね」

 

「いやまあそのくらい、人助けできるなら軽いもんなんですけど」

 

『1』残して恩を全消費する。お願いは当然、獣の撃退と馬車の救助。刹那、晴れていた空に暗雲が立ち込め、そこから降り注いだ雷光が獣たちを消し炭にした。

 

「……もしかして恩、使いすぎた?」

 

「あの程度の獣であれば、こんなものでしょう」

 

 恐らく汚れていないにも関わらず、ぱっぱと手を払ってドヤ顔したヴィラを放置して、馬車の方に向かう。落雷の威力がやばすぎて被害を受けていないとも限らない。

 

「すみませーん、大丈夫ですか!」

 

 消し炭を跨ぎ、声をかけつつ馬車の方に向かう。すると中から、恐る恐ると言った様子で甲冑が姿を現した。

 

「…………………………」

 

「あ、あのお……?」

 

 キョロキョロと周りを見渡す銀の甲冑。ゆっくりと立ち上がるが、威圧感がやばい。全長2メートルはゆうにあるだろうという体格。沈黙を貫いているのが果てしなく怖い。やがて甲冑は、絞り出すように言う。

 

 

「…………こ………………」

 

「こ……?」

 

「怖かったあ…………!」

 

 圧のある見た目から、可愛らしい声と可愛らしい言葉が聞こえてきた。

 

「あ、あのお。あなた方が助けてくださったのですか?」

 

「えーっと、一応」

 

「あ、ありがとうございますう! このご恩は一生忘れません!!!」

 

 腕を掴まれ、ぶんぶんぶん、と激しく振りながらのお礼。もげそうな勢いだったので「いえいえ、そんなお礼を言われるようなことはしてないので!!」と振り払う。

 

「すみません、自己紹介がまだでしたね。わたし、メイリュと申します。そしてこちらにあらせられるのが──きゃっ!?」

 

「ちょっと、どういうことよ!?!?」

 

 メイリュを押し退けるようにして、馬車から血のように真っ赤なロングヘアを靡かせた少女が飛び出す。特徴的なのは頭に被ったとんがり帽子と、空いた穴から飛び出した猫のようなケモ耳だった。

 

「なんで()()()()()()()()獣たちがいないワケ!?」

 

「?」

 

「!」

 

「!?」

 

 困惑する僕、何かを察するヴィラ、動揺するメイリュ。

 

「サイッアク! あたしの計画がおじゃんになるなんて……責任、取って貰うからね!!」

 

「ええ……?」

 

 

 

 *

 

 

 

「なるほど、つまり君はクリル=ビジソワアスという名家の娘で、政略結婚の駒として許嫁の家に運ばれていくところで、それが嫌だったから調伏した獣に襲われたことにして運ばせ、逃げ出そうとしていたところだった、と」

 

「そうよ。力はあっても相手にビビって話にならないメイリュなら余裕だと思ったのに、誰かさんのいらないお節介のせいで計画が台無しだわ」

 

 彼女はぶんぶんと、二本に分かれたしっぽを地面に叩きつけるようにして怒る。痛くないのだろうか。

 

「まあ、事情は知らなかったとはいえ確かにそれは申し訳なかった」

 

「そうよね!?」

 

「で、責任を取って僕たちは何をすればいいんですか?」

 

「そんなの、誘拐しかないでしょう」

 

 さも当然のように言われても、では攫いますねと二つ返事で頷くのは難しい。

 

「ふむ、では攫いますね」

 

「あら、そこのお姉さんは話が早いじゃない」

 

「ええ。面白そうなことに関するアンテナはビンビンですので」

 

「こ、こここ困りますぅ!」

 

 ニヤニヤと思惑を感じさせる笑顔で頷き合う二人に、メイリュが割って入る。

 

「大切なお嬢様を誘拐なんてされたら、旦那様にどのように叱られるか……! 想像するだけで、はわわ……!」

 

「お馬鹿。従者諸共誘拐されてるのだから、アナタはもうあの人とは会えないのよ。だから怒られる心配なんてないわ」

 

「ほ、本当ですか〜! やった〜!」

 

「それに──もしバレても、誘拐したこの人たちのせいだからね」

 

「えっ」

 

 意地の悪い微笑。端から『スケープゴートが増えてラッキー!』くらいにしか思っていなかったのだろう。やれやれ、困ったことになった。僕は頭を抱えた。

ピロン。

 

 

「……ん? いま、変な音がしなかったかしら?」

 

「え?」

 

 見れば、視界の左端に【共謀:+2000】の文字がある。どうやら誘拐の片棒を担いだことで、恩を売ったことになったらしい。

 

「ちょっと、何よこの文字!? まさかアナタ、スキル持ちだったの!?」

 

「えーっと、はい。『例外なき謝礼(スペシャルサンクス)』ってスキルで、なんか恩を売った相手と契約したみたいな形になるみたいで」

 

「何が契約よ! あのねえ、そもそもあたしの計画がアナタのせいで狂ったから渋々そうしてるのであって──」

 

「──あらあら? それはおかしいですね」

 

 ヴィラが楽しそうに首を傾げて言う。

 

()()()()()はあれど、このスキルはほとんどお互いの認識に応じて発動するはずです。この子に恩を()()()という認識はなさそうなので、どちらかといえば貴方の認識の問題。つまり、本当は貴方も協力者を得られたことで安心したという───」

 

「さっさと街に向かうわよ! このままだと日が暮れるから!! ほら、誘拐者さんも早く!!!」

 

「はいはい」

 

 開幕一時間も経たないうちに、めちゃくちゃ賑やかになってしまった。悪くないなと思いながら、クリルに続いて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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