異世界に転移させられたので、いろんな人(外)に恩を売って生きていく   作:おれは

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四恩目『かかったわね』

「って、ここさっきの森じゃん」

 

僕たちが最初に訪れた森が、どうやらモンスターの縄張りだったらしい。たしかにさっき結構な数のモンスターを見たけど、アレは異世界のデフォルトではなかったんだ。

 

「具体的にどのモンスターを間引けばいいのか、聞き逃しましたね。全部消し去れば大丈夫かしら?」

 

「ダメよ! そんなことしたら生態系が崩れちゃうでしょ!」

 

モンスターにも生態系とかあるんだ。呼称が物騒とはいえこの世界に息づいているものだし、当然といえば当然か。

 

「あのお、もしかしてアレじゃないでしょうか……?」

 

「げ「げ「げ「げ「げ「げ「げ」

 

「うわ、絵に描いたようなゴブリンの群れ」

 

二頭身の小さい体躯に、逆三角の頭と醜悪な面構え。白目のないどす黒い目は微かに血走っており、獲物に飢えていることを訴えてくる。

それが木陰や岩陰からワラワラと、十数体くらい出てきた。

 

 

「気をつけなさい、ゴブリンは『一匹見たら二十匹はいると思え』って言われるくらい、繁殖力が強くて雑食で不潔な生物なんだから」

 

「ほぼほぼゴキブリじゃん」

 

「その名を出すんじゃありません!」

 

ヴィラが引きつった顔で言った。女神にも嫌われてるんだ、ゴキブリ。

 

「もしかして囲まれてません?」

 

「ゴ、ゴブリンは集団行動することで有名なモンスターですので……獲物を追い込んで、絶対に有利な状況を作ってから狩りに臨む臆病なところが特徴ですね」

 

「もしかして有利な状況作られそうになってる??」

 

四方八方から気配がする。この前みたいに恩を消費してヴィラに助けを求めればどうにかなるのかもしれないが、たぶん取りこぼしは出るし、下手に大きなことをしようとすると僕らの方も危ない。とはいえ僕にできることもないしな、と悩んでいれば、クリルが「おーほっほっほ!」とムカつく高笑いを上げた。

 

「愚鈍な畜生共は気づいていないようね、貴方たちも囲まれているということに!」

 

「わう!「わうわう!「ばうばう!「ばうわう!「ぐるるる!」

 

ゴブリンの包囲円よりも遠くから、無数の犬――もとい、狼の唸り声が聞こえてくる。徐々に近づいてくる足音。それに驚いてゴブリンたちが我先にと逃げ始めるが、もう遅い。

 

「かかったわね! これがアタシのスキル――『狼飼いな魔女(ウルフルィッチ)』よ!」

 

ゴブリンの背や尻に狼が牙を剥く。みるみるうちにゴブリンは数を減らしていき、後には無数の死体だけが残った。

 

「クリルお嬢様、ゴブリンの亡骸を集めてくださいっ!」

 

「えー、嫌よ。こんな汚いの」

 

「でも意外と高く売れるんですよ、ゴブリンの肝!」

 

「キモっ!?」

 

クリルは驚愕と困惑とドン引きのリアクションをとった。

メイリュの説明によると、ゴブリンは生命力が強いのでその肝は薬になったり、長寿を祈って珍味として食す地域もあるらしい。でも基本はゲテモノ扱いらしいので、少し安心した。流石にこれ食べるのがデフォルトの蛮族みたいな異世界では暮らしたくない。

 

 

 

「意外とって、ピジャ何枚くらいですか?」

 

「んー、これだけいるなら三食はお腹いっぱい食べられるんじゃないですかね?」

 

「わかりました、やります。なんなら捌きます」

 

「太郎君!?」

 

「いいですね! わたしもやります!」

 

ヴィラとクリルが引いている気がするが、背に腹は代えられない。というか現状一文無しなので、ここで稼がないと今後の生活が不安でならない。メイリュから借りたナイフで、ゴブリンを解体してみる。

先程まで動いていた肉に刃を通す感覚はなんともいえない気持ち悪さがあるが、生命を奪った以上は無駄にするわけにもいかないし、頑張ってバラす。

幸いゴブリンの肝は、どす黒い血が流れる体内の中で唯一淡い紫の発色をしている上に胸骨の隙間のわかりやすい部分にあるので、二体目辺りからはスムーズになった。

 

「や、野蛮人……!」

 

「サイコパス……!」

 

「失礼なことを言わないでください、職業差別です」

 

別に生業にしているわけではないが。

だが意外だったのは、メイリュの作業がやけに手慣れていることだった。捌き方のコツとかも丁寧に教えてくれた。

 

「メイリュさんって、もしかしてこういうことは結構やってるんですか……?」

 

「前に働かせていただいていたところで、何度か経験があったので~」

 

「なるほど」

 

「どうでもいいけど、アンタたちシャワー浴びるまで絶対に近づかないでね」

 

「気持ち悪いので先に帰ってもいいですか?」

 

二人の、ゴミを見るような視線が突き刺さる。汚れ仕事を引き受けた結果、ちゃんと嫌われそうになっている。さっさと終わらせて、シャワーを浴びて、そしてピジャを食べよう。僕はそう誓った。

 

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