異世界に転移させられたので、いろんな人(外)に恩を売って生きていく 作:おれは
「ふう、ようやくサッパリした……」
異世界にもシャワーがあってよかった、と心の底から感謝しながら髪をタオルで拭く。結構念入りに洗ったので、これでゴブリンの臭いは取れたはずだ。取れてなかったら泣く。
「じゃあ次は私が行ってくるから! 絶対に覗かないでよね!!」
「はいはい」
部屋に戻ると、入れ違いでクリルが出ていく。本当はレディファーストとして先に譲りたかったのだけれど、「その状態で部屋に居座るな!!!」と怒鳴られたため、素直に入った。自分でも気にしていた部分なので。
メイリュに関しては、わざわざ別の部屋のシャワールームを借りたらしい。追加料金まで払って。
「それなら最初から別部屋取ればよかったなあ……」
「本当です。何故この私が人の子らに混じって寝なければならぬのか……」
「いや、僕は男女同室なことに意義を申してるだけですよ?」
「半径五メートル以内に入らないでもらえるかしら、ケダモノ」
「思い出したように拒むな」
──無事ゴブリンを討伐し、ピジャ屋さんに報告をして質屋で換金まで済ませたので、僕たちはひとまず宿に入った。
そこそこお金が手に入ったとはいえ、今後の動きやこれ以降もこうして宿屋で泊まることを考えると、その度二部屋取るのは非効率である、という結論に至り、諦めて相部屋を取ったのだ。相部屋の方が数割安い。
「はー、サッパリしました~」
少し湯気を漂わせながら、メイリュが部屋に戻ってきた。────先程と同じ、鎧姿で。
「……視線が厭らしいですね」
「なんてことを言うんですか、僕には何も疚しい気持ちなどありません」
ヴィラの言葉にしっかり否定を入れる。別に風呂上がりの女の子の濡れ髪が見られるとかそんなことは考えていなかったが、風呂上がりですら鎧だとは思わなかった。
「あの、もしかして寝るときも……?」
「ええ、そうですが……」
「……それは普段から?」
「え、ええ。そうですが……?」
何を当たり前のことを、といった雰囲気でメイリュは言った。
男と同じ部屋で寝るわけだから、当然の対策としてそうしている──とかだったら、出会って間もないから致し方ないこととはいえ、少し傷つくところだった。僕だけ別部屋を取るくらいに。
「チッ」
それを願っていたであろう邪神が舌打ちをした。舌打ちして、入口側の端のベッドにダイブした。
「私はここで寝ますから、貴方は絶対に逆端で寝なさいね」
「最初からそのつもりだったけど、言われると癪になるな」
言われた通り、壁側の端のベッドに座る。スプリングも枕の硬さも、家のソレに近くて少しだけ安心した。
「……はあ」
「?」
同時に思わず漏れた溜息に、メイリュが首を傾げたが、丁度部屋に戻ってきたクリルの声で誤魔化された。
「サッパリしたわ!」
「丁度いいところに帰ってきましたね。貴女、そこの電気を消してください。私はもう、眠いので休みます」
「このアタシを顎で使おうとはいい度胸ね……!」
「それから、そこの貴女。騎士として、ちゃんとこの部屋の秩序を守りなさいね。あのケダモノがいつ本性を表すとも限らないのだから」
「はわ、騎士じゃなくてただの従者です〜」
「なら尚のことよ。慰みものになって注意を逸らしなさい」
「ま、まさかアンタ……恩とやらを使ってアタシにもいかがわしいことを!?」
「しないしない」
めんどくさいので、もう消灯して横になった。「夜這いに来るなら返り討ちにしてやる……!」と息巻く二人に背を向けて、布団を被った。