異世界に転移させられたので、いろんな人(外)に恩を売って生きていく   作:おれは

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八恩目『血も滴るいい鮮度』

「……で、またここに戻ると」

 

 鬱屈と生い茂った木々を見上げ、溜息を吐く。転移してから今日までの短い二日間の間で、この『ジハマリの森』に来るのは何度目だろうか。

 

「しょうがないじゃない。ジハマリの森はこの地方一帯に広がってて、何処に行くにも避けては通れないんだから」

 

 先程見た地図によると、最初に落ちてきたのはジハマリの森の西部、初日泊まったのはその東にあるビギン村、で今日来たのがその東のセントルという街で、今はその北にやってきている。

 

「街間の道路くらい整備してもいいでしょうに」

 

「い、一応整備されてはいるんですよ? モンスターが嫌う香料も定期的に撒かれてますし、ある程度は安全に通れるのです」

 

「整備……」

 

 馬車が通るためかある程度均されてはいるが、それでも少しガタついているし雑草も生えている。手間を惜しんでいるかそんな余裕がないかどっちだろう。

 そう考えると、全国の道路をきちんと整備してた日本ってすごいな。

 

「そんな整備されたところからも逸れるんだけどね」

 

 クリルが順路から逸れて、より緑の濃い獣道へと向かっていく。ずんずん進む彼女について、僕たちも歩く。

 

 今日受けた依頼は、魔物の討伐。二日続けて同じような依頼だが、昨日こなした感じ、このメンバーなら(というかヴィラとクリルの二人なら)余裕そうだし、何より()()()()()()()()()()()()のでそうした。

 

「ハア、何故この私がこんなに歩かなければならないのでしょう。貴女、昨日のように馬車を出しなさいな」

 

「嫌よ。魔力使うのだって疲れるし、それに狼なんかに馬車を引かせたら目立つじゃない! あたしだって本当ならこんなところまで来たくなかったわよ!」

 

 こんな森までやってきたのは一つに、街の仕事だと目立ってしまい、いずれビジソワアス家の追っ手に捕まる可能性があるからだ。彼女の家がある街から、この辺はまだ全然遠くないらしいし。

 

「まあまあまあまあ……」

 

 一触即発といった雰囲気に割って入って宥める。が、それは怒りの矛先を変えただけに過ぎないらしく、むしろ二人から睨まれた。

 

「そもそも、貴方が四人で受けられる依頼を受注したのが悪いのですよ?」

 

「それは言えてるわね。別にバラバラだってよかったわよね!?」

 

「いや、それだと色々不安じゃないですか……」

 

 スマホがない世界だから連絡取るのは手間だし、ヴィラは一人にしたら絶対サボるし、クリルはそれこそ捕まる恐れがあるし。メイリュだけは、おどおどした雰囲気と裏腹に生活力があるっぽいのでどうにかなりそうだけど。

 

「それに……その、慣れない場所で心細いですし、折角だから、なるべく一緒に動きたいなあって……」

 

「「は?」」

 

 喧嘩してたはずの二人が綺麗にユニゾンして眉を顰めた。え、結構照れること言ったんだけどそんなに嫌? いや、昨日の今日でそれは嫌か……

 

「え、だって貴方たち、ほっといたらなんか盛大にやらかしそうじゃないですか。目ェ離せませんって」

 

「「コイツ(この人)と一緒にしないで頂戴(ください)!!!」」

 

 また綺麗にハモった。もしかして性根は近いんじゃない? 

 

「大体ね、アナタはなんでそんなに偉そうなのよ」

 

「当然、女神だからです」

 

「あ、あのぉ……」

 

「何が女神よ、どこのカルトの話?」

 

「フン、人の子ごときには認知すらされていない高位の存在なのですよ? 言葉を交わせるだけで感謝しなさい」

 

「ぷっ、大したことしてないせいで認識されてないだけじゃないの?」

 

「あのぉ!!!」

 

 君そんな大声出せたんだ、ってくらいの声量でメイリュが叫んだ。思わずそちらを見ると、メイリュがクリルの背後の方を指差していた。

 

「アギャギャギャ……」

 

 見れば、そこには謎の鳥(凍ってる)の群れの姿があった。ハゲワシみたいな見た目の鳥が、氷から翼を生やしてホバリングしてる姿は鳴き声も相まって中々意味不明だったが、放つプレッシャーは間違いなくモンスターのそれだった。昨日のゴブリンより、明らかに強い。

 

「もしかしなくてもまた囲まれてません!? 絶対お二人が騒いでたせいじゃないですか!!」

 

「「うるさい!!!」」

 

 二人が叫んだ途端、雷と炎が放射され、鳥の群れは一息に黒焦げになって倒れた。あとついでに、森の木々がたくさん倒れたし燃えた。

 

「あの程度で騒ぐんじゃないわよ!」

 

「そうです、これだから非力な人間は……ほら、恩情に感謝しなさい?」

 

「ええ……?」

 

 恩着せがましすぎて全然感謝の気持ちが湧いてこない。しかし一応僕自身が焦っていたためか、クリルの恩総量が【2000→1950】、ヴィラの恩総量が【320→300】と少しづつ減少した。たぶん、二人とも大したことをしたつもりじゃないから変動幅が低いんだろう。

 

「わあ、ちょうどターゲットだった氷食鳥(ひょうくいどり)ですね〜! 指定の体数より多く狩れてますし、しかもおふたりのおかげで調理の手間いらず!」

 

「えっ、もしかして……」

 

 メイリュは焦げた氷食鳥たちを山のように積み上げて指折り数えると、その前で徐に合掌し、そして──一匹を骨だけに変えた。

 

「うん、サクサクで美味しいです〜! 血も滴るいい鮮度ですね!」

 

「ちょ、何食べてんのよ! そんなもん吐き出しなさい!」

 

「え〜、氷食鳥は結構人気の食材なんですよぉ?」

 

 ゴブリンの解体はまだギリギリ作業として行えたが、先程まで動いていた物を躊躇いなく食べれる程の度胸は流石になかった。メイリュの(メイル)に少しだけ滴った血を見て、実はこの子が一番恐ろしいんじゃないかな、とちょっとだけ認識を改めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











皆様ありがとうございました。しばらく頑張ります。
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