絢爛豪華に咲き誇る桜の木に囲まれた駐車場に
滑り込むように入ってくる一台の黒塗りの車。
その車から降りてきた二人の軍人が話しながら海辺の方へ歩いていく。
「こんな老骨を引っ張り出すとは、よほど困ってるんじゃな」
胸にたくさんの勲章をぶら下げた白い軍服に身を包み、白い帽子を片手に抱え
にこにこと笑顔で周りの桜を眺めながら歩く、少し背の高い初老の軍人。
「…………何を言ってる。その胸の勲章が貴方をここに呼んだ」
対照的に階級章すら無い紺色の軍服に身を包み、紺色の帽子を
周りを気にすることなく真っ直ぐ正面を見ながら歩く、少し小柄な青年。
「これだけ華やかに咲いとると、ちっとばかり寄り道したくならんかの?」
「…………時間が勿体無い」
「お主は本当に感情の起伏が少ないのう。この桜を綺麗だとは思わんのか?」
「…………今、桜は必要ない」
手を桜の方に
まるで興味が無いとばかりに視線を正面から動かさない青年。
「やれやれ……興味の無い事にはまったく見向きもしないんじゃな」
老人はそう呟き……
その後は特に会話も無く、しばらく歩いて二人は重々しい扉の前に着いた。
その扉の前には数人の警備兵がおり
そのうちの一人が老人に向かって敬礼をしながら
「通行証を拝見させて頂いてもよろしいでしょうか」
青年が軍服の胸のボタンを外し、二枚の紙切れを取り出して警備兵に渡した。
警備兵は紙切れを受け取ると目の前の屯所へ紙切れを持って行き、物々しくチェックをしている。
そしてチェックが終わった紙切れを灰皿の上で燃やすとマイクで連絡を入れ、少しすると……
――――ガコン……ギィィィ
目の前にあった重そうな扉が少しずつ開いていき
「お待たせ致しました。どうぞ中へお入りください」
屯所の中に居る警備兵まで全員が、老人に敬礼をしている。
「ワシはこういう、かたっくるしいのは苦手なんじゃがのう」
「…………いい加減、慣れるべき」
青年は警備兵に向かって軽く敬礼をすると中へ入っていく。
「慣れる前にお迎えが来るわい」
老人は軽く手を上げて周りの警備兵に挨拶し、青年の後についていった。
☆ ☆ ☆
私と提督と仄かな恋心
―― 呉海軍工廠 ――
私は今、乾ドックの中に居ます。
『
今は身体がまったく動かせません。
そして、ここは陽がまったく差し込まず……
こんな暗い所に閉じ込められていると気が滅入っちゃいますね。
早く外で、思いっきり身体を動かしてみたいなぁ。
そうそう、自己紹介がまだでしたね。私の名前は……
おかしな話ですが、私はまだ自分の名前を知りません。
それに身体を自分で思うように動かせません。
何かに縛り付けられている訳でもないのに……
☆ ☆ ☆
私の周りや私の中で、たくさんの人たちが忙しそうに働いていましたが
十日ほど前から少しずつ人が減ってきた気がします。
その頃から私の周辺では作業着を着た人たちに混じって
軍服姿の人も見るようになってきました。
そして今日――
私の周りにはまだ人は居ますが、ついに私の中で作業をする人が居なくなり
代わりに白の軍服を着たお年を召した方と
紺の軍服を着た若い方の二人が私の中へ入ってきました。
二人は私の中を何か確認するように辺りを見ながらゆっくりと歩いています。
少しずつ上の方へ上がってきて……ついに第一艦橋へ来ました。
二人は、他に誰も居ないか確認するように周りを見ています。
そして確認し終えると、お年を召した方が
「ついに完成したんじゃな……あの大和を超える世界最大最新鋭の戦艦が」
「…………(コクコク)」
二人は艦橋から、風景など何も無い薄暗いだけの外を見ながら
「正直、ワシは今更こんな物を造っても手遅れだと思うのじゃがな」
「…………そういう事は言わない方が良い。誰が聞いているか判らない」
「大丈夫じゃろう。今、ここにはワシとお主……そしてこいつしか居らん」
私の艦橋の中の計器を撫でながら話をする御老人。
「…………俺の所属を忘れるほど
「こんな事まで報告はせんじゃろ。長く生きてると人を見る目くらい育つわい」
「…………(プイッ)」
若い人はそっぽを向いてしまいましたが……少し嬉しそうです。
「これからは機動力を生かした戦術でないと……例えば航空機のような足の速い兵器じゃな」
また外を見ながら話を続ける御老人。
「このような大艦巨砲主義はワシと同じく……もはや過去の遺物じゃ」
「…………それでも必要があるから、この艦は造られ、貴方は呼ばれた」
「必要とされるのは嬉しいのじゃが……ワシよりも坂本の方が向いておるんじゃないのかのう」
「…………坂本中将は別の任務についている」
「さすが特務省から派遣されるだけの事はあるのう。ここに居ない者の動向まで把握しておるとは」
「…………俺の最大の武器は情報」
「そういう人間だからワシの出撃についてくるのじゃろうが……ところでな」
若い人が首を傾げながら御老人を見ていると……
「ここだけの話じゃが……ワシは体感巨乳主義での。お主も巨乳は好きじゃろ?」
御老人は悪戯っぽく笑って身体をくねらせています。
「こういう発言をしたら少しは笑ってくれないと……恥ずかしいじゃろうが」
そして若い人に向かって……
「お主も少しは笑う努力をしたらどうじゃ……鼻血なんか出す暇があったらな」
若い人は顔を赤くしながら鼻を押さえて、必死に鼻血を止めようとしていました。
☆ ☆ ☆
―― 5日後 ――
私の進水式が執り行われて命名され、ようやく自分の名前が判りました。
――――『瑞希』と。
正式名称は『軍艦 姫路型一番艦 瑞希』と言うそうです。
私の進水式は極秘扱いにされていたそうで政府と軍関係の高官の方100人と
進水作業をしてくれる人1000人くらいだけだったそうです。少し寂しいです。
そして私は艦隊の旗艦として、ここから遥か遠く離れた海の上で戦う事になります。
私の周りに居る艦に「よろしくお願いします」と言ったら……
何人かから「よろしくね」と返事をされました。
全員が全員、『
艦橋の中では、この間の白い軍服の御老人と紺色の軍服の若い人が
「しかし……この艦を動かすだけでも4000人くらいの人間が要るんじゃな」
「(コクコク)…………一つの街くらいの人数」
御老人の呟きに若い人が頷いていました。
「ワシは、こんな男だらけの街だったら逃げ出したくなるわい」
「…………俺だって一秒でも居たくない」
「お主も好き者じゃのう……何にも興味が無いのかと思っていたんじゃがな」
顔を赤くしてそっぽを向いている若い人を、御老人は嬉しそうに笑顔で見ていました。
☆ ☆ ☆
―― 1年後 ――
今、私は……いえ、私たちはジャワ島のスラバヤ沖に居ます。
ここに来るまでに色々な事がありました。
戦争中だと言うのに御老人の周りはいつも笑顔がたくさんあり、御老人も笑顔で……
バカな事ばかりやっていた気がします。
スコールが来た時は「水の節約じゃ」と言って裸で甲板の上に出て身体を洗いだしたり……
私に目はついていないんですけど、目のやり場に困ってしまいました。
でも誰かが風邪を引いた時などは自ら厨房へ入り、おかゆなど作って食べさせてあげたり
晴れている日には若い人たちと一緒になって甲板の掃除をして
誰が一番日焼けをしたか競ったりして……その日のお風呂は大騒ぎでしたけど。
そんな御老人は見ていてとても楽しそうで本当に飽きなくて……
いつの間にか私は、彼をいつも見るようになっていました。
そして……
最初、私の仲間は五十人以上居ました。
しかし日本から離れるにしたがって一人、また一人と……
航空母艦の艦載機や、中に乗っている人間の人たちは補充されているみたいですが
私たち、艦は……補充される事なく、今は半分くらいしか残っていません。
――そんなある日
普段あまり表情の変わる事の無い若い人が少し慌てた感じで
彼に一枚の電文を渡しました。
「なんじゃ……坂本も逝ってしまったのか」
いつも楽しそうな彼が……
表情を曇らせて俯きながら固く握り締めた手を震わせているのに……
――――励ましてあげられない……何も出来ない私がすごく悔しいです。
「…………停泊中だったから艦隊を動かす事も出来ずに……まるで我々が真珠湾を攻撃した時の相手のように何も出来なかった」
「ワシらが連中の目を引きつけておいて、その隙に坂本が北の方から攻め込むつもりだったんじゃろうが……だから一年かけてワシらが南シナ海から南太平洋まで暴れておったと言うのに……」
彼がそう言うと珍しく若い人がすごく驚いた感じで
「…………何故、その事をっ!?特務省内部でも俺を含めて数名と坂本中将しか知らされていないのに」
「ワシでも判る事じゃ。だから相手にも筒抜けだったわけじゃな……すでに情報戦で負けておったとはのう」
そして彼は……少し微笑むと若い人に向かって
「もう一つ、ワシに伝えなきゃいかん事があるんじゃないかの?」
彼がそう尋ねると若い人は俯いて身体を震わせてしまいました。
しかし……何か決心した表情で
「…………はい」
彼に電文を手渡しました。
彼はその電文にサッと目を通すと若い人に向かって敬礼をして
「では……貴殿はただいまより至急日本へ戻れ」
「…………でも俺は、この艦隊の情報を逐一日本に報告する義務がっ」
若い人は彼を睨むように見ています。
……見放されたとでも思っているのでしょうか。
すると彼は若い人から窓の外に視線を移して……
「山本長官が……この戦争の見通しを聞かれた時、半年や一年は暴れてみせると言って戦争に反対していたのを思い出してな」
若い人はジッと彼の言葉に耳を傾けています。
「ワシも坂本も……山本長官さえも結局、この戦争を止める事は出来なかったんじゃ。負けるのが判っていたのにのう」
「…………それは……」
若い人は言葉を飲み込んで……何かをグッと堪えているみたいです。
「……ワシ一人だけ、のうのうとしているのが自分自身で許せないんじゃ」
彼は外を見ながら……少し肩が震えている気がします。
「そう言えば坂本には孫も居たんじゃったか……ワシにはまだ居らんというのに」
少し悔しそうに口を尖らせて彼は言葉を続けます。
「いつの日か、ワシや坂本の孫やお主の子供たちが笑って遊んでいられる日本になると良いのう」
「…………俺だけじゃなく、この艦隊にいる人間が全員戻る方法は……」
若い人はそう言うとまた俯いてしまいました。
自分の言ってる事が無理だという事に気が付いたからでしょうか。
「今は議論している暇は無いはずじゃ……乗り心地は悪いかもしれんが潜水艦しか出せないのう」
彼がそう言うと……若い人は目元を袖で拭い
「…………吉井提督。どうか御武運を」
すると彼は……若い人の頭をわしゃわしゃと掴み
「土屋少佐。お主ら、若い者に頼るしかないんじゃ。
1時間後、一隻の潜水艦が艦隊より離れると――
艦内放送にて提督本人より出撃の連絡がありました。
――敵国本土へ向けて。
☆ ☆ ☆
―― 3日後 ――
私たちが太平洋に出たところで……
『敵機来襲……敵機来襲……機数およそ300。左舷10時方向より三分後に接敵』
「おいでなすったか……お主ならどう見る?」
警報を聞くと提督は左側に向かって話しかけて……
「そう言えば、彼は戻ったんじゃったな」
ばつが悪そうに頭を掻きながら、寂しそうに呟いています。
「提督。いかが致しますか?」
「ふむ……」
あごに手を当てながら考え込んでいる提督。
「敵艦隊の位置はまだ判らんのか」
「はっ。まだ発見の報は来ておりません」
「ならば、仕方ない。対潜装備のある艦は当艦左舷側へ集結。対空防御をしつつ潜水艦に注意するんじゃ」
「はっ」
そして提督は右側を指差して
「敵艦発見次第、艦砲射撃始め。おそらく連中は右側に居るじゃろう」
「はっ」
「何故、そんな事が判るんですか?」
艦橋内に居る下士官が提督に質問をすると
「……カン、じゃ」
提督が、そう答えるとほぼ同時に
「敵艦発見……右舷3時方向、距離およそ四万」
「やはりな……敵機が通り過ぎたら右から攻めて来るぞい。左舷側は潜水艦に注意じゃ」
「はっ」
提督の読み通り……
最初に発見した艦載機が通り過ぎた後
右側から敵の艦砲射撃や艦載機による攻撃が始まり
それと時をほぼ同じくして左側からは潜水艦の魚雷攻撃が始まりました。
――――
―――
――
提督の読みは当たっていたのですが……
敵の戦力までは読み切れていなかったみたいです。
私たちの残存戦力は私を含めて艦船28隻、航空機300機あまりでした。
対する敵艦船は100隻以上、航空機に至っては2000機以上も……
艦船四倍以上、航空機七倍以上の戦力差で……数の暴力には勝てませんでした。
私の中に居た兵士は……皆さん物凄く頑張っていたのですが
私も左舷側に魚雷を15発、第一砲塔、第二砲塔と前方甲板に合わせて25発もの爆弾
艦橋基部や後方甲板に20発あまりの爆弾を受け、徐々に左に傾いていきました。
だいぶ前に総員上甲板へ出るように指示が出されて
15分ほど前に総員退去命令が出されました。
そして提督は……
――第一艦橋内
奇跡的に第一艦橋はさほど被弾していなくてほぼ無傷状態です。
……その分、他の箇所が酷くて私でもそろそろ限界が近いという事は判りますけどね。
提督は……艦橋のほぼ中央で
「すまぬ……」
提督は誰ともなく頭を下げています。
ひょっとして……私に謝ってくれているんでしょうか?
でも、謝ってもらう事なんてないのに……
ここまで一緒に来れて……
提督がやってる事を近くで見させてもらえて……
すごく楽しかったと思える時間を一緒に共有出来た事が嬉しいのに……
「戦争って奴は……加担した人間全部が負けなんじゃ」
ぽつり…ぽつり…と、提督が話し始めました。
「戦うために……戦争に勝つために造られたお主に言うのは酷かもしれんがな」
提督が床を撫でながら……
「お主は素晴らしい艦なのに……こんなところで最後を迎えさせてしまうのはワシのせいじゃな」
そんな事はありません……と、言えない私が今はすごく恨めしいです。
「一人じゃ寂しかろう……こんな老いぼれで悪いがワシが何処までも付き合ってやるぞい」
何とか……何とか、今の私の気持ちを提督に伝える事は出来ないのでしょうか。
すると提督は両手を床について頭を下げると
「もし生まれ変わってまた会う事が出来たなら……今度は誰もが笑いあえる世界を作るために力を貸して欲しい」
提督が顔を上げると……今まで泣きそうだった顔が優しく微笑んでいました。
その優しい笑顔を見た時、私の心の中で何かが弾けるような……
すごく強い想いが沸いてくるのが判ります。
「その時は……ずっとワシのそばでお主にも笑っていて欲しいんじゃ」
《……ホントウ…ニ…?》
「ああ、勿論本当じゃ。もしまた会う事が出来たなら、今度は名前で呼び合えると良いのう」
提督が嬉しそうに無邪気に話してくれています。
《テイトク…ノ…ナマエ…ハ…?》
「そう言えば艦内では名前を言ってなかったかの?」
提督は照れ隠しでしょうか……人差し指で頬を掻いています。
《……ハイ》
「そうじゃったか……最後の最後でお主と話が出来て本当に良かった」
そう言ってくれた提督の笑顔がすごく眩しく見えて……
「ワシの名は吉井……昭久じゃ」
――――提督が名前を教えてくれた瞬間。
第一砲塔と第二砲塔の間の甲板から船体が裂け始め
二つに割れた直後に大爆発が起こり……
こうして私と提督は深い……深い海の底へ……
☆ ☆ ☆
「あの……吉井君に聞きたい事があるんです」
姫路さんが頬を少し染めながら真剣な表情で尋ねてきた。
「何?」
「あの……昨日の夜なんですけど」
「うん」
姫路さんが小さく手を握って……
「誰とでも笑いあえる世界になれば良いって言ってましたよね」
「うん。そう言ったよ」
僕がそう答えると……
姫路さんは嬉しそうに指と指を絡めて手を組んで僕を見つめて
「それって……私が吉井君の傍で笑っていても良いんでしょうか?」
頬を染めて少し潤んだ瞳で僕を見上げている姫路さん。
「もちろん、姫路さんにも笑っていて欲しいんだ」
こんな可愛い顔が近くで見れるなら、いつでも大歓迎だよね。
すると……姫路さんは今にも
「やっと……やっと、逢えた」
「ふぇ?何処かで会った事あったっけ?」
僕はさっぱり記憶に無いんだけど……こんな可愛い子を忘れる訳ないだろうし。
―― 姫路さんside ――
「あのっ」
私の夢はずっと……ずっと提督と一緒に居ること。
そして……
「ん?どうしたの?」
「あの……名前で呼んでも良いでしょうか?」
「うん。ちょっと照れちゃうけどね」
明久君が頬を掻いている姿を見て……やっぱり提督だ、と確信出来ました。
提督は私との約束をちゃんと守ってくれた。
やっと……やっと、一緒に……
「ありがとうございます……あきひさ…君…」
私の夢が……艦娘として生まれ変わってやっと叶った。
提督……私たち、生まれ変わってまた逢う事が出来ましたね。
―― 明久side ――
「どういたしまして……えっと、瑞希…さん?」
女の子と名前で呼び合うなんて……やっぱり言い慣れないと恥ずかしいな。
「あのさ……僕たち、まだ知り合ったばかりだし」
「どうしたんですか?」
首を傾げながら僕を見上げている瑞希さん。
なんて言うか……小柄なせいか、何気ない仕草が小動物っぽく見えて可愛い。
「お互いの事をもう少し判りあえるまで苗字で呼んじゃダメかな?」
「ダメですよ。名前で呼び合うって約束したんですからねっ」
「ふぇっ!?そんな約束、僕いつしたのっ!?」
「ふふっ……ずっと昔です」
姫路さんは嬉しそうに口に指を当ててそう答えた。
「うーん……僕はさっぱり覚えが無いんだけどなぁ」
そもそも約束どころか、瑞希さんに会った記憶すら無いのに……
僕が首を傾げていると
「そんな昔の事はどうでも良いじゃないですか。それより……」
そう言うと瑞希さんは……僕に抱きついてきた。
「ふふっ。一度、こうやってみたかったんですっ」
――――ええっ!?なんだ、このおいしい展開はっ!?
僕が嬉しいサプライズにドキドキしていると……
――ガチャ
いきなり執務室のドアが開いてブサイクな顔が……
「おや?お楽しみのところ悪かったな」
雄二がニヤニヤしながら僕と瑞希さんを見ている。
こっ、これは誤解なんだ……何が誤解なのか僕にも判らないけど。
とりあえず弁解しなきゃ。
「ちっ、違うよ。何か誤解してるだろうけど、これは……」
僕が何を言おうか考えていると……
「そっ、そうですっ!……わっ、私が気分悪くなっちゃって」
「そうそう……」
助かった……瑞希さんが何か良い案があるみたいだ。
それに乗っかろう。
「私が明久君を押し倒すの我慢してたら気分が悪くなっちゃって……」
「そうそう……って!みっ、瑞希さんっ。何言ってるのっ!?」
余計、この状況が悪化した気がする。
「まぁお前らが絆を深めているのを邪魔するつもりは無いけどな」
雄二がニヒヒと気持ち悪い顔をさらに気持ち悪くさせている。
僕が拳を握り締めていると……
「それで用件はだな。さっき鎮守府全体への緊急連絡が入ったんだ」
今の僕と瑞希さんの状況を雄二に上手く説明する以上に
大変な事ってあるのだろうか?