【リハビリ中】僕の個性は【紳士ハンド】   作:『代行さん』

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@夏休み-9-【】

@夏休み

背を向ける

僕は

 

主人公にならない

 

@13:10

「日本はおめでたいな?」

日本語ではない言語を介して話している

先ほどから船の進路が日本とは真逆になっている点を見ると法律の外に逃げる算段のようである。

 

「もう日本から出たよな?」

「こいつら処分しなくていいのか?」

「いや、人質になる。殺すことは許さん」

 

照りつける太陽の下、シージャック発生時に甲板に集められた。

赤ん坊や老人関係なしに連れてきている様子である。

泣き声が上がり始めれば犯人が何を仕出かすかわかったものじゃない空気。

 

「〔赤ん坊のグズる声〕」

【個性】

睡眠活性化

細胞の休息

文字通り眠気を対象に与える個性

ストレス軽減、疲労回復etc

射程距離がないのがネック

 

赤ん坊がウトウトと眠りにつく

「(これでひとまずは…)」

「Hey!」

 

強烈な殴打により視界が歪む

回る視界で殴ってきた本人を見る

 

叫び声が上がり少しばかり現場が騒々しくなる

「さっきからコソコソしてると思ったら?お前ヒーローか?」

「ヒーローではない、個性を使うが、決してヒーローではない」

 

「…お前の個性は?」

「【細胞作用β】」

 

銃口が頭に突きつけられる

「すまない、真幌…活真…」

覚悟を決め目を閉じる

 

〔何かを弾く音〕

「グァ!」

「ナァ!?」

「いてぇ」

 

…?

〔大丈夫ですか?〕

音のブレた声で話しかけられる

聞き取れない程ではないが不思議な声色だ

 

目を開けて見た先には…

「あなたは?」

 

@13:10

小型ドローンによる中継

お父さんが乗っている船が事故にあったと聞かされた

"しーじゃっく"って言うらしい

「お父さん…」

「お姉ちゃん」

「!大丈夫よ、ヒーローが助けに行ってくれてるもん」

泣きたい気持ちをグッと堪え弟を慰める

 

しかし、非情にも映像が映し出したのは

「お父さん!」

銃を突きつけられたお父さんの姿

目を閉じて祈ってる!

 

「活真!」

幻覚と抱きつきで画面から目を離させる

ジタバタともがく、大丈夫、大丈夫

 

〔何かを弾く音〕

〔複数の叫び声〕

体がビクッと跳ねる

嫌だ!でも

 

確認しないと

テレビの映像には…

 

@13:10

「あいつは…」

いつぞや道で見かけた

 

@13:11

(え?何これ??)

テレビに映し出されたニヤけ面に

視聴率が5→13%に跳ね上がった

 

@13:11

「財布の中身は…」

100円玉が複数

シージャック犯は…目視で5名

 

「こいつ」

右手の大振り

頭蓋の右側面、耳の辺りを目掛け飛んでくる

屈んで避ける

 

体制が崩れたところを足払いで完全に転けさせる

 

「相手は一人だやれ!」

後方から構えられる黒く長い銃身の銃

 

型なんて関係ない

【フィンガースナップ】

 

構えていた銃が消し飛び慌てふためくシージャック犯Bに足裏の手により浮遊している体が突撃する。

「舐めんな!!」

知らない言語で吠えられる

 

眉間に放たれる拳

が空をキる。

 

寸手で止まった体のせいで目測を誤った

拳と持ち主は体制を崩す

 

そこをニュートラルが拳を掴んで投げ飛ばす

哀れシージャックは水面に叩きつけられる。

 

@13:11:30

「…」

一人いない

 

「カーリーごめん、頼めるかな?」

【黒キ人】が鼠の形をとると

素早く船内へと向かった

「…後2人」

 

@13:12

「くそ!くそ!!」

簡単な仕事だと思っていたのにこの始末だ!

何だあのクソキモい見た目のニヤけ面

今でも思い出しちまう

 

邪魔だこんなモノ!ほっぽり出した拳銃が鈍い音を立てて転がる個性社会で前時代の武器なんか役に立つか

 

「個性さえありゃこんなことには」

いつだってそうだ

個性ありきなのに個性が弱いなんて最悪だ

 

「積荷にある"個性の種"さえありゃ」

人生逆転、俺は勝ち舟に乗れる

こんな肥溜めから抜け出せんだよ!

 

走る度に船内に響き渡るブーツの音

ゴムの弾みと金属の反響音が通路を走る

 

鼠が頭上を走る音がする

齧歯類が伸びた爪を擦る音

「お偉いさんも乗るってのに鼠がいんのか?」

クソ、船を何だと思ってんだ

掃除でもサボってんだろうな

上っ面だけ真面目にしやがって…

 

…金属を擦る音が増える

?やけに多いな、二、三なんて規模じゃない

と言うより

 

数が増えてやがる!

気づいた時にはもう遅く

振り返る余裕すらなく

 

「ガァァァア」

シージャック犯Eは鼠に揉まれ身動きが取れなくなった。

 

@13:12

攻防戦はなお続いている

ナイフによる近接と拳銃による2面の攻め

【フィンガースナップ】を使いたいところだけれど

 

「(人質に当たりそう)」

精度が上がってはいるものの逸れることに気が行ってしまって使うに使えない状況にあった。

 

〔叫び声〕

「アイク!?」

ナイフの動きが一瞬止まる

 

「しまっ」

身体を左右に揺らし相手の四肢に瞬時に触れる

 

触れた先から黒い手を残す

四肢にそれぞれ残った手が組み伏せる

身動きの取れないシージャック犯Cは抵抗を辞めた

 

最後は

構えた銃を僕に向けている

銃口は僕に向き、引き金に手をかけてはいる

 

「…」

甲板に置いた銃を蹴飛ばしたシージャック犯D

「降伏だ、畜生」

 

両手を上げた状態で言われた言葉

恐らく観念したのだろうか

 

おまけに両膝をついたのを見て警戒を解く

ゆっくりと歩き出しシージャック犯Dに触れようとしたその時

 

「…」

船が急加速を行う

 

崩れた体制

立ち上がったシージャック犯D

 

背中が甲板に勢いよくぶつけられ

瞬間走る

痺れ

 

スタン…ガン?

 

「ヒーローってのはこれだからいけねぇ」

個性持ちだったのか…油断してた

帯電しているシージャック犯D

 

視界が狭まる

気絶したら…不味い

 

@13:13

テレビ中継が止まっている

「遅いわね出久…」

まさか巻き込まれたのでは?

 

そう考えるが沖合のことである問題はない

そう自分に言い聞かせる

 

@13:13

「危なかった」

間一髪だった

冷や汗が止まんねえ

 

【放電】

生体電流を体外へと放ち、電気を纏う

使い過ぎると気絶、心肺停止などの副反応が発生する

安静にすることで体調は元に戻る

 

奥の手だったが死にはしないだろう

逃げる準備をしなければ

 

「おい、動ける奴らは荷物をまとめろ、物は最小限でいい」

「でもアイクにマルカス、レイが」

「諦めろ」

これ以上ここに居たら不味い

俺の勘がそう言っている

 

クソ、足に力が入んねぇ

「お前らだけでも逃げ…」

 

嘘だろ…このニヤけ面

もう立ってやが…

 

瞬間、二人して意識を手放してしまう。

それぞれ顎にくらった的確な小パンチ

傷にしてあざの一つができたらいい程度

 

しかし、脳に当たった衝撃により

膝から崩れ落ちるとそのままの勢いで甲板に側頭部を打ち付けた

「くそ、ついてねぇ」

 

夢に出てきそうなニヤけ面が見下ろしてやがる

 

@13:14

…これが無名であるのかは定かではないが

ヒーローとしての情報を見たことがない

もちろんヴィランの情報でも

 

佇む姿は中学生くらいか?

鍛えているのか?

膝までのズボン

そこから見える下腿三頭筋のしなやかさが目立つ

鍛えて間もないのか太くはないが均等な鍛え方だ

「き、きみ、大丈夫かい?」

 

思わず声をかけてしまった

いや、しかし電気を受けたにも関わらず無傷なわけがない

敵の鎮圧が済んでいるなら休ませなければ

 

返答もなく見つめられる?

目玉、視覚を介する器官が見当たらず緊張する

 

間も無くして歩いてこちらに近づいてくると

その黒い人は両手を上げる

 

「?」

拍手をし…た?

 

急激な眠気に襲われている

抗おうにも緊張の糸はすでに解けている

抗う術がない…

 

「せめて、名前だけでも」

ニヤリと笑っている表情、その口の前で人差し指を構える

それを最後に眠りに落ちた

 

@13:15

[状況終了]

宿主はバレたくないと考えていた

 

次にやるべきことは

 

財布から100円玉を取り出し

弾く

空中を漂っていた小型ドローンを弾き飛ばし

続け様に2枚

同じく小型ドローンを弾き海に落下させる

 

[映像記録による身元確認は不可能]

足元に帰ってきた鼠

 

抱えている人間を甲板に下ろすと腕の形に戻る

所定の位置に着くと次の命令を待つスタンバイモードに移行する

 

@13:15:30.02

【】on

[記憶処理による身元特定の危険性の排除を要請]

[棄却、当作戦において人質への過度な干渉は宿主が望まない]

[提案、この場からの即時撤退]

[検討、追記個性に関する情報の収集]

[…容認、当該データは【放電】の右内ポケット]

[回収後、即時撤退]

【】off

@13:15:30.05

 

@13:50

… … …

「あ!」

辺りを見渡す

誰もいない

 

僕は砂浜に倒れ込んでいた

夢だったのか?

頭を掻く

 

やけにリアルな夢だった

「そうだよな、船に乗り込もうなんて考えるわけないよ」

乾いた笑いで力が抜ける

その頭上をヘリが通ると辺りの砂が少し揺れて収まった。

 

「ちゃんと動けてたかな?」

夢の中だったとしても動きの無駄を思い出す。

もう少し精度を上げて行きたい…

 

銃への対応

体術の練度

人質の安否は特に

〔ブツブツ、ブツブツ〕

無意識に手を眺めながら集中状態に入ってしまう。

 

この時、落とした小型ドローンが最後に映し出していた

僕の変身した姿

ネット上では

【ニヤけ面】【スマイルヒーロー】【ヴィランっぼいヒーロー】

 

と言う名で広まった

そんなこと知る由もない僕はニュートラルに連れられ帰路へと着いた

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