@夏休み
…
@6:00
紅茶に口をつける
口と鼻に当たるりんごの芳醇な味わい
後から来る酸味が口の中をスッキリさせ
眠気も同時に飛ばしてくれる
足元には白い猫が毛繕いをしている
自販機の一件以来
検証した結果
この個性は特定のモノ、所作により大きく影響を受けるようである
以前自販機で買ったロイヤルクリームティー
食事の時の所作
贅沢品を使う
上品に振る舞う
そうすることでデメリットを最小限に済ませられる
しかしこれにもメリットだけがあるわけではない
@AnotherDay
「ニュートラルが変身できなくなってる…」
冷や汗をかく、個性の退化?
肩の接続部に当たる部分を上げて落とす【黒キ人】
【フィンガースナップ】は使える
財布を試しに取ってもらった
ポケットから掌に移動したから問題なし
心なしか動きもゆっくりである
どうしたものか…
『僕の個性、研究書No2』
を開く
そこに書き込まれた
『ニュートラル状態では生物を模って活動可能と書かれている』
それにボールペンで2度横線を書き加える
「はぁ〜」
ため息が出る
このため息は二つの意味で出た
もう一つは出費によるモノである
水分を必要とする個性である以上飲み物が必要になる
海岸近くの自動販売機の中身はほとんど空になっている
ロイヤルクリームティーが今日売り切れになった
少々軽くなってしまった財布を眺める
「バイト…しなきゃな」
お小遣いもそうだが
有限であることを実感する
そうなると個性把握の時間が少なくなる
しかし、元がなければ…
くせっ毛を雑に掻く
その日に「バイト」は引っ越し業者の日払いについた
帰る途中に困っていた所に声をかけ即採用になった
相変わらずニュートラルの作業の効率は凄まじい
「相変わらずすごいねぇ君」
軽い猫背に帽子の影から覗く黄金色の瞳
長い数本の髭が特徴的な人
「にゃんパイと呼んでくれぇ」
と名乗った【ネコ科】の個性の先輩従業員が声を掛けてくる
「凄いですよね」
「?君のことでなぁ」
「はえ?」
思っていたことと違う返答に間抜けな声が出た
「僕…ですか?」
「たぁ〜しかに君の個性もすごぉいけど」
指を指した先
僕が抱えている段ボール
「それ持ち上げようとしたやつ腰をいわしたんよぉ」
自覚はないけどかなり成長したように感じられる
「腕力任せでないところがなおいいねぇ」
叩かれた背中に肉球の感触が伝わる
「助かったよぉ」
招き猫の真似をして感謝を表すにゃんパイさん
ニマッと笑うと一層ネコの様に見える
「まだまだ暑い日が続くからねぇ」
経口補水液を手渡すと同時に【黒キ人】には茶封筒を手渡している
「また頼むよ海岸の掃除屋さん」
!
「知ってたんですか?」
「いつも黒い子を引き連れてたらねぇ、いやでも分かるよ」
〔にゃはは〕と笑うとより猫だ
…もうこんな時間か
あの後三件を手伝い帰路についている状態である
「お金は問題…?」
量が少し多い
そういえばまたって言ってたし
「果てしなくネコな人だった」
〔にゃ〜ん〕
猫の声何気なしに見る
…
目を閉じて毛繕いをしている
純白の毛並み
ピンク色の舌が際立つ
しゃがんで撫でようとするが何か違和感を感じる
柔らかい毛並みが手のひらを流れる
〔みぃ〕と鳴くと首を擦り付けてくる
…
「ん・-・」
目を開けた猫は一つ目だった
体が固まる
個性…かな?
最初こそ驚いたものの仕草により絆される
違和感が解けた
「カーリーが居ない!!」
引越しを手伝っていたときはいた
まさか迷った?
いや、攫われた?
「カーリー!!!」
〔なぉ〜ん〕
再び固まる体
…あれ?
「カーリー?」
〔なぉ〜ん〕
振り返り足元を見る
足首に体を擦り付け見上げる大きな瞳
はは、ははは、何だ…いるじゃないか
溜まっていた息が通る。はは
「この際カーリーがレーザーを出しても驚かないよ」
撫でると頭を寄せてくる
…自分で言ってて怖くなってきた
「…できないよね?」
〔ミィ〕
「ミイじゃない」
〔ミィ〕
「でも何で今になって?」
歩き出しながら考える
…いや、ニュートラルがこんな状況だし深くは考えられないな
@帰宅
「ただいま」
「お帰り、出久」
意外にも母さんは【黒キ人】の猫状態には驚かなかった
そればかりか
「個性の成長はよくあることみたいだから、手を洗ってきてね」
で反応はなかったと言っていい
僕は十分驚き倒したのに
部屋に戻り荷物を机に立てかけ、ベッドに横たわる
「何か色々と疲れた」
太腿あたりに重みを感じ視線を落とす
猫が空き缶を咥えていた
「あ、そうだ。不燃物の日だった」
空き缶を受け取ると台所にあるゴミを集め外に向かった
肉球から爪へと地面に接触する音が近くで聞こえる
いつのまにかそばに居たニュートラル
「はは、いつの間に」
袋を持ち上げゴミ捨て場に置く
ビルの出入り口
そこから少し離れたところにある共同ゴミ置き場
ゴミを出し終え伸びをする
すれ違う人に会釈をしながら少し寄り道をする
街灯が等間隔で並ぶ道
自転車が追い越す中ゆっくりと歩き続ける
等間隔を潰す自動販売機の光に目が止まる
「ラインナップが変わってる」
今まで気にも留めていなかった自動販売機
個性が発現してからというモノ良く確認するようになった
ロイヤルクリームティーが追加されている
財布の中から100円玉硬貨2枚を取り出した時
ふと、気がつく
「カーリー今変身できる?」
猫がその場でくるくると回り飛び上がる
空中で身を翻した直後
丸状になっていた形から
手が伸びてくる
いつもの見慣れた姿
違うとしたら暗闇に映る白色という点
「それじゃあ」
自動販売機が鳴る
〔…〕
【黒キ人】
横線で消した欄から矢印を伸ばす
『形は紅茶を飲むことで形が固定化されてしまう』
注意:無理やり変身はできるけれどかなり喉が渇く
@15:00
「お疲れ様ぁ」
「お疲れ様です」
手招きするにゃんパイさんに近づく
茶封筒を受け取ると帰路についた
@17:00
シャワーを浴びている途中で鏡を見る
少し膨らんだ筋肉を見て少しにやけてしまう
少しポーズを取ってみる
…オールマイトと比べればさして強そうには見えない
それでも機能としては問題はない
蛇口を捻りお湯を止め上がった
@18:00
広げた教科書にノートの数々
夏休みの終盤追い込みを掛ける
睡眠時間を考え早めに切り上げる予定
@19:00
「少し休憩」
腕に疲れはないものの精神的に疲れた
扉を開けると
『後で食べてね、食器は外に置いておいていいから』
書き置きとおにぎり、保温ボトルに入った味噌汁が置いてあった。
「ありがとう、母さん」
@19:45
僕以外のページをめぐる音に気がつく
振り返ると目と腕が二本が浮いていた
【黒キ人】かとノートに向き直…る
?
二度見
目、腕、腕
??
「カーリー?」
目がこっちを見るジト目でどこか愛想が悪い印象を受ける
そんなことは重要じゃない
「増えてる?」
「…」
明らかに目を逸らした
また、知らない間に成長している
「別に怒ってるわけじゃないんだよ、でも少し驚いちゃって」
微笑みを返す
「ところでそれは?」
読んでいる本が気になり指を指し聞くと
本を持ち上げ両手で丁寧に閉じると手渡してくる
『個性に関する考え方』
個性開発機関が出版している最初の本だ
『個性因子と反個性因子の仮説』
はこれの2巻後の物になる
「何か気になることでも?」
閉じていたページを開き、指を指した文言
『個性そのものに意志があるなら』
次に目の方を指す
『個性が持ち主を裏切ることもあると考えられる』
@22:00
就寝
【黒キ人】が大型犬を模って布団に乗ってくる
「おやすみカーリー」