@2月 5:00
「出久…」
「大丈夫だよ母さん」
靴の踵に指を入れつま先を数回、床に落とす
ドアノブを開くと少しばかり荒れた天気が広がっている
広がった雲の所々が黒く色づき、鼻にあたる独特な匂いが何とも言えない感覚を残す
少しばかり時間をおこうか迷う
【黒キ人】が傘を持って来たのを見て
…まぁ、いいか
ビニール傘を持って家を出る
「いってらっしゃい出久」
手を大きく振る母さん
階段に差し掛かった後
一度だけ手を振り
階段を降りていった
睡眠充分、水分補給は十分
勉強はそこそこ、【黒キ人】は相変わらず
できることは色々試した
後は
お守りを手で包み、瞼を閉じる
深く、一度だけ、呼吸をする
「よし」
コンクリートを蹴る音が鮮明に思い出せる
@入試当日-入校
見上げた建物はいつか見た憧れの高校
正面に設けられたオールマイト像に拝む人
英単語帳を広げて暗記に勤しむ人
「ワクワクするな」
足取りが軽くなるなか、前方で転びそうになる人
危ない!
持っていた傘をその場に置いていく
走り出した勢いそのままに
黒い手を飛ばす
それと同時にその人に触れる少女の姿
あれ?浮いてる
「危なかったね。ごめん勝手に個性使って、転んだら縁起悪いもんね」
笑顔が明るい少女が支えているのを確認すると
走って駆け寄り、黒い手を元に戻す
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ありがとう…ございます」
頭を下げる人
声色から女性
ぼさぼさながらまとめられた髪
笑顔が少しばかり引き攣り気味で不安になる
「体調大丈夫ですか?」
頭をぶんぶんと上下させると我慢の限界とばかりに走っていってしまう。唖然とする中
「そこの女生徒!!」
それと入れ替わるように機敏に駆け寄ってくる人
「不必要に個性を使っては…」
「わ、私は」
メガネをかけた長身の少年が個性を使った少女を糾弾しようとする
「誰だね君は…」
「僕は緑谷って言います。彼女は転びそうになった人を助ける為に使っただけなんだ」
両腕を消極的に広げながら割って入る
メガネの少年はやや考え事をすると
頭を深々と少女に下げ、詫びと訂正をする
「それはすまなかった。不必要と言ったのは訂正しよう。しかし、個性を使ってしまうのはルールに反してしまう…」
上げた手を上下に動かしながら説教を説く少年
それを苦笑いで聞き続ける少女
ルールに厳格
出が良いことを感じさせる
そんな性格だった
@雄英-更衣室
中学校の時に使っていた薄水色のジャージを取り出し腕を通す
ややキツめであったが問題なく手を通せた
腕を通す際に捲れたシャツから見えた肩
肩に絡みついたような黒い線の数々
それが円を基調とした幾何学模様を作り出していた
「これ場合よっては刺青になるのかな?」
入学に対しての一抹の不安を覚えつつジャージのファスナーを首元まで上げた
@雄英-大ホール
広い、とてつもなく広い
受験生を座らせても余裕のある席数
高さを調節、迫り出しの調整ができる機能から個性に合わせたデザインが窺い知れる。
さすが雄英
それぞれの運動着に身を包んだ受験生
明かりが消えたと同時にライトアップ
辺りが白煙に包まれている
身構えたけれど水蒸気由来のもので安心する
舞台の床、その中心が開くと下から黄色の髪が伸びてくる
〜
「hello every body 今日は俺のライヴにようこそsay hey」
「イェー…い」
「yo.u.ko.s…o」
数人の掛け声が
ホールに虚しく響く
その中の一人である僕は何とも言えない気持ちになる
「こいつはシヴィな受験生のリスナー!」
ボイスヒーローのプレゼントマイク
メディアへの積極的な顔出し、レギュラー番組持ち
派手な格好、黒色に発光線を取り入れたスーツにサングラス、派手ながらシンプルな個性
二つを両立させている上に学校の教員も勤めているとは
「実技の概要をサクッとプレゼンするぜ!!are you ready?」
登場したプレゼントマイクが今年の受験についての情報を開示する
『仮想ヴィランによるポイント争奪戦』
〜
模擬市街地演習での十分間の戦闘
持ち込み可能
各ブロックにて行う
「演習場には3種多数配置してあり、それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある」
入試解説のプリントには5つのシルエットが描かれている
確かに3種と言っていた点から何かあるのかもしれない
「質問よろしいですか?」
響き渡るはっきりハキハキとした発声と丁寧口調に何処か聞き覚えを感じる。
配置された6つ
それぞれを
攻略対象
保護対象
妨害と説明された
「保護対象は回収すれば1点、妨害の2体はいずれもいわばお邪魔虫さ、1体は所狭しと大暴れしているギミックだ、訳あって姿を出せないってだけだぜ」
「まんまゲームみたいな話だぜこりゃ?」
「ありがとうございます。失礼しました」
「ナイスなお便りサンキューな」
「さぁ各会場に移動した。最後に」
かの英雄、ナポレオン・ボナパルトはこう言った!
「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」
と
「
@市街地演習場
「ひっろ…」
扉が開け放たれておりそこから覗く景色の情報
居住区を模した敷地、ドームとは比べ物にならない敷地面積
道の遥か先が見えない程広い、そしてそれを取り囲む壁
「…!?」
【黒キ人】が扉の中に入ってしまった
「かー…」
「君は何だ」
扉の中に入っていった【黒キ人】を追って敷地内に入ろうとした僕の前にメガネをかけた長身の少年が割って入る
「いや僕は」
「妨害目的で受験しているのか」
「そんな訳ないだろ」
勝手な思い込みに少しばかり感情的になる
「何だ何だ?喧嘩か?」
周りの視線が僕らに集まる
その時スピーカーのノイズ音
〜
「何突っ立ってんだ?どうした?実戦じゃ、よ〜いスタートの合図なんてねぇんだよ!!賽は投げられてんぞ!?」
〜
嘘だろ!?
市街地演習場の開け放たれてた扉へと参加者全員が走り出す
反応の速さから出遅れた者はまず受からないだろう
機動力のある個性持ちがぐんぐん前へと進み出す
しかし
走り出した殆どの者が違和感を感じ速度を緩めるだろう