【リハビリ中】僕の個性は【紳士ハンド】   作:『代行さん』

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@夏休み-1

@転落直後

粘度の高い液体の中にいる気分だ

四肢が動かない

目が見えない

声が出せない

 

耳が音を拾う

肌の感覚は徐々に薄れている…

最後は一人なのか…

 

鮮明になる感覚

目に入る光

喉の鉄の味

耳に当たる水音

 

「ッハァ〜!」

不意に通った気道で呼吸をする

鼻をハンカチでかむ

 

血の塊でハンカチが染まる

「はぁはぁ」

 

「柵がない…」

最後に確認した身体を固定していた杭

腹部を貫き地面に刺さっていたであろう柵の破片は見る影もなかった

 

視線を落としてもそれらしい傷痕は見当たらなかった

「!!!?」

両手がない!?

 

切断、骨折による欠損?

いや、確かに鼻をかんだのは自分の手とハンカチである

冷静になって頭を掻く…

 

視線を右に向ける

肩から下はない

しかし、その付近に浮遊する黒い物体

 

腕だった。

たぶん…僕の

困惑する

 

いやいやいやいや

何で〜!?

 

緑谷出久の脳裏に浮かんだのは個性発現の文字

「本当に…個性が?」

いやいや、そんな都合のいいことがあるわけない

浮遊する手が左右に振られる

 

「思い通りに動く…」

不思議な感覚だ、自分の意志で動かせるのに

まるで自分のものじゃないような感覚

 

「取り敢えず体を持ち上げない…と!?」

盛大に尻餅をつく

腕がないので足だけで立ちあがろうとした結果体幹の崩れで尻餅をついた。

 

「他のヒーローもこんな想いをすることがあったのかな?」

脇に浮遊する両腕を差し込む、足は片膝を立てるようにし、残った方を太ももに添わせる。

 

慣れない感覚であるものの、身体は持ち上がった。

自分が寝転がっていた地面には赤色は愚か肉片すらなかった

「僕は…本当に落ちたんだよな」

 

いや、確かに落ちた

壊れた柵の一部が地面に転がってる

 

「本当に個性が…」

緊急車両のサイレン音にハッとする

…不法侵入+器物破損

個性不正届

 

一気に血の気が引く

走って逃げ出した

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

周囲を見回す。

どうやら気づかれていない

「…あっ!かば…ん」

 

飛び降りた施設に忘れたであろう鞄を思い出し振り返る

左腕が鞄を持っていた

「…自立したモノを考えてるんだろうか?」

自分の意識外の行動を自動でやった

それがどういう事か

 

今しがた飛び降りた人間の思考を緑谷出久はしていなかった

この個性の使い道それらを考えるのに夢中になっていた

〔ブツブツ〕と独り言を続ける緑谷の背中を押して運ぶ右腕

 

 

 

〔ブツブツ〕

ペシペシと右腕が緑谷の頭部を叩く

「?ってあれ!?家」

 

@緑谷宅

「ただいま」

「おかえり、いず…ず…ず」

タオルで手を拭きながら出迎えた母さんがどもる

あ…

 

「出久…それ」

「う、うん、遅咲きだけど僕も個性が…ね」

俯いて黙ってしまった

流石に苦しかったか?

 

顔を上げた母さんは

泣いていた

「よかったねぇ〜いずくぅ〜」

大粒の涙を頬に伝わせ膝を落として泣いている

「母さん…」

 

「その手、お母さんの引き寄せっぽいわ」

食卓に並んだ料理を食べる中、個性を眺める母さんが腫れた目で述べた感想に少し、涙が出そうになった。

 

@夏休み

朝のシャワーを浴びる中、気づいたこと

というより再確認したこと

バランスの取りづらさと手の万能性

両腕がない分本体である身体のバランスを取るのが難しくなった

歩くなら誤魔化せるが走るとなるとそうもいかない

 

立ち上がる際も腕があった時のような勢いに任せた立ち上がりはまず不可能と言ってよかった。

今し方それで顔面から盛大に突っ込見かけた。

体を支えてくれた両腕に感謝する。

…自分の体に感謝って何だろう?

 

〔…?〕

ん、と?

いま体を支えてるのは両腕、シャワーを扱ってる左に髪を洗ってる右?

目を開け… … …

 

「なぁ〜!」

シャンプーが染み

すかさず飛んできたシャワーで溺れる

「びばいびばい(ちかいちかい)」

 

@風呂上がり

携帯で腕を必要としない筋トレの方法

上半身だけでなく下半身も鍛えなければ…

ドライヤーの風で瞬きの回数が増える中携帯で調べ物を続ける

 

@7:00

ウォーキングから始めてみた

腰を意識した歩き方

腕があれば問題なかった歩き方は頭の揺れ具合が酷すぎてやめた。

 

そして気づいたことが二つ

 

一つ目、腕は元の位置に戻せる。

意識することで肩から生えていた状態に戻すことができる

しかし、それをした場合かなりの集中力と水分を必要とした。

喉の渇き具合が尋常じゃないほど加速して常に水を欲してしまう。

 

二つ目、腕の数は増やすことができる。

風呂場での一件以来、腕の数を増やすことができた。

実際のところ4つが限界だった、数が増えれば

それに合わせて集中力と水分を必要とした。

 

今のところ

『僕のヒーローノートvol1』

では腕についての話で埋まりそうだ。

 

@13:00

最大何キロを持てるのか実験した。

驚くことに重さに制限はなかった。

自分の部屋の家具推定60kgを軽々と持ち上げた。

ポスターなどの大切なものを省いての計測を行ったが持ち上げ続けることができていた。2:00:00の計測だったけれど震えたり、下がったりすることはなかった。

 

@16:00

母さんの買い物の手伝いをした

お米や、野菜をいくら持っても問題なかった。

腕の分の水分補給は作り出す時以外は問題ないようだ。

 

@18:00

筋力によるものではなく

【引き寄せ】による重力無視の仮説を立てた

持ち上げたモノを振り回して自分に当ててみた。

 

仮説は正しかった。

タオルは僕の横腹に当たった際に弾き飛ばされた。

 

@20:00

勉強をしていたらこんな時間になってしまった。

腕が自分の意志で動く状態と僕の意志で動く状態を

ニュートラル

マニュアルと区別してみた。

こうすることで個性への理解が深まり扱いやすくなると

個性開発機関、出版の技術書に書いてあった。

 

確かに以前より遥かに動かしやすくなった印象

普段は一組をニュートラル

もう一組をマニュアルで使っていこうと思う

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