@春
靴を整える僕の後ろで鞄を確認する二人
お母さんと【黒キ人】
ハンカチにタオル、ポケットティッシュから何から何まで中身をひっくり返す勢いで確認していた。
「あ、折り畳み傘」
お母さんが振り返り、リビングの机の上、そこにある折り畳み傘を引き寄せる。人の歩きよりやや速いほど、重さを感じているのかやや沈み気味に引き寄せられる
「これでいいね」
「ありがとうお母さん」
つま先を数回打ち付けるとドアノブをひねる
「出久!」
「どうしたのお母さん」
「カッコいいよ」
潤んだ瞳でかけられた言葉
少しばかりの照れ臭さを感じる中
「…行ってきます」
満面の笑みで扉から駆け出した
高校生活の始まり、春
@海岸
地平線から太陽が出てくる
投げ捨てられている空き缶を拾いつつ伸びをする
朝焼け
潮風が鼻を撫で、砂を運ぶ
「色々なことがあったな…」
黒い腕に集めた空き缶の袋をしまい込む
完全にしまわれたのを確認すると学校へと向かう
@雄英校内-別視点
デクの野郎、どんな手を使いやがったかしらねぇがぜってぇ裏がある
両足を机の上に乗っけ、不満を漏らす
合格の報告を学校に伝えに行った帰り
「デク、ちょっと面かせ」
「ごめん、僕急いでるから」
明らかな反抗、拒絶
「どんな汚ねえ手使えば
中学校の廊下に響かせる怒号、しかし
「君は雄英をそんなとこと考えてるんだね」
身震いすらしないデク、その上煽りを返してくる
「他行けって言ったよな?」
無視を決め込むかと思いきや
「僕は勝ち取ったんだ、僕は行くよ」
落ち着いた、いや、落ち着きすぎている口調で告げられた
宣戦布告
史上初、唯一の雄英進学者
俺の将来設計が早速ズタボロだ…
…
「反抗なんかしやがって」
思い出しても腹が立つ
「君!机に足をかけるな」
いきなり突っかかってくる奴が現れた
@雄英校内
「うわぁ」
長い廊下を通り、『1-A』を探して辿り着いたのはいいものの
まさかの2トップ
入試の時の生真面目さんとかっちゃん
入ろうか入らまいか…
悩む
「雄英の先輩方や机の作成者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」
「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明〜〜?!」
「クソエリートじゃねえか、ぶっ殺しがいがありそうだな」
「君酷いな、本当にヒーロー科志望なのか?」
初日から遅刻することなく早く来ていることから全員が真面目であることがわかるものの言葉遣い、佇まい、態度により印象がガラリと変わってしまう。
どうしようか迷う僕を尻目に
突然動く扉
「!!!?」
人3人分ある扉が開いたことに教室の視線が一点に集中する
キャスター付きとは言え重いことこの上ないためか
大きな扉には平均クラスの扉が付属されている
しかし、敢えて大きな扉を開ける酔狂者がいるとはとても
開けた張本人は
【黒キ人】だった
何やってんだよ!と反応するよりも早く近づいてくる
生真面目さんこと飯田天哉
ツカツカと近寄ってくる
「俺は私立聡明中学の…」
「自己紹介聞こえてたよ、飯田君。僕は緑谷」
@雄英-『1-A』
「あの実技試験、0Pを倒したのは君だったとは」
机に着席し、早速話題をふられる
関心のような呆れの様な口調で掛けられた言葉
「何故倒したのか参考までに聞かせてくれないか?」
何でか…
何でだろうか?
「困ってる人が居たから?」
「…」
「だがあれは試験であって…」
「困ってる人がいたら助けるのは当たり前なんじゃないかなって」
「なるほど」
飯田君は少し考え込む
窓から覗く晴天
それを眺めながら発現した日をふと思い出す
腕を眺めながら少しばかり黄昏れる
気がつくと
席に着席した自分より低い位置にいる少年が凝視してくる
「初めまして、僕は緑谷」
「オイラは峰田」
何気なしに自己紹介をする
にこやかな表情で手を差し出してきたため
握り返そうとする
「!?ダメだ緑谷君」
飯田君が気付き静止するが遅かった
何やら柔らかい感触が手のひらを包む
「…」
「またあいつ引っ掛けてやがる」
「峰田君!!悪戯に個性を使っては」
「引っかかったな!!これがオイラの…」
自慢げに話し始めようとする峰田君
周りの面々にも引っかかった者がいた様で深紫色の球体が手にくっついている
どうしようかと考えている中
ポトリと深紫色の球体が落ち、地面にくっつく
「あれ?」
「何〜!!」
【黒キ人】が何かしたのだろう
それぞれの反応を見るに取れるはずのない物であるらしい
「あの〜峰田君これいつ無くなるのかな?」
「あ〜調子がいい時は一日中くっついてる、んでいつの間に消えてる」
とてもはっきりとしない説明に不安を感じながら峰田君が席に帰っていくのを見送る
飯田君は注意をしながらそれについていく…
「え?」
これどうするの?
床にポトりとくっついたそれを眺めながら時間が過ぎていく
@8:30
備え付きの小さな扉が音をたてて開く
ふわっとした髪を弾ませ、制服に身を包んだ女子高生
…素敵な眺めだ
やがてこちら側を見てハッとする
手を振りながら近づいてくる
おそらく知り合いがいるのだろう
「モサモサ頭君!」
まっすぐ向かってくる周囲を確認しても癖っ毛なのは僕だけ…
「リカバリーガールの言ってた通r…!!」
向かってくる最中に何かに蹴躓く
「危ない!」
咄嗟に前に出ると身体の重さを両腕で支える
足元には深紫色の球体と革靴
「ありがとう」
「どう致しまして」
「緑谷…」
峰田君が
「お前は今日からオイラの敵だ」
血涙を垂れ流しながら宣戦布告を宣言してきた
@Another Day
「あ…」
入試の筆記が終わり、それぞれが帰路へと着く頃
傘の存在を忘れていたことに気がついた
「どこ行ったんだろう」
ビニール傘であるものの、現在雨が降り出したことを考えると
帰宅に必須な道具になってくる
「濡れて帰ってもよかったけど」
鞄の中身は雄英から配布された書類の数々
学内パンフレットにオールマイトの直筆サイン付きとなっては濡らすわけにはいかない。
「…」
空を眺めていたところ、視界が黒くなる
それに気がつき、振り返ると【黒キ人】が傘を手渡してきていた
「?他の人の傘を持ってきちゃダメだよ」
笑いかけながらお礼を言う
が、一向に退く気配がない
一応受け取り、傘を確認する
「…あ!」
受け取った傘は
元ビニール傘であると言うことに手元の錆を見てようやく気がつく
「これどこに?」
見たところ靴置き場には傘を置いて置けるところは見当たらなかった
教室の後ろに傘立てを確認できていたが恐らくそこにも置いてなかったと思う
【黒キ人】が手のひらを返し、口を開ける
と
空いている片手で口の中に手を突っ込む
「?どわぁ!!」
中から出てきたのは黒い物
持ち手と引き金、人の手ほどの大きさを取り出そうとする
「分かった、分かったから、ごめんしまって」
剥き出しの歯茎に数度接触したのち黒い物は口内へとしまわれた
『口に物がしまえる』
注意:容量不明、既内容物不明
入試の帰宅途中に偶然知った機能