@スタジアムへ
「?あ」
向かう最中に見知った顔が居ることに気づく
「八木先生!」
「おぉ緑谷少年」
相変わらずの骨張った表情で笑って手を振る
「今から向かうところですか?」
「そんな感じだよ」
廊下は昼の賑わいが過ぎ
ガランと落ち着きを垂れ流す
窓から差し込み日の光で暗くはないものの
どこか寂しい雰囲気を醸し出す
「そう言えば八木先生が前一緒にいた金髪の方は娘さんですか?」
「いやあの子は友人の娘さんだよ、職場見学をしたいってね」
「そうなんですね」
「それにしても緑谷少年…なかなかの活躍ぶりじゃないか」
「ありがとうございます」
他愛のない会話が続く
@スタジアムの入り口
「それじゃあ僕はこっちだから」
「お身体に気をつけて八木先生」
「ははは、ありがとう」
それぞれの方法で
神経を研ぎ澄ますもの
緊張を解きほぐすもの
いつも通りに過ごすもの
そして
「ヘイガイズare you ready?」
「yeah!」
いつの間にか満席の会場に声援が溢れ、漏れ出し
廊下へと響く
「色々やってきましたが結局これだぜ?ガチンコ勝負、頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともその場面ばっかりだ、分かるよな?」
対戦カードが開示されていない
さて、誰がくるかな?
両手で頬を軽く叩く
「リスナーから唐突なカミングアウトがあって少し出場者が変わってるが何も問題はねぇな?」
案の定、尾白君とB組1名が辞退していた
鉄哲君と宍田君がエントリーしていた…
…んと?
何だろうこれは?
トーナメントシートを見た時
ある言葉が思い出される
上を行くものには更なる受難を、雄英に在籍している以上何度も聞かされるわよPuls Ultra
「教師陣はやりたい放題だな…」
逆シード
先の騎馬戦の順位が高いほど多く対戦させられる形式が取られていた。
1回戦目からの出場…
相手は
「手加減はしないぞ緑谷」
「僕もだよ障子君」
コンクリートで作られた舞台に入り
対戦相手と顔合わせをする
口元を隠し、2メートル越えの巨体
肩関節から無数に生えた腕
「今回の対戦カードは個性だだ被り組!【複製器官】に【複製腕】複製同士での殴り合いだ!」
「ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にしたり、「降参」に準ずる言葉を言わせたら勝ちのガチンコだ!!怪我上等!こちとらリカバリーガールが待機してっから道徳と倫理は一旦捨ておけ、だが命に関わるよーなことはクソダセェ」
構えを取る相手に防御姿勢
「ヒーローは捕まえる為に拳を振るうのだ!」
障子君の個性、じっくり見せて貰おう
「レディー!ゴー!!」
@第一対戦【複製器官】VS【複製腕】
開始の合図と同時に組付に応戦する
「(やっぱり)…重い」
「抑え込む!」
単純な筋力量の差
一時凌ぎで組付を弾くが伸ばされた複製腕により隙を埋められ徐々に地面に押し込まれる
「開始早々筋力勝負だ!地味だぜ」
「ぐっ」
体格も相まって押し込みに体重が上乗せされ、更に脱出困難に
「このまま」
徐々に覆いかぶさるようにのし掛かられ
体格差による質量での制圧を図られる
「降参しろ緑谷…折れるぞ」
「ご忠告どうも」
しかし、緑谷出久
無理な体勢、足を縦に展開し左右へのバランスを捨てた諸刃の策
側から見れば無理をしてるように見えていた足使いから一変
軸にしていた筈の右足の支えを自ら解き
足を払いざまに腕を巻き込み後ろに仰け反り
そのまま自由になった足で障子目蔵を後方へと投げ飛ばす
「これを緑谷巴投げで難を逃れる…やっぱ地味だな」
回避行動により直ぐ様体勢を整える障子目蔵は片膝、片腕を地面につき続行の構えを取る
しかし、緑谷出久が注目したのはそこではなかった
「(【複製腕】による反撃が来ないところを見るに複製に限度があるのかもしれない…)」
体格、筋力に劣ること
射程、手数に勝ること
理解を知識に落とし込み
腕から滴らせた液体を周囲に飛ばす
「峰田君見てるかな?」
体育祭の準備で言っていた作戦の実践をする
「お?ようやく肉弾戦はやめるか?一発ド派手なのを」
「プレゼントマイクあんまし煽んなよ」
『相手に考えることを増やして強制させる』
腕を振りコンクリートに散らばらせた液体
それは各所で徐々に集まっていく
「【個性】を使われてはこちらが不利!」
個性把握テストでの一件が頭によぎった障子目蔵
これを警戒し、再び接近を仕掛ける
「(【黒キ人】のように遠方で複製を作り出すことはできない)」
「さっきの」
緑谷出久は接近する巨体に対し
肩関節から増えた腕でこれ見よがしに組み付きを示唆する
「わざわざ距離を詰めるとは」
それに合わせて腕を広げ応戦しようとする障子目蔵
手のひら同士が相殺したその瞬間
「これは緑谷!」
「!?」
触れた筈の腕らは流動体へと変化し障子目蔵の腕6本を3対3で左右それぞれをまとめ上げる。一組に融合した両腕が内巻きにより、力を入れられない体勢へと強制される
「降参する?障子君」
「いや、まだまだ!」
拘束していた腕の先端が変形し、緑谷出久に無数の殴打を浴びせる
「一転攻勢!障子目蔵!緑谷出久をメッタ打ちだ」
「まだやるか!」
「まだまだ!」
顔面に直に受けた殴打により鼻から血を流す緑谷出久
しかし、各所に集まっていた液体が障子目蔵の両足を固定したのを確認すると腕であった流動体を残し、距離を取る
「こんなこともできるのか!?」
「僕も少し驚いてる」
【黒キ人】を介さない大規模な戦略
緑谷出久の頭痛は徐々にそして確実に緑谷自身を蝕んでいく
それも
この時の為
「全力で
「!!?」
「無数の腕の行進だ!」
緑谷出久が切り離した流動体はやがて脈打つと
中から腕が無数に現れるや否や
障子目蔵に目掛け
殴打に次ぐ
抜けざまに殴打を浴びせ障子目蔵がいたであろう後方に黒い扇状の影を作り出す
時間にして5秒
絶え間のない殴打により
障子目蔵は
「こ、降参だ」
「決着!2回戦進出は緑谷出久だぁ!」
@【複製器官】VS【複製腕】-別視点
「うひょ〜爆豪あんなの受けたらひとたまりもないな」
「掴まらなけりゃいい話だろアホ面」
「私緑谷ちゃんと当たったら棄権しようかしら…十分活躍できたからもう充分だわ…」
「緑谷さんの【個性】が余計にわからなくなってきましたわ」
「…あの腕に宿っている魂はやはり強い」
「常闇君?何か分かるの?」
「光すら飲み込み喰らう闇…【
「闇?」
「拳藤…あれお前の上位互換じゃね?」
「確かにあれと戦うなら作戦を考えなきゃ…」
「そういや物間は大丈夫だった?」
「初戦からA組同士で潰し合いなんて滑稽だよね」
「物間!?もう大丈夫なのかよ」
「やった!お父さん出久勝ったよ!」
「やった!」