【リハビリ中】僕の個性は【紳士ハンド】   作:『代行さん』

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@夏休み-4-少しのイベント

@夏休み

「出久」

母さんが保険証を手渡してきた

「せっかくだから自分で出してきたら?」

 

それは夏休みに関係のない

ワクワクする出来事

個性欄の空白

 

それがようやく埋まる時

 

@7:00

「個性変更届?」

「そうよ」

少しやつれ気味の母さん

その口から出た興味を持てないはずのない話題

 

「個性ってたくさん種類があるじゃない?」

「そうだね」

「だから間違った個性を登録しちゃっても大丈夫なように」

机を挟んで差し出された紙

それを受け取ると裏返す

 

「なれるよ…ヒーローに」

手渡された紙が重く感じる

幼い頃の謝罪

目の前で泣きじゃくる母さんをどうにかして慰められないか

 

凝ったことはしなくていい

シンプルに言おう

「母さん、僕は…ヒーローになるよ」

 

@9:00

「初めて…だよな?」

無骨なデザイン、20階建て

バリアフリーに合わせたスロープや大きな自動扉

熱感知センサーなどによる徹底ぶり

初めて来たというがどこか懐かしい雰囲気を感じる

 

「えっと」

案内板を眺める

20階建てとあって中々目的地が見当たらない

 

「どうしました?」

「どわぁ!?」

いきなり声をかけられ驚いた

周囲を見渡すが誰もいない

 

「?」

案内板に向き直ると

案内板に目がついていた

 

「おわぁ!?」

 

 

 

【潜航】

物と一時的に同化することができる個性

「すみません、ここで案内をしてる進藤モグリって言います」

「はっ、はい」

腰を抜かして立てない

個性届けはどこに出せばいいのかとか…

ニュートラルが両脇に手と肩を差し込み持ち上げる

 

「個性変更届けは何処で出せますか?」

僕の声…

はぇ?

 

「ここの14階の窓口で申請出せるよ」

「ありがとうございます」

両脇に腕を突っ込まれた状態で移動させられる

 

エレベーターを待つ…

「喋れるの?」

無言のまま動かない【黒キ人】

ちゃんとした声、抑揚が拙い以外は僕に似ていた

 

「口が作れるなら呼吸とか食事もできるのか見てみたいな」

〔ブツブツ〕独り言の最中、着いたエレベーターに背中を押されながら乗った。

 

@9:05

目的の階層につきエレベーターのベルが鳴る

個性管理科に到着

「いらっしゃ…い?」

〔ブツブツ、ブツブツ〕

独り言が尚も続く

 

ニュートラルに軽く両頬を叩かれる

「?、!あ、えっと」

「いらっしゃいませ、本日はどう言った御用件でしょう」

「あの…えっと」

ワタワタと懐と鞄を探る

 

「これ!」

「個性変更届けですね」

「はい」

 

 

 

@9:10

改めて番号札を取って順番が来た

「個性について特筆することはございますか?」

「あっと…」

 

ありすぎて逆に困る

自立型

複数の力

 

「あの」

「はい」

「個性が自分で考えて動くことってあるんですか?」

今にしてみれば不可解な者達

意思を汲み取ったかのような行動に

命令+@の行動

ついさっきでは会話もしていた

 

「個性に意思は発現するのか、ですか?」

「はい…」

 

表情は変わらない受付の人

しかし分かる、圧が変わった

丸みを帯びていた瞳は鋭くなり

呼吸のリズムは更に深いモノへと

 

動いていたペンがピタリと止まる

「それは」

唾が止まらない

 

「個性開発機関の管轄ですね」

「…はい?」

 

空気が重みを忘れる

受付の人が机の引き出しを確認すると一枚の名刺を手渡してきた

「こちらの住所に個性開発機関の施設がございます」

ここから少し離れたところにある山の上

森に囲まれている場所にその施設はあると言う

 

「では、話を戻します」

 

【複製器官】暫定

自身の腕を無数に増やせる

口や鼻、目も増やすことができる。

 

「詳しい情報は開発機関で調べた後に確定しましょう」

個性変更届けに印が押される

「あの」

「如何なさいました?」

 

「僕は元々、無個性でした」

「…」

頷き相槌を送る受付けの人

「お医者さんも諦めた方がいいって」

 

「それは…」

「おい、天霧!人待たせてるぞ」

「え?おわ!?」

気づけば番号札が+20まで伸びていた

 

「申し訳ございません、緑谷様」

「いえ、僕こそ、こんな時に」

そそくさと帰ろうとする

 

「また会いましょう」

エレベーターが閉まる時まで手を振って見送ってくれた。

 

@11:00

エレベーターが一階に着いた

ニュートラルの手から2枚の名刺が手渡される

一個は個性開発機関、紹介書兼名刺

もう一つは

「個性把握、強化委員会?」

電話番号、住所、資格

天霧ミツ

受付けの人の名前だった

 

@12:00

近くのレストランでテイクアウト

カスタムメニューの体力盛りというモノを頼む

 

以前の海岸で見つけた

150ml 身体を飲むという飲み物から見つけた糸口

 

何はともあれ

海岸に着くと早速掃除を始めた。

 

@14:00

海岸の砂で足を取られる

足裏を怪我することは無かったものの踏ん張りが効かない

ニュートラルはいつも通りかと思ったらそうではなかった

 

時々持っている物を地面に置くのが見られた

どういうことなのか…

 

@15:00

「しまった」

おやつを持ってきていなかった

それでも構わないか…

 

ニュートラルが手渡してきたのは飴玉だった…

いや、どこからいつも出してるんだ?

 

@17:00

少し笑いが出てくる

 

「やった!」

 

 

 

タイヤが動いた

びくともしなかったゴムの塊が砂をかき分け駐車場に向けて少し動いた

腕を畳むと少しばかり力こぶが浮き出る

 

ニュートラルも拍手で祝ってくれている

 

@20:00

布の袋を片手に帰路に着く

「今日はいい日…」

 

 

 

最悪だ

少し浮かれた気分が沈み込む

 

かっちゃんだ

向こう側から歩いてくる

 

呼吸ができない

ばれないで欲しい

 

バレないでバレないでバレないでバレないで

お願いします

 

@20:00-別視点

何だあの顔

目の前を横切る黒い影

人の形はしてるが…

 

そういう個性か?

俯いた格好、しかしその表情は

「(ニヤついてやがる)」

真っ黒な球体に白い歯が貼り付けられたような見た目

 

ヴィランに見えないことはないが

悪いことはしてねぇ

 

見た目で判断するのはちげぇな

だが

どこかで見た歪んだ笑顔

「"ぼ、僕が相手になってやる"」

「"かっちゃん大丈夫?"」

 

んで、こんな時まであのクソ野郎を思い出すんだよ

 

@22:00

階段を駆け上がり

通路を走り抜け

 

力任せに扉を開くと自室に駆け込む

「出久?」

「ごめん母さん、大きな音立てて」

「…それならいいんだけど」

手首の口から聞こえてきた僕じゃない僕の声

 

「そうやって声を出してるんだね」

枕についたいくつかの水滴を尻目に

ノートを広げる

 

「最初の目標」

書き込んだ乱雑な文字

『個性を把握』

 

「最終的な目標」

『ヒーロー』

 

「僕は何もかもを…救ってやる…」

誰にいうでもなく、嗚咽混じりの呟き

疲れたその日は微睡に身を任せた

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