@電車の中
夏の中旬
雨が降り続ける日が続く
電車の中で携帯を見ている
記事の内容は
『異常気象観測』
『個性消失!?』
『個性終末論再び』
後ろに向かう景色を眺めてため息を飲み込む
「お兄さん」
肩を不意に叩かれ上の空だった意識が覚醒する
「はい!?」
「ヒーロー科の緑谷君だよね?」
「そうですが…」
「体育祭見たぜ?」
声をかけられたのを皮切りに
握手、賛辞、祝福が電車内を包み込む
有名人になった様な錯覚を受けながら
電車の目的地までしばしば続いた
@1-A
「今日超声かけられた!」
「来る途中でもひっきりなし」
「オイラも」
A組の教室に入るや否や
皆が同じような体験をしたようで
その話題で盛り上がっている最中だった
「みんな良いよな…俺なんて瞬殺されたからお疲れの一言だったんだぜ?」
朝からどっと疲れたせいか時間の進みがやや早く感じる程だった
が、扉が開いた瞬間皆が静まり返り
背筋を正す
八百万の掛け声で入ってきた
相澤先生に挨拶をする
「おはよう」
淡白な挨拶をした後教壇に着く
「相澤先生腕のギプスに包帯取れたのね」
「あぁ、骨は幸い無傷だったからな、顔の方は婆さんの大袈裟な処置だ」
朝の雑談を早々に切り上げ、相澤先生が向き直る
「今日のヒーロー情報学はちょっと特別だ」
「これから行く先々で必要になってくる物だから心して掛かるように」
取り出されたパネルの文字には『ヒーローネーム』と書かれていた
「胸膨らむやつきた!」
「…」
相澤先生の睨みで一同の熱量が一気に元通りになる
「体育祭から指名は出てきている、だが本格化するのは即戦力として確認が取れる二、三年から、今回のはあくまで将来性に対する興味というわけだ。んで」
開示された数値
映し出された横棒グラフ
「例年はもっとバラけるんだが…今回はやや偏った」
「八百百一番!?」
「麗日は順位の割にパッとしないな」
「それいうんだったら轟バケモンじゃね?」
「…」
八百万、麗日、轟、上鳴…
緑谷は中間位となっていた
「少ないな緑谷」
「扱いに困ると判断されたのかも」
「ど、ドンマイ」
「ん〜( ・~・)」
「これを踏まえ…指名の有無関係なく、現場を見てもらう、所謂職場体験だ」
緊張の面持ちで続く
「お前らは一歩先を経験したが、プロの活動を間近で見て経験し、実りある訓練に繋げるってこった」
「それでヒーロー名か!!」
「俄然楽しみになってきた」
扉が不意に開く
「まぁ仮ではあるが適当なもんは」
「つけたら地獄を見ちゃうよ!」
そこから入ってきたのは
白タイツに黒の拘束具
蝶を彷彿とさせるマスク
ガーターベルトと体のラインが丸わかりな装い
18禁ヒーロー「ミッドナイト」が入ってきた
「ここでつけた名が世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね」
「まぁそういうことだ、その辺のネーミングセンスはミッドナイトさんに査定してもらう、俺はそう言うのできん」
寝袋を引き出した相澤先生が気だるそうに言い放つ
「将来どうなるのか、名をつけることでイメージが固まりそこに近づいていくそれが名は体を表すってことだ」
『オールマイト』とかな
@ネーミング開始
「できた人から発表していってね」
この一言で殆どの生徒が出来上がってるのに出せない状況になっていた
「いくよ」
ここで名乗りを挙げたのは青山優雅であった
そのヒーロー名は…
「輝きヒーロー"I can not stop twinkling"」
短文が出てきた、きらめきが止められない
「そこはIをとって、can't にした方が呼びやすいわね」
「それね、マドモアゼル」
青山優雅 can't stop twinkling
最初が最初なだけにこれが基準となるのかと一同がどよめきを隠せない中、次の名乗りは
「じゃあ次私ね、エイリアンクイーン!」
「血が強酸性なアレを目指してんの?やめときな!」
芦戸三奈 エイリアンクイーン(却下
「というか、何かこれ」
立て続けに出たネタとも思えるネーミング
大喜利に似た雰囲気に包まれながら流れを変えたのは
三番手
「じゃあ次は私いいかしら」
「小学生の頃から決めていたのフロッピー」
「可愛い親しみやすくて良いわ!!」
蛙吹梅雨 フロッピー
「みんなから愛されるお手本のようなネーミングね」
「んじゃ俺、烈怒頼雄斗」
「赤の狂騒!これは漢気ヒーロー
「そっす、だいぶ古いけど俺の目指すヒーロー像はクリムゾンそのものなんス」
緑谷は考えていた
憧れたネーミングがあった
『スーパー』
『キャプテン』
『マイティ』など
「僕にはふさわしくないな」
ひとつ現実に向き合う度
足りない物に目がいってしまう
「僕はオールマイトにはなれない」
けれど
「オールマイトも僕になれない」
「憧れの名を背負う…」
その後の命名は
耳郎響香 イヤホン=ジャック
障子目蔵 テンタコル
瀬呂範太 セロファン
尾白猿夫 テイルマン
砂藤力道 シュガーマン
芦戸三奈 ピンキー
上鳴電気 チャージズマ
葉隠透 インビジブルガール
八百万百 クリエティ
轟焦凍 ショート
常闇踏陰 ツクヨミ
峰田実 グレープジュース
口田甲司 アニマ
「爆王・焔」
爆豪勝己は達筆で書かれたパネルを立てる
ホムラ
ばくおうは敢えて読まずに
ホムラだけを読み上げる
「中々シンプルに来たわね」
「実は私も考えてました」
麗日お茶子 ウラビティ
「洒落てる!」
緑谷の番になった
伏せたパネルを持ち上げ教壇に立てる
「貴方は…あら?名前をカタカナにしただけかしら?」
「はい、ミドリヤかイズクで行きたいと思います」
「それならいっそイズク・ミドリヤって名乗っちゃいましょう」
緑谷出久 イズク・ミドリヤ
これでいい、そう思う
@名を表す体に至れ