@ヒーローネーム命名式から三日
「職場体験は1週間、肝心の職場だが指名があった者は個別にリスト渡すからその中から自分で選択しろ」
渡されたプリントを順々に後ろへと流していく
「それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なる、よく考えて今週末までに提出ろよ」
手にとっているプリントには
「…」
『個性開発機関ヒーロー事務所』
の記述が目に止まる
僕は迷わず体験先に決めた
「デク君早!」
「…自惚れて選んだわけじゃないんだな」
手渡したプリントを見て相澤先生一言だけ添えると
"わかった"とだけ告げ席に着くように促される
@自習中
「ガンヘッド事務所、バトルヒーローの?」
「うん、指名きてた」
「ゴリゴリの武闘派…第3の武器を?」
「うん」
麗日さんの雄英体育祭での目覚ましい活躍を思い出す
確かに武器を持つことで本来受けに転じやすい事態を打破していた、その武器がなくなったとしても立ち回れたら尚安定する
「拳藤さんとの一戦で攻めても難しい相手が来るかも知れへんから見聞を広めにね」
「災害救助の方は?」
「それは二、三年の時にかな」
麗日さんと少し話す
ふと
「…【無重力】大丈夫?」
「大丈夫よ?」
「なら良かった」
雄英体育祭で見せた【無重力】の異常成長
それに伴わない身体能力により四肢が悲鳴を上げていたが本人は何ら問題ないと確認が取れた
「それじゃデク君」
「うん」
「Mtレディ事務所、あの人気活躍中の…」
「そ」
麗日さんに続き峰田君と喋る
「中々珍しい所を選んだね」
「Mtレディなら身体の動きがわかりやすいと思ってな」
「確かに(活躍)分かりやすいね」
「そうだろ(助平)分かり易いよな」
「災害救助、ヴィラン退治もできる」
「屈んだ時、動いた時に揺れる所が」
「事務所の作りとか」
「プライベートとか」
「…」
「( ・-・)」
「身体(活躍)のことだよね」
「身体(助平)のことだぜ」
「なぁ緑谷…」
「轟くん!?」
峰田君との他愛無い会話をした後
轟君に声をかけられる
「俺はエンデヴァー、親父の事務所に行く」
「え?あ、うん、ヒーロー事務所でも大手で人気も高い、サイドキックの受け入れ人数も並外れてるからね…」
「…あぁ」
いきなり声を掛けられたから動揺のあまり何を言ったか覚えてない
「えっと、何で僕に?」
「麗日と峰田を見てたらお前に報告しに行くもんかとばかり…」
ザ・テンネン、クラス一同が身体を緊張させる
それをキョトンとした様子で不思議そうに立ち尽くす轟君、正直反則だと思った
その後、クラスの面々が僕に報告しに来るようになったのは言うまでもなかった
@授業後
「緑谷」
「はい!」
相澤先生に呼び出されて教壇に向かう
「コスチュームの修繕が終わったとのことだ、後でサポート科んとこのパワーローダーんとこ行っとけ」
「分かりました」
@サポート科へ
「良かったね、間に合って」
「指定のジャージで行く羽目になるところだった」
USJの襲撃で破損したコスチュームを受け取りにヒーロー科からサポート科までの道を話しながら進む
「飯田君大丈夫やろうか、長期休みっちゃ差になりかねんし」
「大丈夫じゃないか?あそこヒーロー一家だし、いざとなりゃどうにかするだろ」
「そうやね」
そんなこんなを話しているとサポート科の扉の前まで着く
「…」
「デク君?」
「どうした緑谷」
「…」
【】
突如視界が広がり、動きが加速する
@00:00:00
伸びた思考にハッとする
まさかヴィラン襲撃!?
@00:00:00.01
いや、それなら今発動するのはおかしい
…それより二人を守らないと
思考のうち、【カタパルト】で麗日さんと峰田君を保護する
@00:00:00.03
広がる視界を念入りに観察する
わずかに浮いているサポート科の扉…
まさか!!
@直撃
「うわ!?何?」
「いやぁ、失敗失敗」
麗日さんとは違う女性の声が聞こえる
サポート科の扉が吹き飛ぶと同時に飛んできた女性
「おや、貴方は雄英体育祭の広告塔の付き人さん」
「お久しぶりです」
【黒き人】に抱えられている女性
発目明であった
「発目!何度言やぁ分かる工房を爆発させんじゃねぇ」
「失敗は最高の母ですよ、パワーローダー先生」
抱えられながら声高らかに宣言する女性と
怒鳴る男性…中々に地獄だ
「お前さんが緑谷出久か?」
「あ、はい」
急に真面目な声色でものを尋ねられ素っ頓狂な声で返事をしてしまう
「修理は済んでる入れ」
パワーローダー先生に促されるように中へと入る
その間発目さんは【黒き人】に興味津々だった
「ずっと乗っとる…」
「おっぱい…」
@試着
物珍しい機械が所狭しと並ぶ工房
サポート科の開発室
「試着しな、寸法測って手直しするから」
「はい」
手渡されたケースの中からコスチュームを取り出し
袖を通す、この時点で服の生地がレディメイドから
オーダーメイド品になっていることに気がつく
背中の刺繍はお母さんのが少し残った状態
あとは新しく改造されていた
ズボンにインナーにも改めて着直す
硬くなく、動き易い
「どうだ?」
「問題ありません」
「水筒の方は」
「私が僭越ながら!」
「どわっ!?」
パワーローダー先生と僕の間からヒョコッと顔を出す
「発目は入学からここに入り浸っててな」
「テスターとして活用させていただきます」
取り出されたのは鞄、背負い鞄
「この鞄はですね、中に複雑な基礎を用いているため見た目の割に軽く大容量なんですよ、それに加えて頑丈とあってですね」
「…」
相づちを打ちながら疑問に思う
肩にかけるベルトがない
「そしてここが私の新発明、ベルト要らず、ベルトに当たる部分はパーカーにあります、取り付けることで両手が空く仕様になってます」
背中に周った発目さんが鞄を取り付ける
取り付けたはず、重さがない分何とも言えない感覚
背中が少し不安定になる意外
「これの強度はどれくらいですか?」
「多少の振り回しには耐える仕様になってます」
回転し踏み留まると背中に少し引っ張られる
「これを取り外すには?」
「取り外せません」
「ん?」
「取り外せません、不安定さが増すので」
「発目!お前それを改良するよう言ったっただろうが!」
「取り外しが難しいなら取り外さなければいいじゃありませんか」
僕を他所に喧嘩を始めた2人を他所に鞄を確認する、数センチほど浮いた鞄を確認し、引っ張ってみる
パーカーが逆に引っ張られる形で取り外しができないことを確認する
鞄の中身は水筒のみ、それでも
「僕なら問題ありませんね」
「あ?」
パーカーを着直すと黒い手を呼び出すと
鞄から水筒を取り出す
「これなら問題ありませんね」
「作り直しはして貰うぞ」
コスチュームの細かい調整をしたのち
ケースを持って家路に着いた
@職場体験当日
「えりちゃんは…」
駅へ向かう皆を見送る
僕は天霧さんを待つ
何故か校門前で待機を命じられた
その間にえりちゃんと治崎さんの動向を確認する
相変わらずの地下室かと思いきや
今日は町巡りをしている…
治崎さんの方が心なしか疲れている様子
…何かあったのだろうか?
『クロ!待って〜』
えりちゃんが平気な様子なのを見るに
問題はなさそう…
「緑谷さん!」
「あまッ!?」
声をかけられその方向に目を向けようとした瞬間
景色が歪み、衝撃と圧に押し負ける
「手荒な感じで申し訳ありません」
「いえ大丈夫…です」
急激に疲労が溜まる
何というか強引すぎる
車の出入り口から身を乗り出していた天霧さんに抱えられる形で乗車させられた車内で力なく膝をつく
「それで…いつもの施設に行く感じですか?」
「いんやこれから島に行くのね」
「瞬さん!」
投げ渡された水分に口をつける
「私たちの事務所は個性開発機関の中にありますが活動としましては出張が主になっていますので同行して貰います」
揺れる車内で唐突な拉致に思考がまとまらない中
気づけば飛行機に乗せられていた