【リハビリ中】僕の個性は【紳士ハンド】   作:『代行さん』

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@職場体験3-ヒーローの居ない島【その1】

@本州から離れた離島

年間通し、一定の気温に過ごしやすい気候

地平線まで伸びたまっさらな海辺はこれまた

日の光に照らされ海底が見える

 

今日も今日で大勢の島民と観光客が入り乱れる

一定とは言えやや気温が高いと感じる

海水浴にはもってこいだ

 

「ねぇねぇ俺らと遊ぼうよ♪」

「ぼ〜よ♪」

そんな海辺で開放的になったのか男性の二人組が

海の家にて女性の二人組に対し執拗に声をかける事案が発生していた

 

「結構です」

身なりからして女性の二人組は島民に見える

 

「そんなこと言わないで〜ね?」

「あの〜」

そんな中に割って入る少年こと

雄英高校ヒーロー科の緑谷出久

 

「何だ?コイ…ツ!?」

緑谷を見るや否や怖気付く男二人組

それもそのはず、童顔とはかけ離れた

四肢と筋骨隆々が覗くパーカーの隙間

素人でも分かる程の勝ち目のない相手

 

「すんませんした!」

頭を勢いよく下げると男二人組は駆け出す

「?」

 

 

 

「お怪我はありませんか?」

「ありがとう」

「助かりました」

ナンパから助けてくれたヒーローに女性が駆け寄る

 

@海辺にて

個性を解放しながら空中を走る様に移動する

監視台を遥かに凌ぐ高さから海辺を注意深く監視する

異常を察知した瞬間に高速で移動する

 

子供が溺れているそこに

空から高速で駆けつけると【複製器官】で抱き抱える

「ママ!ママ!」

 

溺れ、潮で流されている子供を水面から引き上げると泣き付かれるよほど怖かったと見られる

「大丈夫だよ、僕がいる」

優しく撫で、ぐずる子供をあやしながら浜へと向かう

 

@海辺

監視を続けながら鳴る電話を取る

「はい、こちら緑谷」

「お疲れねミドさん」

「瞬さん、事件ですか?事故ですか?」

「事故かな、松田さん家ね」

「了解しました」

監視の目を海辺に残しながら足速に西地区に向かう

 

その間にも電話が鳴りその度に電話を取る

「今さっき連絡があった、迷い犬の件お疲れ様ね」

「よかったです」

「んで追加ね」

 

@そんなこんなで

「お疲れ様ね、ミドさん」

手渡された紅茶庭園に口をつける

「いやぁ、もうこりゃ即戦力ね」

「お世辞でもありがたいです」

 

お昼時、監視の目を維持しながら

休憩に入る緑谷

島全体を眺めれる様に設置した目

 

そこから見える景色は

鮮やかな菜の花が咲き乱れ

本州で類を見ない異国かと見間違うほどのエメラルドグリーンの海

快晴に見舞われたさとうきび畑が目の保養をしてくれる

 

このような島で何故

緑谷がヒーロー活動をしているのかその理由は

職場体験の説明会まで遡る

 

@少し遡ること飛行機の中

「ヒーロー不在地区への出張ですか…」

「そうね」

スーツでビシッと決めた装いで説明をする瞬さんがホワイトボードで説明するのを聞きながら相づちを打つ

 

「ヒーロー飽和社会とて、それは本州のみ、離島、孤島、発展途上のそれぞれではヒーローの不在が問題視されてるのね」

まぁ、それだけじゃないのね、とボソッと付け加える瞬さんの表情がやや暗い

 

「これらに対抗するのにも次世代のヒーロー育成は加速させ、質も伴わなければならないのね」

そうして白羽の矢がたったのが

個性開発機関含むヒーロー事務所での実践を通した

現場研修とでも言うべき代物だった

 

「そのモデルケースとして今から向かう那歩島が選ばれたってわけね」

ヒーローとて人間であり、高齢化が進む

その結果、後継が育たず不在となる

 

「今回は島民の元ヒーローのサポートも少なくないながらあるのね、そして海外式ということで実績のあるミドさんも個性使用が許可されてるね、存分にやることね」

向けられた指示棒で指される

「ミドさん?」

「そ、ミドさん、ミドリヤ、親しみやすくミド、んでさん付けだから失礼に当たらない」

 

「んで説明に戻るね、失敗なども含めて公になることはないから最善を尽くすのね、失敗はアマやんが受け持つから」

「存分にね緑谷さん」

 

程なくして到着した島で瞬さんが挨拶を済ませると

廃旅館を改装した簡易拠点を事務所として活動を始めた

 

資材が目立ち、積み上げられた中心に

トンと設けられた簡易とは?

と疑問に思うほどのしっかりした建物

2階を寝泊まりとして、一階を拠点とした活動

 

ヒーローとしての仕事に向き合う中

拠点付近の施設が充実していき

大きな事件はなく、島の何でも屋として

こき使われているのが現状である

 

@小休憩中

「…?」

頭に乗せていたタオルを畳みながら

見知った顔が視界に入る

 

「行ってきます」

「あいね…はい、こちら…」

 

@港を見下ろす公園

「活真くん」

島の外から来たヒーロー

島民としての身近な存在ではない

親戚のお姉さんでもない

活真にとっての初めてのヒーロー…

 

「出久兄ちゃん!」

「僕が居る」

音もなく砂の上に降り立ったヒーロー

それは初めて遭ったヒーローとの再会

遠目でも、画面越しでもなく

目の前に

 

「出久兄ちゃん、体育祭見たよ」

「どうだった?」

空中に連れられた活真は出久と話をする

 

「ワクワクした!」

「怖くなかった?」

「少しびっくりしたけど」

「けど…」

「楽しかった!」

 

「おっほん」

活真との会話に咳払いで入ってきた真幌ちゃんこと

島乃真幌が滑り台の上から姿を現す

「まぁまぁってとこね」

 

滑り台を滑り降りるとヒーローの目の前に立つ

緑谷は片膝をつくと目線を合わせる

「ッ…」

 

その様子を見回すのをやめて目を背けると

ピシッと指を指される

「偶々、偶然、早かっただけ!イイキにならないでよね!」

「肝に銘じます」

「あぁぁもうムカつく!」

「お姉ちゃん」

 

首から下げているストップウォッチ

0秒を確認した

 

@少しして

活真の手を引き、歩き去る二人

「ありがとう」

「お礼なんて言わなくていいの!」

 

歩き去る二人を見送りながら立ち上がると

電話を掛ける

「あいね」

「迷子の弟探し完了しました」

「あの子達ね…」

「褒められましたよ」

「良かったのね」

電話口から機嫌の良い笑い混じりに返答があった

 

@少しして-別視点

「ちゃんと探しに来てくれたね」

「あ、あんなの反則よ、反則」

売店で買ったアイスを食べながら話す

瞬 複物が電話に出た時、見つけに来てくれないのではと考えてしまった真幌、知り合いなだけに何をしたいのか知られている為である

 

しかし、実際には面と向かって探しに来てくれた

ヒーロー:イズク・ミドリヤ

気の弱かった弟がここまで慕うヒーロー

姉の真幌も慕わないわけがなかった

 

@その頃雄英高校では

「相澤君…緑谷君のことが気になるのかい?」

「八木先生…いえ、そんなことは」

言いかけようとして目頭を押さえる

眉間に寄るシワが気苦労を物語る

 

「那歩島の人口は千人ちょっと…25年余り大きな事件はありませんし、まぁ問題はないと思います…」

大きなため息と共に立ち上がる

 

「学生にとって数日というのは大変貴重な物です。送り出した我々はそれに関与することは成長への妨げに直結する。そんな事態は極力避けたい、それに」

目頭を抑えていた手の隙間から"じろり"と覗く鋭い眼光

 

「ヒーローとは元来、大災害に単身で乗り込み、凶悪なヴィランと戦う(・・・・・・・・・・)ことばかりじゃありません。守る者との関わりがあいつらにとって良い経験になるはずです」

犯罪の多い本州、都心部とは違う環境

その地方でヒーローという像は姿を変える

 

それでも人々の為に尽力を尽くすその姿、根底には違いはない。相澤先生の力説を聞きながら大きくうなづくと二人して事務作業に戻る

「それでもあいつは死地に赴く愚か者です」

ボソッと続けた相澤の目は何処か虚気であった。

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