【リハビリ中】僕の個性は【紳士ハンド】   作:『代行さん』

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@職場体験7-ヒーローの居ない島【その5】

@多目的施設前

ナインが森を抜ける

ここまで誰も来ない所を見るに

「スライス…キメラ」

 

二人のお陰である

「必ずや」

 

施設の前で佇むヒーローと相対する

目の前に立つ絶望は乗り越えるべき障害だ

「出久だったか?」

「僕の名前…」

これを成さなければ…

悲願なんで夢のまた夢

 

「今一度聞く、邪魔をするなら殺す」

「何度でも言います、止まってください」

 

緑谷とナインが対峙する

肩にあった最後の一つ、それが目を開く

「ならば殺す」

「行かせない」

 

 

 

@【複製器官】vs

【気象操作】+【個性アンプルOD】

 

ナインが紫の閃光で先制を仕掛ける

緑谷はこれを防ぎ、肩の目が一つナインを凝視する

瞬間、閃光が不発する

「個性が!?」

 

驚く間も無く

黒弾がナイン目掛けて飛翔する

ナインはこれを高速移動により回避するが

肩の目がまた一つナインを凝視する

「(これは…)」

近くの木陰に移動する

枝を踏み割る音が近づいてくる

 

「投降…してくれますね?」

「万全でも歯が立たないとは…な」

ナインはやや諦めに似た乾いた笑いを浮かべる

それでも諦めてはいけない理由

仲間の為にもと己を鼓舞する

 

「?」

爪が色を取り戻す

高速移動も

再使用できるようになっていることを確認する

 

「その個性も万能とは言えない訳だな」

ナインの脳裏によぎるのは雷による突破口

初戦で掴んだ勝機

そして…空のアンプルを握りしめる

 

「…」

ナインは木陰から飛び出しアンプルを投げつける

緑谷はそれを警戒して腕で弾くが…

〔胸部に走る痛み〕

「ぐっ…!」

 

胸から伸びている白い線

毛髪が緑谷の胸を貫いていた

「これで!」

ナインが腕を掲げ、振り下ろす…が

不発

 

「…終われない、終われる…筈がない!」

ナインはそれでも諦めなかった

緑谷に髪を突き刺す

 

多目的施設から地面を引き摺り回しながら

高速移動を連発する

 

景色が巡る

多目的施設から市街地、さとうきび畑に

倒壊した通信塔へと

「ぐぁぁあ!」

ナインが咆哮と共に緑谷を投げ飛ばす

 

コンクリートに数回叩きつけられ力なくうつ伏せになる緑谷

爪の閃光を構える

髪と同様に胸部ならばダメージを与えられるならと

 

【気象操作】は未だ使えない

「やはり警戒されてるか…」

マスク越しの苛立ち

 

ナインは肩の瞳に爪の閃光を放つ

目が閃光を弾き閉じる

【気象操作】を構える

 

黒雲が立ち込める

ナインが掲げた腕、掌の先に巨大化していく雲

巨大化をやめない雲は

やがて地上へと侵食を始めるが如く地を目指す

 

「終わりだ出久」

ナインが満を辞して腕を振り下ろす

 

島を覆い尽くす閃光の後

耳をつん裂くような爆発音

鼓膜が音を拒否するように…

無音に至る音

 

「はぁはぁ」

耳を押さえながら

耳鳴りが遠のくのを待つ

 

「この程度で終わってなるものか…」

緑谷の周辺には焼き焦げた臭いが立ち込める

コンクリートにヒビが入り

衝撃により木々が薙ぎ倒され、離れていた家屋の

窓ガラスが今やっと割れた

 

「今すぐにでも…活性化を」

高速移動を構えた…その時

 

〔ゾクリと背筋が凍る感覚〕

「何だその個性は!!」

今、確かに…倒した筈の少年が

不気味な笑みを浮かべ、口を開け、排熱をする

 

「…」

こんな理不尽…認められない

今出せる…最大火力なのにも関わらず

今出せる…?

 

@【複製器…】vs【ODカタストロフ】

「緑谷君…」

「緑谷」

 

 

 

「おやおや…」

 

 

 

「出久兄ちゃん…」

「出久」

「ミドさん」

 

 

 

黒雲が地平線まで覆い隠す

海との境目が、なくなる

両の目を閉じたナインがマスクを脱ぎ去ると

硬質化した毛に覆われ、紫の閃光が腕を包む

周囲の景色が色づき歪む

「今一度…いや、我が傘下に入れ!出久!お前にはその資格がある」

「トマレ…」

 

緑谷の姿は獣を形作る

腕から流れ出ていた液体が緑谷を包み込み

 

趾行の発達した巨人

体毛に身を包み

射殺すかのような眼光

伸びた腕、犬に似た顔の作り

 

人狼の姿を創り出す

 

@【黒き自由(マニュアル)】vs【ODカタストロフ】

黒雲を携えた竜巻

雷光を周囲に撒き散らしながら緑谷へと向かう

暴風で吹き荒れ、木や岩を巻き上げる

木々に落ちた落雷により火災が起こるが

竜巻に吸収され多くは育たない

 

紅蓮に染まった竜巻

〔ヒガイケイビニ〕

姿勢を低く構える緑谷

 

出現した手が木や岩を瞬時に掴み去なす

腕から更に液体を放出し

竜巻目掛け振り放つ

 

竜巻に巻き上げられた液体が

紅色の竜巻を暗く染め上げ

〔サン〕

次の瞬間、空を覆っていた黒雲が割れ

竜巻が下部から徐々に霧散する

 

「!?」

緑谷が居た地面に亀裂が生じたと感じた次の意識には

鋭い眼光が間近に迫っていた。が

纏っていた空気の壁により阻む

 

がしかし

覆っていた硬質化した毛

諸共貫通し頬に傷がつく

 

ナインはそれでも諦めず紫の閃光を広げた両腕いっぱいに展開する

十本の閃光が緑谷に向かう

それに合わせ強風で緑谷を掬い上げる

 

放り出された緑谷は冷静に

空中を走り始める

【スカイランナー】よりも【リンクスタイル】

以上の機動性、安定性を発揮する

 

高さがナインに重なり

緑谷が蹴りを放とうとする、のは残像

「!!」

こさえた空気の壁とは反対に衝撃が走る

鎧が砕かれ、壁もない同然だった

瞬間移動により、回避からの追撃も当たらない

 

「なぜ抗う?お前なら道理を通し、意のままだというのに」

訝しむナインは緑谷を見下ろし困惑する

 

「敵もヒーローも関係なく、力が全てのユートピア、平等で迫害もない、真の超人社会であるというのに」

「ウマクマワラナイ、キケツスルダケ」

地面に音もなく降り立つと緑谷が返答する

 

「虐げられた者の気持ちがお前にわかるか!?」

「…」

緑谷は顔を縦に振る

形は違えど経験し、一度は諦めた

 

「虐げられ尚…この世界を善とするのか」

「…」

緑谷が深く頷く

強風に靡く体毛、見上げていた視線が地面を眺めるが如く下ろされる

 

「…強いな」

「…弱いよ」

緑谷が力なく笑う

 

「手心感謝する」

圧倒的な実力者が後手に回っている。意図的に

 

他者への慈しみ

それをナインは身をもって体験している

何故弱き者、それが淘汰されず生き残ったのか

 

それはどこかしらでも少なくとも

理解があり、我慢があり、協力無くしては

世界が回らないことを知っている為なのだろうか?

 

ナインは不思議に感じていた

強者からの慈悲、弱者からの慈愛

全ての慈愛

拳を掲げ今一度雲をかき集める

 

夕焼けに染まった空が見える

雲を圧縮した物をナインが掴み地面に降り立つ

「名前を聞きたい」

「緑谷、緑谷出久、漢字は」

「いや、聞いてもわからん…」

 

ナインが鼻を鳴らす

緑谷はキョトンとする

「これが私の全力だ」

腫れ物が落ちたような表情で

構えるナイン

 

「強者に向けた、全力の抵抗だ!!」

ナインの体からプラズマが発生する

個性アンプルにより

個性そのものと意識を交わした

結果、多くの個性がその意志に賛同し、力を貸す

二つを除いて

 

ナインの覚悟、奪ってきた個性因子が1へと還元され

その形を融解させる

「受け継いだ…意志か…」

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