@…少し先の時間
飯田君が行方不明になっていた
家族から捜索願があり、警察が調査のため
各家を訪問して家出の線を潰していた
職場体験からの帰宅
そして初授業の日帰り
大慌てのお母さんから知らされた衝撃の内容
携帯電話が地面に落ちた音がやけに
耳に残る瞬間だった
@雄英高校にて
「マジか爆豪…」
教室に入って聞いた第一声はかっちゃんを
気遣う声だった
見れば分かる程の青タンと
包帯にガーゼ
「うぜぇ、騒ぐな」
静かに一喝すると頬杖をつくかっちゃん
確か職場体験先はラビットヒーローミルコ
何があったのだろうか…
それぞれが口々に
職場体験先の経験を共有していた
1番注目を集めたのは
梅雨ちゃんの密航者を捕まえた話だった
「麗日…お前滾ってんな」
峰田君と麗日さんが話し合っているのが聞こえ
振り返ると
呼吸の仕方が仕上がっている麗日さんが居た
細く長く、力強い
構え方からバトルヒーローガンヘッドの
マーシャルアーツを体得した様に見受けられる
「目覚めたのね…お茶子ちゃん」
「バトルヒーローのとこ行ったんだっけ?」
「峰田はMtレディの事務所だったよね?
どんなだった!」
麗日さん正拳突きに関心を寄せる
耳郎さんと蛙吹さん
そんな中芦さんが峰田君に話しかけると
「…」
無言で虚空を見つめ始めた峰田君
「み…峰田?」
「何でも、ないっすよ」
「どうした!峰田!」
放心状態の峰田君
かっちゃんに噛みつかれている
切島君が
「みんな凄え鍛えたんだな」
関心を寄せると
それに合わせるように上鳴君が続ける
「やっぱ、プロヒーローすげぇんだよ」
「プロと言やぁ、轟は…」
教室の空気がシンとする
「…あぁ、ヒーロー殺しだったな」
「よく無事だったな」
冷静に返す轟君の表情が暗い
「エンデヴァーが助けてくれたんだってな」
「さすがNo2だぜ」
…クラスの盛り上がりとは対照的な轟君は
「そうだな…助けられた」
そう静かに返した
「そういやデク君とこは台風やったんやろ?
大丈夫やった?」
「うぇ!?あ、うん大丈夫だったよ」
気にしていた轟君とは別方向から声を掛けられ
身体が跳ねる、麗日さんに返事をするとちょうど
「お前ら席につけ」
相澤先生が入ってきて一時中断となった
@運動場γにて
午後の日照りさす擬似市街地の中で
相澤先生が僕達に次の教科内容
それを説明する
「ヒーロー基礎学
その中で最も評価されると言っても過言じゃない
救助訓練だ」
気だるそうな態度で言い放つと
オールマイトが歩いて登場する
「はい、私が来た」
ささっと登場したオールマイトは
授業の内容を説明し始めた
「職場体験直後ってことで
今回は遊びの要素を含めた、救助訓練レースだ」
複雑に入り組んだパイプ
所狭しと並べられているのは工場を模した建物
「私がどこかで救難信号を出したら
街外から一斉スタート
誰が一番に私を助けにきてくれるかの競争だ」
@『救助訓練レース』
第一レース出走者以外は
備え付けられたモニターの前で観戦にはいる
「クラスでも機動力がある奴が固まったな」
その言葉通り
瀬良君、芦戸さん、尾白君、かっちゃん
となった
「立体機動、滑走、尻尾に爆破」
「俺瀬呂が一位」
「…私は爆豪さんに」
「尾白に…っふぁ!?」
峰田君、切島君、上鳴君の中に八百万さんが入る
「どうしました?」
「いや、八百百もこういうことやるんだな」
「?えぇ、大変勉強になりますので」
勉強会と競馬での微妙な噛み合いを見せるなか
@運動場γモニター前
「デク君はどう見る?」
4人を観察する傍らに麗日さんが来る
「かっちゃんかな」
「かっちゃん?あぁ爆豪君ね」
腕の汗腺、筋肉量増加、骨の密度
足の筋肉量増加、骨の密度
「うん…」
「分かるんや」
恐らくこの1週間で
一番レベルアップを果たしたのは
かっちゃんだと僕は思う
@『救助訓練レース』
〔スタート!!〕
開始と同時に瀬呂君がテープにより
ごちゃついた地面、中腹を突っ切り上空へと向かう
芦戸さんは複雑な建物の間を縫うように滑り渡る
尾白君も芦戸さん同様に
建物の間を縫うように進む
「ほら見ろ!!
こんなごちゃついたとこは上に行くのが定石!」
「となると滞空性能が高い瀬呂が有利か」
「芦戸ぉ!負けんなぁ!!」
それぞれ挙げた選手のモニター越しに応援する
「「いや、仕上げてきてる(ますわ)」」
一つのモニターに黒煙だけが映っている
塗りつぶされる刹那
見えた小さく映ったかっちゃんの背中
先頭をいっていた瀬呂君のモニターに
一瞬だけ映ったかっちゃん
他3人が唖然とする
溜めた汗を機動力にし
着地で殺すことなく
次に上乗せする
黒煙が尾を引く
なんと言ってもブレることのない体幹
片手づつで爆破を繰り返し
機動力が衰える瞬間がない
「「「1週間で変化あり過ぎ」」」
@『救助訓練レース』
「フィニッシュ」
額への汗ひとつかいていないかっちゃん
オールマイトに背を向け、唇を動かしている
「それにしてもあの動き方…
姿勢制御…ためになりますわ」
「汗腺を少し休めるために足も鍛えたのか…」
体育祭で分かった弱点を
ひとつひとつ克服しているかっちゃん
やっぱり凄い
「デク君笑っとるね」
「え?」
不思議と僕の口元が吊り上がっていた
@『救助訓練レース』第二戦
「また壊れたのかよ」
「うん…」
所定の位置に向かう途中で
峰田君から呆れた声で言われた
表向きは災害地域での活動とあって
破損理由を聞かれたら
どうしようかと思っていたけれど
「まぁ緑谷だしな」
これである
さて、僕は…
【マニュアル】を纏って
気がついたこと
両腕を見る手首まで黒くなってはいるが
肩までは変化していない
「あの感覚に慣れたかったんだけどね」
今までの循環型と違って使う方が圧倒的に多い
でも
足に黒い液体をまわす
「胴回りの防御を必要としてないなら」
消費を抑えられる
そう思っていた時期が僕にもありました
風強!
スタートの合図と同時に走り出す
順調に見えた矢先、空気の壁に阻まれ
加速が成り立たなくなってしまった
「何ともなかったのに!?」
【マニュアル】を纏った時にはなかった不調
一度ならず加速するたびに
叩きつけられる空気の壁に
加速を緩めるしかなかった
「…それにしても」
八百万さんの成長が凄まじい
【創造】による武装のレパートリーが増えている
小物と大物を作り出すのに
それほど手間取っていない
峰田君に関しても
いつぞや言っていた障害物をものともしない
素早い立ち回り
普段からは想像ができない程のマジっぷり
"もぎもぎ"の機動力を活かした反発立体機動に
磨きが掛かっている
そして、常闇君
ダークシャドウの制御が格段に上がっている
体に纏ったそれで壁伝いに
動物で言うところのゴリラの様な機動性に
かなりの危機感を覚ある程に
→何が凄いのか今までダークシャドウの質量は
常闇君本人には返ってこない胸から伸びている
黒い管に身体が引っ張られないのがその証拠だ
しかし今回の纏いにより
攻撃、防御の強化、精度の向上
最強と言える
「負けられない!」
【マニュアル】を解除し、腕鞭に切り替える
連なった腕が複雑に絡まったパイプ群を掴み
それに合わせて跳ぶ
【マニュアル】のそれに比べて劣るものの
強い風に阻まれるが
「これくらいなら!」
手順の複製で授業に臨む
@『救助訓練レース』
「勝ったのは八百万少女だなみんな入学時より個性の使い方に幅出てきているなこの調子でテストに向け準備を進めてくれたまえ」
オールマイトが賛辞を述べ、授業が進んでいく