@雄英高校
皆の服の袖が短くなり
蝉の声に慣れ始める頃
「え〜そろそろ夏休みも近いが…
もちろん
君たちが30日間1ヶ月休める通りはない」
「夏休み林間合宿をやるぞ」
相澤先生の言葉に一同が湧く
肝試し、風呂、花火、カレー、行水
林間合宿にそれぞれの思いを口にしていた
「飯田君…」
そんな中で僕は全く音沙汰のない
飯田君のことを心配していた
心ここに在らず
『林間合宿
自然環境による活動条件の変化
優先事項の選別
湯浴み』
そんな中
ノートに書き込まれていた内容を読み返す
どうやら林間合宿が夏休み中に行われるようで
その環境に即した経験が積める…
湯浴み?
「?なるほど…」
遭難した時の水の確保も視野に入れないと…
お湯に浸かるだけでも体温の上昇が見込める
体を清潔にすることもまた訓練…
ただし
相澤先生のその声で
皆に緊張が戻る
「その前の期末テストで
合格点に満たなかった奴は学校で補習地獄だ」
「みんながんばろーぜ!!」
切島君の声に皆が賛同する
「クソくだらねえ」
かっちゃんも相変わらずの対応である
飯田君のことも気にかかるけれど
目の前のことにも気をつけないと
「ありがとうアル」
【マニュアル】とやや長い名前を略して呼び
取ってくれていたノートを確認する昼過ぎ
変わらず日常が続くわけで
結局僕らがやらなければいけないことは
変わらない
@というのは5月の半ば
時は流れ
6月の下旬(現在)
「全く勉強してねぇ!」
期末テストまで後2週間を切っていた
体育祭や職場体験による行事の数々
それらのおかげで
全く勉強に手がついていない同級生が居た
「中間は入学したてで範囲狭いし
特に苦労はなかったんだけどな」
各々頭が良くないわけではない
言うなら詰め込まれたカリキュラムによる
範囲の広さにより悩むものもいる
加えて実践形式の授業も相まって
勉強する時間、復習する時間
いすれも取れずにいるのは事実である
更に行事に次ぐ行事
まともに勉強ができる方が
「演習試験もあるのが辛いとこだよな」
凄いのである
「あんたは同族だと思ったのに!!」
「お前みたいな奴は
馬鹿で初めて愛嬌が出るんだろうが!」
芦戸さんに上鳴君が煽ってきた峰田君に叫ぶ
「やっぱ…みんなで合宿いきてぇよな」
切島君が机に突っ伏しながら誰にでもなく
呟く
「そこで皆さん!」
突然に声を上げたのは八百万さんだった
「週末に私の家で勉強会を催しましょう
お母様にも了承を得ておりまして
講堂を開けてもらってますの」
「まじで?行く行く!」
「女子の家…」
「俺は行かねぇ」
(((…講堂?)))
聞き間違いでないのはのちに分かることであった
「皆さん紅茶はどこがご贔屓がありまして?
我が家はいつもハロッズかウェッジウッド
なのでご希望がありましたら用意しますわ!」
この話を耳にした皆が
イキイキとしている八百万さんを他所に
その生まれの違いをひしひしと感じていた
さて僕は…
「緑谷さんは?」
「はい?」
突然声をかけられキョトンとする
「あ…B&Tで」
「B&Tですわね用意致しますわ!」
いつの間にか
参加者にカウントされていたことに驚きが隠せない
食堂に向かうかな…
@食堂
「筆記に加えて演習試験…」
「考えながら食べとる…」
肩から伸びた2対の腕がそれぞれ
給餌と書き物をする
「緑谷ちゃん忙しないわね」
「一学期でやったことの総合的内容…」
相澤先生から告げられた
演習試験の大雑把な説明
「戦闘訓練に救助訓練…」
「それに基礎トレ」
「「「う〜ん」」」
「ちょっと失礼するよ」
悩むA組卓に
「物間君!」
「あ、B組の、こんにちは!」
「何やねん物間君」
同卓内には
葉隠さん
麗日さん
梅雨ちゃん
轟君
物間君
僕となっている
「何とは侵害だなぁ
特別に歩み寄ってるっていうのに」
「と言うと?」
得意げな態度から
有益な情報を得ているのだろうと考える
「例年通りなら
入試の時みたいな対ロボット戦だってことさ」
「なぁ!?」
「嘘やろ?」
「物間ちゃんは何で知ってるの?」
A組の面々が不透明だった試験内容に面を食らう
「あれあれあれ?何でB組より優等生なA組が
僕らに情報戦で負けてるのk」
「煽るんじゃない物間」
ここぞとばかりに煽りに転じようとした物間君に
手刀を叩き静止した拳藤さん
「ごめんねA組…こいつA組ってなるとね」
「気にしてないよ
それより何で知ってるのか気になるな」
「私先輩に知り合いいるからさ聞いた」
「それなら納得ね」
「拳藤さんが言うなら」
「拳藤ちゃんなら信用できるね」
物間君への信用が皆無である…
「ちょっとズルだけど」
「いや、ズルじゃねぇよ」
蕎麦を食し終えた轟君がゆっくりと口を開ける
「使えるものは使って上に向かう
それがヒーローになるってことだろ」
轟君が僕を見ながら告げる
それに頷いて相づちを打つ
「それが身近にあるなら尚更だ」
淡々と続けながらトレイを持ち上げ
僕達に背中を向けて歩き出す
「馬鹿なのか拳藤!
せっかくの情報アドバンテージを…
こここそ憎きA組を出し抜くチャンスだったんだ」
「憎くはないつーの」
意識をかろうじて取り戻した物間君に
再び手刀を叩き込み他所の卓に姿を消した
@昼飯後
「んだよ、ロボならラクチンだぜ」
「…」
拳藤さんの情報により不安がなくなり
勉強への意欲が増したA組の面々が湧くなか
【ニュートラル】がいない期間が
長くなり過ぎている
【マニュアル】の調節も未だに大味であり
ナインさんとの戦いも
情報がなければ勝ちはなかった…
短くなった袖から
手首から肘の半分までが黒くなった腕
この個性は充電式と考えられる
備える意味で糧にしなければ
「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ
何が楽ちんだ阿呆が」
「阿保とは何だ阿呆」
「うるせぇなぁ
調整なんぞ勝手にできるもんだろうが…」
右手のひらから花火の様な閃光
左手のひらからガラスを揺らす衝撃
「才能マンかよ…」
「創意工夫だボケ」
そう言い残す
かっちゃんは出て行く途中で
「期末では負けねぇぞデク」
「え?あ、うん」
「テメェにもだ轟!!」
「?おう」
僕も帰ろうかな…
それにしても先生は何をやってんだろうか?
教室から出て右手の廊下の角で
僕達を観察するようにして立っている
@おまけ
週末試験1週間前
「ここが…」
「八百百の」
「家…」
送られてきた住所を元に辿り着いたのは
見上げるほどの塀
首を大袈裟に振らなければ見渡せない敷地
「あ、あの、八百万…」
「お待ちしておりましたわ!
どうぞお入りください」
上機嫌なのが声の調子でわかる
インターホン越しの挨拶を終えると
正門がゆっくりと開く
一人でに…
「真っ直ぐ行きますと階段がありますわ
そこを上がっていただければ…」
真っ直ぐ、横幅にも驚いたが
遥か先のお屋敷が拳一つ分の錯覚
奥行きが果てしない
「やべぇ麗日が!」
あまりの出来事に麗日さんが倒れる
「大変ですわ!熱中症ですの?
お医者様を向かわせますわ」
医者の常駐ともあり
流石と言わざるを得なかった
執事が出てきたあたりは
皆が慣れたのか丁寧な挨拶を終え
一日を豪邸で過ごさせてもらった
僕はたまに聞かれる個性活用方法を紹介し
上鳴君、芦戸さん、葉隠さんと親交を深めた
耳郎さんが【マニュアル】の猫と
戯れていたのは意外だった
そんなこんなで【黒き人】との初対面時を
思い出させる週末となった