@ 高い所にある洞窟の前
「必ず 助ける…って?はぁ…ははは」
「…」
最優先事項は洸汰君の保護だ…
どうしたら
「さすが ヒーロー志望者って感じだな」
何処にでも現れて正義面しやがる」
明らかな余裕を見せている
「緑谷って奴だろおまえ?
ちょうど良いよ、お前は」
@00:00:00.15
真正面から観察する
脱ぎ去ったローブから確認できる筋繊維
握り込んだ拳
手首から徐々に筋繊維が体外へと
@00:00:00.37
そう何度も食らう訳にはいかない
「そ…」
再びの横薙ぎ払いが来る
「率…先して殺しとけってお達しだ」
空振った拳を再び振りかぶるマスキュラー
「じっくり、痛ぶってやるから血を見せろ!」
【複製器官:腕】により真正面から受け止める
マスキュラーの腕から溢れ出した筋繊維
その太さは、元の腕を二回り越している
受けた腕が軋み、やや押されるが
問題はない
「あ!そうそう、知ってたら教えてくれよ」
威力が徐々に上がって来ている
それに比例して、筋繊維が膨れ上がる
「八百万って小娘と爆豪ってガキは何処にいる?」
「!!?」
八百万さんにかっちゃん?
それがコイツらの目的か
「答えは"知らない"でいいか?」
一層の膨らみが見られる…
「だったら?」
「じゃあ、遊ぼう!」
一瞬の振りかぶりからの
一撃→【刹那】で避け、肩を掴み飛び上がる
天高く上げた膝を勢い良く顔面にぶち込むが
「効かねぇ!!」
足を掴まれ、放り投げられる
【複製器官:手】を支点に
空中機動から勢いを蹴りに乗せる
「良い速さだが…」
加速の乗った蹴りでさえ
マスキュラーの脳を揺らすには至らなかった
「力が足りねぇ!!」
側頭部を狙った蹴りを敢えて受けられ
軽い振り抜きにより足が弾かれる
「【マニュアル】」
幾つか【黒弾】を撃ち込み【模倣:生物】
狼を喰らい付かせるが
筋繊維が僅かばかりに剥げるだけだった
「は!」
飛ばされた狼が地面に着地する
「…」
手詰まりだ
初手の加速による押し出しも無傷
体術による攻めは威力不足
受けたダメージも軽微
回復が上回り
【ショック吸収】の恩恵を感じる
抑え込むだけなら…できるか…
「お前の個性はそれだけか?」
「だったら?何だよ」
「俺の個性は"筋肉増強"皮下に収まんねぇ程の
筋繊維で底上げされたパワー!スピード!!」
「何が言いたい」
「自慢だよ!底の見えてるお前は俺に勝てねぇ」
「…」
腕のみに留まっていた筋繊維が
胴へと達する、徐々に巨漢が筋繊維に包まれると
背丈をそのままにシルエットが膨らみ続ける
「笑えて仕方ねぇよ!必ず助ける!?
どうやって!?」
「…」
【アル】頼んだよ
頭痛が眼の裏に広がり始めて来た
「実現不可の綺麗事のたまってんじゃねぇよ」
「できる、できないじゃない」
【黒キ自由】【】
「ヒーローハ」
「さっきまでと様子が違うじゃねぇか」
趾行の発達した巨人
体毛に身を包んでいるであろうその身姿と眼光
「命ヲ賭して、キレイ事実践スルオ仕事ダ」
遥かに上回る速度
手数によりマスキュラーは被弾を重ねている
一転攻勢、目に映る残像の前に
筋繊維が剥がれていく
先程からマスキュラーの攻撃は
【黒キ自由】に掠りもしていない
やがて、マスキュラーの皮膚から
鮮血が噴き出ると
「…」
肉ダルマ状態のマスキュラーの目から
義眼が外れる、ぽっかりと虚空の広がる眼
「緑谷ぁ…覚えてるか?」
攻撃の
ポケットから何かを取り出す
「さっきまでのは遊びだ!
俺言ったよな!?遊ぼうって!!
な!?言ったんだよ!」
「やめるよ!遊びは終いだ!
お前強いもん!こっからは」
(本気の義眼)
マスキュラーは徐に地面を叩き
土煙を広げる
【黒キ自由】に一瞬の隙が生まれると同時に
マスキュラーの追突が深く突き刺さる
「あ、クソ勢い余った」
「…」
ゆっくりと立ち上がった【黒キ自由】が構える
とてつもない威圧感を伴って佇む
「面白え」
両者が構えたと同時
〔空気が避ける音〕
周囲に衝撃波が広がり草木を揺らす
「んの、ガキが…」
マスキュラーの肉体が膨れ上がり
元の原型を留めることなく膨張していく
その都度【黒キ自由】は姿勢を仰け反らせ
地面へと向かっていく
「ははは…最っ高じゃねぇか!」
かつてこれ程酷使したことのない筋繊維
膨れ上がり自重を重ねた"のしかかり"
「血ぃ!!見せろや!!!」
確信を持って叫ぶマスキュラー
「潰れろ!!!」
大きく膨れ上がった筋繊維をそのままに
土埃を携えて【黒キ自由】を
「!?」
マスキュラーの身体に黒い液体が絡みつく
【黒キ自由】が崩れると同時に
内包していた液体を大量に放出する
「水!?」
マスキュラーは回避しようと
身体を持ち上げるものの粘性の高さに
絡みとられ、体勢が徐々に下へ下へと向かう
(どういうことだ?)
困惑、確かに捕らえた緑谷の身体は
そこになく
ただただ闇へと沈み込んでいく
「小細工…を!?」
【Gスタイル】に加え【プラズマ】による
監獄でがんじがらめに
もがくマスキュラーを抑え込み
森の中に静寂が戻った
かに思えた
「全力で」
閉じ込めることはできなかった
暗闇から勢い良く起き上がったマスキュラー
「やろうぜぇ」
【筋繊維装甲】の展開により内圧を高め
【Gスタイル】を強引に引き剥がした
「血と闘争…」
〔鈍い音〕
@【ウォーターホーススタイル】
「?」
マスキュラーが力なく
膝から崩れ落ちる
筋肉の疲労?筋繊維の喪失?いや
加えて、情報を開示するなら
『失明』している
残った方の眼球から頬へと垂れる血液と何か
【筋繊維装甲】を酷使したことで
防御面が疎かになり、覆っていた頭部が
剥き出しになった瞬間
圧縮し、解放した【黒き人】が貫いた
「ウォーターホースは水の個性
災害救助からヴィラン退治まで
様々な活躍を見せた」
ヒーロー雑学を垂れ流しながら
マスキュラーの前に屈む
「その必殺技は
水圧カッターのそれ」
「あ?が…」
「他に道はあったと思うよ
「み…どり」
「【マニュアル】」
〔破裂する音〕
黒い花が咲き乱れる
液体が全身を這うと
やがてマスキュラーが力なく
地面に倒れ込み
徐々に、徐々にその形が崩れていく
「…」
構えた腕から筋繊維が
飛び出してくることはなかった
その代わり
〔土砂の崩れる音〕
皮下の密度が高まり、制御ができるようになる
「…」
プッシーキャッツのところまで行かないと…
「地崎廻…」
【マニュア…?
なん…で、ぼくは
力なく頭から地面に転がる
森に広がる赤い炎がただただ気掛かりであった
しかし、抗い難い睡魔は僕を夢へと誘った