【リハビリ中】僕の個性は【紳士ハンド】   作:『代行さん』

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@夏休み-7-個性強化

@夏休み

目の前で絵本を読みながら足を自由にしている少年

僕は絵本を一緒に読んでいる

 

@6:30

「行ってきます」

「いってらっしゃい」

母さんの見送りを背中に受けながら歩き始める

目指すは個性開発機関その施設

個性把握科、強化支部

 

@7:30

予定より30分早く着いた

他の生徒はおらず自分一人だけが立ち尽くしていた

 

口をまごつかせていると

ニュートラルが背中を押した

指を刺した方向には施設がある

 

「〜分かってるよ」

苦笑いを浮かべつつ歩き出す

個性開発機関には黒い噂が絶えないのである

 

@7:35

受付の機械で用件を伝える僕じゃない僕の声

受付を通され、ベルトコンベアーで奥へと招かれる

小型のドローンらしき物が近くを飛んでいるのを視界に捉える。

 

精密な内部構造

個性で出されたものか作り出されたものか…

音が小さく、ほとんど聞こえないことを考えると高性能と言える代物であった。

 

@7:45

「あれ?」

「あ、天霧さん」

手を振らながら走り出す

小石にけつまづくと2、3歩前のめりになりながら歩き、体勢を崩してしまう。

 

瞬間、ニュートラルとは違った柔らかい感触が顔の半分を覆う

顔を持ち上げると空中で体が止まっていた。

 

そのまま、上体をニュートラルに引っ張られると体勢を整えられる。

「君は相変わらずそそっかしいな」

〔ニシシ〕と笑う天霧さん

 

「すみません」

「いやいや、転ばなくてよかったよ」

痛みを伴う治療はいやだろ?とニヤリと笑った天霧さんがかなり怖かった。

 

@7:50

天霧さんを観察する

スムーズな足運びに合わせて作り出される【バリア】

それを足場に歩き続け、空中を進み続ける

 

バリアは無色透明、空中での識別は足元にあるモノ以外は見分ける術が皆無であった。

「そう言えば緑谷さん?」

「は、はい!」

 

空中で一回転した天霧さんが飛び降りてくる

咄嗟に掴もうと駆け寄ったが、失敗するわけもなく

綺麗に着地と回避をされる

 

「あの時見せた個性って何ですか?」

「あの時って?」

片腕を主軸にニュートラルに半回転後、天霧さんに向き直る

 

「あの時強盗に使った銃を奪う力…緑谷さんのでしょう?」

「え?」

身に覚えがない、確かに銃は消えたけれど

「あれは天霧さんがやったんじゃ」

「何を言ってるんだい?そこの黒い腕が指を鳴らした時に」

 

〔バッ〕

ニュートラルに向き直る

ニュートラルは無言で浮き続けている。

「ふむ、たしかに、本人の意思とは関係なしに自立してるね」

 

腕を組み、興味深そうに眺める天霧さん

そんなことより僕が気になるのは

「その能力を見せて欲しい」

ニュートラルに対してお願いをする

 

ニュートラルは指を交互に指す

天霧さんと僕に

「ほぉ?じゃあ私を狙い給え」

「ほぇ?」

 

ニュートラルが天霧さんに対して指を伸ばす

親指を軸に中指と人差し指の指先を合わせる

〔指を鳴らす音〕

 

【フィンガースナップ】の音と共にニュートラルの手には布が出現していた。帯にしては細く、糸と呼ぶには太い代物。

「おや?サラシが…」

驚く天霧さん

それ以上に驚いたのは僕の方である

 

顔を真っ赤にしたのも束の間

奪ったことはともかくとして何故こんな力がある?

複製器官とは別物の能力

一つの個性として扱うにはどうにも腑に落ちない

〔ブツブツ〕とモノを考え始める

 

「ふむ、熱中すると周りが見えなくなるタイプか」

「すみません、お騒がせをしました」

「おまけにしゃべるとはね」

ニュートラルが差し出した布の束を受け取ると瞬時に仕立て直す。

僕は終始考え事に忙しかった。

 

@8:00

「おはよう、諸君今日で夏休みの半分が終わったところだね」

横一列に整列した少年少女達

 

「今日から仲間になる者を紹介する」

手招きをされ、前に出た3名がそれぞれ自己紹介を始める。

 

「緑谷出久です。よろしくお願いします」

「彼は今年雄英を受けることになっているから個性の把握を含め決定打にしたいと考えてる。仲良くしてやってくれ」

拍手と口笛が響く

何だか照れ臭い

 

「次の双子は私の友人の子供でな」

「真幌よ」

「活真…です」

「よろしく頼む」

 

@9:00

「個性把握テスト」

「そう、特に君のは異質だからね」

 

遠くから聞こえる叫び声に少しばかり気を取られながら話を反復する。

「まずは重量挙げを行ってみようかな」

 

現れた機械に腕を通すと手首に異常な程質量を感じない機械が取り付けられる。

「この機器で筋力の緩急と積載量を測る」

ニュートラルもつけている

 

 

 

「f25と50k強化系でないのにこの数値は凄いな…」

数値の意味は分からないものの驚きようから察せる

 

「f0とFLOW、念動力に近い個性か」

ニュートラルに関してはこれまた違った驚きを見せる

 

「うわぁ〜」

遠くから聞こえる叫び声に気を取られ見てみると

遠くに見える怪物に身を強ばらせる

「真幌の個性は幻を見せるんだよ。子供にとっては怖いものでも大人にとっちゃ訳もないんだよ」

 

怪物が大きく腕を広げると再度叫び声が上がる。

確かにあの大きさは怖い…

 

@10:00

「もう一度お願いします」

体術による訓練

先ほどから【蛸】と組み手をしている

 

四方八方から飛んでくる触手の殴打

油断をしていると墨による目潰し

終いには足掛けからの組み伏せでやられる始末

 

頭部のタコに加え首から下を交えての攻防一体の動きには翻弄されっぱなしである。

「素直な軌道な分避けられやすいぞ」

「て、手厳しい」

 

@11:00

「はい次」

「はい!」

【フィンガースナップ】による物の奪取

【複製】による本物の奪取を目的とした訓練

 

対象の選別に必要な経験を積むんだとか

「ハンカチなんてとってどうするのさ」

「すみません!」

 

@12:00

「ふぅ」

汗を拭いつつニュートラルを見る

異常である

 

どこで覚えたかわからない体術でイナし、イナされの攻防戦

【フィンガースナップ】に関しては人差し指から小指までを含めた四本で連続した8連奪取、複製が追いつかない

 

「僕はダメダメだな」

乾いた笑いが出る

 

「あの」

不意に声をかけられ向き直る

「どうしたの?活真君?」

 

自己紹介の時に居た少年が声をかけてきた。

「お姉ちゃんがいないんです」

 

@12:02

「真幌ちゃん!」

「お、お姉ちゃん」

声をかけられてから01:30が経過

閉鎖空間といっても敷地が広い上に環境再現による事故の再現が行われている施設内

 

一刻も早く見つけないと

「もっと高い位置…」

焦りを感じ、表情が強張る

 

何か…ないか?

!そうだ

 

「活真君掴まって」

「う、うん」

首元に力強くしがみついたのを確認すると

【黒キ人】を無数に呼び出す

 

一つ一つに目をつけていては倒れかねない

必要最低限、手、だけを作り出す。

 

階段状に出現させた6つの手を順々に乗り継ぎ高度を上げていく

 

@12:04

声をかけられてから04:30が経過

「何処で逸れちゃったの?」

周囲を見渡しながら少年に聞く

 

「あ、あそこ辺り」

指を刺したのは一本の巨木

その周囲、低い草が広がる草原地帯

 

「掴まって」

「うわぁ〜」

 

足踏みを止めるとやや速い速度で落ち始める

積載量ではなく、積載"数"により維持できる時間が変化する

トラックは持ち上げられる

荷台の荷物は別物とされる

 

その為一度息継ぎを必要とする

高度が下がり、高さが水平になると少年を前に抱え込み走り出す

 

@12:06

視界に捉えた黒い影と少女

【フィンガースナップ】抱えている手とは逆で打ち鳴らす。

不発

 

「?!」

訝しむが影と少女の間に割って入ると少女を抱えて飛び退く

「…」

 

黒い影は短髪の長身男性、スーツとコートを身につけている。

しかしこれは…

 

「これは何かのテストかな?」

抱えていた二人に問いかける

 

少年は押し黙り、少女は

「おそ〜い!」

ご立腹の様子

 

@12:07

僕は正座をさせられ説教を受けている

「"きゅうじょしゃ"をどれだけ待たせるの?」

手に持っているストップウォッチが05:30秒を指している。

 

「これが本当のヴィランだったら私やられてたわよ?」

「申し訳ございません」

「次はこれより30秒は早く来てよね」

「はい」

「お姉ちゃん」

確かに天霧さんの活用法を閃くのが遅かった

 

「今度は期待に応えてみせるよ」

「!分かればいいのよ、行くわよ活真」

「ごめんね出久お兄ちゃん」

正座に痺れた足を崩すと晴れた表情で笑う

 

「手厳しいな〜」

押し寄せた頭痛に明るいため息を吐くと少し寝た。

 

@12:20

揺れる地面で目が覚める

地面が揺れているというより

 

「地面が生きてる?」

上体を起こすと無数の鼠が波を作りながら行進していた。

 

「わぁ?もしかして【黒キ人】?」

目のない鼠が返事を返してくる

鳴き声からビジュアルが鼠のそれであった

 

いよいよ持ってこれが何なのか分からなくなってきた。

 

@13:00

「今日は体験ということで以上としようかな」

出入り口で挨拶を二言三言交わすと帰っていく

僕もこれからゴミ拾いに向かおう

 

「出久お兄ちゃん」

呼び止められ振り返ると少年が帽子を取ってお辞儀をしていた

 

「活真君ありがとう」

手を振り返すとパァっと明るい顔になりトタトタと歩いていった

 

@13:30

海岸で伸びをする

足裏に手を合わせるとゴミ拾いを始めた

 

@14:30

移動が格段に速くなった

しかし、運動不足に繋がりかねない為考えものである

 

@15:30

タイヤは依然重いものの転がすことや少しの間だけ持ち上げられるようになっていた。

「痛たた」

長時間持ち上げると流石に腰を痛めそうなので断念した

「f30/50k」

 

@17:30

「ヴィジランテ!」

「?…!?」

投げ渡された缶を眺める

トマトジュースだ

 

「ご苦労さん」

「ありがとうございます」

手渡してきた人が手を挙げると消えていった。

 

@18:00

伸びをする

明るいため息が夕日に当たる

充実した日に感じる1日だった

 

@20:00

オールマイトがテレビに出ていた

来日は本当だったのだと驚き箸を固める

 

@21:00

温めた牛乳をニュートラルが持ってきた

教科書を広げて1時間

早すぎる気もするが寝床へとついた。

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