「ねぇねぇ、あそこ行こ!」
5限の授業がいつの間にか終わっていたことに気付いたのは、この声によって意識が夢の世界から引き戻されたからだ。
「何だよ千早、高松誘えばいいだろ」
「今日ともりん休みだけど?」
「...あー、そうだったなぁ」
「今気づいたんでしょ」
というか、高松がいるならわざわざこっち来ないか。
「で、どこ行くの?」
「ここ!」
スマホに指を添えて見せてきたその場所は、有名なコーヒーショップ。
「飲みたいのがあってさ?付き合ってくれないかなぁって」
「...飲みたいの?まぁいいけど」
「やった!じゃさっそくいこー!」
俺の手を引っ張っていくのは構わないが、異性の手を引っ張ることに抵抗が無いのはどうにかしてほしい。
「おい千早、いつまで俺の手捕まえとくつもりだ」
「わぁごめん!でも逃げられたら困るし!あと愛音って呼んでよ!」
「付き合うって言ったんだから逃げねえよ」
そんなこんなで学校を出て、コーヒーショップに到着。
「で、何飲むんだ?」
「気になる?」
「美味そうだったら後で買おうかなって」
「ふーん?じゃあ聞いて驚け!」
千早はスマホを操作して、何かを目で追っている。
「じゃあ行くよ」
「覚悟決めないと飲めないのかよ」
「ちょっと静かに!」
千早は咳ばらいを一つして、深呼吸をした。
「ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノ!」
「...は?」
「だからー!ベンティアドショットヘ」
「いやいい一回で聞き取れたし。呪文かと思ったわ」
「これネットにあったんだよねぇ!一回でいいから頼んでみたいなぁって思ってさー」
ネットニュースにちょっと乗ってた時に見た気がする。
「あー...千早?」
「だから愛音ですー!」
「...じゃあ愛音、一個悲報だ」
「悲報?」
「その...ベンティア何とかフラペチーノ、たぶんないぞ」
ランバチップが生産終了だからってどっかの動画で見た。
「えっ、それホント?」
「この店だけ奇跡的にあるなんてことはないだろうし、今からでも季節限定のやつとかに...」
「えー...ショックー...」
「そんな飲みたかったかそれ」
「だって一発で言えたところなんてめっちゃバズりそうじゃん?」
「俺は撮影係かよ」
結局クソ長い呪文フラペチーノはやめて、季節限定のイチゴのやつにした。
「...普通のやつでも長いじゃん名前」
「んー...今度はこれ言ってみようかなぁ...」
「絶対やばいからやめとけ」
ランバチップはコーヒー風味のチップだそうです
最新版の呪文注文は210文字あるらしいですがおいしくないそうですよ()