「……起きてる?」
俺の傍で眠っていた筈のリサに問い掛けられる。
「……あぁ、起きてるよ」
狸寝入り……なんていうことはせずに正直に返事した俺。そんな俺に、リサは続けて問いかけて来る。
「
「……何が?」
彼女の問いかけの意が汲めなかった俺は、彼女へと問い返した。
「その……あたしと……付き合えて、さ」
「今日ずっと言ってたはずだけど、俺」
今日のデート中のことを思い返しながら、俺は返答した。デート中はずっと幸せだったし、それをリサにずっと話していた。それも、リサが苦笑するぐらいには。
だが、彼女がそのように問いかけて来ると言うことは、伝わっていなかったという現れ。それに気付くと同時に、俺の中を一抹の不安が駆け抜けていった。——リサは幸せでは無いのでは、と。
「リサはどう?」
「え、アタシ?アタシは、幸せだよ」
「……良かった」
どうやら杞憂で済んだようだ。これがもしそうではなかったら、俺はひどく落ち込んでいたのかもな。
そう思っていると、後ろからリサが抱きついてきた。
「リサ?」
首を傾げながら彼女の名を呼び、己の思考を掻き乱す。そうして、自身の理性を保つ。
「こんなこと聞いたのはね……買い物してる時、千斗が笑顔じゃなかったからなんだ……」
涙ぐんだ声でこちらへと語りかけて来るリサは、俺の背に顔を埋めて来る。笑顔じゃない……表情筋は固いとは言われるが……多分リサが言いたいのはそういうことじゃない。
「ほんとに幸せだった?」
さっきより声が低い。少し怒っているのだろうか。そんな彼女の言葉に対して沈黙を貫いていると、彼女から追及の言葉が飛んでくる。
「どうして黙るの……ねえ!?」
答えないことに対して痺れを切らしたのか、怒気の入った声を投げつけて来るリサ。対する俺は、少し泣き真似をすることにした。
「うっ……くっ……」
「あっ……千斗!ごめん、泣かないで……」
軽く全身を震わせ泣き真似をしたら、リサの方が泣き始めそうな勢いを見せた。咄嗟に俺は彼女のことを宥めようと考え、体の向きを変えようと身を捩る。すると突然、彼女が俺を抱く力が強まる。
「リサ……?」
「疑ってかかったの、ごめん。自信なかったんだ。年上らしく、お姉さんらしくふるまえたかなって」
未だに震える声で、彼女はぽつり、ぽつりと話し始めた。自身の内面を。
「でも蓋を開けたら、千斗がちゃんとエスコートしてくれて、わがままにも付き合ってくれて……嬉しかった。でも、そのせいで千斗が楽しめてなかったらって考えたら……」
「——リサ」
彼女の独白の途中であったが、名前を呼んでそれらを遮った。
「確かにリサには引っ張り回されたし、無茶振りもくそほどやらされた。でもさ、俺……それを1回でも拒んだこと、あった?」
「え……?」
俺の言葉を聞いたリサは、心底驚いたような声を上げた。対する俺は、彼女に対して自身の内心を打ち明けるべく続けた。
「別にリサに引っ掻き回されようが、そういうとこを含めて好きになったんだし、それを承知で付き合ってるんだ。だから心配すんな。リサがやりたいようにやってくれれば、俺は満足だ」
そこまで言い切ったところで、俺は彼女の方へ向き直ると真正面から強く彼女のことを抱きしめた。
「リサ、大好きだよ」
「千斗……アタシもだよ」
その言葉と共に俺を抱き返して来るリサ。互いに触れ合った箇所から、彼女の柔らかな肌の感触が、温かな体温が、優しげな心音が俺の中へと伝わってくる。
「リサのこと抱いてると……落ち着く」
「フフッ、アタシも」
そうして暫くの間抱き合っていると、不意にリサが埋めていた顔を上げた。
「リサ?」
不思議に思っていた次の瞬間、俺の口元が何か柔らかな感触を覚える。どうやら彼女にキスされたようだ。
数瞬の後、永遠にも感じられそうな濃密な時間は終わりを告げ、俺の視界は頬を赤らめたリサの顔を捉える。
「リサ……」
「眠れるように、おまじない。おやすみ、千斗」
そう告げた彼女は、俺の胸に顔を埋めた。そして1分も立たない内に、規則正しい呼吸で眠りについていた。
「おやすみ、リサ」
彼女を優しく抱いた俺も、微睡に己の意識を預けた——