『ありがとうございました!RAISE A SUILENでした!』
頭を下げる五人。
それと同時に黄色い歓声が舞い上がる。
見届けた俺は、スタッフの指示に従いライブハウスを出た。
出待ち、という行為がある。
とある場所から出てきた芸能人やミュージシャンなどを、出入り口付近で待ち構えることである。
暗黙の了解でそれはだめだというところがほとんどだ。
まぁ常識的に考えて、知らない奴が自分を待ってるのは怖すぎる。
知ってるやつだったらいいかというと、そういう訳でもないけど。
と、しばらくして、知ってる人影がこっちに来る。
「よっ、お疲れ」
「カバー。わざわざ待ってたの?」
「まあこの後は何もないし、ねぎらいたかったしな」
言いながら新品の水を投げ渡す。
「いいの?」
「遠慮すんなよ、飲め飲め。ぶっ倒れたら元も子もないからな」
「...ありがとう」
...やっぱ、距離感測りかねてるよな。
一応チームRAS(勝手に命名)のメンバーだから、もうちょっと気楽に接してほしいもんだけど。
「なぁ、レイ」
「なに?」
「...もうちょいさ、その...素を出した方が良い、というか...」
上手く言語化できなくて、言い淀む。
「...ふふっ」
「...なんだよ」
「ううん、なんでも。気遣ってくれてありがとう」
「あぁいや...どう、いたしまして?」
何で俺の方が気遣われてるんだろう。
でも何というか、一歩引いてるからこそ、人の良さを見てるような。
「レイはさ、今、楽しいか?」
「なんで?楽しいよ?」
「いや、聞いてみたかっただけ。何でもないよ」
「何か隠してる?」
「カバーだけにか?残念ながら、俺は隠し事はしない主義だ。すぐばれるからな」
嘘じゃない。
でも、話してもいいことなんてない。
だから、隠し通す。
いつかバレたら、その時だ。
「...ん、電話だ」
「誰から?」
「うちのリーダー。はいはい、もしもし?」
ちょっと待っててと手でジェスシャーし、ちょっと離れながら、電話に出る。
『カバー?今どこ?』
「今日の箱の近くの公園。レイヤも一緒だよ」
『ならちょうどいいわ、レイヤを連れてうちに来なさい』
「...了解」
電話を切る。
「リーダー様は寂しいみたいですよ」
「みんないるの?」
「さぁ?少なくとも俺とレイはお呼びみたいだ」
「ふふ、じゃあ行こうか」
いい感じの距離感で、いい感じに歩く。
吹き付ける夜風が、今は気持ちがいい。
「カバー、今度歌ってよ」
「はぁ?レイの前でか?バカ言えよ」
「えぇ?カバーだってうまいのに」
「...リーダーの許可が下りたらな」
軽口を叩きながらチュチュのマンションに向かう。
許可なんか降りないだろうけどな。
RASわかんねー