神様は人間を救いたいと思っていた……。
だから手を差し伸べた。
しかしその度に人間の中から邪魔者が現れた……神様の創ろうとする秩序を壊してしまう…そんな人間達。
神様は困惑した…人間は救われることを望んでいないのかと。
それでも神様は人間を救いたかった。
だから神様は先に、その人間達を排除しようと行動した…人間達をたぶらかす悪魔達も。
でも神様一人じゃとてもじゃないけどそんなことはできない。
だから神様は天使を造り…そして苦悩の後にユグドラシルの樹を削り、その木片で私の様な殺戮兵器を生み出した。
神様は悪魔の王との戦いによって倒れたけれど、天使や私達殺戮兵器は創造主が夢見た勝利を手にするまで戦い続けた。
私達の仲間、殺戮兵器の殆どは悪魔の群衆に破壊されたけれど戦争は終わり、私は生き残った。
残念な事に体の殆どは壊されてしまったけど、それでも安らかに眠るには差し支えない程度の事…私は約束された永遠の安息を手にした。
けれど私はその永遠と共に忘れない…神様が死んでしまった今、人間達が混沌の渦から救い出される日は永久に来ない事も、私が悪を殺し続ける殺戮兵器である事も。
「私の名は“クラウ・ソラス”…神の生み出した、“最悪”という称号を欲しいままにする“殺戮兵器”という存在」
……私は眠りについた。
あの時私は片腕の肘から下や両足の膝から下、果ては両翼を粉々に砕かれ、胸部や頭も半分ほど消滅していた。
ユグドラシルの樹木より削り出された木片から神に造り出された体が粉々に砕かれたのも無理はない…五百ほどの悪しき悪魔の軍勢に一斉攻撃されたのだから。
そんな中戦争は終結し、神様の殺戮兵器である“私”という存在は永遠の安息を約束された…筈だった。
と言うのもその安息も長くは続かなかったのだ。
空間の狭間という曖昧な場所に漂う様に永久の眠りに浸いていた私を起こしたのは、一匹のドラゴン。
「起きろ」
ドラゴンは巨大で、言うまでもなく声がデカい。
体を粉々にされ、永遠の眠りに浸いていた私を強制的に起こすには十分すぎる騒音だった。
「私を…ギギギッ…起こしたのは……ギッ…誰だ?」
身体中が軋んでいる。
体全体に走るヒビで喋るのも一苦労と言うことか…神の殺戮兵器の名が聞いて呆れるな。
だがドラゴンにとって私のそんな都合は関係無いのだろう…遠慮なく畳み掛けてくる。
「ここは私の住処だ」
この状況を見てそれを言うのか…まぁ、コイツにとってそれは全く関係無いんだろう。
「悪かった…ギィッッ…な…ギギッ……」
私には疲れも痛みもないが、すんなり喋ることができないのは人間と変わりなく…はっきり言ってキツい。
もどかしいと言うべきなのか…少なくとも早く治癒されないものかと願う程度にはアレだ。
「だが…ギギッ…生憎今は…ギシッ…動け…ギィィッッ…ないんだ……」
なんせ両足共に膝から下が無いんでね。
「なら、治るまでここに居るか?」
するとどうだろう…このドラゴンは割と良心的なのか、私のこの状況を理解したらしい。
有り難く好意に甘えるとしよう。
「お…ギギィ…願い…ギッ…するよ……」
感謝の代わりにドラゴンの頬を残っている腕の方の手で撫でる…ギシギシギリギリバリバリ変な音が出ているが気にしないでおこう。
「心地良いな……」
ドラゴンが本当に心地良さそうにしている。
……こんな木片で造られた手でもそんなものなのか。
何だか申し訳ない気分になってきた。
「そう…ギギッ…か……」
殺戮兵器といっても、私や他の全滅(恐らく)してしまった仲間達は元々神によって悪しきモノを排除する為に創造されたのだ…善きモノを傷付けることは赦されないし、できない(逆に複数の存在に恨まれているモノは遠慮なく排除できる)。
「お…前…カコンッ…の、名前…ガリガリガリッ…は?」
つまりこのドラゴンは不殺対象になった訳で、名前を聞かない訳にもいかないだろう。
「無限の龍、オーフィスと呼ばれている……」
「へぇ…ギリリリ…良い名前…ギシッ…だな」
さっきから体内の歯車が空回りしている音がしているが…私の体の状態から察するに仕方ない事だ。
にしてもオーフィスか…良い名前だな。